特許第6335911号(P6335911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335911
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】摩擦クラッチの操作方法
(51)【国際特許分類】
   F16D 48/02 20060101AFI20180521BHJP
   F16D 25/08 20060101ALI20180521BHJP
   F16D 48/06 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F16D48/02 640C
   F16D48/02 640J
   F16D25/08 C
   F16D28/00 A
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-540047(P2015-540047)
(86)(22)【出願日】2013年10月9日
(65)【公表番号】特表2015-537169(P2015-537169A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】DE2013200208
(87)【国際公開番号】WO2014067516
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月6日
(31)【優先権主張番号】102012219929.2
(32)【優先日】2012年10月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン フォルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ホルツァー
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/124196(WO,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102011103750(DE,A1)
【文献】 国際公開第03/016743(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0218190(US,A1)
【文献】 特開2004−108586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/00−39/00
F16D 48/00−48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイドロスタティックシステムによって自動車のドライブトレインにおける摩擦クラッチを自動的に操作する方法であって、
前記ハイドロスタティックシステムには、ハイドロスタティッククラッチアクチュエータの電気駆動式マスタシリンダと、摩擦クラッチを操作するスレーブシリンダと、前記マスタシリンダと前記スレーブシリンダとの間に配置された圧力導管とから成る圧力チャンバが設けられており、
前記摩擦クラッチ無加圧状態前記マスタシリンダを移動させることにより、圧力ボリュームが無圧のリザーブタンクと連通して圧力補償が行われる、
摩擦クラッチを自動的に操作する方法において、
自動車の複数の動作パラメータから継続的に形成される多段階のスケールに従って、前記圧力補償を実施し、該多段階のスケールは、前記摩擦クラッチの安全な動作に対する信頼度を成し、
前記複数の動作パラメータは、前回実施された圧力補償に基づいて形成され、
前記スケールの最小値は、圧力補償の不要を表し、前記スケールの最大値は、即時の圧力補償の要求を表す、
方法。
【請求項2】
強制押圧閉鎖式摩擦クラッチの場合には、該摩擦クラッチが締結解除された状態で前記圧力補償を実施し、強制押圧開放式摩擦クラッチの場合には、該摩擦クラッチが締結された状態で前記圧力補償を実施する、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
第1の動作パラメータを前回実施された圧力ボリュームの圧力補償に対する温度変化から形成する、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の動作パラメータを、該第1の動作パラメータが前記圧力ボリュームの温度に及ぼす影響に従って重み付けされた単一の又は複数の温度センサから成る温度モデルに基づき形成する、
請求項3記載の方法。
【請求項5】
第2の動作パラメータを前回実施された圧力補償に対する圧力変化から形成する、
請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
第3の動作パラメータを、前回求められた接触点の圧力補償に対して形成する、
請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
