(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切換弁は、前記補助流体圧ポンプから供給されるパイロット圧によって切り換えられるパイロット操作式の切換弁であることを特徴とする請求項5に記載のミキサドラム駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ミキサ車では、生コンクリートの分離を防止するために、走行中、ミキサドラムを回転させている。また、近年では、アイドリングストップ機能を備えたミキサ車が求められている。
【0006】
特許文献1に記載のミキサ駆動装置をそのままアイドリングストップ機能を備えたミキサ車に適用すると、アイドリングストップ時には走行用エンジンが停止してしまうため、走行用エンジンによって駆動される油圧ポンプも停止してしまう。このため、特許文献1に記載のミキサ駆動装置では、アイドリングストップ時に油圧ポンプによってミキサドラムを回転させることができない。
【0007】
そこで、特許文献2に記載された駆動装置のように、バッテリを動力源とする電動機によって駆動される補助油圧ポンプを設けて、この補助油圧ポンプによって油圧モータを回転させることが考えられる。
【0008】
しかしながら、特許文献
2に記載のミキサ駆動装置では、アイドリングストップ中、切換弁が連通位置に維持される。このため、補助ポンプから吐出された作動油が、切換弁を通じて油圧ポンプに流れ込んでしまい、補助ポンプから吐出された作動油の流量が減少してしまうおそれがあった。このようにして補助ポンプから吐出された作動油が流量が減少してしまうと、ミキサドラムの回転が不足してしまう。
【0009】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、アイドリングストップ中、補助流体圧ポンプから吐出された作動流体を安定してミキサドラムに供給できるミキサドラム駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、車両に搭載され生コンクリートを積載可能なミキサドラムを回転駆動するミキサドラム駆動装置であって、車両のエンジンによって駆動される流体圧ポンプと、流体圧ポンプから吐出された作動流体によって作動してミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、流体圧ポンプから
吐出された作動流体をミキサドラムを正回転させるように流体圧モータに導く正転位置と、流体圧ポンプから吐出された作動流体をミキサドラムを逆回転させるように流体圧モータに導く逆転位置と、流体圧ポンプと流体圧モータの間の作動流体の流れを遮断する遮断位置と、のいずれかに手動によって切り換えられ、流体圧ポンプから流体圧モータへの作動流体の流れを制御する制御弁と、エンジンのアイドリングストップ時に電力によって回転する電動機と、電動機の回転によって駆動されて作動流体を吐出し、流体圧モータを作動させる補助流体圧ポンプと、
アイドリングストップ時であって前記制御弁が前記正転位置になっているときに、制御弁から流体圧ポンプへ向かう作動流体の逆流を防止する逆流防止部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
第1の発明では、制御弁から流体圧ポンプへ向かう作動流体の逆流を防止する逆流防止部が設けられるので、補助流体圧ポンプから吐出された作動流体が流体圧ポンプ側へ流れ込むことが防止される。
【0012】
第2の発明は
、制御弁は、アイドリングストップ時に正転位置に維持され
、エンジンがアイドリングストップ状態から再び駆動したときにも正転位置に維持されることを特徴とする。
【0013】
第2の発明では、エンジンがアイドリングストップ状態から再び駆動したときには、制御弁が正転位置に維持されているので、補助流体圧ポンプによる駆動から流体圧ポンプによる駆動にスムーズに切り換わることができる。これにより、流体圧モータへの作動流体の供給が途切れることがないので、ミキサドラムを安定して回転させることができる。
【0014】
第3の発明は、逆流防止部は、チェック弁であって、流体圧ポンプと制御弁との間に設けられることを特徴とする。
【0015】
第3の発明では、逆流防止部をチェック弁で構成することにより、簡単な構造とすることができる。また、逆流防止部を制御する必要がないので、ミキサドラム駆動装置の制御を簡略化することができる。
【0016】
