特許第6335915号(P6335915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335915プレグネノロンの3−(4’−置換)−ベンジル−エーテル誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335915
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】プレグネノロンの3−(4’−置換)−ベンジル−エーテル誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07J 7/00 20060101AFI20180521BHJP
   A61K 31/57 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 39/02 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 25/30 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 13/10 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 27/06 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180521BHJP
   A61P 1/06 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C07J7/00CSP
   A61K31/57
   A61P25/00
   A61P25/28
   A61P3/00
   A61P39/02
   A61P25/30
   A61P1/00
   A61P13/10
   A61P1/16
   A61P29/00
   A61P9/00
   A61P13/12
   A61P27/06
   A61P35/00
   A61P19/10
   A61P3/04
   A61P37/06
   A61P29/02
   A61P25/04
   A61P15/08
   A61P17/00
   A61P43/00 105
   A61P1/06
【請求項の数】12
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-544455(P2015-544455)
(86)(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公表番号】特表2016-501871(P2016-501871A)
(43)【公表日】2016年1月21日
(86)【国際出願番号】EP2013074886
(87)【国際公開番号】WO2014083068
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年11月17日
(31)【優先権主張番号】12194704.8
(32)【優先日】2012年11月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】310007173
【氏名又は名称】アリエノール ファルマ
(73)【特許権者】
【識別番号】514058706
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ボルドー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ピアッツァ,ピエル・ヴィンチェンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレ,モニーク
(72)【発明者】
【氏名】フェルパン,フランソワ−グザヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】ルヴェスト,ジャン−ミシェル
(72)【発明者】
【氏名】ファーブル,サンディ
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0143347(US,A1)
【文献】 米国特許第07960553(US,B1)
【文献】 SHI,B. et al,OSW Saponins: Facile Synthesis toward a New Type of Structures with Potent Antitumor Activities,Journal of Organic Chemistry,2005年,Vol.70, No.25,p.10354-10367
【文献】 POZZI,D. et al,A Mild Radical Procedure for the Reduction of B-Alkylcatecholboranes to Alkanes,Journal of the American Chemical Society,2005年,Vol.127, No.41,p.14204-14205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化31】

[式中:
は:
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
CN、
NO
アミノ、
COOH、
COOCH
OH、

又は
ハロゲンであり、
は:
H、
OH、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−C6アルケニル、
ハロゲン、
Bn−O−、
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、CN、NO、アミノ、COOH若しくはハロゲンで場合により置換されているBn−、又は
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、CN、NO、アミノ、COOH若しくはハロゲンで場合により置換されているPh−である]
で示される化合物又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
がα位にある、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、OH、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、メチルカルボキシ、シアノ又はハロゲンである、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
が、OH、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチルカルボキシ、Cl、Br、F又はシアノである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
が、H、OH、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、C2−6アルケニル又はBnである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
が、H、OH、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アリル又はBnである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ヒドロキシ−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ヒドロキシ−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エチルベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
17−ヒドロキシ−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
17−ヒドロキシ−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−フルオロベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
17−メチル−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エチルベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−メトキシベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
17−メチル−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−フルオロベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−17−エチル−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−エチル−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−エチル−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−エチル−プレグネノロン、
3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
17−メトキシ−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エチルベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
17−メトキシ−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
17−メトキシ−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−フルオロベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−エトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−エトキシ−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−エトキシ−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−エトキシ−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−エトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−クロロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−シアノベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−エトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−クロロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロン又は
17−ベンジル−3−(p−シアノベンジルオキシ)−プレグネノロンである、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−17α−メチル−プレグネノロン、17−ベンジル−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、及び3−(p−シアノベンジルオキシ)−プレグネノロンからなる群より選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容しうる塩及び薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の式Iで示される化合物を製造する方法であって、
式III:
【化32】

