特許第6335875号(P6335875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335875
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】癌の治療のための診断法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20180521BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180521BHJP
   A61K 45/00 20060101ALN20180521BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20180521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20180521BHJP
【FI】
   C12Q1/68 A
   G01N33/53 D
   G01N33/53 M
   !A61K45/00
   !A61K39/395 E
   !A61K39/395 T
   !A61P35/00
【請求項の数】25
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2015-503315(P2015-503315)
(86)(22)【出願日】2013年3月14日
(65)【公表番号】特表2015-516806(P2015-516806A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】US2013031760
(87)【国際公開番号】WO2013148288
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月11日
(31)【優先権主張番号】61/618,199
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ヘグレ, プリディ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, マイケ
(72)【発明者】
【氏名】イェー, ルファン
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0076271(US,A1)
【文献】 国際公開第2004/065562(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/020049(WO,A1)
【文献】 Ji-Liang Li,DLL4-Notch signaling Mediates Tumor Resistance to Anti-VEGF Therapy In Vivo,Cancer Research,2011年 9月15日,Vol.71, No.18,p.6073-6083
【文献】 W. Hu,Biological Roles of the Delta Family Notch Ligand Dll4 in Tumor and Endothelial Cells in Ovarian Cancer,Cancer Reseach,2011年 9月15日,Vol.71, No.18,p.6030-6039
【文献】 A V Timoshenko,COX-2-mediated stimulation of the lymphangiogenic factor VEGF-C in human breast cancer,British Journal of Cancer,2006年 4月24日,Vol.94, No.8,p.1154-1163
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00−3/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者が、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるかどうかを決定する方法であって、
(a)患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中で、Cox2の発現を検出すること、及び
(b)該患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現レベルをCox2の参照発現レベルに対して比較すること
を含み、ここで、該患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現のレベルの参照発現レベルに対する増加が、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性のある患者を同定する、方法。
【請求項2】
VEGFアンタゴニストの少なくとも一用量を受けた患者が、VEGFアンタゴニストによる治療に応答するであろうかどうかをモニタリングする方法であって、
(a)患者に対するVEGFアンタゴニストの少なくとも一用量の投与の後に患者から得られた生物学的試料中で、Cox2の発現を検出すること、及び
(b)患者に対するVEGFアンタゴニストの投与前に患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現レベルである、Cox2の参照発現レベルに対して、VEGFアンタゴニストの投与後に患者から得られた生物学的試料中のCox2発現レベルを比較すること
を含み、ここで、該患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現のレベルの参照発現レベルに対する減少が、VEGFアンタゴニストによる治療に応答するであろう患者を同定する、方法。
【請求項3】
患者は、VEGFアンタゴニストに対する応答性について試験されている患者の集団の中におり、参照発現レベルは、患者の集団におけるCox2の発現レベルの中央値である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現は、mRNAを測定することにより検出される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現は、血漿タンパク質レベルを測定することにより検出される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
生物学的試料は腫瘍組織である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
患者は血管新生障害を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
患者は、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、神経膠芽腫、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される癌を有する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
患者における血管新生障害を検出するための方法であって、
(a)患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中で、Cox2の発現レベルを検出すること、及び
(b)該患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現レベルをCox2の参照発現レベルに対して比較すること
を含み、ここで、患者から得られた生物学的試料中におけるCox2の発現レベルの参照発現レベルに対する増加が、血管新生障害を有する患者を同定する、方法。
【請求項10】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項1、2及び9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
抗VEGF抗体がベバシズマブである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
患者が、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得るかどうかを決定するためのキットであって、
(a)Cox2の発現レベルを決定することができる一又は複数のポリペプチド又はポリヌクレオチド、及び
(b)Cox2の発現レベルを決定する一又は複数のポリペプチド又はポリヌクレオチドの使用のための説明書
を含み、ここでCox2の参照発現レベルに対する、患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現レベルの増加が、患者がVEGFアンタゴニストによる治療から利益を受けるであろうことを示す、キット。
【請求項13】
患者が、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるかどうかを決定するためのキットであって、患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中で、Cox2の発現を検出するための手段を含み、
ここで、該Cox2の発現レベルがCox2の参照発現レベルと比較され、該患者の試料中のCox2の発現のレベルが参照発現レベルと比較して増加している場合に、該患者はVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定され、該患者はVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性が増加していることを知らされる、キット。
【請求項14】
患者に対して抗癌治療の治療効果を最適化するためのキットであって、患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中でCox2の発現を検出するための手段を含み、
ここで、該Cox2の発現レベルがCox2の参照発現レベルと比較され、該患者の試料中のCox2の発現のレベルが参照発現レベルと比較して増加している場合に、該患者はVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定され、患者に対して、抗癌療法にVEGFアンタゴニストを含める推奨が提供される、キット。
【請求項15】
VEGFアンタゴニストの少なくとも一用量を受けた患者が、VEGFアンタゴニストによる治療に応答するであろうかどうかをモニタリングするためのキットであって、VEGFアンタゴニストの少なくとも一用量の投与の後に患者から得られた生物学的試料中で、Cox2の発現を検出するための手段を含み、
ここで、該Cox2の発現レベルが、患者に対するVEGFアンタゴニストの投与前に患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現レベルである、参照発現レベルに対して比較され、VEGFアンタゴニストの投与後に得られた試料中のCox2の発現のレベルが参照発現レベルに比較して減少している場合に、該患者はVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定され、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性が増加していることが該患者に知らされる、キット。
【請求項16】
患者が、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定される場合に、VEGFアンタゴニストが該患者に投与される、請求項13から15の何れか一項に記載のキット。
【請求項17】
治療を検討されている患者の集団の特定の患者のための治療を選択するためのキットであって、患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中で、Cox2の発現を検出するための手段を含み、
ここで、該Cox2の発現レベルがCox2の参照発現レベルと比較され、該Cox2の発現のレベルが参照発現レベルと比較して増加している場合に、該患者はVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定され、
患者がVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定される場合に、VEGFアンタゴニストを含む治療が選択され、該選択されたVEGFアンタゴニストを含む治療が患者に推奨されるか、又は
患者がVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定されない場合に、VEGFアンタゴニストを含まない治療が選択され、該選択されたVEGFアンタゴニストを含まない治療が患者に推奨される、キット。
【請求項18】
VEGFアンタゴニストの少なくとも一用量を受けた患者のための治療を選択するためのキットであって、VEGFアンタゴニストの投与後に患者から得られた生物学的試料中で、Cox2の発現を検出するための手段を含み、
ここで、該Cox2の発現レベルが、VEGFアンタゴニストの投与前に患者から得られた生物学的試料中のCox2の発現レベルである、Cox2の参照発現レベルに対して比較され、VEGFアンタゴニストの投与後に得られた試料中のCox2の発現レベルが参照発現レベルに比較して減少している場合に、該患者はVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定され、
患者がVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定される場合に、VEGFアンタゴニストを含む治療が選択され、該選択されたVEGFアンタゴニストを含む治療が患者に推奨されるか、又は
患者がVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定されない場合に、VEGFアンタゴニストを含まない治療が選択され、該選択されたVEGFアンタゴニストを含まない治療が患者に推奨される、キット。
【請求項19】
患者が、VEGFアンタゴニストでの治療に応答する可能性があるとして同定される場合に、VEGFアンタゴニストの有効量が患者に投与される、請求項17又は18に記載のキット。
【請求項20】
抗腫瘍剤、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害性剤、又はそれらの組み合わせの有効量が、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるとして同定された患者に追加投与される、請求項19に記載のキット。
【請求項21】
VEGFアンタゴニストを含まない上記治療が、抗腫瘍剤、化学療法剤、成長阻害剤、細胞傷害性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17又は18に記載のキット。
【請求項22】
患者における血管新生障害を診断するためのキットであって、患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中で、Cox2の発現レベルを検出するための手段を含み、
ここで、該Cox2の発現レベルがCox2の参照発現レベルと比較され、該患者の試料中の該Cox2の発現レベルが参照発現レベルと比較して増加している場合に、該患者は血管新生障害を有するとして同定され、血管新生障害を有することが該患者に知らされる、キット。
【請求項23】
血管新生障害を有するとして同定された患者にVEGFアンタゴニストが投与される、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
VEGFアンタゴニストが抗VEGF抗体である、請求項12−15、17、18及び22の何れか一項に記載のキット。
【請求項25】
抗VEGF抗体がベバシズマブである、請求項24に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、VEGFアンタゴニスト、例えば抗VEGF抗体を用いた治療から利益を受ける患者を同定するためのする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
バイオマーカー(例えば、血漿中の分泌タンパク質)の発現レベルを測定することは、例えば、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストによる治療を含む特定の治療に応答する患者及び患者集団を同定するための有効な手段となり得る。
【0003】
どの患者がどの治療に応答するであろうかを判断し、その判断をVEGFアンタゴニスト療法(単一の薬剤として又は他の薬剤と併用して使用されるに関わらず)による患者の効果的な治療レジメンへ組み込むための有効な手段が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストを用いた治療の利益を受けるであろう患者を同定するための方法を提供する。これらの患者は、以下の遺伝子の発現レベルに基づいて同定される:DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)。
【0005】
本発明は、患者が、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があるかどうかを決定する方法を提供し、該方法は、(a)患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中で、以下の遺伝子、DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)の少なくとも一の発現を検出すること;(b)少なくとも一遺伝子の発現レベルを少なくとも一遺伝子の参照発現レベルに対して比較し、ここでは、患者試料中における少なくとも一遺伝子の発現のレベルの参照レベルに対する変化がVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性のある患者を同定し;任意で(c)彼らがVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性が増加していることを患者に知らせること、を含む。幾つかの実施態様において、本方法は、代わりに任意で、(c)もし、例えば、少なくとも一遺伝子の発現レベルの変化が、参照レベルに比較して患者試料中で検出されない場合、彼らがVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性が増加していないことを患者に知らせることを含む。
【0006】
本発明はまた、患者に対して抗癌治療の治療効果を最適化する方法を提供し、該方法は、(a)患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中で、以下の遺伝子、DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)の少なくとも一の発現を検出すること;(b)少なくとも一遺伝子の発現レベルを少なくとも一遺伝子の参照発現レベルに対して比較し、ここで、患者試料中における少なくとも一遺伝子の発現のレベルの参照レベルに対する変化は、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性のある患者を同定し;任意で(c)患者に対して、抗癌療法にはVEGFアンタゴニストが含まれるとする推奨を提供すること、を含む。幾つかの実施態様において、本方法は、代わりに任意で、(c)もし、例えば、少なくとも一遺伝子の発現レベルの変化が、参照レベルに比較して患者試料中で検出されない場合、患者に対して、抗癌療法はVEGFアンタゴニストではないとする推奨を提供することを含むことができる。
【0007】
これらの方法では、患者は、VEGFアンタゴニストに対する応答性について試験されている患者の集団に存在することができ、参照レベルは、患者の集団における少なくとも一遺伝子の発現レベルの中央値とすることができる。
【0008】
VEGFアンタゴニストの少なくとも一用量を受けた患者は、VEGFアンタゴニストによる治療に応答するであろうかどうかをモニタリングする方法も本発明に含まれ、該方法は、(a)VEGFアンタゴニストの少なくとも一用量の投与の後に患者から得られた生物学的試料中で、以下の遺伝子、DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)の少なくとも一の発現を検出すること;(b)患者へのVEGFアンタゴニストの投与の前に患者から得られた生物学的試料中で少なくとも一遺伝子の発現レベルとすることができる、参照レベルに対して、少なくとも一遺伝子の発現レベルを比較し、ここでVEGFアンタゴニストの投与の後に得られた試料中で少なくとも一遺伝子の発現レベルの、参照レベルに対する変化は、VEGFアンタゴニストによる治療に応答するであろう患者を同定し;任意で(c)彼らがVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性が増加していることを患者に知らせること、を含む。幾つかの実施態様において、本方法は、代わりに、(c)もし、例えば、少なくとも一遺伝子の発現レベルの変化が、参照レベルに比較してVEGFアンタゴニストの投与後に得られた試料中で検出されない場合、彼らがVEGFアンタゴニストによる治療に応答性でない可能性があることを患者に知らせることを含む。
【0009】
上記の方法において、患者試料中の少なくとも一遺伝子の発現レベルの変化は参照レベルに対する増加又は減少に対してとすることができる。
【0010】
患者から得られた生物学的試料中の少なくとも一遺伝子の発現は、例えばmRNA及び/又は血漿タンパク質レベルを測定することにより検出することができる。
【0011】
生物学的試料は、例えば、腫瘍生検などの腫瘍組織、又は血漿試料とすることができる。
【0012】
本発明の方法は、患者からの生物学的試料中の少なくとも第二、第三、第四、又は更なる遺伝子の発現を検出することを含むことができる。
【0013】
VEGFアンタゴニストは、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体であり得る。
【0014】
患者は、血管新生障害を有し得る。例えば、患者は、結腸直腸癌、乳癌、肺癌、神経膠芽腫、及びそれらの組み合わせ組み合わせからなる群から選択される癌を有することができる。
【0015】
上記の方法は更に、VEGFアンタゴニスト(例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体)を患者に投与する工程を含むことができる。
【0016】
本発明はまた、治療を検討されている患者の集団の特定の患者のための治療を選択するための方法を含み、該方法は、(a)患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた生物学的試料中で、以下の遺伝子、DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)の少なくとも一の発現を検出すること;(b)少なくとも一遺伝子の発現レベルを少なくとも一遺伝子の参照発現レベルに対して比較し、ここで、患者試料中における少なくとも一遺伝子の発現のレベルの参照レベルに対する変化は、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性のある患者を同定し;及び(c)患者がVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があると同定される場合、VEGFアンタゴニストを含む治療を選択し、及び任意で、VEGFアンタゴニストを含む選択された治療法を患者に推奨し、又は(d)患者がVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性があると同定されない場合、VEGFアンタゴニストを含まない治療を選択し、及び任意で、VEGFアンタゴニストを含まない選択された治療法を患者に推奨すること、を含む。
【0017】
これらの方法では、患者は、EGFアンタゴニストに対する応答性について試験されている患者の集団に存在することができ、参照レベルは、患者の集団における少なくとも一遺伝子の発現レベルの中央値とすることができる。
【0018】
また、本発明に含まれるのは、VEGFアンタゴニストの少なくとも一用量を受けた患者のための治療を選択する方法であり、該方法は、(a)VEGFアンタゴニストの投与後に患者から得られた生物学的試料中で、以下の遺伝子、DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)の少なくとも一の発現を検出すること;(b)患者に対するVEGFアンタゴニストの投与前に患者から得られた生物学的試料中の少なくとも一遺伝子の発現レベルである、参照発現レベルに対して、少なくとも一遺伝子の発現レベルを比較し、ここで、患者試料中における少なくとも一遺伝子の発現のレベルの参照レベルに対する変化は、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性のある患者を同定し、及び(c)少なくとも一遺伝子の発現レベルの変化がVEGFアンタゴニストの投与後に得られた試料中で検出される場合、VEGFアンタゴニストを含む治療を選択し、及び任意で、VEGFアンタゴニストを含む選択された治療を患者に推奨し、又は(d)少なくとも一遺伝子の発現レベルの変化がVEGFアンタゴニストの投与後に得られた試料中で検出さない場合、VEGFアンタゴニストを含まない治療を選択し、及び任意で、VEGFアンタゴニストを含まない選択された治療を患者に推奨すること、を含む。
【0019】
上記の2つの方法において、患者試料中の少なくとも一遺伝子の発現レベルの変化は参照レベルに対する増加又は減少に対してとすることができる。