2つの摩擦クラッチから成り2つのハイドロスタティックシステムを備えたツインクラッチの場合、一方の摩擦クラッチの第4の動作パラメータを、前回の接触点取得以降又は他方の摩擦クラッチの前回の圧力補償以降の接触点変化によって形成する、
請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ルクを伝達している他方の摩擦クラッチについて現時点で求められた接触点の値を、第4の動作パラメータとして使用することにより、締結解除された一方の摩擦クラッチにおいて前記圧力補償を実施する
請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記スケールの求められた段階に応じて、必要とされる変速機切替過程よりも優先して前記圧力補償を実施する、
請求項1から8のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロスタティックシステムによって自動車のドライブトレインにおける摩擦クラッチを自動的に操作する方法に関する。ハイドロスタティックシステムには、ハイドロスタティッククラッチアクチュエータの電気駆動式マスタシリンダと、摩擦クラッチを操作するスレーブシリンダと、マスタシリンダとスレーブシリンダとの間に配置された圧力導管とから成る圧力チャンバが設けられている。この場合、摩擦クラッチが無加圧状態になるようにマスタシリンダを移動させることにより、スニッファプロセスが導入され、スニッファプロセス中、圧力ボリュームが無圧のリザーブタンクと連通して圧力補償が行われる。
【背景技術】
【0002】
例えばDE 10 201 1 103 750 A1により知られている、自動車のドライブトレインの摩擦クラッチを操作するためのハイドロスタティッククラッチアクチュエータの場合、ハイドロスタティック圧力導管を介してスレーブシリンダと接続されているマスタシリンダが、モータによって動かされる。マスタシリンダの移動により、ハイドロスタティック圧力導管を介してスレーブシリンダへ力が伝達される。スレーブシリンダを介して、摩擦クラッチの締結及び締結解除が行われる。スレーブシリンダとマスタシリンダとハイドロスタティック導管とから成る圧力ボリューム内に含まれている流体において、外部の影響例えば温度の影響によって、体積に変化が引き起こされる。このように体積が変化すると、マスタシリンダポジションが同じであってもスレーブシリンダが変位してしまう。要求されるクラッチトルクを伝達するためには、スレーブシリンダのポジションが十分な精度で既知でなければならない。ハイドロスタティック圧力ボリュームにおいて発生した体積の変化を補償するために、いわゆるスニッファプロセスないしはブリードプロセスにおいて、マスタシリンダに設けられた開口部を介して圧力ボリュームと無圧のリザーブタンクとが連通するように、マスタシリンダが動かされる。このようにして、リザーブタンクと圧力ボリュームとの間で体積補償を行うことができる。体積補償が行われた後、マスタシリンダポジションとスレーブシリンダポジションとの間で既知の関係が再び確立される。その際、スニッファプロセスは、摩擦クラッチが強制押圧閉鎖式(ノーマルオープン)の摩擦クラッチとして形成されているのか、又は強制押圧開放式の(ノーマルクローズ)摩擦クラッチとして形成されているのか、に応じて、クラッチが締結解除されているときに行われるか、又はクラッチが締結されているときに行われる。この場合、スニッファプロセスは、このプロセス期間ゆえに、走行特性に無視できない影響を及ぼす。頻繁なスニッファプロセスが行われると乗り心地が悪くなる可能性がある一方、ドライブトレインの自動化された変速機に要求される切替プロセスが、スニッファプロセスによって遅延してしまう可能性もある。スニッファプロセスの周期を少なくするために有用であるのは、必要なときのみスニッファを実施することである。このためには、利用可能な信号に基づいてスニッファ実施の必要性を求めなければならない。
【0003】
さらにDE 10 2001 102 906 A1から、2つのクラッチを備えたツインクラッチを、摩擦クラッチを操作するそれぞれ1つのハイドロスタティッククラッチアクチュエータを用いて制御する方法が公知である。この場合、一方の摩擦クラッチにおける変化が、他方の摩擦クラッチの制御に利用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、快適な乗り心地を作り出すために、及び切替過程の不必要な遅延を短縮するために、スニッファプロセスが効率的な頻度で実施されるよう、ハイドロスタティックシステムにより摩擦クラッチを制御する方法をさらに改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載された方法の特徴によって解決される。従属請求項には、本発明による方法の有利な実施形態が示されている。
【0006】