第4の発明は、逆流防止部は、チェック弁であって、制御弁が正転位置にある時のみ機能するように制御弁に設けられることを特徴とする。
【0017】
第4の発明では、逆流防止部をチェック弁で構成することにより、簡単な構造とすることができる。さらに、チェック弁は、制御弁が正転位置にある時のみ機能するため、逆転位置ではチェック弁による圧力損失の影響を受けることが無い。これにより、流体圧ポンプの効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
【0018】
第5の発明は、逆流防止部は、切換弁であることを特徴とする。
【0019】
第6の発明は、切換弁は、補助流体圧ポンプから供給されるパイロット圧によって切り換えられるパイロット操作式の切換弁であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アイドリングストップ中、補助流体圧ポンプから吐出された作動流体を安定してミキサドラムに供給できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るミキサドラム駆動装置100について説明する。
【0023】
まず、
図1を参照して、ミキサドラム駆動装置100が搭載されるミキサ車10の全体構成について説明する。
【0024】
ミキサ車10は、車両1の走行用エンジン3と、車両1に搭載され生コンクリートを積載可能なミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動するミキサドラム駆動装置100と、を備える。ミキサ車10は、ミキサドラム2内に積載された生コンクリートを運搬するものである。
【0025】
ミキサドラム2は、車両1に回転可能に搭載される有底円筒形の容器である。ミキサドラム2は、回転軸が車両1の前後方向を向くように搭載される。ミキサドラム2は、車両1の後部に向かって徐々に高くなるように、前後に傾斜して搭載される。ミキサドラム2は、その後端に開口部が形成され、開口部から生コンクリートの投入及び排出が可能になっている。
【0026】
ミキサドラム2は、ミキサドラム駆動装置100の出力軸が連結される前部と、後部の左右との三点で車両1上に支持される。ミキサドラム2の後部は、ローラ(図示省略)によって回転自在に支持される。ミキサドラム2は、走行用エンジン3を動力源として回転駆動される。
【0027】
次に、
図2及び
図3を参照して、ミキサドラム駆動装置100について説明する。
図2は、ミキサドラム駆動装置100の油圧回路を示す図である。
【0028】
ミキサドラム駆動装置100は、走行用エンジン3の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動するものである。走行用エンジン3におけるクランクシャフトの回転運動は、走行用エンジン3から動力を常時取り出すための動力取り出し機構4(PTO:Power−take−off)によってミキサドラム駆動装置100に伝達される。
【0029】
ミキサドラム駆動装置100では、作動流体として作動油が用いられる。作動油に代えて、他の非圧縮性流体を作動流体として用いてもよい。ミキサドラム駆動装置100は、走行用エンジン3によって駆動される流体圧ポンプとしての油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から吐出された作動油によって作動してミキサドラム2を回転駆動する流体圧モータとしての油圧モータ6と、油圧ポンプ5から油圧モータ6への作動油の流れを制御する制御弁8と、走行用エンジン3によって駆動され油圧ポンプ5と同軸に設けられるチャージポンプ9と、油圧ポンプ5と制御弁8との間の通路に設けられ、制御弁8から油圧ポンプ5へ向かう作動油の逆流を防止する逆流防止部としてのチェック弁14と、を備える。
【0030】
油圧ポンプ5は、動力取り出し機構4を介して走行用エンジン3から常時取り出される動力によって回転駆動される。油圧ポンプ5は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンポンプである。
【0031】