【0020】
本方法は、患者からの生物学的試料中の少なくとも第二、第三、第四、又は更なる遺伝子の発現を検出することを含むことができる。
【0021】
更に、(d)の治療は、抗腫瘍剤、化学療法剤、成長阻害剤、細胞毒性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される薬剤であることができる。
【0022】
本方法は、(e)患者が、VEGFアンタゴニストでの治療に応答する可能性があるとして同定された場合、患者にVEGFアンタゴニストの有効量を投与することを更に含めることができる。VEGFアンタゴニストは、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体であり得る。
【0023】
加えて、本方法は、少なくとも第二の薬剤の有効量を投与することを更に含むことができる。例えば、第二の薬剤は、抗腫瘍剤、化学療法剤、成長阻害剤、細胞毒性剤、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0024】
また本発明に含まれるのは、患者の血管新生障害を診断するための方法であり、該方法は、(a)患者に対するVEGFアンタゴニストの任意の投与前に患者から得られた試料中で、以下の遺伝子、DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)の少なくとも一の発現を検出すること;(b)少なくとも一遺伝子又はバイオマーカーの発現レベルを少なくとも一遺伝子の参照レベルに対して比較し、ここで、患者試料中における少なくとも一遺伝子の発現のレベルの参照レベルに対する変化は、血管新生障害を有する患者を同定し;及び任意で(c)彼らが血管新生障害を有することを患者に知らせることからなる工程を含む。幾つかの実施態様において、本方法は、代わりに、(c)もし、例えば、少なくとも一遺伝子の発現レベルの変化が、参照レベルに比較して患者試料中で検出されない場合、彼らが血管新生障害を有し得ないことを患者に知らせることを含む。
【0025】
これらの診断の方法はまた、血管新生障害を有すると同定された場合、患者にVEGFアンタゴニストを投与する工程を含むことができる。VEGFアンタゴニストは、例えば、ベバシズマブなどの抗VEGF抗体であり得る。
【0026】
本発明はまた、患者がVEGFアンタゴニストによる治療から利益を受け得るか否かを判定するためのキットを特徴とし、該キットは、(a)以下の遺伝子:DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)の少なくとも一の発現レベルを決定することができる化合物(例えば、ポリペプチド又はポリヌクレオチド(例えば、PCRプライマー又はプローブ))、及び任意で、(b)DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)の少なくとも一の発現レベルを決定するためのポリペプチド又はポリヌクレオチドの使用のための説明書を含み、ここで、参照レベルに対する少なくとも一遺伝子の発現のレベルの変化は、患者が、VEGFアンタゴニストによる治療から利益を得ることができることを示す。幾つかの実施態様において、ポリペプチドは抗体である。
【0027】
これら及び他の実施態様は、更に、以下の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、研究デザインの全体を示す模式図である。研究デザインは、ベバシズマブ(bev)ベースのネオアジュバント治療と、続くベバシズマブを含むか又は含まない化学療法後の、進行乳癌患者の臨床的及び分子的変化の評価を可能とする。
図2図2は、90人の患者の、bev治療群又はプラセボ対照群への無作為配置、及び試験をその全体において完結した患者の数を示すコンソートダイアグラム(consort diagram)である。
図3図3は、bev(低bevまたは高bevで処置)で治療した後にCD144(VE−カドヘリン)発現は変化しないことを示すグラフである。
図4図4は、(デルタ様リガンド4)CD144で正規化されたDLL4の発現は、bev治療(低bev又は高bevs処置)の際に下方制御されることを示すグラフである。
図5図5は、アンギオポイエチン2(ANGPT2)の発現はbev治療の際に下方制御されることを示すグラフである。
図6図6は、第V因子の発現はbev治療の際に上方制御されることを示すグラフである。
図7図7は、第VIII因子(AHF)の発現はbev治療の際に上方制御されることを示すグラフである。
図8図8は、一酸化窒素合成酵素(NOS2、又は誘導性NOS(iNOS))の発現はbev治療の際に下方制御されることを示すグラフである。
【0029】
好適な実施態様の詳細な説明
I.序論
本発明は、感受性又はVEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体による治療に感受性がある又は応答する患者を監視及び/又は同定するための方法及び組成物を提供する。本発明は、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)による治療の前後における下記表1に列挙するの遺伝子の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14の発現レベルの決定は、VEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体による治療に感受性又は応答性の患者の同定に有用であるとする発見に基づいている。
【0030】
II.定義
「バイオマーカー」及び「マーカー」なる用語は、ここでは交換可能に使用され、DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、又は糖脂質ベースの分子マーカーを意味し、被検体又は患者の試料中の発現又は存在を、標準的な方法(又はここに開示された方法)により検出することができ、VEGFアンタゴニストに対する哺乳動物被検体の応答性又は感受性をモニターするのに有用である。このようなバイオマーカーは、限定されるものではないが、表1に記載の遺伝子を含む。そのようなバイオマーカーの発現は、参照レベル(例えば、VEGFアンタゴニストへの応答性について試験される患者の群/集団からの試料中のバイオマーカーの発現レベルの中央値;事前に個体から先に得られた試料中のレベル;又は原発腫瘍の状況でVEGFアンタゴニスト(抗VEGF抗体など)による治療を受け、今や転移が発生し得る患者からの試料中のレベルを含む)よりもVEGFアンタゴニストに対して感受性又は応答性である患者から得られた試料中において、より高いか又はより低いと決定されうる。上記のような、少なくとも一遺伝子の参照発現レベルよりも高いか又は低い発現レベルを有する個体は、VEGFアンタゴニストによる治療に対して応答する可能性のある被験体/患者として同定されることができる。例えば、参照レベル(上記の中央値レベルなど)に対して最極端で50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、又は5%での(即ち高いか又は低い)遺伝子発現を示す被験体/患者は、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性のある被験体/患者として同定されることができる。
【0031】
「試料」及び「生物学的試料」なる用語は交換可能に使用され、体液、体組織、細胞、又は他の供給源を含む個体から得られた任意の生物学的試料を意味する。体液は、例えばリンパ、血清、新鮮全血、末梢血単核細胞、凍結全血、血漿(新鮮又は凍結を含む)、尿、唾液、精液、滑液及び髄液である。また、試料は、乳房組織、腎組織、結腸組織、脳組織、筋肉組織、滑液組織、皮膚、毛包、骨髄、及び腫瘍組織も含む。哺乳動物から組織バイオプシー及び体液を得るための方法は、当該技術分野でよく知られている。
【0032】
VEGFアンタゴニストによる治療に対する患者の「効果的な応答」又は患者の「応答性」又は「感受性」は、例えば抗VEGF抗体のようなVEGFアンタゴニストによる治療から又は治療の結果として血管新生疾患のリスクがあるか該疾患を患っている患者に与えられる臨床的又は治療的恩恵を意味する。そのような恩恵は、アンタゴニストによる治療から又は治療の結果として、患者の細胞性又は生物学的応答、完全奏功、部分奏功、安定疾患(進行又は再発がない)、又は患者の後での再発を伴う応答を含む。例えば、効果的応答とは、本明細書に記載される様式で上記のバイオマーカーの一又は複数を発現するとして診断された患者に対する一又は複数のバイオマーカーをそのような様式で発現しない患者における、腫瘍サイズの減少又は無増悪生存とすることができる。遺伝子バイオマーカーの発現はそのような効果的な応答を効果的に予測し、又は高感度で予測する。
【0033】
本明細書において使用される「アンタゴニスト」は、結合する分子の生物学的活性を阻害し、又は減少させる化合物又は薬剤を意味する。アンタゴニストは、他の分子とコンジュゲートされ又は融合されていてもよい、VEGFに結合する抗体、合成又は天然配列ペプチド、イムノアドヘシン、及び小分子アンタゴニストを含む。「遮断(ブロック)」抗体又は「アンタゴニスト」抗体は、結合する抗原の生物学的活性を阻害するか又は低減させるものである。
【0034】
本明細書中で用いる「アゴニスト抗体」は、対象のポリペプチドの機能的な活性の少なくとも一つを部分的ないし完全に模倣する抗体である
【0035】
本明細書における用語「抗体」は、最も広範な意味で用いられ、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも二つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(たとえば二重特異性抗体)、所望の生物学的活性を示す限りにおいて抗体断片を網羅する。
【0036】
「単離された」抗体は、その自然環境の成分から分離されたものである。その自然環境の混入成分は、抗体について、研究、診断又は治療への使用を妨害する物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれる。幾つかの実施態様において、抗体は、(1)例えばローリー法により判定して抗体の95重量%超、及び幾つかの実施態様において、99重量%超まで;(2)例えばスピニングカップシークエネーターを使用することにより、N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルーもしくは銀染色を用いる還元もしくは非還元条件下でSDS−PAGEにより均一になるまで精製される。単離された抗体は、抗体の自然環境の少なくとも一の成分が存在しないので、組換え細胞内にあるインサイツな抗体が含まれる。しかしながら、通常は、単離された抗体は少なくとも一の精製工程により調製されるであろう。
【0037】
「天然抗体」は、2つの同一の軽鎖(L)と2つの同一の重鎖(H)からなる、通常約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は一つのジスルフィド共有結合により重鎖に結合しており、ジスルフィド結合の数は、異なった免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変化する。また各H及びL鎖は、規則的に離間した鎖内ジスルフィド架橋を有している。各重鎖は、多くの定常ドメインが続く可変ドメイン(V)を一端に有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、他端に定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは重鎖の第一定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基は軽鎖と重鎖の可変ドメインの界面を形成すると考えられている。
【0038】
抗体の「可変領域」又は「可変ドメイン」は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインを意味する。重鎖の可変ドメインは「VH」と称されうる。軽鎖の可変ドメインは「VL」と称されうる。これらのドメインは一般に抗体の最も可変の部分であり、抗原結合部位を含む。
【0039】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部位が、抗体の中で配列が広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合性及び特異性に使用されているという事実を意味する。しかしながら、可変性は抗体の可変ドメインにわたって一様には分布していない。それは軽鎖及び重鎖の可変ドメインの両方の高頻度可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中される。可変ドメインのより高度に保持された部分はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、βシート構造を連結し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する、3つのHVRにより連結されたβシート配置を主にとる4つのFR領域をそれぞれ含んでいる。各鎖のHVRは、FR領域に近接して結合され、他の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関連しているものではないが、様々なエフェクター機能、例えば抗体依存性細胞性傷害性への抗体の関与を示す。
【0040】
任意の脊椎動物種からの抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる二つの明らかに区別されるタイプの一方に分類できる。
【0041】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は異なるクラスに分類できる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらの幾つかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG、IgG、IgG、IgG、IgA及びIgAに分類される。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれα、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造及び三次元立体配位はよく知られており、一般に例えばAbbas et al., Cellular and Mol. Immunology, 4th ed. (W. B. Saunders, Co., 2000)に記載されている。抗体は、抗体と一又は複数の他のタンパク質ないしペプチドとの共有的ないしは非共有的結合によって形成される大きな融合分子の一部であってもよい。
【0042】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、実質的にインタクトな形態の抗体を指し、以下に定義するような抗体断片は意味しない。この用語は、特にFc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。
【0043】
本明細書における目的において、「ネイキッド抗体」とは、細胞傷害性部分又は放射標識にコンジュゲートされていない抗体である。
【0044】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含んでなる。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)及びFv断片、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子、および抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む。
【0045】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗体結合断片を生成し、その各々は単一の抗原結合部位と、その名前がその容易に結晶化する能力を反映する残りの「Fc」断片とを有する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を持ち、抗原に尚も架橋可能であるF(ab’)断片を生じる。
【0046】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含む最小抗体断片である。一実施態様において、2本鎖「Fv」種は、一本の重鎖と一本の軽鎖の可変ドメインが、堅固な非共有結合をなした二量体からなる。単鎖Fv(scFv)種において、一本の重鎖と一本の軽鎖可変ドメインは、2本鎖Fv種における二量体構造に類似した「二量体」構造で軽鎖と重鎖が会合できるように、柔軟なペプチドリンカーにより共有結合性に連結されることが可能である。各可変ドメインの3つのHVRが、VH−VLダイマーの表面上で抗原結合部位を定めるために相互作用するのはこの立体配置においてである。まとめて、6つのHVRは抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのHVRのみを含んでなるFvの半分)でさえ、結合部位全体よりは低い親和性であるが、抗原を認識し結合する能力を持つ。
【0047】
「Fab」断片は、重鎖と軽鎖可変ドメインを含み、かつまた軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第一定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの一以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端で2〜3の付加残基を有する点がFab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基が遊離チオール基を担持しているFab’についてのここでの標記である。F(ab’)抗体断片は、その間にヒンジシステインを有するFab’断片対として元々は生産された。抗体断片の他の化学結合も知られている。
【0048】
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一般に、scFvポリペプチドはVH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーを更に含み、それはsFVが抗原結合に望まれる構造を形成することを可能にする。scFvの総説については、例えば、Pluckthun, in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, 113巻, Rosenburg and Moore eds., (Springer-Verlag, New York, 1994),頁269-315を参照。
【0049】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を持つ抗体断片を指し、その断片は、同一ポリペプチド鎖(VH−VL)の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同一鎖の2つのドメイン環に対合を可能にするには短すぎるリンカーを用いることにより、そのドメインは別の鎖の相補的ドメインと強制的に対合し、2つの抗原結合部位を作り出す。ダイアボディは二価又は二重特異性であり得る。ダイアボディは、例えば、欧州特許第404,097号;国際公開第1993/01161号; Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003); 及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444-6448 (1993)により完全に記載されている。トリアボディ及びテトラボディもまたHudson et al., Nat. Med. 9:129-134 (2003)に記載されている。
【0050】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」なる用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団に含まれる個々の抗体は、少量で存在しうる可能性がある変異、例えば自然に生じる突然変異を除いて同一である。従って、修飾語「モノクローナル」は、個別の抗体の混合物ではないという抗体の性質を示す。ある実施態様では、このようなモノクローナル抗体は、通常、標的に結合するポリペプチド配列を含む抗体を含み、この場合、標的に結合するポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列から単一の標的結合ポリペプチド配列を選択することを含むプロセスにより得られる。例えば、この選択プロセスは、雑種細胞クローン、ファージクローン又は組換えDNAクローンのプールのような複数のクローンからの、唯一のクローンの選択とすることができる。例えば、標的への親和性を向上させ、標的結合配列をヒト化し、細胞培養液中におけるその産生を向上させ、インビボでの免疫原性を低減させ、多重特異性抗体を作成するなどのために、選択された標的結合配列を更に変化させることができること、及び、変化させた標的結合配列を含む抗体も、本発明のモノクローナル抗体であることは理解されるべきである。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を一般的に含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体の調製物は、それらが他の免疫グロブリンで通常汚染されていないという点で有利である。
【0051】
修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は様々な技術によって作製することができ、それらの技術には、例えば、ハイブリドーマ法(例えば、Kohler and Milstein., Nature 256:495-497 (1975); Hongo et al., Hybridoma 14 (3):253-260 (1995), Harlow et al., Antibodies: A Laboratory Manual, (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2nd ed. 1988); Hammerling et al., in: Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681 (Elsevier, N.Y., 1981))、組換えDNA法(例えば、米国特許第4816567号参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581-597 (1992); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2):299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5):1073-1093 (2004); Fellouse, PNAS USA 101(34):12467-12472 (2004); 及びLee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2):119-132 (2004);、並びに、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の一部又は全部、或るいはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子を有する動物にヒト又はヒト様抗体を生成する技術(例えば、国際公開第1998/24893号;国際公開第1996/34096号;国際公開第1996/33735号;国際公開第1991/10741号;Jakobovits et al., PNAS USA 90: 2551 (1993); Jakobovits et al., Nature 362: 255-258 (1993); Bruggemann et al., Year in Immunol. 7:33 (1993); 米国特許第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;及び同第5,661,016号; Marks et al., Bio/Technology 10:779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368:856-859 (1994); Morrison, Nature 368:812-813 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnol. 14:845-851 (1996); Neuberger, Nature Biotechnol. 14:826 (1996);及びLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)参照)が含まれる。
【0052】
本発明のモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の種に由来する又は特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同であるが、その(それらの)鎖の残部は別の種に由来する又は別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一又は相同である「キメラ」抗体、並びにそのような抗体の断片(但し、それらが所望の生物学的活性を示すことを条件とする)であり得る(米国特許第4816567号;Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1984))。キメラ抗体は、抗体の抗原結合領域が、例えば、目的の抗原でマカクザルを免疫することによって産生された抗体に由来するPRIMATIZED(登録商標)抗体を含む。