[式中、Rは請求項1で定義した通りである]で示される化合物を、式IV:
【化33】

[式中、Rは請求項1で定義した通りである]で示される化合物と、メチルトリフラート及び不均一系酸捕捉剤の存在下で反応させること、又は
式V:
【化34】

[式中、Rは請求項1で定義した通りである]で示される化合物と、不均一系酸捕捉剤の存在下で反応させることを含む、方法。
【請求項11】
人体又は動物体の病状を処置するための医薬組成物の製造のための、請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物又はその薬学的に許容しうる塩の使用
【請求項12】
前記病状が、精神及び神経疾患;神経変性疾患;代謝障害;中毒症、依存症、乱用再発及び関連疾患;膀胱及び胃腸疾患;脂肪症などの肝疾患;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変;アルコール性脂肪症;炎症性疾患;心臓血管疾患;腎障害;緑内障;痙縮;ガン;骨粗鬆症;肥満;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛又は繁殖障害、並びに皮膚炎症性疾患及び繊維性疾患からなる群より選択される、請求項11に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成神経刺激性ステロイドに関し、より詳細には、合成プレグネノロン誘導体、及び人体又は動物体を処置するための方法での合成プレグネノロン誘導体の使用に関する。
【0002】
発明の背景
副腎及び生殖腺で合成される種々のステロイドは、中枢神経系でニューロン興奮性をモジュレーションできる。これらの化合物について「神経刺激性ステロイド」という用語が造られ(Majewska et al., 1986)、脳がde novo合成できるものには「神経ステロイド」という用語が造られた(Baulieu, 1991)。
【0003】
ステロイドホルモンは、動物及びヒトにおいて鎮静性、麻酔性、抗痙攣性を有することが長く認められている(Aird, 1944; Aird and Gordan, 1951; Gyermek et al., 1967; Green et al., 1978)。過去20年間の研究により、プロゲステロン及びデオキシコルチコステロンが、それぞれ内因性神経ステロイドのアロプレグナノロン(5α−プレグナン−3α−オール−20−オン)及びTHDOC(5α−プレグナン−3α,21−ジオール−20−オン)の前駆体として働くことが明らかになった(Reddy, 2003; 2009a)。アンドロスタンジオール(5α−アンドロスタン−3α,17β−ジオール)及びエストラジオールなどのテストステロン誘導性アンドロゲンは神経ステロイドと考えることができる(Reddy, 2008)。一般的に、神経ステロイドの急性効果は、遺伝子転写をレギュレーションする古典的ステロイドホルモンレセプターとの相互作用とは無関係である。さらに、神経ステロイドは、細胞内ステロイドレセプターにおいてそれ自体では活性がない。神経ステロイドは、主にニューロン膜レセプター及びイオンチャネルと相互作用することで、もっぱらGABA−Aレセプターと相互作用することで、脳興奮性をモジュレーションする(Lambert et al., 2003; Reddy, 2003; Akk et al., 2009)。
【0004】
神経刺激性について記載されている(Paul and Purdy, 1992; Rupprecht, 1997)硫酸プレグネノロン、DHEA−S、エストラジオール、又はプロゲステロンなどの内因性ステロイドに加えて、様々なGタンパク質共役レセプター及びリガンド依存性イオンチャネルをモジュレーションするという内因性同等物(endogenous counterpart)の特徴を共有する合成ステロイドが近年開発されている(Gasior et al., 1999)。
【0005】
より優れた薬物動態及び効力を示す複数の合成神経ステロイドが、鎮静及び抗不安作用(ミナキソロン)、麻酔作用(アルファキサロン)及び抗てんかん(ガナキソロン)作用について評価されている。
【0006】
しかし、神経刺激性ステロイドの多様なin vivo作用は、1つの神経伝達物質レセプターに特定して結合せずに複数に結合する天然及び合成ステロイドの特異性の欠如によるものである。前駆体とは異なる薬理学的特性を示す代謝物を有する神経刺激性ステロイドの代謝もまた、1つのステロイドが多様な作用を示す原因である。排他的なレセプター特異性を示す、又は代謝による副作用を回避する、天然又は合成ステロイドの誘導体はまだ開発されていない。
【0007】
発明の概要
天然ステロイドの中で、プレグネノロンによるin vivo効果を証明する研究は非常に少ないものの、これらの研究はこのステロイドの有益な役割を示している。プレグネノロンの投与が、ラット大脳皮質及び海馬において穿通性病変後の神経膠組織の生成を減少させることが分かった(Garcia-Estrada et al., 1999)。プレグネノロンは、海馬細胞株(HT−22)の培養でグルタミン酸及びタンパク質βアミロイドによって誘導される毒性を防ぐことが判明した(Gursoy et al., 2001)。さらに、プレグネノロンは、記憶力を高めることも示唆されている(Mathis et al., 1994)。しかし、プレグネノロンのこれらの効果は、伝統的には、それ自体は下流活性ステロイドの不活性前駆体と考えられるプレグネノロンの下流代謝物によるものであるとされている。したがって、プレグネノロンは、GABAレセプター及び興奮性アミノ酸レセプターである神経刺激性ステロイドの主要なターゲットに影響がない。
【0008】
近年、本発明者らは、プレグネノロンが、オルソステリックアンタゴニスト及び他の神経刺激性ステロイドとは異なる薬理学的特性を有するヒトCB1レセプターの阻害剤として働くことを示したが、これは、プレグネノロンはCB1のオルソステリックアンタゴニスト及び他の神経刺激性ステロイドより非特異的で望ましくない作用が少ないことを表している(WO2012/160006に基づき公開された特許出願第PCT/EP2012/059310号; Vallee et al., 2013)。
【0009】
プレグネノロンが脳及び他の器官でのステロイド合成の第一段階であることを考慮すれば、プレグネノロンは合成神経刺激性ステロイドの誘導元とするのに良好なターゲットとは考えられない。
【0010】
実際、このようなプレグネノロン誘導体は、代謝されるリスクが高い。生成された代謝物は、それらの前駆体とは異なる薬理学的特性を示し、副作用を引き起こすかもしれない。
【0011】
本発明者らは、3−ベンジルオキシ官能基(置換又は非置換)を含む、プレグネノロンから誘導された分子が、プロゲステロン活性、アンドロゲン活性、エストロゲン活性、及びグルココルチコイド活性を備える代謝物に変換されないことを見出した。従って、プレグネノロン代謝物に変換されないか、実質的に変換されないプレグネノロン誘導体を使用することで副作用が回避される。
【0012】
したがって、本発明は、式I
【化1】