油圧モータ6は、容量が固定の斜板型アキシャルピストンモータである。油圧モータ6は、油圧ポンプ5から吐出された作動油の供給を受けて回転駆動される。油圧モータ6には、減速機7を介してミキサドラム2が連結される。油圧モータ6は、制御弁8によって正回転あるいは逆回転に切り換えられる。油圧モータ6によってミキサドラム2が正回転される場合には、ミキサドラム2内の生コンクリートが攪拌される。一方、油圧モータ6によってミキサドラム2が逆回転される場合には、ミキサドラム2内の生コンクリートが後端の開口部から外部へと排出される。なお、本実施形態では、油圧モータ6は、その容量が固定である斜板型アキシャルピストンモータとして説明したが、これに限らず、油圧モータ6はその容量が可変である斜板型アキシャルピストンモータであってもよい。
【0032】
油圧ポンプ5と油圧モータ6の間には、閉回路20が設けられ、この閉回路20を作動油が循環するようになっている。閉回路20は、油圧ポンプ5の吸込ポートと制御弁8とを接続する戻し通路(ポンプ吸込通路)21と、油圧ポンプ5の吐出ポートと制御弁8とを接続する供給通路(ポンプ吐出通路)22と、制御弁8と油圧モータ6に設けられる二つのポートのそれぞれとを接続する第1、第2給排通路23、24と、によって構成される。
【0033】
制御弁8は、油圧ポンプ5が吐出した作動油をミキサドラム2を正回転させるように油圧モータ6に導く正転位置Aと、油圧ポンプ5が吐出した作動油をミキサドラム2を逆回転させるように油圧モータ6に導く逆転位置Bと、油圧ポンプ5から油圧モータ6への間の作動油の流れを遮断する遮断位置Cと、を備える。制御弁8は、運転者が操作レバー8aを操作することによって切り換えられる。
【0034】
チャージポンプ9は、タンクTから通路25を通じて吸込んだ作動油をチャージ通路26に吐出する。この作動油は、チャージ通路26からチェック弁15を介して戻し通路21に充填される。
【0035】
チャージ通路26は、リリーフ弁50を通じてタンクTに連通する。チャージ通路26の圧力が所定値を超えて上昇すると、リリーフ弁50が開弁し、チャージポンプ9から吐出される余剰作動油はタンクTに戻される。
【0036】
チェック弁14は、油圧ポンプ5と制御弁8とを接続する供給通路22に、制御弁8から油圧ポンプ5の吐出ポート側へ向かう作動油の逆流を防止するように設けられる。
【0037】
ミキサドラム駆動装置100は、第1、第2給排通路23、24の一方に生じる負荷圧と供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)との差圧が所定値になるように調整するロードセンシング弁30と、供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)に応じて油圧ポンプ5のポンプ吐出容量を調整するするカットオフ弁40と、をさらに備える。
【0038】
ロードセンシング弁30には、パイロット圧として第1、第2給排通路23、24の一方に生じる負荷圧と供給通路22のポンプ吐出圧とが互いに対抗するように導かれる。ロードセンシング弁30は、これらの差圧が所定値になるようにアクチュエータ通路27を介してアクチュエータ5aに導かれるパイロット圧を調節する。
【0039】
ロードセンシング弁30は、アクチュエータ5aをタンクTに連通する位置Fと、アクチュエータ5aを供給通路22に連通する位置Gと、を備える。ロードセンシング弁30は、スプリング34の付勢力によって位置Fに常時付勢される。
【0040】
ロードセンシング弁30には、第1、第2パイロット圧通路31、32が接続される。第1パイロット圧通路31は、高圧選択弁33を介して第1、第2給排通路23、24の高圧側(負荷圧側)に連通する。第2パイロット圧通路32は、供給通路22に接続される。高圧選択弁33は、例えばシャトル弁が用いられる。
【0041】
ロードセンシング弁30では、第1パイロット圧通路31から導かれる負荷圧が、スプリング34の付勢力と共に位置Fに切換える方向に働き、第2パイロット圧通路32から導かれる供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)が、第1パイロット圧通路31から導かれる負荷圧とスプリング34の付勢力とに抗して位置Gに切換える方向に働く。
【0042】
カットオフ弁40には、パイロット圧として供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)が導かれる。カットオフ弁40は、ポンプ吐出圧が所定値を超えて上昇するとアクチュエータ5aに導かれるパイロット圧を高めて油圧ポンプ5のポンプ吐出容量を小さくする。
【0043】
カットオフ弁40は、アクチュエータ5aをタンクTに連通する位置Hと、アクチュエータ5aを供給通路22に連通する位置Iと、を備える。
