【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、薬剤送出装置へのアダプターの確実な組み付けを確実にすることができる改良されたアダプターに関する必要性が存在する。また、このようなアダプターが設けられた薬剤送出装置の必要性も存在する。
【0010】
医療的使用は、薬剤送出装置が汚染されないことを確実にするための特有の組み付け条件を必要とする。適切な品質レベルは、特有の品質グレード下で、クリーンルーム内で組み付けを実行することによって得られ、この中で薬剤送出装置は、洗浄され、次いでストッパの良好な滑らかな動きを可能にするようにシリコーン処理される。しかし、薬剤送出装置の末端先端部へのアダプターの摩擦力による連結は、末端先端部の外側表面に不注意に施与され得るシリコーンの存在によって大きな影響が与えられる。
【0011】
従って、薬物注射装置の末端先端部への確実な組み付けを可能にする改良されたアダプターに関する必要性が存在する。また、このようなアダプターが設けられた薬剤送出装置の必要性も存在する。
【0012】
他の問題が、さまざまな薬剤送出装置とのアダプターの使用に関して報告されている。実際、医療分野において薬剤送出装置をコネクターに連結させる目的で使用するのに利用可能であるアダプターのほとんどは、プラスチック材料から作製される。このようなプラスチック材料の変形能力は、経年および温度条件によって影響される。加えて、プラスチック材料は、殺菌プロセスに対して敏感である。
【0013】
まず第1に、医療分野で使用可能な利用可能なプラスチック材料の範囲は、組成物および色に関して限定される。
【0014】
第2に、たとえば一定時間後、または殺菌サイクルのような特有の状態にさらされた後および/または異なる温度にさらされた後、選ばれたプラスチック材料の弾力特性が改変される場合がある。その結果、アダプターは、薬剤送出装置の末端先端部に対して不動のままではなくなる。アダプターの一部は、殺菌によって弱くされ、末端先端部に対する十分な締結をもはや確実にしなくなる可能性があり、それによってアダプターの容易な連結解除を招く。また、摩擦力が、特にユーザーがコネクターをアダプターにねじ込もうとする場合にアダプターが回転するのを防止するのに十分重要でない場合がある。従って、ユーザーが、コネクターがこのアダプターに良好に嵌合されるかどうか、その結果、コネクターが薬剤送出装置の末端先端部に良好に連結されるかどうかを決定することは不可能である。薬剤送出装置とコネクターの間の不正確な連結は、薬剤送出装置に関するアダプターおよび/またはコネクターの変位を引き起こし得、これは、製品の漏出、従って患者に投与される不正確な投与量ならびに製品の浪費を招き得る。これらの問題を克服し、コネクターとアダプターの間の正しい連結を確実にするために、コネクターをアダプターにねじ込む場合、ユーザーは、薬剤送出装置をアダプター自体によって掴む傾向がある。アダプターが小さいサイズを有する場合、これを効率的に取り扱うのは困難である。この作動中、ユーザーの指は、注射薬剤送出装置の先端部および軸方向経路の近くにあり、含有された医療液体の汚染のリスクを増大させる。
【0015】
従って、薬物注射装置とコネクターの間の効率的かつ確実な連結を確実にしながら、幅広い範囲の材料の使用を可能にする改良されたアダプターに関する必要性が存在する。また、このようなアダプターが設けられた薬剤送出装置の必要性も存在する。
【0016】
加えて、前記末端先端部の形状および/または外側表面を改変する必要なく、薬剤送出装置の末端先端部に確実に締め付けられるアダプターに関する必要性が存在する。
【0017】
本発明の態様は、薬剤送出装置の末端先端部に装着されるよう意図されたアダプターであって、薬剤送出装置と、アダプターに連結されるよう意図されたコネクターとの間の安全な連結を可能にする、アダプターである。特に、本発明のアダプターは、末端先端部へのアダプターの最適な固定を確実にする締め付け手段を具え、それにより、前記アダプターは、使用時に末端先端部から連結解除されることはない。
【0018】
