特許第6335957号(P6335957)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335957
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】光ファイバ素線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/035 20060101AFI20180521BHJP
   C03C 25/12 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C03B37/035
   C03C25/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-43227(P2016-43227)
(22)【出願日】2016年3月7日
(65)【公開番号】特開2017-160059(P2017-160059A)
(43)【公開日】2017年9月14日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 進弥
【審査官】 山田 頼通
(56)【参考文献】
【文献】 特許第5771736(JP,B1)
【文献】 特表2011−523397(JP,A)
【文献】 特開昭62−003037(JP,A)
【文献】 特許第5851636(JP,B1)
【文献】 特表2011−505320(JP,A)
【文献】 特表2010−510957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
C03C 25/00−25/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ母材を溶融紡糸して光ファイバ裸線を形成し、
前記光ファイバ裸線の外周に樹脂からなる被覆層を設け、
前記被覆層を硬化させて光ファイバ素線を得ることを有し、
前記光ファイバ裸線が紡糸されてからその外周に被覆層が設けられるまでに、前記光ファイバ裸線の方向を少なくとも1つの方向変換器によって変換し、
前記方向変換器は、前記光ファイバ裸線を案内するガイド溝と、前記ガイド溝に流体を導入し、前記ガイド溝内の前記光ファイバ裸線を浮上させる吹出し口とを有し、
走行半径の2倍を走行径とするとき、前記光ファイバ裸線の張力とファイバ径と前記走行径とを、小ベルト要素に働く力の釣り合い式とベルヌーイの式とに基づいて算出された式に適用することで、前記吹出し口からの前記流体の導入流量が制御されることを特徴とする光ファイバ素線の製造方法。
【請求項2】
前記吹出し口からの前記流体の導入流量が以下の式を用いて制御されることを特徴とする請求項に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【数1】
ここで、Qは前記吹出し口からの前記流体の導入流量(L/min)、Tは前記光ファイバ裸線の張力(gf)、Dは前記光ファイバ裸線の走行径(mm)、dは前記光ファイバ裸線の直径(mm)である。
【請求項3】
前記光ファイバ裸線の張力を非接触で検出することを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバ素線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ素線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ素線の製造においては、一般に、光ファイバ母材から光ファイバを直線的な経路に沿って鉛直下方へ線引きする方法が採用されている。
この製造方法においては、生産性に影響する要因として、システム全体の高さによる制限がある。システムの高さが生産性を制限する主な要因となるのは、光ファイバ母材を溶融紡糸して得られた光ファイバ裸線を十分に冷却するための距離を確保する必要があるからである。
建屋を含む新たな設備を新設すればこの制限は緩和できるが、そのために莫大な費用が必要となる上、将来にさらに生産性向上が求められれば、さらに莫大な費用をかけて新たな設備を新設する必要が生じる。
この制限を緩和する方法として、非接触保持機構を有する方向変換用の器具を用いる方法がある。
非接触保持機構は、空気などの流体の圧力によって対象を非接触で保持する機構であって、この機構を有する方向変換器では、光ファイバ裸線に接触することなく、光ファイバ裸線を方向変換させることができる。