[式中:
は:
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
CN、
NO
アミノ、
COOH、
COOCH
OH、

又は
ハロゲンであり、
は:
H、
OH、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−C6アルケニル、
ハロゲン、
Bn−O−
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、CN、NO、アミノ、COOH若しくはハロゲンで場合により置換されているBn−、又は
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、CN、NO、アミノ、COOH若しくはハロゲンで場合により置換されているPh−である]
で示される化合物又はその薬学的に許容しうる塩に関する。
【0013】
発明の詳細な説明
定義
「アゴニスト」という用語は、別の化合物又はレセプター部位の活性を高める化合物を指す。
【0014】
「アンタゴニスト」及び「阻害剤」という用語は、レセプター部位で別の化合物の活性を低減又は阻止する化合物を指し、より一般的には、レセプターの活性化及び/又は活性を低減又は阻止する化合物を指す。
【0015】
「処置又は処置する」という用語は、治療処置、及びターゲットの病的状態又は疾患を予防又は遅らせることを目的とした予防策(prophylactic measure)又は防止策(preventive measure)の双方を指す。処置を必要とするものには、既に疾患を有するもの、疾患に罹りやすいもの、又は疾患を予防すべきものが含まれる。そのため、本明細書においては、処置されるべき被験体は、疾患を有すると診断されていてもよく、又は疾患に罹りやすい体質であるか、若しくは罹りやすくてもよい。
【0016】
本明細書において使用される場合、「被験体」という用語は、げっ歯類、ネコ科動物、イヌ科動物、霊長類などの哺乳動物を意味する。好ましくは、本発明による被験体はヒトである。
【0017】
「治療上有効な量」は、被験体に治療効果又は予防効果を与えるのに必要な活性剤の最低限量を意味する。例えば、哺乳動物に対する「治療上有効な量」は、病的症状、疾患進行、又は疾患を患うことに関与若しくは抵抗する生理学的状態の改善を誘導するか、向上させるか、又はその他の方法で引き起こすような量である。
【0018】
「アルキル」は、炭素及び水素原子のみからなる一価の直鎖又は分岐鎖飽和炭化水素部分を意味する。C1−8アルキルは、1〜8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖アルキルを意味する。
【0019】
「アルコキシ」は、式−OR[式中、Rは、本明細書中で定義するようなアルキル部分である]の部分を意味する。
【0020】
本明細書において使用される「アルケニル」という用語は、炭素間二重結合を少なくとも1つ有する不飽和直鎖又は分岐鎖脂肪族炭化水素を示す。「C2−6アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を備えた炭素原子2〜6個の直鎖又は分枝鎖を表わす。
【0021】
「ハロゲン」という用語は、単独で又は他の基と組み合わせて、クロロ(Cl)、ヨード(I)、フルオロ(F)及びブロモ(Br)を表わす。
【0022】
「シアノ」という用語は、単独で又は他の基と組み合わせて、−CN基を表わす。
【0023】
「ヒドロキシル」という用語は、単独で又は他の基と組み合わせて、−OH基を表わす。
【0024】
「ニトロ」という用語は、単独で又は他の基と組み合わせて、−NO基を表わす。
【0025】
「カルボキシル」という用語は、単独で又は他の基と組み合わせて、−COOH基を表わす。
【0026】
「アミノ」は、式−NRR’[式中、R及びR’はそれぞれ独立して、水素、又は本明細書中で定義するようなアルキルである]の部分を意味する。
【0027】
略語Bnは、ベンジル基を指す。
【0028】
略語Phは、フェニル基を指す。
【0029】
「薬学的に許容しうる塩」という用語は、過度の毒性、刺激性、アレルギー反応などがない、ヒト及び動物の組織との接触使用に適した塩を指す。適切な塩の例として、カリウム、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩が挙げられ、無機酸及び有機酸との酸付加塩には、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、硫酸、クエン酸、ギ酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酢酸、コハク酸、ヘミコハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などがあるが、これらに限定されない。
【0030】
分子の平面より上の置換基は実線
【化2】

