(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
序論
半導電性ポリマーは、種々の光電子工学的用途、例えば発光ダイオード、電界効果トランジスタおよび光起電デバイスのための魅力的な材料である(例えば、Friend, R. H.; Gymer, R. W.; Holmes, A. B.; Burroughes, J. H.; Marks, R. N.; Taliani, C.; Bradley, D. D. C.; Dos Santos, D. A.; Bredas, J. L.; Loglund, M.; Salaneck, W. R. Nature 1999, 397, 121;およびGunes, S.; Neugebauer, H.; Sariciftci, N. S. Chem. Rev. 2007, 107, 1324-1338参照;これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される参照)。それらの魅力は、ポリマーのたやすく加工処理できることと組合せた半導体の適合が容易な電子および光学特性に基づいている。水溶性半導電性ポリマーは、高感度バイオセンサーおよび化学センサーとしても実証されている(例えば、Chen, L.; McBranch, D. W.; Wang, H. L.; Helgeson, R.; Wudl, F.; Whitten, D. G. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1999, 96, 12287-12292;Fan, C. H.; Wang, S.; Hong, J. W.; Bazan, G. C.; Plaxco, K. W.; Heeger, A. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA USA 2003, 100, 6297-6301;およびThomas, S. W.; Joly, G. D.; Swager, T. M. Chem. Rev. 2007, 107, 1339-1386参照;これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)。
【0021】
半導電性ポリマーナノ粒子についての初期の実証(Szymanski, C.; Wu, C.; Hooper, J.; Salazar, M. A.; Perdomo, A.; Dukes, A.; McNeill, J. D. J. Phys. Chem. B 2005, 109, 8543-8546;およびWu, C.; Szymanski, C.; McNeill, J. Langmuir 2006, 22, 2956-2960;これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)以来ずっと、例えばその錯体光物理学の特性化(例えば、Palacios, R. E.; Fan, F. R. F.; Grey, J. K.; Suk, J.; Bard, A. J.; Barbara, P. F. Nat. Mater. 2007, 6, 680-685; Wu, C.; Zheng, Y.; Szymanski, C.; McNeill, J. J. Phys. Chem. C 2008, 112, 1772-1781; Wu, C.; McNeill, J. Langmuir 2008, 24, 5855-5861;およびCollini, E.; Scholes, G. D. Science 2009, 323, 369-373参照;これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)、ならびに生物学的画像処理および高解像度単一粒子追跡のためのそれらの開発(例えば、Wu, C. et al., J. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 12904-12905; Wu, C. et al,. J. ACS Nano 2008, 2, 2415-2423; Wu, C.; et al, Chem. Int. Ed. 2009, 48, 2741-2745; Moon, J. H. et al, Chem. Int. Ed. 2007, 46, 8223-8225;Baier, M. C. et al, Am. Chem. Soc. 2009, 131, 14267-14273; Abbel, R.; et al, J. Chem. Commun. 2009, 1697-1699; Pu, K. Y. et al, Chem. Mater. 2009, 21, 3816-3822;Yu, J. et al, J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 18410-18414; Howes, P. et al, J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 3989-3996;およびKim, S. et al. Chem. Commun. 46, 1617-1619 (2010)参照;これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)を含めた当該技術分野における急速な進歩がなされてきた。
【0022】
本発明の態様は、種々の用途、例えばフローサイトメトリー、蛍光活性化選別法、免疫蛍光法、免疫組織化学、蛍光多重化、単一分子画像処理、単一粒子追跡、タンパク質折り畳み、タンパク質回転動力学、DNAおよび遺伝子解析、タンパク質解析、代謝物質解析、脂質解析、FRETベースのセンサー、高処理量スクリーニング、細胞画像処理、in vivo画像処理、蛍光ベースの生物学的解析、例えばイムノアッセイおよび酵素ベースの解析、ならびに生物学的検定および測定における種々の蛍光技法(これらに限定されない)のための、新規のクラスの官能化発色性ポリマードット(官能化CPドットまたはPドット)として言及される官能化蛍光プローブ、ならびにそれらの生体分子共役体に関する。
【0023】
官能化発色性ポリマードットの独特の特性は、高(粒子当たりの)蛍光輝度、大型吸収横断面、高蛍光量子収率、迅速発光速度、高度極性化蛍光、優れた光安定性および易貯蔵性(これらに限定されない)における基礎を有する。適切な生体分子との共役時に、多数の領域で、例えばフローサイトメトリー、蛍光活性化選別法、免疫蛍光法、免疫組織化学、蛍光多重化、単一分子画像処理、単一粒子追跡、タンパク質折り畳み、タンパク質回転動力学、DNAおよび遺伝子解析、タンパク質解析、代謝物質解析、脂質解析、FRETベースのセンサー、高処理量スクリーニング、細胞画像処理、in vivo画像処理、蛍光ベースの生物学的解析、例えばイムノアッセイおよび酵素ベースの解析、ならびに生物学的検定および測定における種々の蛍光技法(これらに限定されない)で、プローブは用いられ得る。
【0024】
本発明の付加的利点および特徴は、一部は、本説明に記述されており、これは一部はその説明から明らかになるし、あるいは本発明の実行により習得され得る。添付の図面を参照しながら、以下の説明および実施例で例証されるような実験を実施して、本発明を実証する。
【0025】
Pドットは、一光子および二光子励起下でともに、並外れて高い蛍光輝度を示す。それらの輝度は、半導電性ポリマー分子の多数の好ましい特質、例えばそれらの大きな吸収横断面、迅速発光速度、ならびに高蛍光量子収率に由来する。近年の研究は、蛍光プローブとしてのPドットが光安定性であり、異なる細胞検定では細胞傷害性でない、ということも示している(例えば、Wu, C.; Bull, B.; Szymanski, C.; Christensen, K.; McNeill, J. ACS Nano 2008, 2, 2415-2423;Pu, K. Y.; Li, K.; Shi, J. B.; Liu, B. Chem. Mater. 2009, 21, 3816-3822;およびRahim, N. A. A.; McDaniel, W.; Bardon, K.; Srinivasan, S.; Vickerman, V.; So, P. T. C.; Moon, J. H. Adv. Mater. 2009, 21, 3492-3496参照;これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)。
【0026】
しかしながら、広範囲の生物学的用途に関して、Pドットについての有意の問題、すなわち、それらの表面化学ならびに生物学的分子との共役の制御方法は未だ解決されていない。シリカまたはリン脂質封入に伴う研究努力により、表面官能基を有する複合粒子を生じえた(例えば、Wu, C.; Szymanski, C.; McNeill, J. Langmuir 2006, 22, 2956-2960およびHowes, P.; Green, M.; Levitt, J.; Suhling, K.; Hughes, M. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 3989-3996参照)が、しかしPドットによる細胞標識化に関して今日までに報告された結果は、おそらくは、有機蛍光体およびQドットに関して確立された標識化方法と比較してはるかに低有効且つ特異的方法であるエンドサイトーシス(例えば、Wu, C.; Bull, B.; Szymanski, C.; Christensen, K.; McNeill, J. ACS Nano 2008, 2, 2415-2423;Pu, K. Y.; Li, K.; Shi, J. B.; Liu, B. Chem. Mater. 2009, 21, 3816-3822;Howes, P.; Green, M.; Levitt, J.; Suhling, K.; Hughes, M. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 3989-3996;およびRahim, N. A. A.; McDaniel, W.; Bardon, K.; Srinivasan, S.; Vickerman, V.; So, P. T. C.; Moon, J. H. Adv. Mater. 2009, 21, 3492-3496参照)に基づいている。Pドットプローブが有効標識化のための細胞性標的を認識するのに十分に特異的にさえうるか否かは、依然として不明である。したがって、この難題はずっと、生物学的用途におけるPドットの広範囲の使用を厳しく妨げてきた。
【0027】
本発明が、Pドット生体共役および特異的細胞標的化に関連した難題に関する解決を提供することは、有益である。一態様において、本発明は、特異的抗原−抗体またはビオチン−ストレプトアビジン相互作用により細胞性標的を標識するためにPドットを生体分子と共有的に結合する新規の共役方法を提供する。この官能化および生体共役戦略は、任意の疎水性、蛍光性の半導電性ポリマーに容易に適用され得る。本明細書中で提供される実施例に示すように、本明細書中で提供される方法により共役されるPドット生体共役体は、単一粒子画像処理、細胞画像処理およびフローサイトメトリー実験のために用いられ得るし、慣用的有機蛍光体およびQドットプローブを上回るそれらの利点が実証される。したがって、本研究は、生物学的用途のために種々の高蛍光性、光安定性および非毒性Pドット生体共役体を用いるための新規の且つ実用的な道筋を開く。
【0028】
一態様では、本発明は、ナノ粒子形成中の疎水性相互作用により駆動される単一ドットへの異種ポリマー鎖の捕捉を包含するPドットの官能化のための新規の戦略に基づいている。官能基を保有する少量の両親媒性ポリマーは、半導電性ポリマーと共縮合されて、なの粒子表面を改質し、官能化して、その後、生体分子、例えばストレプトアビジンおよび免疫グロブリンG(IgG)と共有的に共役する。Pドット生体共役体は、任意の検出可能な非特異的結合を伴わずに、細胞性標的、例えばヒト乳癌細胞中の細胞表面マーカーを有効に且つ特異的に標識し得る。単一粒子画像処理、細胞性画像処理およびフローサイトメトリー実験は、Alexa色素および量子ドットプローブの場合と比較して、Pドットの非常に高い蛍光輝度を示す。これらの超高輝度ナノ粒子の上首尾の生体共役は、万能半導電性ポリマーを現代生物学および生物医学における種々の蛍光測定に適用するための新規の機会を提示する。
【0029】
一態様では、生体分子との共有的共役を可能にする官能基を有する高蛍光半導電性ポリマードットが提供される。これらのPドットの官能化のための戦略は、ナノ粒子形成中に疎水性相互作用により駆動されるPドット粒子中への異種ポリマー鎖の捕捉に基づいている。官能基を保有する少量の両親媒性ポリマーが半導電性ポリマーと共縮合されて、ナノ粒子表面を改質し、官能化し得る、ということが本明細書中で示される。その後、標準カルボジイミドカップリング化学を用いて、ストレプトアビジンおよび抗体のような生体分子との共有的共役が実施された。これらのPドット生体共役体は、任意の検出可能な非特異的結合を伴わずに、生および固定細胞の両方における細胞表面受容体および細胞下構造を有効に且つ特異的に標識し得る。単一粒子画像処理、細胞性画像処理およびフローサイトメトリーを実施してPドット性能を実験的に評価し、Alexa−IgGおよびQドットプローブの場合と比較して、それらの高い細胞性標識輝度を実証する。これらの結果は、抗範囲の蛍光ベースの生物学的検出のための高度蛍光性ナノ粒子生態共役体の新規のクラスを提示する。
定義
【0030】
本明細書中で用いる場合、「発色性ナノ粒子」または「発色性ポリマードット」という用語は、安定なサブミクロンサイズの粒子に潰された1つ以上の発色性ポリマーを含む構造を指す。本明細書中で提供される発色性ナノ粒子は、ポリマーを潰すための当該技術分野で既知の任意の方法、例えば沈降による方法、エマルション(例えばミニまたはマイクロエマルション)の形成による方法、ならびに縮合による方法(これらに限定されない)により形成され得る。好ましい一実施形態では、発色性ナノ粒子はナノ沈降により形成される。
【0031】
本明細書中で用いる場合、「ポリマー」は、典型的には共有化学結合により連結される少なくとも2つの反復構造単位からなる分子である。ポリマーは、一般的に、任意にペンダント側鎖基を含有する主鎖を含む延長分子構造を有する。それは、線状ポリマーおよび分枝鎖ポリマー、例えば星型ポリマー、櫛型ポリマー、刷子型ポリマー、ラダーポリマーおよび樹状ポリマーを包含する。
【0032】
本明細書中で用いる場合、「発色性ポリマー」という用語は、ポリマーの少なくとも一部分が発色性単位を含むポリマーである。「発色団」という用語は、当該技術分野におけるその普通の意味を与えられる。発色団は、UVから近赤外領域間でのある波長を吸収し、そして発光性であり得るし、そうでないこともある。
【0033】
「発色性単位」としては、本発明においては、非局在化パイ電子を有する構造の単位、小有機染料分子の単位および金属錯体の単位が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、発色性ポリマーの例としては、非局在化パイ電子を有する構造の単位を含むポリマー、例えば半導電性ポリマー、小有機染料分子の単位を含むポリマー、金属錯体の単位を含むポリマー、ならびにその任意の組合せの単位を含むポリマーが挙げられる。
【0034】
本明細書中で用いる場合、「官能基」という用語は、例えば任意の安定な物理的または化学的会合により、発色性ポリマーと結合され、それにより発色性ポリマードットの表面を共役のために利用可能にさせ得る任意の科学的単位を指す。官能基の非限定例としては、カルボン酸、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、アルキン、歪みアルキン、アジド、ジエン、アルケン、シクロオクチンおよびホスフィン基、その置換誘導体、ならびにその組合せが挙げられる。
【0035】
本明細書中で用いる場合、「官能化剤」という用語は、例えば任意の安定な物理的または化学的会合により、発色性ポリマードットのコアと結合されて、ポリマードットの表面に官能基を提供し得る任意の分子を指す。
【0036】
本明細書中で用いる場合、「親水性官能基」という用語は、実際に親水性である官能基を指すか、あるいは親水性側鎖または親水性部分(これが疎水性官能基を実際により親水性にさせて、そして発色性ポリマードットの疎水性コアの内側に埋めさせるというよりむしろ発色性ポリマードット粒子上の疎水性官能基の配列を促す)と結合される疎水性官能基を指す。親水性側鎖または部分との結合によりより親水性にされ得る疎水性官能基の例としては、親水性側鎖、例えばPEG(ポリエチレングリコール)と、または任意の他の親水性側鎖と結合されるアルキン、歪みアルキン、アジド、ジエン、アルケン、シクロオクチンおよびホスフィン基(クリック化学に関して)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書中で用いる場合、「生体直交型反応」という用語は、外因的に送達されるプローブとの高選択的反応により生きている系において改質され得る非ネイティブ、非摂動性化学ハンドル間の共役を指す。生体直交型反応スキームについてよく知られているほとんどのものは、クリック化学として既知である。生体直交型反応スキームの再検討に関しては、例えばBest MD, Biochemistry. 2009 Jul 21;48(28):6571-84(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)を参照されたい。
【0038】
本明細書中で用いる場合、「クリック反応」という用語が認知されているが、これは、最も認知された銅触媒アジド−アルキン[3+2]環状付加のような最高に信頼可能な且つ自律的な有機反応のコレクションを記述する。クリックケミストリー反応の非限定例は、例えばH. C. Kolb,M. G. Finn, K. B. Sharpless, Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 2004およびE. M. Sletten, C. R. Bertozzi, Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 6974(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に見出され得る。
【0039】
本明細書中で用いる場合、「架橋剤」という用語は、分子を一緒に共有的に結合するために、類似のまたは異類の分子上の分子基間に化学結合を形成し得る化合物を記載するために用いられる。一般架橋剤の例は、当該技術分野で既知である。例えば、Bioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996 またはその後のバージョン)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)を参照。生体分子と一価発色性ポリマードットとの間接的結合は、「リンカー」分子、例えばアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ビオチン等の分子の使用を介して起こり得る。
【0040】
本明細書中で用いる場合、「抗体」は、光源を特異的に結合し、認識する免疫グロブリン遺伝子またはその断片からのフレームワーク領域を含むポリペプチドを指す。認識免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパまたはラムダとして分類される。重鎖は、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはεとして分類され、これらは順次、免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ定義する。典型的には、抗体の抗原結合領域は、結合の特異性および親和性において最も重要である。抗体は、血清由来のポリクローナルまたはモノクローナル、ハイブリドーマであるかまたは組換え的にクローン化され得るし、キメラ、霊長類化またはヒト化もされ得る。
