(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺状の離型フィルムと、前記離型フィルム上に設けられ、長尺方向に沿って互いに隣接する島状粘着フィルムAと島状粘着フィルムBとを含む複数の島状粘着フィルムとを有する積層フィルムの製造方法であって、
前記長尺状の離型フィルムと長尺状の粘着フィルムとを有する長尺状の積層体を得る工程と、
前記積層体に含まれる粘着フィルムをプリカットして、切り込み線で囲まれた第一の剥離部を得る工程と、
前記第一の剥離部を、前記離型フィルムから剥離する工程と、
前記積層体に含まれる粘着フィルムをプリカットして、切り込み線で囲まれた第二の剥離部を得る工程と、
前記第二の剥離部を、前記離型フィルムから剥離する工程と、
を含み、
前記第一の剥離部が、
前記島状粘着フィルムAの前記離型フィルムの幅方向一端側の周縁部A1と、前記島状粘着フィルムBの前記離型フィルムの幅方向他端側の周縁部B2と、前記周縁部A1と前記周縁部B2とを連結する連結部Cとを含み、かつ前記島状粘着フィルムAの前記離型フィルムの幅方向他端側の周縁部A2と前記島状粘着フィルムBの前記離型フィルムの幅方向一端側の周縁部B1とを含まず、
前記第二の剥離部が、
前記第一の剥離部の前記離型フィルムの幅方向他端側に設けられ、前記島状粘着フィルムAの前記離型フィルムの幅方向他端側の周縁部A2と、前記島状粘着フィルムBの前記離型フィルムの幅方向他端側の周縁部B2の外側に隣接して設けられた外周部B2’と、前記周縁部A2と前記外周部B2’とを連結する連結部C2とを含む、積層フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.積層フィルム
本発明の長尺状の積層フィルムは、長尺状の離型フィルムと、その上に設けられた複数の島状粘着フィルムとを含み、必要に応じて、複数の島状粘着フィルムの外側に設けられた一対のサイド部をさらに含みうる。本発明の長尺状の積層フィルムは、後述する積層フィルムの製造方法により得られる。
【0017】
複数の島状粘着フィルムは、離型フィルムの長尺方向に所定の間隔を介して設けられており、互いに隣接する島状粘着フィルムAおよびBを含む。複数の島状粘着フィルムの中心を結ぶ線(中心同士を結ぶ線)は、好ましくは離型フィルムの長尺方向と平行である。
【0018】
島状粘着フィルムの形状は、特に制限されず、円形状、矩形状などであり、島状粘着フィルムが半導体ウエハのダイシングフィルムとして用いられる場合、好ましくは円形状である。
【0019】
(第一の実施形態)
図1Aは、本発明の長尺状の積層フィルムの第一の実施形態を示す平面図である。
図1Bは、
図1AのA−A線断面図である。
図1Aに示されるように、長尺状の積層フィルム10は、長尺状の離型フィルム11と、その上に設けられた複数の島状粘着フィルム13Aおよび13Bと、島状粘着フィルム13Aおよび13Bの外側を囲み、離型フィルム11の長尺方向に沿って設けられた一対のサイド部15−1および15−2とを含む。
【0020】
離型フィルム11の材質は、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムなどでありうる。離型フィルム11の厚みは、通常、10〜200μm程度であり、好ましくは25〜100μm程度である。
【0021】
島状粘着フィルム13Aおよび13Bは、半導体ウエハに貼り付けるダイシングフィルムとして機能しうる。そのため、島状粘着フィルム13Aおよび13Bは、半導体ウエハを囲むリングフレームに対応する形状;即ち、円形状を有しうる。島状粘着フィルム13Aおよび13Bの直径も、リングフレームの外径とほぼ同程度に設定され、例えば6〜12インチ程度(210〜370mm程度)としうる。
【0022】
島状粘着フィルム13Aおよび13Bは、離型フィルムの長尺方向(MD方向)に沿って所定の間隔を介して設けられている。島状粘着フィルム13Aと13Bの中心を結ぶ線は、離型フィルム11の長尺方向と平行であることが好ましい。
【0023】
島状粘着フィルム13Aおよび13Bは、拡張性を有する基材層を少なくとも含み、必要に応じて他の層をさらに有してもよい。島状粘着フィルム13Aおよび13Bの構成材料および層構成は、後述する。
【0024】
一対のサイド部15−1および15−2は、島状粘着フィルム13Aおよび13Bの外側を囲み、かつ離型フィルム11の長尺方向に沿って設けられている。一対のサイド部15−1および15−2は、島状粘着フィルム13Aおよび13Bと同じ層構成を有しうる。一対のサイド部15−1および15−2は、積層フィルムの幅方向端部の厚みと島状粘着フィルム部の厚みとを同じにすることで、積層フィルムをロール状に巻き取った際に、巻き取りジワの発生を抑制しうる。
【0025】
島状粘着フィルム13Aおよび13Bと一対のサイド部15−1および15−2との間には、連続的に設けられた離型フィルム11の露出部17が形成されている(斜線部)。
【0026】
露出部17は、島状粘着フィルム13Aと一方のサイド部15−1との間に形成された露出部17aと、島状粘着フィルム13Bと他方のサイド部15−2との間に形成された離型フィルム11の露出部17bと、露出部17aと露出部17bとを連結する露出部17cとを含む。
【0027】
露出部17cは、島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向の頂点a4(島状粘着フィルム13Aの、離型フィルム11の長尺方向一端)と島状粘着フィルム13Bの離型フィルム11の長尺方向の頂点b3(島状粘着フィルム13Aの、離型フィルム11の長尺方向他端)の一方または両方を含む。
【0028】
また、露出部17cは、離型フィルム11の長尺方向に対して斜めに延びている。露出部17cが延びる方向と離型フィルム11の長尺方向とのなす角θは、好ましくは0°超80°以下、より好ましくは0°超75°以下、さらに好ましくは15°以上70°以下でありうる。
【0029】
「露出部17cが延びる方向」とは、「島状粘着フィルム13Aの、離型フィルムの幅方向に平行な接線la(頂点a4における接線)上の中点ao」と「島状粘着フィルム13Bの、離型フィルムの幅方向に平行な接線lb(頂点b3における接線)上の中点bo」とを結ぶ中心線lで示される。
【0030】
「接線la上の中点ao」とは、「接線laが、露出部17cを構成する2つの(離型フィルムの長尺方向に延びる)外周線またはその延長線によって区切られた線分」の中点を意味する。同様に、「接線lb上の中点bo」とは、「接線lbが、露出部17cを構成する2つの(離型フィルムの長尺方向に延びる)外周線またはその延長線によって区切られた線分」の中点を意味する。
【0031】
隣り合う一方の露出部17cの延びる方向と、他方の露出部17cの延びる方向とは、互いに逆である。
【0032】
露出部17の形状は、後述する
図8の第一の剥離部37の形状と対応している。具体的には、露出部17aは、後述する
図8の第一の剥離部37を構成する周縁部37A1と対応し;露出部17bは、後述する
図8の第一の剥離部37を構成する周縁部37B2と対応し;露出部17cは、後述する
図8の第一の剥離部37を構成する連結部37Cと対応している。
【0033】
即ち、露出部17aおよび17bの幅wは、後述する
図8の周縁部37A1および周縁部37B2の幅wと同じであり;露出部17cの幅Wは、後述する
図8の連結部37Cの幅Wと同じである。
【0034】
一方、島状粘着フィルム13Aと他方のサイド部15−2とは、切り込み部C−2で分離されている。同様に、島状粘着フィルム13Bと一方のサイド部15−1とは、切り込み部C−1で分離されている。
【0035】
露出部17の形状は、
図1Aに示される形状に限定されず、種々の形状を採りうる(例えば
図2A〜
図2C参照)。
【0036】
図2Aは、本発明の長尺状の積層フィルムの第一の実施形態の変形例を示す平面図である。
図2Aに示されるように、長尺状の積層フィルム10’は、露出部17c’の延びる方向が、離型フィルム11の長尺方向に対して平行である以外は
図1Aとほぼ同様に構成されている。
【0037】
図2Bは、本発明の長尺状の積層フィルムの第一の実施形態の他の変形例を示す平面図である。
図2Bに示されるように、長尺状の積層フィルム10''は、
図1Aの島状粘着フィルム13Bと他方のサイド部15−2との間に形成された露出部17bに代えて、島状粘着フィルム13Bと一方のサイド部15−1''との間に形成された露出部17b''を有する以外は
図1Aとほぼ同様に構成される。
【0038】
即ち、露出部17''は、島状粘着フィルム13Aと一方のサイド部15−1''との間に形成された露出部17a''と、島状粘着フィルム13Bと一方のサイド部15−1''との間に形成された離型フィルム11の露出部17b''と、露出部17a''と露出部17b''とを連結する露出部17c''とを含む。
【0039】
露出部17c''は、島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向の頂点a4(島状粘着フィルム13Aの、離型フィルム11の長尺方向一端)と島状粘着フィルム13Bの離型フィルム11の長尺方向の頂点b3(島状粘着フィルム13Aの、離型フィルム11の長尺方向他端)の一方または両方を含む。
【0040】
また、露出部17c''は、離型フィルム11の長尺方向に対して斜めに延びている。露出部17c''の延びる方向と離型フィルム11の長尺方向とのなす角θは、
図1Aと同様としうる。ただし、
図1Aとは異なり、隣り合う一方の露出部17c''の延びる方向と、他方の露出部17c''の延びる方向とは、互いに同じである。
【0041】
図2Cは、本発明の長尺状の積層フィルムの第一の実施形態の他の変形例を示す平面図である。
図2Cに示されるように、長尺状の積層フィルム10'''は、露出部17c'''の延びる方向が、離型フィルム11の長尺方向に対して平行である以外は
図2Bとほぼ同様に構成されている。
【0042】
(第二の実施形態1)
図3Aは、本発明の長尺状の積層フィルムの第二の実施形態1の一例を示す平面図である。
図3Bは、
図3AのA−A線断面図である。
図3Aに示されるように、長尺状の積層フィルム20は、長尺状の離型フィルム21と、その上に設けられた複数の島状粘着フィルム23Aおよび23Bと、島状粘着フィルム23Aおよび23Bの外側を囲み、離型フィルム21の長尺方向に沿って設けられた一対のサイド部25−1および25−2とを含む。
【0043】
