特許第6335850号(P6335850)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335850
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】作業用衣服の袖構造
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/08 20060101AFI20180521BHJP
   A41D 27/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A41D13/08
   A41D27/10 E
   A41D27/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-140500(P2015-140500)
(22)【出願日】2015年7月14日
(65)【公開番号】特開2017-20144(P2017-20144A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】596179944
【氏名又は名称】株式会社ワコウ
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】松田 兼一
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−140711(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3175091(JP,U)
【文献】 特開2010−261142(JP,A)
【文献】 実開平02−074314(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00−13/12
A41D20/00
A41D27/00−27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業用衣服の袖構造であって、
腕を覆う筒状の袖本体部の内周側に、腕回りに密着可能に、腕回り方向の伸縮性を有した柔軟な素材からなり、前記袖本体部の内周面に略沿うように配置される略短筒状の異物捕捉部が設けられ、
前記異物捕捉部は、その先端部側が元部より着用時の肩側に位置するように配置されて、前記元部が前記袖本体部の内周面に周方向の全域に亘って結合され、
前記異物捕捉部と前記袖本体部の内周面との間に、前記袖本体部に結合された前記異物捕捉部の元部側を底部とし、着用時の肩側に向かって開口するポケット状空隙が前記袖本体部の周方向の全域に亘って設けられ
前記異物捕捉部の先端部側の一部を前記袖本体部に結合させて、前記異物捕捉部が着用時に袖口側に向かって反転することを防止するための反転防止手段が設けられる
ことを特徴とする作業用衣服の袖構造。
【請求項2】
前記袖本体部の袖口に、腕回りに密着可能に、腕回り方向の伸縮性を有し、前記袖本体部より小径に形成される縮径袖口部が設けられることを特徴とする請求項1に記載の作業用衣服の袖構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の袖構造を備えたアームカバー。
【請求項4】
請求項1または2に記載の袖構造を備えた作業用衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業時に、体毛等の異物が作業用衣服の袖口から落下することを防止することのできる作業用衣服の袖構造に関する。
【背景技術】
【0002】
食品加工工場などでは、加工される製品に異物が混入しないよう、種々の対策がとられている。製品に混入する虞のある異物の一つに作業従事者の身体から発せられる腋毛等の体毛がある。この体毛は、作業時に作業従事者が着用する衣服の袖口から落下して被作業物である製品に混入するものと考えられており、作業用衣服の袖に体毛落下を防止する仕様を施したものが知られている。
【0003】