この方向変換器を用いれば、光ファイバ母材から第一の経路に沿って線引きした光ファイバ裸線の方向を、第二の経路に沿うように変換することができる。
特許文献1及び2には、流体ベアリングによって、光ファイバを浮上した状態で支持し、光ファイバの走行方向を変換することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−136508号公報
【特許文献2】特開2013−136509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2には走行中の光ファイバの浮上量を安定させるためのパラメータ及びそれらを走行中に制御することが開示されていない。走行中の光ファイバの浮上量が一定でない場合、線引きされる光ファイバのパスラインが変動するためファイバ径の制御が不安定になったり、偏肉や断線等が生じたりする恐れがある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、非接触保持機構を有する方向変換器における光ファイバ裸線の浮上位置を安定化できる光ファイバ素線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、光ファイバ母材を溶融紡糸して光ファイバ裸線を形成し、前記光ファイバ裸線の外周に樹脂からなる被覆層を設け、前記被覆層を硬化させて光ファイバ素線を得ることを有し、前記光ファイバ裸線が紡糸されてからその外周に被覆層が設けられるまでに、前記光ファイバ裸線の方向を少なくとも1つの方向変換器によって変換し、前記方向変換器は、前記光ファイバ裸線を案内するガイド溝と、前記ガイド溝に前記流体を導入し、前記ガイド溝内の前記光ファイバ裸線を浮上させる吹出し口とを有し、前記光ファイバ裸線の張力とファイバ径と走行径とに基づいて、前記吹出し口からの前記流体の導入流量を制御する。
【0006】
前記光ファイバ裸線の前記張力と前記ファイバ径と前記走行径とを、小ベルト要素に働く力の釣り合い式とベルヌーイの式とに基づいて算出された式に適用することで、前記吹出し口からの前記流体の前記導入流量が制御されてもよい。
【0007】
前記吹出し口からの前記流体の導入流量が以下の式を用いて制御されてもよい。
【数1】
ここで、Qは前記吹出し口からの前記流体の導入流量(L/min)、Tは前記光ファイバ裸線の張力(gf)、Dは前記光ファイバ裸線の走行径(mm)、dは前記光ファイバ裸線の直径(mm)である。
【0008】
前記光ファイバ裸線の張力を非接触で検出してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、光ファイバ裸線の張力とファイバ径と走行径に基づいて、吹出し口からの流体の導入流量を制御することにより、非接触保持機構を有する方向変換器における光ファイバ裸線の浮上位置を安定化でき、製造中の光ファイバのパスラインの変動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の製造装置の概略構成を示す模式図である。
図2図1に示す製造装置の方向変換器の断面構造を示す模式図である。
図3】方向変換器の一例を示す正面図である。
図4】前図に示す方向変換器の変形例を示す正面図である。
図5】方向変換器での光ファイバ裸線3に働く張力を説明するための概略図である。
図6】方向変換器のガイド溝における流体の流量を説明するための概略図である。
図7図1に示す製造装置の制御動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の製造装置1の概略構成を示す模式図である。
製造装置1は、紡糸部10と、方向変換器20(20A,20B)と、コーティング部30と、硬化部40と、ファイバ位置検出部50と、ファイバ張力計60と、外径測定器70と、流量調整器80と、制御部90と、プーリー100と、引取り部110と、巻取り部120と、を備えている。
方向変換器20と、ファイバ位置検出部50と、ファイバ張力計60と、外径測定器70と、流量調整器80(80A,80B)と、制御部90とによって制御装置101が構成される。
【0012】
紡糸部10には、加熱炉11が設けられ、加熱炉11によって光ファイバ母材2を加熱して溶融紡糸することによって光ファイバ裸線3が形成される。