【0053】
非ヒトの「ヒト化」形態(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。一実施態様では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRの残基が、マウス、ラット、ウサギ又は所望の特異性、親和性及び/又は能力を有する非ヒト霊長類のような非ヒト種(ドナー抗体)からのHVRの残基によって置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの例においては、ヒト免疫グロブリンのFRの残基は、対応する非−ヒト残基によって置き換えられている。更に、ヒト化抗体はレシピエント抗体又はドナー抗体において見いだされない残基を含み得る。これらの修飾は抗体の特性をさらに洗練するために作成される場合がある。(1994)。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも一つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、超可変ループの全て又は実質的に全てが、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FRの全てまたは実質的に全てが、ヒト免疫グロブリン配列のものである。また、ヒト化抗体は、場合によっては免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれを含むであろう。更なる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,2:593-596(1992)を参照。また、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1:105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23:1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);及び米国特許第6,982,321号及び第7,087,409号も参照。
【0054】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産される抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を有するもの、及び/又はここに開示されたヒト抗体を作製する任意の技術を使用して作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む、当技術分野で公知の様々な技術を用いて生産することができる。Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol. 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222:581 (1991).また、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用できる方法は、Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., J. Immunol. 147(1):86-95 (1991)に記載されている。van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5:368-374 (2001)も参照。ヒト抗体は、抗原投与に応答して、そのような抗体を産生するように改変されているが、しかしその内因性遺伝子座は無効にされているトランスジェニック動物、例えば、免疫したゼノマウスに抗原を投与することにより調製することができる(例えば、XENOMOUSETM技術に関する米国特許第6075181号及び第6150584号を参照)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体に関して、Li et al., PNAS USA 103:3557-3562 (2006)を参照。
【0055】
本明細書で使用される用語「超可変領域」、「HVR」又は「HV」は、配列が超可変であるか、及び/又は構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインのその領域を指す。一般的に、抗体は、VH(H1、H2、H3)に3つ、及びVL(L1、L2、L3)に3つの6つのHVRを含む。天然型抗体では、H3及びL3は6つのHVRのうちで最も多様性を示し、特にH3は抗体に良好な特異性を与えることにおいて特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al., Immunity 13:37-45 (2000); Johnson and Wu in Methods in Molecular Biology 248:1-25 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003)を参照。実際、天然に生じるラクダ科の重鎖のみからなる抗体は、軽鎖の非存在下で機能的で安定している。例えば、Hamers-Casterman et al., Nature 363:446-448 (1993) and Sheriff et al., Nature Struct. Biol. 3:733-736 (1996)を参照。
【0056】
多数のHVRの描写が使用され、本明細書に包含される。カバット相補性決定領域(CDR)であるHVRは配列可変性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5版Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。Chothiaは、代わりに構造的ループの位置に言及している(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))。AbM HVRは、カバットCDRとChothia構造的ループの間の妥協を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用できる複合体結晶構造の解析に基づく。これらのHVRの各々からの残基は以下に記される。
【0057】
HVRは、次のような「拡大HVR」を含むことができる:VLの24−36又は24−34(L1)、46−56又は50−56(L2)及び89−97又は89−96(L3)と、VHの26−35(H1)、50−65又は49−65(H2)及び93−102、94−102、又は95−102(H3)。可変ドメイン残基には、これらの拡大HVR定義の各々について、Kabat等(上掲)に従って番号を付した。
【0058】
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基である。
【0059】
「カバット(Kabat)による可変ドメイン残基番号付け」又は「カバットによるアミノ酸位番号付け」なる表現及びその異なる言い回しは、上掲のKabat 等の抗体の編集の軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインに用いられる番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを用いると、実際の線形アミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はHVR内の短縮又は挿入に相当する2、3のアミノ酸又は付加的なアミノ酸を含みうる。例えば、重鎖可変ドメインには、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えばカバットによる残基82a、82b及び82cなど)と、H2の残基52の後に単一アミノ酸の挿入(Kabatによる残基52a)を含んでもよい。残基のKabat番号は、「標準の」カバット番号付け配列によって抗体の配列の相同領域でアライメントすることによって与えられる抗体について決定してもよい。
【0060】
「親和成熟」抗体とは、その改変を有していない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性に改良を生じさせる、その一又は複数のHVRにおいて一又は複数の改変を持つものである。一実施態様では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対して、ナノモル単位の、さらにはピコモル単位の親和性を有する。親和成熟抗体は、当技術分野において既知の方法により生産される。例えば、Marks等、Bio/Technology, 10:779-783(1992)において、VHドメインとVLドメインのシャフリングによる親和成熟を記述している。HVR及び/又はフレームワーク残基のランダム突然変異誘導は、例えば:Barbas等, Proc Nat Acad. Sci, USA 91:3809-3813(1994);Schier等, Gene, 169:147-155(1995);Yelton等, J. Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson等, J. Immunol.154(7):3310-3319(1995);及びHawkins等, J. Mol. Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
【0061】
「増殖阻害」抗体は、抗体が結合する抗原を発現する細胞の増殖を防止又は低減するものである。
【0062】
「アポトーシスを誘導する」抗体とは、標準的なアポトーシスアッセイにより測定できるようなB細胞などのプログラム細胞死、例えば、アネキシンVの結合、DNA断片化、細胞収縮、小胞体の肥大、細胞断片化、及び/又は膜小嚢の形成(アポトーシス体と称す)を誘導するものである。
【0063】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰する生物学的活性を意味し、抗体のアイソタイプにより変わる。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞障害(CDC);Fcレセプター結合性;抗体依存性細胞媒介性細胞障害(ADCC);貪食作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター)のダウンレギュレーション;及びB細胞活性化が含まれる。
【0064】
本明細書中の「Fc領域」なる用語は、天然配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変化するかも知れないが、通常、ヒトIgG重鎖Fc領域はCys226の位置又はPro230からの位置のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端まで伸長すると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体の産生又は精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。したがって、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体群、K447残基が除去されていない抗体群、及びK447残基を有する抗体と有さない抗体の混合を含む抗体群を含みうる。
【0065】
特に明記しない限り、本明細書中の免疫グロブリン重鎖の残基の番号付けは、出典明記によって本明細書中に特別に援用される上掲のKabat等のEUインデックスのものである。「KabatのEUインデックス」はヒトIgG1 EU抗体の残基番号を指す。
【0066】
「機能性Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。典型的な「エフェクター機能」は、C1q結合;CDC、Fcレセプター結合;ADCC;貪食作用;細胞表面レセプター(すなわち、B細胞レセプター)の下方制御などである。そのようなエフェクター機能は、結合ドメイン(例えば抗体可変ドメイン)と組み合わせるためにFc領域を一般に必要とするので、例えば本明細書における定義に開示するような、様々なアッセイを用いて該エフェクター機能を評価することができる。
【0067】
「天然配列Fc領域」は、天然に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列のヒトFc領域は、天然配列のヒトIgG1Fc領域(非A−及びA−アロタイプ);天然配列のヒトIgG2Fc領域;天然配列のヒトIgG3Fc領域;及び天然配列のヒトIgG4Fc領域;並びに、上記何れかの自然に生じる変異体が含まれる。
【0068】
「変異体Fc領域」は、少なくとも1のアミノ酸修飾、好ましくは1以上のアミノ酸置換によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、変異体Fc領域は、天然配列Fc領域と又は親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1のアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域に又は親ポリペプチドのFc領域に約1から約10のアミノ酸置換、および好ましくは約1から約5のアミノ酸置換を有する。本明細書中の変異体Fc領域は、好ましくは、天然配列のFc領域及び/又は親ポリペプチドのFc領域と、少なくともおよそ80%の相同性を有するか、又は最も好ましくはそれらと少なくともおよそ90%の相同性を、より好ましくはそれらと少なくともおよそ95%の相同性を有するであろう。
【0069】
用語「Fc領域含有抗体」は、Fc領域を含む抗体を指す。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによれば残基447)は、例えば、抗体精製中に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組み換え遺伝子操作することによって取り除かれてもよい。従って、本発明によるFc領域を有する抗体を含んでなる組成物は、K447を有する抗体、すべてのK447が除去された抗体、又はK447残基を有する抗体とK447残基を有さない抗体の混合を含むことができる。
【0070】
「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合するレセプターを記述する。幾つかの実施態様において、FcRは天然型ヒトFcRである。幾つかの実施態様では、FcRはIgG抗体(ガンマレセプター)と結合するもので、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスのレセプターを含み、これらのレセプターの対立遺伝子変異体、選択的にスプライシングされた形態のものも含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性型レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害型レセプター」)が含まれ、主としてその細胞質ドメインは異なるが、類似のアミノ酸配列を有するものである。活性型レセプターFcγRIIAは、細胞質ドメインに免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含んでいる。活性化レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに、免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)を含む。(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照)。FcRは、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9: 457-492 (1991); Capel et al., Immunomethods 4: 25-34 (1994);及びde Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126: 330-341 (1995)に総説される。他のFcRは、将来同定されるべきものを含み、本明細書にて用語「FcR」により網羅される。
【0071】
用語「Fcレセプター」又は「FcR」には、母性IgGの胎児への移送を担い(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim等, J. Immunol.24:249 (1994))、免疫グロブリンのホメオスタシスを調節する新生児性レセプターFcRnも含まれる。FcRnへの結合の測定方法は公知である(例えば、Ghetie and Ward, Immunology Today 18(12):592-598 (1997); Ghetie et al., Nature Biotechnology 15(7):637-640 (1997); Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8):6213-6216 (2004);国際公開第2004/92219号(Hinton et al.)を参照)。
【0072】
インビボでのヒトFcRnへの結合とヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期は、例えばヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又は形質転換されたヒト細胞株、又はFc変異形ポリペプチドを投与された霊長類動物においてアッセイすることができる。国際公開公報2000/42072(Presta)にFcRへの結合を向上又は減弱させた抗体変異型が述べられている。例としてShields等, J. Biol. Chem. 9(2): 6591-6604 (2001)も参照のこと。
【0073】
「ヒトエフェクター細胞」は、一又は複数のFcRを発現する白血球であり、エフェクター機能を果たす。ある実施態様では、その細胞が少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例として、末梢血液単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞障害性T細胞及び好中球が含まれる。エフェクター細胞は天然源、例えば血液から単離してもよい。
【0074】
「抗体依存性細胞媒介性細胞障害」又は「ADCC」とは、ある種の細胞障害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)上に存在するFcレセプター(FcRs)と結合した分泌Igにより、これらの細胞障害エフェクター細胞が抗原−担持標的細胞に特異的に結合し、続いて細胞毒により標的細胞を死滅させることを可能にする細胞障害性の形態を意味する。ADCC、NK細胞を媒介する初代細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcRの発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492 (1991)の464頁の表3に要約されている。対象の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号又は同第5,821,337号又は米国特許第6,737,056号(Presta)に記載されているようなインビトロのADCCアッセイを実施することができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、PBMC及びNK細胞が含まれる。あるいは、又は更に、目的の分子のADCC活性は、Clynes et al., PNAS (USA) 95:652-656 (1998)に開示されるように、インビボで、例えば動物モデルにおいて評価することができる。
【0075】
「補体依存性細胞障害」又は「CDC」は、補体の存在下で標的細胞を溶解することを意味する。古典的補体経路の活性化は、その同族抗原に結合する(適切なサブクラスの)抗体に対する補体系(C1q)の第一の成分の結合によって開始される。補体活性を評価するために、CDCアッセイが、例えばGazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163 (1996)に記載されるように実施することができる。Fc領域アミノ酸配列を変更してC1q結合能力が増大又は減少したポリペプチド変異体(変異体Fc領域を有するポリペプチド)は、米国特許第6194551号B1及び国際公開第1999/51642号に記述される。また例としてIdusogie 等 J. Immunol. 164: 4178-4184 (2000)も参照のこと。
【0076】
「結合親和性」とは、一般に、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合相互作用の総和の強度を指す。本明細書で使用する場合、特に断らない限り、「結合親和性」は、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバー間の1:1の相互作用を反映している本質的な結合親和性を指す。そのパートナーYに対する分子Xの親和性は、一般的に解離定数(Kd)で表すことができる。親和性は、本明細書に記載したものを含む、当技術分野で知られている一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は抗原にゆっくり結合して素早く解離する傾向があるのに対し、高親和性抗体は抗原により密接により長く結合したままとなる。結合親和性の様々な測定方法が当分野で公知であり、それらの何れかを本発明のために用いることができる。結合親和性を測定するための具体的な例示であって典型的な実施態様は、以下で説明される。
【0077】
一実施態様において、以下のアッセイにより説明されるように、この発明による「Kd」又は「Kd値」は、目的の抗体のFab型とその抗原を用いて実施される放射標識抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。非標識抗原の力価測定系の存在下で、最小濃度の(125I)−標識抗原にてFabを均衡化して、抗Fab抗体コートプレートと結合した抗原を捕獲することによって抗原に対するFabの溶液結合親和性を測定する(例としてChen, et al., J. Mol. Biol. 293:865-881(1999)を参照)。アッセイの条件を決めるために、マイクロタイタープレート(DYNEX Technologies, Inc.)を、5μg/mlの捕獲抗Fab抗体(Cappel Labs)を含む50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)にて一晩コーティングし、その後2%(w/v)のウシ血清アルブミンを含むPBSにて室温(およそ23℃)で2〜5時間、ブロックする。非吸着プレート(Nunc #269620)に、100pM又は26pMの[125I]抗原を段階希釈した所望のFabと混合する(例えば、Presta等, (1997) Cancer Res. 57: 4593-4599の抗VEGF抗体、Fab−12の評価と一致する)。ついで目的のFabを一晩インキュベートする;しかし、インキュベーションは平衡状態に達したことを確認するまでに長時間(例えばおよそ65時間)かかるかもしれない。その後、混合物を捕獲プレートに移し、室温で(例えば1時間)インキュベートする。そして、溶液を取り除き、プレートを0.1%のTWEEN−20TMを含むPBSにて8回洗浄する。プレートが乾燥したら、150μl/ウェルの閃光物質(MICROSCINT−20TM;Packard)を加え、プレートをTOPCOUNTTMγ計測器(Packard)にて10分間計測する。最大結合の20%か又はそれ以下を与える各Fabの濃度が、競合結合測定における使用のために選択される。
【0078】
他の実施態様によると、〜10反応単位(RU)の固定した抗原CM5チップを用いて25℃のBIACORE(登録商標)−2000又はBIACORE(登録商標)−3000機器(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を用いる表面プラズモン共鳴アッセイを使用してKd又はKd値を測定する。簡単に言うと、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5, BIAcore Inc.)を、提供者の指示書に従ってN−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN−ヒドロキシスクシニミド(NHS)で活性化した。抗原を10mM酢酸ナトリウム(pH4.8)で5μg/ml(〜0.2μM)に希釈し、結合したタンパク質の反応単位(RU)がおよそ10になるように5μl/分の流速で注入する。抗原の注入後、反応しない群をブロックするために1Mのエタノールアミンを注入する。動力学的な測定のために、Fabの2倍の段階希釈(0.78nMから500nM)を、25℃で、およそ25μl/分の流速で0.05%ポリソルベート20(TWEEN20TM)界面活性剤(PBST)を含むPBSに注入する。会合及び解離のセンサーグラムを同時にフィットさせることによる単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model) (BIAcore(登録商標)エバリュエーションソフトウェアバージョン3.2)を用いて、会合速度(kon)と解離速度(koff)を算出した。平衡解離定数(Kd)をkoff/konの比として算出した。例えば、 Chen et al., J. Mol. Biol. 293:865-881 (1999)を参照。上記の表面プラスモン共鳴アッセイによる結合速度が10−1−1を上回る場合、分光計、例えば、流動停止を備えた分光光度計(stop-flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)又は撹拌キュベットを備えた8000シリーズのSLM−AMINCOTM分光光度計(ThermoSpectronic)で測定される、漸増濃度の抗原の存在下にて、PBS(pH7.2)中、25℃の、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光放出強度(励起=295nm;放出=340nm、帯域通過=16nm)の増加又は減少を測定する蛍光消光技術を用いて結合速度を測定することができる。