離型フィルム21は、前述の離型フィルム11と同様に定義されうる。島状粘着フィルム23Aおよび23Bは、前述の島状粘着フィルム13Aおよび13Bと同様に定義されうる。一対のサイド部25−1および25−2は、形状が異なる以外は前述の一対のサイド部15−1および15−2と同様に定義されうる。
【0044】
島状粘着フィルム23Aおよび23Bと一対のサイド部25−1および25−2との間には、所定形状の離型フィルム21の露出部27が形成されている。
【0045】
露出部27は、島状粘着フィルム23Aと一対のサイド部25−1および25−2との間に形成された枠状の露出部27aと、島状粘着フィルム23Bと一対のサイド部25−1および25−2との間に形成された枠状の露出部27bと、露出部27aと露出部27bとを連結する露出部27cとを含む。
【0046】
露出部27cは、離型フィルム21の長尺方向に対して斜めに延びており、島状粘着フィルム23Aの離型フィルム21の長尺方向の頂点a4(島状粘着フィルム23Aの、離型フィルム21の長尺方向一端)と島状粘着フィルム23Bの離型フィルム21の長尺方向の頂点b3(島状粘着フィルム23Bの、離型フィルム21の長尺方向他端)の一方または両方を含む。
【0047】
「露出部27cが延びる方向」とは、「島状粘着フィルム23Aの、離型フィルムの幅方向に平行な接線la(頂点a4における接線)上の中点ao」と「島状粘着フィルム23Bの、離型フィルムの幅方向に平行な接線lb(頂点b3における接線)上の中点bo」とを結ぶ中心線lで示される。
【0048】
「接線la上の中点ao」とは、「接線laが、露出部27cを構成する2つの(離型フィルムの長尺方向に延びる)外周線またはその延長線によって区切られた線分」の中点を意味する。同様に、「接線lb上の中点bo」とは、「接線lbが、露出部27cを構成する2つの(離型フィルムの長尺方向に延びる)外周線またはその延長線によって区切られた線分」の中点を意味する。
【0049】
露出部27cが延びる方向と離型フィルム21の長尺方向とのなす角θは、前述の第一の実施形態における露出部17cが延びる方向と離型フィルム11の長尺方向とのなす角θと同様の範囲に設定されうる。隣り合う一方の露出部27cの延びる方向と、他方の露出部27cの延びる方向とは、互いに逆である。
【0050】
露出部27cの離型フィルム21の表面には、斜め方向に延びた2本の切り込み痕(点線部分)が形成されている。この切り込み痕は、後述する積層フィルムの製造方法のプリカット加工において、第一の剥離部37を得る際に形成されたものである(後述の
図10参照)。
【0051】
露出部27は、後述する
図10の第一の剥離部37、第二の剥離部39および第三の剥離部41を足し合わせた領域に対応する。具体的には、露出部27aは、後述する
図10の第一の剥離部37を構成する周縁部37A1、第二の剥離部39を構成する周縁部39A2および第三の剥離部41を構成する外周部41A1を合わせた領域に対応する。露出部27bは、後述する
図10の第一の剥離部37を構成する周縁部37B2、第二の剥離部39を構成する外周部39B2、および第三の剥離部41を構成する周縁部41B1を足し合わせた領域に対応している。露出部27cは、後述する
図10の第一の剥離部37を構成する連結部37C、第二の剥離部39を構成する連結部39C2、および第三の剥離部41を構成する連結部41C1を足し合わせた領域と対応している。
【0052】
このように、島状粘着フィルム23Aおよび23Bの外周の全部が、離型フィルム21の露出部27に囲まれている。それにより、島状粘着フィルム23Aまたは23Bをウエハへ貼り付ける際に(後述する
図12参照)、島状粘着フィルム23Aまたは23Bを離型フィルム21から剥離しやすく、ウエハに貼り付けやすくすることができる。
【0053】
図3Aでは、露出部27cの延びる方向が、離型フィルム21の長尺方向に対して斜めである例を示したが、これに限定されず、離型フィルム21の長尺方向に対して平行であってもよい。その場合においても、露出部27cにおける離型フィルム21の表面には、離型フィルム21の長尺方向に対して斜めに延びる2本の切り込み痕(点線)が形成されうる。
【0054】
露出部27の形状は、
図3Aに示される形状に限定されず、種々の形状を採りうる(例えば
図4A参照)。
【0055】
図4Aは、本発明の長尺状の積層フィルムの第二の実施形態1の変形例を示す平面図である。
図4Aに示されるように、長尺状の積層フィルム20’は、露出部27c’が延びる方向と、露出部27c’に露出した離型フィルム21表面の切り込み痕(点線部分)の延びる方向とが、いずれも離型フィルム21の長尺方向に対して平行である以外は
図3Aとほぼ同様に構成されている。
【0056】
(第二の実施形態2)
図4Bは、本発明の長尺状の積層フィルムの第二の実施形態2の一例を示す平面図である。
図4Bに示されるように、長尺状の積層フィルム20''は、隣り合う一方の露出部27c''の延びる方向と、他方の露出部27c''の延びる方向とが、互いに同じであり、かつ露出部27c''における離型フィルム21表面の切り込み痕(点線部分)が1本である以外は
図3Aとほぼ同様に構成されている。
【0057】
露出部27c''は、後述する
図11Bの第一の剥離部37''と第二の剥離部39''を足し合わせた領域に対応している。具体的には、露出部27a''は、後述する
図11Bの第一の剥離部37''を構成する周縁部37A1''と第二の剥離部39''を構成する周縁部39A2''を合わせた領域に対応する。露出部27b''は、後述する
図11Bの第一の剥離部37''を構成する周縁部37B1''と第二の剥離部39''を構成する周縁部39B2''を足し合わせた領域に対応している。露出部27c''は、後述する
図11Bの第一の剥離部37''を構成する連結部37C''と第二の剥離部39''を構成する連結部39C2''とを足し合わせた領域と対応している。
【0058】
図4Cは、本発明の長尺状の積層フィルムの第二の実施形態2の変形例を示す平面図である。
図4Cに示されるように、長尺状の積層フィルム20'''は、露出部27c'''が延びる方向と、露出部27c'''における離型フィルム21表面の切り込み痕(点線部分)の延びる方向とが、いずれも離型フィルム21の長尺方向に対して平行である以外は
図4Bとほぼ同様に構成されている。
【0059】
島状粘着フィルム13A、13B、23Aおよび23Bについて
島状粘着フィルム13Aおよび13Bは、拡張性を有する基材層を少なくとも含み、必要に応じて粘着剤層や低摩擦層、中間層などをさらに含みうる。
【0060】
(1)拡張性を有する基材層
拡張性を有する基材層は、1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)と、プロピレン系エラストマー組成物(B)とを含む。
【0061】
1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)
拡張性を有する基材層に含まれる1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)は、1−ブテンを主な構成成分として含む重合体である。1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)におけるα−オレフィンは、1−ブテン以外の炭素数2〜10のα−オレフィンでありうる。炭素数2〜10のα−オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等が含まれ、好ましくはエチレン、プロピレンである。1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)に含まれるα−オレフィンは、1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせものであってもよい。1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)に含まれる1−ブテン含有量は80モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。80モル%未満では十分な拡張性が得られない。
【0062】
1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)の密度は、特に規定されないが、890〜950kg/m
3であることが好ましい。密度が低すぎると、引張弾性率が低下し十分な拡張性が得られない場合がある。
【0063】
1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)からなるフィルムの、23℃における引張弾性率は100〜500MPaであることが好ましく、150〜450MPaであることがより好ましい。引張弾性率が高すぎると硬すぎて拡張し難くなり、引張弾性率が低すぎると柔らかすぎてハンドリング性が低下するからである。
【0064】
上記引張弾性率は、以下のようにして測定できる。1)測定サンプルとして、例えば初期長さ140mm、幅10mm、厚み75〜100μmのサンプルフィルムを準備する。2)そして、測定温度25℃、チャック間距離100mm、引張速度50mm/minで引張試験を行い、サンプルの伸びの変化量(mm)を測定する。3)得られたS−S曲線(応力−ひずみ曲線)の初期の立ち上がりの部分に接線を引き、その接線の傾きをサンプルフィルムの断面積で割って得られる値を引張弾性率とする。
【0065】
1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)の、ASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は、プロピレン系エラストマー組成物(B)と押出機内で均一に混ざりやすい範囲であれば特に規定されないが、好ましくは1〜20g/10minであり、より好ましくは1〜10g/10minである。MFRが上記範囲であれば、プロピレン系エラストマー組成物(B)と比較的均一に押出成形しやすいからである。
【0066】
プロピレン系エラストマー組成物(B)
拡張性を有する基材層に含まれるプロピレン系エラストマー組成物(B)は、プロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)を主成分として含み、好ましくはポリプロピレン(b2)をさらに含む。