【0041】
例示的免疫グロブリン(抗体)構造単位は、四量体を含む。各四量体は、2つの同一対のポリペプチド鎖からなり、各鎖は、1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50〜70kD)を有する。各鎖のN末端は、主に抗原認識に関与する約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を限定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)という用語は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖を指す。
【0042】
抗体は、例えば無傷免疫グロブリンとして、または種々のペプチダーゼでの消化により産生される多数の十分に特性化された断片として存在する。したがって、例えばペプシンは、抗体をヒンジ領域でジスルフィド結合以下に消化して、F(ab)’
2を産生するが、これは、それ自体がジスルフィド結合によりV
H−C
H1と連結される軽鎖であるFabの二量体である。F(ab)’
2は、低刺激性条件下で還元されて、ヒンジ領域のジスルフィド結合を壊し、それによりF(ab)’
2二量体をFab’単量体に転化し得る。Fab’単量体は、本質的には、ヒンジ領域の部分を有するFabである(Fundamental Immunology (Paul ed., 3d ed. 1993)参照)。種々の抗体断片が無傷抗体の消化に関して限定されるが、このような断片は、化学的にまたは組換えDNA法を用いてde novoで合成され得る、と当業者は理解する。したがって、抗体という用語は、本明細書中で用いる場合、全体抗体の修飾により産生さえる抗体断片、あるいは組換えDNA法を用いてde novoで合成されるもの(例えば一本鎖Fv)またはファージ表示ライブラリーを用いて同定されるもの(例えばMcCafferty et al., Nature, 348:552-554 (1990)参照)も包含する。
官能化発色性ポリマードット
【0043】
本発明は、一態様において、コアおよびキャップを含む官能化発色性ポリマードットを提供する。「コア」は、少なくとも1つの発色性ポリマーを含有する。「キャップ」は、官能化剤を含む。官能化剤は、物理的会合または化学結合により発色性ポリマーのコアと結合され、そして生体共役のための発色性ポリマー上の表面官能基を提供する。別の実施形態では、官能化発色性ポリマードットは、まさに、生体共役を促す官能基と共有的に結合されるコアを含む。
【0044】
一態様では、本発明は、コアおよびキャップを含む官能化発色性ポリマードット(Pドット)を提供するが、この場合、上記コアは発色性ポリマーを含み、上記キャップは1つ以上の官能基を保有する官能化剤を含むが、但し、上記キャップのすべてが有機ケイ酸塩であるというわけではない。具体的一実施形態では、キャップは有機ケイ酸塩を含まない。
【0045】
一実施形態では、本発明は、約1nm〜約1000nmの範囲のサイズの発色性ポリマーのコア、および両親媒性官能化層を含む官能化発色性ポリマードットを提供し、この場合、疎水性部分は疎水性相互作用によりポリマードットのコアに恒久的に固定され、親水性官能基、例えばカルボン酸はさらなる生体共役のために溶液中に広がる。
【0046】
具体的一実施形態では、本発明は、疎水性コアおよび親水性キャップを有する官能化発色性ポリマードット(Pドット)であって、Pドットが、(a)発色性ポリマー;ならびに
(b)疎水性部分および反応性官能基と結合される親水性部分を有する両親媒性分子
を含み、発色性ポリマーがPドットの疎水性コア内に包埋され;そして両親媒性分子の一部分がPドットのコア内に包埋されて、反応性官能基が親水性キャップ中に位置するポリマードットを提供する。好ましい一実施形態では、発色性ポリマーは半導電性ポリマーである。
【0047】
本明細書中で提供される発色性ポリマーの一実施形態では、反応性官能基は、カルボキシル、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステルおよびその誘導体からなる群から選択される。具体的一実施形態では、反応性官能基は、アルキン含有部分、アジド含有部分、またはクリックケミストリー反応により分子と共役され得る他の部分である。
【0048】
一実施形態では、発色性ポリマーは、半導電性ポリマーである。多数の半導電性ホモポリマーが当該技術分野で既知であり、例としては、フルオレンポリマー、フェニレンビニレンポリマー、フェニレンポリマー、フェニレンエチニレンポリマー、ベンゾチアゾールポリマー、チオフェンポリマー、カルバゾールフルオレンポリマー、ホウ素−ジピロメテンベースのポリマーおよびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。一般的半導電性ポリマーおよびそれらの略号の一覧を、表1に示す。
【表1】
【0049】
別の実施形態では、発色性ポリマーは、少なくとも2つの異なる発色性単位を含む半導電性コポリマーである。例えば、発色性コポリマーは、所定比で存在するフルオレンおよびベンゾチアゾール発色性単位の両方を含有し得る。半導電性コポリマーを合成するために用いられる典型的発色性単位としては、フルオレン単位、フェニレンビニレン単位、フェニレン単位、フェニレンエチニレン単位、ベンゾチアゾール単位、チオフェン単位、カルバゾールフルオレン単位、ホウ素−ジピロメテン単位およびその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。異なる発色性単位は、ブロックコポリマーにおけるように分離されるか、または混ぜ合わせられ得る。本明細書中で用いる場合、発色性コポリマーは、大発色性種の同一性を書き入れることにより表される。例えば、PFBTは、フルオレンおよびベンゾチアゾール単位を一定比率で含有する発色性ポリマーである。いくつかの場合、ダッシュを用いて小発色性種のパーセンテージを、次いで、小発色性種の同一性を示す。例えば、PF−0.1BTは、90%PFおよび10%BTを含有する発色性コポリマーである。
【0050】
他の実施形態では、発色性ポリマードットは、半導電性ポリマーの、を含む。、は、発色性ホモポリマー、コポリマーおよびオリゴマーの任意の組合せを包含し得る。結果的に生じるポリマードットの特性を調整するために、例えばポリマードットに関する所望の励起または発光スペクトルを達成するために、ポリマードットを生成するために用いられる発色性ポリマー、が選択され得る。
【0051】
本明細書中で提供される発色性ポリマードットの一実施形態では、官能化剤は両親媒性分子である。ある実施形態では、両親媒性分子は、官能基で修飾された発色性ポリマーである。例えば、一実施形態では、本発明は、疎水性コアおよび親水性キャップを有する官能化発色性ポリマードット(Pドット)であって、Pドットが(a)第一半導電性ポリマー;および(b)反応性官能基と結合される第二半導電性ポリマーを含み、第一半導電性ポリマーがPドットの疎水性コア内に包埋され、第二半導電性ポリマーの一部分がPドットのコア内に包埋され、そして反応性官能基が親水性キャップに(すなわち、Pドットの表面に)位置する官能化発色性ポリマードットを提供する。
【0052】
別の実施形態では、両親媒性分子は、非発色性分子、例えば非発色性ポリマー、脂質、炭水化物、または反応性官能基で修飾されるその他の非発色性分子である。例えば、一実施形態では、本発明は、疎水性コアおよび親水性キャップを有する官能化発色性ポリマードット(Pドット)であって、Pドットが(a)半導電性ポリマー;および(b)疎水性部分および反応性官能基と結合される親水性部分を有する両親媒性分子を含み、半導電性ポリマーがPドットの疎水性コア内に包埋され、両親媒性分子の一部分がPドットのコア内に包埋され、そして反応性官能基が親水性キャップに(すなわち、Pドットの表面に)位置する官能化発色性ポリマードットを提供する。
【0053】
具体的一実施形態では、両親媒性ポリマーは、両親媒性櫛型ポリマー、例えばポリスチレンベースの櫛型両親媒性ポリマーまたはポリ(メチルメタクリレート)ベースの櫛型ポリマーである。別の具体的実施形態では、両親媒性ポリマーはポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)(PSMA)である。
【0054】
具体的一実施形態では、両親媒性ポリマーは、ポリスチレンベースの櫛型ポリマーである。ポリスチレンベースの櫛型ポリマーの非限定例としては、ポリスチレングラフトアクリル酸、カルボキシで官能化されるポリスチレングラフトエチレンオキシド、アミンで官能化されるポリスチレングラフトエチレンオキシド、チオールで官能化されるポリスチレングラフトエチレンオキシド、スクシンイミジルエステルで官能化されるポリスチレングラフトエチレンオキシド、アジドで官能化されるポリスチレングラフトエチレンオキシド、アルキンで官能化されるポリスチレングラフトエチレンオキシド、シクロオクチンで官能化されるポリスチレングラフトエチレンオキシド、エステルで官能化されるポリスチレングラフトエチレンオキシド、ホスフィン、ポリスチレングラフトブチルアルコールなどが挙げられる。具体的一実施形態では、両親媒性ポリマーはポリエチレングリコールグラフト化ポリスチレンである。さらに具体的な一実施形態では、両親媒性ポリマーのポリエチレングリコール部分は、1つ以上のカルボキシル基と結合される。別の具体的実施形態では、両親媒性ポリマーはポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)である。
【0055】
別の実施形態では、両親媒性ポリマーはポリ(メチルメタクリレート)ベースの櫛型ポリマーである。ポリ(メチルメタクリレート)ベースの櫛型ポリマーの非限定例としては、ポリ(メチルメタクリレート)グラフトアクリル酸、カルボキシで官能化されるポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシド、アミンで官能化されるポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシド、チオールで官能化されるポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシド、スクシンイミジルエステルで官能化されるポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシド、アジドで官能化されるポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシド、アルキンで官能化されるポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシド、シクロオクチンで官能化されるポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシド、エステルで官能化されるポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシド、ホスフィンで官能化されるポリ(メチルメタクリレート)グラフトエチレンオキシド等が挙げられる。
【0056】
さらに別の実施形態では、両親媒性ポリマーは、カルボキシル、アミン、チオール、エステル、スクシンイミジルエステル、アジド、アルキン、シクロオクチンおよび/またはホスフィン基を含む櫛型ポリマーである。
【0057】
いくつかの実施形態では、両親媒性ポリマーは、両親媒性コポリマー、例えば(1)ポリ((メト)アクリル酸)ベースのコポリマー、例えば:ポリ(アクリル酸−b−アクリルアミド)、ポリ(アクリル酸−b−メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸−b−N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(n−ブチルアクリレート−b−アクリル酸)、ポリ(アクリル酸ナトリウム−b−メチルメタクリレート)、ポリ(メタクリル酸−b−ネオペンチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート−b−アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリレート−b−メタクリル酸)、ポリ(メチルメタクリレート−b−N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(メチルメタクリレート−b−アクリル酸ナトリウム)、ポリ(メチルメタクリレート−b−メタクリル酸ナトリウム)、ポリ(ネオペンチルメタクリレート−b−メタクリル酸)、ポリ(t−ブチルメタクリレート−b−エチレンオキシド)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸−b−アクリル酸);(2)ポリジエンベースのコポリマー、例えば:ポリ(ブタジエン(1,2付加)−b−エチレンオキシド)、ポリ(ブタジエン(1,2付加)−b−メチルアクリル酸、ポリ(ブタジエン(1,4付加)−b−アクリル酸)、ポリ(ブタジエン(1,4付加)−b−エチレンオキシド、ポリ(ブタジエン(1,4付加)−b−アクリル酸ナトリウム)、ポリ(ブタジエン(1,4付加)−b−N−メチル4−ビニルヨウ化ピリジニウム)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(イソプレン−b−エチレンオキシド)およびポリ(イソプレン−b−N−メチル2−ビニルヨウ化ピリジニウム);(3)ポリ(エチレンオキシド)ベースのコポリマー、例えば:ポリ(エチレンオキシド−b−アクリル酸)、ポリ(エチレンオキシド−b−アクリルアミド)、ポリ(エチレンオキシド−b−ブチレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−b−ε−カプロラクトン)、ポリ(エチレンオキシド−b−ラクチド)、ポリ(エチレンオキシド−b−ラクチド)、ポリ(エチレンオキシド−b−メタクリル酸)、ポリ(エチレンオキシド−b−メチルアクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(エチレンオキシド−b−メチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−ニトロベンジルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−プロピレンオキシド)、ポリ(エチレンオキシド−b−t−ブチルアクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−t−ブチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−テトラヒドロフルフリルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−2−エチルオキサゾリン)、ポリ(エチレンオキシド−b−2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(エチレンオキシド−b−2−メチルオキサゾリン);(4)ポリイソブチレンベースのコポリマー、例えばポリ(イソブチレン−b−アクリル酸)、ポリ(イソブチレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(イソブチレン−b−メタクリル酸);(5)ポリスチレンベースのコポリマー、例えば
ポリ(スチレン−b−アクリルアミド)、ポリ(スチレン−b−アクリル酸)、ポリ(スチレン−b−セシウムアクリレート)、ポリ(スチレン−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレン−b−エチレンオキシド)酸(ブロック接合部で切断可能)、ポリ(スチレン−b−メタクリル酸)、ポリ(4−スチレンスルホン酸−b−エチレンオキシド)、ポリ(スチレンスルホン酸−b−メチルブチレン)、ポリ(スチレン−b−N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリ(スチレン−b−N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(スチレン−b−N−メチル2−ビニルヨウ化ピリジニウム)、ポリ(スチレン−b−N−メチル−4−ビニルヨウ化ピリジニウム)、ポリ(スチレン−b−プロピルアクリル酸)、ポリ(スチレン−b−アクリル酸ナトリウム)、ポリ(スチレン−b−メタクリル酸ナトリウム)、ポリ(p−クロロメチルスチレン−b−アクリルアミド)、ポリ(スチレン−コ−p−クロロメチルスチレン−b−アクリルアミド)、ポリ(スチレン−コ−p−クロロメチルスチレン−b−アクリル酸)、ポリ(スチレン−b−メチルブチレン−コ−イソプレンスルホネート);(6)ポリシロキサンベースのコポリマー、例えばポリ(ジメチルシロキサン−b−アクリル酸)、ポリ(ジメチルシロキサン−b−エチレンオキシド)、ポリ(ジメチルシロキサン−b−メタクリル酸);(7)ポリ(フェロセニルジメチルシラン)ベースのコポリマー、例えばポリ(フェロセニルジメチルシラン−b−エチレンオキシド);(8)ポリ(2−ビニルナフタレン)ベースのコポリマー、例えばポリ(2−ビニルナフタレン−b−アクリル酸)、(9)ポリ(ビニルピリジンおよびN−メチルビニルヨウ化ピリジニウム)ベースのコポリマー、例えばポリ(2−ビニルピリジン−b−エチレンオキシド)、ポリ(2−ビニルピリジン−b−メチルアクリル酸)、ポリ(N−メチル2−ビニルヨウ化ピリジニウム−b−エチレンオキシド)、ポリ(N−メチル4−ビニルヨウ化ピリジニウム−b−メチルメタクリレート)、ポリ(4−ビニルピリジン−b−エチレンオキシド)PEO末端官能性OH;(10)ポリ(ビニルピロリドン)ベースのコポリマー、例えばポリ(ビニルピロリドン−b−D/L−ラクチド)等である。
【0058】
一実施形態では、発色性ポリマーを官能化するために用いられる両親媒性ポリマーの親水性部分は、水溶性ポリマー、例えばポリアルキレングリコール(例えば、PEG)、PEO、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、デンプン、ポリ−炭水化物、ポリシアル酸等である。一実施形態では、水溶性ポリマーはポリアルキレングリコールである。さらに具体的な一実施形態では、水溶性部分はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0059】
一実施形態では、発色性ポリマーを官能化するために用いられる両親媒性ポリマーの疎水性部分は、疎水性ポリマーである。用いられ得るポリマーの非限定例としては、ポリ(メト)アクリレートポリマー、ポリアクリルアミドポリマー、ポリイソブチレン、ポリジエン、ポリフェニレン、ポリエチレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリラクチド、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリ(ビニルピリジン)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリウレタン、そのブロックコポリマー、そのランダムまたは代替コポリマー等が挙げられる。
【0060】