【0044】
カットオフ弁40のパイロット圧通路41は、供給通路22に接続される。カットオフ弁40は、スプリング42の付勢力が位置Hに切換える方向に働き、パイロット圧通路41から導かれるパイロット圧(ポンプ吐出圧)がスプリング42の付勢力に抗して位置Iに切換える方向に働く。
【0045】
ミキサドラム2の駆動時、供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)が所定値以下の状況ではカットオフ弁40が位置Hに保持され、ロードセンシング弁30とアクチュエータ5aとを結ぶアクチュエータ通路27を開通させる。この状態で、ロードセンシング弁30には、パイロット圧として第一、第二給排通路51,52の一方に生じる負荷圧と供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)が互いに対抗するように導かれる。ロードセンシング弁30は、これらの差圧に応じて、アクチュエータ5aに導かれるアクチュエータ通路27の圧力を調節する。これにより、油圧ポンプ5のポンプ吐出容量が、アクチュエータ5aによって、第1、第2給排通路23、24の一方に生じる負荷圧と供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)との差圧が所定値になるように調整される。
【0046】
ミキサドラム2の駆動を停止する時には、制御弁8が遮断位置Cに切換えられ、供給通路22と第1、第2給排通路23、24との連通が遮断される。このとき、ポンプ吐出圧が所定値を超えて上昇すると、パイロット圧通路41から導かれるパイロット圧(ポンプ吐出圧)が上昇するので、カットオフ弁40は、スプリング42の付勢力に抗して位置Hから位置Iに切り換わる。これにより、アクチュエータ5aは、供給通路22に連通するので、供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)がアクチュエータ5aに導かれ、油圧ポンプ5のポンプ吐出容量は小さくなる。
【0047】
ミキサドラム駆動装置100は、図示しないバッテリに蓄電された電力によって駆動される電動機11と、電動機11の回転によって駆動されて作動油を吐出し、油圧モータ6を作動させる補助流体圧ポンプとしての補助油圧ポンプ12と、第2給排通路24とタンクTとを接続する排出通路29に設けられ排出通路29を開閉する開閉弁13と、をさらに備える。
【0048】
電動機11の出力軸は、補助油圧ポンプ12の回転軸に連結される。電動機11は、走行用エンジン3のアイドリングが停止した状態、つまり、アイドリングストップ時に駆動し、補助油圧ポンプ12を駆動する。
【0049】
補助油圧ポンプ12は、タンクTに溜められた作動油を吸い込んで補助供給通路28に吐出する。補助供給通路28に吐出された作動油は、チェック弁16を通って第1給排通路23に供給される。これにより、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油は、補助供給通路28及び第1給排通路23を通じて油圧モータ6に供給され、油圧モータ6を正回転させる。
【0050】
電動機11及び補助油圧ポンプ12は、走行用エンジン3がアイドリングストップ時に、ミキサドラム2に積載された生コンクリートの撹拌が停止しないようにミキサドラム2を回転駆動するものためのものである。
【0051】
開閉弁13は、図示しないコントローラによって制御される電磁式切換弁である。開閉弁13は、第2給排通路24とタンクTとの連通を遮断する位置Dと、第2給排通路24とタンクTとを連通する位置Eと、を備える。開閉弁13は、通常時は、D位置を保持するようにスプリングによって付勢される。開閉弁13は、アイドリングストップ時には、コントローラによって電流が印加されE位置に切り換えられる。
【0052】
以上のように構成されたミキサドラム駆動装置100の動作について説明する。
【0053】
走行用エンジン3が駆動すると、油圧ポンプ5が駆動され、供給通路22に作動油が吐出される。生コンクリートの運搬中は、運転者は操作レバー8aを操作して制御弁8を遮断位置Cから正転位置Aに切り換える。これにより、供給通路22に吐出された作動油は、チェック弁14、制御弁8、及び第1給排通路23を通じて油圧モータ6に供給され、油圧モータ6を正回転させる。
【0054】