【0067】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)は、プロピレンと、プロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体である。プロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)におけるα−オレフィンは、好ましくは炭素数2〜20のα−オレフィンである。炭素数2〜20のα−オレフィンの例には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネンおよび1−デセン等が含まれ、好ましくはエチレン、1−ブテンである。プロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)に含まれるα−オレフィンは、1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。プロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)は、より好ましくはプロピレン・1−ブテン・エチレン共重合体である。
【0068】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)のプロピレンに由来する構成単位の含有量は、良好なゴム弾性を得る観点から、好ましくは50モル%以上であり、より好ましくは60モル%以上である。
【0069】
プロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)は、拡張性フィルムの取り扱い温度においてゴム弾性を有すればよく、好ましくはガラス転移点が25℃以下である。ガラス転移点が25℃を超える場合、成形後のフィルムの拡張性等の物性が、保管条件によって変化しやすくなることが懸念される。
【0070】
ポリプロピレン(b2)は、実質的にはプロピレンの単独重合体であるが、プロピレン以外のα−オレフィンなどを微量含んでもよく、いわゆるホモポリプロピレン(hPP)、ランダムポリプロピレン(rPP)およびブロックポリプロピレン(bPP)のいずれでも良い。ポリプロピレン(b2)における、プロピレン以外のα−オレフィンの含有量は、好ましくは20モル%以下であり、より好ましくは10モル%以下である。このようなポリプロピレン(b2)は、プロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)のブロッキングを抑制する効果やフィルム成形性を改善するなどの効果が期待できる。
【0071】
ポリプロピレン(b2)の含有量は、100重量部のプロピレン系エラストマー組成物(B)の合計に対して1〜70重量部であることが好ましく、5〜70重量部がより好ましく、5〜30重量部がさらに好ましく、5〜20重量部であることが特に好ましい。ポリプロピレン(b2)の含有量が1重量部未満であると、プロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)がブロッキングし、フィルム成形時に押出状態が不安定になる場合がある。ポリプロピレン(b2)の含有量が30重量部超であると、拡張率が小さくなる場合がある。
【0072】
プロピレン系エラストマー組成物(B)からなるフィルムの、23℃における引張弾性率は8〜500MPaであることが好ましく、10〜500MPaがより好ましく、10〜100MPaがさらに好ましく、10〜50MPaが特に好ましく、10〜45MPaがさらに好ましい。プロピレン系エラストマー組成物(B)からなるフィルムの引張弾性率は、前述と同様にして測定されうる。
【0073】
プロピレン系エラストマー組成物(B)の、ASTM D1238に準拠して230℃、2.16kg荷重にて測定されるメルトフローレート(MFR)は
、1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)と押出機内で均一に混ざりやすい範囲であれば特に規定されないが、好ましくは1〜20g/10minであり、より好ましくは1〜10g/10minである。MFRが上記範囲であれば、比較的均一な膜厚に押出成形しやすい。
【0074】
拡張性を有する基材層に含まれるプロピレン系エラストマー組成物(B)の含有量は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、30〜70重量部であることが好ましく、40〜60重量部であることがより好ましい。
【0075】
拡張性を有する基材層は、前述の1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)と、プロピレン系エラストマー組成物(B)とをドライブレンドまたはメルトブレンドした後、押出成形して得られる。このようにして得られる拡張性フィルムは、比較的結晶性が高く、引張弾性率の高い1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A)と、比較的結晶性が低く、引張弾性率の低いプロピレン系エラストマー組成物(B)とが微分散している構造をもつ。
【0076】
拡張性を有する基材層の厚みは、一定以上の拡張性を得るためには、島状粘着フィルムの総厚みの25〜75%程度であることが好ましい。具体的には、拡張性を有する基材層の厚みは、30〜150μmとしうる。
【0077】
(2)粘着剤層
粘着剤層は、公知の粘着剤で構成されてよく、特に限定されないが、例えばゴム系、アクリル系およびシリコーン系等の粘着剤のほか、スチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーなど熱可塑性エラストマーで構成されうる。
【0078】
アクリル系粘着剤は、アクリル酸エステル化合物の単独重合体、またはアクリル酸エステル化合物とコモノマーとの共重合体であってよい。アクリル酸エステル化合物の例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート等が含まれる。アクリル系共重合体を構成するコモノマーの例には、酢酸ビニル、アクリ
ロニトリル、アクリルアマイド、スチレン、メチル(メタ)クリレート、(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレートおよび無水マレイン酸等が含まれる。
【0079】
粘着剤層は、放射線により粘着力を低下させる放射線硬化型粘着剤や加熱により粘着力を低下させる加熱硬化型粘着剤などにより構成されてよい。放射線硬化型粘着剤の好ましい例には、紫外線硬化型粘着剤が含まれる。
【0080】
紫外線硬化型粘着剤および加熱硬化型粘着剤は、前記アクリル系粘着剤などの粘着剤と、光重合開始剤または熱重合開始剤とを含み、必要に応じて硬化性化合物(炭素−炭素二重結合を有する成分)や架橋剤をさらに含みうる。
【0081】
光重合開始剤は、紫外線を照射することにより開裂しラジカルを生成する化合物であればよく、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルなどのベンゾインアルキルエーテル類;ベンジル、ベンゾイン、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン類;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール類などが挙げられる。
【0082】
熱重合開始剤は、有機過酸化物誘導体やアゾ系重合開始剤などであるが、加熱時に窒素が発生しない点から、好ましくは有機過酸化物誘導体である。有機過酸化物誘導体の例には、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド等が含まれる。
【0083】
硬化性化合物は、分子中に炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合により硬化可能なモノマー、オリゴマーまたはポリマーであればよい。そのような硬化性化合物の例には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステルなどが含まれる。粘着剤が、側鎖に炭素−炭素二重結合を有する紫外線硬化型ポリマーである場合は、硬化性化合物を必ずしも加えなくてもよい。
【0084】
硬化性化合物の含有量は、粘着剤100重量部に対して5〜900重量部が好ましく、20〜200重量部がより好ましい。硬化性化合物の含有量が少なすぎると、硬化する部分が少なすぎて粘着力の調整が不十分となる。硬化性化合物の含有量が多すぎると、熱や光に対する感度が高すぎて保存安定性が低下する。
【0085】
架橋剤の例には、ペンタエリス
リトールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリイソシアネートなどのイソシアネート系化合物が含まれる。
【0086】
粘着剤層を、SUS−304−BA板の表面に貼着して60分間放置した後、SUS−304−BA板の表面から剥離するときの、JIS Z0237に準拠して測定される粘着力が0.1〜10N/25mmであることが好ましい。粘着力が上記範囲であれば、ウエハとの良好な接着性を確保しつつ、チップを剥離する際の糊残りを抑制できる。粘着剤層の粘着力は、例えば架橋剤の添加量によって調整することができる。具体的には、特開2004−115591号公報に記載の方法などにより調整することができる。
【0087】
粘着剤層の厚みは、前述の基材層の拡張性を阻害しない範囲であればよく、通常、1〜50μmとすることができ、好ましくは1〜25μmである。
【0088】
(3)中間層
中間層は、半導体ウエハの凹凸吸収性を有する層である。後述するように、中間層は、例えば基材層と粘着剤層との間に設けられる層としてもよく、また、粘着剤層の機能を兼ね備える層としてもよい。
【0089】
中間層は、25℃における引張弾性率E(25)および60℃における引張弾性率E(60)が、E(60)/E(25)<0.1を満たすことが好ましく、特にE(60)/E(25)<0.08を満たすことがより好ましく、E(60)/E(25)<0.05を満たすことがさらに好ましい。25℃および60℃における引張弾性率の比を上記範囲とすることで、中間層は、熱溶融性を有し、塑性変形するものとできる。具体的には、シートを加温下で貼り付ける時には、半導体ウエハの回路形成面の凸凹に追従して高い密着性を示し、シートを貼り付けた後の常温下では凹凸に密着した形状を保持(固定)することが可能となる。
【0090】
中間層の25℃における引張弾性率E(25)は、1MPa〜10MPaとされ、2MPa〜9MPaを満たすことがより好ましい。引張弾性率E(25)が上記範囲にあれば、シートを貼り付けた後の、常温下での形状を保持でき、加工中の密着性を維持できる。中間層の60℃における引張弾性率E(60)は、0.005MPa〜1.0MPaが好ましく、0.01MPa〜0.5MPaがより好ましい。引張弾性率E(60)が上記範囲にあれば、シートを加温下で貼り付ける際に、流動性を示すため、凸凹に対する良好な追従性が得られる。