例えば特許文献1は、短筒状に形成された布材からなる体毛落下防止部材の一端側を袖の袖口付近の内周側に縫い付けるとともに、同体毛落下防止部材の他端側に袋状のゴム通しを形成し、該ゴム通し内にゴム紐を通してゴム紐の弾力により該他端側をすぼめることにより体毛落下防止を図った作業用衣服の袖構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−152201号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の袖構造では、体毛落下防止部材はゴム紐により先端側をすぼめられているのみで、作業従事者の動きに伴い、体毛落下防止部材と袖の間に隙間ができる場合があり、その際に体毛等の異物がその隙間から噴出してしまう虞があるため、確実に体毛等の異物の袖口からの落下を防止できるまでには至っていなかった。
【0006】
そこで本発明は、より確実に衣服の袖口からの異物の落下を防止することができ、且つ着用感に優れた作業用衣服の袖構造を提供することを目的とする。なお、本明細書において作業用衣服とは、身頃に袖のついた一般的な作業着、背中側で紐を結ぶタイプのかっぽう着型衣服の他、腕だけを覆うアームカバー等、作業用に着用される衣服であって腕を覆う部位を備えるすべてのものを含む概念とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業用衣服の袖構造は、
腕を覆う筒状の袖本体部の内周側に、腕回りに密着可能に、腕回り方向の伸縮性を有した柔軟な素材からなり、前記袖本体部の内周面に略沿うように配置される略短筒状の異物捕捉部が設けられ、
前記異物捕捉部は、その先端部側が元部より着用時の肩側に位置するように配置されて、前記元部が前記袖本体部の内周面に周方向の全域に亘って結合され、
前記異物捕捉部と前記袖本体部の内周面との間に、前記袖本体部に結合された前記異物捕捉部の元部側を底部とし、着用時の肩側に向かって開口するポケット状空隙が前記袖本体部の周方向の全域に亘って設けられ
異物捕捉部の先端部側の一部を袖本体部に結合させて、異物捕捉部が着用時に袖口側に向かって反転することを防止するための反転防止手段が設けられる
ことを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、作業用衣服の着用時、異物捕捉部と袖本体部の内周面との間に、袖本体部の内周面の周方向の全域に亘って肩側に向かって開口するポケット状空隙ができる一方、異物捕捉部が作業従事者の腕の全周に隙間なく密着するため、体毛等の異物が腕の上方から落ちてきたような場合でも、その異物はポケット状空隙に落ち込んで捕捉され、作業用衣服の内に留まる。このため、体毛等の異物が作業用衣服の袖口から落下して食品等の加工物を汚染することを確実に防止することができる。また、異物捕捉部は、柔軟な素材から筒状に形成されて筒状の袖本体部の内周面に沿うように配置され、着用時に広い弧面状に腕の全周に接触するため、着用者の腕と擦れるということがなく、着用感が良い。
【0009】
また、上述したような反転防止手段によれば、作業用衣服の着用時に、異物捕捉部が袖口側に向かって反転してしまい、腕回りに密着した異物捕捉部と袖本体部の内周面との間にポケット状空隙を設けるという異物捕捉部の本来の作用を奏さない事態を防止することができ、一層確実に、体毛等の異物が作業用衣服の袖口から落下することを防止することができる。
【0010】
また上述の作業用衣服の袖構造において、袖口に、腕回りに密着可能に、腕回り方向の伸縮性を有し、袖本体部より小径に形成される縮径袖口部を設けることとすれば、万が一体毛等の異物が異物捕捉部のところで捕捉されず下方に落下してきたような場合でも、縮径袖口部が手首に密着して、異物を作業用衣服内に留めるので、作業用衣服の袖口からの異物の落下を二重に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態であるアームカバーの底面図である。
図2図1のアームカバーを裏返した状態を示す図である。
図3図1のIII−III部位における端面図である。
図4図1のアームカバーの構成部材を示す平面図である。
図5図1のアームカバーの使用状態を示す図である。
図6図1のアームカバーの平面図である。