【0013】
方向変換器20は、光ファイバ裸線3の方向を変換する。図1に示す製造装置1では2つの方向変換器20が用いられる。これらの方向変換器20を、線引き方向の上流側から下流側に、それぞれ第1方向変換器20Aおよび第2方向変換器20Bとする。
第1方向変換器20Aは、光ファイバ母材2から鉛直下向き(第一の経路L1)に引き出された光ファイバ裸線3を、90°方向変換する。これにより、光ファイバ裸線3の走行方向は水平(第二の経路L2)方向に向けられる。
第一の経路L1と第二の経路L2とを含む面をP1とする。X方向は、面P1内において第二の経路L2に沿う方向であり、Y方向は、面P1に垂直な方向である。
【0014】
第2方向変換器20Bは、X方向に走行する光ファイバ裸線3を、鉛直下方向に90°方向変換する。これにより、光ファイバ裸線3の走行方向は鉛直下向き(第三の経路L3)に向けられる。
方向変換器20によって、X方向に光ファイバ裸線3を走行させることができ、これにより光ファイバ裸線を十分に冷却するための距離をX方向に確保することができる。従って、鉛直方向の装置の長さを短縮することができる。
【0015】
なお、本実施形態に係る製造装置1では方向変換器20が2つ設けられているが限定されない。装置設計等に応じて1つであっても3つ以上設けられていてもよい。
【0016】
コーティング部30では、光ファイバ裸線3の外周に、ウレタンアクリレート系の樹脂などの被覆材を塗布(コーティング)して被覆層とすることによって光ファイバ素線中間体4が得られる。
樹脂コーティングの方法としては、例えば2層コーティングが挙げられる。内側(光ファイバ裸線の直上)にヤング率の低い一次被覆層用の材料を塗布し、外側(一次被覆層の直上)にヤング率の高い二次被覆層用の材料が塗布される。使用される材料としては、例えば紫外線硬化樹脂が挙げられる。
コーティング部30は、一次被覆層と二次被覆層を別々に塗布する構成であってもよいし、一次被覆層と二次被覆層を同時に塗布する構成であってもよい。
また、樹脂コーティングの方法としては、1層コーティングであってもよい。
【0017】
硬化部40では、1または複数のUVランプ40aが設けられ、光ファイバ素線中間体4の被覆層を硬化して光ファイバ素線5が形成される。硬化部40は、例えば、光ファイバ素線中間体4が通過する空間を挟むように設けられた複数対のUVランプ40aを有する。
【0018】
光ファイバ素線5は、プーリー100によって向きを変えられ、引取り部110により引き取られ、巻取り部120により巻き取られる。
引取り部110は、例えば引取りキャプスタンであり、ここで引取り線速が決定される。
引取り線速は例えば1500m/min以上である。
巻取り部120は、光ファイバ素線5を巻き取る巻取りボビンである。
光ファイバ母材2の外径は例えば100mm以上であり、1つの光ファイバ母材2から作製される光ファイバ素線5の長さは例えば数千kmである。
【0019】
ファイバ位置検出部50は、第2方向変換器20Bの線引き方向の下流側に設けられ、第三の経路L3の光ファイバ裸線3の位置を検出する。ファイバ位置検出部50としては、例えばレーザ方式の位置センサを使用できる。
第2方向変換器20Bにおける光ファイバ裸線3の浮上量が増減すると、第三の経路L3の光ファイバ裸線3のX方向の位置が変化する。そのため、ファイバ位置検出部50は、光ファイバ裸線3の位置情報に基づいて、第2方向変換器20Bにおける光ファイバ裸線3の浮上量を検出できる。
ファイバ位置検出部50は、光ファイバ裸線3の位置に関する情報に基づいて検出信号を制御部90に出力する。制御部90では、ファイバ位置検出部50より出力された情報に基づいて、光ファイバ裸線3の走行径を算出することができる。
【0020】
ファイバ張力計60は、ファイバ位置検出部50から送出された走行中の光ファイバ裸線3における張力を計測する。ファイバ張力計60によって検出された計測データは、制御部90に出力される。
【0021】
ファイバ張力計60としては、非接触の張力計が好ましく、例えば、光学的に測定できる張力計(例えば、CERSA-MCI社製NCTM: Non Contact Tension Measurement)などを用いることができる。走行中の光ファイバ裸線の張力を非接触で測定することで光ファイバ裸線が損傷することを防げ、また製造過程に振動などを与えるおそれもない。そのため生産性や歩留まりを向上することができる。
