特許第6335844号(P6335844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335844CTにおける放射線量低減のための自動管電圧選択方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335844
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】CTにおける放射線量低減のための自動管電圧選択方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20180521BHJP
【FI】
   A61B6/03 330A
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-112151(P2015-112151)
(22)【出願日】2015年6月2日
(62)【分割の表示】特願2012-520787(P2012-520787)の分割
【原出願日】2010年7月15日
(65)【公開番号】特開2015-171578(P2015-171578A)
(43)【公開日】2015年10月1日
【審査請求日】2015年7月1日
(31)【優先権主張番号】61/225,818
(32)【優先日】2009年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510264187
【氏名又は名称】メイヨ フォンデーシヨン フォー メディカル エジュケーション アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】ユ、リフェン
(72)【発明者】
【氏名】ミッコローフ、シンシア、エイチ
(72)【発明者】
【氏名】エレッチャー、ジョエル、ジー
(72)【発明者】
【氏名】リ、フア
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/138979(WO,A1)
【文献】 特表2012−533361(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 − 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動管電圧選択を用いてコンピュータ断層撮影(CT)イメージングを実施する方法において、
画像化される対象をCTシステム内に配置する工程と、
選択された線量レベルと所望画質レベルとに対応する基準管電圧及び管電流時間積のうちの少なくとも一つを用いて実行されるスキャン法を選択する工程と、
前記スキャン法について所望コントラスト対ノイズ比(CNR)に関連する目標画質を定義するために、ノイズ制約パラメータを選択する工程と、
前記対象の特徴、診断タスク及び前記ノイズ制約パラメータを用いて、前記CTシステムの管電圧及び関連する線量効率を決定する工程と、
前記目標画質を達成するための選択された線量効率を有する前記管電圧および前記スキャン法を用いてCTスキャンを実行する工程と、を含み、
前記CTシステムの管電圧及び関連する線量効率を決定する工程が、
前記対象の特徴と前記選択された基準管電圧と前記選択されたノイズ制約されたコントラスト対ノイズ比パラメータとに基づいて、管電圧の範囲について相対線量効率を作成する工程と、
最も望ましい相対線量効率を有する管電圧を選択する工程と、を含み、
前記管電圧の線量効率を作成する工程が、
【数1】
の関係を使用し、
ここで、RDF(Ωd,kV)は管電圧kV(基準管電圧kVrefでの線量に対する)での相対線量を示し、C(Ωd,kV)及びC(Ωd,kVref)はコントラストレベルを示し、k(Ωd,kV)及びk(Ωd,kVref)は画像ノイズレベルと線量レベルとを関連付ける係数を示し、αは前記ノイズ制約パラメータを示し、Ωdは前記対象の特徴を示し、kVrefは前記基準管電圧を示すことを特徴とする方法。
【請求項2】
最も良い相対線量効率を有する前記管電圧は、RDF(Ωd,kV)の値が最も小さい管電圧であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
自動管電圧選択を用いてコンピュータ断層撮影(CT)イメージングを実施する方法において、
画像化される対象をCTシステム内に配置する工程と、
選択された線量レベルと所望画質レベルとに対応する基準管電圧及び管電流時間積のうちの少なくとも一つを用いて実行されるスキャン法を選択する工程と、
前記スキャン法について所望コントラスト対ノイズ比(CNR)に関連する目標画質を定義するために、ノイズ制約パラメータを選択する工程と、