本発明の第1の態様は、薬剤送出装置の末端先端部に装着されるよう意図されたアダプターであって、前記末端先端部は、前記薬剤送出装置内に含有された製品の移送のための軸方向の経路を画定し、前記アダプターは、前記軸方向の経路に位置合わせされた長手方向軸線Aを有し、アダプターは、前記アダプターをコネクターに連結させるための連結手段を具え、前記アダプターは、
− 前記末端先端部に係合されることが可能である内側リングであって、前記アダプターが前記末端先端部に係合されると前記末端先端部に径方向の内向きの力を及ぼすことができる保持手段を具え、
この場合、
前記内側リングが前記末端先端部に係合された場合、前記保持手段は、これらが前記末端先端部に及ぼす径方向の内向きの力が、前記末端先端部に対する前記アダプターの軸方向移動を限定しない自由構成から、これらが前記末端先端部に及ぼす径方向の内向きの力が、前記軸方向移動を限定する係止された構成に切り替わることができる内側リングをさらに具え、
アダプターは、
− 前記内側リングに結合された圧縮手段であって、前記圧縮手段が前記保持手段に求心圧力を及ぼさず、前記保持手段がその自由構成にある基端位置と、前記圧縮手段が前記保持手段に求心圧力を及ぼし、前記保持手段がその係止された構成にある末端位置との間で、前記保持手段に対して軸方向に移動可能である、圧縮手段と、
− 前記圧縮手段を、前記保持手段に対するその基端位置に一時的に維持するための解放可能な維持手段と
をさらに具えたアダプターである。
【0019】
本発明のアダプターは、特に、コネクターを薬剤送出装置に連結するために使用され得る。
【0020】
本発明のアダプターが、変位され、最終的には、これがそこに装着されるよう意図された薬剤送出装置の末端先端部に置き間違えられるリスクは、従って、大きく限定される。本発明のアダプターは、従って、コネクターの再生可能な連結を可能にし、コネクターが薬剤送出装置に対して正確に位置決めされることを確実にする。
【0021】
実際、本発明のアダプターでは、末端先端部へのアダプターの締結は、内側リングの保持手段が末端先端部に径方向の内向きの力を及ぼす能力だけに依存していない。実際、追加の径方向の内向きの力、実際には圧縮手段によって及ぼされた求心圧力が、保持手段によって生成された初期の径方向の内向きの力に加えられる。末端先端部に及ぼされた全体的な摩擦力は、従って増大され、アダプターは、末端先端部に確実に取り付けられ、この場合、これがそこから引き離される危険性を有さない。加えて、保持手段がその係止された構成にある場合に末端先端部に及ぼされる全体的な力は、2つの異なる源、すなわち一方では保持手段および他方では圧縮手段から生じるため、アダプターを位置決めするためにユーザーによって必要とされる力は、2つのステップでかけられ得る。アダプターの正しい配置は、従って容易にされ、アダプターがそこに装着された場合に末端先端部を破損するリスクは、低減される。
【0022】
本出願では、「ユーザー」とは、IVラインなどのコネクターをそこに連結するために本発明のアダプターを使用する必要があり得る健康ケア作業者を意味し、または代替的に、これは、アダプターがすでにそこに装着された薬剤送出装置を提供するために、薬剤送出装置の末端先端部への本発明のアダプターの装着を実行する薬剤送出装置の製造者でよい。このような場合、装着ステップは、コネクターが薬剤送出装置に連結されない間、薬剤送出装置をその保管位置で安全に閉鎖することを確実にするためにアダプターにキャップを連結させることをさらに含む。製造者の構内で装着するステップは、組み付けラインにおいて自動的に完了され得る。
【0023】
その結果、本出願では、「コネクター」は、製品を薬剤送出装置から、針ハブ、ポケットドリップ、バイアル、IV(静脈内)ライン、IM(筋肉内)ラインなどの別の医療装置に移送することを可能にするための、またはこれに反して、薬剤送出装置の保管位置の、たとえば閉鎖キャップのような、充填された薬剤送出装置をその使用前に安全に閉鎖し、いかなる汚染も防止するための、アダプターに連結されるよう意図された任意の装置を意味する。
【0024】
実際、本発明のアダプターは、最初に、保持手段がその自由構成にある状態で末端先端部に係合される。このようなステップは、アダプターを末端先端部に配置するために大きい力がユーザーによって生み出されることを必要としない。アダプターが末端先端部に位置決めされると、保持手段がその自由構成にある状態で、ユーザーはこの場合、圧縮手段をその基端位置からその末端位置に移動させる。ここでも、このステップは、大きい力がユーザーによってかけられることを必要としない。末端先端部の完全性は、従って温存される。本発明のアダプターは、従って、前記末端先端部がガラスから作製される場合であってもアダプターと末端先端部の安全な連結を可能にする。