油圧モータ6の回転は、減速機7を介してミキサドラム2に伝達され、ミキサドラム2を正回転させる。これにより、ミキサドラム2内の生コンクリートは撹拌される。油圧モータ6から排出された作動油は、第2給排通路24、制御弁8、及び戻し通路21を通って、油圧ポンプ5の吸込ポートに戻される。
【0055】
このように、走行用エンジン3が駆動しているときに、制御弁8を正転位置Aに切り換えることによって、ミキサドラム2が正回転される。これにより、生コンクリートはミキサドラム2内で撹拌され、分離することが防止される。
【0056】
走行用エンジン3が駆動中に、運転者が操作レバー8aを操作して制御弁8を遮断位置Cから逆転位置Bに切り換えると、供給通路22に吐出された作動油は、チェック弁14、制御弁8、及び第2給排通路24を通じて油圧モータ6に供給され、油圧モータ6を逆回転させる。油圧モータ6の回転は、減速機7を介してミキサドラム2に伝達され、ミキサドラム2を逆回転させる。これにより、ミキサドラム2内の生コンクリートは後端の開口部から外部へと排出される。油圧モータ6から排出された作動油は、第1給排通路23、制御弁8、戻し通路21を通って、油圧ポンプ5の吸込ポートに戻される。
【0057】
ミキサドラム2(油圧モータ6)の回転駆動時、供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)が所定値以下の状態では、カットオフ弁40は位置Hに保持され、ロードセンシング弁30とアクチュエータ5aを結ぶアクチュエータ通路27を開通する。ロードセンシング弁30は、第1、第2給排通路23、24の一方に生じる負荷圧と供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)の差圧が所定値になるように供給通路22からアクチュエータ通路27を経由してアクチュエータ5aに導かれる圧力を調節する。これにより、油圧ポンプ5のポンプ吐出容量が、アクチュエータ5aによって、第1、第2給排通路23、24の一方に生じる負荷圧と供給通路22の圧力(ポンプ吐出圧)との差圧が所定値になるように調整される。
【0058】
ミキサ車10が走行中に信号などによって停止すると、走行用エンジン3は、アイドリングが停止され、アイドリングストップ状態になる。このようにして、走行用エンジン3が停止すると、油圧ポンプ5も回転を停止するため、油圧ポンプ5によって油圧モータ6を回転駆動することができなくなる。このとき、バッテリを動力源とする電動機11によって補助油圧ポンプ12が駆動され、補助供給通路28を通じて第1給排通路23に作動油が供給される。これにより、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油は、補助供給通路28、第1給排通路23を通って油圧モータ6に供給され、油圧モータ6を正回転させる。これと同時に開閉弁13には、図示しないコントローラから電流が印加され、開閉弁13は位置Eに切り換えられる(
図3参照)。これにより、油圧モータ6から排出された作動油は、第2給排通路24、排出通路29、及び開閉弁13を通ってタンクTに戻される。
【0059】
このとき、
図3に示すように、制御弁8は正転位置Aに維持されているため、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油は、
図3の矢印に示すように、制御弁8を通って供給通路22に流れ込んでしまう。しかしながら、供給通路22にはチェック弁14が設けられているので、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油が油圧ポンプ5に流れ込むことは阻止される。したがって、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油が油圧ポンプ5に流れ込むことによって、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油の流量が減少することを防止できるので、アイドリングストップ中にミキサドラム2の回転が不足することを防止できる。
【0060】
運転者がアクセルペダルを踏むなどして、アイドリングストップ状態が解除されると、走行用エンジン3は再び駆動する。これにより、油圧ポンプ5は回転駆動され、供給通路22に作動油を吐出する。これと同時に、電動機11は停止され、コントローラから開閉弁13への電流の印加が停止される。電動機11が停止されることで、補助油圧ポンプ12から補助供給通路28への作動油の供給が停止する。また、コントローラから電流の印加が停止されることで、開閉弁13は位置Dに切り換えられるので、第2給排通路24とタンクTとの連通が遮断される。
