【文献】
Sunjong OH et al.,“Analytes kinetics in lateral flow membrane analyzed by cTnI monitoring using magnetic method”,Sensors and Actuators B: Chemical,2011年12月15日,Volume 160, Issue 1,pp.747-752,DOI:10.1016/j.snb.2011.08.058
【文献】
Sunjong OH et al.,“Hybrid AMR/PHR ring sensor”,Solid State Communications,2011年 9月,Volume 151, Issue 18,pp.1248-1251,DOI:10.1016/j.ssc.2011.05.049
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一磁気センサー(4)の活性表面(14)近傍に配置された、環境温度を測定するための第一環境温度センサー(16)及び/又は環境温度とは異なる物理特性を測定するための第二環境センサーを更に備え、温度又は温度とは異なる物理特性が所定のスイッチング閾値よりも大きくなるか又は小さくなると、磁性粒子の磁化のスイッチングが生じる、請求項1に記載の微小磁気測定システム。
前記ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサー(4)と同じ構造を有するハイブリッドAMR/PHR多重リングの第二磁気センサー(404)を更に備え、
前記ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサー(4)及び前記ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第二磁気センサー(404)が、磁性粒子がセンサー(4、404)上に堆積されていない場合に同じ磁場を測定するように、同じ既知の物理条件の下で同じ基板上に互いに近接して配置され、
前記ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第二磁気センサー(404)が、前記ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサー(4)と同じ第一電流源(326)を共有し並列に接続された一対の電流端子を形成する第一電流端子(428)及び第二電流端子(430)を有し、
前記微小磁気測定システムが、
検出される磁性粒子を第一磁気センサー(4)の上に堆積させ溶液中に含まれる場合には滴下して既知の環境物理条件及びシステム動作設定の組の下に置く第一構成に対応する前記第一磁気センサー(4)によって行われる第一組の差動電圧測定と、同じ前記既知の環境物理条件及びシステム動作設定の組の下で磁性粒子を堆積させていない第二構成に対応する前記第二磁気センサー(404)によって行われる第二組の基準差動電圧測定との差を取り、対応する差曲線を提供し、
前記差曲線から、10nTの最小磁場シフトに少なくとも対応する急激な変化を検出するように構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の微小磁気測定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一技術的課題は、そうした欠点を回避して、室温において測定を行い、複雑ではなく、持ち運び可能で柔軟な実施を提供する超高感度磁気測定システムを提供することである。
【0011】
また、他の技術的課題は、センサー活性表面の近傍において“単一のマイクロ/ナノ物体”が発生させるナノテスラ又はピコテスラの磁場を検出するために感度検出性能を改善する磁気測定システム及び方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明は、ナノスケール又はマイクロスケールの単一磁性粒子又は単一磁気物体にまで至る極少量の磁性粒子の存在を検出するための第一微小磁気測定システムを提供し、そのシステムは、
‐ 基板上に堆積させた閉ループ状の磁気トラックを有する活性表面と、磁性体製の閉ループ状の磁気トラックと接触して互いに向き合う一対の電流端子を形成する第一電流端子及び第二電流端子と、閉ループ状の磁気トラックに接触して互いに向き合う一対の電圧端子を形成し且つ出力差動電圧V
bを検出するための第一電圧端子及び第二電圧端子と、第一電流端子及び第二電流端子を通過し且つトラックの物質の交換バイアス場方向に平行であり且つ第一電圧端子及び第二電圧端子を通過する第二軸に垂直な第一軸とを有するハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサー、
‐ 電流Iを注入するために第一電流端子と第二電流端子との間に接続された第一電流又は電圧源、
‐ 一対の電圧端子の間の差動電圧V
bを測定するために第一電圧端子と第二電圧端子との間に接続された第一電圧測定デバイス、
‐ 第一磁気センサーの活性表面上に堆積された少なくとも一つの磁性粒子の組、及び、
‐ 測定された複数の差動電圧の組から、堆積された少なくとも一つの磁性粒子の存在を表す磁束シフトを検出するための処理ユニット、
を備え、
ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサーの磁気トラックが、
‐ 第一磁気センサーの第一クオーター表面内に区切られた18未満の所定のリング数mの円形蛇行経路の第一組で形成された第一アームであって、最も外側の蛇行経路が第一電流端子に接続され、最も内側の蛇行経路が第一電圧端子に接続された、第一アーム、
‐ 第一磁気センサーの第二クオーター表面内に区切られた同じ所定の数mの円形蛇行経路の第二組で形成された第二アームであって、最も外側の蛇行経路が第二電流端子に接続され、最も内側の蛇行経路が第一電圧端子に接続された、第二アーム、
‐ 第一磁気センサーの第三クオーター表面内に区切られた同じリング数mの円形蛇行経路の第三組で形成された第三アームであって、最も外側の蛇行経路が第二電流端子に接続され、最も内側の蛇行経路が第二電圧端子に接続された、第三アーム、及び、
‐ 第一磁気センサーの第四クオーター表面内に区切られた同じリング数mの円形蛇行経路の第四組で形成された第四アームであって、最も外側の蛇行経路が第一電流端子に接続され、最も内側の蛇行経路が第二電圧端子に接続された、第四アーム、
を備え、
磁気トラックが、強磁性膜及び反強磁性膜を含む二層構造、スピンバルブ構造、又は、強磁性膜と金属と反強磁性膜とを含む三層構造であり、
微小磁気測定システムが、各磁性粒子によって漂遊磁場を発生させるための励起磁場H
ACを生成するための手段を備え、励起磁場H
ACが、10Hzから3kHzまでの一定の周波数ωで時間と共に振動し、
検出される磁性粒子が静止していて、磁気トラックの活性表面に近接して又は接触して配置され、
第一電流又は電圧源によって注入され電流端子を通過する電流Iが、直流(DC)、交流(AC)、又は直流及び交流の和であり、
処理ユニットが、
第一の既知の所定の環境物理条件の下で且つ第一電流又は電圧源によって注入される電流及び印加される励起磁場H
ACに関する既知のシステム動作条件の第一組の下で、所定の温度範囲にわたって、磁性粒子を堆積させていない第一磁気センサーの較正バックグラウンド熱磁性応答の第一曲線を提供し、
第一磁気センサーの上に未知の量の磁性粒子を堆積させた後、同じ第一の既知の所定の環境物理条件の下で且つ同じ既知のシステム動作条件の第一組の下で、同じ所定の温度範囲にわたって温度を変化させることによって行われ第一磁気センサーから出力された差動電圧測定の組から、修正された又は修正されていない差動電圧測定の温度
変動の第二曲線を決定し、
同じ所定の温度範囲にわたる第二曲線と第一曲線との間の差として第三曲線を決定し、
第三曲線の全ての電圧差の絶対値が、10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する所定の検出閾値よりも大きい場合に、又は、所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する転移が生じている温度区間を第三曲線が示す場合に、少なくとも一つの磁性粒子の存在を検出するように構成されるか、
又は、
処理ユニットが、
スイッチング命令として機能するスイッチング物理特性に関する所定のスイッチング閾値を超えるとスイッチング可能な分子性ナノ粒子である磁性粒子を未知の量で第一磁気センサーの上に堆積させた後、既知の所定の物理条件の下で且つ既知のシステム動作条件の下で所定の物理特性範囲にわたって物理特性の大きさを変化させることによって、物理特性の大きさに対する第一磁気センサーによって行われる差動電圧測定の
変動から、修正された又は修正されていない差動電圧測定の
変動の第一曲線を決定し、
所定の物理特性範囲内に含まれ且つ所定のスイッチング閾値よりも小さな上限を有する下方区間に対応する第一曲線の下部から、所定の物理特性範囲にわたって、フィッティング曲線として第二曲線を決定し、
同じ所定の物理特性範囲内において、スイッチング物理特性の大きさに対する、第一曲線の差動電圧と第二曲線の差動電圧との差として第三曲線を決定し、