【0022】
なお、走行中の光ファイバ裸線の張力を計測できれば非接触の張力計に限定されない。例えば、歪ゲージを用いた接触式の張力計を採用してもよい。
【0023】
外径測定器70は、ファイバ張力計60とコーティング部30との間に設けられ、光ファイバ裸線3の外径寸法を非接触で測定する。外径測定器70によって検出された計測データは、制御部90に出力される。
なお、本実施形態では、ファイバ張力計60の下流に外径測定器70が設けられているが限定されない。装置の設計に応じて適宜順番を入れ替えてもよい。
【0024】
流量調整器80は、方向変換器20A,20Bへの流体の導入流量を調整することができる。流量調整器80は、例えば方向変換器20A,20Bへの流体の導入路(例えば図3に示す導入路26)に設けることができる。流量調整器80としては、マスフローコントローラ(MFC)等が使用できる。
図1に示す製造装置1では2つの流量調整器80が用いられる。2つの流量調整器80のうち、第1方向変換器20Aに導入される流体の流量を調整する流量調整器80を第1流量調整器80Aといい、第2方向変換器20Bに導入される流体の流量を調整する流量調整器80を第2流量調整器80Bという。
【0025】
制御部90は、ファイバ位置検出部50、ファイバ張力計60、及び外径測定器70からの検出信号に基づいて、流量調整器80A,80Bを用いて、方向変換器20A,20Bへの流体の導入流量を制御する。これにより、方向変換器20A,20Bにおける光ファイバ裸線3の浮上量を調節することができる。
【0026】
制御部90は、光ファイバ裸線3の張力とファイバ径と走行径とに基づいて、吹出し口22からの流体の導入流量を決定する。本実施形態では、流体の導入流量はこれらのパラメータと流体の導入流量との相関関係を用いて制御される。具体的な流体の導入流量の制御方法の一例については後述する。
【0027】
なお、本実施形態では、ファイバ位置検出部50、ファイバ張力計60、及び外径測定器70は第2方向変換器20Bの後段にのみ設けられるが、これに限定されない。
例えば、第1方向変換器20A用のファイバ位置検出部、ファイバ張力計、及び外径測定器を第1方向変換器20Aと第2方向変換器20Bとの間の位置に設けてもよい。これによって、第1方向変換器20A用のファイバ位置検出部、ファイバ張力計、及び外径測定器からの検出信号に基づいて、流量調整器80Aを用いて、方向変換器20Aへの流体の導入流量を制御することができる。
また、例えば、第1方向変換器20A用にファイバ位置検出部とファイバ張力計との少なくとも一方を設けて、その他のパラメータは第2方向変換器20Bにおける測定値を用いて方向変換器20Aへの流体の導入流量を制御してもよい。
これによって、方向変換器20Aにおいても、吹出し口22からガイド溝21に放出される流体の流量を制御し、光ファイバ裸線3の浮上量を調整することができる。
【0028】
[方向変換器20の構造]
以下、方向変換器20の構造について説明する。
図3に示す方向変換器201は、方向変換器20の第1の例であって、光ファイバ裸線3の向きを90°変換することができる。
方向変換器201は、平面視4分円形とされ、外周面20aに全周長にわたってガイド溝21が形成されている。方向変換器201は、中心軸方向をY方向に一致させるとともに、径方向D1(図2参照)を面P1(図1参照)に沿う方向に向けた姿勢で設置される。ここでは、平面視円弧形の外周面20aに沿う方向を周方向という。
【0029】
ガイド溝21の底部には、ガイド溝21に沿って配線された光ファイバ裸線3を浮上させる流体(空気など)の吹出し口22がガイド溝21に沿って形成されている。吹出し口22は、ガイド溝21の全長にわたって形成されている。
吹出し口22の一端22aはガイド溝21の一端21aに達し、他端22bは他端21bに達している。
【0030】
図2に示すように、方向変換器201は、方向変換器201に確保された内部空間(流体溜部25)内の流体(例えば空気)を、吹出し口22を通してガイド溝21内に放出できるように構成されている。
方向変換器201は、流体を外部から流体溜部25に導入し、吹出し口22を通してガイド溝21内に放出させるように構成することができる。
図3に示すように、方向変換器201には、外部から流体溜部25に流体を導入する導入路26が接続される導入部27が形成されていることが好ましい。導入部27は、例えば流体の導入口である。