図7図1のアームカバーの右側面図である。
図8図1のアームカバーの背面図である。
図9図1のアームカバーの正面図である。
図10】本発明の他の実施形態である作業用衣服の正面図である。
図11図10の作業用衣服を裏返した状態を正面側から見た図である。
図12図10のXII−XII部位における端面図である。
図13図10の作業用衣服の背面図である。
図14図10の作業用衣服の平面図である。
図15図10の作業用衣服の底面図である。
図16図10の作業用衣服の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の望ましい実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1から図9に示す本発明に係る作業用衣服の袖構造を有するアームカバー50は、食品加工等の作業に従事する作業従事者の腕を露出させないため、あるいは作業従事者の私服の袖を汚さないために着用するものであり、筒状に形成されて腕を覆う袖本体部1と、袖本体部1の袖口50a側である下端部1aに結合され、手首を隙間なく覆い可能に袖本体部1より小径に形成された縮径袖口部7と、袖本体部1の内周側に設けられる異物捕捉部21と、を備えて構成される。
【0014】
袖本体部1は、図4に示す袖構成部材11の幅方向(腕回り方向)における両縁11a,11b相互を縫合(結合)することにより腕を通して覆い可能な筒状に構成されるもので、手首から上腕部にかけての部位を覆う程度の長さに形成される。袖本体部1は、手首を除く上腕部にかけての部位を覆うカバー部3と、着用時に上腕部に留まるように、上端部1bにおいて伸縮自在に構成される止着部5と、を備える。止着部5は、本実施形態では、袖本体部1の上端部1bに設けたゴム通し穴5aに図示しないゴム紐を通して伸縮自在に構成され、着用時にゴム紐の弾性力により腕に留まる構成としたものである。袖本体部1を構成する袖構成部材11は、用途に応じて、撥水加工、耐薬品加工等が施された合成繊維製の布帛から成る。
【0015】
縮径袖口部7は、水分等が作業従事者の腕または私服を汚すこと及び体毛等の異物が外に噴出して被作業物を汚染することを防ぐために、手首回りに密着可能に袖本体部1より小径の腕回りに伸縮可能な筒状に構成されるもので、アームカバー50の袖口50aに配置される。本実施形態では、縮径袖口部7は、止着部5とカバー部3とを構成する袖構成部材11とは別体に用意される、腕回り方向の伸縮性を有した短筒状の袖口構成部材17(図4)から構成されている。詳しくは、袖口構成部材17は、本実施形態では、吸汗性、速乾性及び通気性が高く肌触りのよい合成繊維をリブ編み等により腕回り方向において伸縮可能な状態に製編した長方形の柔軟なニット素材からなり、これを腕回り方向における両端を結合して筒状としたうえで先端側(袖口側)17aが所謂「輪」になるように二つ折りにして二重の筒状としたものを使用しており、これが袖本体部1の下端部1aに結合されている。
【0016】
図1及び2に示すように、異物捕捉部21は、筒状の袖本体部1の内周側において、袖本体部1の内周面1dに略沿うように配置される略短筒状のもので、本実施形態では、上述した縮径袖口部7の構成部材である袖口構成部材17と同様の素材、すなわち、吸汗性、速乾性及び通気性が高く肌触りのよい合成繊維を腕回り方向に伸縮可能な状態に製編した柔軟なニット素材からなる捕捉部構成部材27(図4)から構成される。捕捉部構成部材27は、このニット素材を二つ折りにして二重にしたものである。異物捕捉部21は、後述するように、この捕捉部構成部材27を、長手方向(腕回り方向)の両端27a,27bを縫合(結合)して筒状にし、これを、袖本体部1の内周面1dにおける所定の位置に縫着(結合)したものである。その際、異物捕捉部21は、捕捉部構成部材27の二つ折りになった折り目の側(所謂「輪」になった側)を先端部21dとし、この先端部21dが元部21cより着用時の肩側に位置するように配置されて、ニット素材の端末が二重に重なった元部21cが、袖本体部1の内周面1dに周方向の全域に亘って結合されている。筒状に形成される前の捕捉部構成部材27の腕回り方向における長さ寸法L1(図4)は、袖構成部材11における、異物捕捉部21の元部21cが結合される部位Pにおける腕回り方向における幅寸法L2よりも若干短く設定されており、元部21cが袖本体部1の内周面1dに結合される際、後述するようにその腕回り方向の伸縮性を利用して、若干腕回り方向に引き伸ばされた状態で袖本体部1に結合されるため、異物捕捉部21は、先端部21d側が着用時に腕の全周に密着するように、元部21cから先端部21d側に向かって若干すぼまる態様で袖本体部1の内周側に配置されることになる。