10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する転移が生じているスイッチング物理特性区間を第三曲線が示す場合に、磁性粒子の存在を検出するように構成されていることを特徴としている。
【0013】
特定の実施形態によると、微小磁気測定システムは、以下の特徴のうち少なくとも一つを備える:
‐ 第一磁気センサーの活性表面近傍に配置された、環境温度を測定するための第一環境温度センサー及び/又は環境温度とは異なる物理特性を測定するための第二環境センサーを備え、温度又は温度とは異なる物理特性が所定のスイッチング閾値よりも大きくなるか又は小さくなると、磁性粒子の磁化のスイッチングが生じる;
‐ 環境温度及び/又は環境温度とは異なる物理特性を制御及び/又は調整するための手段を備える;
‐ 励起磁場H
ACを生成するための手段が、AC電流を供給する第二電流源と、第二電流源に接続された少なくとも一つのコイルとを備え、少なくとも一つのコイルが、励起磁場H
ACが第一軸と同一直線上の主成分を有するように第一磁気センサーに対して相対的に位置決めされる;
‐ 第一磁気センサーの動作点を最高感度領域にシフトさせるためのセンサーバイアス磁場H
DCを生成するための手段を備え、センサーバイアス磁場H
DCが時間に対して一定であり、励起磁場H
ACを生成するための手段によって生成される励起磁場H
ACと同一直線上にある;
‐ 第一電流端子及び第二電流端子を通過する第一軸とセンサーバイアス磁場H
DCとの間の角度αが、第一磁気センサーの感度を最大にするように0度から90度までの範囲、好ましくは15度から25度までの範囲内で選択される;
‐ 励起磁場H
ACを生成するための手段が、第一電流端子と第二電流端子との間に接続された電流又は電圧源であり、その電流又は電圧源が、10Hzから3kHzまで、好ましくは50Hzから150Hzまでの一定の周波数ωで時間と共に振動する交流(AC)を発生させるように構成されている;
‐ ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサーと同じ構造を有するハイブリッドAMR/PHR多重リングの第二磁気センサーを更に備え、
ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサー及びハイブリッドAMR/PHR多重リングの第二磁気センサーが、磁性粒子がセンサー上に堆積されていない場合に同じ磁場を測定するように、同じ既知の物理条件の下で同じ基板上に互いに近接して配置され、
ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第二磁気センサーが、ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサーと同じ第一電流源を共有し並列に接続された一対の電流端子を形成する第一電流端子及び第二電流端子を有し、
その微小磁気測定システムが、
検出される磁性粒子を第一磁気センサーの上に堆積させ溶液中に含まれる場合には滴下して既知の環境物理条件及びシステム動作設定の組の下に置く第一構成に対応する第一磁気センサーによって行われる第一組の差動電圧測定と、同じ既知の環境物理条件及びシステム動作設定の組の下で磁性粒子を堆積させていない第二構成に対応する第二磁気センサーによって行われる第二組の基準差動電圧測定との差を取り、対応する差曲線を提供し、
差曲線から、10nTの最小磁場シフトに少なくとも対応する急激な変化を検出するように構成されている。
【0014】
また、本発明は、ナノスケール又はマイクロスケールの単一磁性粒子又は単一磁気物体にまで至る極少量の磁性粒子の存在を検出するための第二微小磁気測定システムにも関し、そのシステムは、
ハイブリッドAMR/PHRの第一磁気センサー及びハイブリッドAMR/PHRの第二磁気センサーを備え、
ハイブリッドAMR/PHRの第一磁気センサーが、基板上に堆積させた第一磁気トラックを含む第一活性表面と、磁性体製の第一磁気トラックに接触して互いに向き合う一対の電流端子を形成する第一電流端子及び第二電流端子と、第一磁気トラックに接触して互いに向き合う一対の電圧端子を形成し且つ出力差動電圧を検出するための第一電圧端子及び第二電圧端子と、第一電流端子及び第二電流端子を通過し且つトラックの物質の交換バイアス場方向に平行であり且つ第一電圧端子及び第二電圧端子を通過する第二軸に垂直な第一軸とを有し、
微小磁気測定システムが、磁性粒子がセンサー上に堆積されていない場合に同じ磁場を測定するように同じ既知の物理条件の下で同じ基板の上にハイブリッドAMR/PHRの第二磁気センサーに近接して配置されたハイブリッドAMR/PHRの第二磁気センサーを備え、
ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第二磁気センサーが、同じ基板上に堆積させた第二磁気トラックを含む第二活性表面と、磁性体製の第二磁気トラックに接触して互いに向き合う一対の電流端子を形成する第一電流端子及び第二電流端子と、第二磁気トラックに接触して互いに向き合う一対の電圧端子を形成し且つ出力差動電圧を検出するための第一電圧端子及び第二電圧端子と、第一電流端子及び第二電流端子を通過し且つトラックの物質の交換バイアス場方向に平行であり且つ第一電圧端子及び第二電圧端子を通過する第二軸に垂直な第一軸とを有し、
第一磁気トラック及び第二磁気トラックが、十字形状と単一リング閉ループ形状と多重リング閉ループ形状のうちの同じ形状、及び同じ層構造を有し、
第一磁気トラック及び第二磁気トラックの層構造が、強磁性膜及び反強磁性膜を含む二層構造、スピンバルブ構造、又は、強磁性膜と金属と反強磁性膜とを含む三層構造であり、
微小磁気測定システムが、
‐ ハイブリッドAMR/PHRの第一磁気センサー及びハイブリッドAMR/PHRの第二磁気センサーに接続され且つ電流Iを並列に供給する同一の第一電流又は電圧源、
‐ ハイブリッドAMR/PHRの第一磁気センサー及びハイブリッドAMR/PHRの第二磁気センサーの第一及び第二電圧端子に入力部が接続され、且つ、第一磁気センサーの電圧端子において検出された増幅差動電圧と第二磁気センサーの電圧端子において検出された増幅差動電圧との間の電圧差を決定するように構成された第一電圧測定デバイス、
‐ 第一磁気センサーの活性表面上に堆積させた少なくとも一つの磁性粒子の組、
‐ 第一電圧測定デバイスによって出力された複数の測定差動電圧の組から、第一磁気センサーの上に堆積させた少なくとも一つの磁性粒子の存在を表す磁束シフトを検出するための処理ユニット、及び、
‐ 各磁性粒子によって漂遊磁場を生じさせるための励起磁場H
ACを生成するための手段、
を備え、励起磁場H
ACが、10Hzから3kHzまでの一定周波数ωで時間と共に振動し、
検出される磁性粒子又は磁性物体が静止していて、第一磁気トラックの活性表面に近接して又は接触して配置され、
第一電流又は電圧源によって注入され電流端子を通過する電流Iが、直流(DC)、交流(AC)、又は、直流及び交流の和であることを特徴としている。
【0015】
第二微小磁気測定システムの特定の実施形態によると、
ナノスケール又はマイクロスケールの磁性粒子又は磁性物体が第二磁気センサーの上に堆積されず、
処理ユニットが、
第一磁気センサーの上に未知の量の磁性粒子又は磁性物体を堆積させた後に、
既知の所定の物理条件の下で、第一差と基準差との間の差としての第二差が所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する場合に、磁性粒子又は磁性物体の存在を検出するように構成され、
基準差が、同じ既知の所定の物理条件の下で磁性粒子を有さない第一磁気センサーによって行われる第一電圧測定と、磁性粒子を有さない第二磁気センサーによって行われる第二電圧測定との間の差であり、
第一差が、磁性粒子を有する第一磁気センサーによって行われる第一電圧測定と、磁性粒子を有さない第二磁気センサーによって行われる第二電圧測定との間の差として第一電圧測定デバイスによって決定され、
所定の検出閾値が、10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応するか、
又は、
処理ユニットが、
磁性粒子が、スイッチング命令として機能するスイッチング物理特性に関する所定のスイッチング閾値を超えるとスイッチング可能な分子性ナノ粒子又は磁性物体である場合に、
第一磁気センサーの上に未知の量の磁性粒子又は磁性物体を堆積させた後に、
既知の所定の物理条件の下で、所定の物理特性範囲にわたって物理特性の大きさを変化させることによって、
磁性粒子を有する第一磁気センサーによって行われる第一組の差動電圧測定と、磁性粒子を有さない第二磁気センサーによって行われる第二組の差動電圧測定との間の差の物理特性の大きさに対する
変動として曲線を決定し、
10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する転移が生じているスイッチング物理特性区間を曲線が示す場合に磁性粒子又は磁性物体の存在を検出するように構成されている。
【0016】
第一及び第二微小磁気システムの特定の実施形態によると、磁性粒子が以下の群に含まれる:
‐ A
hB
k[M(CN)
6]
l・mH
2O型であって、AがCo、Ni、Fe等であり、B及びMが多様な遷移金属(Fe
II、Fe
III、Mn
II、Mn
III、fml aCo
II、Co
III等)であり、Cがアルカリ金属カチオンである、スイッチング可能な分子性ナノ粒子、