ハイドロスタティックシステムによって自動車のドライブトレインにおける摩擦クラッチを自動的に操作する方法によれば、ハイドロスタティックシステムには、ハイドロスタティッククラッチアクチュエータの電気駆動式マスタシリンダと、摩擦クラッチを操作するスレーブシリンダと、マスタシリンダとスレーブシリンダとの間に配置された圧力導管とから成る圧力チャンバが設けられており、摩擦クラッチが無加圧状態になるようにマスタシリンダを移動させることにより、スニッファプロセスが導入され、スニッファプロセス中、圧力ボリュームが無圧のリザーブタンクと連通して圧力補償が行われる。摩擦クラッチを自動的に操作する本発明による方法によれば、自動車の複数の動作パラメータから継続的に形成される多段階のスケールに従って、スニッファプロセスを実施し、多段階のスケールは、摩擦クラッチの安全な動作に対する信頼度を成している。
【0007】
強制押圧閉鎖式摩擦クラッチであるのか強制押圧開放式摩擦クラッチであるのか、という摩擦クラッチの構成に応じて、強制押圧閉鎖式(ノーマルオープン)であればスニッファプロセスは締結解除状態で実施され、強制押圧開放式(ノーマルクローズ)であればスニッファプロセスは締結状態で実施される。その理由は、それらの状態においてスレーブシリンダは実質的に、スニッファプロセスにより排除すべき誤った圧力又は負圧を除けば、無圧の状態にあるからである。この点に関して本発明による方法は、特に強制押圧閉鎖式摩擦クラッチであると殊に有利である。それというのも、自動車の走行動作中、摩擦クラッチが締結解除されている動作時間は、たとえツインクラッチであるにしても、締結状態よりも頻度が少なくもしくは短いからである。
【0008】
スニッファプロセスを実施する必要性は、多段階のスケールに基づき設定される。同時にこの多段階のスケールは、スレーブシリンダのポジションの信頼性の度合いつまりは摩擦クラッチを介して伝達される現時点のクラッチトルクのポジションの信頼性の度合いを表すものである。例えばこのスケールを、スニッファプロセスが要求されず実施されない「高い」信頼性から、摩擦クラッチの作動が制約されもしくは非作動にされる信頼性「なし」まで、形成することができる。その間に位置する段階は、優先順位が付けられたスニッファ要求を表し、求められた段階に従い、優先順位が高い場合には、切替プロセスなど他のプロセスを遅らせてスニッファプロセスがただちに実施され、優先順位が比較的低い段階の場合には、そのような他のプロセスの後にスニッファプロセスが実施される。
【0009】
マスタシリンダと同様、摩擦クラッチの操作程度と結び付いたスレーブシリンダのピストンポジションに対する信頼性は、つまりはスニッファプロセスの必要性は、あとで説明するように、有利にはスケールを規定する判定基準の和に基づき決定され、例えば自動車及びそのドライブトレイン特に摩擦クラッチ及びその操作システムの動作パラメータの和に基づき決定される。
【0010】
有利には、温度又は前回実施された圧力媒体スニッファプロセスに対する温度変化の形態をとる第1の動作パラメータによって、スケールの形成が行われる。この場合、第1の動作パラメータが、このパラメータが圧力ボリュームの温度に及ぼす影響に従い重み付けされた1つ又は複数の温度センサから成る温度モデルに基づき、形成される。詳細には、例えばこの種の温度パラメータが、前回のスニッファ以降の圧力導管の温度変化に関連づけられる。圧力媒体の膨張係数は温度に依存することから、温度変化によって圧力が変動する。そしてこのような圧力変動により、場合によってはマスタシリンダピストンの規定されたポジションに基づいて、スレーブシリンダに無視できない望ましくない圧力が加わってしまい、その結果、状況次第では摩擦クラッチがいくらか操作されてしまう。このようにして、スレーブシリンダピストンの変位つまりはマスタシリンダピストンの対応する変位に関連づけられた、伝達すべきクラッチトルクの所定の特性曲線が変化してしまう。マスタシリンダピストンの変位自体は、クラッチアクチュエータの制御に用いられ、この場合、マスタシリンダピストンを駆動するモータが相応に制御される。本発明の観点からすれば、これによって圧力ボリュームのハイドロリック区間が乱される。ここでは特性曲線のずれに対する尺度として特に、摩擦クラッチがトルクを伝達し始める接触点の評価が用いられる。その際に閾値を、例えば約5Nmとすることができる。
【0011】
第1の動作パラメータを形成するために、圧力導管内に温度センサを設けることができる。ただし、以下のような温度モデルを利用すれば、この種の温度センサを省略した構成として有利であると判明した。即ちこのモデルによれば、ハイドロスタティックシステムと接触状態にある複数の温度の重み付けられた平均値として、圧力導管の温度が算出されるのである。例えばそのような温度を、エンジンルーム温度、エンジン冷却水温度、及び/又は内燃機関もしくは自動車のドライブトレインの変速機の変速機温度とすることができる。このようにしてモデリングされた温度を求めるための個々の温度の重み付けは、個々の影響量つまりは個々の適用事例に依存し、それらに合わせて相応に整合される。圧力導管もしくは圧力ボリュームの温度Tの算出を、以下の式(1)に従って行うことができる:
【数1】
ただしTiは、内燃機関"Eng"内に設けられた、及び/又は、外気"Air"に接して設けられた、及び/又は変速機"Gearbox"内に設けられた、温度センサの個々の温度であり、Wiは、それらに対応する重み付け係数である。
【0012】
例えば、スニッファプロセスが適正に行われるたびに、その時点での圧力導管もしくは圧力媒体の圧力ボリュームのモデリングされた温度が記憶され、現時点で計算されたこの温度から、前回のスニッファプロセス以降の温度差が求められる。この温度差が規定の閾値を上回ったならば、圧力導管内における圧力媒体の体積が、温度判定基準に基づきスニッファプロセス実施の必要性が高まったとするのに十分に大きく変化したものと推定される。これに従い、必要に応じてスケールがいっそう高い段階に調節される。
【0013】
これに対する代案として、又は有利にはこれに加えて、スケールを形成する第2の動作パラメータを、圧力から形成することができ、又は前回実施されたスニッファプロセスに対する圧力変化から形成することができる。圧力の直接的な測定を、例えば圧力ボリューム内に設けられた圧力センサによって、じかに行うことができる。
【0014】
これに対する代案として、又は有利にはこれに加えて、第3のパラメータを、現時点で求められた接触点から形成することができ、又は前回求められた接触点又は摩擦クラッチのスニッファプロセスに対して形成することができる。この種の接触点情報をクラッチモデルから求めることができる。このクラッチモデルは、トルク、回転数、及び/又は圧力の値に基づき形成され、継続的に求められるセンサデータから、更新のための適切な情報を取得する。ハイドロスタティック区間に乱れが生じた場合、実際に伝達されるトルクは、現時点のマスタシリンダポジションについてクラッチモデルにおいて計算されたトルクとは異なる。したがって接触点のずれを、ハイドロスタティック区間における圧力ボリュームの変化から直接、読み取ることができる。スニッファプロセスの必要性を求める目的で例えば、スニッファが適正に行われた後、摩擦クラッチの接触点が記憶され、現時点の接触点を用いて、前回のスニッファ以降の接触点の差異が求められる。接触点変化が規定の閾値を上回っているならば、ハイドロスタティック区間に乱れが生じていると推定される。これに応じて、接触点判定基準に基づき、スニッファプロセスの優先順位をいっそう高めるスケールの段階に調節される。
【0015】
スニッファプロセスの優先順位づけのためのスケールの利用を、特に、それぞれ1つのハイドロスタティッククラッチアクチュエータにより操作される2つの摩擦クラッチを備えた、いわゆるツインクラッチ変速機において、有利に適用することができる。この場合、必要に応じてスニッファプロセスの実施を伴う、摩擦クラッチの信頼度判定のために、各摩擦クラッチごとに別個の多段階のスケールが設けられる。このような状況において有利であるのは、代案として又は付加的に、一方の摩擦クラッチの第4の動作パラメータを、他方の摩擦クラッチの、現時点で求められた接触点によって、又は前回の接触点取得以降の接触点変化によって、又は前回のスニッファプロセス以降の接触点変化によって形成することである。この場合、締結解除された摩擦クラッチにおいてスニッファプロセスを実施することができ、このプロセスにおいて、トルクを伝達している他方の摩擦クラッチについて現時点で求められた接触点の値が、第4の動作パラメータとして使用される。
【0016】
その際、両方のクラッチアクチュエータが互いに隣り合って配置されていて、一方の摩擦クラッチのハイドロスタティック区間の乱れを生じさせることになる周囲の影響が、他方の摩擦クラッチのハイドロスタティック区間にも、少なくとも類似したかたちで及ぼされる場合、一方の摩擦クラッチの接触点のずれから、他方の摩擦クラッチのハイドロスタティック区間に乱れが発生したと推定することができる。典型的には、モデルベースの接触点適応化は、特定のクラッチアクチュエータのみにおいて行われ、例えばスレーブシリンダによっても1つの摩擦クラッチが意図した通りに操作されない場合に行われ、これはツインクラッチ変速機の動作中、摩擦クラッチ双方で交互に発生することが多い。この理由から、現時点で適合化されている摩擦クラッチの接触点のずれによって、適合化されていない摩擦クラッチ即ち現時点でスニッファプロセスが実施される摩擦クラッチにおけるスニッファの必要性も指示する。この種の情報を第4の動作パラメータとして利用する目的で、例えば一方の摩擦クラッチの接触点をスニッファプロセス中に記憶することができ、これに関連させて、一方の摩擦クラッチの接触点変化を、他方の摩擦クラッチの接触点変化に対する推定として利用することができる。他方の摩擦クラッチの接触点変化から推定された接触点が規定の閾値を上回ったならば、スニッファプロセスに対する必要性が高まったものと識別されて、対応する摩擦クラッチのためのスケールの段階がそれに応じて変更される。