【0031】
ガイド溝21は、径方向外方に行くほど内側面21c,21cの間隔(Y方向寸法)が徐々に大きくなるように、径方向D1に対して傾斜して形成されていることが好ましい。図2ではガイド溝21はD1に対してθの角度をなすように開口している。
また、2つの内側面21c,21cは、図2に示すように径方向D1に対する傾斜角度が互いに等しいこと(θ/2)が好ましい。
【0032】
図3に示す方向変換器201では、光ファイバ裸線3は4分円形のガイド溝21の一端21aから入り、他端21bから出ることによって90°の方向変換がなされる。光ファイバ裸線3が入線する入線部23はガイド溝21の一端21aを含む部分であり、光ファイバ裸線3が出線する出線部24はガイド溝21の他端21bを含む部分である。
【0033】
図4に示す方向変換器202は、方向変換器201の変形例であって、平面視4分の3円形とされている。以下、既出の構成と同じ構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
方向変換器202は、図3に示す方向変換器201と同じ構造の本体部29aの入線側および出線側に、それぞれ本体部29aと同じ構造の補助部29b,29cが連設された構造とされている。
方向変換器202は、光ファイバ裸線3が入線部23’から本体部29aのガイド溝21に入り、本体部29aで方向が90°変換された後、出線部24’を通って出線するため、基本的な機能は方向変換器201と同じである。
方向変換器201,202は、光ファイバ裸線3の向きを90°変換することができるため、図1に示す方向変換器20A,20Bとして使用できる。
【0034】
[流体の導入流量の制御方法]
まず、図5を参照して方向変換器20での光ファイバ裸線3に働く張力について説明する。図5は、X方向から方向変換器20を見た場合の模式図であり、光ファイバ裸線3が方向変換器20で方向転換する際の微小部分に作用する力を模式的に示している。なお、図5では説明の便宜上、光ファイバ裸線3の方向変換の角度は本実施形態における90°よりも小さく表されている。
ここで、単位長さ当たりの光ファイバ裸線への押し付け力をp(N/m2)、光ファイバ裸線の緩み側にかかる力をF(N/m2)、光ファイバ裸線の張り側にかかる力をF+dF(N/m2)とした場合、すなわち方向変換器20上の光ファイバ裸線3の微小部分dsに作用する力pdsの半径方向の釣り合い式は、微小ベルト要素に働く力の釣り合い式と見立てて以下の式(1)のように求められる。
【0035】
【数2】
【0036】
走行半径をrとしてds=rdθと考えた場合、上記式(1)を用いて以下の式(2)が求められる。
【0037】
【数3】
【0038】
ここで、走行径をD(mm),張力をT(gf)とした場合、2r=D、F=Tg(gは重力加速度)と表される。本実施形態では、単位長さ当たりの押し付け力pを抱き角90°で光ファイバ裸線3を曲げているので、90°分の長さに変換した場合のファイバから受ける圧力P(N/m2)を式(2)から導くと、式(3)で表される。
【0039】
【数4】
【0040】
次に、図6を参照して方向変換器20のガイド溝21における流体の流量Q(L/min)について説明する。
図6に示すように、フロート面積A(mm)、テーパ管面積A(mm)、流路面積A(mm)、流体の流速u、u(u=(A/A)u)の関係は、ベルヌーイの式に基づいて以下の式(4)で表される。
なお本実施形態において、テーパ管面積A図2における基底隙間aの部分の断面積とし、流路面積A図2における隙間mの部分の流路面積とする。
【0041】
【数5】
ここで、上記式(4)のPに上記式(3)で導出されたファイバから受ける圧力を代入することで、変数として光ファイバ裸線3の張力とファイバ径と走行径とを用いて流体の導入流量を算出することができる。すなわち、小ベルト要素に働く力の釣り合い式とベルヌーイの式に基づいて算出された式に、検出された光ファイバ裸線3の張力とファイバ径と走行径とを適用することで、流体の導入流量を求めることができる。
【0042】
さらに、本実施形態では以下のパラメータ値を用いた場合を検討する。
気圧:1(atm)
気温:23°
空気密度ρ:1.19(kg/m
基底隙間a:0.05(mm)
角度θ:1(°)
基底直径D:114(mm)
抱き角:90(°)
【0043】