【0079】
この発明による「オン速度」、「解離の速度」、「解離速度」又は「kon」は、BIACORE(登録商標)−2000又はBIACORE(登録商標)−3000システム(BIAcore, Inc., Piscataway, NJ)を使用し、上に記載したようにして測定することができる。
【0080】
本明細書で使用される「実質的に同様」又は「実質的に同じ」なる用語は、当業者が、該値(例えばKd値)により測定される生物学的特徴の文脈で2つの値の間に、殆ど又は全く生物学的及び/又は統計的に有意な差がないと考えるように、2つの数値間(例えば本発明の抗体に関連する一方と参照/比較抗体に関連する他方)の十分に高い度合いの類似性を示す。前記2つの値の間の差異は、例えば、参照/比較値の関数として、約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/又は約10%未満である。
【0081】
本明細書で用いる「実質的に減少」、又は「実質的に異なる」という句は、当業者が、2つの値の間の差異が、その値(例えばKd値)によって測定される生物学的特性との関連の中で、統計学的に有意であると考慮するであろうほどに、2つの数値(一般には、一つは分子に関連するもの、他方は参照/比較分子に関連するもの)の間の十分に高度な違いを指す。前記2つの値の間の差異は、参照/比較分子の値に応じて、例えば約10%より大きく、約20%より大きく、約30%より大きく、約40%より大きく、及び/又は約50%より大きい。
【0082】
ある実施態様では、本明細書で有用なヒト化抗体はIgG Fcにアミノ酸変異を含み、野生型IgG Fcを有する抗体においてヒトFcRnに対して、少なくとも60倍、少なくとも70倍、少なくとも80倍、より好ましくは少なくとも100倍、好ましくは少なくとも125倍、更により好ましくは少なくとも150倍から約170倍、増加した結合親和性を示す。
【0083】
「障害」又は「病理学的状態」は本明細書に記述される物質/分子又は方法による治療から利益を得る任意の状態である。これには、哺乳動物に問題の疾患に罹らせる病的状態を含む慢性及び急性の障害又は疾患が含まれる。本明細書において治療されるべき障害の非限定的な例としては、悪性及び良性腫瘍;非白血病及びリンパ系の悪性腫瘍;神経細胞、グリア、星状細胞、視床下部及び他の腺、マクロファージ、上皮、間質及び胞胚腔の障害;及び炎症性、免疫性、その他の血管新生障害を含む。
【0084】
用語「細胞増殖性障害」及び「増殖性疾患」は、ある程度の異常な細胞増殖に関連する障害を言う。一実施態様において、細胞増殖性疾患は癌である。一実施態様において、細胞増殖性疾患は血管新生である。
【0085】
本明細書で用いられる「腫瘍」は、悪性又は良性に関わらず、全ての新生細胞成長及び増殖、及び全ての前癌性及び癌性の細胞及び組織を意味する。「癌」、「癌性」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」及び「腫瘍」はここで言及される場合、相互に排他的ではない。
【0086】
「癌」及び「癌性」という用語は、典型的には調節されない細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか記述する。癌の例には、これらに限定するものではないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病が含まれる。このような癌のより特定の例には、限定しないが、扁平細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、及び肺の扁平癌腫(squamous carcinoma)を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃(gastric)又は腹部(stomach)癌(胃腸癌を含む)、膵臓癌、神経膠芽細胞腫、子宮頸管癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝癌、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓(kidney)又は腎(renal)癌、肝癌、前立腺癌、産卵口癌、甲状腺癌、肝臓癌及び様々なタイプの頭頸部癌、並びにB細胞リンパ腫(低級/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球(SL)NHL;中級/濾胞性NHL;中級びまん性NHL;高級免疫芽細胞性NHL;高級リンパ芽球性NHL;高級小非分割細胞NHL;バルキー疾患NHL;外套細胞リンパ腫;エイズ関連リンパ腫;及びワルデンストロームのマクログロブリン病を含む);慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球白血病(ALL);ヘアリー細胞白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、並びに母斑症に関連した異常な血管増殖、浮腫(例えば脳腫瘍に関連したもの)、及びメイグス症候群が含まれる。
【0087】
「抗腫瘍性組成物」又は「抗癌組成物」又は「抗癌剤」なる用語は、少なくとも一つの活性治療剤、例えば「抗癌剤」を含む、癌を治療する際に有用な組成物を指す。治療剤(抗癌剤)の例には、限定するものではないが、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害性剤、放射線療法に用いられる作用剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及び癌を治療するための他の薬剤、例えば抗HER−2抗体、抗CD20抗体、上皮増殖因子レセプター(EGFR)アンタゴニスト(例えばチロシンキナーゼインヒビター)、HER1/EGFRインヒビター(例えばエルロチニブ(TarcevaTM)、血小板由来成長因子インヒビター(例えばGleevecTM(メシル酸イマチニブ))、COX−2インヒビター(例えばセレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、次の標的ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−β、BlyS、APRIL、BCMA又はVEGFレセプタの一又は複数と結合するアンタゴニスト(例えば中和抗体)、TRAIL/Apo2及び他の生理活性的の有機化学作用剤などが含まれる。また、その組合せも本発明に含まれる。
【0088】
「血管形成因子又は薬剤」は、血管の発達を刺激する、例えば血管新生、内皮細胞増殖、血管の安定性及び/又は脈管形成などを促進する増殖因子である。例えば、血管形成因子には、限定しないが、例えばVEGF及びVEGFファミリーのメンバー、PlGF、PDGFファミリー、線維芽細胞増殖因子ファミリー(FGF)、TIEリガンド(アンギオポイエチン)、エフリン、Del−1、線維芽細胞増殖因子:酸性(aFGF)及び塩基性(bFGF)、ホリスタチン、顆粒性コロニー刺激因子(G−CSF)、肝細胞増殖因子(HGF)/散乱因子(SF)、インターロイキン−8(IL−8)、レプチン、ミドカイン、胎盤増殖因子、血小板由来内皮細胞増殖因子(PD−ECGF)、血小板由来増殖因子、特にPDGF−BB又はPDGFR−β、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、トランスフォーミング増殖因子−α(TGF−α)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、腫瘍壊死因子−α(TNFα)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)/血管透過性因子(VPF)等などが含まれる。また、成長ホルモン、インスリン様増殖因子−I(IGF−I)、VIGF、上皮細胞増殖因子(EGF)、CTGF及びそのファミリのメンバー、及びTGF−α及びTGF−βなどの、創傷治癒を促進する因子を含むであろう。例として、Klagsbrun and D'Amore, Annu. Rev. Physiol. 53:217-39 (1991); Streit and Detmar, Oncogene 22:3172-3179 (2003); Ferrara and Alitalo, Nature Medicine 5(12):1359-1364 (1999); Tonini et al., Oncogene 22:6549-6556 (2003)(例えば、公知の血管新生因子を列挙する表1);及びSato Int. J. Clin. Oncol., 8:200-206 (2003)を参照。
【0089】
ここで使用される「VEGF」なる用語は、Leung等 Science, 246:1306 (1989)、及びHouck等 Mol. Endocrin., 5:1806 (1991)により記載されているような、165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子及び関連する121、189、及び206アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子を、その天然に生じる対立遺伝子及び加工型と共に、意味する。「VEGF」なる用語はまたマウス、ラット又は霊長類のような非ヒト種からのVEGFを意味する。しばしば特定の種からのVEGFは、ヒトVEGFに対するhVEGF、マウスVEGFに対するmVEGF等のような用語によって示される。「VEGF」なる用語はまた165アミノ酸のヒト血管内皮細胞増殖因子のアミノ酸8から109又は1から109を含むポリペプチドの切断型を意味するためにも使用される。VEGFの任意のそのよhな形態を指すときは、本明細書では、例えば、「VEGF(8−109)」、「VEGF(1−109)」又は「VEGF165」によって識別され得る。「切断した(切断型の)」天然のVEGFのアミノ酸位置は、天然のVEGF配列に示される数で示す。例えば、切断型の天然VEGFのアミノ酸位置17(メチオニン)は、天然のVEGF中の位置17(メチオニン)でもある。切断型の天然VEGFは天然のVEGFに匹敵するKDR及びFlt−1レセプターへの結合親和性を有する。好ましい実施態様によれば、VEGFはヒトVEGFである。
【0090】
「VEGFアンタゴニスト」はVEGF又は一又は複数のVEGFレセプター又はそれらをコードする核酸へのその結合を含む、VEGF活性を中和し、ブロックし、抑制し、消失させ、低減させ又は干渉することができる分子を意味する。好ましくは、VEGFアンタゴニストはVEGF又はVEGFレセプターに結合する。VEGFアンタゴニストは抗VEGF抗体及びその抗原結合断片、VEGF及びVEGFレセプターに結合してリガンド−レセプター相互作用をブロックするポリペプチド(例えばイムノアドヘシン、ペプチボディ)、抗VEGFレセプター抗体及びVEGFレセプターアンタゴニスト、例えばVEGFRチロシンキナーゼの小分子阻害剤、VEGFに結合するアプタマー、及びVEGF又はVEGFレセプターをコードする核酸配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸(例えばRNAi)を含む。好ましい一実施態様によれば、VEGFアンタゴニストはVEGFに結合し、インビトロでVEGF誘導内皮細胞増殖を抑制する。好ましい一実施態様によれば、VEGFアンタゴニストはVEGF又はVEGFレセプターに非VEGF又は非VEGFレセプターよりも高い親和性で結合する。好ましい一実施態様によれば、VEGFアンタゴニストは1uM〜1pMのKdでVEGF又はVEGFレセプターに結合する。別の好ましい実施態様によれば、VEGFアンタゴニストは500nM〜1pMでVEGF又はVEGFレセプターに結合する。
【0091】
好ましい実施態様によれば、VEGFアンタゴニストは、抗体、ペプチボディ、イムノアドヘシン、小分子又はアプタマーからなる群から選択される。好ましい実施態様では、抗体は抗VEGF抗体、例えばAVASTIN(登録商標)抗体又は抗VEGFレセプター抗体、例えば抗VEGFR2又は抗VEGFR3抗体である。VEGFアンタゴニストの他の例は、VEGF−Trap、Mucagen、PTK787、SU11248、AG−013736、Bay439006(ソラフェニブ)、ZD−6474、CP632、CP−547632、AZD−2171、CDP−171、SU−14813、CHIR−258、AEE−788、SB786034、BAY579352、CDP−791、EG−3306、GW−786034、RWJ−417975/CT6758及びKRN−633を含む。
【0092】
「抗VEGF抗体」は十分な親和性及び特異性でVEGFに結合する抗体である。好ましくは、本発明の抗VEGF抗体はVEGF活性が関与している疾患又は状態をターゲティング又は干渉する場合の治療薬として使用できる。抗VEGF抗体は通常は他のVEGF相同体、例えばVEGF−B又はVEGF−C、又は他の増殖因子、例えばPIGF、PDGF又はbFGFには結合しない。好ましい抗VEGF抗体はハイブリドーマATCCHB10709により生産されるモノクローナル抗VEGF抗体A4.6.1と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。より好ましくは、抗VEGF抗体はPresta等, (1997) Cancer Res. 57:4593-4599により産生される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体、例えば限定しないが、ベバシツマブ(BV;Avastin(登録商標))として知られる抗体である。別の実施態様によれば、使用できる抗VEGF抗体は国際公開第2005/012359号に開示されている抗体を含むが、それに限定されない。一実施態様によれば、抗VEGF抗体は国際公開第2005/012359号の図24、25、26、27及び29に開示されている抗体(例えばG6、G6−23、G6−31、G6−23.1、G6−23.2、B20、B20−4及びB20.4.1)の何れか一つの可変重鎖及び可変軽鎖領域を含む。別の好ましい実施態様では、ラニビツマブとして知られる抗VEGF抗体は、糖尿病性神経障害及びAMDのような眼の疾患に対して投与されるVEGFアンタゴニストである。
【0093】
抗VEGF抗体「ベバシツマブ(BV)」、別名「rhuMAbVEGF」又は「Avastin(登録商標)」はPresta等, (1997) Cancer Res. 57:4593-4599に従って産生される組換えヒト化抗VEGFモノクローナル抗体である。これは変異ヒトIgG1フレームワーク領域及びヒトVEGFのそのレセプターへの結合をブロックするマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A4.6.1由来の抗原結合相補性決定領域を含む。フレームワーク領域の大部分を含むベバシツマブのアミノ酸配列のおよそ93%はヒトIgG1由来であり、配列の約7%はマウス抗体A4.6.1由来である。ベバシズマブは、およそ149000のダルトンの分子量を有し、グリコシル化されている。他の抗VEGF抗体は米国特許第6884879号及び国際公開第2005/044853号に記載されている抗体を含む。
【0094】
抗VEGF抗体ラニビツマブ、即ちLUCENTIS(登録商標)抗体又はrhuFabV2はヒト化親和性成熟抗ヒトVEGFFab断片である。ラニビツマブは大腸菌発現ベクターにおける標準的な組換え技法及び細菌発酵により製造される。ラニビツマブはグリコシル化されておらず、約48000ダルトンの分子量を有している。国際公開第98/45331号及び米国特許出願公開第20030190317号を参照のこと。
【0095】
血管形成の調節不全は、異常な血管形成を生じ得、すなわち、疾患状態における新しい血管の過剰な、不十分な、又はその他不適切な増殖(例えば、血管形成の位置、タイミング又は発現が、医学的観点から所望されない)、又は疾患状態を生じせしめるように、つまり血管新生疾患をもたらしうる。過剰な、不適切な又は制御されない血管形成は、疾患状態の悪化に寄与するか又は疾患状態を生じる新しい血管増殖が存在するときに生じる。新しい血管は、疾患組織に栄養を与え、正常な組織を破壊し得、癌の場合には、その新しい血管によって腫瘍細胞が循環中に流入し、他の器官に留まりうる(腫瘍転移)。異常な血管形成に関与する疾患状態は、非腫瘍性及び腫瘍性状態の両方を含み、これには、例えば、癌、特に血管新生された固形腫瘍及び転移腫瘍(結腸癌、乳癌、肺癌(特に小細胞肺癌)、又は前立腺癌を含む)、所望されないか又は異常な肥大、関節炎、慢性関節リューマチ(RA)、炎症性腸疾患すなわちIBD(クローン病及び潰瘍性結腸炎)、乾癬、乾癬性プラーク、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、アテローム性動脈硬化性プラーク、糖尿病性網膜症及び未熟児網膜症を含む他の増殖性の網膜症、水晶体後腺維増殖症、血管新生緑内障、加齢関連黄斑変性、糖尿病性斑状浮腫、角膜血管新生、角膜グラフト血管新生、角膜グラフト拒絶、網膜/脈絡膜血管新生、虹彩前面の血管新生(ルベオーシス)、眼の血管新生性疾患、血管再狭窄、動脈静脈奇形(AVM)、髄膜腫、血管腫、血管腺維腫、甲状腺肥大(グレーブス病を含む)、慢性炎症、肺炎症、急性肺傷害/ARDS、敗血症、一次肺高血圧症、悪性肺滲出、脳水腫(例えば急性卒中/閉鎖性頭部傷害/外傷に関連)、滑膜炎症、骨化性筋炎、肥大性骨形成、骨関節炎(OA)、難治性腹水、多嚢胞性卵巣症、子宮内膜炎、第三腔体液疾患(3rd spacing of fluid diseases)(膵炎、コンパートメント症候群、熱傷、腸疾病)、子宮線維症、早産、慢性炎症、例えばIBD、腎臓同種移植片拒絶、炎症性腸疾患、ネフローゼ症候群、望ましくないか又は異常な組織嵩増大(非癌)、血友病性関節、肥大瘢痕、毛髪増殖抑制、オースラー‐ウェーバー症候群、化膿性肉芽腫、水晶体後線維増殖、硬皮症、トラコーマ、血管接着、滑膜炎、皮膚炎、子癇前症、腹水、心内膜液浸出(例えば心内膜炎に関連するもの)及び胸水が含まれる。
【0096】
本明細書で使用される場合、「治療」は、治療されている個体又は細胞の天然の過程を改変するための臨床的介入を意味し、予防のため又は臨床的病理の過程中に実施することができる。治療の望ましい効果には、疾病の発生又は再発の防止、症状の寛解、疾病の任意の直接的又は間接的病理的結果の低減、転移の防止、疾病の進行速度の低減、疾病状態の回復又は緩和、及び寛解又は改善された予後が含まれる。幾つかの実施態様において、本発明の抗体は疾患又は疾病の進行を遅らせるために用いられる。
【0097】
「有効量」とは所望の治療又は予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。
【0098】
本発明の物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの「治療的有効量」は、例えば個体の疾病ステージ、年齢、性別、及び体重、及び個体に所望の応答を誘発する物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの能力などの因子に従って変わりうる。また、治療的有効量は物質/分子、アゴニスト又はアンタゴニストの任意の毒性又は有害な効果よりも治療的に恩恵のある効果が上回るものである。「治療的有効量」という用語は、哺乳類の疾病や疾患(患者としても知られる)の「治療」のために有効なこの発明の抗体、ポリペプチド又はアンタゴニストの量を意味する。癌の場合は、治療的有効量の医薬により、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさ又は重さを小さくし;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の転移を阻害(すなわち、ある程度に遅く、好ましくは止める)し;腫瘍の増殖をある程度阻害し;及び/又は疾患に関連する一又は複数の症状をある程度和らげることが可能である。薬物が、成長を妨げ及び/又は現存の癌細胞を死滅させることができる範囲において、それは細胞分裂停止性及び/又は細胞障害性であり得る。一実施態様では、治療的有効量は増殖阻害量である。別の実施態様では、治療的有効量は、患者の生存期間を延長する量である。別の実施態様では、治療的有効量は、患者の無増悪生存期間を改善する量である。
【0099】
「予防的有効量」とは所望の予防結果を達成するために必要な用量及び時間での効果的な量を意味する。典型的には、必ずではないが、予防的用量は疾患の初期ステージ又はその前の個体に用いるので、予防的有効量は治療的有効量よりも少ない。
【0100】
本明細書において用いられる「細胞傷害剤」という用語は、細胞の機能を阻害又は阻止し及び/又は細胞破壊を生ずる物質を指す。その用語は、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212及びLuの放射性同位体)、化学療法剤(例えば、メトトレキセート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤)、酵素及びその断片、例えば核酸分解酵素など、抗生物質、小分子毒素などの毒素、又は細菌、真菌、植物又は動物由来の酵素活性毒素(それらの断片及び/又はその変異体を含む)、及び以下に開示される様々な抗腫瘍剤又は抗癌剤を包含する。他の細胞傷害性薬物はは以下に記述される。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
【0101】