多数の因子、例えば所望レベルの官能化、所望の分光測光特性、および意図された用途によって、本明細書中で提供されるような官能化発色性ポリマードット中の両親媒性分子対発色性ポリマーの重量比は、約0.01%〜約50%の範囲である。好ましい一実施形態では、両親媒性分子対発色性ポリマーの重量比は、約5%〜約20%である。さらに他の実施形態では、両親媒性分子対発色性ポリマーの重量比は、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%または約50%以下である。具体的一実施形態では、両親媒性分子対発色性ポリマーの重量比は約25%以下である。
【0061】
一実施形態では、本明細書中で提供される発色性ポリマーは、蛍光色素、無機発光物質、磁気物質、ならびにポリマードットのコア内に包埋される金属からなる群から選択される構成成分をさらに含む。
【0062】
さらに他の実施形態では、本明細書中で提供されるような発色性ポリマーは、1つ以上の非反応性化学基とさらに共役され得る。このようにして、ポリマードットの表面の非反応性化学基の存在は、ポリマードットの表面と他の分子、例えばタンパク質との間の非特異的会合を低減し、および/または排除する。一実施形態では、非反応性化学基は、水溶性ポリマー、例えばポリアルキレングリコール(例えば、PEG)、PEO、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、デンプン、ポリ−炭水化物、ポリシアル酸等である。一実施形態では、水溶性ポリマーはポリアルキレングリコールである。さらに具体的な一実施形態では、水溶性部分はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0063】
本明細書中に記載される官能化スキームを用いて、ストレプトアビジンおよび/または抗体と、異なる型のPドット、例えばWu et al. (Wu, C.; Bull, B.; Szymanski, C.; Christensen, K.; McNeill, J. ACS Nano 2008, 2, 2415-2423)に記載される5つのPドットとの共役が首尾よく達成されている。
【0064】
本発明は、他の態様および実施形態の中でも特に、単一粒子画像処理、細胞性標識およびフローサイトメトリー用途のための官能化PFBTドットを提供する。官能化PFBTドットは、460nm辺りの相対的に広範な吸収ピークを示し、これは蛍光顕微鏡およびレーザー励起のために好都合な波長領域である。〜10nm直径PFBTドットからの吸収および蛍光スペクトルの解析は、1.5×10
7M
−1cm
−1のピーク消光係数、ならびに0.30の蛍光量子収量を示した。PFBTドットの光物理学的特性を、Invitrogenから購入した2つの広範に用いられるプローブ:Qドット565および蛍光IgG−Alexa488(〜6色素分子/IgG)の特性とともに、表2に要約する。これら2つの市販のプローブが選択されたのは、それらがPFBTドットの場合と同様の波長領域での発光を示すためであった。Pドットが多重エミッターを含有し、したがって、Pドットの寿命はQドットの〜50分の1であるが、しかしPドットの発光速度はQドットより3桁速い、ということに留意することは重要である(同上参照)。
【表2】
【0065】
表2に示したAlexa488およびQドット565に関するデータは、Invitrogenにより提供されるプローブ仕様書に従っている。Alexa488のパラメーターは、単一色素分子に関するものである。IgG−Alexa488プローブは、12nmの流体力学的直径を有し、平均6つの色素分子を含有するが、しかしその輝度は、自己消光のために〜2−4つの色素分子に対応する。PFBTドットの蛍光寿命は、TCSPC設定により測定した。単一PFBTドットが多重エミッターを含有ウシ、これは蛍光寿命単独から予測されるものより高い光子発光速度を生じる、ということにも注目。
「コア」
【0066】
一実施形態では、発色性ポリマードットのコアは、非局在性パイ電子を有する発光半導電性ポリマーを含む。「半導電性ポリマー」という用語は、当該技術分野で認知されている。典型的発光半導電性ポリマーとしては、フルオレンポリマー、フェニレンビニレンポリマー、フェニレンポリマー、フェニレンエチニレンポリマー、ベンゾチアゾールポリマー、チオフェンポリマー、カルバゾールフルオレンポリマー、ホウ素−ジピロメテンベースのポリマー、そのポリマー誘導体、およびその任意の組合せを含むコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、発色性ポリマーは、発光性種としての小有機色素または金属錯体の単位と共有結合される半導電性ポリマーであり得る。このような発光性単位は、発光色を調整して、量子収量を増大し、発色性ポリマードットの光安定性を改良し得る。
【0067】
好ましい一実施形態では、小有機色素または金属錯体は感知機能を有し、したがって、発色性ポリマードットに、付加的機能性、例えば酸素感知能力、イオン感知能力、グルコース感知能力、神経伝達物質感知能力、薬剤感知能力、代謝物質感知能力、タンパク質感知能力、シグナル伝達分子感知能力、毒素感知能力、DNAおよびRNA感知能力等を付加し得る。例えば、プラチナポルフィリンは、半導電性ポリマーと共有的に連結され、その結果生じる発色性ポリマードットは酸素センサーとして用いられ得る。別の実施形態では、発色性ポリマーは、光発色性色素の単位と共有結合される半導電性ポリマーであり得る。光発色性単位は、エネルギー移動アクセプターとして役立ち得る。適切な波長の発光時に、光発色性単位は、異なる吸収スペクトルを有する2つの構造型の間で可逆的転換を受ける。したがって、発色性ポリマードットの発光は、別の波長の光で変調されて、所望の光スイッチング能力を有する発色性ポリマードットを作製し得る。光スイッチングプローブは、当該技術分野で認知されているPALM、STORM等のような超解像度画像処理技術のための特に有用である。
【0068】
いくつかの実施形態では、発色性ポリマードットのコアは、小有機色素分子、金属錯体、光発色性色素およびその任意の組合せの単位を含むポリマー、例えば光学的不活性ポリマー、例えば小有機色素、金属錯体、光発色性色素およびその任意の組合せと共有結合されるかグラフト化されるポリスチレンを含有する。これらの色素または金属錯体は感知機能を有し、したがって、発色性ポリマードットに、付加的機能性、例えば酸素感知能力、イオン感知能力、グルコース感知能力、神経伝達物質感知能力、薬剤感知能力、代謝物質感知能力、タンパク質感知能力、シグナル伝達分子感知能力、毒素感知能力、DNAおよびRNA感知能力等を付加し得る。
【0069】
関連実施形態では、本明細書中で提供されるような発色性ポリマードットは、1つ以上のpH感受性色素を含み得る。例えば、フルオレセインは、本明細書中で提供されるポリマードットの表面と共役され得る周知のpH感受性色素である。一旦フルオレセインがポリマードットと共役されると、それは、ポリマードットのコア中に存在する発色性ポリマーとともに蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に加わり得る。溶液中に存在する場合、フルオレセイン共役発色性ポリマードットのFRET発光は、溶液のpHによって決まる。これは、本明細書中で提供される実施例31で実証される。
【0070】
同様に、一実施形態では、本発明は、溶液のpHを決定する方法であって、溶液をpH感受性色素と共役された発色性ポリマードットと接触させるか、あるいはポリマードットのコア中に存在する発色性単位とともにFRETに加わり得るポリマードットのコア内に包埋されたpH感受性色素を有し、ポリマードットのコア中の発色性単位を励起して、pH感受性色素のFRET発光を検出するステップを包含する方法を提供する。
【0071】
別の関連実施形態では、本明細書中で提供されるような発色性ポリマードットは、1つ以上の温度感受性色素を含み得る。例えば、ローダミンBは、発色性ポリマードットのコア内に包埋されるか、または表面に官能化され得る周知の温度感受性色素である。一旦ポリマードットの疎水性コア内に包埋されると、それは、ポリマードットのコア中に存在する発色性ポリマーとともに蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に加わり得る。溶液中に存在する場合、ローダミンB共役発色性ポリマードットのFRET発光は、溶液の温度によって決まる。これは、本明細書中で提供される実施例30で実証される。
【0072】
同様に、一実施形態では、本発明は、溶液の温度を決定する方法であって、溶液を温度感受性色素と共役された発色性ポリマードットと接触させるか、あるいはポリマードットのコア中に存在する発色性単位とともにFRETに加わり得るポリマードットのコア内に包埋された温度感受性色素を有し、ポリマードットのコア中の発色性単位を励起して、温度感受性色素のFRET発光を検出するステップを包含する方法を提供する。
【0073】
コアは、単に、少なくとも2つの反復構造単位からなる半導電性ホモポリマー、半導電性コポリマーまたは半導電性オリゴマーであり得る。コアはさらにまた、同時に、半導電性ホモポリマー、半導電性コポリマーおよび/または半導電性オリゴマーのうちの2つ以上を含む。半導電性ポリマーまたはオリゴマーは、好ましくは、発光特性を有する。典型的発光ポリマーとしては、フルオレンポリマー、フェニレンビニレンポリマー、フェニレンポリマー、フェニレンエチニレンポリマー、ベンゾチアゾールポリマー、チオフェンポリマー、カルバゾールフルオレンポリマー、ホウ素−ジピロメテンベースのポリマー、そのポリマー誘導体、およびその任意の組合せを含むコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
コアは、偏光発光のような所望の特性を有するよう、他の光学的不活性ポリマー、例えばポリスチレンと物理的に混合されるかまたは化学的に架橋される、活性蛍光団としての半導電性ポリマーも含み得る。光学的不活性ポリマーは、所望の生体分子との共役のために官能基を含有し、したがって、当該生体分子と会合する能力を発色性ポリマーに与え得る。
【0075】
コアは、付加的機能性、例えば酸素感知能力、イオン感知能力、グルコース感知能力、神経伝達物質感知能力、薬剤感知能力、代謝物質感知能力、タンパク質感知能力、シグナル伝達分子感知能力、毒素感知能力、DNAおよびRNA感知能力等を有するために、小有機色素、金属錯体、光発色性色素およびその任意の組合せと共有結合されるかまたはグラフト化される光学的不活性ポリマーのような他の発色性ポリマーと物理的に混合されるかまたは化学的に架橋される半導電性ポリマーも含み得る。コアは、発光色を調整して、量子収量および光安定性を改良し、そして付加的機能性、例えば磁気機能、プラスモン共鳴機能等を有するために、蛍光色素、無機発光物質、磁気物質、金属物質、からなる多の構成成分と物理的に混合されるかまたは化学的に架橋される半導電性ポリマーも含み得る。発色性ポリマードットのコアのサイズは変動し、約1nmから約1000nmまでのサイズで調整され得る。
図1は、フルオレンおよびベンゾチアゾール由来の発色性コポリマーPFBTの化学構造を示す。
「キャップ」
【0076】
発色性ポリマードットのキャップは、物理的会合または化学結合により発色性ポリマーのコアと結合される官能化剤を含み、生体共役のために発色性ポリマードット上に表面官能基を提供する。好ましくは、官能化剤はポリマーであり、これは、発色性であり得るし、そうでない場合もある。例えば、官能化は、疎水性部分および1つ以上の官能基を含有する親水性部分を含む両親媒性ポリマーにより提供され得る。一実施形態では、疎水性部分は、疎水性相互作用により発色性ポリマードットのコア中に物理的に包埋され、一方、官能基を含有する親水性部分は生体共役のために溶液中に広がる。別の実施形態では、官能基を含有するポリマーを予備形成発色性ポリマーと化学的に会合して、官能化発色性ポリマードットを生成することが選択され得る。化学的会合は、任意数の化学結合相互作用、例えば共有結合、イオン結合、極性共有結合、水素結合または金属リガンド結合であり得る。
【0077】
好ましくは、官能化剤は、少なくとも約1週間、凝集を引き起こすことなく、発色性ポリマードットの水溶性および安定性を保持するのを手助けし、さらに好ましくは、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、3年および5年に亘って溶液中で安定にさせる。
【0078】
一実施形態では、官能化剤は、化学的会合、例えば共有結合、イオン結合、水素結合等により、発色性ポリマーのコアと結合される。官能化剤は、発色性ポリマーの主鎖または側鎖中の反応性部位と化学結合され得る。
【0079】
別の実施形態では、官能化剤は、物理的会合により、発色性ポリマードットのコアに固定される。物理的会合は、一連の力、例えばファンデルワールス、静電気、パイスタッキング、疎水性、エントロピー力およびその組合せ(これらに限定されない)から生じ得る。好ましい一実施形態では、官能化剤は、疎水性部分および1つ以上の官能基を含有する親水性部分を含み得る。疎水性部分は疎水性相互作用により発色性ポリマードット中に物理的に包埋され、一方、官能基を含有する親水性部分は、生体共役のために溶液中に広がる。特定の一実施形態では、官能化剤は、生物学的存在物と直接または間接的に結合し得るビオチン、葉酸、フォレート、ファロイジン、またはペプチド、核酸、炭水化物等を含む任意の分子であり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、官能化剤は、カルボン酸またはその塩、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、その置換誘導体またはその組合せのような官能基を含む小有機分子、界面活性剤または脂質分子である。概して、生体共役を可能にする任意の官能基が用いられ得る。このような基は、例えばBioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996 またはその後のバージョン)で、当業者が見出し得る。これらの分子は、発色性ポリマードットのコアと化学的または物理的に結合されて、生体共役のために発色性ポリマードット上に表面官能基を提供する。
【0081】
別の実施形態では、官能化剤は、カルボン酸またはその塩、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、その置換誘導体またはその組合せのような官能基を含むポリマーである。概して、生体共役を可能にする任意の官能基が用いられ得る。このような基は、例えばBioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996 またはその後のバージョン)で、当業者が見出し得る。官能化ポリマーは、任意の化学結合または物理的力により発色性ポリマードットのコアと会合されて、生体共役のために発色性ポリマードット上に表面官能基を提供する。
【0082】
好ましい一実施形態では、官能化剤は、疎水性部分、および1つ以上の官能基を含有する親水性部分を含む両親媒性ポリマーである。疎水性部分は疎水性相互作用により発色性ポリマードット中に物理的に包埋され、一方、官能基を含有する親水性部分は生体共役のために溶液中に広がる。
【0083】
ある実施形態では、両親媒性ポリマーは、親水性官能基で修飾された疎水性発色性ポリマーである。例えば、一実施形態では、官能化発色性ポリマードット(Pドット)は疎水性コアおよび親水性キャップを有し、Pドットは、(a)第一疎水性半導電性ポリマー;および(b)反応性官能基と結合される第二両親媒性半導電性ポリマーを含み、第一疎水性半導電性ポリマーPドットの疎水性コア内に包埋され;第二半導電性ポリマーの一部分がPドットのコア内に包埋され、そして反応性官能基が親水性キャップ中に(すなわち、Pドットの表面に)位置する。
【0084】
別の実施形態では、官能化剤が強力な疎水性力によりポリマードットのコアに恒久的に固定され、親水性部分が生体共役のために溶液中に広がる官能基を含むよう、官能化剤は、疎水性部分の多重反復単位および親水性部分の多重反復単位を含む櫛型両親媒性ポリマーである。
【0085】
両親媒性ポリマーの疎水性部分は、多数の芳香族環からなるポリマードットのコアとの疎水性結合を強化するために、アルキル基、さらに好ましくはアリール基であり得る。適切な親水性部分は、カルボン酸またはその塩、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、その置換誘導体またはその組合せにより官能化されうるポリアルキレングリコールであり得る。概して、生体共役を可能にする任意の官能基が用いられ得る。このような基は、例えばBioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996 またはその後のバージョン)で、当業者が見出し得る。望ましくは、本発明の官能化剤は、アリール基の多重単位およびポリアルキレングリコールと結合されるカルボン酸、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、スクシンイミジルエステルまたはヒドロキシルの多重単位を含む両親媒性ポリマーである。
図1は、カルボン酸で終結されるポリスチレングラフトエチレンオキシド(PS−PEG−COOH)のような官能化剤の化学構造を示す。
生体直交型またはクリック型発色性ポリマードット
【0086】
クリックケミストリーは、迅速、選択的であり、高収率を生じる強力な化学反応組を記述する(H. C. Kolb, M. G. Finn, K. B. Sharpless, Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 2004)。これらの反応のうち、最も認知されているのは、銅(I)触媒アジド−アルキン環状付加であって、これは、材料化学(J. E. Moses, A. D. Moorhouse, Chem. Soc. Rev. 2007, 36, 1249)から薬剤発見(H. C. Kolb, K. B. Sharpless, Drug Discov. Today 2003, 8, 1128)および化学生物学(Q. Wang, T. R. Chan, R. Hilgraf, V. V. Fokin, K. B. Sharpless, M. G. Finn, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 3192;A. E. Speers, G. C. Adam, B. F. Cravatt, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 4686;J. A. Prescher, C. R. Bertozzi, Nat. Chem. Biol. 2005, 1, 13;N. J. Agard, J. M. Baskin, J. A. Prescher, A. Lo, C. R. Bertozzi, ACS Chem. Biol. 2006, 1, 644;およびE. M. Sletten, C. R. Bertozzi, Angew. Chem. Int. Ed. 2009, 48, 6974)までの範囲の多様な領域に適用されてきた。
【0087】
生物学的用途に関して、アジドおよびアルキン基はともに、任意のネイティブな生物学的官能基と相互作用しないため、生体直交型化学レポーターであると考えられる。その結果、これらの生体直交型レポーターは、細胞の生合成機構を用いて標的生体分子中に組入れられて、外因性プローブでその後タグ化され得る化学ハンドルを提供し得る。生体直交型化学レポーターは、遺伝的コード化タグ、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)と相補性であり、直接的遺伝的コード化を必要とせずに、生体分子をタグするための手段を提供する。これらのレポーターは、タンパク質だけでなくグリカン、脂質および核酸といった多数のクラスの生体分子を可視化するための強力なアプローチを提供する(Prescher et al.、上記)。さらに、GFPと異なり、生体直交型化学レポーターは、細胞の機能をさほど混乱させないと思われる小分子を基礎にしている。
