特許第6335853号(P6335853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335853
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】手芸用紫外線硬化樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20180521BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20180521BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20180521BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C08F2/50
   C09J4/02
   C09J175/08
   C09J175/14
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-167541(P2015-167541)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2017-43703(P2017-43703A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2017年8月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】野依 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 拓
【審査官】 藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−156387(JP,A)
【文献】 特表2002−512585(JP,A)
【文献】 特開2001−316434(JP,A)
【文献】 特開平08−001274(JP,A)
【文献】 特開2006−057025(JP,A)
【文献】 特開2009−237284(JP,A)
【文献】 特開2005−290065(JP,A)
【文献】 特開2011−212344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60、283/01、90/00−290/14、 299/00−299/08
C09J 1/00−5/10、9/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブローチや小物などのアクセサリーを自作するために使用する紫外線硬化樹脂組成物
であって、数平均分子量が1,000〜7,000でありポリエーテル骨格を有する2官能のウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、単官能メタクリレートモノマーまたは芳香族アクリレートモノマーまたは極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、を含む紫外線硬化樹脂組成物であって、(A)成分の含有量が全組成物100重量部に対し50〜95重量部である紫外線硬化樹脂組成物。
【請求項2】
前記単官能メタクリレートモノマーまたは芳香族アクリレートモノマーまたは極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマー(B)が、3官能以上を含まない、請求項1の紫外線硬化樹脂組成物
【請求項3】
前記単官能メタクリレートモノマーまたは芳香族アクリレートモノマーまたは極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマー(B)の極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマーが、脂肪族環式または脂肪族直鎖構造である、請求項1または2の紫外線硬化樹脂組成物。
【請求項4】
前記数平均分子量が1,000〜7,000でありポリエーテル骨格を有する2官能のウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)のポリエーテル骨格が、ポリエチレングリコールエーテルまたはポリテトラメチレングリコールエーテルである、請求項1から3のいずれかの紫外線硬化樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブローチや小物などのアクセサリーを自作するために使用する紫外線硬化樹脂において、硬化性に優れると共に硬化する時の反応熱により白煙や異臭を発する事がなく、また硬化後の外観も透明性に優れ黄変がほとんど無い硬化物となる、アクリル系紫外線硬化樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル系の光硬化型樹脂は、プラスチックフィルムやプラスチック成型物表面に特別な性能を付与するために多くの分野で使用されている。例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布して高硬度を付与したハードコートフィルムは、タッチパネル製品で大量に使用されており、また当該フィルムに粘性を付与した粘着フィルムはフラットパネルディスプレイ製品で最終製品をはじめ、製造工程における保護フィルムとしても使用されている。
【0003】
こうしたプラスチック表面に薄膜で塗布し、特別な性能を付与する分野以外でも、アクリル樹脂が持つ硬さや透明性を生かし、ブローチや小物などのアクセサリーを自作するための樹脂として使用されている(特許文献1)。こうした用途では光硬化させるために工業的に使用される専用露光設備を用いるのではなく、太陽光や市販されているブラックライト等を使用するため、これらの光源でべとつきなどを残さず充分に硬化するような硬化特性が要求される。また一般家庭で使用されるため臭気は低いほうが好まれ、更に厚みのある硬化物となるため、硬化後は硬化収縮による変形や黄変が少ないという特性も求められているが、こうした要求を全般的に満たすものがなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-264184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ブローチや小物などのアクセサリーを自作するために使用する紫外線硬化樹脂において、硬化性に優れると共に硬化する時の反応熱により白煙や異臭を発する事がなく、また硬化後の外観も透明性に優れ黄変がほとんど無い硬化物となる、アクリル系紫外線硬化樹脂組成物を提供する事にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ブローチや小物などのアクセサリーを自作するために使用する紫外線硬化樹脂組成物であって、数平均分子量が1,000〜7,000でありポリエーテル骨格を有する2官能のウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、単官能メタクリレートモノマーまたは芳香族アクリレートモノマーまたは極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)と、を含む紫外線硬化樹脂組成物であって、(A)成分の含有量が全組成物100重量部に対し50〜95重量部である紫外線硬化樹脂組成物を提供する。