【0025】
加えて、本発明のアダプターの圧縮手段が、保持手段に対するこれらの圧縮手段の末端移動によって始動されるという事実は、アダプターを末端先端部により安全に固定すること、ならびに「アダプターおよび末端先端部」の装着された組立体を、末端先端部からアダプターを連結解除しようとする故意の試みからより良好に保護することを確実にする。実際、本発明のアダプターが、保持手段がその係止された構成にある状態で薬剤送出装置の末端先端部に装着されると、作業者がアダプターを末端先端部から末端方向に引き出そうする場合、これは、保持手段に圧縮手段によって及ぼされた圧縮を増大させるだけである。装着されると、保持手段がその係止された構成にある状態で、アダプターは、組立体全体を破損しこれに損傷を与えることなしには、末端先端部から連結解除され得ない。
【0026】
たとえば、保持手段がその係止された構成にある状態になると、本発明のアダプターの圧縮手段の存在はまた、アダプターが末端先端部に対して回転することを防止することも可能にする。追加的に、何らかの係止手段が、末端先端部の基端外側表面に形成され、好ましくは薬剤送出装置の長手方向軸に対して位置合わせされることが可能である。これらの係止手段は、径方向に外向きに偏向可能なタブの機械的当接により、アダプターをしっかりと回転係止するリブの形態を有することができる。実際、これらのリブは、アダプターのいかなる回転移動も防止するために、2つの隣接する、径方向に外向きに偏向可能なタブの間に存在する空間内に密接に嵌合する。
【0027】
あるいは、本発明のアダプターは、前記末端先端部の形状または外側表面を改変することを必要とせずに、たとえば、これに環状溝または環状稜部を設けることによって、ガラス材料から作製された従来の円錐状の末端先端部で使用されてよい。
【0028】
諸実施形態では、保持手段は、前記内側リングの円周に沿って分散された1または複数の径方向に内向きに偏向可能なタブであって、アダプターが末端先端部に装着された場合に前記末端先端部の外側表面と接触する、タブを具え、圧縮手段は、前記径方向に外向きに偏向可能なタブを少なくとも部分的に受け入れることができる外側リングを具えている。保持手段によって及ぼされた径方向の内向きの力は、従って、末端先端部の円周に沿って良好に分散され、固定が確実にされる。
【0029】
諸実施形態では、前記径方向に外向きに偏向可能なタブは、基端の薄い壁および末端の厚い壁を具えており、前記外側リングは、内側径方向リムを具え、前記内側径方向リムは、前記外側リングがその基端位置にある場合に前記基端の薄い壁に面し、そこに求心圧力を及ぼさず、前記内側径方向リムは、前記外側リングがその末端位置にある場合に前記末端の厚い壁と接触し、そこに求心圧力を及ぼす。
【0030】
特に、径方向に外向きに偏向可能なタブの厚い末端壁は、たとえばねじ込むことによってコネクターがアダプターに連結されるよう意図される場所において良好な機械的特性を具えた内側リングを提供する。コネクターの連結するステップ、たとえばねじ込みステップは、従って容易にされ、安全に実行され得る。
【0031】
外側リングの内側径方向リムは、最適な求心圧力を前記保持手段に及ぼすために、追加の剛性および機械的特性を、保持手段と接触するよう意図された外側リングの部分に提供する。
【0032】
内側リングは、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスチレン(PS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポロプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、熱可塑性エラストマー(TPE)およびその組み合わせから選択された材料から作製され得る。外側リングもまた、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリスチレン(PS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポロプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、熱可塑性エラストマー(TPE)およびその組み合わせから選択された材料から作製され得る。