前記対象の特徴、診断タスク及び前記ノイズ制約パラメータを用いて、前記CTシステムの管電圧及び関連する線量効率を決定する工程と、
前記目標画質を達成するための選択された線量効率を有する前記管電圧および前記スキャン法を用いてCTスキャンを実行する工程と、を含み、
前記目標画質が、前記管電圧を用いて目標画質と関連付けられた前記CNR及びノイズが二つの条件、CNR≧CNRref及びσ≦ασref、を満たすことを要求し、ここでCNRref及びσrefは基準管電圧及び線量で得られたCNR及びノイズレベルを示し、CNR及びσは前記管電圧を用いて目標画質で得られたCNR及びノイズレベルを示し、そしてαは前記診断タスクに応じて定義されたノイズ制約を示し、
前記目標画質を定義するための前記二つの条件が、
【数2】
と同等であり、ここで前記ノイズ制約パラメータαは、二つの管電圧間のコントラスト比への制約と同じであることを特徴とする方法。
【請求項4】
対象の画像化処理を実行するためのコンピュータ断層撮影(CT)システムを制御する方法であって、
前記CTシステムを用いて、スキャンされた投影放射線写真を取得し、
臨床タスクに基づいて、スキャン法、基準管電圧、及び、ノイズ制約パラメータを選択することによって前記画像化処理を準備し
ここで前記ノイズ制約パラメータは、コントラスト対ノイズ比(CNR)と画質指標の少なくとも1つと関連し、
前記基準管電圧と前記ノイズ制約パラメータの少なくとも1つに基づいて相対線量因子を算出し、
算出された前記相対線量因子を用いて前記スキャン法に対する管電圧を選択し、
選択された前記管電圧を用いて前記画像化処理を実行して、前記対象から医療用画像データを収集し、
前記医療用画像データから前記対象の画像を再構築する、ステップを備えた方法。
【請求項5】
得された前記投影放射線写真を用いて、寸法特性と減衰特性の少なくとも1つを求めるステップをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記対象の特徴と、前記ノイズ制約パラメータと、前記基準管電圧と、に基づいて、管電圧の範囲に対する前記相対線量因子が算出されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
所望の画質を得るために、各管電圧での線量効率を決定するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項8】
決定した前記線量効率に基づいて、前記管電圧を選択するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基準管電圧と前記相対線量因子での計算された全放射線量を用いて、選択された前記管電圧に対する放射線量を算出するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記放射線量が達成可能かどうかを決定する評価に基づいて、前記管電圧を調整するステップをさらに備えたことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象の特徴が、前記画像化処理中に前記対象内で画像化される、ヨウ素、カルシウム、軟組織の少なくとも1つを含む、特定の物質を備えていることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照することにより本出願に盛り込まれる2009年7月15日に出願された「CTにおける放射線量低減のための自動kV選択の方法」と称される米国仮出願番号61/225,818に基づくとともにその利益を主張する。
【0002】
本発明は、X線コンピュータ断層撮影(CT)に関し、特に放射線量を低減するためのCTシステムパラメータの選択に関する。
【背景技術】
【0003】
X線イメージングにおいて、個体は画像化されている間に電離放射線にさらされる。この放射線量は、公衆衛生に対する重要な懸念となっている。CTは病気の発見及び診断において大きな役割を担うが、それと同時に、対象においてわずかながら放射線誘発悪性腫瘍のリスクが増加する。放射線量を低減するために最も多く採用されている方法は、対象の寸法又は体重に基づくプロトコルを用いてX線管の電流を小さくするというものである。もう一つの重要且つ関連する放射線量低減法は、自動露出機能(AEC)であり、これはCTスキャン中に管電流を自動適合させる。すなわち、CTガントリが対象の周りを回転して対象がガントリの中を移動すると、対象の寸法に応じて管電流が調整され、これにより画像ノイズと画質が一定に保たれる。この広く用いられているアプローチでは、画質を犠牲にすることなく放射線量を40〜50%減少することができるが、しかしながらまだ放射線量のさらなる最適化につながる考察がある。