として示され、βと記載し;平面より下のものは破線
【化3】

で示し、αと記載する。
【0031】
本発明の化合物
一般式:
本発明は、式I:
【化4】

[式中:
は:
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
CN、
NO
アミノ、
COOH、
COOCH
OH、

又は
ハロゲンであり、
は:
H、
OH、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−C6アルケニル、
ハロゲン、
Bn−O−
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、CN、NO、アミノ、COOH若しくはハロゲンで場合により置換されているBn−、又は
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、CN、NO、アミノ、COOH若しくはハロゲンで場合により置換されているPh−である]
で示される化合物又はその薬学的に許容しうる塩に関する。
【0032】
1つの好ましい実施形態では、はα位にある。
【0033】
この実施形態では、本発明の化合物は、式II:
【化5】

[式中:
は:
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
CN、
NO
アミノ、
COOH、
COOCH
OH、

又は
ハロゲンであり、
は:
H、
OH、
C1−8アルキル、
C1−8アルコキシ、
C2−C6アルケニル、
ハロゲン、
Bn−O−
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、CN、NO、アミノ、COOH若しくはハロゲンで場合により置換されているBn−、又は
C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、CN、NO、アミノ、COOH若しくはハロゲンで場合により置換されているPh−である]
を有する。
【0034】
一つの好ましい実施形態では、は、OH、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、又はハロゲン、より好ましくは、は、OH、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチルカルボキシ、Cl、Br、F又はシアノである。
【0035】
一つの好ましい実施形態では、は、H、OH、C1−8アルキル、C1−8アルコキシ、C1−8アルケニル又はBn、より好ましくは、は、H、OH、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、アリル又はBnである。
【0036】
より好ましくは、本発明の化合物は:
3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−プレグネノロン、
【0037】
17−ヒドロキシ−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ヒドロキシ−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エチルベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
17−ヒドロキシ−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
17−ヒドロキシ−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−フルオロベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−ヒドロキシ−プレグネノロン、
【0038】
3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
17−メチル−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エチルベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−メトキシベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
17−メチル−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−フルオロベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−メチル−プレグネノロン、
【0039】
17−エチル−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−17−エチル−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エチル−3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−エチル−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−エチル−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−エチル−プレグネノロン、
【0040】
3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
17−メトキシ−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エチルベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
17−メトキシ−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−エトキシベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
17−メトキシ−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−フルオロベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−メトキシ−プレグネノロン、
【0041】
17−エトキシ−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−エトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−エトキシ−3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
3−(p−クロロベンジルオキシ)−17−エトキシ−プレグネノロン、
3−(p−ブロモベンジルオキシ)−17−エトキシ−プレグネノロン、
3−(p−シアノベンジルオキシ)−17−エトキシ−プレグネノロン、
【0042】
17−アリル−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−エトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−クロロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−アリル−3−(p−シアノベンジルオキシ)−プレグネノロン、
【0043】
17−ベンジル−3−(p−ヒドロキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−エチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−エトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−クロロベンジルオキシ)−プレグネノロン、
17−ベンジル−3−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロン、又は
17−ベンジル−3−(p−シアノベンジルオキシ)−プレグネノロンである。
【0044】
本発明の好ましい化合物は、3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−17α−メチル−プレグネノロン、17−ベンジル−3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−メチルベンジルオキシ)−プレグネノロン、3−(p−フルオロベンジルオキシ)−プレグネノロン、及び3−(p−シアノベンジルオキシ)−プレグネノロンからなる群より選択される。
【0045】
本発明の好ましい化合物は、3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−17α−メチル−プレグネノロンである。
【0046】
本発明はまた、本発明の化合物又はその薬学的塩及び薬学的に許容しうる担体を含む医薬組成物に関する。
【0047】
製造の方法
本発明はまた、本発明の化合物を製造する方法に関し、式III:
【化6】

[式中、は上記で定義した通りである]で示される化合物を、式IV:
【化7】

[式中、は上記で定義した通りである]で示される化合物と、不均一系酸捕捉剤(heterogeneous acid scavenger)及びメチルトリフラートの存在下で反応させるか、式V
【化8】

[式中、は上記で定義した通りである]で示される化合物と、不均一系酸捕捉剤の存在下で反応させることを含む。
【0048】
式Vで示される化合物の場合、OTf基のおかげで、メチルトリフラートの存在は必要とされない。
【0049】
一実施形態では、本発明の化合物を製造する方法は、式III:
【化9】