【0061】
このようにして、油圧モータ6は、再び油圧ポンプ5から吐出された作動油によって、回転駆動される。
【0062】
以上のミキサドラム駆動装置100によれば、以下に示す効果を奏する。
【0063】
ミキサドラム駆動装置100は、制御弁8から油圧ポンプ5へ向かう作動油の逆流を防止するチェック弁14を備える。これにより、アイドリングストップ時に、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油が油圧ポンプ5側へ流れ込むことが防止される。したがって、アイドリングストップ中に、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油を安定してミキサドラム2に供給できるので、ミキサドラム2の回転が不足することを防止できる。
【0064】
ミキサドラム駆動装置100がチェック弁14を備えていない場合には、アイドリングストップ状態に切り換わる毎に制御弁8を正転位置Aから遮断位置Cに切り換えて補助油圧ポンプ12と供給通路22との連通を遮断する必要がある。特に制御弁8が手動操作形式である場合には、アイドリングストップ毎に制御弁8を遮断位置Cに切り換えることは、運転者にとって多大な負担となる。
【0065】
ミキサドラム駆動装置100は、チェック弁14を備えるので、アイドリングストップ状態に切り換わっても、制御弁8を遮断位置Cに切り換える必要がない。つまり、アイドリングストップ時に、制御弁8が正転位置Aに維持されていても、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油が油圧ポンプ5に流れ込むことを防止できる。したがって、制御弁8を切り換える作業を不要とすることができる。
【0066】
また、逆流防止部としてチェック弁14を採用することにより、簡単な構造で構成することができる。さらに、チェック弁14は制御する必要がないので、制御のための信号や配管を設ける必要がない。したがって、ミキサドラム駆動装置100を簡単な構造とすることができる。
【0067】
アイドリングストップ時に、制御弁8を正転位置Aから遮断位置Cに切り換える構成であると、走行用エンジン3がアイドリングストップ状態から再び駆動したときに、制御弁8を遮断位置Cから正転位置Aに切り換える必要があるため、補助油圧ポンプ12による駆動から油圧ポンプ5による駆動に切り換わるときにタイムラグが生じてしまう。しかしながら、ミキサドラム駆動装置100では、走行用エンジン3がアイドリングストップ状態から再び駆動したとき、制御弁8が正転位置Aに維持されているので、制御弁8を切り換える必要がない。したがって、補助油圧ポンプ12による駆動から油圧ポンプ5による駆動にスムーズに切り換えることができる。これにより、油圧モータ6への作動油の供給が途切れることがないので、ミキサドラム2を安定して回転させることができる。
【0068】
制御弁8は、切換手段として手動式のものを例に説明したが、電磁操作式のものであってもよい。この場合であっても、アイドリングストップ時に制御弁8を正転位置Aに維持したままでよいので、制御弁8を遮断位置Cに切り換える制御を不要とすることができる。したがって、制御を簡略化することができる。
【0069】
また、チェック弁14は、油圧ポンプ5と制御弁8との間に設けられているが、
図4に示すように、制御弁8が正転位置Aにある時のみ機能するように制御弁8内に設けられていてもよい。これにより、制御弁8が正転位置Aにある時は、チェック弁14は制御弁8から油圧ポンプ5へ向かう作動油の逆流を防止するように機能し、制御弁8が逆転位置Bにある時は、チェック弁14は機能しない。具体的に説明すると、通常、ミキサ車10の走行中はミキサドラム2を逆回転させることはない。つまり、アイドリングストップ時(走行中)に制御弁8が逆転位置Bに切り換えられていることはないため、逆転位置Bにおいて制御弁8から油圧ポンプ5へ向かう作動油の逆流を考慮しなくても影響はない。また、ミキサ車10の停止中などに、ミキサドラム2を逆回転させる時(制御弁8が逆転位置Bにある時)は、油圧ポンプ5から吐出された作動油はチェック弁14による圧力損失の影響を受けることなく油圧モータ6に供給される。したがって、このような構成を採用することにより、ミキサドラム2を逆回転させる時にチェック弁14の圧力損失の影響を受けることがないので、油圧ポンプ5の効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、逆流防止部としてチェック弁14を例に説明したが、