【0088】
クリックケミストリーによる生体直交型反応は、細胞環境の複雑さにもかかわらず、高感受性で、バックグラウンドノイズは低い。しかしながら、実際、感受性は、標的分子の存在量、化学レポーターの標識効率、ならびに外因性プローブの性能により制約を加えられる。ほとんどすべての場合、特に低存在量生体分子の長期追跡および高感度検出のために、明るく且つ光安定性のプローブが非常に望ましい。
【0089】
蛍光ナノ粒子は、近年多くの注目を引きつけている。一般によく知られた量子ドット(Qドット)は、伝統的蛍光色素を上回る改良された輝度および光安定性を示す。しかしながら、クリックケミストリーの状況では、銅触媒は、Qドット蛍光を不可逆的に消光して、銅触媒クリックケミストリーを基礎にした種々の用途におけるそれらの有用性を妨げる(S. Han, N. K. Devaraj, J. Lee, S. A. Hilderbrand, R. Weissleder, M. G. Bawendi, J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 7838)。銅の細胞傷害性のため、銅無含有生体直交型アプローチ、例えばシュタウディンガー結紮および歪促進アジド−アルキン環状付加が、生細胞およびin vivo用途のために開発されてきた(Agard et al.、上記)が、しかしこれらの反応は、時として、冗長な合成のために実行がより困難になり得る(Han et al.、上記)。Qドットは、銅無含有方法に用いられ得る(A. Bernardin, A. Cazet, L. Guyon, P. Delannoy, F. Vinet, D. Bonnaffe, I. Texier, Bioconjug. Chem. 2010, 21, 583)が、この場合、銅により引き起こされるそれらの不安定性は問題ではない。しかしながら、重金属イオンの浸出により引き起こされるQドットの固有の毒性は、依然として重大な関心事である。
【0090】
半導電性ポリマードット(Pドット)は、新規クラスの超輝度蛍光プローブを表し、これは、クリックケミストリーベースの用途に関する両問題を克服し得る。従来の研究は、Pドットが異なる細胞性検定において細胞傷害性でなく、それらを生体系における研究のための魅力あるものにする、ということを示した。一態様では、本発明は、クリックケミストリーを含めたPドットの生物学的用途に焦点を合わせる。Pドットは、Qドットより大層明るい蛍光プローブであり;Qドットの千倍速い発光速度を有し;そして光安定性で、「明滅」しない。しかしながら、生物学的用途に関しては、Pドットの有意の問題は、それらの表面化学および生物学的分子との共役に関する制御である。これは、生物学的研究におけるPドットの広範囲に及ぶ採用を妨げてきた有意の難題である。
【0091】
一態様では、本発明は、Pドット表面に官能基を作製することによりこの難題を克服する一般的方法を提供する。Pドットの生成は疎水性相互作用により駆動されるため、親水性官能基を有する親水性ポリマーの中にはナノ粒子生成中に単一ドットに共縮合されるものもある。両親媒性ポリマー上の親水性基は、生体分子との共役のためにPドットを官能化するためのハンドルとして用いられ得る。一般的コポリマーであるポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)(PSMA)は、さらなる表面共役のためにPドットを上首尾に官能化する、ということが判明した(
図14)。PSMAは、抗範囲の分子量および無水マレイン酸含量で市販されているため、Pドット官能化のための優れた選択肢を提供する。
【0092】
実施例17で示すように、PSMAは、高蛍光性半導電性ポリマーであるポリ[9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−1,4−ベンゾ−{2,1’−3}−チアジアゾール)](PFBT)から作られるPドットを官能化するために用いられたが、しかし、この方法は任意の疎水性蛍光半導電性ポリマーに適用され得る。Pドット生成中、PSMA分子の疎水性ポリスチレン単位はPドット粒子の内側に固定されたが、一方、無水マレイン酸単位はPドット表面に位置し、水性環境中で加水分解されて、Pドット表面にカルボキシル基を生じたと思われる。本明細書中に示すように、カルボキシル基はさらなる表面共役を可能にする。
【0093】
実施例21に示すように、小色素分子に関して用いられる一般的濃度(典型的にはμM範囲)より低い桁数である非常に低いPドット濃度(〜50nM)が、生物学的標識用途のために用いられ得る。これらの結果は、クリックケミストリーによるPドットタグ化が非常に特異的であり、すべての対照試料においてバックグラウンド標識を事実上全く伴わない、ということも示した。さらに、Pドットプローブは、糖タンパク質、ならびに異なる細胞株3T3繊維芽細胞で検出される新規合成タンパク質を検出するためにも用いられた。これらすべての場合に、Pドットはさらにまた、標的を特異的且つ効果的に標識下が、これは、この戦略が異なる細胞株において等しく効率的且つ上首尾であったことを実証する。
【0094】
したがって、一実施形態では、本発明は、細胞性標的のクリックケミストリーベースの生体直交型標識化のために官能的分子をPドットと共有結合する共役のための方法を提供する。これらの官能化Pドットは、例えば、生体直交型化学レポーターで代謝的に標識された哺乳動物細胞中の新規合成タンパク質および糖タンパク質を、選択的に標的にし得る。Pドットおよびクリックケミストリーを用いた非常に効率的、特異的且つ明るいタンパク質標識化は、種々の細胞性過程を可視化するためのこの方法の可能性を実証する。本明細書に記載される方法および組成物は、広範囲の細胞性研究および蛍光用途にPドットが用いられるのを可能にする。
【0095】
一実施形態では、本発明は、分子、好ましくは生体分子が、クリック反応による化学結合によってポリマードットと結合される発色性ポリマードット共役体を提供する。これを達成するために、クリックケミストリー反応に参加し得る第一官能基が、分子(例えば性体分子)中に工学処理される。例えば生体分子中にアジドを組み込むための魅力的アプローチは、代謝的標識化を基礎にしており、それにより、細胞の生合成機構を用いて、アジド含有生合成前駆体が生体分子中に組入れられる。次いで、第一官能基とのクリックケミストリー反応に参加し得る第二の相補的官能基が、本明細書中で提供されるような発色性ポリマードットと結合される。生体分子中の第一官能基とポリマードット上の相補的官能基との間の、クリックケミストリーによる反応は、ポリマードット生体共役体を形成する。
【0096】
一実施形態では、有機アジドは、生体分子中で連結されるかまたは濃化される官能基として用いられる。相補的官能基としての末端アルキンが、ポリマードットと会合される。
図22(反応i)に示したように、触媒として銅(I)を用いるアジドとアルキン基との間の[3+2]環状付加は、ポリマードットと生体分子との間に安定なトリアゾール結合を形成させる。代替的には、アルキンは、環歪みにより活性化され得る。例えばシクロオクチンおよびそれらの誘導体は、触媒を必要とせずに室温でアジドと反応し得る。歪促進[3+2]環状付加(
図22、反応ii)による生体共役は、細胞傷害性銅に対する要件を除去し、これは、生細胞およびin vivo用途に特に適している。別の実施形態では、生体分子は、シュタウディンガー結紮(
図22、反応iii)によりポリマードットと共役され得る。「シュタウディンガー結紮」という用語は、当該技術分野で認知されており、これは、アミド結合を形成するためのホスフィンおよびアジド間の選択的反応を記述する。官能的ホスフィン基は、ポリマードットと会合されるかまたは共有結合される。生体分子におけるホスフィン基とアジド基との反応は、触媒を必要とせずにポリマードット生体共役体も形成する。クリックケミストリーおよびシュタウディンガー結紮は、遊離生体分子をポリマードットと共役させるために用いられ得る。アジド−、シクロオクチン−およびホスフィン官能化ポリマードットは、in vitroまたはin vivoでアジド含有生体分子を特異的に標的化するためにも用いられ得る。
【0097】
したがって、一実施形態では、本発明は、コアおよびキャップを含む官能化発色性ポリマードット(Pドット)を提供するが、この場合、上記コアは、発色性ポリマーを含み、上記キャップは、クリックケミストリー反応を介して分子と共役され得る1つ以上の官能基を保有する官能化剤を含むが、但し、上記キャップのすべてが有機ケイ酸塩というわけではない。具体的一実施形態では、官能基は、アルキン、歪みアルキン、アジド、ジエン、アルケン、テトラジン、歪みアルケン、シクロオクチン、ホスフィン基、ならびにクリック反応および他の生体直交型反応のためのその他の基から選択される。
【0098】
関連実施形態では、本発明は、疎水性コアおよび親水性キャップを有する官能化発色性ポリマードット(Pドット)であって、Pドットが、(a)半導電性ポリマー;ならびに(b)疎水性部分およびクリックケミストリー反応を介して分子と共役され得る反応性官能基と結合される親水性部分を有する両親媒性分子を含み、半導電性ポリマーがPドットの疎水性コア内に包埋され;そして両親媒性分子の一部分がPドットのコア内に包埋されて、反応性官能基が親水性キャップ中に位置する官能化発色性ポリマードットを提供する。具体的一実施形態では、官能基は、アルキン、歪みアルキン、アジド、ジエン、アルケン、テトラジン、歪みアルケン、シクロオクチン、ホスフィン基、ならびにクリック反応および他の生体直交型反応のためのその他の基から選択される。
生体共役化発色性ポリマードット
【0099】
別の態様では、本発明は、本明細書中に記載されるような官能化発色性ポリマードットおよび生体分子を含む生体共役体を提供するが、この場合、生体分子は、任意の適切な手段により直接または間接的にポリマードットと結合される。生体共役体は、生物学的粒子、例えばウイルス、細胞、生物学的または合成小胞、例えばリポソームと物理的または化学的に会合される上記のような官能化発色性ポリマードットも含む。
【0100】
「生体分子」という用語は、合成または天然タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、アミノ酸、代謝物質、薬剤、毒素、核酸、ヌクレオチド、炭水化物、糖、脂質、脂肪酸等を記述するために用いられる。生体分子は、任意の適切な手段により、例えば任意の安定な物理的または化学的会合により、直接または間接的にポリマードットと結合され得る。望ましくは、生体分子は、1つ以上の共有結合を介して、官能化ポリマードットの親水性官能基と結合される。例えば、ポリマードットの官能基がカルボキシル基である場合、タンパク質生体分子は、タンパク質生体分子のアミン基でカルボキシル基を架橋することにより、ポリマードットと直接的に結合され得る。
【0101】
「架橋剤」という用語は、分子を一緒に共有結合するために、類似のまたは異類の分子上の分子基間に化学結合を形成し得る化合物を記述するために用いられる。本発明において、適切な架橋剤は、カルボキシル基をアミン基と結合するもの、例えば1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)である。一般的架橋剤の他の例は、当該技術分野で既知である。例えば、Bioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996またはその後のバージョン)参照。発色性ポリマードットとの生体分子の間接的結合は、「リンカー」分子、例えばアビジン、ストレプトアビジン、ニュートラアビジン、ビオチン等の分子の使用により生じ得る。
【0102】
したがって、一実施形態では、本発明は、本明細書中で提供されるような疎水性コアおよび親水性キャップを有する官能化発色性ポリマードットを提供するが、この場合、生物学的分子は、親水性キャップ構造中に(すなわち、ポリマードットの表面に)存在する反応性官能基と共役される。
【0103】
一般的には、任意の当該生物学的分子は、本明細書中で提供される発色性ポリマードットと共役され、例としては、標的分子、エフェクター分子、阻害剤分子、画像処理分子等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明により提供される発色性ポリマードットと共役され得る例示的生物学的分子としては、合成または天然のタンパク質、糖タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、核酸、炭水化物、脂質、脂肪酸およびその組合せが挙げられる。
【0104】
具体的一実施形態では、本発明は、コアおよびキャップを含む官能化発色性ポリマードット(Pドット)を提供するが、この場合、上記コアは発色性ポリマーを含み、上記キャップは生物学的分子と共役される1つ以上の官能基を保有する官能化剤を含むが、但し、上記キャップのすべてが有機ケイ酸塩であるというわけではない。一実施形態では、生物学的分子は、合成タンパク質、天然タンパク質、糖タンパク質、ポリペプチド、アミノ酸、核酸、炭水化物、脂質、脂肪酸およびその組合せから選択される。具体的一実施形態では、生物学的分子はポリペプチドである。一実施形態では、ポリペプチドは抗体またはその断片である。別の具体的実施形態では、生物学的分子は核酸である。一実施形態では、生物学的分子はアプタマーである。
【0105】
関連態様において、本発明は、疎水性コアおよび親水性キャップを有する官能化発色性ポリマードット(Pドット)であって、Pドットが、(a)半導電性ポリマー;ならびに(b)生物学的分子と共役される反応性官能基を保有する両親媒性分子を含み、半導電性ポリマーがPドットの疎水性コア内に包埋され;そして両親媒性分子の一部分がPドットのコア内に包埋されて、反応性官能基および共役化生物学的分子が親水性キャップ中に(すなわち、ポリマードットの表面に)位置する官能化発色性ポリマードットを提供する。
【0106】
一実施形態では、生物学的分子を発色性ポリマードットと共役するために用いられる反応性官能基は、クリックケミストリー反応およびその他の生体直交型反応に参加し得る化学部分である。具体的一実施形態では、官能基は、アルキン含有部分、アジド含有部分およびホスフィン含有部分から選択される。
【0107】
いくつかの実施形態では、発色性ポリマードットは、「エフェクター部分」と共役される。エフェクター部分は、任意数の分子、例えば標識部分、例えば放射性標識または蛍光標識;ターゲッティング部分、例えば抗体、アプタマー、タンパク質、ペプチドであり得るし;あるいは治療用部分であり得る。このような治療用部分としては、抗腫瘍薬、毒素、放射性作因、サイトカイン、抗体または酵素が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、本発明は、本発明の発色性ポリマードットが、プロドラッグを細胞傷害性物質に添加する酵素と連結される実施形態を提供する。
【0108】
さらに他の実施形態では、本明細書中で提供されるような官能化発色性ポリマードットは、1つより多い型のエフェクター分子と共役される。例えば、一実施形態では、発色性ポリマードットは、ターゲッティング部分(例えば、抗体またはアプタマー)および治療用部分(例えば、抗腫瘍薬、毒素、放射性作因、サイトカイン、抗体または酵素)の両方と共役される。このようなものとして、本明細書中で提供される官能化発色性ポリマードットは、ポリマードットそれ自体の蛍光および治療用部分により、診断/画像処理ツールの両方として役立ち得る。
in vivo用途のための発色性ポリマードット
【0109】
ナノ粒子ベースの診断および治療用作因は、臨床的腫瘍学およびその他の生物医学的研究に関するそれらの可能性のため、かなりの関心をひきつけてきた。万能ナノ構造は、in
vivo用途、例えば薬剤送達のための脂質および高分子ナノカプセル、磁気共鳴画像処理のための酸化鉄ナノ粒子、X線コンピューター断層撮影のための金ナノ粒子、蛍光画像処理のための量子ドット(Qドット)に関して実証されている。特に、有機分子ベースのナノカプセルは、薬剤封入および送達のための柔軟性小胞を提供する。しかしながら、それらは画像処理明暗比をめったに提供できず、一般的に、蛍光によるin vivoモニタリングを可能にするための分子タグを必要とする。逆に、無機ナノ粒子は、それらの独特の特性のため、画像処理造影剤として主に用いられる。Qドットは、過去10年間に生物学に転換された興味喚起中のナノテクノロジーの1つを表す。サイズ調整可能な発光はそれらを広範な生物学的標識化、画像処理および感知のための多色蛍光として魅力的にする。しかしながら、in vivo適用に関しては、Qドットの固有の毒性は重大な関心を有し、これが、それらの最終的臨床的転換を妨げ得る。
【0110】
近年の際立った論文(Choi, H. S. et al. Nature Biotechnol. 25, 1165-1170 (2007))において、潜在的臨床的有用性を有するナノ粒子を区別するための3つの判
定基準が提唱された:(i)迅速腎クリアランスを可能にするための<5.5nmの最終流体力学的直径(HD);および/または(ii)完全に非毒性の構成成分を有する処方物;および/または(iii)掃去可能構成成分に対する生分解性。小HD(<5.5nm)は効率的腎クリアランスを生じて、毒性作用を緩和し得る(同上)が、しかしこのようなサイズ限度は大半のナノ粒子系、特に量子ドットに関して大きな難題を有し(Choi, H. S. et al. Nature Nanotechnol. 5, 42-47 (2010)))、この場合、発光はサイズ依存性であり、水溶性のために封入層が必要とされる。したがって、生物学的に優しい材料を用いた明るい蛍光プローブの設計が、ヒト疾患の診断および処置に関連した多くのin vivo用途のためには非常に望ましい。
【0111】
半導電性ポリマーは、有機高分子性を、半導体の独特の光学特性とともに併有する。蛍光ナノ粒子標識として半導電性ポリマーを適合させる動機付けは、多数の好ましい特質、例えば高い粒子当たり輝度、迅速発光速度および優れた光安定性に由来する。さらに、半導電性ポリマードット(Pドット)は、本質的に優しく且つ生体適合性である:細胞傷害性は、高濃縮ナノ粒子とともに数日間インキュベートした異なる細胞株で観察されなかった(Moon, J. H. et al., Angew. Chem. Int. Ed. 46, 8223-8225 (2007); and Pu, K. Y. et al., Chemistry of Materials 21, 3816-3822 (2009))。開発初期段階では未だであったが、Pドットは強い関心を引いてきた(例えば、Pecher,
J. & Mecking, S. Chem. Rev. Article ASAP (2010);およびKaeser, A. & Schenning, A. P. H. J. Adv. Mater. 22, 2985-2997 (2010)参照)。
【0112】
合成化学者を含めた研究者等は、発光色の調整(Abbel, R., et al., Chem. Commun., 1697-1699 (2009)、この記載内容は参照により本明細書中で援用される)、新規の製造方法の探究(Baier, M. C. et al., J. Am. Chem. Soc. 131, 14267-14273 (2009)、この記載内容は参照により本明細書中で援用される)、粒子表面の工学処理(Howes, P. et al., J. Am. Chem. Soc. 132, 3989-3996 (2010)、この記載内容は参照により本明細書中で援用される)、磁気物質の封入(Howes, P. et al. J. Am. Chem. Soc. 132, 9833-9842 (2010)、この記載内容は参照により本明細書中で援用される)、ならびに見張りリンパ節マッピングのための最初のin vivo実験(Kim, S. et al. Chem. Commun. 46, 1617-1619 (2010)、この記載内容は参照により本明細書中で援用される)といったような、生物医学的研究のためのナノ粒子の万能性および機能を改良するための種々の方法を開発してきた。あらゆる努力にもかかわらず、これらのポリマーベースの新規のプローブがin vivoで悪性腫瘍に対して特異的に標的化され得るか否かは、依然として不明である。特異的腫瘍ターゲッティングは、任意のさらなる臨床的考察のための第一の必要前提条件である。一態様では、本発明は、in vivo適用のために有用な発色性ナノ粒子のリガンド共役およびプローブ性能に関連したいくつかの難題を克服する。