【0004】
近年、画質向上又はさらなる放射線量低減を目的として、より低い管電圧(tube potential)、これは通常「kV」又は「kVp」で表わされるピーク電圧として測定される、を用いるCTイメージングの使用に関するいくつかの物理的及び臨床研究が行われている。この背景にある原理は、CTスキャナで使用可能な管電圧の範囲内で、高い管電圧よりも低い管電圧においてヨウ素によって減衰が増大すること又はCTコントラストが強調されることにある。多くのCT検査において、より低い管電圧でヨウ素による優れた強調を達成するためのヨウ素造影剤の使用により、例えば腎臓及び肝腫瘤並びに炎症がある腸の一部内でのヨウ素の特異的分布による富血管性又は乏血管性病変の顕著性が向上する。
【0005】
低い管電圧において得られた画像はノイズを多く含む傾向があり、これは主に対象による低エネルギー光子吸収が大きいことが原因である。したがって、低い管電圧の臨床的評価の決定には、画像ノイズとコントラスト強調間のトレードオフがある。対象寸法が所定の閾値より大きい場合、向上したコントラスト強調による利益がノイズレベルの増大によって打ち消されてしまう。この状況では、同じ放射線量に対して、低い管電圧は高い管電圧に比べて良い画質を作成できない可能性がある。換言すれば、適切な画質を維持するためには高い管電圧が必要であることから、低い管電圧を用いて放射線量の低減を達成できない可能性がある。しかしながら、上記した寸法の閾値よりも小さい場合には、同じ放射線量においてさまざまな程度の放射線量低減又は画質改善を達成することができる。したがって、与えられた対象寸法及び臨床応用について最も良い画質又は最も低い放射線量を生じる最適な管電圧が存在する。
【0006】
現在行われている臨床研究は、ある患者グループについて実験的に測定された管電圧を用いており、さまざまなレベルの放射線量低減又は画質改善が観測されている。しかしながら、目標画質を得るための異なる管電圧での線量効率に関する正確な知識並びに患者寸法及び診断タスクへの最適な管電圧の依存性については、いまだに定量的に決定されていない。より最近の研究では、一部の研究者は、最適な管電圧を決定するとともにファントム寸法及び造影剤物質への依存性を定量化するために、放射線量で規格化されたコントラスト対ノイズ比(CNR)を基準に用いている。その結果、放射線量のさらなる低減には、今日の常識よりもより高い程度で管電圧の選択を患者寸法及び診断タスクに適応させるべきであることが示された。しかしながら、最適な管電圧を予め選択して、具体的な診断タスクに必要な患者寸法及び目標画質の両方を考慮にいれた対応する放射線量レベルを決定する臨床診療が不足している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するために、患者寸法及び診断タスクの関数として管電圧の自動適合を行うとともに新規の画質指標である「ノイズ制約ヨウ素コントラスト対ノイズ比」を使用してさまざまな臨床応用に適したさまざまな画質レベルを定量化するシステム及び方法を提供する。
【0008】
特に、本発明は、自動管電圧選択を用いてコンピュータ断層撮影(CT)イメージングを実施する方法を提供する。この方法は、画像化される対象をCTシステム内に配置し、所望画質レベルに対応する基準管電圧におけるスキャン法を選択し、診断タスクに応じてノイズ制約パラメータを選択することを含む。前記方法は、さらに、対象の特徴及びノイズ制約パラメータを用いて各管電圧での線量効率を決定し、そして線量効率が最も良い管電圧を用いてシステム電力のリミットを超えない且つスキャン時間が実用的であるCTスキャンを実施することを含む。
【0009】
本発明の種々の特徴は、以下の詳細な記載及び図面から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】1A及び1Bは、本発明に係る自動管電圧選択法を使用するよう構成されたCTシステムを示す。
図2】本発明に係る自動管電圧選択法のステップのフローチャートセッティングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず図1A及び1Bを参照すると、本発明は、ガントリ12を有する「第三世代」CTスキャナを代表するコンピュータ断層撮影(CT)イメージングシステム10を用いて実施してもよく、もしくは本発明は任意の世代のCTスキャナで実施されてもよい。ガントリ12はX線源13を有し、X線源13は、X線14のファンビーム又はコーンビームをガントリの反対側にある検出器アレイ16に向けて投影する。検出器アレイ16は多数の検出器要素18から構成され、検出器要素18は診察患者15を通過する投影されたX線を協働して感知する。各検出器要素18は、イメージングX線ビームの強度即ちビームの対象を透過した際の減衰を表わす電気信号を発生させる。X線投影データを取得するためのスキャン中、ガントリ12及びその上に搭載された構成要素が対象15内に位置する回転中心19の周りを回転する。