【0091】
樹脂の引張弾性率は、以下のようにして測定できる。1)測定サンプルとして、例えば初期長さ140mm、幅10mm、厚み75〜100μmのサンプルフィルムを準備する。2)そして、測定温度25℃、チャック間距離100mm、引張速度50mm/minで引張試験を行い、サンプルの伸びの変化量(mm)を測定する。3)得られたS−S曲線(応力−ひずみ曲線)の初期の立ち上がりの部分に接線を引き、その接線の傾きをサンプルフィルムの断面積で割って得られる値を引張弾性率とする。
【0092】
中間層の密度は、800〜890kg/m
3が好ましく、830〜890kg/m
3がより好ましく、850〜890kg/m
3がさらに好ましい。中間層の密度が800kg/m
3未満であると、弾性率が低くなりすぎるため、形状固定力が低下するおそれがある。密度が890kg/m
3を超えると、弾性率が高くなり過ぎるため、凸凹に対する追従性が低下するおそれがある。
【0093】
中間層を構成する樹脂は、前記引張弾性率を満たすものであれば特に限定されないが、好ましくはオレフィン系共重合体である。オレフィン系共重合体は、炭素原子数2〜12のα−オレフィンを主な構成単位とするα−オレフィン共重合体であることが好ましい。炭素原子数2〜12のα−オレフィンの例には、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等が含まれる。
【0094】
なかでも、貼り付け時の凹凸追従性に優れる点で、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、およびエチレン・プロピレン・炭素原子数4〜12のα−オレフィンの三元共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体;およびプロピレン・1−ブテン共重合体・炭素原子数5〜12のα−オレフィンの三元共重合体などが好ましく、エチレン・プロピレン共重合体がより好ましい。プロピレンは、オレフィン系共重合体の中でも熱溶融性が高いためである。市販のα−オレフィン系共重合体には、三井化学製TAFMER(登録商標)等が含まれる。
【0095】
中間層の引張弾性率は、オレフィン系共重合体を構成するモノマーの種類、共重合比および変性の有無などによって調整される。例えば、オレフィン系共重合体の60℃における引張弾性率を低くするためには、プロピレンの共重合比を多くしたり、カルボン酸等で変性したりすればよい。
【0096】
中間層の厚みは、島状粘着フィルムを接着するウエハの一方の面に設けられた段差より大きいことが好ましく、この段差(例えば、半導体ウエハの回路形成面の凸凹(半田バンプを含む))を埋め込むことができる厚みであれば、特に制限されない。例えば、凸凹の段差が100μm程度であれば、中間層の厚みは100〜300μmとすることができる。すなわち、ウエハ表面の段差に対して、中間層の厚みを1倍〜3倍とすることが好ましく、1倍〜2倍とすることがより好ましい。
【0097】
(4)低摩擦層
低摩擦層は、必要に応じて、基材層の粘着剤層とは反対側の面に配置されうる。即ち、島状粘着フィルムを拡張する方法として、島状粘着フィルムの周縁部をリングフレームで固定しておき、島状粘着フィルムの中央部下側から、拡張機のステージを押し上げる方法がある。この際、島状粘着フィルムのステージと接する側の面の摩擦が大きいと、ステージ上でフィルムが滑り難くなり、ステージと接するフィルム部分を拡張しにくいことがある。島状粘着フィルムが、ステージと接する側の表面に配置された低摩擦層を有することで、拡張機のステージを滑りやすくし、島状粘着フィルムをより均一に拡張できる。
【0098】
このような低摩擦層は、ポリエチレン、エチレン系アイオノマー樹脂などの樹脂で構成される。また、低摩擦層の表面には、必要に応じて滑り性を一層高めるために、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、シリコーンオイル等の滑剤が塗布または含有されてもよい。
【0099】
島状粘着フィルムの総厚みは、特に制限されないが、例えば50〜200μmであることが好ましく、70〜150μmであることがより好ましい。
【0100】
(5)島状粘着フィルムの層構成について
島状粘着フィルム13Aおよび13Bは、特に制限されず、拡張性を有する基材層の単層物であってもよいし、基材層と他の層との積層物であってもよい。基材層と他の層との積層物の例には、基材層と粘着剤層、もしくは基材層と中間層の少なくとも2層からなるフィルム;基材層と中間層と粘着剤層とがこの順に積層された3層からなるフィルム;基材層、粘着剤層および中間層の他に、低摩擦層などをさらに有する4層以上のフィルムであってもよい。
【0101】
島状粘着フィルム13Aおよび13Bが、基材層と粘着剤層と低摩擦層とを有する積層物である場合、粘着剤層は基材層の一方の面側に配置され、低摩擦層は基材層の他方の面側に配置されることが好ましい。基材層と粘着剤層との間、基材層と中間層との間、中間層と粘着剤層との間、基材層と低摩擦層との間等に、上記以外の層がさらに積層されてもよい。また、基材層、中間層、および粘着剤層は、それぞれ多層であってもよい。
【0102】
図5は、島状粘着フィルムの層構成の好ましい例を示す断面図である。
図5に示されるように、島状粘着フィルム13A’(23A’)は、離型フィルム(不図示)と接する側から順に、粘着剤層131、中間層133、基材層135および低摩擦層137を有する。
【0103】
島状粘着フィルム13Aおよび13B(または23Aおよび23B)と離型フィルム11(または21)との間のピール強度は、1〜35g/50mmであることが好ましく、1〜25g/50mmであることがより好ましい。ピール強度を一定以下とすることで、半導体ウエハへの貼り付け工程において、島状粘着フィルム13Aまたは13B(23Aまたは23B)の端部を、離型フィルム11の表面から剥離しやすくし、剥離起点を作りやすくすることができる。一方、ピール強度を一定以上とすることで、後述するプリカット工程後に不要部分を剥離する際に、必要な部分まで剥離されるのを抑制できる。
【0104】
ピール強度は、JIS Z0237に記載の粘着シート試験方法に準拠して、温度23℃、相対湿度50%の環境下で測定されうる。具体的には、
1)島状粘着フィルムを、離型フィルムに約2kgゴムロールで圧力を加えながら貼り付けた後、幅50mmに切り取って試験片を得る。得られた試験片を、温度23℃、相対湿度50%の一定環境下に30分間置く。
2)次いで、試験片の島状粘着フィルムと離型フィルムとをそれぞれクリップで固定し、180°方向に、剥離速度300mm/分で引き剥がす際の力を測定する。このピール強度の測定を2回行い、得られたピール強度の平均値を「ピール強度」(g/50mm)とする。
【0105】
本発明の積層フィルムの厚みは、例えば60〜400μm程度としうる。
【0106】
2.積層フィルムの製造方法
本発明の積層フィルムの製造方法は、1)長尺状の離型フィルムと長尺状の粘着フィルムとを含む長尺状の積層体を得る工程と、2)積層体に含まれる粘着フィルムをプリカットして、切り込み線で囲まれた第一の剥離部を得る工程と、3)第一の剥離部を前記離型フィルムから剥離する工程とを含む。
【0107】
(第一の実施形態)
前述の第一の実施形態の積層フィルム(例えば
図1Aで示される積層フィルム)は、1)長尺状の離型フィルムと長尺状の粘着フィルムとを含む長尺状の積層体を得る工程と、2)積層体に含まれる粘着フィルムをプリカットして、切り込み線で囲まれた第一の剥離部を得る工程と、3)第一の剥離部を離型フィルムから剥離する工程とを経て得ることができる。
【0108】
1)積層体を得る工程
長尺状の離型フィルムと、長尺状の粘着フィルムとを含む長尺状の積層体を得る。
【0109】
図6は、長尺状の積層体の一例を示す断面図である。
図6に示されるように、長尺状の積層体30は、長尺状の離型フィルム11と、長尺状の粘着フィルム13とを含む。
【0110】
長尺状の離型フィルム11は、前述と同様のものである。長尺状の粘着フィルム13は、離型フィルム11の好ましくは全面に設けられ、次に行う2)プリカットする工程を経て、前述の複数の島状粘着フィルムとなる。つまり、長尺状の粘着フィルム13は、複数の島状粘着フィルムの前駆体である。
【0111】
長尺状の積層体は、任意の方法で製造されてよく、例えば1)粘着フィルムを得る工程と、2)粘着フィルム上に離型フィルムを積層する工程とを経て得ることができる。例えば、粘着フィルムが前述の
図5に示されるような層構成を有する場合、前記1)の粘着フィルムは、各層を構成する樹脂の溶融物を共押出しして積層する方法(共押出し法);基材層上に、他の層を構成する樹脂の溶融物を積層する方法(押出しラミネート);各層を構成する樹脂フィルムを熱圧着または接着剤等を介して積層する方法(ラミネート法);基材層上、もしくは基材層と中間層の積層物上に、粘着剤層を構成する樹脂組成物を塗布して積層する方法(塗布法)等により得ることができる。
【0112】
2)プリカットして第一の剥離部を得る工程
次いで、得られた長尺状の積層体の粘着フィルムを所定の形状にプリカットして(切り込みを入れて)、切り込み線で囲まれた第一の剥離部を得る。
【0113】
図7は、プリカット工程の一例を示す斜視図である。
図7に示されるように、プリカットする形状に対応した刃模様を有するプリカット用の平面刃具33がセットされたマグネットシリンダ35を、長尺状の積層体30の粘着フィルム13に押圧する。そして、長尺状の積層体30の粘着フィルム13に切り込み線を入れて(プリカットして)、切り込み線で囲まれた第一の剥離部37を得る。
【0114】
プリカット工程により、長尺状の積層体30の粘着フィルム13は、厚み方向の全部が切断される。一方、離型フィルム11は、厚み方向に切断されないか、一部が切断される。
【0115】
前述の通り、従来の1枚からなる剥離部75は、
図16に示されるように、島状粘着フィルムAの外周部75aおよび島状粘着フィルムBの外周部75bと、それらを離型フィルムの長尺方向(剥離方向)に連結する連結部75cとを有する(斜線部)。つまり、従来の1枚からなる剥離部75は、連結部75cから、離型フィルムの長尺方向(剥離方向)に、島状粘着フィルムBの外周部75bの、離型フィルムの幅方向一端側と、離型フィルムの幅方向他端側とに分岐する分岐部を有している。
【0116】
そして、