図5に示すように、逆流防止部として電磁切換弁60を採用してもよい。この場合には、開閉弁13と電磁切換弁60を同期させて制御することで、チェック弁14を採用した場合と同様に機能する。
【0071】
さらに、
図6に示すように、逆流防止部としてパイロット操作式切換弁160を採用してもよい。以下に、パイロット操作式切換弁160を用いた変形例について説明する。
【0072】
この変形例では、供給通路22にチェック弁14に代えてパイロット操作式切換弁160が設けられ、排出通路29に開閉弁13に代えて開閉弁113が設けられる。
【0073】
パイロット操作式切換弁160は、供給通路22を開放する位置Jと、供給通路22を遮断する位置Kと、を備える。パイロット操作式切換弁160は、ノーマルオープンタイプとして構成される。具体的には、パイロット圧がパイロット室160aに作用していない状態では、ばね160bの付勢力によって位置Jに保持され、パイロット圧がパイロット室160aに作用した状態では、ばね160bの付勢力に抗して弁体を移動させ位置Kに切り換えられる。パイロット室160aには、補助供給通路28におけるチェック弁16の上流側から分岐したパイロット通路161を通じてパイロット圧が供給される。
【0074】
開閉弁113には、補助供給通路28から分岐しタンクTに連通するパイロット圧排出通路162が接続される。開閉弁113は、図示しないコントローラによって開閉弁13と同様に制御される電磁式切換弁である。開閉弁113は、第2給排通路24とタンクTとを遮断するとともに補助供給通路28とタンクTとを連通する位置D1と、第2給排通路24とタンクTとを連通するとともに補助供給通路28とタンクTとを遮断する位置E1と、を備える。
【0075】
エンジン駆動時には、開閉弁113には電流が印加されていないため、開閉弁113はスプリングの付勢力によってD1位置に保持される。この状態では、補助油圧ポンプ12が停止しているため、パイロット室160aの作動油は、パイロット通路161、パイロット圧排出通路162、及び開閉弁113を通じてタンクTに排出される。これにより、パイロット操作式切換弁160が位置Jに保持され、供給通路22は開放された状態に維持される。これに対して、アイドリングストップ時(エンジン停止時)には、開閉弁113にはコントローラによって電流が印加され、開閉弁113はE1位置に切り換えられる。この状態では、補助油圧ポンプ12が駆動しているため、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油が、パイロット通路161を通じてパイロット室160aに供給される。これにより、パイロット操作式切換弁160が位置Kに切り換えられ、供給通路22は遮断された状態になる。このようにパイロット操作式切換弁160が制御されることにより、パイロット操作式切換弁160はチェック弁14と同様に機能し、アイドリングストップ時に補助油圧ポンプ12から吐出された作動油が油圧ポンプ5側へ流れ込むことを防止できる。
【0076】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0077】
ミキサドラム駆動装置100は、車両1のエンジン(走行用エンジン3)によって駆動される流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)と、流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)から吐出された作動流体によって作動してミキサドラム2を回転駆動する流体圧モータ(油圧モータ6)と、流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)から流体圧モータ(油圧モータ6)への作動流体の流れを制御する制御弁8と、エンジン(走行用エンジン3)のアイドリングストップ時に電力によって回転する電動機11と、電動機11の回転によって駆動されて作動流体を吐出し、流体圧モータ(油圧モータ6)を作動させる補助流体圧ポンプ(補助油圧ポンプ12)と、制御弁8から流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)へ向かう作動流体の逆流を防止する逆流防止部(チェック弁14、電磁切換弁60)と、を備えることを特徴とする。