[式中、は上記で定義した通りである]で示される化合物を、式IV:
【化10】

[式中、は上記で定義した通りである]で示される化合物と、不均一系酸捕捉剤及びメチルトリフラートの存在下で反応させることを含む。
【0050】
別の実施形態では、本発明の化合物を製造する方法は、式III:
【化11】

[式中、は上記で定義した通りである]で示される化合物を、式V:
【化12】

[式中、は上記で定義した通りである]で示される化合物と、不均一系酸捕捉剤の存在下で反応させることを含む。
【0051】
好ましくは、この反応の溶媒は、トリフルオロトルエン又はトルエンなどの芳香族溶媒である。
【0052】
好ましくは、不均一系酸捕捉剤は炭酸カリウム又は酸化マグネシウムである。
【0053】
式IIIで示される化合物の合成のための方法は先行技術に詳しく記載されている(Glazier E.R., 1962, Marshall et al., 1948, Jones et al., 1965)。
【0054】
例えば、式III[式中、は、アルキル、−アリル、−ベンジル又は−アリールである]で示される化合物の合成は、プレグネノロンをAcOと反応させ、エノールアセタートを形成することで行うことができる。その後、エノールアセタートをグリニャール試薬と反応させてエノラートを生成させ、次いでハロゲノ−でトラップさせる。
【0055】
さらに、例えば、式III[式中、は、アルコキシ、ベンジルオキシ又はアリールオキシである]で示される化合物の合成は、Cu2+の存在下で、プレグネノロンを対応するアルコールと反応させることで行うことができる。
【0056】
処置の方法
本発明はまた、人体又は動物体を処置するための方法で使用するための上記で定義する本発明の化合物又はその薬学的に許容しうる塩に関する。
【0057】
本発明はまた、必要とする被験体に上記で定義する本発明の化合物又はその薬学的に許容しうる塩の有効量を投与することを含む、前記被験体の病状又は疾患の処置のための方法に関する。
【0058】
本発明の化合物で処置され得る病状は、プレグネノロンにより処置され得るもの、例えば、CB1レセプターの阻害剤としての作用のため、プレグネノロンにより処置され得る病状である。
【0059】
そのような病状の例として、精神及び神経疾患;神経変性疾患;代謝障害;中毒症、依存症、乱用再発及び関連疾患;膀胱及び胃腸疾患;脂肪症などの肝疾患;非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変;アルコール性脂肪症;炎症性疾患;心臓血管疾患;腎障害;緑内障;痙縮;ガン;骨粗鬆症;肥満;自己免疫性肝炎及び脳炎;疼痛又は繁殖障害、並びに皮膚炎症性疾患及び繊維性疾患が挙げられる。
【0060】
本発明はまた、上記病状のいずれかを処置するための薬品を調製するための本発明の化合物又はその薬学的に許容しうる塩の使用に関する。
【0061】
以下の図面及び実施例により本発明をさらに説明する。しかし、これらの実施例及び図面は、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【0062】
実施例
A. プレグネノロン誘導体の合成の例:
プレグネノロンは周知で市販されているステロイド(CAS番号145−13−1)である。
【0063】
以下に示すように、プレグネノロンは、その誘導体の合成の前駆体として使用できる。
【0064】
1. C17において置換されたプレグネノロン誘導体の合成
まず、プレグネノロンをC17において置換する。
【0065】
C17がRで置換されたプレグネノロン誘導体の合成の例:
以下に示すように、C17位においてアルキル、アリル又はアリールで置換したプレグネノロンを合成するために、第1の工程では、プレグネノロンをAcOと反応させることにより対応するエノールアセタートを形成する。その後、エノールアセタートを、THF中のMeMgBrなどのグリニャール試薬と反応させてエノラートを生成し、次いで求電子剤でトラップさせる。求電子剤は、好ましくはR−ヨード−又はR−ブロモ[式中、Rは、アルキル、−アリル、−ベンジル又は−アリールである]である。
【0066】
【化13】
【0067】
エノールアセタート中間体の合成の例
以下に示すように、p−トルエンスルホン酸一水和物(1.12g;5.9mmol;0,93当量)を、プレグネノロン(2g;6.3mmol;1当量)の無水酢酸(230ml)溶液に加えた。反応媒体を還流下で5時間撹拌し、無水酢酸をゆっくり蒸留した。20℃まで放冷し、反応媒体を砕氷に入れ、混合物をジエチルエーテルで抽出する。有機層を飽和NaCO水溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、その後減圧下で蒸発させた。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(100/0から90/10))により精製し、白色固体としてプレグネノロンエノールアセタート(2.2g;85%)を得た。
【0068】
【化14】
【0069】
17α−メチル−プレグネノロンの合成の例
以下に示すように、MeMgBr(EtO中3M;25ml;75mmol;10当量)を、プレグネノロンエノールアセタート(3g;7.5mmol;1当量)の無水THF(65ml)溶液に加えた。反応媒体を還流下で1時間撹拌し、次いで20℃まで放冷した。CHI(4.6ml;75mmol;10当量)を加え、反応媒体を還流下で撹拌した。CHIの添加を40当量になるまで45分おきに繰り返した。20℃まで冷却した後、NHClの水溶液を加え、その後混合物を酢酸エチルで抽出する。有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、次に減圧下で蒸発させた。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(75/25))により精製し、白色固体として17α−メチル−プレグネノロン(600mg;25%)を得た。
【0070】
【化15】
【0071】
C17が−ORで置換されたプレグネノロン誘導体の合成の例
C17位においてアルコキシ−、ベンジルオキシ−又はアリールオキシ−で置換されたプレグネノロンを合成するために、Cu2+の存在下で、プレグネノロンを対応するアルコール(R−OH)と反応させる。