図16に示されるように、離型フィルムの長尺方向に沿って、島状粘着フィルムAの外周部75a、連結部75cおよび島状粘着フィルムBの外周部75bの順に剥離しようとすると、剥離部75には、矢印で示されるような方向の張力が掛かると考えられる。その結果、剥離部75のうち、島状粘着フィルムAの剥離方向下流端付近の領域Xの切り込み部(実線部分)に剥離張力が掛かりにくくなり、島状粘着フィルムAが、剥離部75と一体化して剥離されることがあった。
【0117】
これに対して本発明者らは、鋭意検討した結果、1枚からなる剥離部の形状を、前述のような分岐部;即ち、連結部75cから離型フィルムの長尺方向(剥離方向)に沿って、島状粘着フィルムBの外周部の離型フィルムの幅方向一端側と、離型フィルムの幅方向他端側とに分岐する分岐部をなくすことで、島状粘着フィルムAの剥離方向下流端付近の領域Xの切り込み部に、剥離張力を掛けやすくしうることを見出した。
【0118】
具体的には、1枚からなる剥離部の形状を、例えば
図17に示されるような分岐部のない形状とすることで、離型フィルムの長尺方向に沿って、島状粘着フィルムAの外周部a、連結部cおよび島状粘着フィルムBの外周部bの順に剥離する際に、島状粘着フィルムAの剥離方向下流端付近の領域Xの切り込み部に、矢印で示されるような斜め方向の剥離張力(剪断力)を生じさせることができる。それにより、島状粘着フィルムAと一体化することなく、剥離部のみを精度よく剥離できる。
【0119】
即ち、第一の剥離部は、所定の形状に連続的に設けられており、
1)島状粘着フィルムAの離型フィルムの幅方向一端側の周縁部A1と、島状粘着フィルムBの離型フィルムの幅方向他端側の周縁部B2と、前述の周縁部A1と前述の周縁部B2とを連結する連結部Cとを含み、かつ島状粘着フィルムAの離型フィルムの幅方向他端側の周縁部A2と島状粘着フィルムBの離型フィルムの幅方向一端側の周縁部B1とを含まないか(後述の
図8および9A参照);あるいは
2)島状粘着フィルムAの離型フィルムの幅方向一端側の周縁部A1と、島状粘着フィルムBの離型フィルムの幅方向一端側の周縁部B1と、前述の周縁部A1と前述の周縁部B1とを連結する連結部Cとを含み、かつ島状粘着フィルムAの離型フィルムの幅方向他端側の周縁部A2と島状粘着フィルムBの離型フィルムの幅方向他端側の周縁部B2とを含まないことを特徴とする(後述の
図9Bおよび9C参照)。
【0120】
「島状粘着フィルムAの離型フィルムの幅方向一端側の周縁部A1」は、島状粘着フィルムAの外周部のうち離型フィルムの幅方向一端と最も近い点a1を含み、かつ離型フィルムの幅方向一端と対向している部分である。「島状粘着フィルムAの離型フィルムの幅方向他端側の周縁部A2」は、島状粘着フィルムAの外周部のうち離型フィルムの幅方向他端と最も近い点a2を含み、かつ離型フィルムの幅方向他端と対向している部分である。
【0121】
同様に、「島状粘着フィルムBの離型フィルムの幅方向一端側の周縁部B1」は、島状粘着フィルムBの外周部のうち離型フィルムの幅方向一端と最も近い点b1を含み、かつ離型フィルムの幅方向一端と対向している部分である。「島状粘着フィルムBの離型フィルムの幅方向他端側の周縁部B2」は、島状粘着フィルムBの外周部のうち離型フィルムの幅方向他端と最も近い点b2を含み、かつ離型フィルムの幅方向他端と対向している部分である。
【0122】
例えば島状粘着フィルムAおよびBがいずれも円形状を有する場合、「島状粘着フィルムAの外周部のうち離型フィルムの幅方向一端に最も近い点a1」は、島状粘着フィルムAの幅方向一端側の頂点a1を意味する。同様に、「島状粘着フィルムBの離型フィルムの幅方向他端に最も近い点b2」は、島状粘着フィルムBの幅方向他端側の頂点b2を意味する。
【0123】
連結部Cは、前述の周縁部A1と周縁部B2とを連結するか(前記1)の場合)あるいは前述の周縁部A1と周縁部B1とを連結する(前記2)の場合)。そして、連結部Cは、島状粘着フィルムAの離型フィルムの長尺方向一端と、島状粘着フィルムBの離型フィルムの長尺方向他端の一方または両方を含み、好ましくは両方を含む。
【0124】
「島状粘着フィルムAの離型フィルムの長尺方向一端」は、島状粘着フィルムAの外周部と、島状粘着フィルムAとBの中心を結ぶ線との交点でありうる。例えば、島状粘着フィルムAが円形状である場合、「島状粘着フィルムAの外周部の離型フィルムの長尺方向一端」は、島状粘着フィルムAの外周部の離型フィルムの長尺方向の2つの頂点の一方を意味する。同様に、「島状粘着フィルムBの離型フィルムの長尺方向他端」は、島状粘着フィルムBの外周部と、島状粘着フィルムAとBの中心を結ぶ線との交点でありうる。
【0125】
また、連結部Cは、離型フィルムの長尺方向に対して平行または斜めに延びている。第一の剥離部を、離型フィルムの長尺方向に沿って精度よく剥離するためには、連結部Cは、離型フィルムの長尺方向に対して斜めに延びていることが好ましい。即ち、連結部Cの延びる方向と離型フィルム11の長尺方向とのなす角θは、0°以上80°以下であり、好ましくは0°超75°以下であり、より好ましくは15°以上70°以下でありうる。
【0126】
「連結部Cの延びる方向」とは、「連結部Cにおける、島状粘着フィルムAの離型フィルムの幅方向に平行な接線la上の中点ao」と「連結部Cにおける、島状粘着フィルムBの離型フィルムの幅方向に平行な接線lb上の中点bo」とを結ぶ中心線lで示される(後述の
図8参照)。
【0127】
図8は、本発明の第一の実施形態における第一の剥離部の形状の一例を説明する平面図である。同図において、離型フィルム11上に示された実線は、切り込み線を示す。
【0128】
図8に示されるように、第一の剥離部37は、切り込み線で囲まれた領域(斜線部)であり;島状粘着フィルム13Aの離型フィルムの幅方向一端側の周縁部37A1と、島状粘着フィルム13Bの離型フィルムの幅方向他端側の周縁部37B2と、島状粘着フィルム13Aの幅方向一端側の周縁部37A1と島状粘着フィルム13Bの幅方向他端側の周縁部37B2とを連結する連結部37Cとを含む。
【0129】
周縁部37A1は、島状粘着フィルムAの離型フィルム11の幅方向一端側の頂点a1を含み、かつ離型フィルム11の幅方向一端と対向する部分である。周縁部37B2は、島状粘着フィルムBの離型フィルム11の幅方向他端側の頂点b2を含み、かつ離型フィルム11の幅方向他端と対向する部分である。
【0130】
周縁部37A1および周縁部37B2の幅wは、適宜設定されうるが、例えば島状粘着フィルム13A(または13B)の直径の0.5〜2%程度としうる。例えば、12インチの半導体ウエハへの貼り付けに用いられる島状粘着フィルムを得る場合、周縁部37A1および37B2の幅wは、2〜6mm程度としうる。
【0131】
連結部37Cは、周縁部37A1と周縁部37B2とを連結し、かつ島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向の頂点a4(島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向一端)と島状粘着フィルム13Bの離型フィルム11の長尺方向の頂点b3(島状粘着フィルム13Bの離型フィルム11の長尺方向他端)の一方または両方を含む。
【0132】
例えば、第一の剥離部37を、周縁部37A1、連結部37Cおよび周縁部37B2の順に剥離する場合、連結部37Cは、少なくとも島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向の頂点a4(剥離方向下端部)を含むことが好ましく;島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向の頂点a4(剥離方向下端部)と、島状粘着フィルム13Bの離型フィルム11の長尺方向の頂点b3(剥離方向上端部)の両方を含むことがより好ましい。
【0133】
連結部37Cは、離型フィルム11の長尺方向に対して斜めに延びている。連結部37Cの延びる方向と離型フィルム11の長尺方向とのなす角θは、0°超80°以下であり、好ましくは0°超75°以下であり、より好ましくは15°以上70°以下でありうる。
【0134】
「連結部37Cが延びる方向」とは、前述の通り、「島状粘着フィルム13Aの、離型フィルムの幅方向に平行な接線la上の中点ao」と「島状粘着フィルム13Bの、離型フィルムの幅方向に平行な接線lb上の中点bo」とを結ぶ中心線lで示される。
【0135】
「接線la上の中点ao」とは、「接線laが、連結部37Cを構成する2つの(離型フィルムの長尺方向に延びる)外周線またはその延長線によって区切られた線分」の中点を意味する。同様に、「接線lb上の中点bo」とは、「接線lbが、連結部37Cを構成する2つの(離型フィルムの長尺方向に延びる)外周線またはその延長線によって区切られた線分」の中点を意味する。
【0136】
連結部37Cの幅Wは、第一の剥離部37を、切り込み線で区画された形状通りに剥離できるように設定されればよく、例えば、島状粘着フィルム13A(または13B)の直径の30〜90%程度、好ましくは30〜70%程度としうる。例えば、12インチの半導体ウエハへの貼り付けに用いられる島状粘着フィルムを得る場合、連結部37Cの幅Wは、110〜260mm程度としうる。
【0137】
連結部37Cの長さLは、島状粘着フィルム13Aと島状粘着フィルム13Bの間隔に応じて適宜設定され、例えば島状粘着フィルム13A(または13B)の直径の0.5〜10%程度;具体的には、3〜20mm程度としうる。
【0138】
前述の斜め方向の剥離張力を大きくする観点からは、例えば連結部37Cの延びる方向と離型フィルム11の長尺方向とのなす角θを大きくしたり;連結部37Cの幅Wや長さLを比較的小さくしたりすることが好ましい。
【0139】
第一の剥離部37は、
図8の離型フィルム上に示された実線部分と対応する刃形状のプリカット用平面刃具を用いて得ることができる。
【0140】
第一の剥離部37の形状は、
図8に示される形状に限定されず、種々の形状を採りうる(例えば
図9A〜
図9C参照)。
【0141】
図9Aは、第一の剥離部の変形例を示す平面図である。
図9Aに示されるように、第一の剥離部37’は、連結部37C’の延びる方向が、離型フィルム11の長尺方向に対して平行である(連結部37C’の延びる方向と離型フィルム11の長尺方向とのなす角θが0°である)以外は
図8とほぼ同様に構成されている。
【0142】
なかでも、連結部37C’に剥離張力を掛けやすくするためには、連結部37C’の長さLは、できるだけ短いことが好ましい。即ち、連結部37C’の長さLは、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