【0012】
ガントリの回転及びX線源13の動作はCTシステムの制御機構20により制御される。制御機構20には、X線源13に電力及びタイミング信号を供給するX線コントローラ22と、回転速度及びガントリ12の位置を制御するガントリモーションコントローラ23と、が設けられている。制御機構20内のデータ取得システム(DAS)24は、検出器要素18からアナログデータをサンプルし、後続処理のためにこのデータをデジタル信号に変換する。画像再構成装置25は、サンプルされデジタル化されたX線データをDAS24から受信して高速画像再構成を実行する。再構成された画像は入力としてコンピュータ26に送られ、コンピュータ26は画像を大容量記憶装置29内に保存する。
【0013】
コンピュータ26はさらに、キーボートを有するコンソール30を介して操作者から命令及びスキャンパラメータを受信する。関連した表示装置32によって、操作者は、再構成された画像及びコンピュータ26からのその他のデータを観察することができる。操作者から与えられた命令及びパラメータは、コンピュータ26によって使用されて制御信号及び情報がDAS24、X線コントローラ22及びガントリモータコントローラ23に送られる。さらに、コンピュータ26は、電動式テーブル36を制御して対象15をガントリ12内に位置決めするテーブルモータコントローラ34を動作させる。
【0014】
本発明は、放射線量を低減するためにCTシステムの管電圧を選択する方法を提供する。具体的には、図2を参照すると、例えば図1A及び1Bに示したシステムを使用して、線量効率評価プロセスを用いて放射線量を低減させる自動管電圧選択法を提供する。この方法は、スキャンされた投影放射線写真を取得する処理ブロック202から開始し、これにより自動管電流変調及び自動管電圧選択の基礎を提供する。
【0015】
従来の自動管電流変調においては、各投影角での対象の減衰レベルに基づいて管電流が変調される。変調を行う目的は、適切な管電流を用いてCT画像に所望ノイズレベルを生じさせることである。したがってノイズレベルは自動管電流変調に用いられる画質指標である。
【0016】
X線減衰はA(d)=exp(μd)で定義され、管電流を減衰経路長dに関連付ける一般的な簡潔化された管電流変調モデルは以下のように表わされる。
【0017】
【数1】
【0018】
ここで、I(d)及びI(d0)はそれぞれ減衰経路長d及びd0についての管電流を示し、減衰経路長d0は基準管電流I(d0)についての基準減衰経路長である。さらに、μは経路長に沿った平均線形減衰係数であり、xは管電流変調強度である、x=1のとき、経路長に関係なく各投影内で一定ノイズσ(d0)が維持される。x<1のとき、ノイズレベルは、減衰経路長が基準長d0よりも短いときにσ(d0)よりも小さく、減衰経路長が基準長d0よりも長いときにσ(d0)よりも大きい。
【0019】
投影データの各セット内のノイズ(添え字iを付す)は、対数にされた後、以下のように入射光子数及び減衰に関連付けることができる。
【0020】
【数2】
【0021】
ここでN0iは管電流に比例すると仮定する。
【0022】
したがって、式1で定義された管電流変調を用いて、減衰経路長dでの投影データ内のノイズが以下のように与えられる。
【0023】
【数3】
【0024】
画像ノイズと投影データ内ノイズ間の関係は、通常複雑で且つ再構成アルゴリズム及びスムージングフィルタに依存する関数である。この関係は、画像の中心における画素ノイズのみを考慮することにより簡潔化でき、この画素ノイズは各投影におけるノイズと以下のように関連付けられる。
【0025】
【数4】
【0026】
ここで、
【数5】
は、与えられた対象寸法であり、diはi番目の投影ビューでのアイソセンターを通過するX線経路長である。これにより、対象寸法を簡潔化して表わすことができる。簡潔化モデルを用いて、一部の研究者は、与えられた全放射線量即ち固定された全入射光子数について変調強度xが0.5のときに最小の画像ノイズが得られるとの結論に至った。
【0027】
コントラスト対ノイズ比(CNR)を画質指標として用いてもよい。もし各投影における造影剤物質の減衰がexp(μcdc)同じに維持されるならば、副鼻腔撮影図空間内のコントラストはC=(μc−μw)dcであり、これは背景経路長dとは無関係である。したがって、投影内のCNRは以下のように与えられる。