【0072】
【化16】
【0073】
17−メトキシ−プレグネノロンの合成の例:
以下に示すように、CuBr(4.05g;18.13mmol;1.9当量)を、プレグネノロン(3g;9.48mmol;1当量)のメタノール(360ml)懸濁液に加えた。反応媒体を還流下で24時間撹拌し、その後減圧下で蒸発させた。残渣をジクロロメタン及び水中で溶解した。有機層を塩水で洗浄し、NaSOで乾燥し、その後減圧下で濃縮した。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(80/20))により精製し、次いで再結晶(アセトン)させることで、白色固体として17−メトキシ−プレグネノロン(510mg;15%)を得た。
【0074】
【化17】
【0075】
2. 式IVで示される化合物の合成
式IVで示される化合物のいくつかは、例えば、2−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−メチルキノリン(methylquinoleine)のように市販されているかもしれない。
【0076】
式IVで示される化合物はまた、下記のスキームに従い、18−クラウン−6及びKOHの存在下で2−クロロ−4−メチルキノリン及びパラ置換ベンジルアルコールを反応させることにより合成してもよい。
【0077】
【化18】
【0078】
2−(p−メチルベンジルオキシ)−4−メチルキノリンの合成の例
以下に示すように、2−クロロ−4−メチルキノリン−(500mg;2.8mmol;1当量)の無水トルエン(10ml)溶液に、4−メチルベンジルアルコール(409mg、3.35mmol;1.25当量)、KOH(630mg;11.2mmol;4.0当量)、続いて18−クラウン−6(45mg、0.16mmol、0.06当量)を連続的に加えた。反応媒体は、ディーン・スターク・トラップを用いて、還流下で1.5時間加熱した。その後、反応媒体を室温まで冷却し、次に水を加え、生成物をAcOEtで抽出した。有機相を乾燥し(NaSO)、その後真空下で蒸発させる。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(95/5))により精製し、無色の油状物として2−(p−メチルベンジルオキシ)−4−メチルキノリン(660mg;89%)を得た。
【0079】
【化19】
【0080】
3. 式Vで示される化合物の合成
式Vで示される化合物は、下記のスキームに従い、まず、18−クラウン−6及びKOH又はt−BuOKの存在下で、2−クロロピリジンとパラ置換ベンジルアルコールを反応させ;次に、得られた生成物をメチルトリフラートと反応させて塩形成を行う、2工程で合成してもよい。
【0081】
【化20】
【0082】
2−(p−ブロモベンジルオキシ)−1−メチルピリジニウムトリフラートの合成の例:
以下に示すように、2−クロロピリジン(0.9ml;9.6mmol;1.2当量)の無水トルエン(16ml)溶液に、4−ブロモベンジルアルコール(1.5g、8.0mmol;1当量)、KOH(1.35g;24mmol;3.0当量)、続いて18−クラウン−6(105mg、0.4mmol、0.05当量)を連続的に加えた。反応媒体は、ディーン・スターク・トラップを用いて、還流下で1時間撹拌した。反応媒体を室温まで冷却し、次に水を加え、生成物をAcOEtで抽出した。有機相を乾燥し(NaSO)、次に真空下で蒸発させる。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(9/1))により精製し、無色の油状物として2−(p−ブロモベンジルオキシ)−ピリジン(2g;78%)を得た。
【0083】
第2の工程については、メチルトリフラートすなわちMeOTf(450μL;3.97mmol;1.05当量)を、2−(p−ブロモベンジルオキシ)−ピリジン(1g;3.7mmol;1当量)の冷溶液に加えた。反応媒体を室温で2時間撹拌し、次いで真空下で蒸発し、白色固体として2−(p−ブロモベンジルオキシ)−1−メチルピリジニウムトリフラート(1.6g)を定量的に得た。
【0084】
【化21】
【0085】
2−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−1−メチルピリジニウムトリフラートの合成の例:
以下に示すように、2−クロロピリジン(1.13ml;12.0mmol;1.0当量)の無水ジオキサン(48ml)溶液に、4−メチルカルボキシ−ベンジルアルコール(1.5g、8.0mmol;1当量)及びt−BuOK(2g;18mmol;1.5当量)を連続的に加えた。反応媒体を還流下で16時間加熱した。反応媒体を室温まで冷却し、次いで水を加え、生成物をAcOEtで抽出した。有機相を乾燥し(NaSO)、次に真空下で蒸発させる。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(96/4))により精製し、無色の油状物として2−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−ピリジン(1.13g;39%)を得た。
【0086】
第2の工程については、MeOTf(293μL;2.59mmol;1.05当量)を、2−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−ピリジン(600mg;2.46mmol;1当量)の冷溶液に加えた。反応媒体を室温で2時間撹拌し、次いで真空下で蒸発し、白色固体として2−(p−メチルカルボキシベンジルオキシ)−1−メチルピリジニウムトリフラート(0.9g)を定量的に得た。
【0087】
【化22】
【0088】
4. C3がパラ置換ベンジルオキシで置換されたプレグネノロン誘導体の合成
プレグネノロン又はC17に適切な基を有するプレグネノロン誘導体から出発し、プレグネノロン又はプレグネノロン誘導体を、アルコールのベンジル化の公知の方法(Poon KWC. et al. 2006, Giannis et al., 2009, Nwoye, E. O et al., 2007)に従い、下記のように、C3においてOBn−基で置換する。
【0089】
【化23】