【0113】
本明細書中で記載されるように、種々の半導電性ポリマーは、蛍光標識としての小Pドットを調製するために用いられ得る。特に、ポリフルオレン(PF)およびそれらの誘導体は、高蛍光量子収量ならびに優れた熱および化学的安定性を示す。ポリマー主鎖中に狭帯域ギャップ単量体を導入して(Hou, Q. et al. Macromol. 37, 6299-6305 (2004);およびYang, R. Q. et al. Macromol. 38, 244-253 (2005)、この記載内容は参照により本明細書中で援用される)、蛍光プローブを設計するための大きな柔軟性を示すことにより、青色から深赤色領域へのそれらの発光色の調整が有意に達成されてきた。しかしながら、蛍光量子収量は、特に深赤色領域において、狭帯域ギャップ単量体の濃度が増大されると、有意に低下する(上記参照)。交換条件として、少量の狭帯域ギャップ単量体のみがPFコポリマー中に組入れられて高蛍光量子収量を保持し、これが、紫外(UV)領域における相対的Pドットの目立った吸収を生じた(
図23)。これは、in vivo適用のための重大な欠点である。
【0114】
上記の制限を克服するために、本発明は、Pドット中で起きる効率的粒子内エネルギー移動を利用するドナー・アクセプターポリマー配合物からなるナノ粒子を提供する(例えば、Wu, C. et al., J. Phys. Chem. C 112, 1772-1781 (2008);およびWu, C. et al., J. Phys. Chem. B 110, 14148-14154 (2006)参照)。ポリマー配合物ドット(「PBドット」)は、可視光吸収性ポリマー(PFBT)をドナーとして、そして効率的深赤色発光ポリマー(PF−0.1TBT)をアクセプターとして用いることにより、調製された(ポリマー構造を
図24に示す)。ドナーおよびアクセプターポリマーは単一ドット中に密に詰め込まれるため、粒子内エネルギー移動はPFBTドナーの完全消光を生じ、アクセプターポリマー単独からの有効な蛍光を伴った(
図25B)。0.6という所定配合比(重量でのPF−0.1TBT対PFBT)で、PBドットは、600nmまで延びる広範な可視吸光度、ならびに0.52の量子収量を伴う効率的650nm発光を示す(
図25Cおよび26A)。
【0115】
配合戦略は、光吸収性ポリマーPFPVおよび異なる赤色発光ポリマーからなる他のポリマードナー・アクセプター系にも上手く適用されたが(
図27)、これは、Pドット特性を調整するためのその一般的適用を示す。近赤外(NIR)領域で発光するPドットは、実施例29で示されるようなin vivo画像処理のためにより好ましいが、しかし一般的PBドットは同様のサイズ(直径〜15nm)の種々のナノ粒子の間で深赤色領域で最も明るいプローブを表し、これが、生物学的組織におけるバックグラウンド自己蛍光および散乱を有意に克服し得る。
【0116】
したがって、一実施形態では、本発明は、深赤色偏移発光を有する発色性ポリマードットを提供する。一実施形態では、発色性ポリマードットは、ポリフルオレンポリマー(PF)およびフルオレン−ベンゾチアジアゾール−チオフェンコポリマー(PF−0.1TBT)の配合物を含む。青色から深赤色領域に発光色を調整するために、狭帯域ギャップTBT単量体がポリフルオレン主鎖中に導入される(Hou, Q. et al. Macromol. 37, 6299-6305 (2004);およびYang, R. Q. et al. Macromol. 38, 244-253 (2005)参照)。TBT単量体の濃度は、0.01から0.5まで変えられ得る。有益であるのは、PFBTおよびPF−0.1TBTを含むこれらのポリマー配合物が、量子収量の有意の損失を伴わずに可視領域および深赤色蛍光における目立った吸収を生じることである。一般的に、配合物は、約2%〜約75%のPF−0.1TBTコポリマーを含有する。ある実施形態では、PF対PF−0.1TBTの比は、約50:1以下、あるいは約45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、3:2、1:1、2:3、1:2または1:3以下である。具体的一実施形態では、ポリマー配合物は、PFBTおよびPF−0.1TBTを含む。好ましい一実施形態では、ポリマードットは、その表面に官能基を含む。
【0117】
具体的一実施形態では、疎水性コアおよび親水性キャップを有する深赤色偏移ポリマードットは、(a)PFBTおよびPF−0.1TBT半導電性ポリマーの配合物;ならびに(b)親水性部分および疎水性部分を有する両親媒性分子(反応性官能基と結合される)を含み、この場合、半導電性ポリマーはPドットの疎水性コア内に包埋され;そして両親媒性分子の一部分はPドットのコア内に包埋され、ならびに反応性官能基は親水性キャップ中(すなわち、ポリマードットの表面)に位置する。いくつかの実施形態では、ポリマードットは、エフェクター分子(例えば、ターゲッティング剤)とさらに共役される。一実施形態では、赤方偏移ポリマードットは、約600nmおよび約700nm間(すなわち、深赤色領域)にピーク発光を有する。
【0118】
別の実施形態では、疎水性コアおよび親水性キャップを有する深赤色偏移ポリマードットは、(a)PFBTポリマー;および(b)PF−0.1TBT半導電性ポリマーを含み、この場合、半導電性ポリマーの亜集団は反応性官能基を保有し、反応性官能基を保有しない半導電性ポリマーはPドットの疎水性コア内に包埋され;そして反応性官能基を保有する半導電性ポリマーの一部分はPドットのコア内に包埋され、ならびに反応性官能基は親水性キャップ中(すなわち、ポリマードットの表面)に位置する。いくつかの実施形態では、ポリマードットは、エフェクター分子(例えば、ターゲッティング剤)とさらに共役される。
【0119】
関連実施形態では、エフェクター分子、例えばターゲッティング部分と共役される深赤色偏移ポリマードットが提供される。一実施形態では、生体共役化発色性ポリマードットは、半導電性ポリマー(例えば、PF、PFBT、PFPV等)およびPF−0.1TBT半導電性ポリマーの配合物を含む。一般的に、配合物は、約2%〜約75%のPF−0.1TBTコポリマーを含有する。ある実施形態では、PF対PF−0.1TBTの比は、約50:1以下、あるいは約45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、3:2、1:1、2:3、1:2または1:3以下である。具体的一実施形態では、ポリマー配合物は、PFBTおよびPF−0.1TBTを含む。別の具体的実施形態では、ポリマー配合物は、PFPVおよびPF−0.1TBTを含む。
【0120】
別の態様では、本発明は、近赤外(NIR)蛍光発光を有する発色性ポリマードットを提供する。本明細書中で用いる場合、「近赤外発光」は、約700nm〜約1500nmの波長を有する電磁放射を指す。実施例29で示されるように、NIR蛍光発光は、本明細書中で提供される発色性ポリマードットの疎水性コア中にNIR色素を包埋することにより達成され得る。多数のNIR蛍光色素が当該技術分野で既知であり、例えば、シアニン色素は、最も一般的に用いられる近IR蛍光色素である。他のNIR色素ファミリーとしては、オキサジン、ローダミンおよびフタロシアニン色素が挙げられる。励起後にNIR発光を達成するために、NIR Pドットは、Pドットを含む発色性ポリマーと、分子の疎水性コア内に包埋されるNIR色素との間の効率的分子間FRETを利用する。したがって、NIR Pドットの調製のために用いられるべきNIR色素を選択する場合、重複する発光および励起スペクトルを有する発色団(すなわち、適切な発色性ポリマーFRETドナーおよびNIR色素FRETアクセプター)を選択するよう注意しなければならない。好ましい一実施形態では、NIRポリマードットは、その表面でさらに官能化される。
【0121】
したがって、一実施形態では、NIRポリマードットはコアおよびキャップを含み、この場合、上記コアは発色性ポリマーおよびNIR色素を含み、そして上記キャップは1つ以上の官能基を保有する官能化剤を含むが、但し、上記キャップのすべてが有機ケイ酸塩であるというわけではない。一実施形態では、ポリマードットは、エフェクター分子(例えば、ターゲッティング剤)とさらに共役される。
【0122】
関連実施形態では、疎水性コアおよび親水性キャップを有するNIRポリマードットは、(a)半導電性ポリマー;(b)NIR色素;および(c)疎水性部分および反応性官能基と結合される親水性部分を有する両親媒性分子を含み、この場合、半導電性ポリマーおよびNIR色素はPドットの疎水性コア内に包埋され;そして両親媒性分子の一部分はPドットのコア内に包埋され、ならびに反応性官能基は親水性キャップ中に位置する。一実施形態では、ポリマードットは、エフェクター分子(例えば、ターゲッティング剤)とさらに共役される。
発色性ポリマードットの製造方法
【0123】
一態様では、本発明は、発色性ナノ粒子(すなわち、発色性ポリマードットまたは「Pドット」)の表面を官能化するための新規の方法を提供する。一実施形態では、当該方法は、異種ポリマー鎖が、ナノ粒子形成中に確立される疎水性相互作用により単一Pドット中に捕捉される。少量の両親媒性ポリマーがPドットの半導電性ポリマーと共縮合されて、ナノ粒子表面を改質し、官能化する。
【0124】
図1は、官能性、両親媒性、櫛型、ポリスチレンポリマーPSPEG−COOHを用いることによる一例を示すが、しかしながら、異なる官能基を有する他の両親媒性ポリマーも用いられ得る。PSPEG−COOHは、疎水性ポリスチレン主鎖、ならびにカルボン酸で終結されるエチレンオキシドのいくつかの親水性側鎖からなる。ナノ粒子形成中、疎水性ポリスチレン主鎖はPドット粒子の内側に包埋されるが、一方、親水性PEG鎖および官能基は水性環境中に外側に延びる。したがって、物理的吸着と違って、この方法は、Pドット表面にPEGおよび官能基を恒久的に固定するはずである。PEG鎖は、非特異的吸収を最小限にする生体適合性層を提供する。PEG鎖はナノ粒子凝集に対する立体バリアとしても作用するが、一方、官能性カルボキシル基は、確立されたプロトコールを用いて生体分子と容易に共有結合され得る(例えば、Xing, Y.; Chaudry, Q.; Shen, C.; Kong, K. Y.; Zhau, H. E.; WChung, L.; Petros, J. A.; O'Regan, R. M.; Yezhelyev, M. V.; Simons, J. W.; Wang, M. D.; Nie, S. Nature Protoc. 2007, 2, 1152-1165参照、この記載内容は参照により本明細書中で援用さ
れる)。
【0125】
好ましい一実施形態では、発色性ポリマードットは、沈降により調製される。この技法は、過剰容積の非溶媒(しかし、有機溶媒と混和性)、例えば水または別の生理学的関連水溶液中への希釈発色性ポリマー溶液(例えば、有機溶媒中に溶解された発色性ポリマー)の迅速付加(例えば、音波処理または激しく撹拌することにより助長される)を包含する。例えば、いくつかの実施形態では、疎水性発色性ポリマーは、先ず、溶解度が良好である有機溶媒(良溶媒)、例えばTHF(テトラヒドロフラン)中に溶解され、その後、THF中の溶解ポリマーは、過剰容積の水または緩衝溶液(これは、疎水性発色性ポリマーに関しては貧溶媒であるが、しかしこれは良溶媒(THF)と混和性である)に付加される。その結果生じる混合物は、音波処理されるかまたは激しく撹拌されて、発色性ポリマードットの形成を助け、次いで、有機溶媒が除去されて、その後に、良好に分散された発色性ナノ粒子が残る。この手法を用いる場合、発色性ポリマーは有機溶媒(例えばTHF)中に溶解するのに十分に疎水性でなければならない。
【0126】
しかしながら、発色性ポリマードットを形成する他の方法も可能であり、例としては、エマルション(例えば、ミニまたはマイクロエマルション)または沈降物または濃縮物を基礎にした種々の方法が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、疎水性官能基は、それらが、例えば生体分子との共役に利用可能であるよう、ポリマードットの表面に位置し得る。一スキームでは、疎水性反応性官能基は、ポリマードットの親水性外面に対して官能基を保有する親水性リンカーと官能基を結合することにより、Pドットの表面に置かれる。この後者のアプローチは、疎水性およびクリック型(すなわち、クリックケミストリーのフレームワーク内である化学反応)の両方である官能基、例えばアルキン、歪みアルキン、アジド、ジエン、アルケン、シクロオクチンおよびホスフィン基(これらに限定されない)を用いて、特に良好に働き得る。
【0127】
したがって、好ましい一実施形態では、本発明は、半導電性ポリマーと、非プロトン溶媒中で溶媒和化される反応性官能基と結合される両親媒性分子との混合物を、プロトン溶媒を含む溶液中に導入することにより、官能化発色性ポリマードットを調製するための方法を提供する。一実施形態では、当該方法はさらに、懸濁液を濾過して、特定サイズのポリマードットの集団を単離することを包含する。
【0128】
具体的一実施形態では、発色性ポリマードットの調製方法は、(a)半導電性ポリマーと非プロトン溶媒中の反応性官能基と結合される両親媒性分子との混合物を調製するステップ;(b)混合物の全部または一部をプロトン溶媒を含む溶液中に導入し(例えば、注入によって)、それにより半導電性ポリマーおよび両親媒性分子を潰してナノ粒子にするステップ;ならびに(c)ステップ(b)で生成された混合物から非プロトン溶媒を除去し、それにより官能化発色性ポリマードットの懸濁液を生成するステップを包含するが、この場合、両親媒性分子の一部分はナノ粒子のコア内に包埋され、反応性官能基はナノ粒子の表面に位置する。一実施形態では、当該方法はさらに、懸濁液を濾過して、特定サイズのポリマードットの集団を単離することを包含する。
【0129】
具体的一実施形態では、両親媒性ポリマーはさらに、反応性官能基を介してエフェクター分子と共役された後、プロトン溶媒を含む溶液中に混合物が導入される。このアプローチは、非プロトン溶媒に耐える分子に関して働くが、しかしそうではない他の分子(例えばタンパク質)に関しては良好に働かない。この戦略の実現可能性の実証として、実施例31は、反応性官能基を含有する両親媒性ポリマーが、先ず、pH感受性フルオレセインイソチオシアネート色素と共役され、次いで、半導電性ポリマーと配合されて、共役化ポリマードットを形成する場合を提供する。
【0130】
非プロトンおよびプロトン溶媒を含む混合物から非プロトン溶媒を除去するために、多数の技法が当該技術分野で既知であり、例としては、蒸留、窒素ストリッピング、ならびに種々のクロマトグラフィー技法(例えば、緩衝液交換クロマトグラフィー)が挙げられるが、これらに限定されない。非プロトン溶媒の沸点がプロトン溶媒の沸点より低い好ましい一実施形態では、非プロトン溶媒は、窒素ストリッピングにより、ステップ(b)で形成された混合物から除去される。好ましい一実施形態では、プロトン溶媒は水である。
発色性ポリマードット生体共役体の調製方法
【0131】
本明細書中で記載されるように、本発明により提供される官能化発色性ポリマードットは、抗範囲の診断および実験的検定で用いられ得る安定な非毒性の蛍光プローブ(すなわちPドット)との生物学的分子の容易な共役を可能にする。このようにして、分子、好ましくは生体分子は、ポリマードットの表面への吸着(例えば、静電または疎水性相互作用により媒介される)により、または直接的化学結合により、発色性ポリマーと結合され得る。
【0132】
本明細書中で用いる場合、「生体共役化CPドット」または「生体共役化Pドット」は、任意の安定な物理的または化学的会合により安定的に結合される任意の生体分子を伴う発色性ポリマードットを指す。「生体共役」は、本出願においては、任意の安定な物理的または化学的会合により発色性ポリマードットと生体分子を共役する工程を指す。
1. 物理的吸着による生体共役
【0133】
生体分子は、物理的吸着により発色性ポリマードットと安定的に会合される。物理的吸着は、一連の力、例えばファンデルワールス、静電気、パイスタッキング、疎水性、エントロピー力およびその組合せ(これらに限定されない)から生じ得る。物理的吸着は、発色性ポリマードット上のキャップ構造、ならびに吸着されている標的分子(例えば、生体分子)の物理的および化学的特性によって媒介される。このようなものとして、親水性キャップを介してポリマードットと結合される官能基は、ポリマードット上に吸着され得る分子の型を決定する。
【0134】
したがって、一実施形態では、本発明は、疎水性コアおよび親水性キャップを含む生体共役化発色性ポリマードットを提供するが、この場合、上記コアは発色性ポリマーを含み、そして上記キャップは、生物学的分子が吸着される1つ以上の官能基を保有する官能化剤を含む。
【0135】
一実施形態では、生体共役化発色性ポリマードットは、半導電性ポリマーと非プロトン溶媒中で溶媒和化される反応性官能基と結合される両親媒性分子との混合物を、プロトン溶媒を含む溶液中に導入して、官能化発色性ポリマードットを調製し、次いで、ポリマードットの表面に生物学的分子を吸着させることにより調製される。一実施形態では、当該方法は、さらに、懸濁液を濾過して、特定サイズのポリマードットの集団を単離した後、ポリマードット上に生物学的分子を吸着させることを包含する。
【0136】
具体的一実施形態では、生体共役化発色性ポリマードットを調製するための方法は、(a)半導電性ポリマーと非プロトン溶媒中の反応性官能基と結合される両親媒性分子との混合物を調製するステップ;(b)混合物の全部または一部をプロトン溶媒を含む溶液中に導入し(例えば、注入によって)、それにより半導電性ポリマーおよび両親媒性分子を潰してナノ粒子にするステップ;(c)ステップ(b)で生成された混合物から非プロトン溶媒を除去し、それにより官能化発色性ポリマードットの懸濁液を生成するステップ(この場合、両親媒性分子の一部分はナノ粒子のコア内に包埋され、反応性官能基はナノ粒子の表面に位置する);ならびに(d)表面上に当該生体分子を吸着するステップを包含する。一実施形態では、当該方法はさらに、懸濁液を濾過して、特定サイズのポリマードットの集団を単離することを包含する。
2. 化学結合による生体共役
【0137】
好ましい一実施形態では、分子(例えば、生体分子)は、化学結合によりポリマードットと結合されるが、これは、ポリマードット上で利用可能である官能基、例えばカルボン酸、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、その置換誘導体またはその組合せを要する。概して、生体共役を可能にする任意の官能基が用いられ得る。このような基は、例えばBioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996 または第二版、2008;これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)で、当業者が見出し得る。その場合、生体共役は、標準生体共役技法(同
上)により実行され得る。
【0138】
したがって、一実施形態では、コアおよびキャップを含む生体共役化発色性ポリマードットを提供するが、この場合、上記コアは発色性ポリマーを含み、そして上記キャップは生物学的分子が共有結合される1つ以上の官能基を保有する官能化剤を含む。