【0028】
【数6】
【0029】
管電圧が固定されるとコントラストが固定される。したがって、管電流を変調するためにCNRを画質指標として使用することは、ノイズを画質指標として使用することと同じである。管電圧をさらに各投影ビューについて変調できる場合は、コントラストは管電圧の関数でありC(kV)=[μc(kV)−μw(kV)]dcで与えられる。従って投影内のCNRは以下のように表わされる。
【0030】
【数7】
【0031】
異なる管電圧におけるCNRが各経路長dについて基準管電圧と同じ場合は以下のように表わされる。
【0032】
【数8】
【0033】
各投影ビューについて、もし選択された管電圧が、基準管電圧に応じて定義された所望CNRを達成するために最も放射線効率が良いものであるとき、全放射線量が最も少ない。これはいわば自動管電流変調であり、管電圧がスキャン中に動的に変調され、これにより各投影ビューについてCNRレベルを同じに維持する。しかしながら、このストラテジーは、臨床設定に適用した場合に数々の理由からうまくいかない。管電圧がシングルスキャン中に変化しているとき、各ボクセル要素の減衰係数もまた投影角の関数として変化する。この場合、減衰係数のマップ、したがって再構成されようとしている画像は、投影角の関数となり、画像再構成はデータの不一致により極めて困難となる。各kVについて完全なビームハードニング補正をしない限り、管電圧変調を管電流変調と同じように実行することはできない。したがって、本明細書で提示する自動管電圧変調のストラテジーは管電圧がシングルスキャン中に変化しないと仮定する。しかしながら、以下に記載する減衰レベル及びノイズ制約パラメータに基づいて最も線量効率が良い管電圧を決定するための一般的なアイディアは、管電圧が各投影角で変調された場合でもうまくいく。
【0034】
対象寸法の簡潔化された表現は、以下の様に定義される。
【0035】
【数9】
【0036】
ここで、diは、i番目の投影ビューにおいてアイソセンターを通るX線経路長である。例えばヨウ素、カルシウム又は軟組織などの特定の物質の背景物質に対するコントラストはC(Ωd)で示され、これは対象寸法と共に変化するコントラストの関数である。したがって、CNRは以下のように与えられる。
【0037】
【数10】
【0038】
与えられた対象寸法Ωdについての所望CNRを提供する最も線量効率が良い管電圧を見つけるために、対象寸法についての基準管電圧及び放射線量により定義される所望CNR、CNR(Ωd,kVref,Dref)を考慮に入れることができる。したがって、同じ値のCNRを達成するための最も低い放射線量を使用する管電圧は、以下のように表すことができる。
【0039】
【数11】
【0040】
この方針は、以下の条件下においてどの管電圧で最小Dが得られるかを考慮することによって、別の表現で表わすことができる。
【0041】
【数12】
【0042】
この式を書き換えることにより以下の式を得る。
【0043】
【数13】
【0044】
したがって、σ2(Ωd,kV,D)=k(Ωd,kV)/Dであると仮定することにより、以下の式が得られる。ここで、k(Ωd,kV)は実験的に決定される係数である。
【0045】
【数14】
【0046】
管電圧での相対線量を表わす相対線量因子(RDF)を定義することができる。またRDFを具体的な対象寸法についての線量効率εに関連付けることができ、これを用いて所望の画質指標を定義することができる。例えば、上記したように、CNRを画質指標として使用した際は、RDFは以下の様に定義される。
【0047】
【数15】
【0048】
したがって、基準管電圧でのCNRと同じCNRを維持するための別の管電圧についての線量は、以下のように表わされる。
【0049】
【数16】
【0050】
このことを念頭において、ヨウ素CNRなどの画質指標についての管電圧の相対線量効率を定量化することが可能となる。もし、例えば基準管電圧が120kVであるときは、対象寸法Ωdについて、RDFは140kVにおいて1.2である。これは、120kVのときと同じ画質を得るためには、140kVにおいて放射線量が20%高くなることを意味する。同様に、もしRDFが80kVにおいて0.5の場合には、120kVと同じ画質を得るためには、80kVにおいて放射線量が50%低くなる。
【0051】
しかしながら、ヨウ素CNRだけでは必ずしも良い画質指標とはならず、なぜならいくつかの臨床応用、例えば低管電圧でのコントラスト強調が高管電圧でのものよりも非常に良好でも低管電圧ではノイズが非常に大きい状況、においては、ヨウ素CNRを一定に維持するのが望ましくないからである。したがって、一般的な画質指標は、以下の様に定義することができ、臨床要求に応じて画像ノイズを調整するためにさらなる変数が与えられている。