【0017】
本実施形態では、異物捕捉部21の元部21cは、着用時に、手首から肘にかけての部位である前腕部にあたる位置、具体的には、袖本体部1の下端部1aから約5cm上方に離れた位置における袖本体部1の内周面1dに、先端部21dが縮径袖口部7とは反対側の着用時の肩側を向くように結合されている。この位置は、前腕部において腕が太くなる部位であり、アームカバー50の着用時に、先端部21d側にかけてすぼまるような状態とされた異物捕捉部21の先端部21d側が腕に密着する。
【0018】
次に、実施形態のアームカバー50の製造方法を説明する。
【0019】
まず、二つ折り状態の捕捉部構成部材27を、袖構成部材11における袖本体部1の内周面1dとなる側に、異物捕捉部21の先端部21dとなる二つ折りの折り目側(上端側)27dが、肩側、すなわち袖本体部1の上端1b側となる袖構成部材11の上端部11d側を向くように配置する。そして、捕捉部構成部材27の元部27cを、腕回り方向に若干引き伸ばしつつ、袖構成部材11の所定の位置Pに縫合する。次に、袖構成部材11を、幅方向(腕回り方向)における両縁11a,11bを揃えて重ね、袖本体部1の内周面1dとなる面、すなわち捕捉部構成部材27を結合した側の面が外側を向くように二つ折りにし、両縁11a,11b相互を縫合して縫合部1cを設けて筒状とする。このとき、捕捉部構成部材27の腕回り方向における両端部27a,27bも縫合部1cにより袖構成部材11の両縁11a,11bと共に縫合する。これにより、袖構成部材11が筒状の袖形に形成され、異物捕捉部21も両端部27a,27b相互が結合されて筒状に形成される。ついで、袖構成部材11の肩側となる上端部11dを折り曲げる等してゴム通し穴5aを設け、図示しないゴム紐を通して止着部5を作り、袖本体部1を完成させる。次に、二重筒状の袖口構成部材17を、二つ折りにした折り目の側が先端側17aとなるように、折り目側とは反対側のニット素材の端末が二重に重なった側である元部17bを袖本体部1の下端部1aに縫合する。そして内周面1dが内側を向くようにアームカバー50の表裏を反転させれば、図1,2及び図6から9に示すアームカバー50が完成する。なお、捕捉部構成部材27を袖構成部材11に結合した際の縫い代、袖構成部材11の両縁11a,11bを縫合した際の縫い代、及び袖口構成部材17を袖構成部材11に結合した際の縫い代は、ほつれ防止及び快適な着用感とするために、バイアステープ等の縁取り材でくるむ等して適宜処理してもよい。
【0020】
こうして製造された実施形態のアームカバー50は、筒状の袖本体部1の内周側に、腕回り方向に伸縮可能な素材からなり、袖本体部1の内周面1dに略沿うように配置される略短筒状の異物捕捉部21を備える。異物捕捉部21は、その先端部21d側が元部21cより着用時の肩側に位置するように配置されて元部21cが袖本体部1の内周面1dに周方向の全域に亘って結合され、異物捕捉部21と袖本体部1の内周面1dとの間に、図3及び5に示すように、袖本体部1に結合された異物捕捉部21の元部21c側を底部33aとし、着用時の肩側に向かって開口するポケット状空隙33が袖本体部1の周方向の全域に形成される構成としている。この構成によれば、アームカバー50の着用時、図5に示すように、異物捕捉部21と袖本体部1の内周面1dとの間に袖本体部1の内周面の周方向の全域に亘ってポケット状空隙33ができる一方、異物捕捉部21における先端部21d側が作業従事者の腕の全周に隙間なく密着するため、体毛等の異物が腕の上方から落ちてきたような場合でも、その異物はポケット状空隙33に落ち込んで捕捉され、アームカバー50内に留まる。このため、体毛等の異物がアームカバー50の袖口50aから落下して食品等の加工物を汚染することを確実に防止することができる。また、異物捕捉部21は、柔軟な素材から筒状に形成されて筒状の袖本体部1の内周面1dに沿うように配置されるため、着用時に広い弧面状に腕の全周に接触し、着用者の腕と擦れるということがないから、着用感が良い。