ここで、図2にも示すように基底隙間aは吹出し口の径であり、基底直径Dは吹出し口22の口端で構成される円の直径である。
【0044】
これらのパラメータの値を用いて、流路面積A(mm2)、テーパ管面積A(mm2)を算出し、式(3)を数式(4)に代入することにより、吹出し口22からの流体の導入流量Q(L/min)が、光ファイバ裸線3の走行径D(mm)と光ファイバ裸線3の直径d(mm)と光ファイバ裸線3の張力T(gf)とでのみ表された以下の式(A)を得る。なお、Cは流路係数であり、本実施形態では「1」とする。
【0045】
【数6】
【0046】
小ベルト要素に働く力の釣り合い式とベルヌーイの式に基づいて算出された式を用いて、検出された光ファイバ裸線3の張力とファイバ径と走行径とに基づいて、吹出し口22からの流体の導入流量の適正値を算出することで、方向変換器20A,20Bにおける光ファイバ裸線3の浮上量を高精度に制御できる。
特に、上式(A)を用いて、吹出し口22からの流体の導入流量の適正値を算出することで、方向変換器20A,20Bにおける光ファイバ裸線3の浮上量を簡易な式を用いて高精度に制御できる。
【0047】
次に、方向変換器20A,20Bにおける光ファイバ裸線3の浮上量の全体的な制御の流れについて具体的に説明する。
図7において、本実施形態における光ファイバ裸線3のファイバ径、及び方向変換器20A,20Bにおける光ファイバ裸線3の浮上量の制御フローチャートを示す。
【0048】
図7に示すように、光ファイバ裸線3のファイバ径(F径)は制御部90によって検出された測定値に基づいて引取り線速を調整することで制御される(ステップS101〜S104)。ここで、引取り線速は上述のように引取り部110により制御される。
例えば、目標ファイバ径がdである場合、外径測定器70によって光ファイバ裸線3の外径寸法を計測し(ステップS101)、外径寸法がd以上である場合は線速を下げることでファイバ径を制御する(ステップS102→S104)。一方、外径寸法がd以下である場合は線速を上げることでファイバ径を制御する(ステップS103→S104)。
【0049】
また、図7に示すように、測定されたファイバ径(ステップS101)、張力(ステップS105)、浮上量(ステップS108)を用いて、流体の導入流量の調整が制御部90によって行われる(ステップS111)。ここでステップS107に示される浮上量は走行径と基底直径とから算出できる。具体的には以下のように制御されてもよい。
【0050】
定常状態のファイバ径がdである場合、外径測定器70によって光ファイバ裸線3の外径寸法を計測し(ステップS101)、外径寸法がd以上になった場合は流体の導入流量を減少させることで浮上量を制御する(ステップS102→S111)。一方、外径寸法がd以下になった場合は流体の導入流量を増加させることで浮上量を制御する(ステップS103→S111)。
【0051】
ファイバ張力計60によって張力を測定し(ステップS105)、定常状態の張力T以上になった場合、流体の導入流量を増加させることで浮上量を制御する(ステップS106→S111)。一方、測定された張力が所定の張力T以下になった場合、流体の導入流量を減少させることで浮上量を制御する(ステップS107→S111)。
【0052】
さらに、ファイバ位置検出部50により検出される走行径を用いて浮上量を算出し(ステップS108)、目的の浮上量ΔD−dの値が0以上である場合は流体の導入流量を減少させることで浮上量を制御する(ステップS109→S111)。一方、ΔD−dの値が0以下である場合は流体の導入流量を増加させることで浮上量を制御する(ステップS110→S111)。
そして、本実施形態では流体の導入流量Qを導出する式を上述のフローチャートの演算処理に用いて、流体の導入流量の制御が行われる(ステップS111→S112)。
流体の導入流量の制御方法としては、PID制御などのフィードバック制御が好ましい。これにより、流体の流量の制御を応答性よく行うことができる。
【0053】
なお、本実施形態において、上記制御を連続的に行うことが好ましい。これにより、方向変換器20A,20Bにおける光ファイバ裸線3の浮上量を安定させ、パスラインの変動を抑えることができる。
【0054】
[光ファイバ素線の製造方法]
次に、本実施形態に係る光ファイバ素線の製造方法の一実施形態を説明する。
(紡糸工程)
図1に示すように、紡糸部10において、光ファイバ母材2を加熱して溶融紡糸して光ファイバ裸線3を形成する。