【0007】
また、請求項2の発明は、前記単官能メタクリレートモノマーまたは芳香族アクリレートモノマーまたは極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマー(B)が、3官能以上を含まない、請求項1の紫外線硬化樹脂組成物を提供する。
【0008】
また、請求項3の発明は、前記単官能メタクリレートモノマーまたは芳香族アクリレートモノマーまたは極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマー(B)の極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマーが、脂肪族環式または脂肪族直鎖構造である、請求項1または2の紫外線硬化樹脂組成物を提供する。
【0009】
請求項4の発明は、前記数平均分子量が1,000〜7,000でありポリエーテル骨格を有する2官能のウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)のポリエーテル骨格が、ポリエチレングリコールエーテルまたはポリテトラメチレングリコールエーテルである、請求項1から3のいずれかの紫外線硬化樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、硬化性に優れると共に硬化する時の反応熱により白煙や異臭を発する事がなく、また硬化後の外観も透明性に優れ黄変がほとんど無い手芸用紫外線硬化樹脂として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の紫外線硬化樹脂組成物の構成は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)と、アクリレートモノマー(B)と、光重合開始剤(C)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0012】
本発明に使用されるウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)は、ポリオールとジイソシアネートを付加反応して得られる化合物の両末端に(メタ)アクリレートを付加させて生成され、分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有するものである。官能基が3つ以上では、反応速度が速やく発熱量が大きくなるため、発煙したり変形しやすくなり不適である。数平均分子量は1,000〜7,000のオリゴマーであり特に1,000〜5,000が好ましい。分子量が1,000未満では得られる成形体の凝集力が小さいため脆くなり、7、000よりも大きくなると粘度が高くなるため作業がしづらくなりまた硬化性も落ちる。なお数平均分子量(以下「Mn」という。)は、ゲル透過クロマトグラフィー(カラム:TSKgel SuperHZ1000、SuperHZ2000、SuperHZ3000 4.6*150を各1本、溶離液:テトラヒドロフラン、標準サンプル:TSKポリスチレンスタンダード)により測定する事ができる。
【0013】
前記ポリオールにはポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等があるが、硬化性および黄変のしにくさからポリエーテル骨格を含有する必要があり、またポリエチレングリコール(以下「PEG」という。)、ポリプロピレングリコール(以下「PPG」という。)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下「PTMG」という。)等のジオールが好ましい。ポリオールと付加反応させるジイソシアネートの代表的なものとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート等がある。
【0014】
ポリエーテル骨格を持つウレタン(メタ)アクリレート樹脂の市販品としてはニューフロンティアR−1220(第一工業製薬製、Mn2,300)、SUA−023(亜細亜工業製、Mn1,000)、SUA−017(亜細亜工業製、Mn4,600)等がある。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の組成物全体100重量部に対する配合量は50〜95重量部である。50重量部未満では硬化収縮が大きくなるため変形したり、また反応性が高くなるため白煙を発しやすくなり、95重量部超では粘度が高くなりすぎ作業性が低下しまた光重合開始剤の溶解性も低下する。
【0015】
本発明に使用されるアクリレートモノマー(B)は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(A)の反応性希釈剤であると同時に、重合体を形成する主要成分である。反応性が高すぎると、樹脂の発熱により白煙を発したり、熱変形が生じるため、反応スピードをコントロールしやすい単官能メタクリレートモノマーまたは芳香族アクリレートモノマーまたは極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマーであり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