【0021】
本実施形態のアームカバー50には、異物捕捉部21の先端部21d側の一部を袖本体部1に結合させて着用時の異物捕捉部21が袖口50a側に向かって反転することを防止するための反転防止手段31(図1から3参照)が設けられている。本実施形態の反転防止手段31は、上述したように、製造工程において、捕捉部構成部材27の腕回り方向の両端27a,27bが、袖構成部材11の幅方向の両縁11a,11b相互が縫合される際に共縫いされて、異物捕捉部21の先端部21d側の一部が袖本体部1に結合されることにより構成される。もし反転防止手段31がなく、筒状の袖本体部1の内周面1dに短筒状の異物捕捉部21が元部21のみにて結合される構成とした場合、袖本体部1の上端部1b側から手を入れてアームカバー50を着用する際、異物捕捉部21の先端部21d側が腕に接触した状態でさらに腕をアームカバー50の下方に移動させれば、柔軟な素材からなる異物捕捉部21は、腕に接触したまま腕と共に下方へ移動し、先端部21d側が袖口50aに向くように、袖口側に向かって反転する可能性がある。異物捕捉部21は袖本体部1の内周側にあって外側から視認できず、また柔軟なニット素材から構成されて着用感に優れ、反転した場合でも違和感を感じさせ難いために、着用者が異物捕捉部21の反転に気付かずに作業を継続すれば、異物捕捉部21と袖本体部1の内周面1dとの間に、異物をアームカバー50内に留めておけるはずのポケット状空隙33ができずに、異物捕捉部21の本来の作用効果が奏されなくなる虞がある。したがって、本実施形態のように、異物捕捉部21の先端部21d側の一部を袖本体部1に結合させる反転防止手段31が設けられれば、着用時に異物捕捉部21が袖口50a側に向かって反転することを防止することができ、一層確実に、体毛等の異物がアームカバー50の袖口50aから落下することを防止することができる。しかしながら、このような効果を考慮しなければ、反転防止手段を設けずに、略短筒状の異物捕捉部21を、先端部21d側が元部21cより着用時の肩側に位置するように配置して元部21cを袖本体部1の内周面1dに結合するのみとしてもよい。
【0022】
なお、反転防止手段31の他の構成としては、例えば、予め筒状に形成された袖本体部1の内周側に、予め短筒状に形成された捕捉部構成部材21の元部21cのみを筒縫いにより結合させたうえで、スナップや面ファスナー等を利用して異物捕捉部21の先端部21d側の一部を袖本体部1に結合したり、先端部21d側の一部を、別途、腕回り方向に沿ってあるいは袖本体部1の軸方向に沿って、袖本体部1に縫着すること等が考えられる。ただし、本実施形態のように、袖本体部1を筒状に形成する際に、捕捉部構成部材27を共縫いして反転防止手段31を設けることとすれば、別途の工程を経ずに反転防止手段31を設けることができて製造工程を複雑化させずに済む。
【0023】
また、本実施形態のアームカバー50は、袖口50aに、腕回りに密着可能に、腕回り方向に伸縮性を有し、袖本体部1より小径に形成された縮径袖口部7を備えるため、万が一体毛等の異物が異物捕捉部21のところで捕捉されず下方に落下してきたような場合でも、縮径袖口部7が手首に密着して、異物をアームカバー50内に留めるので、アームカバー50の袖口50aからの異物の落下を二重に防止することができる。
【0024】
上述した作業用衣服の袖構造は、図10から図16に示すような袖付きの作業用衣服60の袖部61にも勿論適用可能である。この袖部61は、身頃63から連なり腕を覆う筒状の袖本体部1Aの内周側に、上述したアームカバー50におけるのと同様の、腕回り方向の伸縮性を有した柔軟な素材からなる短筒状の異物捕捉部21が、袖本体部1Aの内周面1dに略沿うように配置されている。異物捕捉部21は、先端部21dが元部21cより着用時の肩側に位置するように配置されて、元部21cが、袖本体部1Aの内周面1dに周方向の全域に亘って結合されている。なお、袖部61は、その構成部材を筒状の袖形の袖本体部1Aに形成する際の縫合部1cを、図11図14及び図16に示すように、袖山側(腕の上面側に来る側)に有している。これは、縫合部が腕の下面側に来る位置にある場合に、作業中に袖部61に付着した水分が下方に滴って、縫合部から染み込んで着用感を悪化させることを避けるための構成である。