‐ 常磁性粒子(Fe
2O
3、Fe
3O
4、Fe@Fe
3O
4、CoFe@Fe
3O
4、Ni等)、
‐ 強磁性粒子(Fe、CoFe、Ni)、
‐ 反強磁性粒子(多層構造Ti/Feの粒子、Crナノ粒子、NiOナノ粒子、Co
3O
4ナノ粒子、a‐Fe
2O
3ナノ粒子、CuOナノ粒子、MnOナノ粒子、Cr
2O
3ナノ粒子)、
‐ ポリマーマトリクス中のFe
3O
4製であり、球形であり、50nmから10μmまでの間のサイズを有する磁性ビーズ。
【0017】
また、本発明は、微小磁気測定システムによって行われる極少量の磁性粒子の存在を検出するための第一微小磁気測定検出方法にも関し、その方法は、
第一の既知の所定の物理条件の下で、較正バックグラウンド熱ノイズの第一曲線を提供することによって、微小磁気測定システムが第一磁気センサーのみを備える場合には第一磁気センサーを温度について較正し、微小磁気測定システムが第一磁気センサー及び第二磁気センサーを備える場合には第一磁気センサー及び第二磁気センサーを温度について較正するステップと、
第一磁気センサーの上に未知の量の磁性粒子を堆積させるステップと、
同じ第一の既知の所定の物理条件の下で所定の温度範囲にわたって温度を変化させることによって、微小磁気測定システムが第一磁気センサーのみを備える場合には、第一磁気センサーによって行われる差動電圧測定の温度
変動として第二曲線を出力し、又は、微小磁気測定システムが第一磁気センサー及び第二磁気センサーを備える場合には、磁性粒子を有する第一磁気センサーによって行われる第一組の差動電圧測定と、磁性粒子を有さない第二磁気センサーによって行われる第二組の差動電圧測定とを出力して、第一組の差動電圧測定と第二組の差動電圧測定との間の差の温度
変動として第二曲線を決定するステップと、
同じ温度範囲内において、温度に対する、第二曲線の差動電圧と第一曲線の差動電圧との間の差として第三曲線を決定するステップと、
第三曲線の電圧差の絶対値が所定の検出閾値よりも大きく安定である場合に、又は所定の検出閾値よりも大きい大きさを有する転移が生じている温度区間を第三曲線が示す場合に、磁性粒子の存在を検出するステップと、を備え、所定の検出閾値が、10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する。
【0018】
また、本発明は、微小磁気測定システムによって行われる極少量の磁性粒子の存在を検出するための第二微小磁気測定検出方法のも関し、その方法は、
第一磁気センサーの上に、スイッチング命令として機能するスイッチング物理特性に関する所定のスイッチング閾値を超えるとスイッチング可能な分子性ナノ粒子である磁性粒子を未知の量で堆積させるステップと、
既知の所定の物理条件の下で、所定の物理特性範囲にわたって物理特性の大きさを変化させることによって、微小磁気測定システムが第一磁気センサーのみを備える場合には、第一磁気センサーによって行われる差動電圧測定の物理特性の大きさに対する
変動として第一曲線を出力し、又は、微小磁気測定システムが第一磁気センサー及び第二磁気センサーを有する場合には、磁性粒子を有する第一磁気センサーによって行われる第一組の差動電圧測定と、磁性粒子を有さない第二磁気センサーによって行われる第二組の差動電圧測定とを出力し、第一組の差動電圧測定と第二組の差動電圧測定との間の差の物理特性に対する
変動として第一曲線を出力するステップと、
所定の物理特性範囲にわたって、所定の物理特性範囲内に含まれ且つ所定のスイッチング閾値よりも小さな上限を有する下方区間に対応する第一曲線の下部から、フィッティング曲線として第二曲線を決定するステップと、
同じ所定の物理特性範囲内において、スイッチング物理特性の大きさに対する、第一曲線の差動電圧と第二曲線の差動電圧との間の差として第三曲線を決定するステップと、
所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する転移が生じているスイッチング物理特性区間を第三曲線が示す場合に、磁性粒子の存在を検出するステップと、を備え、所定の検出閾値が10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する。
【0019】
極少量の磁性粒子の存在を検出するための第二検出方法の特定の実施形態によると、スイッチング物理特性は、温度、圧力、光照射、電場、磁場、化学的ゲスト分子である。
【0020】
また、本発明は、微小磁気測定システムによって行われるナノスケール又はマイクロスケールの単一磁性粒子又は単一磁気物体にまで至る極少量の磁性粒子の存在を検出するための第三微小磁気測定検出方法にも関し、その方法は、
未知の量の磁性粒子又は磁性物体を第一磁気センサーの上に堆積させるステップと、
既知の所定の物理条件の下で、磁性粒子を有する第一磁気センサーによって行われる第一電圧測定と、磁性粒子を有さない第二磁気センサーによって行われる第二電圧測定とを出力し、第一電圧測定と第二電圧測定との間の第一差を決定するステップと、
第一差と基準差との間の差としての第二差が、所定の検出基準値よりも大きな大きさを有する場合に、磁性粒子又は磁性物体の存在を検出するステップと、を備え、
基準差が、同じ既知の所定の物理条件の下での磁性粒子を有さない第一磁気センサーによって行われる第一電圧測定と、磁性粒子を有さない第二磁気センサーによって行われる第二電圧測定との間の差であり、所定の検出閾値が10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応するか、
又は、
磁性粒子が、スイッチング命令として機能するスイッチング物理特性に関する所定のスイッチング閾値を超えるとスイッチング可能な分子性ナノ粒子又は単一物体である場合に、
未知の量の磁性粒子又は磁性物体を第一磁気センサーの上に堆積させるステップと、
所定の既知の物理条件の下で、所定の物理特性範囲にわたって物理特性の大きさを変化させることによって、磁性粒子を有する第一磁気センサーによって行われる第一組の電圧測定と、磁性粒子を有さない第二磁気センサーによって行われる第二組の電圧測定とを出力して、第一組の電圧測定と第二組の電圧測定との間の差の物理特性の大きさに対する
変動として曲線を決定するステップと、
所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する転移が生じているスイッチング物理特性区間を曲線が示す場合に磁性粒子又は磁性物体の存在を検出するステップと、を備え、所定の検出閾値が10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する。
【0021】
また、本発明は、微小磁気測定システムを備えた湿度又はガス感知測定システムにも関し、そのシステムは、
磁性粒子が所定の温度スイッチング閾値を超えるとスイッチング可能な分子性ナノ粒子であり、所定の温度スイッチング閾値が、湿度、又は外部分子の蒸気の環境濃度に依存し、
処理ユニットが、湿度、又は外部分子の蒸気の環境濃度に対する感度を有する磁性粒子の磁場変化測定から、且つ、他の方法によって測定された較正湿度又は外部分子の蒸気の較正環境濃度と対応するパラメータ(上述のような微小磁気測定検出方法によって検出された磁性粒子の磁気特性変化より決定される温度閾値、転移温度、ヒステリシスループの幅等)との間で予め決定されたマッピング曲線から、湿度、又は外部分子の蒸気の環境温度を決定するように構成されている。
【0022】
湿度又はガス感知測定システムの特定の実施形態によると、検出可能な外部分子の蒸気が、N
2、He、I
2、CO
2、エタノール、メタノール、2‐プロパノール、アセトン、D
2O、CS
2、CO、ヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ピラジン、ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、
テトラヒドロフランから成る群の外部分子である。
【0023】
本発明のより良い理解は、図面を参照して、単に例として与えられる以下の説明を読むことによって深まるものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1を参照すると、極少量の磁性粒子の存在を検出するための微小磁気測定システム2は、第一磁気ハイブリッド異方性磁気抵抗(anisotropic magneto‐resistive,AMR)/プレーナーホール抵抗(planar Hall resistive,PHR)多重リング磁気センサー4、第一電流又は電圧源6、第一電圧測定デバイス8、第一磁気センサー4の活性表面14上に堆積される少なくとも一つの磁性粒子12の組10、第一環境温度センサー16、磁性粒子の環境温度を制御及び/又は調整するための手段18、各磁性粒子によって漂遊磁場を生成させるための交番励起磁場H
ACを生成するための手段20、センサーバイアス磁場H
DCを生成するための手段21、及び、処理ユニット22を備える。
【0026】
第一磁気ハイブリッドAMR/PHR多重リング磁気センサー4、つまり第一磁気センサーは、その活性表面14上に、基板26上に堆積させた閉ループ形状の磁気トラック24を含む。
【0027】
第一磁気センサー4は、第一電流端子28及び第二電流端子30を有し、閉ループ磁気トラック24に接触して互いに向き合う一対の電流端子を形成する。
【0028】