【0143】
図9Bは、第一の剥離部の他の変形例を示す平面図である。
図9Bに示されるように、第一の剥離部37''は、
図8の島状粘着フィルム13Bの、離型フィルムの幅方向他端側の周縁部37B2に代えて、島状粘着フィルム13Bの、離型フィルムの幅方向一端側の周縁部37B1を有する以外は
図8とほぼ同様に構成される。
【0144】
即ち、第一の剥離部37''は、島状粘着フィルム13Aの、離型フィルムの幅方向一端側の周縁部37A1''と、島状粘着フィルム13Bの、離型フィルムの幅方向一端側の周縁部37B1''と、周縁部37A1''と周縁部37B1''とを連結する連結部37C''とを含む。
【0145】
周縁部37A1''は、前述の周縁部37A1と同様に定義されうる。周縁部37B1''は、島状粘着フィルム13Bの、離型フィルム11の幅方向一端側の頂点b1を含み、かつ前記離型フィルム11の幅方向一端側と対向する部分である。周縁部37A1''および37B1''の幅wは、前述と同様に設定されうる。
【0146】
連結部37C''は、周縁部37A1''と周縁部37B2''とを連結し、かつ島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向の頂点a4(島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向一端)と島状粘着フィルム13Bの離型フィルム11の長尺方向の頂点b3(島状粘着フィルム13Bの離型フィルム11の長尺方向他端)の一方または両方を含む。
【0147】
例えば、第一の剥離部37''を、周縁部37A1''、連結部37C''および周縁部37B1''の順に剥離する場合、連結部37C''は、少なくとも島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向の頂点a4(剥離方向下端部)を含むことが好ましく;島状粘着フィルム13Aの離型フィルム11の長尺方向の頂点a4(剥離方向下端部)と、島状粘着フィルム13Bの離型フィルム11の長尺方向の頂点b3(剥離方向上端部)の両方を含むことがより好ましい。
【0148】
連結部37C''は、離型フィルム11の長尺方向に対して斜めに延びている。
図9Bでは、前述の
図8とは異なり、島状粘着フィルム13Aの、離型フィルムの長尺方向一端側の連結部37C''が延びる方向と、離型フィルムの長尺方向の他端側の連結部37C''が延びる方向とは互いに同じである。
【0149】
連結部37C''の延びる方向と離型フィルム11の長尺方向とのなす角θは、前述と同様としうる。
【0150】
連結部37C''の幅Wや長さLは、前述と同様に設定されうる。なかでも、連結部37C''に剥離張力を掛けやすくするためには、連結部37C''の長さLは、前述と同様にできるだけ小さいことが好ましい。即ち、連結部37C''の長さLは、20mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましい。
【0151】
図9Cは、第一の剥離部の他の変形例を示す平面図である。
図9Cに示されるように、第一の剥離部37'''は、連結部37C'''の延びる方向が、離型フィルムの長尺方向に対して平行である以外は
図9Bとほぼ同様に構成されている。
【0152】
3)第一の剥離部を剥離する工程
前記2)のプリカット工程で得られた第一の剥離部を、離型フィルム11から剥離する。剥離する方法は、特に制限されないが、例えば
図7に示されるように、プリカット工程で得られた第一の剥離部37を、巻き取りローラ38で巻き取って、離型フィルム11から剥離する方法が含まれる。
【0153】
前述の通り、本発明における第一の剥離部は、いずれも離型フィルムの長尺方向(剥離方向)に分岐する分岐部を有しない。そのため、前述の
図17に示されるように、島状粘着フィルム13Aの剥離方向下流端付近の領域Xに斜め方向の剥離張力;即ち、第一の剥離部の、島状粘着フィルム13Aの剥離方向下流端付近の領域Xに斜め方向の剥離張力(剪断力)を生じさせやすい。それにより、島状粘着フィルムAと一体化することなく、第一の剥離部のみを精度よく剥離することができる。
【0154】
第一の剥離部の例には、前述したように、
図8および
図9Aで代表される態様と;
図9Bおよび9Cで代表される態様とが含まれるが、
図8および
図9Aで代表される態様がより好ましい。第一の剥離部の、島状粘着フィルム13Aの剥離方向下流端付近の領域Xに、斜め方向の剥離張力;具体的には、周縁部A1に含まれる頂点a1から周縁部B2に含まれる頂点b2に向かう斜め方向の剥離張力(剪断力)を生じさせやすく;島状粘着フィルム13Aと一体化することなく、第一の剥離部のみを剥離しやすいからである。
【0155】
図8および
図9Aで代表される態様のなかでも、第一の剥離部を構成する連結部Cが離型フィルムの長尺方向に対して斜めに延びた
図8の態様がより好ましい。離型フィルムの長尺方向に対して斜めに延びた連結部Cは、離型フィルムの長尺方向に対して平行に延びた連結部Cよりも屈曲部を含まないため、島状粘着フィルム13Aの頂点a1から島状粘着フィルム13Bの頂点b2へ向かう斜め方向の剥離張力を、直線的に(ダイレクトに)伝えやすい。それにより、第一の剥離部の、島状粘着フィルム13Aの剥離方向下流端付近の領域Xに、周縁部A1に含まれる頂点a1から周縁部B2に含まれる頂点b2に向かう斜め方向の剥離張力(剪断力)をより効果的に生じさせうる。
【0156】
一方、
図9Bおよび9Cで代表される態様のなかでは、
図9Bで代表される態様が好ましい。
図9Bでは、第一の剥離部を構成する連結部Cが、離型フィルムの長尺方向に対して斜めに延びていることから、島状粘着フィルム13Aの頂点a4(剥離方向下流端)付近の領域Xに斜め方向の剥離張力を生じさせやすいからである。
【0157】
本発明の積層フィルムの製造方法は、前記1)〜3)の工程に加えて、4)前記1)の積層体に含まれる粘着フィルムをプリカットして、切り込み線で囲まれた第二の剥離部および第三の剥離部の一方または両方を得る工程と、5)得られた第二の剥離部および第三の剥離部の一方または両方を、離型フィルムから剥離する工程とをさらに含みうる。
【0158】
第二の剥離部は、第一の剥離部の離型フィルムの幅方向他端側に連続的に設けられる。第三の剥離部は、第一の剥離部の離型フィルムの幅方向一端側に連続的に設けられる。
【0159】
(第二の実施形態1)
本発明の第二の実施形態1の積層フィルム(例えば
図3Aおよび
図4Aで示される積層フィルム)は、前記1)〜3)の工程に加えて、4−1)前記1)の積層体に含まれる粘着フィルムをプリカットして、切り込み線で囲まれた第二および第三の剥離部を得る工程(後述の
図10および
図11A参照)と、5−1)第二および第三の剥離部を、離型フィルムから剥離する工程とをさらに経て得ることができる。
【0160】
4−1)第二および第三の剥離部を得る工程
図10は、本発明の第二の実施形態における第二および第三の剥離部の形状の一例であって、
図8の第一の剥離部と対応する第二および第三の剥離部を説明する平面図である。
【0161】
図10に示されるように、第二の剥離部39は、第一の剥離部37の幅方向他端側に連続的に設けられている。そして、第二の剥離部39は、島状粘着フィルム23Aの、離型フィルムの幅方向他端側の周縁部39A2と、島状粘着フィルム23Bの離型フィルムの幅方向他端側の外周部39B2と、それらを連結する連結部39C2とを含む。
【0162】
周縁部39A2は、前述の通り、島状粘着フィルム23Aの外周部のうち離型フィルムの幅方向他端と最も近い点a2を含み、かつ離型フィルム21の幅方向他端と対向している部分である。
【0163】
外周部39B2は、第一の剥離部37を構成する周縁部37B2の外側に隣接し、かつ該周縁部37B2に沿って設けられた領域である。外周部39B2の幅w’は、特に制限されず、周縁部39A2の幅wと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0164】
連結部39C2は、第一の剥離部37を構成する連結部37Cの離型フィルムの幅方向他端側に隣接し、かつ該連結部37Cに沿って設けられた領域であり、周縁部39A2と外周部39B2とを連結する。
【0165】
連結部39C2の幅w
’’は、その延びる方向に均一であってもよいし、均一でなくてもよい。連結部39C2の幅w’’は、特に制限されず、例えば周縁部39A2の幅wまたは外周部39B2の幅w’と同様としうる
。
【0166】
同様に、第三の剥離部41は、第一の剥離部37の幅方向一端側に連続的に設けられている。そして、第三の剥離部41は、島状粘着フィルム23Aの、離型フィルムの幅方向一端側の外周部41A1と、島状粘着フィルム23Bの離型フィルムの幅方向一端側の周縁部41B1と、それらを連結する連結部41C1とを含む。
【0167】
外周部41A1は、第一の剥離部37を構成する周縁部37A1の外側に隣接し、かつ該周縁部37A1に沿って設けられた領域である。外周部41A1の幅w’は、特に制限されず、周縁部41B1の幅wと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0168】
周縁部41B1は、前述の通り、島状粘着フィルム23Bの外周部のうち離型フィルム21の幅方向一端と最も近い点b1を含み、かつ離型フィルム21の幅方向一端と対向している部分である。
【0169】
連結部41C1は、第一の剥離部37を構成する連結部37Cの幅方向一端側に隣接し、かつ該連結部37Cに沿って設けられた領域であり、外周部41A1と周縁部41B1とを連結する。
【0170】
連結部41C1の幅w''は、特に制限されず、例えば周縁部41B1の幅wまたは外周部41A1の幅w’と同様としうる。連結部41C1の幅は、その延びる方向に均一であってもよいし、均一でなくてもよい。
【0171】
第二の剥離部39を構成する連結部39C2と、第三の剥離部41を構成する連結部41C1とは、互いに平行であることが好ましい。
【0172】
第一の剥離部37、第二の剥離部39および第三の剥離部41は、
図10の離型フィルム21上に示された実線部分と対応する刃形状のプリカット用平面刃具を用いて得ることができる。
【0173】
第二および第三の剥離部の形状は、
図10に示される形状に限定されない。例えば、第二および第三の剥離部の形状は、第一の剥離部の形状に応じて、種々の形状を採りうる(例えば
図11A参照)。
【0174】
図11Aは、前述の
図9Aの第一の剥離部に対応する第二および第三の剥離部の一例を示す平面図である。