単官能メタクリレートモノマーの例としては、アルキルエステルとしてプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、ラウリルメタクリレートが、水酸基を含有するものとして2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレートが、アミノ基を含有するものとしてメタクリルアミド、N,N‐ジメチルメタクリルアミド、N,N‐ジエチルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミドが、脂肪族環式としてイソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、ジシクロペンテニルメタクリレート、アダマンタニルメタクリレートなどがあげられる。
【0017】
また芳香族アクリレートモノマーの例としてはベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレートなどがあり、反応性をコントロールしやすい単官能または2官能が好ましい。
【0018】
更に極性基を持たない脂肪族アクリレートモノマーとしてはプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、アダマンタニルアクリレートなどがあげられるが、反応性をコントロールしやすい単官能または2官能であり、環式または直鎖構造を持つものが好ましい。
【0019】
本発明に使用される光重合開始剤(C)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、汎用の光重合開始剤で良い。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的には2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、ビス(2,4,6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。ラジカル重合性成分に対して、1〜10重量%配合することが好ましい。
【0020】
本発明の紫外線硬化樹脂組成物には、性能を損なわない範囲で、必要により粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤顔料、染料、光安定剤、光増感剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、及び濡れ性調整剤等の各種添加剤が含まれていても良い。
【0021】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。
【実施例】
【0022】
実施例1
遮光ビンに、前記(A)としてSUA−023(亜細亜工業製、PTMG系、Mn1,000)を、前記(B)としてライトエステルHOP(N)(共栄社化学製、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート)を、光重合開始剤(C)としてIrgacure184(BASF製)を表1に示す量入れ、撹拌脱泡機を用いて均一になるまで撹拌し実施例1の樹脂組成物を調整した。
【0023】
実施例2〜8
実施例1で用いた材料の他、前記(A)としてSUA−017(亜細亜工業製、PTMG系、Mn4,600)を、前記(B)としてライトアクリレートDCP−A(共栄社化学製、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート)およびライトエステルIB−X(共栄社化学製、イソボルニルメタクリレート)およびライトアクリレートPO−A(共栄社化学製、フェノキシエチルアクリレート)およびLA(共栄社化学製、ラウリルアクリレート)を用い、表1記載の配合にて樹脂組成物を調製した。
【0024】
比較例1〜12
実施例で用いた材料の他、ポリエーテル系ウレタンアクリレートのSUA−015(亜細亜工業製、Mn17,000、2官能)、ポリブタジエン系ウレタンメタクリレートのTE−2000(日本曹達製、Mn3,100、2官能)、ポリエステル系ウレタンアクリレートのUA−122P(新中村化学工業製、Mn1,300、2官能)、ポリカーボネート系ウレタンアクリレートのUN−9000PEP(根上工業製、Mn3,600、2官能)、イソシアヌレート系ウレタンアクリレートのRUA−049X(亜細亜工業製、Mn1,500、3官能)、脂肪族ウレタンアクリレートのEBECRYL8254(ダイセルオルネクス製、Mn1,500、6官能)を、その他6官能アクリレートモノマーのDPHA(日本化薬製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)、4官能アクリレートモノマーのライトアクリレートPE−4A(共栄社化学製、ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、3官能アクリレートモノマーのFA−731AT(日立化成製、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート)、単官能アクリレートモノマーのACMO(KJケミカルズ製、アクリルモルフォリン)を用い、表1記載の配合にて比較例1〜12の樹脂組成物を調製した。
【0025】
硬化物の作製
紫外線硬化樹脂2gを直径26mm、深さ10mmのシリコーン型に投入し、樹脂面より5cmの高さから、市販品のブラックライト照射装置スーパーレジンUVクリスタルランプを用い、波長365nmにおける照度2〜4mW/cm2の光量で5分間照射して硬化させた。その後シリコーン型から硬化物を取り出し、23±2℃にて30分放置して作製した。
【0026】
表1

【0027】
評価方法は以下の通りとした。
【0028】
粘度:東機産業製のコーンプレート型粘度計RC−550を用い、コーン角3°R17.65で25±1℃、回転数0.5〜50rpmで測定した。
【0029】
発煙性:前記硬化物を作製する時に、白煙の発生有無を目視で確認し、白煙の発生が無い場合は○、ある場合は×とした。
【0030】
硬化性:硬化物のブラックライト照射面のべたつき度合いを指触により確認し、べたつきが無い場合は○、ある場合は×とし、変形がひどく測定できない場合は測定不可とした。
【0031】
成型性:前記硬化物を作製する時に、硬化前と硬化後の形状変化を目視で確認し、形状変化が無い場合は○、ある場合は×とした。
【0032】
評価結果を表2に示す。
表2

【0033】
実施例の紫外線硬化樹脂組成物は各評価結果いずれも良好であった。一方、比較例の紫外線硬化樹脂組成物においては、発煙性、硬化性および成型性のいずれかの評価で本願発明に適さないものであった。