第一磁気センサー4は、第一電圧端子32及び第二電圧端子34を有し、閉ループ磁気トラック24に接触して互いに向き合う一対の電圧端子を形成し、そこから出力差動電圧が検出される。
【0029】
第一磁気センサー4は第一軸40又は容易軸を有し、その第一軸40は、第一電流端子28及び第二電流端子30を通過し、物質の交換バイアス場方向に平行であり、また、第一電圧端子32及び第二電圧端子34を通過する第二軸42に垂直である。
【0030】
第一電流又は電圧源6は、第一電流端子と第二電流端子の間に接続され、第一電流端子28及び第二電流端子30の対を介して第一磁気センサー4にDC(直流)バイアス電流Iを注入するように構成される。第一電流源6は、例えば、ケースレー(Keithley)2400電流源であり、DCバイアス電流の大きさは1mAに設定される。
【0031】
第一電圧測定デバイス8は、一対の電圧端子32、34の間の差動電圧V
bを測定するために、第一電圧端子32と第二電圧端子34との間に接続される。
【0032】
第一電圧測定デバイス8は、検出された差動電圧を増幅して、得られた出力信号を、フェーズロックループに基づいた同期増幅デバイス46に送るための利得20dBの低ノイズ増幅器44を備える。同期増幅器は、測定された差動電圧信号を交番励起磁場信号にロックして、一対の電圧端子32、34の出力において測定されるピーク測定差動電圧を検出するように構成される。
【0033】
第一環境温度センサー16は、磁性粒子12及び第一磁気センサー4の実際の環境温度(周囲温度)Tを表す温度を測定するように構成され、好ましくは、第一磁気センサー4の活性表面14近くに配置される。例えば、環境温度センサー16は、100Ωのプラチナ抵抗器である。
【0034】
温度Tを制御及び/又は調整するための手段18は、ヒーター48によって、磁性粒子12の周囲環境を制御された方法で加熱するように構成され、好ましくは、第一磁気センサー4の活性表面14近くに配置される。ヒーター48は、例えば、ミンコ(Minco)社の抵抗器であり、第一磁気センサー4に取り付けられ、レイクショア(Lakeshore)332温度制御装置50に接続され、その温度制御装置50は、300Kから350Kまで温度Tを変化させることによって環境温度Tの変動を制御する。
【0035】
交番励起磁場H
ACを生成するための手段20は、各磁性粒子12によって、10Hzから3KHz(ここでは100Hzに設定)の範囲内の一定周波数ωで時間と共に振動する漂遊磁場を発生させるように構成される。
【0036】
ここでは、交番励起磁場H
ACを生成するための手段20は、100Hzの周波数で振動するAC(交流)電流を供給する第二電流源52と、第二AC電流源52に接続された少なくとも一つのコイル(ここでは二つのヘルムホルツコイル54)とを備える。
【0037】
二つのヘルムホルツコイル54は、励起磁場H
ACの主成分が第一軸40と同一線上になるように、第一磁気センサー4に対して相対的に位置決めされる。
【0038】
交番センサーバイアス磁場H
DCを生成するための手段20は、第一磁気センサー4の動作点を最高感度領域にシフトさせるように構成され、センサーバイアス磁場H
DCは、時間に対して一定であり、交番励起磁場H
ACと同一直線上にある。
【0039】
第一及び第二電流端子を通過する第一軸40と、センサーバイアス磁場H
DCの軸とが成すバイアス角度αは、第一磁気センサー4の感度Sが最大になるように、[0度,90度]の範囲内で選択される。ここでは、この角度αは20度である。
【0040】
第一磁気センサー4、そしてその上に堆積される全ての磁性粒子12が全体的に、ハイブリッド交番及び連続磁場(H
AC+H
DC)の下に配置され、その磁場方向は、第一磁気センサー4の容易軸40と20度の角度を成す。
【0041】
H
AC及びH
DCの場の組み合わせによって、第一磁気センサー4の感度Sが増強する。
【0042】
ここでは、H
DCが、磁気センサー4の動作点を最高感度領域にシフトさせて、ここでは、磁場の最適の大きさは1.4mTである。
【0043】
SCOナノ粒子12の漂遊磁場を発生させるために導入される磁場H
ACは、ここで、100Hzの周波数におけるrms(二乗平均平方根)の値において0.5mTである。
【0044】
少なくとも一つの磁性粒子12の組10は、磁気センサーの表面上に堆積される。
【0045】
ここでは、磁性粒子12は、クロロホルムの均一溶液中に合成された[Fe(hptrz)
3](OTs)
2スピンクロスオーバーナノ粒子であり、第一磁気センサーの活性表面14全体に直接滴下される。
【0046】
従って、検出される磁性粒子12は、静止していて、第一磁気センサー4の活性表面14に近接して又は接触して配置される。
【0047】
これら磁性SCOナノ粒子12は、反磁性から常磁性への転移に対応する磁気シグネチャ(磁気特性、磁気的痕跡)を示し、所定の湿度における外気の下での転移温度又はスイッチング温度は、冷却及び加熱それぞれにおいて、T
1/2↓=325K、T
1/2↑=331Kである。
【0048】
これらの転移温度は、同じ湿度条件の下においては同じ値を示す光反射率変化試験によって確かめられている。
【0049】
処理ユニット22は、第一電圧測定デバイス8によって測定される複数の異なる差動電圧の組から、第一磁気センサー4の活性表面14上に堆積させた少なくとも一つの磁性粒子12の存在を表す磁気フラックスシフトを検出するように構成される。
【0050】
磁性粒子12は、ここでは、所定の温度スイッチング閾値を超えた際に二つの磁性状態の間での転移という点においてスイッチング可能な分子性ナノ粒子とされ、温度がスイッチング又は作動の命令として機能する。
【0051】
処理ユニット22は、未知の量の磁性粒子12を第一磁気センサー4の上に堆積させて、所定の温度範囲にわたって温度Tを変化させた後で、既知の環境物理条件及び動作システム設定において行われ第一電圧測定デバイス8によって出力された差動電圧測定結果の温度
変動の第一曲線を決定するように構成される。
【0052】
次に、処理ユニット22は、所定の温度範囲にわたって、第一曲線の下部からフィッティング曲線として第二曲線を決定するように構成され、その第一曲線の下部は、所定の温度範囲内に含まれる下方区間に対応し、その下方区間は、スイッチング温度閾値よりも低い上限を有する。
【0053】
次に、処理ユニット22は、温度に対する第一曲線の差動電圧及び第二曲線の差動電圧の差としての第三曲線を、同じ温度範囲内、具体的には[300K,350K]において決定するように構成される。
【0054】
次に、処理ユニット22は、第三曲線が電圧転移の生じている温度区間を示す場合であって、その転移の大きさが所定の検出閾値よりも大きい場合に、少なくとも一つの磁性粒子の存在を検出するように構成され、その所定の検出閾値は、10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する。
【0055】
一変形例として、微小磁気測定システムは、温度とは異なる物理特性を測定するための第二センサーを備え、その第二センサーはアクティブセンサーの活性表面近くに配置され、二つの磁化状態の間での磁性粒子の磁化のスイッチングは、その温度と異なる物理特性が所定のスイッチング閾値よりも大きくなるか小さくなると行われる。
【0056】
一変形例として、微小磁気測定システムは、温度とは異なる物理環境特性を制御及び/又は調整するための第二手段を備え、その第二手段は、好ましくは、アクティブセンサーの活性表面近くに配置される。
【0057】
一変形例として、処理ユニットは、既知の所定の第一物理条件の下で、磁性粒子を有さない第一磁気センサーを温度について較正することによって、第一較正バックグラウンド熱ノイズ曲線を提供するように構成される。
【0058】
次に、処理ユニットは、未知の量の磁性粒子を第一磁気センサーの上に堆積させた後に、同じ既知の所定の第一物理条件下での所定の温度範囲に対して温度を変化させることによって、第一磁気センサーによって行われた差動電圧測定の
変動から、差動電圧測定(修正されているか又はされていない)の温度
変動の第二曲線を決定するように構成される。
【0059】
次に、処理ユニットは、同じ温度範囲内における第二曲線の差動電圧と第一曲線の差動電圧との間の差として、温度に対する第三曲線を決定するように構成される。
【0060】
処理ユニットは、第三曲線の電圧差の絶対値が、所定の検出閾値よりも大きく安定なままである場合、又は、所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する転移が生じている温度区間を第三曲線が示す場合に、磁性粒子の存在を検出するように構成され、その所定の検出閾値は、10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する。
【0061】
図2を参照すると、第一磁気センサー4は、多重リング構造に基づいていて、リフトオフプロセスを用いたクラス1000のクリーンルーム内におけるリソグラフィ法で製造される。
【0062】
ここでは、磁気トラック24は三層物質であり、例えば、Ta(3nm)/NiFe(20nm)/Cu(0.2nm)/IrMn(10nm)/Ta(3nm)である。この構造において、軟磁性層NiFeが感知物質であり、数原子Cu層を介した長距離交換バイアス場によって反強磁性層(IrMn)に弱く結合する。
【0063】