図11Aに示されるように、第二の剥離部39'を構成する連結部39C2'と、第三の剥離部41'を構成する連結部41C1'の延びる方向が、それぞれ離型フィルム21の長尺方向に対して平行である以外は
図10とほぼ同様に構成されている。
【0175】
5−1)第二および第三の剥離部を剥離する工程
前記4−1)のプリカット工程で得られた第二および第三の剥離部を、例えば前記3)の工程と同様にして、離型フィルム21から剥離する。
【0176】
(第二の実施形態2)
また、本発明の第二の実施形態2の積層フィルム(例えば
図4Bおよび
図4Cで示される積層フィルム)は、前記1)〜3)の工程に加えて、4−2)前記1)の積層体に含まれる粘着フィルムをプリカットして、切り込み線で囲まれた第二の剥離部を得る工程(後述の
図11Bおよび
図11C参照)と、5−2)第二の剥離部を、離型フィルムから剥離する工程とをさらに経て得ることができる。
【0177】
4−2)第二の剥離部を得る工程
図11Bは、前述の
図9Bの第一の剥離部に対応する第二の剥離部の一例を示す平面図である。
図11Bに示されるように、第二の剥離部39''は、
図9Bに示される第一の剥離部37''と対応する形状に設けられている。そして、第二の剥離部39''は、島状粘着フィルム23Aの、離型フィルムの幅方向他端側の周縁部39A2''と、島状粘着フィルム23Bの、離型フィルムの幅方向他端側の周縁部39B2''と、それらを連結する連結部39C2''とを含む。
【0178】
図11Cは、前述の
図9Cの第一の剥離部に対応する第二の剥離部の一例を示す平面図である。
図11Cに示されるように、第二の剥離部39'''は、
図9Cに示される第一の剥離部37'''と対応する形状に設けられている。
【0179】
5−2)第二の剥離部を剥離する工程
前記4−2)のプリカット工程で得られた第二の剥離部を、例えば前記3)の工程と同様にして、離型フィルム21から剥離する。
【0180】
前述の
図8に示されるように、第一の剥離部37のみを剥離しても、島状粘着フィルム13Aまたは13Bの外周部の一部は、切り込み部が形成され
るにすぎず、離型フィルムの露出部で囲まれていない。そのため、島状粘着フィルム13Aまたは13Bを半導体ウエハへ貼り付ける工程において(後述の
図12参照)、島状粘着フィルム13Aまたは13Bを離型フィルム11から剥離しにくく、半導体ウエハに貼り付けにくいことがある。
【0181】
これに対して本実施形態では、第一の剥離部37だけでなく、例えば第二の剥離部39と第三の剥離部41の両方(例えば
図10参照)、あるいは第二の剥離部39と第三の剥離部41の一方(例えば
図11B参照)をさらに剥離する。それにより、島状粘着フィルム23Aまたは23Bの外周部の多く(好ましくは全部)を、離型フィルムの露出部で囲むことができる。そのため、島状粘着フィルム23Aまたは23Bを半導体ウエハへ貼り付ける工程において(後述の
図12参照)、島状粘着フィルム23Aまたは23Bを離型フィルム21から剥離させやすくし、貼り付けやすくすることができる。島状粘着フィルム23Aまたは23Bが、一対のサイド部と離間しているほうが、一対のサイド部と接触しているよりも、島状粘着フィルムを離型フィルムから剥離させやすいからである。
【0182】
第一の剥離部を得る工程(前記2)の工程)と、第二および第三の剥離部の一方または両方を得る工程(前記4)の工程)とは、同時に行ってもよいし、逐次的に行ってもよい。逐次的に行う場合、第一の剥離部を得る工程(前記2)の工程)の後;第二および第三の剥離部の一方または両方を得る工程(前記4)の工程)を行うことが好ましい。
【0183】
第一の剥離部を剥離する工程(前記3)の工程)と、第二および第三の剥離部の一方または両方を剥離する工程(前記5)の工程)とは、同時に行ってもよいし、逐次的に行ってもよい。逐次的に行う場合、第一の剥離部を剥離する工程(前記3)の工程)の後;第二および第三の剥離部の一方または両方を剥離する工程(前記5)の工程)を行うことが好ましい。
【0184】
第一の剥離部を得る工程(前記2)の工程)と、第二および第三の剥離部の一方または両方を得る工程(前記4)の工程)とを同時に行い、かつ第一の剥離部を剥離する工程(前記3)の工程)の後;第二および第三の剥離部の少なくとも一方を剥離する工程(前記5)の工程)を行ってもよい。
【0185】
3.半導体装置の製造方法
本発明の半導体装置の製造方法は、1)本発明の積層フィルムから離型フィルムを少なくとも一部剥ぎとり、島状粘着フィルムの少なくとも一部を露出させる工程と、2)半導体ウエハに、露出させた島状粘着フィルムを貼り付ける工程とを含む。
【0186】
図12は、本発明の半導体装置の製造工程の一部であり、本発明の積層フィルムの島状粘着フィルムを半導体ウエハに貼り付ける工程の一例を示す模式図である。
【0187】
図12Aに示されるように、本発明の長尺状の積層フィルムのロール体40から、長尺状の積層フィルム10を巻き出す。巻き出された積層フィルム10を、搬送ローラ41によりマウント部43まで搬送する。
図12Aに示されるように、長尺状の積層フィルム10の離型フィルム11は、島状粘着フィルム13A(または13B)のキャリアフィルムとして機能する。
【0188】
マウント部43では、移動式のステージ45上に、円形状の半導体ウエハ47と、それを囲むように設けられたリングフレーム49とが配置されている。
【0189】
そして、マウント部43に導かれた長尺状の積層フィルム10に、その離型フィルム11の裏面から楔状の部材51を押し当てる。それにより、離型フィルム11を、その幅方向に平行な軸を屈曲軸として鋭角に折り曲げて、離型フィルム11の表面から島状粘着フィルム13A(または13B)の端部を露出させる(頭出しする)。それにより、剥離起点が作り出される。剥離起点を作りやすくするために、鋭角に折り曲げられた部分の、離型フィルム11と島状粘着フィルム13A(または13B)との境界部分にエアーを当ててもよい。そして、前述の露出させた島状粘着フィルム13A(または13B)の端部を、それに対応するリングフレーム49の端部上に配置する。
【0190】
次いで、
図12Bに示されるように、リングフレーム49の端部と島状粘着フィルム13A(または13B)の端部とを固定させた状態で、離型フィルム11を巻き掛けた楔状の部材51を、リングフレーム49の端部から遠ざけて(後退させて)、島状粘着フィルム13A(または13B)を、リングフレーム49とそれに囲まれた半導体ウエハ47の面全体に配置する。
【0191】
そして、
図12Cに示されるように、リングフレーム49とそれに囲まれた半導体ウエハ47の面全体に配置された島状粘着フィルム13A(または13B)上に、貼り付けローラ53で押圧して、島状粘着フィルム13A(または13B)とリングフレーム49、および島状粘着フィルム13A(または13B)と半導体ウエハ47の面全体とを、それぞれ密着させる。それにより、島状粘着フィルム付き半導体ウエハ47を得る。島状粘着フィルムの貼り付けは、半導体ウエハの表面(回路形成面)に行っても裏面(非回路形成面)に行ってもよいが、一般的には、半導体ウエハの裏面(非回路形成面)に行うことが多い。
【0192】
その後、島状粘着フィルム13A(または13B)が除去された離型フィルム11を、搬送ローラ55を介して搬送し、ロール状に巻き取る(
図12A参照)。
【0193】
このような手順により、半導体ウエハ47への島状粘着フィルム13A(または13B)の貼り付けを、自動化された工程で連続して行うことができる。このような半導体ウエハへの島状粘着フィルムの貼り付けを行う装置の例には、株式会社ディスコ製のDFM−2800やリンテック(株)製のRAD−2500(商品名)等が含まれる。
【0194】
前述の通り、本発明の積層フィルムは、島状粘着フィルムと離型フィルムとの接着性を低減することができる。そのため、
図12Aに示されるように、島状粘着フィルムの端部を、離型フィルムの表面から露出させて、剥離しやすくすることができる。
【0195】
本発明の半導体装置の製造方法は、3)島状粘着フィルム付き半導体ウエハをダイシングして複数の半導体チップ(半導体素子)を得る工程と、4)島状粘着フィルムを拡張して半導体チップをピックアップする工程とをさらに含みうる。
【0196】
3)ダイシングする工程
前述で得られた島状粘着フィルム付き半導体ウエハをダイシング(切断)して、半導体チップ(半導体素子)を得る。切断手段は、特に制限されず、ダイシングソーやレーザー等であってよい。
【0197】
切断深さは、島状粘着フィルムの層構成によって異なり、適宜設定されうる。例えば、島状粘着フィルムが、
図5に示されるような層構成を有する場合、切断深さは、島状粘着フィルムの基材層135と中間層133の界面に到達する程度に設定されうる。
【0198】
4)ピックアップする工程
次いで、複数の半導体チップが配置された島状粘着フィルムを拡張(エキスパンド)する。島状粘着フィルムをエクスパンド(拡張)する手段は、特に制限されず、島状粘着フィルムの裏面を支持する拡張機のステージを上昇させる方法や、島状粘着フィルム面と平行な方向に引っ張る(拡張する)方法などが含まれる。
【0199】
それにより、ダイシングして得られる半導体チップ同士の間隔を広げることができる。また、島状粘着フィルムを拡張(エキスパンド)することで、島状粘着フィルムの粘着剤層と半導体チップとの間にずり応力が生じ、半導体チップと粘着剤層との接着力が低減される。それにより、半導体チップをピックアップし易くすることができる。
【0200】
島状粘着フィルムが、その半導体チップと接する面に紫外線や熱により硬化する粘着剤層を含む場合、拡張された島状粘着フィルムに紫外線を照射または加熱して、島状粘着フィルムの粘着剤層を硬化させる工程をさらに含んでもよい。それにより、島状粘着フィルムの粘着剤層と半導体チップとの接着性を低下させて、半導体チップをよりピックアップしやすくすることができる。
【実施例】
【0201】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
【0202】
1.積層フィルムの原料
1)低摩擦層の原料
エボリューSP2040にシリコーン樹脂(東レ・ダウ・コーニングシリコーン社製:商品名 BY27−002)を5wt%混合した混合物を準備した。
【0203】
2)基材層の原料
1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A1)として、三井化学(株)製 タフマーBL4000を準備した。
【0204】