【0139】
具体的一実施形態では、本発明は、疎水性コアおよび親水性キャップを有する生体共役化発色性ポリマードットであって、ポリマードットが(a)発色性ポリマー;および(b)反応性官能基を介して生物学的分子と共役される両親媒性分子を含み、この場合、発色性ポリマーがPドットの疎水性コア内に包埋され;そして、両親媒性分子の一部分がPドットのコア内に包埋され、ならびに共役化生物学的分子が親水性キャップ中に(すなわち、ポリマードットの表面に)位置する生体共役化発色性ポリマードットを提供する。好ましい一実施形態では、発色性ポリマーは、半導電性ポリマーである。
2a. 発色性ポリマーの共有結合的修飾
【0140】
官能化CPドットを作製するための一合成戦略は、二段階工程である:第一段階は、カルボン酸、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、その置換誘導体またはその組合せといったような官能基を保有する発色性ポリマーを合成することである。概して、生体共役を可能にする任意の官能基が用いられ得る。このような基は、例えばBioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996 または第二版、2008)で、当業者が見出し得る。官能基は、発色性ポリマーの主鎖または側鎖との共有結合で作製され得る。このような化学的修飾は、当業者に既知である。第二段階では、官能化発色性ポリマーは、CPドット(生体共役のために利用可能な官能基を有する)を調製するための前駆体として用いられる。官能化発色性ポリマーからのCPドット調製は、2つの混和性溶媒の混合を基礎にした本出願で提供される方法を用い得る(実施例1)。官能化発色性ポリマーからのCPドット調製は、界面活性剤の存在下で、2つの非混和性液相(例えば、水および別の非混和性有機溶媒)を含む混合物を専断することを基礎にしたエマルションまたはミニエマルション法によっても達成され得る。剪断工程、例えば超音波処理は、懸濁液中に官能化発色性ポリマーを含有する安定液滴を作る。有機溶媒の除去後、官能化CPドットが得られるが、これは、典型的には、2〜3ナノメートルからサブミクロンまでのサイズを有する。
【0141】
したがって、一実施形態では、本発明は、生体共役化発色性ポリマードットの調製方法であって、疎水性コア、および1つ以上の反応性官能基を保有する発色性ポリマーを伴う親水性キャップを有する発色性ポリマードットを形成すること(この場合、反応性官能基は親水性キャップ中(すなわち、ポリマードットの表面)に位置する)、そして反応性官能基との連結を介して生体分子をポリマードットと共有結合することを包含する方法を提供する。
【0142】
官能化CPドットを作製する別の合成戦略は、発色性ポリマーの合成をナノ粒子形成と組合せる工程で実証され得る。発色性ポリマーを合成するための単量体単位および/または終結単位の一部分は、官能基、例えばカルボン酸、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、その置換誘導体またはその組合せを有する。概して、生体共役を可能にする任意の官能基が用いられ得る。このような基は、例えばBioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996 またはその後のバージョン)で、当業者が見出し得る。エマルションまたは他の方法により形成される場
合、液滴は、発色性ポリマードットを合成するための単量体、官能性単量体および触媒を含有するマイクロまたはナノリアクターとして役立ち得る。この方法により獲られる発色性ポリマードットは、ナノメートルからミクロンまでのサイズの良好に制御されたサイズを示し、表面官能基、例えばカルボン酸、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、その置換誘導体またはその組合せを有すると予測される。その場合、生体共役は、標準生体共役技法により実行され得る[Bioconjugate Techniques, Academic Press, New York, 1996]。
2b. 官能化剤の配合
【0143】
代替的には、官能化CPドットは、官能基を保有する1つ以上の両親媒性官能化剤の存在下で、1つ以上の発色性ポリマー(この多くが市販されている)を潰すことにより調製され得る。官能化剤の両親媒性は、分子の疎水性部分を圧潰ポリマードットの疎水性コア中に固定させ、一方、1つ以上の官能基を含有する分子の親水性部分は、ポリマードットの親水性キャップに位置する。ある実施形態では、官能化剤は、官能化された発色性ポリマーであり得る。他の実施形態では、官能化剤は、非発色性分子であり得る。
【0144】
本発明の発色性ポリマードットを官能化するために用いられ得る官能化剤の非限定例としては、カルボン酸またはその塩、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、その置換誘導体またはその組合せのような官能基を含む小有機分子、脂質分子およびポリマー分子が挙げられる。概して、生体共役を可能にする任意の官能基が用いられ得る。このような基は、例えばBioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996 または第二版、2008)で、当業者が見出し得る。これらの分子は、発色性ポリマードットのコアと化学結合および/または物理的力により会合されて、生体共役のために発色性ポリマードット上に表面官能基を提供する。
【0145】
好ましくは、官能化剤は、疎水性部分および官能基を含有する親水性部分を含む両親媒性ポリマーである。疎水性部分は、疎水性相互作用によりポリマードット中に物理的に包埋され、一方、親水性部分は、溶液中に広がる。ポリマードット中の疎水性部分のこの物理的包埋は、所望により、官能化剤の疎水性部分とポリマードットとの間の化学的会合の使用により、さらに助長され得る。さらに好ましくは、官能化剤が強力な疎水性力によりポリマードットに恒久的に固定され、親水性部分が生体共役のために溶液中に広がる官能基を含むよう、官能化剤は、疎水性部分の多重反復単位および親水性部分の多重反復単位を含む櫛型両親媒性ポリマーである。
【0146】
両親媒性官能化分子の疎水性部分は、多数の芳香族環からなる発色性ポリマードットとの疎水性結合を強化するために、例えばアルキル基、さらに好ましくはアリール基であり得る。親水性部分は、例えば、カルボン酸、アミノ、メルカプト、アジド、アルキン、アルデヒド、ヒドロキシル、カルボニル、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、シアネート、スクシンイミジルエステル、その置換誘導体またはその組合せのような基によりさらに置換され得るポリアルキレングリコール、好ましくはポリエチレングリコールであり得る。概して、生体共役を可能にする任意の官能基が用いられ得る。このような基は、例えばBioconjugate Techniques (Academic Press, New York, 1996 または第
二版、2008)で、当業者が見出し得る。
【0147】
発色性ポリマーおよび官能化剤からの官能化CPドットは、2つの混和性溶媒の混合を基礎にした本出願で提供される方法(実施例1)を用いることにより調製され得る。発色性ポリマーおよび官能化剤による官能化CPドットは、界面活性剤の存在下で、2つの非混和性液相(例えば、水および別の非混和性有機溶媒)を含む混合物を専断することを基礎にしたエマルションまたはミニエマルション法によっても調製され得る。剪断工程、例えば超音波処理は、発色性ポリマーおよび官能化剤を含有する安定液滴を作る。有機溶媒の除去後、官能化CPドットが得られるが、これは、典型的には、2〜3ナノメートルからサブミクロンまでのサイズを有する。これらの官能化CPドットは、さらに生体共役され得る。
【0148】
したがって、一実施形態では、本発明は、(i)疎水性コアおよび親水性キャップを有する官能化発色性ポリマードットを形成すること(ここで、Pドットは、(a)発色性ポリマー;ならびに(b)疎水性部分および反応性官能基と結合される親水性部分を有する両親媒性分子を含み、この場合、発色性ポリマーはPドットの疎水性コア内に包埋され;両親媒性分子の一部分はPドットのコア内に包埋され、反応性官能基は親水性キャップ中に位置する);そして(ii)反応性官能基との連結を介して生体分子をポリマードットと共有結合することによる、生体共役化発色性ポリマードットの調製方法を提供する。好ましい一実施形態では、発色性ポリマーは半導電性ポリマーである。
2c. 非特異的結合の低減
【0149】
実施例11で実証されるように、生体分子の有意の非特異的吸着は、官能化Pドットの表面で起こり得る。この非特異的吸着は、標的化分子の共有結合を妨げて、共役反応の生成物を使用不可能にさせる。共役反応への遊離ポリエチレングリコールの付加が当該生物学的分子と官能化Pドットとの間の非特異的結合を排除して、共役反応を完了させ得る、ということが判明したことは、有益である。この知見は、本明細書中で提供される実施例11で実証される。
【0150】
したがって、一実施形態では、本発明は、生物学的分子を官能化発色性ポリマードットと共役するための方法であって、生物学的分子を官能化発色性ポリマードットと共役するのに適した条件下で、水溶性ポリマーを含有する溶液中で、官能化発色性ポリマードットを生物学的分子とともにインキュベートすることを包含する方法であり、溶液中の水溶性ポリマーの存在がポリマードットの表面への生物学的分子の非特異的吸着を低減する方法を提供する。一般的に、標的生物学的分子およびポリマードットの表面の非特異的結合を低減する任意の水溶性ポリマーが用いられ得る。水溶性ポリマーの非限定例としては、ポリアルキレングリコール(例えば、PEG)、PEO、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、デンプン、ポリ−炭水化物、ポリシアル酸等が挙げられる。好ましい一実施形態では、水溶性ポリマーは、ポリアルキレングリコールである。具体的一実施形態では、水溶性ポリマーはポリエチレングリコールである。
【0151】
一実施形態では、官能化発色性ポリマードットは、(a)半導電性ポリマー;ならびに(b)反応性官能基と結合される両親媒性分子を含み、この場合、両親媒性分子の一部分はポリマードットのコア内に包埋され、反応性官能基はポリマードットの表面に位置する。
【0152】
一実施形態では、本発明は、生物学的分子を官能化発色性ポリマードットと共役するための方法であって、生物学的分子を官能化発色性ポリマードットと共役するのに適した条件下で、遮断剤を含有する溶液中で、官能化発色性ポリマードットを生物学的分子とともにインキュベートすることを包含する方法であり、溶液中の遮断剤の存在がポリマードットの表面への生物学的分子の非特異的吸着を低減する方法を提供する。
【0153】
一般的に、遮断剤は、標的生物学的分子およびポリマードットの非特異的結合を低減するかまたは効果的に排除し、したがって適切な共役を進行させる任意の分子であり得る。一実施形態では、、遮断剤は、水溶性ポリマー、例えばポリアルキレングリコール(例えば、PEG)、PEO、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、デンプン、ポリ−炭水化物、ポリシアル酸等である。別の実施形態では、遮断剤は、洗剤、例えば費イオン性洗剤または界面活性剤である。用いられ得る洗剤の非限定例としては、トリトンX−100、トゥイーン20、トゥイーン80、Brij洗剤等が挙げられる。さらに別の実施形態では、遮断剤は、炭水化物、例えばデキストラン、アミロース、グリコーゲン等である。
画像処理および分子標識化のための方法
【0154】
上記のように、in vivo画像処理および分子標識化のための蛍光性ポリマーの使用は、一般に用いられている物質、例えばQドットおよびドープ化ラテックス粒子を上回るいくつかの利点を有する。例えば、蛍光ポリマードットは、高蛍光輝度/容積比を保有し、高吸収横断面、高放射速度、高有効発色団密度、ならびに最小レベルの凝集誘導性蛍光消光を有する。蛍光プローブとしての蛍光ポリマーの使用は、その他の有用な利点、例えば、溶液中に浸出し得る重金属イオンの欠如も付与する。しかしながら、生物学的画像処理または感知用途にこれらのプローブを適用するためには、いくつかの重要な問題、特に表面化学および生体共役がさらに解決されなければならない。
【0155】
本明細書中に記載されるように、本発明は、有用な発色性ポリマードット表面化学、官能化および生体共役を提供するための多数の溶液を提供する。したがって、本発明は、本明細書中で提供される官能化発色性ポリマードットの使用を含めた、in vivo画像処理および分子標識化のための改良された方法を提供する。
【0156】
一実施形態では、本発明は、生物学的試料中の標的分子の標識方法であって、生物学的試料を生体共役化発色性ポリマードットと接触させることを包含する方法を提供し、この場合、生体共役化発色性ポリマードットはコアおよびキャップを含み、上記コアは発色性ポリマーを含み、そして上記キャップは反応性官能基を介してターゲッティング部分と結合される官能化剤を含むが、但し、上記キャップのすべてが有機ケイ酸塩であるというわけではない。ターゲッティング剤は、当該標的分子と特異的に結合し得る任意の分子であり得る。好ましい一実施形態では、ターゲッティング剤は、抗体またはその断片である。別の関連実施形態では、ターゲッティング剤はアプタマーである。
【0157】
関連実施形態では、生物学的試料中の標的分子を標識するための方法であって、生物学的試料を生体共役化発色性ポリマードットと接触させることを包含する方法が提供されるが、この場合、生体共役化発色性ポリマードットは、(a)半導電性ポリマー;ならびに(b)反応性官能基を介してターゲッティング部分と結合される両親媒性分子を含み、ここで、両親媒性分子の一部分はポリマードットのコア内に包埋され、そしてターゲッティング部分はポリマードットの表面に位置する。ターゲッティング剤は、当該標的分子と特異的に結合し得る任意の分子であり得る。好ましい一実施形態では、ターゲッティング剤は、抗体またはその断片である。別の関連実施形態では、ターゲッティング剤はアプタマーである。
【0158】
当該標的化分子は、生物体、例えば特定の細胞、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質、代謝物質等の内部に見出される任意の分子であり得る。具体的一実施形態では、標的分子は、細胞、例えば癌細胞の表面に存在する分子である。具体的一実施形態では、官能基は、アルキン、歪みアルキン、アジド、ジエン、アルケン、シクロオクチンおよびホスフィン基から選択される。
【0159】
別の実施形態では、本発明は、細胞性標的の生体直交型標識化のための方法であって、クリックケミストリー反応に参加し得る第一表面曝露官能基を有する細胞性標的をクリック型発色性ポリマードットと接触させることを包含する方法を提供し、この場合、クリック型発色性ポリマードットはコアおよびキャップを含み、上記コアは発色性ポリマーを含み、そして上記キャップはクリックケミストリー反応において第一官能基と反応し得る第二巻の浮きと結合される官能化剤を含むが、但し、上記キャップのすべてが有機ケイ酸塩であるというわけではない。具体的一実施形態では、官能基は、アルキン、歪みアルキン、アジド、ジエン、アルケン、シクロオクチンおよびホスフィン基から選択される。
【0160】
関連実施形態では、本発明は、細胞性標的の生体直交型標識化のための方法であって、クリックケミストリー反応に参加し得る第一表面曝露官能基を有する細胞性標的をクリック型発色性ポリマードットと接触させることを包含する方法を提供し、この場合、クリック型発色性ポリマードットは、(a)半導電性ポリマー;ならびに(b)クリックケミストリー反応において第一官能基と反応し得る第二官能基と結合される両親媒性分子を含み、ここで、両親媒性分子の一部分はポリマードットのコア内に包埋され、そして第二官能基はポリマードットの表面に位置する。
【0161】
上記のように、当該分子中にクリックケミストリー反応に参加し得る第一官能基を組入れる方法は、当該技術分野で既知である。例えば、生体分子中にアジドを組み込むための魅力的アプローチは、代謝的標識化を基礎にしており、それにより、アジド含有生合成前駆体が、細胞の生合成機構を用いて生体分子中に組入れられる。
発色性ポリマードットを用いるCu
2+およびFe
2+イオンの検出方法
【0162】
銅および鉄イオンは、ヒト身体中で最も豊富な3つの遷移金属イオン(亜鉛を含む)のうちの2つである。銅および鉄の推奨摂取量は、正常成人に関しては、それぞれ0.8〜0.9mg/日および8〜18mg/日の範囲である。しかしながら、過剰用量の銅または鉄は、肝硬変、急性中毒、アシドーシス、凝血異常、ならびに急性呼吸窮迫症候群を引き起こすことが知られている。米国環境保護庁(EPA)により改訂された飲料水標準および公衆衛生勧告によれば、銅および鉄の量は、それぞれ1.0mg/Lおよび0.3mg/Lに制限されている。その結果、環境および生物系におけるそれらの有意性のために、銅および鉄の検出のためのより良好なセンサーを開発する努力がなされてきた((Que E.L., et al., Chem. Rev., 2008, 108, 1517-1549)。過去10年間に、その簡易性、良好な感受性および選択性、高信頼性、ならびに相対的に低い経費のため、ナノ粒子ベースのイオンセンサーが強い関心を引きつけて来た。しかしながら、半導電性ポリマーナノ粒子(Pドット)ベースの蛍光イオンセンサーの開拓は、未だ探求されていない。
【0163】
したがって、一態様では、本発明は、銅および鉄イオンの定量的検出のための戦略を提供する。この戦略は、カルボキシル官能化Pドットの凝集により誘導される蛍光消光に基づいている。この方法の実証は、実施例27に見出され得る。
【0164】
一態様において、本発明は、キレート化媒介性Pドットセンサーを基礎にしたCu
2+およびFe
2+イオン検出のための高感受性およびレシオメトリックアプローチを提供する。Cu
2+およびFe
2+の両方に関する線形検出範囲は、生理学的関連濃度範囲内である。しかしながら、この線形範囲は、必要な場合、PS−COOH密度および/またはPドットのサイズを調整することにより、さらに拡大され得る。この簡単な、高感受性の、そして経済的な技法は、半導電性ポリマーナノ粒子の高輝度および光学的調整可能性を利用して、生理学的または環境的分析のためのCu
2+およびFe
2+の迅速決定の一手段を提供する。
【0165】
したがって、一実施形態では、溶液中の銅(II)および/または鉄(II)の検出のための方法であって、(a)溶液をカルボキシル官能化半導電性ポリマードットと接触させるステップ;そして(b)溶液中のポリマードットからの蛍光のレベルを検出するステップを包含する方法が提供されるが、ここで、銅(II)または鉄(II)を含有しない溶液中のポリマードットの蛍光と比較した場合の、溶液中の蛍光の低減は、溶液が銅(II)および/または鉄(II)を含有することを示す。
【0166】
一実施形態では、当該方法はさらに、(c)溶液に二価陽イオンキレート化剤を付加すること;(d)二価陽イオンキレート化剤の付加後に溶液中の蛍光のレベルを検出すること;そして(e)二価キレート化剤の付加の前および後に、溶液中のポリマードットの蛍光の差を確定することにより、溶液中の銅(II)のレベルを定量するステップを包含するが、この場合、溶液中の銅(II)のレベルは、標準を用いて蛍光の差を比較することにより決定される。
【0167】
別の実施形態では、当該方法はさらに、(c)溶液に二価陽イオンキレート化剤を付加すること;(d)二価陽イオンキレート化剤の付加後に溶液中の蛍光のレベルを検出すること;そして(e)二価キレート化剤の付加の後の溶液中のポリマードットの蛍光と、銅(II)または鉄(II)を含有しない溶液中のポリマードットの蛍光との間の差を確定することにより、溶液中の鉄(II)のレベルを定量するステップを包含するが、この場合、溶液中の鉄(II)のレベルは、標準を用いて蛍光の差を比較することにより決定される。