三層構造Ta(3nm)/NiFe(20nm)/Cu(0.2nm)/IrMn(10nm)/Ta(3nm)を、略10
−8Torrの基準真空での6ガンマグネトロンスパッタリングシステムによって堆積させる。
【0064】
汚染を防止するため、磁気センサーを、公称厚さ200ナノメートルのSi
2O
3/Si
3N
4二層でパッシベーションする。
【0065】
ここでは、第一磁気センサー4の外径は300μmであり、磁気トラック24の幅wは10μmである。
【0066】
第一磁気センサー4の磁気トラック24は以下のものを有する:
‐ 磁気センサー4の第一クオーター(四分の一、象限)表面106内に区切られた所定のリング数mの円形蛇行経路104の第一組で形成された第一アーム102(その最も外側の蛇行経路128は第一電流端子30に接続され、その最も内側の蛇行経路110は第一電圧端子32に接続される)、
‐ 磁気センサー4の第二クオーター表面116内に区切られた同じ所定数mの円形蛇行経路114の第二組で形成された第二アーム112(その最も外側の蛇行経路118は第二電流端子30に接続され、その最も内側の蛇行経路120は第一電圧端子32に接続される)、
‐ 磁気センサー4の第三クオーター表面126内に区切られた同じリング数mの円形蛇行経路124の第三組で形成された第三アーム122(その最も外側の蛇行経路128は第二電流端子30に接続され、その最も内側の蛇行経路130は第二電圧端子34に接続される)、
‐ 磁気センサー4の第四クオーター表面136内に区切られた同じリング数mの円形蛇行経路134の第四組で形成された第四アーム132(その最も外側の蛇行経路138は第一電流端子30に接続され、その最も内側の蛇行経路140は第二電圧端子34に接続される)。
【0067】
この多重リング構造が、小さな領域内において磁気センサーの感度を増強する。
【0068】
アームの長さはリング数と共に増大するので、感知蛇行経路を充満させていくと、活性感知領域が増強される。
【0069】
電流方向は、連続的なリング経路のため交互に変化し、つまり、
図2の挿入図に示される経路1についてのθ=π/2〜0と、
図2の挿入図の経路2についてのθ=πから3π/2との電流角度範囲が存在する。経路1及び2についての計算値の符号は同じであり、これは、両方の電流のAMR効果が加法的であることを意味している。従って、アーム抵抗のプロファイル、つまりは磁場感度の最大電圧変動が、リング数と共に増える。
【0070】
磁気リング全体の電圧プロファイル、つまり、AMR効果及びPHR効果の和は、リングアーム抵抗の自己バランス化のため印加場に対する反対称性を示し、電圧変動は全ての接合成分について加法的である。
【0071】
小さな交換結合場及び高い活性電流を有する三層構造を用いることによって、第一磁気センサーの感度が増強される。
【0072】
この多重リング構造が、磁気センサーの磁場感度及び活性領域を増強する。
【0073】
従って、第一磁気センサーは、異方性磁気抵抗(AMR)及びプレーナーホール効果(planar Hall effect,PSE)を組み合わせた高感度ハイブリッド磁気抵抗(magneto‐resistive,MR)センサーであり、SCOナノ粒子のスピン状態のスイッチングを検出することができる。
【0074】
好ましくは、円形蛇行経路のリング数mは、9から13の間である。ここでは、各アームは、11個の蛇行経路(つまり、円形リングの四分の一)を有し、この数が、第一磁気センサー4の感度を最大にする。
【0075】
この多層積層体は、略S=15ボルト・T
−1の非常に高い感度と、100Hzにおける略1nV・Hz
−1/2の低いホワイトノイズとを示す。
【0076】
図3の電気回路図を参照すると、トラックの多重リング形状及び四つのアームの接続性が、ホイートストンブリッジ構造をもたらす。
【0077】
第一磁気センサーの出力電圧は、プレーナーホール効果として分かり、以下の式で与えられる:
V
PHE=V
0sinθ・cosθ
ここで、V
0は、センサーの磁化に対する平行抵抗率ρ
‖及び垂直抵抗率ρ
⊥、センサーの厚さt、センサーのサイズ等のセンサーの構造パラメータに依存し、θは、実際の磁化の方向と印加磁場の方向との間の角度である。
【0078】
リング構造は、ホイートストンブリッジ構造に起因する高感度性能を有利に提供する。
【0079】
一般的な場合、第一電圧端子の第一電圧V1と第二電圧端子の第二電圧V2との間で検出される差動電圧V
bは、以下の式で記述される:
【数1】
ここで、R
1、R
2、R
3、R
4はそれぞれ、第一アーム102、第二アーム112、第三アーム122、第四アーム132の抵抗を表す。
【0080】
三つの異なる検出負荷構成が考えられる。
【0081】
第一の構成は、“クオーターブリッジ構成”と呼ばれ、磁性粒子が、単一のアーム、例えば第四アーム132の上に堆積され、残りの三つのアーム102、112、122は磁性粒子を有さない。
【0082】
この第一の構成では、第一アーム102、第二アーム112、第三アーム122の抵抗R
1、R
2、R
3は同じ基準抵抗値Rに等しく、第四アーム132の抵抗R
4はR+ΔRに等しい。
【0083】
この第一の構成では、検出される差動電圧V
b1は以下の式に従う:
【数2】
【0084】
第二の構成は、“ハーフブリッジ構成”と呼ばれ、磁性粒子12が二つの対向するアーム、例えば、第二アーム112及び第三アーム122の上に堆積され、残りの二つのアーム102、132は磁性粒子を有さない。
【0085】
この第二の構成では、第一アーム102、第四アーム132の抵抗R
1、R
4は、同じ基準抵抗値Rに等しく、負荷のかかった第二アーム112、第三アーム122の抵抗R
2、R
3はR+ΔRに等しい。
【0086】
この第二の構成では、検出される差動電圧V
b2は以下の式に従う:
【数3】
【0087】
第三の構成は、“フルブリッジ構成”と呼ばれ、磁性粒子が、磁気センサーの表面全体、つまり四つのアームの上に堆積される。
【0088】
この第三の構成では、第一アーム102、第四アーム132の抵抗R
1、R
4は同じ抵抗値R+ΔRに等しく、一方、負荷のかかった第二アーム112、第三アーム132の抵抗R
2、R
3はR−ΔRに等しい。
【0089】
この第三の構成では、検出される差動電圧V
b3は以下の式に従う:
【数4】
【0090】
上述の三つの構成の中では、フルブリッジ構成が最高の感度を示す。
【0091】
図4を参照すると、磁気センサーの容易軸40とバイアス磁場方向との間のバイアス角度αの多様な値に対して、
図3に示されるような第一微小磁気測定磁気センサーが特性付けられている。
【0092】
複数のプロファイル202、204、206、208、210、212の組200が、それぞれ対応する0度、10度、20度、45度、60度、90度のバイアス角度αに対して示されている。
【0093】
磁気センサー4のバイアス電流は1mAに設定される。バイアス磁場H
DCは、−20から20mTの範囲で掃引される。
【0094】
傾きdV/dHとして定義されるプロファイル点での感度Sが、電圧プロファイルから導出され、各バイアス角度αの値についての感度の最大値が、
図5に示される曲線220に描かれている。
【0095】
バイアス磁場H
DCと容易軸40との間のバイアス角度αは、感度Sが最大になるように選択される。
【0096】
図5に示される曲線220から、αが20度に等しいと、感度Sが最大になり、16V・T
−1に等しい。バイアス角度αについての20度という値は、
図1において選択されている。
【0097】
微小磁気測定システム2を用いると、二つの電圧端子の間において測定されて電圧測定デバイスから出力される有効電圧V
effは以下の二つの寄与成分を含む:凹電圧応答V
driftと、磁性粒子が発生させる漂遊磁場によって水平に生じる電圧応答V
stray。
【0098】
従って、有効電圧V
effを以下のように表すことができる:
V
eff=V
drift+V
stray
【0099】
センサーの電圧応答を以下のようにうまく表すことができる:
【数5】
ここで、Iは、磁気センサー4に印加されるDCバイアス電流であり、t、ρ
‖、ρ
⊥は、感知層の、厚さ、磁化に対して平行な抵抗率、垂直な抵抗率である。
【0100】
図6を参照すると、本発明に係る第二実施形態の微小磁気測定システム302が、
図1の微小磁気測定システム2から導出され、
図1と同じ参照符号で指称される部品をいくつか備える。
【0101】
図6の微小磁気測定システム302が
図1の微小磁気測定システムと異なる点は、第一磁気センサー4外部の励起磁場H
AC生成手段20が取り除かれて、第一磁気センサー4と、第一電流端子28と第二電流端子30との間に接続された修正第一電流源326との組320に置換されている点である。
【0102】
この第二実施形態では、修正第一電流源が、10Hzから3kHzの範囲(ここでは100Hzに設定)の一定周波数ωで時間と共に振動する交流(AC)を発生させるように構成されている。
【0103】
修正第一電流源326から交流(AC)を供給される第一磁気センサー4の磁気トラック24は、自己誘導によって、励起磁場H
ACを発生させて、その励起磁場が各磁性粒子に漂遊磁場を生じさせて、その漂遊磁場が第一磁気センサーによって検出可能である。
【0104】
つまり、ACバイアス電流Iを第一磁気センサー4に印加すると、磁気センサー4が、容易軸40を全体的に取り囲む磁場を発生させ、その磁束の方向はアンペールの法則に従う。