【0078】
この構成によれば、制御弁8から流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)へ向かう作動流体の逆流を防止する逆流防止部(チェック弁14、電磁切換弁60)が設けられるので、補助流体圧ポンプ(補助油圧ポンプ12)から吐出された作動流体が流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)側へ流れ込むことが防止される。これにより、ミキサドラム2の回転が不足することを防止できる。
【0079】
また、ミキサドラム駆動装置100は、制御弁8は、流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)から吐出された作動流体をミキサドラム2を正回転させるように流体圧モータ(油圧モータ6)に導く正転位置Aと、流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)から吐出された作動流体をミキサドラム2を逆回転させるように流体圧モータ(油圧モータ6)に導く逆転位置Bと、流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)から流体圧モータ(油圧モータ6)への間の作動流体の流れを遮断する遮断位置Cと、を有し、制御弁8は、アイドリングストップ時に正転位置Aに維持されることを特徴とする。
【0080】
この構成によれば、エンジン(走行用エンジン3)がアイドリングストップ状態から再び駆動したときには、制御弁8が正転位置Aに維持されているので、補助流体圧ポンプ(補助油圧ポンプ12)による駆動から流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)による駆動にスムーズに切り換わることができる。これにより、流体圧モータ(油圧モータ6)への作動流体の供給が途切れることがないので、ミキサドラム2を安定して回転させることができる。
【0081】
また、ミキサドラム駆動装置100は、逆流防止部は、チェック弁14であって、流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)と制御弁8との間に設けられることを特徴とする。
【0082】
この構成によれば、逆流防止部をチェック弁14で構成することにより、簡単な構造とすることができる。また、逆流防止部を制御する必要がないので、ミキサドラム駆動装置100の制御を簡略化することができる。
【0083】
また、ミキサドラム駆動装置100は、逆流防止部は、チェック弁14であって、制御弁8が正転位置Aにある時のみ機能するように制御弁8に設けられることを特徴とする。
【0084】
この構成によれば、逆流防止部をチェック弁14で構成することにより、簡単な構造とすることができる。さらに、チェック弁14は、制御弁8が正転位置Aにある時のみ機能するため、逆転位置Bではチェック弁14による圧力損失の影響を受けることが無い。これにより、流体圧ポンプ(油圧ポンプ5)の効率を向上させ、省エネルギー化を図ることができる。
【0085】
また、ミキサドラム駆動装置100は、逆流防止部は、切換弁(電磁切換弁60、パイロット操作式切換弁160)であることを特徴とする。
【0086】
また、ミキサドラム駆動装置100は、切換弁(パイロット操作式切換弁160)は、補助流体圧ポンプ(補助油圧ポンプ12)から供給されるパイロット圧によって切り換えられるパイロット操作式の切換弁(パイロット操作式切換弁160)であることを特徴とする。
【0087】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0088】
上記実施形態では、油圧ポンプ5は、走行用エンジン3によって駆動されるように構成されているが、油圧ポンプ5は、走行用エンジン3とは別のエンジンによって駆動されるように構成してもよい。
【0089】
電磁切換弁60及びパイロット操作式切換弁160は、第1給排通路23における補助供給通路28との合流点と制御弁8との間に設けられていてもよい。また、電磁切換弁60及びパイロット操作式切換弁160は、
図4に示す変形例と同様に、制御弁8が正転位置Aにある時のみ機能するように制御弁8内に設けられていてもよい。