【0017】
摩擦クラッチの確実な制御にそのつど必要とされる、スレーブシリンダポジションの信頼性、及び信頼性に欠けているときに明らかにされるスニッファプロセス実施の必要性のために、信頼性が最小であることつまりは最大のスニッファ必要性が要求されていることが、スケールの適切な形成によってそのつど選定される。
【0018】
次に、図1及び図2に示された実施例に基づき本発明について詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】摩擦クラッチにより伝達されるクラッチトルクとマスタシリンダピストンの変位との関係を示す図
図2】マスタシリンダとスレーブシリンダの間のハイドロリック区間における変化と、クラッチトルクとの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には、ハイドロスタティッククラッチアクチュエータにより摩擦クラッチを操作するハイドロスタティックシステムのハイドロリック区間における圧力pが、2つの部分に分けられたグラフとして示されている。この場合、所定の圧力体積の圧力媒体で充填されておりスレーブシリンダが接続されているハイドロスタティック区間の圧力pを変化させるために、ハイドロスタティッククラッチアクチュエータのモータが制御されて、マスタシリンダのピストンの位置が動かされる。これによればスレーブシリンダのピストンの位置が、マスタシリンダにより形成された圧力pに応じて動かされ、このピストンによって摩擦クラッチがその構造形式に従い操作経路に沿って、ここでは押圧閉鎖式摩擦クラッチの締結経路に沿って、締結又は締結解除される。このようにして、マスタシリンダピストン変位SGに対する圧力pの曲線2における変位点SGXごとに、摩擦クラッチのクラッチトルクMRKに対する圧力pの曲線3に従って、所定のクラッチトルクMRKxを伝達可能である。ただし、例えば温度が変化するなどして、ハイドロスタティック区間における圧力pが変化すると、この対応関係が乱される。ハイドロリック区間のこのような乱れが検出された場合には、マスタシリンダピストン変位SGと、圧力pに対するクラッチトルクMRKとの本来の対応づけが再び形成されるように、ハイドロスタティック区間と無圧のリザーブタンクとが連通して圧力補償が行われる変位範囲ΔSsが、マスタシリンダにおいて設定される。ハイドロスタティック区間と無圧のリザーブタンクとが連通して圧力補償が行われるプロセスを、スニッファプロセスと称する。スニッファプロセスを実施するためには、摩擦クラッチが締結解除状態になければならず、さらに時間が必要とされる。状況によっては、摩擦クラッチ操作のために必要とされる後段の変速機の切替動作が遅延し、スニッファプロセスが頻繁に行われると、乗り心地が悪くなる可能性がある。それゆえ、クラッチトルクMRKとマスタシリンダピストン変位SGとの図示の対応関係の品質を損なうことなく、スニッファプロセスの回数を減らす方法が適用される。このため、摩擦クラッチ操作の信頼度を表す多段階のスケールが設けられる。このスケールの各段階は、ハイドロスタティック区間における温度と、生じている圧力と、接触点変化に関する情報とによって形成され、スニッファプロセスがどれだけ緊急であるのかの判定のベースとなる信頼度を表している。緊急度に応じて、スニッファプロセスがただちに実施されるし、遅れて実施される。
【0021】
図2には、マスタシリンダピストン変位SGに対するクラッチトルクMRKを表すクラッチ特性曲線5,6の乱れの影響を描いたグラフ4が示されている。特性曲線5は、制御装置に格納された適応化可能なクラッチモデルに基づき、マスタシリンダピストン変位SGに対するクラッチトルクMRKの関係を、現時点で適応化されている接触点TPMとともに表している。特性曲線6は、例えばハイドロリック区間が温度変化により乱された場合の、マスタシリンダピストン変位SGに対するクラッチトルクMRKの関係を表している。この場合、スレーブシリンダにいっそう高い圧力が加わって、ハイドロリック区間において圧力状態が変化することによって、クラッチモデルの接触点TPMが実際の接触点TPRにずらされている。したがって、その他の点では同じ条件であれば、マスタシリンダピストン変位SGXがセットされたときに、矢印7に対応するトルク差が調節されるように、特性曲線5,6が互いにずらされる。接触点TPM,TPR、ハイドロリック区間における温度変化及び圧力を実際に求めて比較することにより、スニッファプロセスの必要性を表す信頼度を設定することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 グラフ
2 曲線
3 曲線
4 グラフ
5 特性曲線
6 特性曲線
7 双方向矢印
RK クラッチトルク
RKx クラッチトルク
P 圧力
G マスタシリンダピストン変位
Gx 変位点
TPM 接触点
TPR 接触点
ΔSs 変位範囲
図1
図2