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化学物質である。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロホスファミドのようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなスルホン酸アルキル類;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパのようなアジリジン類;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン類及びメチラメラミン類;アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ−9−テトラヒドロカナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標);βラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトセシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標)、CPT−11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)及び9−アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;ドゥオカルマイシン(合成アナログ、KW−2189及びCB1−TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロロナファジン(chlornaphazine)、クロロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノボエンビキン(novembichin)、フェネステリン(phenesterine)、プレドニムスチン(prednimustine)、トロフォスファミド(trofosfamide)、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン(chlorozotocin)、フォテムスチン(fotemustine)、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンなどのニトロソウレア(nitrosureas);抗生物質、例えばエネジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン(calicheamicin)、特にカリケアマイシンγ1I及びカリケアマイシンωI1(例えばAgnew Chem Intl. Ed. Engl. 33:183-186(1994)参照);ダイネマイシン(dynemicin)Aを含むダイネマイシン;エスペラマイシン;並びにネオカルチノスタチン発色団及び関連する色素タンパクエネジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン(cactinomycin)、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン(detorbicin)、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン(marcellomycin)、マイトマイシンCのようなマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン(nogalamycin)、オリボマイシン(olivomycins)、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン(tubercidin)、ウベニメクス、ジノスタチン(zinostatin)、ゾルビシン(zorubicin);代謝拮抗剤、例えばメトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸アナログ、例えばデノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート(trimetrexate);プリンアナログ、例えばフルダラビン(fludarabine)、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジンアナログ、例えばアンシタビン、アザシチジン(azacitidine)、6−アザウリジン(azauridine)、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン(enocitabine)、フロキシウリジン(floxuridine);アンドロゲン類、例えばカルステロン(calusterone)、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン(testolactone);抗副腎剤、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸リプレニッシャー(replenisher)、例えばフロリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン(amsacrine);ベストラブシル(bestrabucil);ビサントレン(bisantrene);エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン(demecolcine);ジアジコン(diaziquone);エルフォルニチン(elfornithine);酢酸エリプチニウム(elliptinium);エポシロン;エトグルシド(etoglucid);硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン(lonidamine);メイタンシノイド類、例えばメイタンシン及びアンサミトシン(ansamitocine);ミトグアゾン(mitoguazone);ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラクリン(nitracrine);ペントスタチン;フェナメット(phenamet);ピラルビシン;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, Eugene, OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム(spirogermanium);テニュアゾン酸(tenuazonic acid);トリアジコン(triaziquone);2,2’,2’’−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特にT−2毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジン(roridine)A及びアングイジン(anguidine));ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン(mannomustine);ミトブロニトール;ミトラクトール(mitolactol);ピポブロマン(pipobroman);ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);チオテパ;タキソイド類、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton, N.J.)、ABRAXANETMパクリタキセルのクレモフォー無添加アルブミン操作ナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドキセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer, Antony, France);クロランブシル;ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;プラチナアナログ、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン(leucovovin);ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン(novantrone);エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート(ibandronate);トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸のようなレチノイド;カペシタビン(XELODA(登録商標));上記の何れかの薬学的に許容可能な塩、酸又は誘導体:並びに上記の2以上の組み合わせ、例えば、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンの併用療法の略語であるCHOP、及び5−FU及びロイコボビン(leucovovin)とオキサリプラチン(ELOXATINTM)を組合わせた治療法の略語であるFOLFOXが含まれる。更なる化学療法剤は、抗体薬剤コンジュゲート、例えばメイタンシノイド(例えばDM1)及びオーリスタチンMMAE及びMMAFを例えば含む。
【0102】
「化学療法剤」はまた癌の増殖を助けるホルモンの作用を調節、低減、遮断又は阻害するように働き、多くの場合、全身性又は全身治療の形態である「抗ホルモン剤」を含む。これらはホルモン類自体でもよい。例は、抗エストロゲン及び選択的エストロゲンレセプターモジュレーター(SERM)、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン(trioxifene)、ケオキシフェン(keoxifene)、LY117018、オナプリストーン、及びFARESTON(登録商標)トレミフェン;抗プロゲステロン;エストロゲンレセプター下方調節剤(ERD);卵巣を抑止又は停止させる機能がある作用剤、例えば黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、例えばLUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)酢酸リュープロリド、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリン及びトリプテレリン;その他の抗アンドロゲン、例えばフルタミド、ニルタミド及びビカルタミド;及び副腎のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤、例えば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)酢酸メゲストロール、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、フォルメスタニー(formestanie)、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールである。加えて、化学療法剤のこのような定義には、ビスホスホネート、例えばクロドロン酸(例えば、BONEFOS(登録商標)又はOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロン酸、NE−58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロン酸、SKELID(登録商標)チルドロン酸又はACTONEL(登録商標)、リセドロン酸、並びにトロキサチタビン(troxacitabine)(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体)、アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常な細胞増殖に関係するシグナル伝達経路の遺伝子の発現を阻害するもの、例として、例えばPKC−α、Raf、H−Ras及び上皮性成長因子レセプター(EGF−R)、ワクチン、例えばTHERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン及びVAXID(登録商標)ワクチン、LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1インヒビター、ABARELIX(登録商標)rmRH、ラパチニブジトシラート(ErbB−2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子インヒビター、GW572016とも称される)、及び、上記の何れかの薬学的に受容可能な塩類、酸又は誘導体が含まれる。
【0103】
本明細書で用いられる際の「増殖阻害剤」は、細胞(例えば、Robo4を発現する細胞)の成長及び/又は増殖をインビトロ又はインビボの何れかで阻害する化合物又は組成物を意味する。よって、増殖阻害剤は、Robo4発現細胞のS期においてHip発現細胞の割合を有意に減少させるものである。増殖阻害剤の例は、細胞周期の進行を(S期以外の位置で)阻害する薬剤、例えばG1停止又はM期停止を誘発する薬剤を含む。古典的なM期ブロッカーは、ビンカス(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン類、及びトポイソメラーゼII阻害剤、例えばアントラサイクリン抗生物質ドキソルビシン((8S−シス)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−α−L−リキソ−ヘキサピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンを含む。またG1停止させる薬剤は、S期停止にも波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えば、タモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキセート、5−フルオロウラシル、及びアラ−Cである。更なる情報は、The Molecular Basis of Cancer, Mendelsohn及びIsrael, 編, Chapter 1, 表題「Cell cycle regulation, oncogene, and antineoplastic drugs」, Murakami等, (WB Saunders: Philadelphia, 1995)、特に13頁に見出すことができる。タキサン類(パクリタキセル及びドセタキセル)は、共にイチイに由来する抗癌剤である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、ローン・プーラン ローラー)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、ブリストル−マイヤー スクウィブ)の半合成類似体である。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管の集合を促進し、細胞の有糸分裂を阻害する結果となる脱重合を防ぐことによって微小管を安定化にする。
【0104】
ここで使用される場合、「患者」なる用語は、治療が所望される任意の単一の動物、より好ましくは哺乳動物(非ヒト動物、例えばイヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、及び非ヒト霊長類を含む)意味する。最も好ましくは、ここでの患者はヒトである。
【0105】
本明細書において「被検体(被験者)」とは、血管新生疾患の一又は複数の徴候、症状又は他の指標を被っているか又は被った経験のある、治療に適格な、患者を含む任意の単一のヒト被検体である。被検体として含められるのが意図されるものは、疾患の臨床的徴候を何ら示さない臨床研究試験に関与した任意の被検体、又は疫学研究に関与する被験者、又はコントロールとして一度使用された被検体である。被検体は、VEGFアンタゴニストで過去に治療されていてもよいし、又はそのような治療がされていなくてもよい。被検体は、ここでの治療が開始される際に使用される第二の医薬の投薬を受けていなくてもよく、すなわち、被検体は、「ベースライン」(すなわち、ここでの治療方法において、アンタゴニストの初回用量の投与前の時点での設定点、例えば治療が開始される前の被検体をスクリーニングする日)に、例えば抗腫瘍剤、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害剤で過去に治療されていない場合である。このような「治療未経験の」被検体は一般にこのような第二の医薬での治療のための候補者であると考えられる。
【0106】
「有効量」なる表現は血管新生疾患を治療するのに効果的である医薬の量を意味する。
【0107】
「薬学的製剤」なる用語は、医薬の生物学的活性が効果的であることを可能にするような形態であり、製剤が投与される被検体に毒性が許容されない更なる成分を含まない無菌調製物を意味する。
【0108】
「無菌」製剤は無菌的又はあらゆる生きている微生物やその芽胞を含まない。
【0109】
「パッケージ挿入物」は、適応症、用途、服用量、投与、配合禁忌、パッケージされている製品と併用される他の医薬品、及び/又はそのような医薬品又は医薬の使用に関する警告などについての情報を含む医薬品又は医薬の商業的包装を慣習的に含められる指示書を指すために使用される。
【0110】
「キット」は、少なくとも一の試薬、例えば血管新生疾患の治療のための医薬、又は本発明のバイオマーカー遺伝子又はタンパク質を特異的に検出するためのプローブを有する任意の製造品(例えば、パッケージ又は容器)である。製造品は、好ましくは、本発明の方法を実施するためのユニットとして宣伝され、流通され、又は市販される。
【0111】
医薬に非応答の目的に対して、一又は複数の医薬での過去又は現在の治療から「臨床的に許容できない高レベルの毒性」を経験している被検体は、経験のある臨床医によって顕著であると考えられるそれに関連した一又は複数の負の副作用又は有害事象、例えば、深刻な感染症、鬱血性心不全、脱随(多発性硬化症に至る)、著しい過敏症、神経病理学的症状、高い度合いの自己免疫、癌、例えば子宮内膜癌、非ホジキンリンパ腫、乳癌、前立腺癌、肺癌、卵巣癌、又はメラノーマ、結核(TB)等を経験する。
【0112】
「負の副作用の危険性を低減する」とは、以前投与された医薬での同じ患者又は別の患者の治療に起因して観察される危険性よりも、ここでのアンタゴニストでの治療に起因する副作用の危険性を、低い程度まで低減させることを意味する。このような副作用には、毒性に関して上に記載されたもの、好ましくは感染症、癌、心不全、又は脱髄が含まれる。
【0113】
「相関」又は「相関する」は、何らかの方法で、第一の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果を、第二の分析又はプロトコルの成績及び/又は結果と比較することを意味する。例えば、第二のプロトコルを実施する際に第一の分析又はプロトコルの結果を用いてもよいし、及び/又は第一の分析又はプロトコルの結果を用いて、第二の分析又はプロトコルを実施すべきかどうかを決定してもよい。本明細書における様々な実施態様に関し、分析アッセイの結果を使用して、抗VEGF抗体のようなVEGFアンタゴニストを使用する特定の治療レジメンを実施すべきかどうかを決定することができる。
【0114】
本明細書において使用される「標識」なる語は、核酸プローブ又は抗体などの試薬に直接的又は間接的にコンジュゲートされ又は融合され、それがコンジュゲートされ又は融合されている試薬の検出を容易にする化合物又は組成物を意味する。標識自体が検出可能(例えば放射性標識又は蛍光性標識)であってもよく、又は酵素標識の場合は、検出可能な基質化合物又は組成物の化学的変化を触媒するものであってもよい。該用語は、検出可能な物質をプローブ又は抗体にカップリングさせる(つまり、物理的に結合させる)ことによるプローブ又は抗体の直接的標識、並びに直接的に標識される他の試薬との反応性によるプローブ又は抗体の間接的標識を包含することを意図している。間接的標識の例は、蛍光的に標識される二次抗体を使用して一次抗体を検出し、蛍光標識ストレプトアビジンで検出することができるようにDNAプローブをビオチンで末端標識化することを含む。
【0115】
「発現のレベル」又は「発現レベル」なる用語は、交換可能に使用され、一般に、生物学的試料中のポリヌクレオチド又はアミノ酸生成物又はタンパク質の量を意味する。「発現」は、遺伝子コード情報が、細胞中に存在し操作される構造に変換されるプロセスを意味する。従って、本発明によれば、遺伝子の「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、タンパク質への翻訳、又はタンパク質の翻訳後修飾を意味しうる。転写されたポリヌクレオチド、翻訳されたタンパク質、又は翻訳後修飾されたタンパク質の断片は、また選択的スプライシング又は分解された転写物により、又はタンパク質の翻訳後プロセシング、例えばタンパク質分解から生成された転写物由来であろうがなかろうが、発現したとみなされる。「発現した遺伝子」には、mRNAとしてポリヌクレオチドに転写され、ついでタンパク質に翻訳されたもの、及びRNAに転写はされたが、タンパク質には翻訳されていないもの(例えば、トランスファー及びリボソームRNA)が含まれる。
【0116】
ここで使用される場合、「共変量」なる用語は、患者に関するある種の変量又は情報を意味する。臨床的エンドポイントは回帰モデルにおいて頻繁に考慮され、エンドポイントは従属変量を表し、バイオマーカーは主又は標的独立変量(リグレッサー)を表す。臨床的データプールからの付加的な変量が考慮される場合、それらは(臨床的)共変量として示される。
【0117】
「臨床的共変量」なる用語は、ベースラインで一般的に利用される患者についての全ての臨床的情報を記述するためにここでは使用される。これらの臨床的共変量は、性別、年齢等の人口統計学的情報、他の既往の情報、合併症、併用治療、身体検診の結果、得られた一般的な実験室パラメータ、血管新生疾患の既知の性質、臨床疾患の段階分け、前治療のタイミング及び結果、病歴、並びに治療に対する臨床反応に関連しうるあらゆる類似の情報を含む。
【0118】
本明細書において使用される場合、「生分析」又は「未調整分析」なる用語は、考慮されるバイオマーカーの他に、何の付加的な臨床的共変量も、独立因子又は階層化共変量としても回帰モデルで使用されない回帰分析を意味する。
【0119】
本明細書において使用される場合、「共変量により調節される」は、考慮されるバイオマーカーの他に、付加的な臨床的共変量が、独立因子又は階層化共変量として回帰モデルで使用される回帰分析を意味する。
【0120】
本明細書において使用される場合、「単変量」なる用語は、独立因子として、標的バイオマーカーのみがモデルの一部である、回帰モデル又は図表を意味する。これらの単変量モデルは、付加的な臨床的共変量と共に又は該共変量なしに考慮されうる。
【0121】
本明細書において使用される場合、「多変量」なる用語は、独立変量として、標的バイオマーカーの一を越えるものがモデルの一部である回帰モデル又は図表を意味する。これらの多変量モデルは、付加的な臨床的共変量と共に又は該共変量なしに考慮されうる。
【0122】
III.VEGFアンタゴニストに対して応答性の患者を同定する方法
本発明はVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)療法に応答性である可能性のある患者を同定し、及び/又はモニターするための方法を提供する。該方法は、患者へのVEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)の投与が効果的である可能性を増加させるのにとりわけ有用である。該方法は、患者からの生物学的試料中の一又は複数の遺伝子バイオマーカーの発現を検出することを含み、ここで、一又は複数のかかるバイオマーカーの発現が、患者が抗VEGF抗体のようなVEGFアンタゴニストに対して感受性か又は応答性であるかどうかの指標である。
【0123】
より特定的には、患者からの試料中の表1(即ち、DLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、第V因子、第VIII因子(AHF)、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、ESM1、及びストローマ由来増殖因子(SDF1))に記載された少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14の遺伝子の発現レベルを決定することは、患者が抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストに対して応答性か又は感受性であるかどうかをモニターするのに有用である。本明細書に記載される方法の何れかのために、DLL4、ANGPT2、NOS2、第V因子、AHF、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、FN_EIIIB、ESM1、及びSDF1からなる群から選択される2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13の遺伝子の任意の組み合わせの発現レベルを決定することができる。別法として、本明細書に記載される方法の何れかのために、全14遺伝子の発現レベル(即ち、DLL4、ANGPT2、NOS2、第V因子、AHF、EGFL7、EFNA3、PGF、ANGPTL1、SELP、Cox2、FN_EIIIB、ESM1、及びSDF1)を決定することができる。
【0124】
開示された方法及びアッセイは、患者を治療するための適切なまたは効果的な治療法を評価するのに有用なデータ及び情報を得るために、便利で効率的、かつ潜在的に費用効果の高い手段を提供する。例えば、患者はVEGFアンタゴニストでの治療前後の組織試料(例えば、腫瘍生検又は血液試料)を提供し、該試料は、患者の細胞が抗VEGF抗体のようなVEGFアンタゴニストに対して感受性かどうかを決定するために様々なインビトロアッセイによって検査される。
【0125】
本発明は、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストに対する患者の感受性又は応答性をモニターするための方法を提供する。該方法は、遺伝子又はタンパク質発現を検出するアッセイ(例えばPCR及び酵素イムノアッセイ)及び適切な活性を検出する生化学アッセイを含む様々なアッセイ型式で実施することができる。試料中のそのようなバイオマーカーの発現又は存在の決定は、試料を提供する患者が抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストの生物学的効果に対して感受性であることの予測となる。ここでの出願人の発明は、患者からの試料中の表1に記載された少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14の遺伝子の発現の変化(即ち、増加又は減少)が、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストによりそのような患者の治療と相関するというものである。実施例1は、抗VEGF抗体治療がDLL4、アンジオポエチン2(Angpt2)、NOS2、EGFL7、EFNA3、PGF、Cox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、及びESM1のレベルの減少と、並びに、第V因子、第VIII因子(AHF)、ANGPTL1、P−セレクチン(SELP)、及びストローマ由来増殖因子(SDF1)のレベルの増加をもたらし、従って、様々な実施態様において、本明細書に記載の方法におけるそのようなレベルの検出は本発明に含まれる。典型的には、対照試料(例えばVEGFアンタゴニストでの治療前に同じ患者から得られた試料、VEGFアンタゴニストで治療されていない一又は複数の無関係の個体から得られた試料又はプール試料)における発現に対して遺伝子の少なくとも一つにおける発現の少なくとも約1.5倍、1.6倍、1.8倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍の変化(即ち、減少又は増加)、あるいは測定される遺伝子の平均発現レベルから少なくとも約−2、−3、−4、−5、又は−6の標準偏差の平均対数比の変化(即ち、減少又は増加)が、患者がVEGFアンタゴニストでの治療に応答するか又は感受性であることを示している。
【0126】