【0105】
電圧端子間で測定される電圧V
bを以下のように表すことができる:
V
b=S
0・〈H
⊥〉+I・R
offset
ここで、Iは磁気センサーの電流であり、S
0は磁気センサーの感度であり、〈H
⊥〉は磁気センサーの表面にわたって平均化した磁場である。
【0106】
その測定においては、センサーの活性表面近くに堆積させた静止磁性粒子を、センサーの自己磁場H
selfによって磁化させる。
【0107】
H
selfがIに比例することを利用し、また、粒子の磁化が印加場に正比例すると仮定すると、磁気センサー表面にわたって平均化された磁性粒子からの漂遊磁場〈H
stray〉を以下のように表すことができる:
〈H
stray〉=γ・χ・I
ここで、χは磁性粒子の感受率であり、γは、磁気センサーの形状及び磁性粒子の体積分布に依存した比例定数である。
【0108】
磁性粒子を磁化させる自己場を用いることで、第一磁気センサーの活性表面近くに堆積させた磁性粒子のみが磁化することを保証する。
【0109】
図1の微小磁気測定システムと同様に、二つの電圧端子間で測定されて電圧測定デバイスから出力される有効電圧V
effは以下の二つの寄与成分を含み:凹電圧応答V
driftと、磁性粒子が発生させる漂遊磁場によって水平に生じる電圧応答V
stray、そして、以下のように表される:
V
eff=V
drift+V
stray
【0110】
図7を参照すると、本発明に係る第三実施形態の微小磁気測定システム402が、
図1の微小磁気測定システム2から導出され、
図1と同じ参照符号で指称される部品をいくつか備える。
【0111】
図7の微小磁気測定システム402が
図1の微小磁気測定システムと異なる点は、第二ハイブリッドAMR/PHR多重リング磁気センサー404を更に備え、
図1の第一電圧測定デバイス8が修正電圧測定デバイス408に置換されている点である。
【0112】
第二磁気センサー404は、第一磁気センサーと同じ構造を有し、また、同じ形状パターンの閉ループ磁気トラック424を有する。
【0113】
第二磁気センサー404は、第一電流端子428及び第二電流端子430を有し、閉ループ磁気トラック424に接触して互いに向き合う一対の電流端子を形成する。
【0114】
第二磁気センサー404は、第一電圧端子432及び第二電圧端子434を有し、閉ループ磁気トラック424に接触して互いに向き合う一対の電圧端子を形成し、そこから出力差動電圧が検出される。
【0115】
第二磁気センサー404は、第一電流端子428及び第二電流端子430を通過する軸として定義される容易軸440を有する。
【0116】
第一磁気センサー4及び第二磁気センサー404は、それらの容易軸40、440が同一直線上にあるように配置される。
【0117】
第一磁気センサー4及び第二磁気センサー404は、既知の同一の物理条件のもので同じ基板上に互いに近接して配置され、磁性粒子がセンサー上に堆積されていない場合には、同じノイズを有する同じ磁場を受けてそれを検出するようにされる。
【0118】
第二磁気センサーの第一電流端子428、第二電流端子430はそれぞれ、第一磁気センサー4の第一電流端子28、第二電流端子30に接続される。
【0119】
従って、第一電流又は電圧源6は、第一磁気センサー4及び第二磁気センサー404に対して並列に、同一のノイズ特性を有する電流をそれぞれ供給する。
【0120】
修正第一電圧測定デバイス408は、
図1の第一電圧測定デバイス8に基づいていて、第二低ノイズ増幅器444及び差動ユニット450を有する。
【0121】
利得20dBの第二低ノイズ増幅器444の入力部を第一電圧端子432及び第二電圧端子434に接続し、その出力部を差動ユニット450の第一入力部に接続する。
【0122】
第一低ノイズ増幅器44の出力部を差動ユニット450の第二入力部に接続する。
【0123】
差動ユニット450は、フェーズロックループに基づいた同期増幅デバイス46に接続される出力部を有する。
【0124】
差動ユニット450は、第一磁気センサー4の電圧端子において検出される増幅差動電圧と、第二磁気センサー404の電圧端子において検出される増幅差動電圧との差を決定するように構成される。
【0125】
従って、二つの磁気センサーに共通のノイズ源が、除算ユニット450によって相殺される。
【0126】
図7の微小磁気測定システム402の一変形例では、第一磁気センサー4外部の励起磁場H
AC生成手段20が取り除かれ、第一磁気センサー4と、第一電流端子28と第二電流端子30との間に接続された修正第一電流源326との組320に置換される。
【0127】
図8を参照すると、極少量の磁性粒子の存在を検出するための第一実施形態の微小磁気測定検出方法500が、
図1、
図6及び
図7で定められるような微小磁気測定システムによって行われる。
【0128】
この方法500は、スイッチング命令として機能するスイッチング物理特性に関する所定のスイッチング閾値を超えることでスイッチング可能な分子性ナノ粒子である任意の磁性粒子に適用可能である。そのような磁性粒子は、A
hB
k[M(CN)
6]
l・mH
2O型のスイッチング可能分子性ナノ粒子であり、ここで、AはCo、Ni、Fe等であり得て、B及びMは多様な遷移金属(Fe
II、Fe
III、Mn
II、Mn
III、fml aCo
II、CO
III等)であり得て、Cはアルカリ金属である。
【0129】
微小磁気測定検出方法500は、順に行われる以下のステップを備える。
【0130】
第一ステップ502では、未知の量の磁性粒子を第一磁気センサー上に堆積させ、それら磁性粒子は、スイッチング命令として機能するスイッチング物理特性に関する所定のスイッチング閾値を超えることでスイッチング可能な分子性ナノ粒子である。
【0131】
次のステップ504では、既知の所定の物理条件の下で、所定の物理特性範囲にわたって物理特性の大きさを変化させることによって、以下のいずれかを行う:
磁気測定システムが単一の第一磁気センサーを備える場合、物理特性の大きさに対する、第一センサーによって行われる差動電圧測定の
変動として第一曲線を提供するか、又は、
磁気測定システムが第一磁気センサー及び第二磁気センサーを備える場合、磁性粒子を有する第一センサーによって行われる第一組の差動電圧測定と、磁性粒子を有さない第二センサーによって行われる第二組の差動電圧測定とを出力し、第一曲線を、物理特性に対する、第一組の差動電圧測定と第二組の差動電圧測定との間の差の
変動として決定する。
【0132】
そして、次のステップ506では、所定の物理特性範囲にわたって、第一の曲線の下部からフィッティング曲線として第二曲線を決定し、その第一曲線の下部は、所定のスイッチング閾値よりも低い上限を有する所定の物理特性範囲内に含まれる下方区間に対応する。
【0133】
そして、ステップ508では、スイッチング物理特性の大きさに対する、第一曲線の差動電圧と第二曲線の差動電圧との差として、第三曲線を、物理特性の大きさの同一の範囲内において決定する。
【0134】
次のステップ510では、転移の生じているスイッチング物理特性区間を第三曲線が示し、また、転移の大きさが所定の検出閾値よりも大きい場合に、磁性粒子の存在を検出し、その所定の検出閾値は、10nTの検出可能な最小磁場に対応する。
【0135】
図9を参照すると、表示フレーム520内に、環境温度Tに対する、微小磁気測定システム2によって出力された有効電圧V
effの
変動の代表的な電圧プロファイル522、及びフィッティング曲線524が示されている。
【0136】
表示フレーム520は、mV単位の出力電圧の縦軸526と、ケルビン単位の環境温度の横軸538とを有する。
【0137】
電圧プロファイル522は以下の二つの寄与成分を示す:凹電圧応答V
driftと、SCO粒子から発生する漂遊磁場が水平方向に生じさせる電圧応答V
stray。
【0138】
従って、有効電圧V
effを以下のように表すことができる:
V
eff=V
drift+V
stray
【0139】
また、電圧プロファイル522はヒステリシスループ530も示し、加熱方向532における上方曲線部と、冷却方向534における下方曲線部とを有する。このヒステリシスループ530は、SCO粒子の転移の磁気シグネチャである。
【0140】
実際には、磁気センサーの電圧応答のV
drift曲線524が、[300K,350K]の温度範囲にわたって、電圧プロファイル522の下部からフィッティング曲線として決定され、この電圧プロファイル522の下部は、所定のスイッチング閾値よりも低い上限を有する所定の物理特性範囲内に含まれる下方温度区間に対応する。例えば、下方温度区間は、[300K,320K]である。
【0141】
図10を参照すると、表示フレーム550内に、環境温度Tに対する、漂遊磁場電圧V
strayの電圧プロファイル552の
変動が示されている。
【0142】
漂遊磁場電圧V
strayの電圧プロファイル552の
変動は、有効電圧V
eff522から電圧ドリフトV
drift曲線524を引くことによって導出される。
【0143】
表示フレーム550は、mV単位の漂遊磁場電圧V
strayの縦軸554と、ケルビン単位の環境温度の横軸556とを有する。
【0144】
電圧プロファイル552はヒステリシスループ560を示し、加熱方向564における下方曲線部562と、冷却方向568における上方曲線部566とを有する。
【0145】