【0052】
【数17】
【0053】
ここで、αを調整することにより基準管電圧でのノイズの状態を変えることができる。これにより、以下の式が与えられる。
【0054】
【数18】
【0055】
したがって、目標画質を達成するための各管電圧におけるRDFは、以下の様に定義することができる。
【0056】
【数19】
【0057】
再び図2を参照すると、特に処理ブロック204において、基準管電圧及びCTスキャン法が選択される。これは、例えばシーメンス製スキャナにおいては、自動管電流変調CAREDose4Dがアクティブの場合に品質基準mAs(QRM)を選択することを含む。GE製スキャナにおいては、AutomA又はSmartmAがアクティブの場合にノイズ指標を選択することを含む。スキャンされた投影放射線写真により提供される減衰情報に基づき、スキャナは、各投影角及びスキャン位置についての管電流を自動測定して、CTDIvolで表わされる全放射線量を得ることができる。もし自動管電流変調がアクティブでない場合は、スキャンのために一定管電流を用いてもよい。
【0058】
処理ブロック206において、ノイズ制約パラメータαが選択される。ノイズ制約パラメータは、実行されるCTスキャンのタスクに基づくと考えられる。例えば、CT血管造影図は、α=1.5〜2.0などのノイズ制約が広いヨウ素CNRを伴ってもよく、このことは、ヨウ素CNRが同等又は向上したことを示し、そしてノイズが基準レベルよりも50〜100パーセント高くてもよいことを示す。コントラストが強調された胸部、腹部及び骨盤の検査においては、α=1.1〜1.25などのわずかなノイズ制約を用いるヨウ素CNRを用いてもよい。コントラストが強調されていない胸部、腹部及び骨盤の検査においては、α=1.0などの厳しいノイズ制約を用いるヨウ素CNRを用いてもよく、そしてCT筋運動記録においては、ノイズ制約がα=1.2〜1.5であるヨウ素CNRを用いてもよい。
【0059】
処理ブロック208において、減衰レベル及び選択されたノイズ制約パラメータなどのスキャンパラメータに基づいてRDFが作成される。例えば、対象寸法、選択されたノイズ制約パラメータ及び基準管電圧に基づいて、式17を用いて管電圧の範囲についてRDFが算出される。コントラストとノイズの情報は、それぞれC(Ωd,kV)及びk(Ωd,kV)により表わされ、ファントム測定から作成される数学的モデル又はルックアップテーブルを用いて決定される。一般的に、所望画質を達成するための最も線量効率が良い管電圧は、RDFが最小である管電圧により与えられる。したがって、処理ブロック210において、相対線量効率が最も高い管電圧即ちRDFが最小である管電圧が選択され、そして関連する放射線量が、基準管電圧での元のCTDIvolにRDFを掛け算することにより決定される。その後、各管電圧でのCTDIvolを生じるmA設定(mA、mAs、有効mAs、ノイズ指標又は品質基準mAs)が、処理ブロック212において算出される。
【0060】
決定ブロック214において、選択された管電圧を用いて線量レベルが実用上達成可能か否かを決定するために、CTシステムパラメータ及びスキャン時間がチェックされる。もし達成可能であれば、処理ブロック216でこの管電圧を用いたスキャンが実行され、スキャン品質基準管mAs(QRM)又はノイズ指標が調整されて、これにより自動管電流変調が用いられた場合に所望放射線量レベルが提供される。もし、決定ブロック214において、線量が達成可能でなければ、次に高い相対線量効率即ち次に小さいRDF値を有する管電圧が、処理ブロック218で選択され、そしてこれに対応する管電流が処理ブロック212で算出される。もし、決定ブロック214において、この管電圧値が許容範囲内であるとされたならば、処理ブロック216において上記のとおりスキャンが実行される。そうでなければ、適切な管電圧が決定されるまでこのサイクルが繰り返される。
【0061】
したがって、本発明は、各管電圧における相対線量効率を直接定量化する方法を提供し、各管電圧について算出された線量節減又は線量浪費に基づき最適な管電圧を選択するための容易なメカニズムを提供する。これにより、対象寸法及び他のスキャンパラメータに基づいて、容易且つ有効な線量低減が達成される。
【0062】
