【課題を解決するための手段】
【0021】
このために、本発明の主題は、
バイポーラ型リチウムイオン電池であって、
−一方が他方の頂部に積層され、各々がアノード、カソード及び電解質を含む、少なくとも第1及び第2の電気化学セルと、
−それの一面が、前記第1のセルのリチウム挿入材料で作られた前記アノードによって覆われ、対向表面が、前記第2のセルのリチウム挿入材料で作られた前記カソードによって覆われた少なくとも1つのバイポーラ電流コレクタであって、前記バイポーラコレクタが、それらの面の各々において、その周囲に、前記第1及び第2のセルの前記電界質に対して不浸透性の壁の周囲領域を形成し、それを囲む電気絶縁材料の少なくとも1つのビーズを含むバイポーラ電流コレクタと、
−それの一面が前記第1のセルの前記カソードによって覆われた、前記バイポーラコレクタに隣接する少なくとも1つの第1の電流コレクタであって、前記第1の隣接するコレクタがまた、その周囲に、前記第1のセルの電解質に対して不浸透性の壁の周囲領域も形成する電気絶縁材料の少なくとも1つのビーズを含む、第1の電流コレクタと、
−その一面が前記第2のセルの前記アノードによって覆われた、前記バイポーラコレクタに隣接する少なくとも1つの第2の電流コレクタであって、前記第2の隣接するコレクタがまた、その周囲に、前記第2のセルの電解質に対して不浸透性の壁の周囲領域も形成する電気絶縁材料の少なくとも1つのビーズを含む、第2の電流コレクタと、
を含む、バイポーラ型リチウムイオン電池である。
【0022】
本発明によれば、各不浸透性の壁は、その2つの主面の各々において、熱融着電気絶縁材料で作られる層又はシートで覆われたハニカムマトリクスで形成された少なくとも1つのビーズからなり、各層又はシートは、前記電流コレクタの一方に熱融着され、前記2つの層又はシートが共に接合するような方法で前記熱融着電気絶縁材料は前記ハニカムの胞を少なくとも部分的に充填する。
【0023】
ハニカムマトリクスは、好ましくは、熱融着条件下で流れない材料に基づく。好ましくは、マトリクスは、ポリマーで形成され、より好ましくは、ハニカムマトリクスは、ポリウレタンPU及びポリテトラフルオロエチレンPTFEから選択される材料を含む。有利には、ハニカムマトリクスは、ポリウレタン又はポリテトラフルオロエチレンで作られる。
【0024】
“熱融着材料”という表現は、本明細書及び本発明の文脈において、熱の作用下において典型的にはアルミニウムで作られる電流コレクタにハニカム構造体が溶接されることを可能にする材料を意味するものと理解される。
【0025】
本発明によるシーリング方法は、内部から電解質の外部へ及び外部から大気の内部への両方において、信頼性をもってバイポーラ電池の区画の全てにおける漏れの恐れを避けることを可能にする。
【0026】
本発明は、従来技術の樹脂又はポリマーベースの融着方法を改善する。
【0027】
具体的に、第1に、ハニカムマトリクスの構造体は、予め、すなわち熱融着の前に、且つその後に、その高さが一定のままであり、電池の区画の単位高さを決定する各ビーズが良好な機械的強度を有することを保証することを可能にする。従って、欠陥がある最終的なシール及び非常に小さ過ぎる最終的なシール高さをもたらす従来技術の樹脂又はポリマーの流れの否定的な結果は避けられる。
【0028】
次に、ハニカムマトリクス構造体の信頼性のある熱融着は、約10から100秒間にわたって、典型的には200℃以下である、好ましくは約80℃である、相対的に低い温度で加熱することによって行われる。
【0029】
熱融着が電気化学区画に対して行われると、特に他の融着ビーズを熱融着するために必要とされる連続的な加熱作用中に、又は電離が劣化モード(公称温度以上の温度)において機能する傾向にあるときに、電池の他の区画が熱くなる又は壁が厚くなる場合においてさえ、もはや不浸透性の壁の修正の恐れはない。従って、バイポーラ電池の区画の所定の熱融着において、そのハニカム構造体の一部、すなわちその胞の幾つかが、バイポーラ電池の他の区画の他のシーリングビーズを熱融着するために要求される連続的な加熱動作中に崩壊する場合でさえ、この構造体の残りの部分が、シールが保たれることを保証することを可能にする。