このヒステリシスループ560は、SCO粒子の転移の磁気シグネチャである。
【0146】
転移温度は、ヒステリシスループ560のヒステリシス曲線の中間高さにとられる。
【0147】
上述のような第一磁気センサー4の寸法及び性能、並びにSCO粒子についての250nmの平均直径では、磁気センサーによって検出可能な最小磁場は10nTである。
【0148】
磁力計2の検出性能はセンサー面積に依存するので、磁気センサーのサイズを500nmにすることによって、単一の磁性粒子について25nVの量が推定される。これが、室温における単一のSCO粒子の磁気シグネチャの検出を可能にする。
【0149】
磁気センサーの近傍に、又は差動構成の二つの磁気センサーの近くに増幅器を集積することによって、最小1ピコテスラ(10
−12T)までの局所磁場を検出することができる。
【0150】
一般的に、センサーリングの一つのアームの幅は、ナノスケールからマイクロスケールまでの範囲内にあり、磁気測定の有効サイズは50nmから1mmまでの範囲内にある。
【0151】
図11を参照すると、極少量の磁性粒子の存在を検出するための第二実施形態の微小磁気測定検出方法600が行われる。
【0152】
この方法600は、スイッチング命令として機能するスイッチング物理特性に関する所定のスイッチング閾値を超えることでスイッチング可能な分子性ナノ粒子である任意の磁性粒子に適用可能である。そのような磁性粒子は、A
hB
k[M(CN)
6]
l・mH
2O型のスイッチング可能分子性ナノ粒子であり、ここで、AはCo、Ni、Fe等であり得て、B及びMは多様な遷移金属(Fe
II、Fe
III、Mn
II、Mn
III、fml aCo
II、CO
III等)であり得て、Cはアルカリ金属カチオンである。
【0153】
また、この方法は、常磁性粒子(Fe
2O
3、Fe
3O
4、Fe@Fe
3O
4、CoFe@Fe
3O
4、Ni等)、強磁性粒子(Fe、CoFe、Ni等)、反強磁性粒子(つまり多層構造Ti/Feの粒子、Cr、NiO、Co
3O
4、a‐Fe
2O
3、CuO、MnO、Cr
2O
3ナノ粒子)、ポリマーマトリクス中のFe
3O
4製の磁性ビーズ(球形であり、50nmから10μmまでのサイズを有する)にも適用可能である。
【0154】
極少量の磁性粒子の存在を検出するための微小磁気測定検出方法600は、
図1、
図6及び
図7で定められるような微小磁気測定システムによって実行可能である。
【0155】
微小磁気測定検出方法600は、順に行われる以下のステップを備える。
【0156】
第一ステップ602では、第一の既知の所定の物理条件の下で、システムが単一の第一磁気センサー4を備える場合には第一磁気センサーを温度について較正し、磁気測定システムが第一磁気センサー4及び第二磁気センサー404を備える場合には第一磁気センサー及び第二磁気センサーの組を温度について較正し、第一較正バックグラウンド熱ノイズ曲線を与える。
【0157】
次のステップ604では、未知の量の磁性粒子12を第一磁気センサー4の上に堆積させる。
【0158】
そして、次のステップ606では、同じ第一の既知の所定の物理条件の下で、所定の温度範囲にわたって温度を変化させることによって、磁気測定システム2、302が第一磁気センサー4のみを備える場合には、第一センサーによって行われる差動電圧測定の温度
変動として第二曲線を出力し、又は、磁気測定システム402が第一磁気センサー4及び第二磁気センサー404を備える場合には、磁性粒子を有する第一センサー4によって行われる第一組の差動電圧測定と、磁性粒子を有さない第二センサー404によって行われる第二組の差動電圧測定とを出力する。同じステップ606において、第一組の差動電圧測定と第二組の差動電圧測定との間の差の温度
変動として、第二曲線を決定する。
【0159】
次のステップ608では、同じ温度範囲内において、温度に対する、第二曲線の差動電圧と第一曲線の差動電圧との間の差として、第三曲線を決定する。
【0160】
そして、次のステップ610では、第三曲線の電圧差の絶対値が所定の検出閾値よりも大きく安定なままであるか、又は、所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する転移が生じている温度区間を第三曲線が示す場合に、磁性粒子の存在が検出され、その所定の検出値は、10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する。
【0161】
図12を参照すると、第一較正バックグラウンド熱ノイズ650のプロファイルの一例が示されている。
【0162】
第一磁気センサー4、又は第一磁気センサー4及び第二磁気センサー404の組の較正は、検出方法600のステップ602において行われる。
【0163】
この熱較正ステップ中においては、第一磁気センサー4に負荷が与えられず、つまり、その上に堆積された磁性粒子を有さず、一回温度を上昇させ、次に一回温度を低下させることによって、温度を変化させる。
【0164】
プロファイル650は、加熱方向に対応する第一曲線652と、冷却方向に対応する第二曲線654とを有する。これらの曲線は同じであり、較正プロファイル650はヒステリシスサイクルを示さない。
【0165】
図13を参照すると、二つの異なる湿度条件80%、60%の下で検出された同じSCO粒子についての、二つの異なるヒステリシスサイクル又はループ672、674の組が、対応する転移温度と共に示されている。
【0166】
これら二つのヒステリシスサイクル672、674は表示フレーム670内に示されていて、その表示フレーム670は、ヒステリシスサイクルの最高電圧及び最低電圧に対して正規化された出力電圧の縦軸676と、ケルビン単位の環境温度の横軸678とを有する。
【0167】
80%の湿度に対応するヒステリシスループ672は、第一転移温度680と、第二転移温度682とを示す。
【0168】
60%の湿度に対応するヒステリシスループ674は、第一転移温度692と、第二転移温度694とを示す。
【0169】
転移温度と、ヒステリシスループの幅とを用いて、湿度を推定することができることが見て取れる。
【0170】
従って、このような振る舞いを利用して、
図1、
図6及び
図7に関して説明したような微小磁気測定システムを備えた湿度測定システムを構築することができ、粒子は、所定の温度スイッチング閾値を超えるとスイッチング可能であり、湿度に対して感度を有する分子性ナノ粒子であり、その所定の温度スイッチング閾値又はヒステリシスループの幅が、湿度環境に依存する。
【0171】
処理ユニットは、磁性粒子の磁気変化測定、及び、他の湿度測定法によって測定された較正湿度と
図8又は
図11に関して説明したような微小磁気測定法によって測定された対応する温度転移又はヒステリシスサイクル幅との間の予め決定されたマッピング曲線から、湿度を決定するように構成される。
【0172】
実際には、
図8又は
図11の磁気測定法とスピンクロスオーバーとを組み合わせることによって、そのシステムを、ガスを検出するためのガスセンサーとして用いることができる。湿気等のシステムに影響を与える外部ガスも、環境ガス濃度の関数としてスピンクロスオーバー曲線をシフトさせる。
【0173】
従って、所定の温度スイッチング閾値を超えるとスイッチング可能な任意の分子性ナノ粒子が使用可能であり、その所定の温度スイッチング閾値は、外部分子の蒸気の環境濃度に依存する。
【0174】
このような場合、処理ユニットは、外部分子の蒸気の環境温度に対して感度を有する磁性粒子の磁気変化測定から、また、他の方法によって測定された外部分子の蒸気の較正環境温度と対応するパラメータ(
図8又は
図11に関して説明したような微小磁気測定法によって検出された磁性粒子の磁気特性の変化から決定された温度閾値、転移温度、ヒステリシスループ等)との間の予め決定されたマッピング曲線から、外部分子の蒸気の環境濃度を決定するように構成される。
【0175】
検出可能な外部分子の蒸気又はガスとして、例えば以下のものが挙げられる:
N
2、He、I
2、CO
2、エタノール、メタノール、2‐プロパノール、アセトン、D
2O、CS
2、CO、ヨウ素(I)、臭素(Br)、塩素(Cl)、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ピラジン、ピリジン、ピロール、チオフェン、フラン、
テトラヒドロフラン。
【0176】
図11に関して上述したような検出方法600を用いて、以下の粒子を検出することができる:
‐ A
hB
k[M(CN)
6]
l・mH
2O型のスイッチング可能分子性ナノ粒子、ここで、AはCo、Ni、Fe等であり得て、B及びMは多様な遷移金属(Fe
II、Fe
III、Mn
II、Mn
III、Co
II、CO
III等)であり得て、Cはアルカリ金属カチオンである。
‐ 常磁性粒子: Fe
2O
3、Fe
3O
4、Fe@Fe
3O
4、CoFe@Fe
3O
4、Ni等
‐ 強磁性粒子: Fe、CoFe、Ni等
‐ 反強磁性粒子: 多層構造Ti/Feの粒子、Cr、NiO、Co
3O
4、a‐Fe
2O
3、CuO、MnO、Cr
2O
3ナノ粒子
‐ ポリマーマトリクス中のFe
3O
4製の磁性ビーズ(球形であり、50nmから10μmまでのサイズを有する)。
【0177】