【0033】
諸実施形態では、外側リングは、好ましくは、内側リングを形成する材料より剛性の材料から作製される。たとえば、外側リング、特に内側径方向リムは、ポリアミドから形成されてよく、径方向の外向きに偏向可能なタブは、ポリエチレンから作製されてよい。他の実施形態では、外側リング、特に内側径方向リムは、ポリブチレンテレフタレートから作製されてよく、径方向に外向きに偏向可能なタブは、熱可塑性エラストマーから作製されてよい。
【0034】
諸実施形態では、前記連結手段は、内側リングに位置する。たとえば、連結手段は、前記内側リングの内側壁に設けられたねじ山を具えている。
【0035】
アダプターは、前記圧縮手段を前記保持手段に対するその基端位置に一時的に維持するための解放可能な維持手段を具えている。アダプターは、従って、事前に組み付けられた位置で取り扱われてよく、この位置では、圧縮手段は、前記保持手段に対するその基端位置にある。たとえば、解放可能な維持手段は、外側リングを、径方向に外向きに偏向可能なタブに対するその基端位置に一時的に維持することを可能にする。本発明のアダププタの取り扱いは、従って、ユーザーにとって簡易化され、ユーザーは、内側リングおよび圧縮手段が、互いに対して正確に位置決めされることの保証を伴って、事前に組み付けられた位置にあるアダプターを薬剤送出装置の末端先端部に装着するだけでよい。アダプターの事前に組み付けられた位置はまた、ユーザーにとって、圧縮手段をその基端位置からその末端置に移動させるステップを簡易化する。従って、ユーザーは、係止構成にある保持手段を移動させるために、1回だけの簡単な作動を実行することが必要である。
【0036】
諸実施形態では、アダプターは、前記圧縮手段を保持手段に対するその末端位置に締め付けるためのスナップ嵌合手段をさらに具えている。保持手段は、従って、その係止された構成に安全に固定され、その結果、アダプターが末端先端部に装着されると、これは、そこから引き離されることはない。
【0037】
本発明の別の態様は、薬剤送出装置内に含有された製品の移送のための軸方向経路を画定する末端先端部を具えた薬剤送出装置であって、先に説明された少なくとも1つのアダプターをさらに具えていることを特徴とする薬剤送出装置である。
【0038】
諸実施形態では、末端先端部はガラスから作製される。
【0039】
諸実施形態では、末端先端部は、円錐状であって末端側が先細りにされ、自由構成にある径方向に外向きに偏向可能なタブによって及ぼされた径方向の内向きの力は、従って増大される。
【0040】
諸実施形態では、末端先端部には、前記末端先端部の基端外側表面および末端外側表面を画定する環状稜部が設けられており、前記保持手段は、前記アダプターが前記末端先端部に装着された場合に前記基端外側表面に前記径方向の内向きの力を及ぼす。
【0041】
環状稜部は、アダプターが末端先端部に装着されると、末端先端部からのアダプターの潜在的な引き離しへの追加の障害物を形成する。
【0042】
諸実施形態では、末端先端部の外側表面の基端領域に、アダプターが前記末端先端部に装着された場合、前記末端先端部に対する前記アダプターの回転を防止するために保持手段と協働するよう意図された係止手段が設けられる。これらの係止手段は、径方向に外向きに偏向可能なタブの機械的当接により、アダプターをしっかりと回転係止するリブの形態を有することができる。
【0043】
本発明の別の態様は、先に説明されたアダプターを、先に説明された薬剤送出装置の末端先端部に装着するための方法であって、少なくとも以下のステップ、すなわち
− アダプターを、圧縮手段が保持手段に対するその基端位置にある状態で提供するステップと、
− アダプターが末端先端部に正確に位置決めされるまで、内側リングを介して前記アダプターを末端先端部に係合させるステップと、
− 圧縮手段を保持手段に対して、その基端位置からその末端位置まで移動させるステップとを含む方法である。