【実施例】
【0168】
以下の実施例は本発明をさらに説明するために含まれるが、これらは本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0169】
非プロトン溶液中の発色性ポリマーおよび官能化剤の混合物とプロトン溶媒を混合するステップを包含する、官能化発色性ポリマードットの製造方法を実証する。本発明は、官能化発色性ポリマードットおよび生体分子を含む生体共役体およびその組成物も提供するが、この場合、生体分子は官能基と直接または間接的に結合される。
実施例1:官能化発色性ポリマードットの調製方法
【0170】
本実施例は、その後の特性化および生体分子共役のための多量の官能化発色性ポリマードットを得るための方法を提供する。
図1は、官能化発色性ポリマードットおよびそれらの生体分子共役体を調製するための模式図を示す。
【0171】
水溶液中の官能化発色性ポリマードットを、以下のように調製した。先ず、1mg/mLの濃度を有するストック溶液を作製するために、不活性大気中で撹拌することにより、発色性ポリマー、例えばPFBTを、テトラヒドロフラン(THF)中に溶解した。THF溶液中の一定量の官能化剤、例えばPS−PEG−COOHを、PFBTの希釈溶液と混合して、40μg/mLのPFBT濃度および4μg/mLのPS−PEG−COOH濃度を有する溶液混合物を得た。混合物を撹拌して、均質溶液を生成した。5mL量の溶液混合物を、混合物を音波処理しながら、10mLの脱イオン水に迅速に付加した。THFを窒素ストリッピングにより除去し、そして連続窒素ストリッピングにより、90℃のホットプレート上で溶液を4mLに濃縮した後、0.2μフィルターを通して濾過した。その結果生じたナノ粒子分散液は、数ヶ月間透明且つ安定で、凝集の兆候は認められなかった。
実施例2:官能化発色性ポリマードットのAFM特性化
【0172】
実施例1で提供された方法に従って調製した官能化発色性ポリマードットを、それらのサイズ、形態および単分散性に関してAFMにより査定した。AFM測定のために、1滴のナノ粒子分散液を新たに切断したマイカ基質上に載せた。水の蒸発後、タッピングモードで、マルチモードAFM(Digital Instruments)で表面を走査した。
図2Aは、官能化発色性ポリマードットの代表的AFM画像を示す。AFM画像から得た粒子高ヒストグラムは、ほとんどの粒子が10〜20nmの範囲の直径を保有することを示している(
図2B)。外側寸法も、チップ幅を考慮した後、10〜20nmの範囲であった。形態およびサイズは、官能化ポリマーを用いずに調製されたポリマードットのものと一致したが、これは、少量の両親媒性ポリマーの存在が粒子のサイズおよび形態に明らかな影響を及ぼさない、ということを示す。実施例1の調製方法に従って、発色性ポリマーの注入濃度を調整することにより、2nm〜1000nmの範囲のサイズを有する官能化発色性ポリマードットを調製し得る。
実施例3. 官能化発色性ポリマードットの光学的特性化
【0173】
実施例1で提供された方法に従って調製した官能化発色性ポリマードットを、それらの蛍光特性に関して査定した。UV−Vis吸収スペクトルを、1cm石英キュベットを用いてDU 720分光光度計で記録した。1cm石英キュベットを用いてFluorolog−3蛍光計で、蛍光スペクトルを収集した。官能化発色性ポリマードットは、裸発色性ポリマードットの場合と同様の吸収および発光スペクトルを示すが(
図3)、これは、表面官能化がポリマードットの光学特性に影響を及ぼさないことを示す。発色性ポリマー種によって、発色性ポリマードットは、蛍光顕微鏡およびレーザー励起のために便利な波長範囲である350nmから550nmまでの範囲の吸収帯域を示す。
図3は、官能化発色性ポリマーPFBTの吸収および発光スペクトルを示す。既知の粒子濃度でのUV−Vis吸収スペクトルの分析は、単一粒子(直径〜15nm)のピーク吸収横断面が約2×10
−13cmで、可視および近UV範囲におけるCdSe量子ドットのおよそ10〜100倍大きく、そして典型的有機蛍光色素よりおよそ3桁大きい、ということを示した。
【0174】
標準としてエタノール中のクマリン6の希釈溶液を用いて、PFBTドットの蛍光量子収率を30%であると確定した。蛍光輝度は、吸収横断面の生成物および量子収率結果として定義される。確かに、発色性ポリマードットの蛍光輝度は、典型的条件下で同一サイズの任意の他のナノ粒子のものを上回る。粒子ドットのサイズは、吸収および蛍光スペクトルの形状に容易に感知可能な作用を及ぼすとは思われない − 粒子サイズ増大の主な作用は、吸収横断面および輝度の増大である。この特性は、特定用途の要求を満たすよう粒子サイズおよび輝度の調整を促し、コロイド半導体量子ドットと対比するものである。
実施例4:
生体分子と官能化発色性ポリマードットとの共役
【0175】
本実施例は、官能化発色性ポリマードットが細胞性構造のその後の画像処理、あるいは任意の他の蛍光ベースの生物学的検出のために生体分子と共役される、ということを実証する。本発明の方法に従って調製される官能化発色性ポリマードットは、第一アミノ官能基を含有する任意の生体分子、例えばタンパク質および抗体と共役され得る。カルボキシル基は、カルボジイミド、例えばEDCの存在下でN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と反応して、第一アミン基との架橋のためのカルボキシレート基のアミン反応性エステルを生じ得る。典型的生体共役反応において、20μLのEDC(MilliQ水中5mg/mL)および10μLのNHS(MilliQ水中5mg/mL)を、1mLの官能化発色性ポリマードット(MilliQ水中40mg/mL)に付加した。上記混合物を、活性化のために30分間、回転振盪器上に放置した。次いで、20μLのポリエチレングリコール(5%w/v PEG)および20μLの濃縮HEPES緩衝液(1M)を付加して、20mM HEPES緩衝液、pH7.3中の活性化ポリマードットの溶液を得た。最後に、40μLのストレプトアビジンまたはIgG抗体(1mg/mL)を溶液に付加し、反応を室温で4時間継続した。その結果生じた発色性ポリマードット生体共役体を、Sephacryl HR−300を媒質として用いたゲル濾過により、生体分子から分離した。
実施例5:
生細胞における癌マーカー検出のための発色性ポリマードットIgG共役体の使用
【0176】
本実施例は、ヒト乳癌細胞中の癌マーカーを検出するための発色性ポリマードット生体共役体を用いた実証を提供する。10%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補足したマッコイ5A培地中で、乳癌細胞株SK−BR−3を培養した。100万個の細胞を培養フラスコから収穫し、洗浄して、100μLの標識緩衝液(1×PBS、2mM EDTA、0.5%BSA)中に再懸濁した。細胞懸濁液を、暗所で、室温で30分間、振盪器上で、第一抗ヒトCD326(EpCAM)抗体とともにインキュベートし、その後、標識化緩衝液を用いて2回洗浄した。次いで、細胞を、発色性ポリマードット第二IgG共役体とともに、暗所で室温で30分間インキュベートした後、さらに2回洗浄した。1滴の細胞懸濁液をカバーガラス上に載せて、スライドガラスで覆い、蛍光共焦点顕微鏡(ツァイスLSM510)下で直ちに画像処理した。
【0177】
図4Aに示したように、第一抗EpCAM抗体とともに細胞をインキュベートした後、発色性ポリマードットIgGプローブは、ヒトSK−BR−3乳癌細胞上のEpCAMを首尾よく標識した。第一抗体が存在しない場合、すなわち、細胞をポリマードットIgG単独とともにインクとした場合、シグナルはほとんどまたは全く検出されなかった(
図4B)が、これは、ポリマードットIgG共役体が標的に対して特異的であることを示す。
実施例6:
細胞成分画像処理のための発色性ポリマードットストレプトアビジン共役体
【0178】
本実施例は、細胞成分構造を検出するための発色性ポリマードット生体共役体を用いた実証を提供する。10%ウシ胎仔血清および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補足したイーグル最小必須培地中で、乳癌細胞株MCF−7を培養した。1万個の細胞を22×22mmカバーガラス上に載せて、6ウェル中の上記培地を用いて、50〜70%集密度になるまで培養した。細胞を4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、PBS中で15分間、0.25%トリトン−X100で透過処理して、2%BSA(w/v)中で30分間遮断した。微小管を標識するために、固定およびBSA遮断MCF−7細胞を、順次、ビオチニル化モノクローナル抗αチューブリン抗体とともに1時間、そして発色性ポリマードットストレプトアビジン共役体とともに30分間インキュベートした。染色細胞を付けたカバーガラスをスライドガラス上に載せて、蛍光共焦点顕微鏡(ツァイスLSM510)で画像処理した。
図5Aに示したように、微小管は、発色性ポリマードットストレプトアビジンで明白に標識された。細胞を発色性ポリマードットストレプトアビジン単独とともにインキュベートした場合、検出されたシグナルは非常に弱いかまたは全く明らかでなかった(
図5B)が、これは、ポリマードットストレプトアビジン共役体が標識化に特異的であることを示す。
実施例7:
半導電性ポリマードットの官能化
【0179】
蛍光半導電性ポリマー ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ベンゾ−{2,1’,3}−チアジアゾール)](PFBT、MW 157,000、多分散性 3.0)を、ADS Dyes, Inc. (Quebec, Canada)から購入した。櫛型ポリマー、 ポリスチレン(カルボキシル基で官能化されたエチレンオキシドでグラフト化された)(PS−PEG−COOH、主鎖分子量8,500、グラフト鎖分子量1,200、総鎖分子量21,700、多分散性 1.25)を、Polymer Source Inc. (Quebec, Canada)から購入した。別記しない限り、他の試薬はすべて、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO, USA)から購入し、そして実験はすべて、室温で実施した。
【0180】
変法ナノ沈降法を用いて、水溶液中の官能化Pドットを調製する。先ず、PFBTをテトラヒドロフラン(THF)中に溶解して、1mg/mLの濃度を有するストック溶液を作製する。PS−PEG−COOHもTHF中に溶解して、PFBTの希釈溶液と混合して、50μg/mLのPFBT濃度および0〜10μg/mLの範囲のPS−PEG−COOH濃度を有する溶液混合物を得た。混合物を音波処理して、均質溶液を生成した。5mL量の溶液混合物を、浴音波処理器中のMilliQ水 10mLに迅速に付加した。THFを窒素ストリッピングにより除去し、そして連続窒素ストリッピングにより、90℃のホットプレート上で溶液を5mLに濃縮した後、0.2μフィルターを通して濾過した。その結果生じた官能化Pドット分散液は、数ヶ月間透明且つ安定で、凝集の兆候は認められなかった。
実施例8:
官能化半導電性ポリマードットの物理的特性化
【0181】
一定PFBT濃度および0〜20重量%の範囲のPS−PEG−COOH/PFBT分画を有する前駆体溶液混合物を用いて、官能化PFBTドットを調製した。官能化PFBTドットのサイズおよび形態を、原子間力顕微鏡(AFM、
図7A)により特性化した。AFM画像から得た粒子高ヒストグラムは、PFBTドットの大多数が10±3nmの範囲の直径を保有することを示した(
図7B)。非官能化Pドットと比較した場合、少量のPS−PEG−COOHポリマーの存在(<20重量%)は、粒子サイズおよび形態に如何なる顕著な作用も及ぼさなかった。Pドットの吸収および発光スペクトルは、サイズに伴って変化せず(Wu, C.; Bull, B.; Szymanski, C.; Christensen, K.; McNeill, J. ACS Nano 2008, 2, 2415-2423)、したがって、Pドットのこのサイズ非依存的特徴は、ナノ粒子調製におけるサイズ制御に関する拘束を有意に緩和する。さらに、大型サイズは単にプローブの輝度を増大するだけであるため、このサイズ非依存的特徴は、ある種の用途のためのより明るいプローブを得るために有益であり得る。この官能化戦略は、蛍光体密度に関して有効なナノ粒子プローブをもたらした、ということに留意すべきである;例えば半導電性ポリマーナノ粒子のうちの80%以上が有効な蛍光体であり得る。これに対して、Qドットおよび色素負荷球に関しては、厚い封入層(Qドットに関する)または色素(色素ドープ球に関する)の自己消光のため、有効蛍光体は、粒子容積または重量の2〜3%に限定される。
実施例9:生体共役化半導電性ポリマードットの光学的特性化
【0182】
マイクロ流路型フローサイトメーターを用いて、Pドット生体共役体の細胞標識輝度を、市販のQドット565−ストレプトアビジンおよびAlexa−IgGプローブの輝度とともに、先ず定量した。20×NA 0.4対物レンズ(Nikon Eclipse TE 2000-U, Melville, NY, USA)を装備した倒立光学顕微鏡上の幅200μmおよび高さ50μmの直線チャンネルを有するマイクロ流路型チップを用いて、フロー・スルー実験を実行した。標識化細胞懸濁液(10,000/ml)を、50μl/分で5分までの間、注入ポンプを用いて、長方形チャンネル中に導入した。488nmサファイアレーザー(Coherent, Santa Clara, CA)を顕微鏡中に導き入れて、試料を励起した。各試料獲得前に、光の経路でレーザー出力を測定した後、電力測定器を用いる顕微鏡を入れた。500nmロングパスフィルター(HQ500LP;Chroma, Rockingham, VT, USA)により蛍光シグナルを濾過して、単一光子計数モジュール(APD、PerkinElmer SPCM−QC9−QTY2、Salem, MA, USA)により収集した。パソコンおよびLabViewコード化プログラム(National Instruments Corporation, Austin, TX, USA)を用いて、10kHzのサンプリング周波数で、SPCMのシグナルを読取った。各試料に関する生APD数をテキストファイルに保存し、カスタムコードMaple5.1プログラム(MapleSoft, Waterloo, ON, Canada)を用いて周波数プロットに変換した。
【0183】
標識化MCF−7細胞の蛍光画像を解析することにより、PドットストレプトアビジンおよびQドット565−ストレプトアビジンプローブの細胞標識輝度も定量した。1滴の細胞懸濁液をカバーガラス上に載せて、スライドガラスで覆い、AZ−プランApo4×NA 0.4対物レンズ(Nikon AZ100、Melville, NY, USA)を有するアップライト顕微鏡で観察した。ファイバー照明器(130W水銀灯)で励起光を提供し、帯域通過濾波器(Semrock FF01−482/35−25、Rochester, NY USA)により濾過した。520nmロングパスフィルター(HQ520LP;Chroma, Rockingham, VT, USA)により蛍光シグナルを濾過し、CCDカメラ(Prosilica GC1380、Newburyport, MA)で画像処理した。蛍光画像をカスタムコードLabviewプログラムで処理し、シグナル−細胞標識輝度の強度分布を得た(
図12)。
実施例10:
PFBT Pドットの単一粒子画像処理
【0184】
ピーク吸収横断面の生成物および蛍光量子収率により、蛍光輝度の有用な概算を得る。光物理的データは、直径〜10nmのPFBTドットは、IgG−Alexa488より約30倍明るく、そしてQドット565プローブは典型的レーザー励起(488nm)以下である、ということを示す。並列輝度比較は、Pドットの並外れた輝度のさらなる証拠を提供する。3つのプローブの輝度および光安定性を実験的に評価し、比較するために、単一粒子画像処理を実行した。
【0185】
要するに、蛍光試料をMilli−Q水中に希釈し、清浄化バーガラス上で真空乾燥して、蛍光顕微鏡で画像処理した。サファイアレーザー(Coherent, Santa Clara, CA USA)からの488nmレーザー光線を、実験室製ステアリングレンズを用いて、倒立顕微鏡(Nikon TE2000U、 Melville, NY, USA)に向けた。対物レンズ前のノーズピースで、レーザー励起強度を測定した。照明および収光のために用いられる対物レンズは、1.45 NA60×TIRF対物レンズ(Nikon, Melville, NY, USA)であった。蛍光シグナルを500nmロングパスフィルター(HQ500LP;Chroma, Rockingham, VT, USA)により濾過して、EMCCDカメラ(Photometrics Cascade: 512B、Tucson, AZ USA)で画像処理した。検出基の飽和が
図8におけるいくつかのPドット粒子に関して観察されたため、Pドット試料を画像処理する場合、減光フィルター(光学密度 1.5)を発光フィルターと一緒に置いた。Pドット粒子の蛍光強度を、減衰係数によって算定し戻した。一連の連続フレームを獲得することにより、単一粒子光褪色測定値を得た。蛍光スポット全体のCCDシグナルを組み込むことにより、所定の粒子に関するフレーム当たりで発光される蛍光強度を概算した。
【0186】
図8A、8Bおよび8Cは、同一獲得およびレーザー励起条件下で得られるそれぞれPFBTドット、IgG−Alexa488およびQドット565の典型的単一粒子落射蛍光画像を示す。488nmレーザーからの相対的に低い励起出力(1mW)を用いて、非常に明るい、近回析限界スポットが、個々のPFBTに関して明らかに得られた。いくつかのPドットは実際に検出器を飽和した(
図8A)が、一方、IgG−Alexa488およびQドットは、われわれが用いた低励起出力でカメラによりかろうじて検出される非常に低い強度を示した(
図8B、8C)。PFBTドットは、Qドット565およびIgG−Alexa488と比較して、シグナル対バックグラウンド比の等級改良を示した(
図8D)。このような顕著な対比は、主に、Pドットの高い粒子当たり吸収横断面のためであり、これは、低励起条件を要する蛍光検出に特に適している。プローブ性能をさらに比較するために、Qドット565およびIgG−488プローブがカメラにより十分に検出され得るよう、レーザー励起出力を4mMに増大した。検出器の飽和がPドット粒子に関して観察されたため、Pドット試料を画像処理する場合、減光フィルター(光学密度 1.5、これは発光された蛍光を97%遮断する)を発光フィルターと一緒に置いて、減衰係数によってそれらの蛍光強度を算定し戻した。3つのプローブすべてに関して、バックグラウンドを差し引いた。数千個の粒子の蛍光強度分布は、PFBTドットがIgG−Alexa488およびQドット565より30倍より以上明るく(
図8E)、これは、光物理的パラメーターに基づいた輝度比較と一致する、ということを示した。
【0187】
単一粒子光褪色測定は、PFBTドットの優れた光安定性を示した(
図8F)。多重光褪色軌跡の統計学的分析は、Pドット当たり10
9を上回る光子が光褪色前に発光され、これは個々のQドット565およびIgG−Alexa488粒子により発光されるものより2または3桁大きい、ということを示した。さらに、それらの高輝度、短い蛍光寿命、ならびに粒子当たり多重エミッターの存在のため、高獲得率(20ms露出当たりPドット当たりで検出される〜200,000の光子)で個々のPドットから多数の光子が得られた。近年、この特徴を利用して、〜1nmの粒子トラッキング不確実性が得られたが((Yu, J.; Wu, C.; Sahu, S.; Fernando, L.; Szymanski, C.; McNeill, J.