又は
【化24】
【0090】
プレグネノロンのベンジル化の例
以下に示すように、MgO(46mg;1.14mmol;2当量)及び2−ベンジルオキシ−1−メチルピリジニウムトリフラート(400mg;1.14mmol;2.0当量)を、プレグネノロン(181mg;0.57mmol;1当量)のトリフルオロトルエン(4ml)溶液に加えた。反応媒体を85℃で一晩撹拌し、その後セライトでろ過し、減圧下で蒸発させた。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(95/5))により精製し、白色固体として3β−ベンジルオキシ−プレグネノロン(0.16g;70%)を得た。
【0091】
【化25】
【0092】
17α−ベンジルプレグネノロンのベンジル化の例
以下に示すように、MgO(116mg;2.42mmol;2.0当量)及び2−ベンジルオキシメチルピリジニウムトリフラート(1g;2.86mmol;2.0当量)を、17α−ベンジルプレグネノロン(580mg;1.43mmol;1当量)のトリフルオロトルエン(15ml)溶液に加えた。反応媒体を85℃で一晩撹拌し、その後セライトでろ過し、減圧下で蒸発させた。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(95/5))により精製し、白色固体として3β−ベンジルオキシ−17α−ベンジル−プレグネノロン(300mg;42%)を得た。
【0093】
【化26】
【0094】
3β−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロンの合成の例
以下に示すように、プレグネノロン(477mg;1.51mmol;1当量)の無水α,α,α−トリフルオロトルエン(9mL)溶液に、MgO(121mg;3.02mmol;2.0当量)、次いで2−(p−ブロモベンジルオキシ)−1−メチルピリジニウムトリフラート(1.29g;3.02mmol;2.0当量)を加えた。反応媒体を100℃で20時間撹拌し、その後セライトでろ過した。水を加え、生成物をAcOEtで抽出する。有機相を乾燥し(NaSO)、次に真空下で蒸発させる。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(96/4))により精製し、次いでアセトンで粉状にし、白色固体として3β−(p−ブロモベンジルオキシ)−プレグネノロン(375mg;49%)を得た。
【0095】
【化27】
【0096】
3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロンの合成の例:
以下に示すように、プレグネノロン(250mg;0.79mmol;1当量)の無水トルエン溶液に、MgO(63mg;1.58mmol;2.0当量)、2−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−メチルキノリン(441mg;1.58mmol;2.0当量)及びメチルトリフラート(MeOTf)(180μl;1.58mmol;2当量)を連続的に加えた。反応媒体を60℃で20時間撹拌し、その後セライトでろ過した。水を加え、生成物をAcOEtで抽出する。有機相を乾燥し(NaSO)、次に真空下で蒸発させる。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(9/1))により精製し、白色固体として3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−プレグネノロン(160mg;43%)を得た。
【0097】
【化28】
【0098】
3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−17α−メチル−プレグネノロンの合成の例:
17α−メチル−プレグネノロンを上記のように合成した。
【0099】
17α−メチル−プレグネノロン(170mg;0.5mmol;1当量)の無水トルエン溶液に、MgO(40mg;1mmol;2当量)、2−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−メチルキノリン(290mg;1mmol;2当量)及びメチルトリフラート(MeOTf)(0.11ml;1mmol;2当量)を連続的に加えた。反応媒体を85℃で一晩撹拌し、その後セライトでろ過した。水を加え、生成物をAcOEtで抽出する。有機相を乾燥し(NaSO)、次に真空下で蒸発させる。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(1/0から95/5))により精製し、アセトンで粉状にし、白色固体として3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−17α−メチル−プレグネノロン(80mg;35%)を得た。