【0025】
この作業用衣服60の着用時には、異物捕捉部21と袖本体部1Aの内周面1dとの間に、図12及び図13に示すように、袖本体部1Aに結合された異物捕捉部21の元部21c側を底部33aとし、肩側に向かって開口するポケット状空隙33が、袖本体部1Aの周方向の全域に亘ってできる一方、異物捕捉部21における先端部21d側が作業従事者の腕の全周に隙間なく密着するため、体毛等の異物が腕の上方から落ちてきたような場合でも、その異物はポケット状空隙33に落ち込んで捕捉され、袖部61内に留まる。このため、体毛等の異物が作業用衣服60の袖口61aから落下して食品等の加工物を汚染することを確実に防止することができる。また、異物捕捉部21は、柔軟な素材から筒状に形成されて筒状の袖本体部1Aの内周面1dに沿うように配置されるため、着用時に広い弧面状に腕の全周に接触し、着用者の腕と擦れるということがないから、着用感が良い。
【0026】
また、この異物捕捉部21にも、上述のアームカバー50と同様、縫合部1cにより袖本体部1Aが筒状に形成される際に異物捕捉部21の構成部材が共縫いされることにより先端部21d側の一部を袖本体部1Aに結合させてなる反転防止手段31(図10から図12参照)が設けられており、着用時に、異物捕捉部21が袖口61a側に反転してしまうことが防止される。そして、この袖部61も、上述のアームカバー50と同様に、袖口61aに、腕回りに密着可能に、腕回り方向に伸縮性を有し、袖本体部1Aより小径に形成された縮径袖口部7を備え、体毛等の異物が袖口61aから落下することを異物捕捉部21と共に二重に防止している。
【0027】
なお、縮径袖口部の構成としては、上述の実施形態のように、袖構成部材11とは別体の、腕回り方向の伸縮性を有した筒状の袖口構成部材17を袖本体部1,1Aに結合させるほか、別体の部材を用いずに、長さを延長した袖本体部1,1Aの下端部に、上述のアームカバー50における止着部5と同様の態様で、細いゴム紐あるいは板状のゴムを通したゴム通し部を設けたり、長さを延長した袖本体部1,1Aの下端部に、ゴム糸やシャーリングテープ等を利用してシャーリング加工を施したり等することにより、腕回りに密着可能に、袖本体部1,1Aより小径に形成された縮径袖口部7を設けることも考えられる。また、本発明の袖構造が上述のような作業用衣服60の袖部61に適用される場合には、縮径袖口部7を設けずに袖口を開放した状態としてもよい。そのような構成であっても、袖本体部1Aの内周側に異物捕捉部21が設けられることにより、体毛等の異物が袖部61の袖口61aから落下して食品等を汚染するのを防止することができる。
【0028】
上述のアームカバー50では、異物捕捉部21の配置位置を、着用時に手首から肘にかけての前腕部にあたる位置として説明したが、異物捕捉部21の配置位置はこれに限らず、着用時に上腕部にあたる位置としてもよい。
【0029】
また、上述の作業用衣服60では、袖部61が手首までを覆う長さを有した所謂長袖のものとして説明したが、本発明に係る作業用衣服の袖構造は、作業用衣服の袖部が短い場合にも勿論適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1,1A ・・・ 袖本体部
1d ・・・ 内周面
7 ・・・ 縮径袖口部
21 ・・・ 異物捕捉部
21c ・・・ 元部
21d ・・・ 先端部
31 ・・・ 反転防止手段
33 ・・・ ポケット状空隙
33a ・・・ 底部
50 ・・・ アームカバー
50a ・・・ 袖口
60 ・・・ 作業用衣服
61a ・・・ 袖口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16