【0055】
(方向変換器による方向変換)
光ファイバ母材2から鉛直下向き(第一の経路L1)に引き出された光ファイバ裸線3は、第1方向変換器20Aにおける90°の方向変換により、水平(第二の経路L2)に向けられる。
光ファイバ裸線3は、第2方向変換器20Bにおける90°の方向変換により、鉛直下向き(第三の経路L3)となる。
【0056】
図2に示すように、方向変換器20A,20Bでは、流体溜部25内の流体(例えば空気)を、吹出し口22を通してガイド溝21内に放出することによって、光ファイバ裸線3を浮上させることができる。詳細には、放出された空気により、ガイド溝21の深部21dと浅部21eとの圧力差が大きくなるため、光ファイバ裸線3に、径方向外方の力が作用することによって、光ファイバ裸線3は浮上する。
方向変換器20によって、X方向に光ファイバ裸線3を走行させることができ、これにより光ファイバ裸線を十分に冷却するための距離をX方向に確保することができる。従って、鉛直方向の装置の長さを短縮することができる。
【0057】
なお、方向変換器20A,20Bにおける流体の流量は、上述した方法を用いて制御する。
【0058】
(コーティング工程)
コーティング部30において、光ファイバ裸線3の外周に、ウレタンアクリレート系の樹脂などの被覆材を塗布(コーティング)して被覆層とすることによって光ファイバ素線中間体4を得る。
【0059】
(硬化工程)
硬化部40において、UVランプ40aの照射などにより、光ファイバ素線中間体4の被覆層を硬化して光ファイバ素線5を形成する。
【0060】
光ファイバ素線5は、プーリー100によって向きを変えられ、引取り部110により引き取られ、巻取り部120により巻き取られる。
【0061】
本実施形態に係る光ファイバ素線の製造方法では、光ファイバ裸線3の張力とファイバ径と走行径に基づいて、方向変換器20A,20Bへの吹出し口22からの流体の導入流量を制御する。それによって、方向変換器20A,20Bにおいて吹出し口22からガイド溝21に放出される流体の流速を調節し、光ファイバ裸線3の浮上量を調整することができる。
そのため、方向変換器20A,20Bにおける光ファイバ裸線3の浮上位置を安定化することができ、光ファイバのパスラインの変動がなくなる。これにより、ファイバ径を制御する外径測定器に外乱要素がなくなり、ファイバ径をより安定して制御できる。また、コーティング部のダイスポッドへの入線の位置が安定し、光ファイバ素線の樹脂被覆との同軸度が安定し、偏肉不良を低減することができる。さらに、浮上量の過不足により光ファイバ裸線3がガイド溝21の内側面21cと接触するのを回避することができる。よって、方向変換器20A,20Bによって光ファイバ裸線3が傷つくことなく、良好な歩留まりで光ファイバ素線5を製造することができる。また、製造装置1の稼働率が高くなるため生産性の向上が可能となり、製造コストの削減を図ることができる。
【0062】
また、本実施形態の光ファイバ素線の製造方法によれば、吹出し口22からの流体の導入流量を小ベルト要素に働く力の釣り合い式とベルヌーイの式とに基づいて算出された式や上記式(A)用いて制御するために、方向変換器における光ファイバ裸線の浮上位置をより高精度で安定化でき、光ファイバのパスラインの変動をさらに低減できる。
【0063】
また、本実施形態の光ファイバ素線の製造方法によれば、光ファイバ裸線の張力を非接触で検出することによって、光ファイバ裸線が損傷することを防げ、また製造過程に振動などを与えるおそれもない。また、接触型と比べて、光ファイバ裸線3への異物の付着を防止することができる。そのため生産性や歩留まりを向上することができる。
【0064】
以上、本発明の光ファイバ素線の製造方法及び製造装置について説明してきたが、本発明は前記の例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
1…光ファイバ素線の製造装置、2…光ファイバ母材、3…光ファイバ裸線、5…光ファイバ素線、10…紡糸部、20,20A,20B,201,202…方向変換器、21…ガイド溝、22…吹出し口、30…コーティング部、40…硬化部、50…ファイバ位置検出部、60…ファイバ張力計、70…外径測定器、80、80A、80B…流量調整器、90…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7