【0030】
さらに、種々のシーリングビーズのハニカムマトリクス構造のために、本発明によるバイポーラ電池は、特定のフレキシビリティを有する。ハニカムマトリクスのPU又はPTFE材料及び選択されるシート又は層の熱融着電気絶縁材料は、電解質に対する高い化学抵抗及び動作温度に対する高い抵抗を有する。
【0031】
本明細書及び本発明の文脈における“リチウム挿入材料で作られる電極”は、少なくとも1つのリチウム挿入材料及び少なくとも1つのポリマーバインダーを含む電極を意味するものと理解される。任意に、電極は、さらに、電子伝導体、例えば、カーボンファイバー又はカーボンブラックを含み得る。
【0032】
本明細書及び本発明の文脈において、特に正極における“リチウム挿入材料”は、スピネル構造を有するマンガンを含むリチオ化された酸化物、層状構造を有するリチオ化された酸化物、及び、それらの混合物、式LiM
y(XO
z)
nのポリアニオン系の構成を有するリチオ化された酸化物から選択される材料を意味するものと理解され、Mは、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、V、Ca、Sr、Ba、Ti、Al、Si、B及びMoから選択される元素を表し、Xは、P、Si、Ge、S及びAsから選択される元素を表し、y、z及びnは、正の整数である。
【0033】
特に負極における“リチウム挿入材料”はまた、リチオ化された又はリチオ化されていないチタン酸化物、例えばLi
4Ti
5O
12又はTiO
2から選択される材料を意味するものと理解される。より具体的には、負極材料は、炭素質材料、リチオ化されていないチタン酸化物、及びそれらの誘導体、Li
4Ti
5O
12等のリチオ化されたチタン酸化物及びそれらの誘導体並びにそれらの混合物から選択され得る。
【0034】
本明細書及び本発明の文脈における“リチオ化された誘導体”は、式Li
(4−x1)M
x1Ti
5O
12及びLi
4Ti
(5−y1)N
y1O
12の化合物を意味するものと理解され、ここで、x1及びy1はそれぞれ、0から0.2であり、M及びNはそれぞれ、Na、K、Mg、Nb、Al、Ni、Co、Zr、Cr、Mn、Fe、Cu、Zn、Si及びMoから選択される化学元素である。
【0035】
本明細書及び本発明の文脈における“リチオ化されていない誘導体”は、Ti
(5−y1)N
y1O
12を意味するものと理解され、y1は、0から0.2であり、Nは、Na、K、Mg、Nb、Al、Ni、Co、Zr、Cr、Mn、Fe、Cu、Zn、Si及びMoから選択される化学元素である。
【0036】
“バイポーラ電流コレクタに隣接する電流コレクタ”は、積層体のバイポーラ電流コレクタに最も近く、積層体の他のバイポーラ電流コレクタ又は末端電流コレクタの何れかであり得るコレクタを意味するものと理解される。
【0037】
好ましくは、各ビーズの厚さは、電気化学セルの厚さと実質的に等しい。
【0038】
繰り返しになるが、好ましくは、各ビーズの厚さは、100から200μm、好ましくは、150μm±5μmである。
【0039】
繰り返しになるが、好ましくは、各ビーズの幅は、0.1から2cmである。
【0040】
第1の有利な実施形態によれば、電気化学セルに最も近いハニカムマトリクスの胞の幾つかは、電解質と反応する傾向にある塩又は粘着性の化合物で満たされる。
【0041】
第2の有利な実施形態によれば、電気化学セルから最も遠いハニカムマトリクスの胞の幾つかは、大気中の水分と反応する傾向にある塩又は粘着性の化合物で満たされる。第1及び第2の実施形態は、組み合わされ、すなわち、リチオ化された電解質及び大気の両方に近い胞、すなわち、電気化学セルC1、C2の外部は、塩又は粘着性の化合物で満たされ得る。従って、これらの実施形態によれば、電池の内部に向かう大気又は電池の外部に向かう電解質の何れかの起こり得る漏れの開始中に、対象となる胞内における塩の反応又は粘着性の化合物の増大は、潜在的な漏れのルートを塞ぐだろう。すなわち、密閉は、本発明によるバイポーラ電池への又はバイポーラ電池からの漏れの開始の場合においてさえ、このように保証される。
【0042】