また、プロピレン系エラストマー組成物(B1)を以下のようにして調製した。まず、特許第4945014号の段落0111の合成例1と同様にして、プロピレン/エチレン/1−ブテン(70/10/20重量比)のプロピレン・α-オレフィン共重合体(b1)を得た。次いで、80重量部のプロピレン・α−オレフィン共重合体(b1)と、20重量部のホモポリプロピレン(b2)とを、200℃で2軸押出機にて混練し、プロピレン系エラストマー組成物(B1)を得た。
【0205】
1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A1)とプロピレン系エラストマー組成物(B1)の引張弾性率を、それぞれ以下の方法で測定した。
1)測定サンプルとして、例えば初期長さ140mm、幅10mm、厚み75〜100μmのサンプルフィルムを準備した。
2)そして、測定温度25℃、チャック間距離100mm、引張速度50mm/minで引張試験を行い、サンプルの伸びの変化量(mm)を測定した。
3)得られたS−S曲線(応力−ひずみ曲線)の初期の立ち上がりの部分に接線を引き、その接線の傾きをサンプルフィルムの断面積で割って得られる値を引張弾性率とした。
【0206】
そして、1−ブテン・α−オレフィン共重合体(A1)と、得られたプロピレン系エラストマー組成物(B1)とを、質量比60/40で混合して混合物を得た。
【0207】
3)中間層の原料
三井化学(株)製タフマーP0275(登録商標)を準備した。
【0208】
4)粘着剤層の原料
(粘着剤A)
以下のようにして、UV硬化型粘着剤Aを調製した。即ち、アクリル酸エチル48重量部、アクリル酸−2−エチルヘキシル27重量部、アクリル酸メチル20重量部、メタクリル酸グリシジル5重量部、および重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5重量部を混合した。これを、トルエン65重量部、酢酸エチル50重量部が入った窒素置換フラスコ中に、撹拌しながら80℃で5時間かけて滴下し、さらに5時間撹拌して反応させた。反応終了後、この溶液を冷却し、これにキシレン25重量部、アクリル酸2.5重量部、およびテトラデシルベンジルアンモニウムクロライド1.5重量部を加え、空気を吹き込みながら80℃で10時間反応させ、光重合性炭素−炭素二重結合が導入されたアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。この溶液に、共重合体(固形分)100重量部に対して光開始剤としてベンゾイン7重量部、イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49−75S)2重量部、1分子内に光重合性炭素−炭素二重結合を2個以上有する低分子量化合物としてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成(株)製、商品名:アロニックスM−400)15重量部を添加し、UV硬化型粘着剤Aを得た。
【0209】
(粘着剤B)
イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49−75S)の添加量を2.5重量部とした以外は、粘着剤Aと同様にして粘着剤Bを得た。
(粘着剤C)
イソシアネート系架橋剤(三井化学(株)製、商品名:オレスターP49−75S)の添加量を3重量部とした以外は、粘着剤Aと同様にして粘着剤Cを得た。
【0210】
5)離型フィルム
離型フィルムA:帝人社製
ピューレックスA54(厚み38μm)
離型フィルムB:三井化学東セロ社製SP−PET L31(厚み31μm)
【0211】
2.長尺状の積層体の作製
(製造例1)
前述の低摩擦層、基材層および中間層の各原料を、フルフライト型のスクリューを有する各押出機に投入し、溶融混練させた。基材層、中間層および低摩擦層の各原料の溶融物を、多層ダイ内で積層させて共押出し成形した。押出温度は、230℃とした。それにより、低摩擦層/基材層/中間層の3層フィルムを得た。
【0212】
得られた3層フィルムの中間層上に、前述の粘着剤Aを塗布後、乾燥させて粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層上に、前述の離型フィルムBを積層した。それにより、粘着剤層/中間層/基材層/低摩擦層がこの順に積層された4層フィルム(粘着フィルム)と、その粘着剤層上に設けられた離型フィルムBとを含む積層体を得た。積層体の低摩擦層/基材層/中間層/粘着剤層の厚みは、10μm/60μm/50μm/5μm(合計:125μm)であった。
【0213】
(製造例2〜6)
粘着剤層の種類または離型フィルムの種類を、表1または2に示されるように変更した以外は製造例1と同様にして積層体を得た。
【0214】
得られた積層体の粘着剤層の粘着力および粘着剤層と離型フィルムとの間のピール強度を、以下の方法で測定した。
【0215】
(粘着力)
得られた積層体の粘着剤層の粘着力を、JIS Z0237に記載の粘着シート試験方法に準拠して、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて測定した。具体的には、得られた積層体を、幅25mmの試験片とした。この試験片から離型フィルムを剥離し、露出した粘着剤層を、SUS−BA板に約2kgゴムロールで圧力を加えながら貼り付けて、温度23℃、相対湿度50%の一定環境下に60分間置いた。次いで、この試験片を、180°方向に剥離速度300mm/分でSUS−BA板から引き剥がす際の粘着力を測定した。この粘着力の測定を2回行い、平均値を「粘着力」(N/25mm)とした。
【0216】
(ピール強度)
得られた島状粘着フィルムと離型フィルムのピール強度を、JIS Z0237に記載の粘着シート試験方法に準拠して、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて測定した。具体的には、
1)得られた島状粘着フィルムを、離型フィルムに約2kgゴムロールで圧力を加えながら貼り付けた後、幅50mmに切り取って試験片とした。得られた試験片を、温度23℃、相対湿度50%の一定環境下に30分間置いた。
2)次いで、試験片の島状粘着フィルムと離型フィルムとをそれぞれクリップで固定し、180°方向に、剥離速度300mm/分で引き剥がす際の力を測定した。このピール強度の測定を2回行い、得られたピール強度の平均値を「ピール強度」(g/50mm)とした。
【0217】
3.積層フィルムの製造方法
(実施例1)
製造例1で得られた長尺状の積層体を、プリカット加工用の平面刃具を有するマグネットシリンダにて、
図10に示されるような形状にプリカット加工し、第一、第二および第三の剥離部をそれぞれ得た。そして、第一、第二および第三の剥離部を剥離除去して、
図3Aに示されるような積層フィルムを得た。複数の島状粘着フィルムの中心を結ぶ線は、離型フィルムの長尺方向に平行とした。
【0218】
図10において、島状粘着フィルム23Aおよび23Bの直径を12インチリングフレーム(370mm)とした。そして、第一の剥離部37を構成する連結部37Cが延びる方向は、離型フィルムの長尺方向に対して23°とした。連結部37Cの長さLは10mmとし、幅Wは210mmとした。第一の剥離部37を構成する周縁部37A1と周縁部37B2の幅wは、それぞれ3mmとした。
【0219】
第二の剥離部39を構成する周縁部39A2の幅wは6mmとし;外周部39B2の幅w’は3mmとし;連結部39C2の幅w''は3mmとした。第三の剥離部41を構成する外周部41A1の幅w’は3mmとし;周縁部41B1の幅wは6mmとし;結合部41C1の幅w''は3mmとした。
【0220】
(実施例2〜6)
製造例1で得られた長尺状の積層体を、製造例2〜6で得られた長尺状の積層体に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0221】
(比較例1)
製造例1で得られた長尺状の積層体を、
図16に示されるような従来の形状にプリカット加工し、剥離部を得た以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0222】
即ち、剥離部の連結部が延びる方向は、離型フィルムの長尺方向に対して平行(0°)とした。剥離部の連結部の長さと幅は、実施例1の第一の剥離部37を構成する連結部37Cの長さおよび幅と、それぞれ同様とした。
【0223】
(比較例2〜6)
製造例1で得られた長尺状の積層体を、製造例2〜6で得られた長尺状の積層体に変更した以外は
比較例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0224】
積層フィルムの粘着フィルムのプリカット加工性を、以下の方法で評価した。
【0225】
(プリカット加工性)
積層フィルムの粘着フィルムを、実施例1〜6では、ローラ1回転毎に2枚の円形状にプリカット加工し;比較例1〜6では、ローラ1回転毎に1枚の円形状にプリカット加工しながら、連続的に10枚の円形状にプリカット加工した。次いで、剥離部を除去した後の剥離状態を、以下の基準で評価した。
○:10枚とも、剥離不良が生じなかった
△:1枚以上3枚未満で、剥離不良が生じた
×:3枚以上で、剥離不良が生じた
【0226】
(ウエハへの貼り付け性)
株式会社ディスコ製DFM−2800を用いて、積層フィルムのウエハへの貼り付け性(頭出しのしやすさ)を評価した。頭出しとは、積層フィルムにおいて、離型フィルムから島状粘着フィルムを剥離することである。
○:10枚とも、頭出しができ、ウエハへの貼り付け不良が生じなかった。
×:1枚以上で、頭出しできず、ウエハへの貼り付け不良が生じた。
【0227】
実施例1〜6の評価結果を表1に示し、比較例1〜6の評価結果を表2に示す。
【表1】
【表2】
【0228】
剥離部の形状を
図10に示されるようにした実施例1〜6の剥離方法では、必要部分まで剥離されることなく、所定の円形状にプリカットできることがわかる。一方、剥離部の形状を従来の形状にした比較例1〜6(特に比較例1〜3)の剥離方法では、必要部分まで剥離され、所定の円形状にプリカットできないことがわかる。これらのことから、特に積層フィルムのピール強度(離型フィルムと粘着剤層の間の接着性)が低い場合において、剥離部の形状を本発明の形状とすることにより、プリカット加工性を高めうることがわかる。
【0229】
また、実施例1〜3と実施例4〜6との対比から、積層フィルムのピール強度(離型フィルムと粘着剤層の間の接着性)を低くすることで、島状粘着フィルムを離型フィルムから剥離しやすくし、ウエハへの貼り付け性をさらに高めうることがわかる。
【0230】
本出願は、2013年3月26日出願の特願2013−064553に基づく優先権を主張する。当該出願明細書および図面に記載された内容は、すべて本願明細書に援用される。