本発明の方法によれば、特定の個体(例えば患者)がVEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性が高いとする可能性は、表1に一覧される遺伝子の少なくとも一の発現レベルを決定し、参照発現レベルに対して遺伝子の発現レベルを比較することにより決定することができる。例えば、上述したように、参照発現レベルは、VEGFアンタゴニストに対する応答性について試験される患者の群/集団中の少なくとも一遺伝子の発現レベルの中央値であってもよい。幾つかの実施態様において、参照発現レベルは、先の時点で個体から以前に得られた試料中の少なくとも一遺伝子の発現レベルである。他の実施態様において、個体は、原発腫瘍の状態でVEGFアンタゴニストによる前治療を受けた患者である。幾つかの実施態様において、個体は転移を経験している患者である。本明細書に記載されるような、少なくとも一のバイオマーカー遺伝子の参照発現レベルよりも高いか又は低い発現レベルを有する個体は、VEGFアンタゴニストによる治療に対して応答する可能性のある被験体/患者として同定される。中央値に対して、例えば50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、又は5%での(即ち高いか又は低い)遺伝子発現レベルを示す被験体/患者は、VEGFアンタゴニストによる治療に応答する可能性のある患者として同定される。被験体/患者は、VEGFアンタゴニストによる治療に応答性である可能性が増加していると通知され、及び/又は抗癌治療法はVEGFアンタゴニストを含むとする推奨を与えられる場合がある。遺伝子発現レベルは、当該分野で公知で、例えば、Sokal R.R. and Rholf, F.J. (1995) “Biometry: the principles and practice of statistics in biological research," W.H. Freeman and Co. New York, NYに記載される方法を用いて、本明細書に記載されるバイオマーカー遺伝子の少なくとも一を用いて、又は本明細書に記載されるバイオマーカー遺伝子の一次結合(例えば、平均、加重平均、又は中央値)を用いて決定することができる。
【0127】
一態様において、この発明は、血管新生障害を持つ患者が、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストによる治療に応答するかどうかをモニタリングする方法であって、(i)任意のVEGFアンタゴニストが患者に投与される前、又は(ii)そのような治療の前後でのどちらかで得られた患者からの試料中の表1に一覧された少なくとも一遺伝子の発現を、バイオマーカーとして評価することを含む方法を提供する。参照レベル(上記参照)に対して遺伝子の少なくとも一の発現の変化(即ち、増加又は減少)は、患者が抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストによる治療に応答するであろうことを示す。患者は、VEGFアンタゴニストによる治療に応答するる可能性が増加していると通知され、及び/又は抗癌治療法はVEGFアンタゴニストを含むとする推奨を与えられる場合がある。
【0128】
別の実施態様において、本発明は、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストに対する患者の感受性又は応答性をモニターするための方法を提供する。この発明は、患者の試料から表1に一覧された少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14の遺伝子の遺伝子発現を評価し、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストに対する患者の感受性又は応答性を予測することを含み、ここで少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14の遺伝子の発現の変化(即ち、増加又は減少)は、VEGFアンタゴニストによる効果的治療に対する患者の感受性又は応答性と相関する。この方法の一実施態様によれば、生物学的試料は、任意のVEGFアンタゴニストの投与前に患者から得られ、試料中の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14の遺伝子の発現生成物のレベルを評価するアッセイを受ける。もし、参照レベル(例えば上記参照)に対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14の遺伝子の発現が変わる(即ち、増加又は減少する)場合、患者は抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストによる治療に感受性又は応答性であることが決定される。患者は、VEGFアンタゴニストによる治療に感受性又は応答性である可能性が増加していると通知され、及び/又は抗癌治療法はVEGFアンタゴニストを含むとする推奨を与えられる場合がある。この方法の別の実施態様において、生物学的試料は、本明細書に記載されるように、VEGFアンタゴニストの投与の前と後で、患者から得られる。
【0129】
医療技術の当業者は、特に診断検査及び治療法での治療の適用に関して、生物システムはいくらかは可変であり、必ずしも完全に予測可能ではなく、よって多くの良好な診断検査又は治療法は、時折、効果的ではないことを認めるであろう。よって、検査結果、患者の症状及び病歴、及び患者自身の経験に基づいて、個々の患者に対して最も適切な治療過程を決定するのは、担当医の判断に最終的には委ねられる。例えば、特にもし全ての又は殆どの他の自明な治療選択肢が失敗するか、又は他の治療を付与したときにある相乗効果が期待されるならば、診断検査又は他の基準からのデータに基づいて、患者がVEGFアンタゴニストに特に感受性であることが予測されない場合でさえ、医師は抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストで患者を治療することを選択する場合でさえありうる。
【0130】
更に表現された実施態様では、本発明は、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストでの治療に対する患者の感受性を予測し、又は患者がVEGFアンタゴニストでの治療に効果的に応答するかどうかを予測する方法において、試料中に発現されたここで同定された遺伝子マーカーの一又は複数のレベルを評価し、VEGFアンタゴニストによる阻害に対する患者の感受性を予測することを含み、ここで、これらの遺伝子バイオマーカーの発現レベルが、VEGFアンタゴニストでの治療に対する効果的な応答に対する患者の高感受性と相関する方法を提供する。
【0131】
本発明は、その発現レベルが抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストに対する特定の患者の感受性又は応答性を予測するバイオマーカーを同定する方法において、(a)VEGFアンタゴニストに対する感受性の範囲を示す細胞パネル中の候補バイオマーカーの発現レベルを測定し、(b)細胞における上記候補バイオマーカーの発現レベル、血清陽性、又は存在とVEGFアンタゴニストに対する患者の感受性又は応答性との間の相関を特定することを含み、ここで、相関が、上記バイオマーカーの発現レベル、血清陽性、又は存在がVEGFアンタゴニストによる治療に対する患者の応答性を予測することを示す方法を更に提供する。この発明の一実施態様では、細胞パネルは、患者又は実験動物モデルから得られた試料から調製される試料パネルである。更なる実施態様では、細胞のパネルはマウス異種移植の細胞株パネルであり、ここで、応答性は例えば表1に一覧される遺伝子の少なくとも一つをモニターすることにより決定されうる。
【0132】
本発明はまた抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストに対する感受性又は応答性をモニターするのに有用であるバイオマーカーを同定する方法であって、(a)任意の用量のVEGFアンタゴニストが患者に投与される前に得られた血管新生疾患の患者からの試料中の候補バイオマーカーのレベルを測定することを含み、ここで、対照に対する候補バイオマーカーの発現の変化(例えば、増加又は減少)が、バイオマーカーがVEGFアンタゴニストでの血管新生疾患のより効果的な治療の診断となることを示す方法を提供する。幾つかの実施態様では、バイオマーカーは遺伝子であり、その発現が分析される。
【0133】
試料は、血管新生障害を有することが疑われるか又は有すると診断され、それゆえ治療を必要としている可能性がある患者、あるいは全く障害への罹患が疑われない正常個体から採取され得る。マーカー発現の評価のために、細胞又はこれらの細胞により生成されたタンパク質又は核酸を含むものなどの患者試料が、本発明の方法において使用され得る。この発明の方法において、バイオマーカーのレベルは、試料、好ましくは組織資料(例えば、生検などの腫瘍組織試料)中のマーカーの量(例えば、絶対量又は濃度)を評価することによって決定することができる。更に、バイオマーカーのレベルは、バイオマーカーの検出可能なレベルを含む体液又は排泄物で評価することができる。簡潔には、本発明の試料として有用な体液又は排泄物は、例えば、血液、尿、唾液、便、胸膜液、リンパ液、痰、腹水、前立腺液、脳脊髄液(CSF)、又は任意の他の身体の分泌物又はその誘導体を含む。血液なる語は、全血、血漿、血清、又は血液の任意の派生物を含むことを意味する。そのような体液又は排出物中におけるバイオマーカーの評価は、侵襲的なサンプリング方法が不適切か不便である状況下で時には好ましい場合がある。しかしながら、試料が体液である場合には、ここで検査される試料は、好ましくは、血液、滑膜組織、又は滑液、最も好ましくは血液である。
【0134】
試料は、凍結、新鮮、固定(例えばホルマリン固定)、遠心分離、及び/又は包埋(例えばパラフィン包埋)等されていてもよい。細胞試料には、もちろん、試料中のマーカー量を評価する前に、様々なよく知られた収集後調製及び保存技術(例えば核酸及び/又はタンパク質抽出、固定、貯蔵、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離等)を施すことができる。同様に、バイオプシーにもまた例えば固定化のような収集後調製及び保存技術を施してもよい。
【0135】
本明細書に記載される何れかの方法において、個体(例えば、患者/被験体)は、VEGFアンタゴニストによる治療に感受性又は応答性である可能性の増加又は減少について知らされ;抗癌治療法(例えば、VEGFアンタゴニストを含むか又は含まない抗癌治療法)の推奨を与えられ;及び/又は適切な治療法(例えば、VEGFアンタゴニスト及び/又は他の抗血管新生剤)を選択することができる。
【0136】
A.遺伝子発現の検出
本明細書において記載された遺伝子バイオマーカーは従来から知られている任意の方法を使用して検出することができる。例えば、哺乳動物からの組織又は細胞試料はノーザン、ドットブロット、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析、アレイハイブリダイゼーション、RNase保護アッセイを使用して、又はDNAマイクロアレイスナップショットを含む商業的に入手可能なDNA SNPチップマイクロアレイを使用して、対象の遺伝子バイオマーカーからの例えばmRNA又はDNAについて簡便にアッセイすることができる。例えば、リアルタイムPCR(RT−PCR)アッセイ、例えば定量的PCRアッセイは当該技術分野でよく知られている。本発明の例示的な実施態様では、生物学的試料中の対象の遺伝子バイオマーカーからmRNAを検出する方法は、少なくとも一つのプライマーを使用して逆転写により試料からcDNAを生産し;そのようにして生産されるcDNAを増幅し;増幅されたcDNAの存在を検出することを含む。また、そのような方法は、(例えばアクチンファミリーメンバーのような「ハウスキーピング」遺伝子の比較コントロールmRNA配列のレベルを同時に調べることによって)生物学的試料中のmRNAのレベルを決定することを可能にする一又は複数の工程を含みうる。場合によっては、増幅されたcDNAの配列を決定することができる。
【0137】
1.核酸の検出
特定の一実施態様では、本明細書に記載される遺伝子の発現はRT−PCR技術によって実施することができる。PCRに使用されるプローブは、検出可能マーカー、例えば放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤、又は酵素で標識されうる。このようなプローブ及びプライマーは、表1に記載された試料中の発現遺伝子の存在を検出するために使用することができる。当業者により理解されるように、非常に多くの異なるプライマー及びプローブが調製され、増幅し、クローニングし、及び/又は表1に記載の一以上の遺伝子の存在及び/又は発現レベルを決定するために効果的に使用される。
【0138】
他の方法は、マイクロアレイ技術によって組織又は細胞試料中における表1に記載された遺伝子の少なくとも一つからのmRNAを検査又は検出するプロトコルを含む。核酸マイクロアレイを用いて、試験及び対照組織サンプル由来の試験及び対照のmRNAサンプルは逆転写され、cDNAプローブを生成するために標識される。次いで、プローブを固体支持体上に固定化された核酸のアレイにハイブリダイズさせる。アレイは、アレイの各メンバーの配列と位置が分かるように構成される。例えば、所定の疾患状態で発現される可能性を有している遺伝子の選択物が固体支持体上に配置されうる。特定のアレイメンバーとの標識プローブのハイブリダイゼーションは、プローブが由来するサンプルがその遺伝子を発現することを示している。疾患組織の遺伝子発現差の解析が貴重な情報を提供しうる。マイクロアレイ技術は単一の実験で何千の遺伝子のmRNA発現プロファイルを評価するために核酸ハイブリダイゼーション技術及び計算技術を利用する(例えば国際公開第2001/75166号を参照)。アレイ製造の検討については、例えば米国特許第5700637号、米国特許第5445934号及び米国特許第5807522号、Lockart, Nature Biotechnology 14:1675-1680 (1996);及びCheung et al., Nature Genetics 21(Suppl):15-19 (1999)を参照のこと。
【0139】
加えて、欧州特許第1753878号に記載されているマイクロアレイを利用するDNAプロファイリング及び検出方法を用いることができる。この方法は、短いタンデム反復(STR)分析とDNAマイクロアレイを利用して、異なったDNA配列を素早く同定し識別する。ある実施態様では、標識されたSTR標的配列は、相補的プローブを担持するDNAマイクロアレイにハイブリダイズさせる。これらのプローブは長さが様々で、可能なSTRの範囲をカバーする。DNAハイブリッドの標識された一本鎖領域は、ハイブリダイゼーション後の酵素的消化を利用し、マイクロアレイ表面から選択的に除去される。未知の標的における反復の数は、マイクロアレイにハイブリダイズされたままの標的DNAのパターンに基づき推定される。
【0140】
マイクロアレイプロセッサーの一例は、Affymetrix GENECHIP(登録商標)システムであり、これは商業的に入手可能で、ガラス表面上でオリゴヌクレオチドを直接合成することにより製造されるアレイを含む。当業者に知られているように他のシステムを使用してもよい。
【0141】
RT−PCR又は他のPCRベースの方法の他に、バイオマーカーのレベルを測定するための他の方法には、プロテオミクス技術、並びに分子レベルでの患者の応答に基づく血管新生疾患の治療に必要な個別化された遺伝的プロファイルが含まれる。本明細書における特殊化されたマイクロアレイ、例えばオリゴヌクレオチドマイクロアレイ又はcDNAマイクロアレイは、一又は複数の抗VEGF抗体に対する感受性又は耐性のどちらかと相関している発現プロファイルを有する一又は複数のバイオマーカーを含みうる。本発明において使用のための、核酸を検出するために用いることができる他の方法は、たとえば、RNASeqなどの、RNAに基づくゲノム解析を含むハイスループットRNA配列発現分析を含む。
【0142】
上記技術を適用する際の指針を提供する多くの文献が入手可能である(Kohler et al., Hybridoma Techniques (Cold Spring Harbor Laboratory, New York, 1980); Tijssen, Practice and Theory of Enzyme Inimunoassays (Elsevier, Amsterdam, 1985); Campbell, Monoclonal Antibody Technology (Elsevier, Amsterdam, 1984); Hurrell, Monoclonal Hybridoma Antibodies: Techniques and Applications (CRC Press, Boca Raton, FL, 1982);及びZola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, pp. 147-1 58 (CRC Press, Inc., 1987))。ノーザンブロット分析は、当技術分野で周知の従来技術であり、例えば、Molecular Cloning, a Laboratory Manual,第2版, 1989, Sambrook, Fritch, Maniatis, Cold Spring Harbor Press, 10 Skyline Drive, Plainview, NY 11803-2500に記載されている遺伝子の状態および遺伝子産物を評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al. eds., 1995, Current Protocols In Molecular Biology, ユニット2(ノーザンブロッティング)、4(サザンブロッティング)、15(イムノブロッティング)及び18(PCR分析)に見いだされる。
【0143】
2.タンパク質の検出
例えば、表1に一覧される少なくとも一遺伝子に対応するタンパク質バイオマーカーなどのタンパク質バイオマーカーの検出については、例えば、抗体ベースの方法、並びに質量分析法及び当該技術分野で周知の他の類似の手段を含む様々なタンパク質アッセイが利用できる。抗体ベースの方法の場合、例えば、サンプルは、抗体−バイオマーカー複合体を形成するのに十分な条件下で、前記バイオマーカーに特異的な抗体と接触させ、次いで前記複合体を検出することができる。タンパク質バイオマーカーの存在の検出は、血漿又は血清を含む多様な組織及び試料をアッセイするための多くの方法で、例えば、ウエスタンブロット法(免疫沈降を伴うか伴わない)、二次元SDS−PAGE、免疫沈降、蛍光標示式細胞分取器(FACS)、フローサイトメトリー、及びELISA法で評価されうる。このようなアッセイ形式を使用する広範囲のイムノアッセイ技術が利用可能であり、例えば、米国特許第4,016,043号、第4,424,279号及び第4,018,653号を参照。これらは、非競合型の単一部位及び二部位又は「サンドイッチ」アッセイ、並びに従来の競合結合アッセイの両方が含まれる。たこれらのアッセイは、標的バイオマーカーへの標識抗体の直接の結合を含む。
【0144】
サンドイッチアッセイは、最も有用で一般的に使用されているアッセイである。サンドイッチアッセイ技術の多くの変形法が存在し、全てが本発明に包含される。簡単に述べると、典型的なフォワードアッセイでは、未標識抗体が固体基質に固定され、試験される試料が結合分子と接触させられる。適切なインキュベート時間の後、抗体抗原複合体の形成を可能にするのに十分な時間、検出可能なシグナルを生成可能なレポーター分子で標識された抗原に特異的な第2の抗体をついで添加し、抗体抗原標識抗体の他の複合体を形成させるのに十分な時間インキュベートする。あらゆる未反応物質を洗い流し、抗原の存在を、レポーター分子により生成されるシグナルの観察により決定する。結果は、可視シグナルを単に観察することによる定性的か、又は既知量のバイオマーカーを含むコントロール試料と比較することによる定量的かの何れかでありうる。
【0145】
フォワードアッセイの変形法は、試料と標識抗体の双方を、結合した抗体に同時に添加する同時アッセイを含む。これらの技術は、容易に明らかになるであろう任意の小さな変更を含み、当業者にはよく知られている。典型的なフォワードサンドイッチアッセイでは、バイオマーカーに対して特異性を有する第1の抗体が、固体表面に共有的に又は受動的に結合される。固体表面は、典型的にはガラス又はポリマーであり、最も一般的に使用されるポリマーは、セルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、又はポリプロピレンである。固体支持体は、チューブ、ビーズ、マイクロプレートのディスク、又は免疫アッセイの実施に適した任意の他の表面形態でありうる。結合方法は当該技術分野でよく知られており、一般に架橋共有結合又は物理的吸着からなり、ポリマー抗体複合体は、試験試料の調製において洗浄される。ついで、試験される試料のアリコートが、固相複合体に添加され、十分な時間(例えば、2−40分又は都合がよければ一晩)、適切な条件下(例えば室温から40℃、例えば25℃〜32℃)でインキュベートし、抗体中に存在するあらゆるサブユニットの結合を可能にする。インキュベーション時間後、抗体サブユニット固相を洗浄し、乾燥させ、バイオマーカーの一部に特異的な二次抗体と共にインキュベートする。二次抗体は、分子マーカーへの二次抗体の結合を示すために使用されるレポーター分子に結合させる。
【0146】
代替法は、試料中の標的バイオマーカーを固定し、ついでレポーター分子で標識されていてもされていなくともよい特異的抗体へ固定化標的を暴露することを含む。標的の量及びレポーター分子シグナルの強度に応じて、結合した標的は、抗体で直接標識することによって検出可能であり得る。あるいは、一次抗体に特異的な標識された二次抗体を、標的一次抗体複合体に暴露して、標的一次抗体二次抗体の三重複合体を形成せしめる。複合体はレポーター分子により発光されるシグナルで検出される。本明細書で使用される「レポーター分子」とは、その化学的性質により、抗原結合抗体の検出を可能にする分析的に同定可能なシグナルを提供する分子を意味する。この種のアッセイで最も一般的に使用されるレポーター分子は、酵素、フルオロフォア又は放射性核種含有分子(すなわち放射性同位元素)及び化学発光分子の何れかである。
【0147】
酵素免疫アッセイの場合、酵素は、一般的にグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩により、二次抗体にコンジュゲートされる。しかしながら、容易に認識されるように、当業者に直ぐに利用可能な広範な異なったコンジュゲート技術が存在する。一般的に使用される酵素には、とりわけ、西洋わさびペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びアルカリホスファターゼが含まれる。特異的酵素と共に使用される基質は、一般的に、対応する酵素による加水分解時に、検出可能な色調変化を生じるように選択される。適切な酵素の例には、アリカリホスファターゼ及びペルオキシダーゼが含まれる。また、上述したような発色性基質よりも、蛍光産物を生じる蛍光発生基質を使用することもできる。全ての場合、酵素標識された抗体を、一次抗体分子マーカー複合体に添加して結合させ、ついで過剰の試薬を洗い流す。次に、適切な基質を含む溶液を抗体抗原抗体の複合体に添加する。基質を二次抗体に結合した酵素と反応させ、定性的な可視シグナルを得、これを通常は分光光学的にさらに定量し、試料中に存在していたバイオマーカーの量の指標を得る。別法では、蛍光化合物、例えばフルオレセイン及びローダミンを、それらの結合能力を変えることなく、抗体に化学的にカップリングさせうる。特定の波長の光を有する照明により活性化すると、蛍光色素で標識された抗体は光エネルギーを吸着し、分子内に励起状態を誘発し、光学顕微鏡を用いて視覚的に検出可能な特徴的な色調の光を発光する。EIAにおけるように、蛍光標識抗体は、一次抗体分子マーカー複合体に結合せしめられる。未結合の試薬を洗い流した後、残存している三重複合体を適切な光の波長に暴露させると、観察される蛍光が、関心ある分子マーカーの存在を示す。免疫蛍光法及びEIA技術は、双方とも、当該技術分野で十分に確立されている。しかしながら、他のレポーター分子、例えば放射性同位元素、化学発光又は生物発光分子を用いることもまたできる。
【0148】
B.キット
バイオマーカーの検出に使用するため、キット又は製造品もまた本発明により提供される。このようなキットは、血管新生疾患を患っている被検体がVEGFアンタゴニストに対して効果的に応答性であるかを決定するために使用することができる。これらのキットは、バイアル、チューブ等の一又は複数の容器手段を閉じ込めて収容するように区画化されたキャリア手段を含み、各容器手段は本方法で使用される別個の要素の一つを含む。例えば、容器手段の一つは、標識されているか又は検出可能に標識されうるプローブを含みうる。そのようなプローブは、それぞれタンパク質又はメッセージに特異的なポリペプチド(例えば、抗体)又はポリヌクレオチドでありうる。キットが核酸ハイブリダイゼーションを利用して標的核酸を検出する場合、キットは、標的核酸配列を増幅するためのヌクレオチドを収容する容器、及び/又はレポーター手段、例えばビオチン結合タンパク質、例えばアビジン又はストレプトアビジンを、レセプター分子、例えば酵素、蛍光、又は放射性同位元素標識に結合して含有する容器を有しうる。
【0149】
そのようなキットは、上述の容器、及び緩衝液、希釈液、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書と共にパッケージ挿入物を含む、商業用及び使用者の観点から望ましい物質を含む、一又は複数の他の容器を典型的には含むであろう。ラベルは、組成物が特定の用途に使用されることを示すように容器に存在し、またインビボ又はインビトロ使用のための指示、例えば上述したものを示しうる。
【0150】