一実施形態によれば、バイポーラ電池は、n−2個のバイポーラ電流コレクタと共にn個の電気化学セルの積層体を含み、隣接するコレクタの1つが、末端電流コレクタであり、隣接するコレクタの他方が、他の末端電流コレクタである。
【0043】
一変形実施形態によれば、全てのアノードは、Li
4Ti
5O
12で作られ、全てのカソードは、LiFePO
4で作られる。
【0044】
本発明の主題は、その他の側面において、
一方が他方の頂部に積層され、各々がアノード、カソード及び電解質を含む第1及び第2の電気化学セルを少なくとも含むバイポーラ電池の製造方法であって、
(a)前記第1のセルのリチウム挿入材料で作られた前記アノードによって覆われた一方の面と、前記第2のセルのリチウム挿入材料で作られた前記カソードによって覆われた対向する面と、を有するバイポーラ電流コレクタを製造する段階と、
(b)それの1つの面が前記第1のセルのカソードによって覆われた、前記バイポーラコレクタに隣接することを目的とする第1の電流コレクタを製造する段階と、
(c)それの1つの面が前記第2のセルのアノードによって覆われた、前記バイポーラコレクタに隣接することを目的とする第2の電流コレクタを製造する段階と、
(d)ハニカムマトリクスで形成された第1のビーズを製造する段階であって、前記マトリクスの胞の少なくとも幾つかが、層又はシートの形態を取るその2つの主要面の各々をさらに覆う熱融着電気絶縁材料で満たされる段階と、
(e)前記アノードで覆われた前記第2のコレクタのその面の周囲に前記ビーズを取り付ける段階と、
(f)前記第1のビーズの内部において前記第2のコレクタの前記アノードに第1のセパレータを取り付ける段階と、
(g)前記隣接する第2のコレクタの前記アノードが前記バイポーラコレクタの前記カソードに面する一方で、前記第1のセパレータから分離され、前記第1のシーリングビーズが前記第2のコレクタ及び前記バイポーラコレクタの両方に対して支持するように、前記バイポーラ電流コレクタを積層する段階と、
(h)前記ハニカムマトリクスを熱融着するように前記コレクタの周囲に接触をもたらす前記第1のビーズを加熱する段階と、
を含み、
前記段階(d)から(h)が、第2のシーリングビーズ、第2のセパレータ及び前記第1の電流コレクタと共に、少なくとも1回行われる、バイポーラ電池の製造方法である。
【0045】
本明細書及び本発明の文脈における“セパレータ”は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアセテート(PVA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、又は、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン又はセルロースから選択されるポリマー等の少なくとも1つのポリマー材料で形成される電気絶縁性のイオン伝導体を意味するものと理解される。
【0046】
本発明による電解質は、炭酸塩及び少なくとも1つのリチウム塩の混合物で形成される液体であり得る。“リチウム塩”は、好ましくは、LiPF
6、LiClO
4、LiBF
4及びLiAsF
6から選択される塩を意味すると理解される。
【0047】
あるいは、電解質は、1つ又はそれ以上のリチウムイオンベースのイオン性液体、すなわち、無機又は有機アニオンと錯体を形成するリチウムカチオンから構成される塩を含み得、それは、大気温度で液体状態である特性を有する。イオン性液体は、アニオンの性質によって、親水性又は疎水性であり得る。イオン性液体の実施例には、トリフルオロメタンスルホン酸(CF
3SO
3)、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド[(CF
3SO
2)
2N]及びトリス((トリフルオロメチル)スルホニル)メタナイド[(CF
3SO
2)
3C]のような疎水性のアニオンベースのイオン性液体が含まれる。
【0048】
各段階(f)における加熱は、好ましくは、予め積層されたコレクタの周囲部分に配置されるU形状の加熱顎体を用いて行われる。
【0049】
各段階(f)における加熱は、好ましくは、約200℃以下の温度で、典型的には約80℃で行われる。