【0100】
【化29】
【0101】
3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−17α−ベンジル−プレグネノロンの合成の例
17α−ベンジル−プレグネノロンを上記のように合成した。
【0102】
17α−ベンジル−プレグネノロン(1.9g;4.66mmol;1当量)の無水トルエン(45ml)溶液に、MgO(373mg;9.3mmol;2当量)、2−(4−メトキシベンジルオキシ)−4−メチルキノリン(2.6g;9.33mmol;2当量)及びメチルトリフラート(MeOTf)(1.06ml;9.33mmol;2当量)を連続的に加えた。反応媒体を40℃で一晩撹拌し、その後セライトでろ過した。水を加え、生成物をAcOEtで抽出する。有機相を乾燥し(NaSO)、次に真空下で蒸発させる。残渣は、シリカゲルのクロマトグラフィー(溶離液:シクロヘキサン/AcOEt(9/1))により精製し、アセトンで粉状にし、白色固体として3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−17α−ベンジル−プレグネノロン(1.18g;49%)を得た。
【0103】
【化30】
【0104】
B. プレグネノロン誘導体のプレグネノロンから誘導される他の活性ステロイドに変換されない能力
材料及び方法
代謝のin vitro試験
一方、培養中にプレグネノロンを代謝する酵素を発現する任意の細胞株に化合物を投与し、その後GC/MSにより細胞内又は細胞培地上のプレグネノロンの代謝物の量を測定し、これらの濃度を、賦形剤又はプレグネノロンのみが接種された細胞培養中の代謝物と比較することもできる。
【0105】
この例では、CHO細胞株を使用した。卵巣由来のこれらの細胞は、プレグネノロンを下流ステロイドに代謝するために必要とされる酵素をすべて有する。
【0106】
CHO培地中のアロプレグナノロン(ALLO)、エピアロプレグナノロン(EPIALLO)、プレグネノロン(PREG)、DHEA、及びテストステロン(TESTO)の量をGC/MSによって測定した。
【0107】
結果:
in vitroでの下流活性ステロイドへの変換が制限されるプレグネノロン誘導体
本発明者らは、CHO細胞におけるin vitro試験を用いてプレグネノロン誘導体の代謝を分析した。
【0108】
これらの細胞にプレグネノロン(1μM)を投与して48時間で、培地のアロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンが著しく増加した(表1)。
【0109】
【表1】
【0110】
C3がベンジルオキシで置換されたプレグネノロン誘導体をCHO細胞においてin vitro試験を用いて試験した。
【0111】
結果を下の表2に示す。結果は、プレグネノロンで処理したCHO細胞との変化率(%)として、又はpg/ml(0=検出限界未満の濃度)として表す。
【0112】
【表2】
【0113】
表2に示すように、化合物68の3β−(p−メトキシベンジルオキシ)−17α−メチル−プレグネノロンはプレグネノロンに代謝されず、化合物63及び41はプレグネノロンにほとんど代謝されない(代謝<1%)。
【0114】
3−ベンジルオキシ基(置換又は非置換)を含むプレグネノロン誘導体は、DHEA及びテストステロンへのプレグネノロン誘導体の検出可能な代謝を示さず、アロプレグナノロン及びエピアロプレグナノロンへのごく僅かな代謝を示す。
【0115】
これらの結果は、C3にOBn−R基が存在することで、プレグネノロン及びプレグネノロン代謝物、特にプレグネノロンが前駆体であり、プロゲステロン活性、アンドロゲン活性、エストロゲン活性、グルココルチコイド活性、又は神経調節特性を備える代謝物へのプレグネノロン誘導体の変換が回避されることを示している。
【0116】
参考文献
本出願全体にわたり、種々の参考文献により、本発明の属する分野の技術水準が記載されている。これらの参考文献の開示は、参照により本開示に組み込まれる。
【0117】
【表3】