本システムを用いて、異なる形態(微結晶粉末、ナノ粒子、薄層等)の全ての磁性体(常磁性、反磁性、強磁性、反強磁性、フェリ磁性)の磁化変動(磁化転換)を任意の温度において検出することができる。代表的な例として以下のものが挙げられる: 金属物質、酸化金属、希土類元素、有機金属錯体、配位錯体(磁性分子、マグネット鎖、特に、スピンクロスオーバー物質、電荷移動物質等)。
【0178】
[金属、酸化金属]
代表的な金属誘導体として、以下のものが挙げられる: Co、Ni、Fe等の化合物、合金AB、ここでA=Co、Ni、Fe等、B=Pt、Fe等。
【0179】
代表的な酸化金属誘導体として、以下のものが挙げられる: FeO、Fe
2O
3、CuO、ZnO等。
【0180】
[磁性化合物及び分子錯体]
代表的な磁性化合物及び分子錯体として、マグネット分子(Mn12等)、マグネット鎖(ホモ多核化合物、ヘテロ多核化合物等)等が挙げられる。
【0181】
ヘテロ多核磁性化合物として、プルシアンブルー、及び一般式M
x[M’(CH)
6]
y・nH
2O及びA
xM
y[M’(CH)
6]・nH
2Oのその類似体が挙げられ、ここで、Aはアルカリ性カチオンを表し、M及びM’は、二価又は三価の遷移金属のカチオンを表し、Fe
4[Fe(CN)
6]
3・15H
2O、CsNi[Cr(CN)
6]等が挙げられる。
【0182】
スピンクロスオーバー物質としては、鉄錯体、特に以下の式(I)のものが挙げられる:
Fe[(L)
3](X)
2・xH
2O (I)
ここで、
‐ Lは、配位子を表し、trz(トリアゾール)、NH
2trz、Fatrz(4‐ホルミルアミノ‐1,2,4‐トリアゾール)、Hptrz(ヘプチルトリアゾール)等が挙げられる;
‐ Xは、アニオン性の対イオンを表し、OTf(トリフラートや、トリフルオロメタンスルホン酸)、p‐tol又はtof(p‐トリルスルホン酸、トシル)、テトラフロオロホウ酸塩、硝酸塩、Br、Cl等が挙げられる;
‐ xは0から10の間の整数である。
【0183】
代替的なスピンクロスオーバー物質として、以下の一般式(II)の誘導体が挙げられる:
Fe
yM
(1−y)(L)[M’(CN)
4] (II)
ここで、
‐ Mは、NiやCo等の金属を表す;
‐ M’は、Mと同じであるか又は異なる金属を表し、Ni、Pd、Pt等から選択される;
‐ Lは、ビス‐単座配位子を表し、ピラジン(pz)、アゾピリジン(azpy)、ビス(4‐ピリジル)アセチレン(bpac)等が挙げられる;
‐ yは、0から1の間であるが、0及び1を除く。
【0184】
電荷移動化合物としては、ドナー/アクセプター対によって形成された誘導体が挙げられ、例えば、式[Fe(Cp
*)
2][TCNE](TCNE=テトラシアノエチレン)、[Mn(Cp
*)
2][TCNQ](TCNQ=テトラシアノキノジメタン)等の化合物である。
【0185】
本発明に係る他の電荷移動物質として、一般式A
xM
y[M’(CH)
6]・nH
2Oのプルシアンブルーの類似体が挙げられ、Aはアルカリ性カチオンであり、M及びM’は二価又は三価の遷移金属のカチオンを表し、例えば、Na
xCo
y[Fe(CN)
6]・nH
2O等が挙げられる。
【0186】
図8に関して上述したような検出方法500を用いて、上述のようなスイッチング可能分子性ナノ粒子を検出することができる。
【0187】
一変形例では、第一電流源によって注入され電流端子を通過する電流は、直流(DC)と交流(AC)との和である。
【0188】
一般的に、磁気トラックは、強磁性膜と反強磁性膜とを含む二層構造であるか、又はスピンバルブ構造であるか、又は強磁性膜と金属と反強磁性膜とを含む三層構造である。
【0189】
図7の微小磁気測定システム402の一変形例では、ハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサー4及び第二磁気センサー404が、同じ磁気構造及び同じ形状(十字形状又は単一リング閉ループ形状)を有する複数の磁気センサーに置換される。
【0190】
同じ形状(十字形状又は単一リング閉ループ形状)を有する第一磁気センサー及び第二磁気センサーは、それらの容易軸が方向に関して同一直線上にあり、つまり互いに平行となるように配置される。
【0191】
第一磁気センサー及び第二磁気センサーは、同じ既知の物理条件の下で同じ基板上において可能な限り近く配置され、磁性粒子がセンサー上に堆積されていない場合に同じノイズで同じ磁気応答及び温度応答を受け取り検出するようにされる。
【0192】
第二磁気センサーの第一電流端子、第二電流端子はそれぞれ第一磁気センサーの第一電流端子、第二電流端子に接続される。
【0193】
従って、第一電流源は、第一磁気センサー及び第二磁気センサーに対して並列で、同じノイズ特性を有する電流を供給する。
【0194】
修正電圧測定デバイス408の構造は同じままであるが、修正電圧測定デバイスは、第一磁気センサーの電圧端子において検出された増幅差動電圧と、第二磁気センサーの伝達端子において検出された増幅差動電圧との間の電圧差を決定するように構成される。
【0195】
従って、二つのノイズセンサーに共通のノイズ源が相殺される。
【0196】
図7の微小磁気測定システム402について、第一磁気センサー4外部の励起磁場H
AC生成手段を取り除いて、第一磁気センサーと、第二磁気センサーと、第一磁気センサーの第一電流端子と第二電流端子との間及び第二磁気センサーの第一電流端子及び第二電流端子の間に交流を発生させる修正第一電流源との組に置換することができる。
【0197】
実際には、電流バイアスに関して上述したような一つ又は二つの多重リング磁気センサーと外部磁場を生成するための手段とを用いる磁気測定システムについて説明した全ての変形例を、同一形状(十字形状又は単一リング閉ループ形状)を有し、互いに差動的に接続された二つの磁気センサーを用いた磁気測定システムについて用いることができる。
【0198】
図5及び
図8に関して上述したのと同じ検出方法を用いることもできる。
【0199】
このような微小磁気測定システム702の変形例の一つが
図14に示されていて、
図7の二つの多重リング磁気センサー4、404が、二つの十字形状磁気センサー706、726に置換されている。
【0200】
同じ十字形状の第一磁気センサー706及び第二磁気センサー726が、同じ既知の物理条件の下で同じ基板上に互いに近接して配置され、磁性粒子がセンサー上に堆積されていない場合には同じノイズで同じ磁場を受け取り検出するようにされる。
【0201】
第一磁気センサー706及び第二磁気センサー726は、それらの容易軸が方向に関して同一直線上にあるように、つまり互いに平行になるように配置される。
【0202】
一変形例では、
図7に関して上述したようなハイブリッドAMR/PHR多重リングの第一磁気センサー4及び第二磁気センサー404を備えるか、又は同じ磁気構造及び同じ形状(特に十字形状又は単一リング閉ループ形状)を有する二つの磁気センサーを備えた微小磁気測定システムを用いて、直接検出方法を行うことができる。
【0203】
このような微小磁気測定直接検出方法を用いて、最小においてナノスケール又はマイクロスケールの単一磁性粒子又は単一磁性物体にまで至る極少量の磁性粒子を検出することができる。
【0204】
第一実施形態に係る微小磁気測定直接検出方法は、以下のステップを備える。
【0205】
第一ステップでは、既知の所定の物理条件の下で、未知の量の磁性粒子又は磁性物体を第一磁気センサーの上に堆積させた後、磁性粒子を有する第一センサーによって行われた第一電圧測定と、磁性粒子を有さない第二センサーによって行われた第二電圧測定とを出力する。
【0206】
第二ステップでは、第一電圧測定と第二電圧測定との間の第一差を決定する。
【0207】
第三ステップでは、第一差と基準差との間の差としての第二差が、所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する場合に、磁性粒子又は磁性物体の存在を検出し、その基準差は、同じ既知の所定の物理条件の下での磁性粒子を有さない第一センサーによって行われた第一電圧測定と、磁性粒子を有さない第二センサーによって行われた第二電圧測定との間の差であり、所定の検出閾値は、10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する。
【0208】
第二実施形態に係る微小磁気測定直接検出方法は、磁性粒子が、スイッチング命令として機能するスイッチング物理特定に関して所定のスイッチング閾値を超えるとスイッチング可能な分子性ナノ粒子又は単一物体である場合に、適用可能である。
【0209】
その直接検出方法は以下のステップを備える。
【0210】
第一ステップでは、既知の所定の物理条件の下で、未知の量の磁性粒子又は磁性物体を第一磁気センサー上に堆積させた後で、物理特性の大きさを、その物理特性の所定の範囲にわたって変化させる。
【0211】
第二ステップでは、第一ステップと平行して、磁性粒子を有する第一センサー(4)によって行われる第一組の電圧測定と、磁性粒子を有さない第二センサー(404)によって行われる第二組の電圧測定とを出力する。
【0212】
第三ステップでは、物理特性の大きさに対する、第一組の電圧測定と第二組の電圧測定との間の差の
変動としての曲線を決定する。
【0213】
第四ステップでは、所定の検出閾値よりも大きな大きさを有する転移が生じているスイッチング物理特性区間をその曲線が示す場合に、磁性粒子又は磁性物体の存在を検出し、その所定の検出閾値は、10nTの検出可能な最小磁場シフトに対応する。