本発明のキットは多くの実施態様を有する。典型的な実施態様は、容器、該容器上のラベル、及び該容器に収容された組成物を含むキットであり、ここで組成物は、タンパク質又は自己抗体バイオマーカーに結合する一次抗体を含み、該容器上のラベルは、組成物が試料中のこのようなタンパク質又は抗体の存在を評価するために使用可能であることを示し、キットは、特定の試料タイプ中におけるバイオマーカータンパク質の存在を評価するために抗体を使用することについての使用説明書を含む。本キットは、試料を調製し、試料に抗体を適用するための使用説明書と材料のセットを更に含みうる。本キットは一次及び二次抗体の双方を含み、ここで、二次抗体は標識、例えば酵素標識にコンジュゲートされている。
【0151】
他の実施態様は、容器、該容器上のラベル、及び該容器内に収容された組成物を含むキットであり、組成物は、ストリンジェントな条件下で本明細書に記載のバイオマーカーの相補体にハイブリダイズする一又は複数のポリヌクレオチドを含み、上記容器上のラベルは、組成物が、本明細書に記載の試料中のバイオマーカーの存在を評価するために使用可能であることを示し、キットは、特定の試料タイプ中のバイオマーカーRNA又はDNAの存在を評価するためにポリヌクレオチドを使用することについての使用説明書を含む。
【0152】
キットの他の任意の成分には、一又は複数の緩衝液(例えば、ブロッキング緩衝液、洗浄緩衝液、基質緩衝液等)、他の試薬、例えば酵素標識により化学的に改変される基質(例えば色素原)、エピトープ回収液、対照試料(正及び/又は負の対照)、対照スライド等が含まれる。またキットには、キットを使用して得られる結果を解釈するための説明書を含めることもできる。
【0153】
抗体ベースキットについての更なる特定の実施態様では、キットは、例えば、(1)バイオマーカータンパク質に結合する第1の抗体(例えば、固体支持体に結合);場合によっては、(2)タンパク質又は第1の抗体の何れかに結合し、検出可能な標識にコンジュゲートする第2の異なる抗体を含みうる。
【0154】
オリゴヌクレオチドべースキットに対しては、該キットは、例えば(1)バイオマーカータンパク質をコードする核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド、例えば検出可能に標識されたオリゴヌクレオチド、又は(2)バイオマーカー核酸分子を増幅するのに有用なプライマー対を含むことができる。また本キットは、例えば緩衝剤、保存料、又はタンパク質安定剤をまた含みうる。本キットは、検出可能な標識を検出するのに必要な成分(例えば、酵素又は基質)を更に含むことができる。また、キットは、アッセイされ、試験試料と比較されうる対照試料又は一連の対照試料を含みうる。キットの各成分は、個々の容器内に包含せしめることができ、様々な容器の全てが、キットを使用して実施されるアッセイの結果を解釈するための説明書と共に、単一パッケージ内にありうる。
【0155】
C.統計
ここで使用される場合、予測ルールの一般的形態は、応答性又は非応答性を予測し、又はより一般的には、適切に定められた臨床エンドポイントによる有益性又は有益性の欠如を予測するための臨床的共変量を潜在的に含む一又は複数のバイオマーカーの関数の仕様からなる。
【0156】
予測ルールの最も単純な形態は、予測がカットオフ又は閾値によって決定される共変量のない一変量モデルからなる。これは、特定のカットオフc、バイオマーカー測定xについてのヘビサイド関数により表すことができ、二値予測(binary prediction)A又はBは次のように作成される:
H(x−c)=0ならば、Aを予測。
H(x−c)=1ならば、Bを予測。
【0157】
これは、予測ルールにおいて、一変量バイオマーカー測定を使用する最も簡単な方法である。このような単純なルールが十分である場合、効果の方向性、すなわち高い又は低い発現レベルが患者にとって有益であるかどうかを、簡単に同定することが可能になる。
【0158】
臨床的共変量を考慮することが必要である場合、及び/又は多変量の予測ルールにおいて複数のバイオマーカーが使用される場合、この状況は更に複雑になりうる。2つの仮説例が関与する問題点を以下に例証する:
【0159】
共変量調整(仮説例):
バイオマーカーXについて、高発現レベルが悪い臨床応答に関与していることが、臨床試験集団において見出される(一変量解析)。詳細な解析が、集団には2種類のRA臨床応答が存在し、その第一の群が第二の群よりも悪い応答を有し、同時に第一の群に対するバイオマーカー発現が少なくとも一用量のVEGFアンタゴニストの投与後に一般により高いことを示す。調整共変量分析は、各群について、臨床有益性と臨床応答との間の関係が逆転し、すなわち群内で、より低い発現レベルは良好な臨床応答に関連していることを明らかにする。全体的な逆の効果は共変量タイプによりマスクされ、予測ルールの一部としての共変量調整解析はその方向を逆転させた。
【0160】
多変量予測(仮説例):
バイオマーカーXについて、高発現レベルが悪い臨床応答に僅かに関与していることが、臨床試験集団において見出される(一変量分析)。第2のバイオマーカーYについては、同様な観察が一変量分析によってなされた。XとYの組合せはでは、双方のバイオマーカーが低い場合に、良好な臨床応答が見られることが明らかになった。これにより、双方のバイオマーカーが所定のカットオフよりも低いならば、有益であると予測されるという規則が作成される(ヘビサイド予測関数のAND−−接続)。組合せ規則については、一変量の意味における単純なルールはもはや通用しない;例えば、Xにおいて低い発現レベルを有していても、より良好な臨床応答を自動的には予測しないであろう。
【0161】
これらの単純な例は、共変量を有するか又は有さない予測ルールが、各バイオマーカーの一変量レベルでは判断できないことを示している。複数のバイオマーカーと、共変量による潜在的調整とを組合せると、単一のバイオマーカーに対する単純な関係をあてがうことができなくなる。特に血清中のマーカー遺伝子は、他の臨床的共変量を潜在的に含む複数のマーカー予測モデルに使用され得るので、このようなモデル内における単一マーカー遺伝子の有益な効果の方向は、単純な方法では測定できず、一変量解析、すなわち単一マーカー遺伝子について記載されている状況で見出される方向性と矛盾しうる。
【0162】
医師はVEGFアンタゴニストの特定の用量スキームの効果を測定するために当該技術分野で知られている幾つかの方法の何れかを使用することができる。例えば、インビボ.画像処理(例えばMRI)を使用して、腫瘍サイズを決定し、あらゆる腫瘍転移を特定して、治療法に対する相対的に効果的な応答性を決定することができる。投薬レジメンを調節して最適な所望される応答(例えば治療応答)をもたらすことができる。例えば、ある用量を投与し得、幾つかの分割用量を経時的に投与し得、又は用量を比例的に減少させ、又は治療状況の危急性に示される場合は増加させ得る。
【0163】
IV.アンタゴニストによる治療
本明細書に記載されるアンタゴニストによる治療に対して応答性又は感受性である患者がひとたび同定されれば、アンタゴニスト単独での又は他の医薬との組合せでの治療は血管新生疾患の改善をもたらす。例えば、そのような治療は腫瘍サイズの減少又は無増悪生存の増加をもたらしうる。更に、本明細書に記載のアンタゴニストと少なくとも一の第二の医薬の組合せによる治療は好ましくは患者に対して相加的な、より好ましくは相乗的な(又は相加的よりも大なる)治療的恩恵を生じる。好ましくは、この併用方法において、第二の医薬の少なくとも一回の投与と本明細書におけるアンタゴニストの少なくとも一回の投与の間のタイミングは約1ヶ月以下、より好ましくは約2週間以下である。
【0164】
アンタゴニストに対する患者の可能な応答性の診断後に該患者に治療的有効量のVEGFアンタゴニストを投与する正確な方法は担当する医師の裁量に委ねられることは医療技術分野の当業者には理解されるであろう。投薬量、他の薬剤との併用、投与のタイミング及び頻度等を含む投与態様は、そのようなアンタゴニストに対する患者の可能な応答性の診断、並びに患者の症状及び病歴に影響を受けうる。よって、アンタゴニストに対して相対的に感受性が無いと予想される血管新生疾患と診断された患者でさえ、特にアンタゴニストに対する患者の応答性を変えうる薬剤を含む他の薬剤と組み合わせて、それによる治療から尚恩恵を受けうる。
【0165】
アンタゴニストを含有する組成物は、良好な医療行為と一致した様式で処方され、用量決定され、投与されるであろう。これに関連して考慮される要因には、治療される血管新生疾患の特定のタイプ、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、血管新生疾患の原因、薬剤の送達部位、起こり得る副作用、アンタゴニストのタイプ、投与方法、投与スケジュール、及び医師に既知の他の要因が含まれる。投与されるアンタゴニストの有効量は、このような考慮により支配されるであろう。
【0166】
当該技術分野において通常の技術を有する医師は、特定のアンタゴニストの種類などの要因に応じて、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定し、処方することができる。例えば、医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで医薬組成物で用いられる、例えば、抗VEGF抗体などのアンタゴニストの用量で開始し、所望の効果が達成されるまで次第に投与量を増加させることができる。アンタゴニストの所定の用量又は治療レジメンの有効性は、例えば、有効性の標準的尺度を用いて、患者における徴候および症状を評価することにより、決定することができる。
【0167】
ある実施態様において、患者は少なくとも二回、例えば抗VEGF抗体など、同じアンタゴニストで治療される。このように、初回及び二回目のアンタゴニスト曝露は、好ましくは同じアンタゴニストにより、そしてより好ましくは全てのアンタゴニスト暴露は同じアンタゴニストにより、すなわち、最初の2回の曝露、及び好ましくは全ての曝露についての治療は、一タイプのVEGFアンタゴニスト、例えば、抗VEGF抗体などVEGFに結合するアンタゴニスト、例えば全てベバシズマブによるものである。
【0168】
本明細書に記載の全ての方法において、(例えば、VEGFに結合する抗体のような)アンタゴニストは、ネイキッド抗体など、コンジュゲートされないものであっても良く、更なる有効性のため、例えば、半減期を向上させるために、別の分子とコンジュゲートしてもよい。
【0169】
本明細書において好ましいアンタゴニスト抗体は、キメラ、ヒト化、又はヒト抗体、より好ましくは抗VEGF抗体であり、そして最も好ましくはベバシズマブである。
【0170】
別の実施態様では、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)は被験体に投与される唯一の医薬である。
【0171】
一般的な提案として、1用量当たりに非経口的に投与されるアンタゴニストの有効量は、一又は複数の投薬量で、約20mgから約5000mgの範囲である。抗VEGF抗体のような抗体に対する典型的な投薬レジメンは、毎1、2、3、又は4週100又は400mgを含むか、又は毎1、2、3、又は4週当たり約1、3、5、10、15、又は20mg/kgの用量で投与される。用量は、例えば注入のように、単一用量として又は複数用量(例えば2又は3用量)として、投与されうる。
【0172】
アンタゴニストの多重曝露が与えられる場合、各曝露は同一又は異なる投与手段を使用して与えられても良い。一実施態様において、各曝露は、静脈内投与によるものである。一実施態様において、各曝露は、皮下投与で与えられる。更に別の実施態様において、曝露は静脈内投与及び皮下投与で与えられる。
【0173】
一実施態様において、抗VEGF抗体などのアンタゴニストは、静注又はボーラスよりもむしろゆっくりとした静脈内注入として投与される。例えば、プレドニゾロン又はメチルプレドニゾロンなどのステロイド(例えば、約80−120mgの静注(i.v.)、より具体的には約100mgの静注)が抗VEGF抗体の任意の注入の前の約30分で投与される。抗VEGF抗体は、例えば、専用ラインを介して注入された。
【0174】
抗VEGF抗体の複数用量曝露の初期用量のために、又は曝露は1回用量のみを含む場合は、単回投与のために、このような注入は、好ましくは、約50mg/時間の速度で開始される。これは、例えば約30分ごとに約50mg/時間の増分の速度で、最大で約400mg/時間まで上昇させることができる。しかし、被験体に注入関連の反応が発生している場合には、注入速度は、好ましくは、例えば、現在の速度の半分に、例えば、100mg/時間から50mg/時間に減少される。好ましくは、抗VEGF抗体のその用量(例えば約1000mgの総用量)の注入は、約255分(4時間15分)で完了する。場合によっては、被験体は、注入開始前約30から60分で口からアセトアミノフェン/パラセタモール(例えば、約1g)及びジフェンヒドラミン塩酸(例えば、約50mg又は類似薬剤の等価用量)の予防的治療を受ける。
【0175】
総曝露を達成するために抗VEGF抗体の複数の注入(用量)が与えられる場合、この注入の実施態様において、第2回目又はその後の抗VEGF抗体の注入は、好ましくは、初期注入より速い速度で、例えば約100mg/時間で開始される。この速度は、例えば約30分ごとに約100mg/時間の増分の速度で、最大で約400mg/時間まで上昇させることができる。注入に関連した反応を発症する被験体は、好ましくは、注入速度を半分の速度まで、例えば、約100mg/時間から50mg/時間まで減少される。好ましくは、抗VEGF抗体の第2回目又はその後の用量(例えば約1000mgの総用量)の注入は、約195分(3時間15分)により完了する。
【0176】
好ましい実施態様において、アンタゴニストは抗VEGF抗体であり、約0.4から4グラムの用量で投与され、より好ましくは、抗体は、約1ヶ月の期間内に1から4回の頻度で約0.4から1.3グラムの用量で投与される。なおより好ましくは、用量は約500mgから1.2グラムであり、他の実施態様においては、約750mgから1.1グラムである。この態様においては、アンタゴニストは好ましくは2から3回の投与で投与され、及び/又は約2から3週間の期間内で投与される。
【0177】
しかしながら、上記のように、これらの提案されたアンタゴニストの量は、多くの治療的裁量の対象となる。適切な用量の選択及びスケジューリングの重要な要素は、上に示されるように得られた結果である。幾つかの実施態様において、アンタゴニストは、血管新生障害の最初の徴候、診断、出現、又は発生にできるだけ近くで投与される。
【0178】
アンタゴニストは、非経口、局所、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、及び/又は病巣内投与を含む、任意の適切な手段により投与される。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、又は皮下投与が含まれる。くも膜下腔内投与もまた考えられる。くも膜下腔内投与もまた考えられる。また、アンタゴニストは、例えば減少用量のアンタゴニストでのパルス注入により、適切に投与されてもよい。最も好ましくは、投薬は静脈内注射により投与される。
【0179】
上記のような伝統的な経路による患者へのアンタゴニストの投与とは別に、本発明は、遺伝子治療による投与を含む。アンタゴニストをコードする核酸のこのような投与は、「アンタゴニストの有効量を投与する」という表現によって包含される。例えば、細胞内抗体を生成する遺伝子治療の使用に関する国際公開第1996/07321号を参照。
【0180】
インビボ及びエキソビボで、患者の細胞に(場合によってはベクター内に含まれている) 核酸を入れるたの2つの主要な方法がある。インビボ送達では、核酸は、通常アンタゴニストが必要とされている部位に直接注入される。エキソビボ治療のため、患者の細胞が取り除かれ、核酸をこれらの単離された細胞に導入し、修飾された細胞は患者に直接的に投与されるか、例えば患者に埋め込まれる多孔質膜内にカプセル化される(例えば、米国特許第4892538号及び第5283187号を参照)。核酸を生細胞に導入するための利用可能な様々な技術がある。技術は、核酸が、意図する宿主の細胞においてインビトロ又はインビボで培養細胞に移入されるかに応じて変わる。哺乳動物細胞にインビトロで核酸を移入するのに適した技術は、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法使用を含む。遺伝子のエキソビボ送達に通常用いられるベクターはレトロウイルスである。
【0181】
現在好ましいインビボ核酸移入技術は、ウイルスベクター(例えば、アデノウイルス、単純ヘルペスIウイルス、又はアデノ随伴ウイルス)、及び脂質ベースの系(例えば、遺伝子の脂質媒介移入に有用な脂質は、DOTMA、DOPE、及びDC−Cholである)での形質移入を含む。幾つかの状況では、核酸供給源に、標的細胞に特異的な薬剤、例えば標的細胞上の細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体、標的細胞上のレセプターのリガンド等を提供するのが望ましい。リポソームが用いられる場合、エンドサイトーシスに関連する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質が、標的化及び/又は取り込みの促進のために用いられ、例えば、特定の細胞型向性のキャプシドタンパク質又はその断片、サイクリングにおいて内部移行を受けるタンパク質の抗体、及び細胞内局在化をターゲティングし細胞内半減期を向上させるタンパク質である。レセプター媒介エンドサイトーシスの技術は、例えば、Wu等, J. Biol. Chem., 262:4429-4432 (1987);及びWagner等, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 87: 3410-3414 (1990)に記載されている。遺伝子マーキング及び遺伝子療法プロトコルは、例えばAnderson等, Science, 256:808-813 (1992)及び国際公開第1993/25673号に記載されている。
【0182】
本発明の一実施態様において、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニスト以外の医薬が、血管新生障害を治療するために被験体に投与される。他の実施態様においては、VEGFアンタゴニストは、薬学的併用製剤において又は併用療法としての投与レジメンにおいて、抗癌特性を有する少なくとも一の追加の化合物と組み合わせることができる。薬学的併用製剤又は投与レジメンの少なくとも一の追加の化合物は、それらが互いに悪影響を及ぼさないように、好ましくは、VEGFアンタゴニスト組成物に相補的な活性を持つ。併用投与は、別個の製剤又は単一の薬学的製剤及び何れかの順番での連続投与を用いた、同時投与を含み、ここで好ましくは両方(又は全ての)活性薬剤が同時にその生物学的活性を発揮する期間が存在することを特徴とする。
【0183】
少なくとも一つの更なる化合物は、化学療法剤、細胞傷害剤、サイトカイン、増殖阻害性剤、抗ホルモン剤、及びその組み合わせでありうる。このような分子は、意図される目的のために効果的である量で組み合わされて好適に存在する。また、VEGFアンタゴニスト(例えば抗VEGF抗体)を含む薬学的組成物は、治療的に有効量の抗腫瘍剤、化学療法剤、増殖阻害剤、細胞傷害剤、又はその組み合わせを含有しうる。
【0184】
一態様では、第一の化合物は抗VEGF抗体であり、少なくとも一つの更なる化合物は抗VEGF抗体以外の治療用抗体である。一実施態様では、少なくとも一つの更なる化合物は、癌細胞表面マーカーに結合する抗体である。一実施態様では、少なくとも一つの更なる化合物は、抗HER2抗体のトラスツズマブ(例えば、ハーセプチン(登録商標), Genentech, Inc., South San Francisco, CA)である。一実施態様では、少なくとも一つの更なる化合物は、抗HER2抗体のペルツズマブ(オムニターグTM、Genentech, Inc., South San Francisco, CA,米国特許第6949245号参照)である。一実施態様では、少なくとも一つの更なる化合物は抗体であり(ネイキッド抗体又はADC)、更なる抗体は、第2、第3、第4、第5、第6、又はそれ以上の抗体であり、そのような第2、第3、第4、第5、第6、又はそれ以上の抗体(ネイキッド又はADC)を組み合わせることが、血管新生疾患の治療に効果的である。
【0185】
この発明に係る他の治療レジメンは、放射線療法及び/又は骨髄及び末梢血移植、及び/又は細胞傷害剤、化学療法剤、又は増殖阻害性剤を限定しないで含むVEGFアンタゴニスト抗癌剤の投与を含みうる。このような実施態様の一つでは、化学療法剤は、例えば、シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン、アドリアマイシン、ドキソルビシン、ビンクリスチン(オンコビンTM)、プレドニゾロン、CHOP、CVP、又はCOP、又は抗PSCA、抗HER2(例えばハーセプチン(登録商標)、オムニターグTM)などの免疫療法などの薬剤又は薬剤の組合せである。別の実施態様において、組み合わせは、ドセタキセル、ドキソルビシン、及びシクロホスファミドを含む。併用療法は、同時又は逐次レジメンとして投与することができる。連続的に投与する場合、組み合わせは、2回以上の投与において投与することができる。併用投与は、別個の製剤又は単一の薬学的製剤及び何れかの順番での連続投与を用いた、同時投与を含み、ここで好ましくは両方(又は全ての)活性薬剤が同時にその生物学的活性を発揮する期間が存在することを特徴とする。
【0186】
一実施態様において、抗VEGF抗体による治療は、異なる化学療法剤のカクテルの同時投与を含む、本明細書中で同定された抗癌剤及び一以上の化学療法剤又は増殖阻害剤の併用投与を含む。化学療法剤には、タキサン(パクリタキセル及びドセタキセルなど)及び/またはアントラサイクリン系抗生物質を含む。このような化学療法剤の調製及び投与計画は製造者の指示に従って用いられても、当業者によって経験的に決定されてもよい。このような化学療法の調製及び投与計画は、Chemotherapy Service," (1992) Ed., M.C. Perry, Williams & Wilkins, Baltimore, Mdにも記載される。
【0187】
上記の同時投与される薬剤の何れかについての適切な用量は現在使用されているものであり、新たに同定された薬剤及び他の化学療法剤又は治療との複合作用(相乗作用)に低下することがある。
【0188】
併用療法は、「相乗効果」を提供し「相乗的」であり、活性成分が共に使用される場合に達成される効果は、別個に化合物を使用することから生じる効果の和よりも大きい。相乗効果は、活性成分が、(1)同時処方され、併用された単位投薬製剤として同時に投与又は送達され;(2)別個の製剤として交互に又は並行して送達される場合;又は(3)ある種の他のレジメンによって、達成することができる。交互療法で送達される場合、相乗効果は、化合物が、例えば別個にシリンジで異なった注射によって逐次的に投与され又は送達されるときに達成されうる。一般に、交互療法の間、各活性成分の有効用量が逐次的、つまり連続的に投与される一方、併用療法では二又はそれ以上の活性成分の有効用量が併せて投与される。
【0189】
疾患の予防又は治療に対して、更なる治療剤の適切な投薬量は、治療されるべき疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重篤度及び過程、VEGFアンタゴニスト及び更なる薬剤が予防目的か治療目的で投与されるかどうか、過去の治療法、患者の臨床歴、及びVEGFアンタゴニスト及び更なる薬剤への応答、及び担当医師の裁量に依存する。VEGFアンタゴニスト及び更なる薬剤は、好適には一回で又は一連の治療で患者に投与される。VEGFアンタゴニストは典型的には上に記載されたようにして投与される。疾患のタイプ及び重篤度に応じて、約20mg/mから600mg/mの更なる薬剤が、例えば一又は複数回の別個の投与か又は連続注入にかかわらず、患者への投与に対する最初の候補用量である。一つの典型的な毎日の投薬量は、上述の要因に応じて、約から又は約20mg/m、85mg/m、90mg/m、125mg/m、200mg/m、400mg/m、500mg/m又はそれ以上の範囲となるかも知れない。症状に応じて、数日以上にわたる繰り返し投与では、疾患兆候の所望の抑制が生じるまで、治療が維持される。よって、約20mg/m、85mg/m、90mg/m、125mg/m、200mg/m、400mg/m、500mg/m、600mg/m(又はその任意の組み合わせ)が患者に投与されうる。そのような用量は、間欠的に、例えば毎週又は2週毎、3週毎、4、5、又は6週毎に投与されうる(例えば患者に約2から約20、例えば約6用量の更なる薬剤が投与される)。初回より高い負荷投与量の後、一又は複数のより低い用量を投与することができる。しかしながら、他の投薬レジメンは有用でありうる。この治療法の進行は、一般的な技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0190】
一実施態様において、被験体は、血管新生障害を治療する任意の薬物を以前に投与されていない。別の実施態様において、被験体は、血管新生障害を治療する任意の薬物を以前に投与されていない。更なる実施態様において、被験体又は患者は、以前に投与された医薬のの一又は複数に応答しなかった。被験体が非応答性であってもよいれるような薬物は、例えば、抗腫瘍剤、化学療法剤、細胞傷害剤、及び/又は増殖阻害剤が挙げられる。より具体的には、被験者が非応答性であってもよい薬物は、抗VEGF抗体などのVEGFアンタゴニストを含む。更なる態様において、このようなアンタゴニストは、被験体が以前は非応答性であった本発明の一以上の抗体又はイムノアドヘシンによる再治療が意図されるように、抗体又はイムノアドヘシンを含む。
【0191】
薬学的製剤