本発明の一般化された画質指標「ノイズ制約ヨウ素CNR」は、異なる診断タスクのさまざまな画質要求を考慮にいれる。RDFは通常、目標画質を決定するために使用される画質指標に依存する。ノイズが画質指標の役割を果たし、各減衰レベルについての所望ノイズレベルを得るために管電流が変調されるような従来の自動管電流変調においては、自動管電圧選択のために適切な画質指標も必要であった。ヨウ素はCTにおける造影剤として一般的に使用されていることから、低い管電圧を用いる現在の研究では、ヨウ素CNRが典型的に暗に又は明示的に使用される。臨床診断では、ヨウ素によって強調される血管が主な関心であるようなCT血管造影図では、ヨウ素CNRは一般的に良い画質の指標である。しかしながら、ヨウ素CNRのみでは全ての診断タスクに適さない。例えば、コントラストが強調された胸部/腹部CT検査では、造影剤はいくつかの重要な構造を視覚化する助けとなり得るが、しかしその他の関心のある構造についてはコントラストの強調が小さくなる。この場合、一般的には画像ノイズを制約することが有益である。そのような検査において最適な管電圧を選択するために画質指標としてヨウ素CNRのみを使用すると、画質ノイズが非常に多く且つ診断の信頼性が低下した画像を生じる可能性がある。「ノイズ制約ヨウ素CNR」により一般化された画質指標はそのようなことを考慮に入れることにより、ノイズ制約パラメータにより異なる診断タスクの様々な画質要求を特徴づけて受け入れる柔軟な手段が提供される。
【0063】
一般的に、ノイズ制約パラメータαは、基準管電圧に対する新しい管電圧について許容されるノイズレベルを制御するために使用される。1に近い厳しいノイズ制約を用いた場合、ノイズは異なる管電圧選択とおおよそ整合し、低い管電圧値において線量節減の可能性が制限される。例えばα=2であるゆるいノイズ制約を用いた場合、ヨウ素による強調が向上することから、同じCNRを維持したままで非常に大きなノイズレベルが許される。したがって、より小さな対象寸法において放射線量が大きく低減する。ノイズ制約選択は臨床応用に依存すると考えられる。ヨウ素により強調された血管造影に関する研究では、血管の可視性が主な関心である。血管は低い管電圧においてヨウ素造影剤によってより良好に強調されるので、比較的高いノイズレベルが許容され、比較的大きなノイズ制約を使用することができる。あるいは、ヨウ素により強調された胸部及び腹部CT検査においてより低い管電圧値で富血管性又は乏血管性病変の顕著性が良好である一方で、ヨウ素の摂取が低いその他の多くの構造もまた診断において関心がある。したがって、過度なノイズは許容されるべきでなく、比較的厳しいノイズ制約が適用されるべきである。その他の診断タスクについてのノイズ制約パラメータの適切な値は、臨床診断において慎重に評価されるべきである。
【0064】
自動管電圧選択を臨床的に実施する際には、適切なノイズ制約パラメータを選択することに加えて、診断タスクに適切な基準管電圧での基準品質mAsレベル又はノイズ指標を手動で選択することが有益である。そのようなステップは、過度な放射線量及び画像ノイズを回避することを助ける。これらの選択は、各スキャンプロトコルについて予め設定することができる。ユーザにより与えられたパラメータに基づいて、本発明が提供する自動管電圧選択法により、与えられたスキャンについて線量効率が最も良い管電圧が選択される。
【0065】
本発明は、目標画質を達成するために角管電圧において要求される相対線量を直接的に定量化するためのシステム及び方法を提供する。ノイズレベルが画質指標の役割を果たし所望ノイズレベルを得るために管電流が変調されるようなAECシステムと同じように、自動管電圧選択のためにより適切な画質指標を定義する必要がある。ヨウ素はCT検査における造影剤として広く一般的に使用されていることから、ヨウ素CNRを画質指標として用いてもよい。しかしながら、一般的にヨウ素CNRは全ての診断タスクに適切な指標ではない。例えば、ルーチンコントラスト強調胸部/腹部CT検査では、低い管電圧でのコントラスト強調の増大は、一部の重要な構造の可視化を助けるものの、診断において同様に関心のあるその他の構造では強調が小さい。したがって、このようなタイプの臨床応用では画像ノイズが大きすぎてはならない。最適な管電圧の選択において画質指標としてヨウ素CNRのみを使用することで、得られる画像は画像ノイズが大きすぎて診断の信頼性が低下する危険性がある。したがって、本発明により一般化された画質指標であるノイズ制約ヨウ素CNRが定義されることによって異なる画質要求を有するさまざまな診断タスクに適応できる。したがって、ヨウ素CNRはこの一般化画質指標の特別なケースである。ノイズ制約パラメータは、異なる臨床応用に連続的に適用できる。
【0066】
本発明は好ましい実施形態に基づいて記載されているものの、当然ながら、それ以外の多くの同等な形態、代替的な形態、バリエーション、修正が本発明の範囲内で可能である。したがって、本発明は、上記した特定の実施形態に限定されるべきではない。
図1
図2