本明細書に従って使用される抗体の治療製剤は、所望の程度の純度を有する抗体と任意の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤とを、凍結乾燥製剤または水性溶液の形態で混合することによって調製される。製剤に関する一般的情報については、例えば、Gilman et al., (eds.) (1990), The Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Press; A. Gennaro (ed.), Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, (1990), Mack Publishing Co., Eastori, Pennsylvania.; Avis et al., (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications Dekker, New York; Lieberman et al., (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Dekker, New York; and Lieberman et al., (eds.) (1990), Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems Dekker, New York, Kenneth A. Walters (ed.) (2002) Dermatological and Transdermal Formulations (Drugs and the Pharmaceutical Sciences), Vol 119, Marcel Dekkerを参照。
【0192】
許容される担体、賦形剤又は安定剤は、使用される投薬量および濃度でレシピエントに毒性でなく、リン酸塩、クエン酸塩および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチオルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジン;マンノサッカライド、ジサッカライド、およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム、金属錯体(例えば、Zn−タンパク質錯体);及び/又はTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0193】
典型的な抗VEGF抗体製剤は、米国特許第6,884,879号に記載されている。ある実施態様において、抗VEGF抗体は、単回使用バイアル中に25mg/mLで製剤化される。ある実施態様において、抗VEGF抗体の100mgは、米国薬局方による、240mgのα,α−トレハロース二水和物、23.2mgのリン酸ナトリウム(一塩基性、一水和物)、4.8mgのリン酸ナトリウム(二塩基性無水)、1.6mgのポリソルベート20、及び注射用水中に処方される。ある実施態様において、抗VEGF抗体の400mgは、米国薬局方による、240mgのα,α−トレハロース二水和物、23.2mgのリン酸ナトリウム(一塩基性、一水和物)、4.8mgのリン酸ナトリウム(二塩基性無水)、6.4mgのポリソルベート20、及び注射用水中に処方される。
【0194】
皮下投与のために適合された凍結乾燥製剤は、例えば、米国特許第6,267,958号(Andya et al.)に記載されている。こうした凍結乾燥製剤は、高タンパク質濃度に適した希釈剤により再構成することができ、再構成製剤はここで治療される哺乳動物に皮下投与してもよい。
【0195】
アンタゴニストの結晶化形態もまた考えられる。例えば、米国特許第2002/0136719号A1を参照。
【0196】
また、本明細書における製剤は、一以上の活性な化合物(上記のような第二の医薬)、好ましくはお互い悪影響を及ぼさない相補的活性を有する化合物を含んでよい。そうした医薬のタイプ及び有効量は、例えば、製剤に存在するアンタゴニストの量及びタイプ、及び被験体の臨床パラメーターに依存する。好ましいこのような第二医薬は、上記に記載される。
【0197】
活性成分はまた、コロイド性薬物デリバリーシステム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロカプセル、ミクロエマルション、ナノ−粒子、およびナノカプセルなど)又はマクロエマルション中、例えば、それぞれ、コアセルベーション法又は界面重合法によって製造された、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタシラート)(poly-(methylmethacylate)マイクロカプセルに取込むことができる。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980)に開示される。
【0198】
徐放性製剤が調製されてもよい。徐放性製剤の好適な例は、アンタゴニストを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスを含み、そのマトリックスが成形品、例えばフィルムまたはマイクロカプセルの形をしている。徐放性マトリックスの例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)又はポリ(ビニルアルコール))、ポリアクチド(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタマートの共重合体、非−分解性エチレン−ビニルアセテート、LUPRON DEPOTTM(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸ロイプロリド(leuprolide acetate)から構成される注射用ミクロスフェア)のような分解性乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0199】
インビボ投与に使用される製剤は無菌でなければならない。これは、滅菌濾過膜を通して濾過することにより容易に達成することができる。
【実施例】
【0200】
以下の実施例は、説明するために提供されるが、請求項に記載の発明を限定するものではない。
統計的方法
統計的タスクは次の工程を含みうる:
1.候補バイオマーカーの事前選択
2.関連性のある臨床効果の応答性予測共変量の事前選択
3.一変量レベルでのバイオマーカー予測関数の選択
4.一変量レベルでの臨床的共変量を含むバイオマーカー予測関数の選択
5.多変量レベルでのバイオマーカー予測関数の選択
6.多変量レベルでの臨床的共変量を含むバイオマーカー予測関数の選択
以下の本文は異なった工程を詳細に説明する:
【0201】
1:候補バイオマーカーの事前選択
候補バイオマーカーの統計的事前選択は、臨床的有益性の尺度関連性の強さに向けられている。この目的のために、異なった臨床エンドポイントは、誘導されたサロゲートスコア、例えば打ち切り観測を回避するTTPに関する臨床的有益性スコアの度合いの順序割当に変換されうる。これらのサロゲート変換指標は、例えばノンパラメトリックスピアマン順位相関アプローチにより、簡単な相関関係分析に容易に使用することができる。代替法は、例えばコックス比例ハザード回帰のように、事象発生までの時間の回帰モデル(time-to-event regression models)における計量的共変量(metric covariates)として、バイオマーカー測定値を使用する。バイオマーカー値の統計的分布に応じて、この工程は、幾つかの事前加工、例えば分散安定化変換、また適切な尺度の使用、又は未加工測定値の代わりにパーセンタイルを使用する等の標準化工程が必要となりうる。更なるアプローチは、例えば一人の患者を基準に、(x軸=バイオマーカー値、y軸=臨床的有益性の尺度)の散布を示すことによる、二変量散布プロットの検査である。例えば、平滑化スプラインにより達成される幾つかのノンパラメトリック回帰線は、バイオマーカーと臨床的有益性との関連性を視覚化するのに有用でありうる。
【0202】
これらの異なるアプローチの目的は、用いられる有益性指標の少なくとも一における臨床的有益性とのある程度の関連性を示し、他の指標についての結果は矛盾しない候補バイオマーカーを事前選択することである。利用可能なコントロール群が存在する場合、異なった治療群における臨床的有益性とバイオマーカーとの間の関連性の差異は、バイオマーカーを更なる考察に適したものとする差異予測の兆候となるかもしれない。
【0203】
2:関連性のある臨床効果の応答性予測共変量の事前選択
ここに定められた臨床的共変量の統計的事前選択は、バイオマーカーの事前選択についてのアプローチと類似しており、臨床的有益性の尺度との関連性の強度を指向している。よって、原理的には、上の1で検討したものと同じ方法が適用される。統計的基準に加え、臨床経験からの基準及び理論的知識が、関連する臨床的共変量を事前選択するのに適用されうる。
【0204】
臨床的共変量の予測値は、バイオマーカーの予測値と相互作用しうる。それらは、必要ならば、改善された予測ルールに対して考慮されるであろう。
【0205】
3:一変量レベルでのバイオマーカー予測関数の選択
「予測関数」なる用語は、一般的に標的予測を暗示するためにスケーリングされた数をもたらすバイオマーカー測定値の数的関数を意味するのに使用される。
【0206】
簡単な例は、特定のカットオフcとバイオマーカー測定xについてのヘビサイド関数の選択であり、ここで、二値予測A又はBは次のようになされる:
H(x−c)=0ならば、Aを予測。
H(x−c)=1ならば、Bを予測。
【0207】
これは、おそらくは、予測ルールにおいて一変量バイオマーカー測定値を使用する最も一般的な方法である。上述のような「予測関数」の定義は、予測可能性を探究するのに使用されうる既存のトレーニングデータセットへの照会を含む。トレーニングセットから適切なカットオフcを達成するために異なった経路を取ることができる。先ず、1に記載された平滑化スプラインを用いた散布図を使用し、カットオフを定める。別法では、分布の幾つかのパーセンタイル、例えばメジアン又は四分位数が選択されうる。またカットオフは、臨床的有益性の尺度に関するその予測可能性に従い、全ての可能なカットオフを調べることにより、体系的に抽出することができる。次に、これらの結果をプロットして、マニュアル選択が可能になるか、又は最適化のための幾つかの探索アルゴリズムを用いることが可能になる。これは、コックスモデルを使用してある種の臨床的エンドポイントに基づいて現実化することができ、各検定カットオフにおいて、バイオマーカーが二値共変量として使用される。次に、臨床エンドポイントの結果を、双方のエンドポイントに沿った予測を示すカットオフを選択するために、合わせて考慮することができる。
【0208】
予測関数を選択するための他の一般的ではないアプローチは、共変量として、バイオマーカー値(おそらくは変換されたもの)を持つトレーニングセットから得られる固定パラメーターコックス回帰モデルに基づきうる。更なる可能性は、幾つかの尤度比(又はその単調変換)に対する決定に基づくものであり、標的確率密度は、予測状態の分離のためのトレーニングセットにおいて事前決定される。ついで、バイオマーカーが予測基準の幾つかの関数に当てはめられるであろう。
【0209】
4:一変量レベルでの臨床的共変量を含むバイオマーカー予測関数の選択
一変量は、一つのバイオマーカーを使用することを意味し、臨床的共変量に関して、これは多変量モデルでありうる。このアプローチは、該方法が関連する共変量情報の導入を可能にすべきことを除けば、臨床的共変量を用いない探索と類似している。カットオフを選択する散布図法は、共変量の限られた使用のみを可能にし、例えば二値共変量はプロット内でカラーコード化されうる。解析が、幾つかの回帰手法に依存しているならば、共変量(また一回でのそれらの多く)を使用することは通常は容易である。上の3に記載されたコックスモデルに基づくカットオフ探索により、共変量を容易に導入することが可能となり、それによって、共変量調整された一変量カットオフ探索に至る。共変量による調節は、モデルにおける共変量として、又は層別解析における包含物を介してなされうる。
【0210】
また予測関数の他の選択により、共変量の導入が可能になる。
【0211】
これは、予測関数としてのコックスモデルの選択に真っ直ぐに進む。これには、例えば異なる年齢群に対して異なる予測基準が適用されることを意味する、相互作用レベルにおける共変量の影響を推定するための選択肢が含まれる。
【0212】
予測関数の尤度比のタイプについて、共変量を含む予測密度が推定されなければならない。この目的のためには、多変量パターン認識の方法を使用することができ、又はバイオマーカー値を、共変量についての重回帰により調整することができる(密度推定の前)。
【0213】
バイオマーカー(未加工測定値レベル)と臨床的共変量を用い、応答として臨床的有益性の指標を利用する、CART技術(Classification and Regression Trees, Breiman等 (Wadsworth, Inc.: New York, 1984)を、この目的のために使用することができる。カットオフが探索され、デシジョンツリータイプの関数が、予測のための共変量に関与していることが見出されるであろう。CARTにより選択されるカットオフとアルゴリズムは、しばしば最適に近く、異なった臨床的に有益な尺度を考慮することにより組み合わせて一体されうる。
【0214】
5:多変量レベルでのバイオマーカー予測関数の選択
異なる一変量予測関数の選択内で、それらの予測可能性を維持する幾つかのバイオマーカー候補が存在している場合、バイオマーカーの組合せるにより、すなわち多変量予測関数を考慮することにより、更なる改善が達成されうる。
【0215】
単純なヘビサイド関数モデルに基づき、バイオマーカーの組合せは、例えば最適なカットオフが示されるバイオマーカー値の二変量散布図を考慮することにより評価されうる。次に、バイオマーカーの組合せは、改善された予測が達成されるように、論理「AND」と「OR」演算子により、異なるヘビサイド関数を組合せることにより達成できる。
【0216】
この目的のために、複数のバイオマーカー(未加工測定値レベル)と、応答としての臨床的有益性尺度を用いて、予測のためのデシジョンツリータイプの関数とバイオマーカーのためのカットオフを達成するために、CART技術を使用することができる。CARTにより選択されるカットオフとアルゴリズムは、しばしば最適に近く、異なった臨床的に有益な尺度を考慮することにより組み合わせて一体されうる。
【0217】
コックス回帰は、異なったレベルで使用できる。第一の方法は、二値方式で複数のバイオマーカーを導入することである(すなわち、幾つかのカットオフを持つヘビサイド関数に基づく)。他の選択肢は、(適切な変換後に)計量方式でバイオマーカーを、又は二値及び計量の混合アプローチを用いることである。発展的多変量予測関数は、上の3に記載されたようなコックス型のものである。
【0218】
多変量尤度比アプローチは実施が困難であるが、多変量予測関数のための他の選択肢も提供する。
【0219】
6:多変量レベルでの臨床的共変量を含むバイオマーカー予測関数の選択
関連する臨床的共変量が存在する場合、複数の臨床的共変量と複数のバイオマーカーを組み合わせることにより、更なる改善が達成されうる。異なった予測関数の選択は、臨床的共変量を含む可能性に関して評価されるであろう。
【0220】
バイオマーカーに対するヘビサイド関数の簡単な論理的組合せに基づき、トレーニングセットで得られるロジスティック回帰モデルに基づく予測関数に、更なる共変量を含めることができる。
【0221】
CART技術及び展開デシジョンツリーは、予測アルゴリズムにおけるこれらを含む、更なる共変量と共に、容易に使用することができる。
【0222】
コックス回帰に基づく全ての予測関数は、更なる臨床的共変量を使用することができる。例えば異なる年齢群に対して異なる予測基準が適用されることを意味する、相互作用レベルでの共変量の影響を推定するための選択肢が存在する。
【0223】
多変量尤度比アプローチは、付加的な共変量の使用に、直接拡張可能ではない。
【0224】
実施例1:進行乳癌の患者におけるベバシズマブのネオアジュバントの研究
ベバシズマブ(bev)は乳癌治療において広く研究されているが、まだ乳癌における無作為化試験は、ヒトの腫瘍組織上のbevのインビボでの分子効果は報告されていない。そこで、局所進行型乳癌における安全性、臨床効果、及びネオアジュバント化学療法+bevの分子効果を評価するための試験を実施した。
【0225】
図1に示されるように、プラセボ対照、無作為化第II相試験をデザインした。進行性乳癌を有する患者は、以下の投与レジメンにより4つの治療群(A〜D)のいずれかに無作為に割り付けた。
治療群A:TAC(ドセタキセル、T:75mg/m;ドキソルビシン、A:50mg/m;及びシクロホスファミド、C:500mg/m)+低用量のbev(7.5mg/kg);
治療群B:TAC+低用量のプラセボ(P);
治療群C:TAC+標準用量のbev(15mg/kg);及び
治療群D:TAC+標準用量のP。
【0226】
bev又はPの慣らしサイクルの後に、(bev又はPとともに)3週間に1回投与される6サイクルのTACが続いた。腫瘍生検は、bev治療の前とbev又はPによる慣らし後7〜10日で実施された。手術後、非盲検化が起こり、治療群A及びCは維持ベバシズマブを受け52週を完了した。治療群BとDは、手術後にさらなる治療を受けなかった。
【0227】
研究における各患者は、以下の基準に基づいて適格性を事前選別した:18歳以上の女性;乳房の腺癌;ステージII(≧3cm)又はステージIIIの乳癌;炎症性乳癌(IBC)又は両側性乳癌でない乳癌;インサイツハイブリダイゼーションの蛍光(FISH)によってHER2陰性;事前の化学療法、放射線療法、又は内分泌療法は無し;正常な左(心)室駆出分画(LVEF);非治癒傷、骨折、又は末梢血管疾患は無し;大手術の必要無し;高血圧(血圧>150/100)又は重大な心疾患は無し。合計90(90)人の患者が、研究に参加した。90人の患者は無作為化し、治療群A、B、C及びDにそれぞれ約2:1:2:1の比で配置した。従って、28人の患者が治療群Aに割り当てられ、30人の患者が治療群Cに割り当てられ、合計で32人の患者が対照治療群のBとDに割り当てられた(図2)。低bev治療(治療群A)、高bev治療(治療群C)、及びプラセボ(治療群B及びD)の患者のベースライン腫瘍特性を以下の表2に要約する。
【0228】
手術に先立ち、合計12人の患者が試験を外れた。12人の患者のうち、2患者は治療群Aから、6患者は治療群Cから、4患者は治療群B及びDに由来した(図2)。残りの78人の患者は、全治療レジメンを受け、手術を受け、乳房とリンパ節における安全性と病理学的完全奏効(pCR)について評価可能であった。
【0229】
実施例2:ネオアジュバント研究の安全性と病理学的完全応答(PCR)の評価
安全性
進行乳癌についてbevによるネオアジュバント化学療法の安全性を評価するために、私たちは、鬱血性心不全(CHF)、LVEFの低下、及び手術後の創傷治癒合併症の割合を見積もった。我々は、以下の表3にまとめたように、心臓事象と創傷治癒合併症の両方は、bev治療群(治療群A及びC)において数値的に高いことを見いだした。
【0230】
CHF(LVEF20〜39%)事象がプラセボ群で記録されなかったが、標準的用量のbev治療群(治療群C)の患者の17%(5/30)は、グレード3(n=4)又はグレード4(n=1)の心不全を有していた。我々が、ベースラインから15%を超えるか又は制度的正常下限(LLN)を下回り10%を超えるLVEFの低下の比率を見積もると、プラセボ群(治療群B及びD)と比較して、bev治療群(治療群A及びC)は、心臓事象のより高い比率を有していたことがわかった。また、治療群A及びCは、プラセボ群(6%)と比較して創傷治癒合併症の高い数値(それぞれ18%と33%)を持っていた。従って、bevによる治療は、より心不全及び創傷治癒事象に関連付けることができる。
【0231】
病理学的完全応答(pCR)
78人の評価可能な患者及び90人の「治療を意図した」患者において(上皮内癌を除き)乳房とリンパ節におけるpCR率を評価した。評価可能な患者は、プロトコルが指定したネオアジュバント療法を完了し、手術を受けた。治療を意図した患者は、治験薬の少なくとも一用量を受けた。以下の表4に定量化したように、pCR率は、評価可能な患者、治療群Aからの5人の患者、治療群Cからの3人の患者、及び治療群BとDから6人の患者では18%(14/78)であった。全体的なのpCR率は16%(14/90)であった。
【0232】
我々は、20%(2/10)のER+/PR+腫瘍及び2%のER+/PR−腫瘍と比較して、35%(11/31)のER/PR陰性(トリプルネガティブ)の腫瘍がpCRを達成することを見いだした。pCRは、浸潤性小葉組織学には見られなかった。臨床的には、bev及びP治療群との間のpCR率は同様であった。
【0233】
実施例3:ベバシズマブ治療の分子効果の評価
腫瘍脈管構造上のVEGF経路阻害の効果を評価するために、VEGFシグナル伝達において明確な役割を果たしていることが知られる67遺伝子の発現を評価するための慣らし前後のサンプルからのRNAにおいて、フリューダイムアレイプラットフォームを用いて定量的PCR(qPCR)分析を実施した。CD144は、内皮細胞において特異的に発現される遺伝子の生検駆動性差次的発現のために標準化するために使用した。独立t検定を、統計的有意性に基づいて遺伝子をランク付けする群を含む、プラセボ及びbevの(投与前に対する)比率間で行った。使用されるRNAは、ベースライン及び慣らし(15日目)の時点からのものであった。30人の患者(治療群BとDから12人の患者、治療群Aから11人の患者、及び治療群Cから7人の患者)からの対のサンプルから高品質のRNAをプロファイリングした。qPCR分析は、bev治療は、内皮先端細胞で濃縮され、新たに形成される血管の移動を導く、DLL4(図4)及びアンジオポエチン2(ANGPT2)(図5)の発現の有意な減少をもたらすことを明らかにした。bev治療はまた、微小血管密度(MVD)遺伝子EGFL7並びに血管生物学に関連する遺伝子のエフリン−A3(EFNA3)及び胎盤成長因子(PGF)の発現を減少を生じた。NOS2(iNOS)の有意な差次的発現また、bev治療の際に観察された(図8)。NOS2転写物の下方制御は、血流及びせん断応力に対して生じた影響へのベバシズマブの効果を反映し得る。qPCR分析はまた、bev治療は、腫瘍血管損傷を示す、血小板活性化マーカーのP−セレクチン(SELP)、第V因子(図6)、及び第VIII因子(AHF)(図7)の有意な増加をもたらすことを明らかにした。特記すべきことに、bev治療はまたANGPTL1の増加をもたらした。CD31及びCD144を含む(VE−カドヘリン)(図3)、成熟内皮細胞のマーカーは、bev治療により変わらなかった。RGS5含む周皮細胞のマーカーもまた、変化しなかった。
【0234】
DASL(Illumina)アレイを使用した個別のRNA発現プロファイリング研究において、45試料(治療群BとDから20サンプル、治療群AとCから25サンプル)をペアワイズ分析に含めた。PCR分析は、更に、血管の遺伝子のCox2、フィブロネクチン(FN_EIIIB)、及びESM1の発現もまたbev治療の際に減少することを同定した。下方制御さた遺伝子に加えて、本研究により、ストローマ由来増殖因子(SDF1)、サイトカインは、顕著に上方制御されたことが分かった。
【0235】
血管新生経路の遺伝子についての腫瘍発現解析は、bevは、主に未熟な腫瘍血管系を標的とし得るとする前臨床仮説を支持する (Winkler et al., Cancer Cell. 6(6):553 (2004))。DLL4及びANGPT2転写産物の下方制御は、これらの遺伝子が発芽する内皮端細胞内で主に発現され、先端細胞生物学に機能的に関連するため、恐らくは腫瘍中の未成熟な、成長している血管系の減少に対するbevの影響を表している (Del Toro et al., Blood. 116(19):4025 (2010))。
【0236】
実施例4:アッセイの説明
この例では、患者がVEGFアンタゴニストに応答性であるか又は感受性があるかどうかを監視するためのアッセイを記載する。VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体)による治療の前及び/又は後で一又は複数の患者から、インフォームドコンセントとともに試料(例えば、血液又は組織生検)が得られる。DNA及び血清/血漿は、良く知られた手順に従って、単離される。サンプルはプールされ、又は個別のサンプルとして維持することができる。
【0237】
表1に列挙された遺伝子の少なくとも一の発現は、少なくとも一遺伝子のmRNAを測定することによって、又はELISAを使用して少なくとも一遺伝子によりコードされるタンパク質を検出することによって評価される。患者の試料が、本明細書に記載されるような対照に対して少なくとも一遺伝子の発現において少なくとも二倍の変化を示す患者は、VEGFアンタゴニストによる治療に対して応答性又は感受性である患者として同定される。
【0238】
前述の発明は、理解を明確にするために説明と実施例によって少し詳細に説明してきたが記述及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書において引用される、全ての特許、特許出願、科学的参考文献、及びGenbank登録番号の開示は、各特許、特許出願、科学的参考文献、及びGenBank登録番号が具体的かつ個別に参照により援用されるように、全ての目的のためにその全体が参照により明確に援用される。このような特許出願は、具体的には、本出願が利益を主張する、2012年3月30日に出願された米国仮特許出願第61/618199号が含まれる。
図1
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図4
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図7
図8