J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 18410-18414)、これは、Pドットを、高速単一粒子トラッキング実験において、慣用的蛍光色素およびQドットよりはるかに優れたものにする。ほとんどのPFBTドットが如何なる明白な蛍光明滅も伴わずに連続発光行動を示すが、一方、ほとんどのQドットが顕著な明滅を示す、ということに注目することは有益である(
図8F)。Pドットのこの非明滅特徴は、単一分子用途において特に有益である。
実施例11:
官能化Pドットの表面との非特異的結合の排除
【0188】
Pドットを官能化するための最初の試みでは、ほとんどの生物学的標識分子、例えば抗体はビオチンで容易に誘導体化され得るため、ストレプトアビジンを選択した。しかしながら、Pドットの相対的に大きい表面積は本来的に疎水性であるため、表面改質はそれをより親水性にしがちであるが、生体分子はPドット表面に非特異的に吸着される、という問題がある。要するに、カルボキシル官能化Pドットを、生物学的分子上のカルボキシル基をアミン基と連結するカップリング試薬の非存在下で、緩衝化溶液中のストレプトアビジンとともにまたは伴わずに混合し、次いで、ビオチンシリカビーズとともにインキュベートした。遠心分離後、ストレプトアビジンとともにインキュベートされていたPドットは、ビオチンシリカビーズのペレット中に明らかに保有され、ストレプトアビジンなしでインキュベートされたものはビーズとの結合を示さず(
図7C)、したがって、Pドット表面へのストレプトアビジンの重度の非特異的吸着を示す。
【0189】
この非特異的吸着を克服するために、0.1重量%ポリエチレングリコール(PEG)を含有する緩衝溶液中でPドットをストレプトアビジンと混合した。その結果生じたPドットは、ビオチンシリカビーズとの検出可能な結合を示さず、これは、PEGの存在が非特異的吸着を有意に低減した、ということを示唆する(
図7C)。したがって、共有的生体共役を、PEG含有環漿液中で首尾よく実施した。Pドット上のカルボキシル基とストレプトアビジンのアミン基との間のペプチド結合形成は、カルボジイミド、例えば1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)により触媒された。EDC触媒Pドットストレプトアビジン共役体は、ビオチンシリカビーズとの明らかな結合を示したが、一方、EDCの非存在下で得られた生成物に関しては結合は観察されなかった(
図7C)。別個の対照において、同一生体共役条件(すなわち、PEG含有緩衝液中のストレプトアビジンおよびEDC)を、裸非官能化Pドットとともに用いた。ビオチンビーズ上では結合は観察可能でなく、これは、ストレプトアビジンとPドットの生体共役が共有的であり、そしてビオチンビーズに対するストレプトアビジン−Pドットの標識化は特異的で、如何なる検出可能な非特異的結合も伴わなかった、ということをさらに確証する。
【0190】
Pドットを、ウシ血清アルブミン(BSA)のような添加剤でさらに不動態化しうるが、これは、長期コロイド安定性を保持し、疎水性表面を遮断し、そして標識化実験における非特異的結合を低減し得る。BSA不動態化Pドット生体共役体は、HEPES、PBS、トリスおよびホウ酸塩緩衝液中で生理学的pHで、数ヶ月間安定である、ということが見出された。
図7D差込図は、6ヶ月間貯蔵後の1×PBS緩衝液中のPFBT−ストレプトアビジン共役体の2つの写真を示す。PFBT共役体の懸濁液は、安定で、透明(混濁なし)で、UV光照明(365nm)下で強力な蛍光を示す。
実施例12:
官能化Pドットとの生体分子共役
【0191】
ストレプトアビジンおよびヤギ抗マウスIgG抗体を、Invitrogen(Eugene, OR, USA)から購入した。Pドット上のカルボキシル基と生体分子上のアミン基との間のEDC
触媒反応を利用することにより、生体共役を実施した。典型的生体共役反応では、20μLのポリエチレングリコール(5%w/v PEG、分子量3350)および20μLの濃縮HEPES緩衝液(1M)を、1mLの官能化Pドット溶液(Milli−Q水中50μg/mL)に付加して、20mM HEPES緩衝液、pH7.3中のPドット溶液を生じた。次いで、40μLのストレプトアビジンまたはIgG抗体(1mg/mL)を溶液に付加し、渦巻撹拌機で十分に混合した。最後に、20μLの新たに調製した1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド塩酸塩(EDC)溶液(Milli−Q水中5mg/mL)を溶液に付加し、上記混合物を、室温で4時間、回転振盪器上に放置した。最後に、その結果生じたPドット生体共役体を、Sephacryl HR−300ゲル媒質を用いたゲル濾過により、遊離生体分子から分離した。
実施例13:
細胞培養
【0192】
乳癌細胞株MCF−7およびSK−BR−3を、アメリカ培養細胞コレクション(ATCC、Manassas, VA, USA)から注文した。10%ウシ胎仔血清(FBS)、50U/
mLペニシリンおよび50μg/mLストレプトマイシンを補足したイーグル最小必須培地(MCF−7用)またはマッコイ5A培地(SK−BR−3用)中で、37℃、5%CO
2で、細胞を培養した。集密に達するまで、実験前に細胞を予備培養した。培地で簡単にすすいで培養フラスコから細胞を収穫し、その後、5mLのトリプシン−EDTA溶液(0.25w/v%トリプシン、0.53mM EDTA)とともに、37℃で5〜15分間、インキュベートした。完全に剥離した後、細胞をすすぎ、遠心分離し、標識緩衝液(1×PBS、2mM EDTA、1%BSA)中に再懸濁した。血球計を用いて顕微鏡により、細胞濃度を確定した。
実施例14:
CD326およびCD340細胞マーカーの検出のための発色性ポリマードットIgG共役体の使用
【0193】
おそらくはエンドサイトーシスにより裸Pドットが培養細胞中に送達され得る、ということが以前に示された。しかしながら、Pドットが細胞表面と非特異的に結合される場合、特定細胞性標的は標識されなかった(例えば、Wu, C.; Bull, B.; Szymanski, C.; Christensen, K.; McNeill, J. ACS Nano 2008, 2, 2415-2423;Pu, K. Y.; Li, K.; Shi, J. B.; Liu, B. Chem. Mater. 2009, 21, 3816-3822;Howes, P.; Green, M.; Levitt, J.; Suhling, K.; Hughes, M. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 3989-3996;およびRahim, N. A. A.; McDaniel, W.; Bardon, K.; Srinivasan, S.; Vickerman, V.; So, P. T. C.; Moon, J. H. Adv. Mater. 2009, 21, 3492-3496参照)。したがって、 it was unclear from these studies whether Pドットプローブが、実際の用途における有効な標識化のために細胞性標的を認識するのに十分に特異的になり得るか否かは、これらの研究からは確かでなかった。
【0194】
細胞標識化実験のために、Qドット 565−ストレプトアビジン、Alexa 488−IgGおよびBlockAid(商標)遮断緩衝液を、Invitrogen (Eugene, OR, USA)から購入した。上記のような方法を用いて、Pドット生体共役体を合成した。
【0195】
IgG共役体で細胞表面マーカーを標識するために、100Lの標識化緩衝液中の100万個の細胞を、5μg/mLの第一抗ヒトCD326抗体(抗−EpCAM、Biolegend, San Diego, CA, USA)(MCF−7細胞用)または5μg/mLの第一抗ヒトCD340(抗Her2、Biolegend, San Diego, CA, USA)とともに回転振盪器上で、暗所で室温で30分間インキュベートし、その後、標識化緩衝液を用いて洗浄した。次いで、細胞を、5nM PドットIgGまたはAlexa 488−IgG共役体とともに、振盪器上で、暗所で室温で30分間インキュベートし、その後、さらに2回洗浄した。ストレプトアビジン共役体で細胞表面マーカーを標識するために、100μLの標的化緩衝液中の100万個のMCF−7細胞を、順次、5μg/mLの第一抗ヒトCD326抗体、5μg/mLのビオチニル化第二抗マウスIgG(Biolegend, San Diego, CA, USA)および5nM PドットストレプトアビジンまたはQドット 565−ストレプトアビジン(Invitrogen, Eugene, OR, USA)とともに、各々30分間インキュベートした後、さらに2回洗浄した。1滴の細胞懸濁液をカバーガラス上に載せて、スライドガラスで覆い、蛍光共焦点顕微鏡(ツァイスLSM510)下で直ちに画像処理した。
【0196】
ストレプトアビジンおよびIgGを、細胞性標的の免疫蛍光標識のための生体共役に広範に用いた。PドットIgGおよびPドットストレプトアビジンプローブを作製して、循環腫瘍細胞の検出のために一般に用いられる特異的細胞標識、EpCAM/CD326、上皮細胞表面マーカーを標識するそれらの能力を調べた。
図9Aは、細胞をモノクローナル第一抗EpCAM抗体とともにインキュベートした後、PドットIgGプローブが、生MCF−7ヒト乳癌細胞の表面のEpCAM受容体を首尾よく標識したことを示す。第一抗体の非存在下で、細胞をPドットIgG単独とともにインキュベートした場合、細胞標識化は検出されなかった(
図9A、下)が、これは、PドットIgG共役体が標的に非常に特異的であることを示す。
【0197】
次に、Pドットストレプトアビジン共役体を代替的プローブとして用いて、EpCAMを検出した。Pドットストレプトアビジンプローブも、第一抗EpCAM抗体およびビオチニル化ヤギ抗マウスIgG第二抗体とともに、生MCF−7細胞の表面のEpCAMを有効に標識した(
図9B)。細胞を、ビオチン抗マウスIgGの非存在下で、第一抗体およびPドットストレプトアビジンとともにインキュベートした場合、細胞表面に蛍光は観察されず(
図9B、下)、したがって、これもまた、Pドットストレプトアビジンの非常に特異的な結合を実証する。シグナルの欠如は、このビオチン−ストレプトアビジン標識化系における非特異的結合の非存在も示した。
【0198】
次に、Pドット生体共役体を用いて、異なる細胞株SK−BR−3上の別の細胞マーカー、Her2(抗乳癌薬、ヘセプチンの標的)、ならびに細胞成分構造、例えば固定MCF−7細胞中の微小管を標識した(
図5)。両方の場合におけるPドット生体共役体は、標的を特異的且つ有効に標識したが、これは、細胞標識化に対するそれらの包括的適用を実証する。
実施例15:
微小管の標識のための発色性ポリマードットIgG共役体の使用
【0199】
微小管標識のために、1万個のMCF−7細胞を22×22mmカバーガラス上に載せて、60〜70%集密度になるまで培養した。細胞を4%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、PBS中で15分間、0.25%トリトン−X100で透過処理して、2%BSA(w/v)中で30分間遮断した。固定およびBSA遮断MCF−7細胞を、順次、5μg/mLビオチニル化モノクローナル抗αチューブリン抗体((Biolegend, San Diego, CA, USA)とともに60分間、そして10nM Pドットストレプトアビジン共役体とともに30分間インキュベートした。染色細胞をスライドガラス上に載せて、蛍光共焦点顕微鏡(ツァイスLSM510)で画像処理した。
実施例16:
フローサイトメトリーにおける発色性ポリマードット共役体の使用
【0200】
蛍光画像処理のほかに、フローサイトメトリーは、プローブの輝度が重要である別の領域がある。Pドット生体共役体の標識輝度を、マイクロ流路型フローサイトメーターを用いて、市販のQドットストレプトアビジンおよびAlexa−IgGプローブの輝度と比較した。
図10Aは、Pドットストレプトアビジンで標識したMCF−7細胞のフロー・スルー検出を示す。用いた最低励起強度(0.1mW)で、Pドット標識化細胞に関する良好に明示された強度ピークが、バックグラウンドのはるか上に現れた。これに対して、Qドット標識化細胞に関するピークは、バックグラウンドから明白に分離されなかった(
図10B)。Pドットピークは、励起強度の増大に伴ってより高い強度に動き、0.5mWのレーザー出力で検出器を飽和し始めた。全励起条件において、Pドットストレプトアビジンで標識したMCF−7細胞が、Pドットストレプトアビジンと同一標識化濃度を用いたQドット標識細胞の結果と比較して、非常に高い強度レベルを示した。Pドットプローブは、低励起条件で有意に高いシグナルレベルを提供し得たが、これは、血液または厚い組織といったような光学的混濁媒質中での生物学的検出のために非常に有用な利益である。
【0201】
マイクロ流路型フローサイトメーターを用いて、PドットIgGおよびAlexa488−IgGプローブを用いて、同様の強度比較を実施した(
図11)。フローサイトメトリーデータの定量的分析は、Pドット標識化細胞の平均強度が、Qドット標識化細胞より〜25倍明るく(
図10C)、そしてAlexa−IgG標識化細胞より〜18倍明るい(
図10D)ということを示した。PドットストレプトアビジンまたはQドットストレプトアビジンで標識したMCF−7細胞の蛍光画像を解析することにより標識化輝度をさらに定量した。Pドット標識化細胞はQドット標識化細胞より〜20倍明るく、これはフローサイトメトリーデータと一致する(
図12)。
【0202】
これらの細胞標識比較値は、単一粒子画像処理から得たものよりわずかに低い。低い値は、いくつかの因子、例えば個々の粒子と比較した場合のプローブアセンブリーの集合的発光行動における相違;生体共役時の抗体またはストレプトアビジンの結合定数の変化;あるいは励起強度に伴う発光速度の変動(飽和)に起因すると考えられる。QドットストレプトアビジンおよびAlexa−IgGプローブに関する最適化濃度(これはPドットプローブに関しては最適でないことがある)に従って、細胞標識化を実施した、ということに留意することも有益である。したがって、本発明の比較は、伝統的色素およびQドット生体共役体を上回るPドット生体共役体により提供される利点の控えめな概算である。この新規のクラスのPドットベースのプローブに関しては、生体共役反応を、ならびに標識条件を最適化するためのさらに詳細な研究が必要とされる。それでも、最新の細胞画像処理およびフローサイトメトリー結果は、Pドット標識化が、市販のAlexa−IgGおよびQドットプローブと比較して、シグナルレベルの有意の改善を提供する、ということを明らかに示している。
実施例17:
クリックケミストリー用途と適合性の調製ならびにアジド−およびアルキン−Pドット
【0203】
蛍光半導電性ポリマー ポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ベンゾ−{2,1’,3}−チアジアゾール)](PFBT、分子量157,000、多分散性3.0)を、ADS Dyes, Inc. (Quebec, Canada)から購入した。コポリマー ポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)(PSMA、クメン末端処理、平均分子量〜1,700、スチレン含量68%)を、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO, USA)から購入した。他の試薬はすべて、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO, USA)から購入した。
【0204】
変法ナノ沈降法を用いて、水溶液中の官能化Pドットを調製した。実験はすべて、別記しない限り、室温で実施した。典型的調製では、先ず、蛍光半導電性ポリマーPFBTをテトラヒドロフラン(THF)中に溶解して、1mg/mLストック溶液を作製した。コポリマーPSMAもTHF中に溶解して、PFBTの希釈溶液と混合して、50μg/mLのPFBT濃度および20μg/mLのPSMA濃度を有する溶液混合物を得た。混合物を音波処理して、均質溶液を生成した。5mL量の溶液混合物を、浴音波処理器中のMilliQ水 10mLに迅速に付加した。THFを窒素ストリッピングにより除去した。連続窒素ストリッピングにより、90℃のホットプレート上で溶液を5mLに濃縮した後、0.2μフィルターを通して濾過した。ナノ粒子形成中、PSMA分子の無水マレイン酸単位を水性環境中で加水分解して、Pドット上にカルボキシル基を生じた。Pドット分散液は、数ヶ月間透明且つ安定で、凝集の兆候は認められなかった。
【0205】
カルボキシルPドットとそれぞれのアミン含有分子との間のEDC触媒反応を利用して、表面共役を実施した。11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−アミンを用いて、アジド−Pドットを形成した。プロパルギルアミンを用いて、アルキン−Pドットを生成した。アミン末端処理ポリ(エチレングリコール)を用いて、PEG−Pドットを生成した。典型的生体共役反応において、60μLのポリエチレングリコール(5%
w/vPEG、分子量3350)および60μLの濃縮HEPES緩衝液(1M)を3mLのカルボキシルPドット溶液(Milli−Q水中50μg/mL)に付加して、20mM HEPES緩衝液、pH7.3中のPドットの溶液を得た。次に、30μLのアミン含有分子(1mg/mL)を溶液に付加し、渦巻撹拌器で十分に混合した。最後に、60μLの新たに調製したEDC溶液(Milli−Q水中5mg/mL)を溶液に付加し、上記混合物を室温で4時間、磁気撹拌した。最後に、その結果生じたPドット共役体を、BioRad Econo−Pac(登録商標)10DGカラム(Hercules, CA, USA)により、遊離分子から分離した。
実施例18:
クリック型Pドットの特性化
【0206】
市販のFluorolog−3蛍光計((HORIBA Jobin Yvon, NJ USA)を用いて、蛍光スペクトルを得た。直径〜15nmのPFBTドットに関する吸収スペクトルの解析は、5.0×10
7M
−1cm
−1のピーク消光係数を示した。官能化Pドットの蛍光量子収率を、標準としてエタノール中のクマリン6の希釈溶液を用いて、0.28であると確定した。他の蛍光ナノ粒子と比較した場合、大きい消光係数および高い量子収率は、粒子当たりの輝度が非常に高いことを示す。官能化Pドットの単一粒子光褪色試験は、Pドット当たり10
9を上回る光子が光褪色の前に発光され、これはそれらの優れた光安定性と一致する、ということを示した(C. Wu, B. Bull, C. Szymanski, K. Christensen, J. McNeill, ACS Nano 2008, 2, 2415)。
【0207】
0.7%アガロースゲルを用いて、ゲル電気泳動を実施して、Pドット表面の異なる官能基の形成を特性かした(
図17b)。非官能化裸Pドットと比較して、カルボキシル官能化Pドットは、ゲル中での移動度の明らかな増大を示した。要するに、Mupid(登録商標)−exUサブマリン電気泳動系を用いて、官能化Pドットのアガロースゲル電気泳動を実行した。Pドット(30%グリセロール中)を、0.1%PEGを含有する0.7%アガロースゲル上に載せた。Pドット負荷ゲルを、トリス−ホウ酸塩−EDTA(TBE)緩衝液中で135Vで20分間移動させ、次いで、コダック画像ステーション440CF系で画像処理した。
【0208】
動的光散乱および透過型電子顕微鏡(TEM)測定は、裸および官能化Pドットがともに、匹敵する粒子サイズを有し、平均直径は〜15mmである、ということを示した(
図17c)。したがって、PSMA−官能化Pドットの高移動度は、Pドット表面の負荷電カルボキシル基の形成を示す。TEM測定のために、1滴のPドット分散液を炭素被覆銅格子上に載せた。水を蒸発させた後、透過型電子顕微鏡(FEI Tecnai F20)でナノ粒子を画像処理した。UV−Vis吸収スペクトルを、1cm石英キュベットを用いてDU 720走査分光光度計(Beckman Coulter, Inc., CA USA)で記録した。
【0209】
異なるアミン含有分子(アミン末端処理ポリエチレングリコール(PEG)、アジドおよびアルキン)を用いて、表面共役を実施した。共役は小分子を伴うため、共役化Pドットの動的光散乱は、粒子サイズの明らかな変化を示さなかった。しかしながら、カルボキシル官能化Pドットと比較した場合のPドット共役体の電荷低減のため、それらは、予測されるようなゲル中のシフト移動帯域を示した。これらの結果は、Pドットの上首尾のカルボキシル官能化、ならびにその後の表面改質を明白に示す。
実施例19:
官能化Pドットの安定性
【0210】
生物学的用途におけるPドット蛍光のpHおよびイオン感受性を、特に銅触媒クリックケミストリーを分析した。Pドットの蛍光はほとんどの生物学的関連イオン、例えば鉄、亜鉛および銅(生物学的有機体中で最も豊富なイオンのうちの3つ)による影響を受けない、ということが判明した。Pドット蛍光は、4〜9の範囲のpHにも非依存性である(
図16)。この事実は、イオン種と如何なる化学的相互作用も示さない傾向があるPドットの疎水性有機性に起因し得る。これに対して、無機Qドットは、銅および鉄イオンにより優位にクエンチされる(H. Y. Xie, H. G. Liang, Z. L. Zhang, Y. Liu, Z. K. He, D. W. Pang, Spectrochimica Acta Part A 2004, 60, 2527)
。
図17aに示したように、PFBTドットは1mMという高いCu
+濃度を含有するMilli−Q水中で高蛍光性を保持したが、一方、Qドットは、1μMという非常に低いCu
+濃度で完全にクエンチされた(S. Han, N. K. Devaraj, J. Lee, S. A. Hilderbrand, R. Weissleder, M. G. Bawendi, J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 7838)。この特性は、銅(I)触媒クリック反応に基づいた種々の試験においてPドットを適用するための有意の利点を提供する。銅溶液中のPドットの自己凝集を防止するために、溶液にPEGを付加した。
実施例20:
クリック型Pドットの反応性
【0211】
図17dは、銅(I)触媒クリック反応による末端アルキン基に対するアジド−Pドットの反応性を検査する蛍光検定を示す。銅溶液と混合した場合、アジド−Pドットは、純Pドットと同様の発光強度を示したが、これは、それらの蛍光が銅イオンに対して非感受性である、ということを確証する。強度のわずかな増大がPドットおよびアルキン−Alexa594の混合物(Cu(I)なし)で観察されたが、しかしこれは、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)により引き起こされる直接的クエンチングというよりむしろ、主に、内部フィルター作用によるものであった。これに対して、Cu(I)の存在下でアルキン−Alexa594と直接的に連結される場合、アジド−Pドットは、Alexa色素からの発光ピークを伴う顕著な蛍光クエンチングを示した。この分光学的変化は、密に近接したPFBTドットからAlexa色素への効率的FRETの直接的結果であり、有効なアジド−アルキンクリック反応を示した。さらに、アルキン官能化知りかナノ粒子上のアジド−Pドットもクリックして、光学的不活性シリカ粒子を高蛍光性プローブに転換した。Pドット−シリカ共役体は、水銀灯照明低倍率(4倍)蛍光顕微鏡でも、単一粒子レベルで明瞭に可視的であった(
図17e)。
【0212】
アルキン−Alexa594色素は、アジド−Pドットとのクリック反応のために、Invitrogen(Eugene, OR, USA)から購入した。典型的反応において、1mMのCuSO
4および5mMのアスコルビン酸ナトリウムの存在下で、30分間、1%BSAを含有するMilli−Q水中の50nMのアジド−Pドットを、5μMのアルキン−Alexa594色素と混合した後、分光測光的測定を実施した。アジド−Pドットとアルキン知りか粒子とのクリック反応のために、シリカコロイド(直径〜200nm)を、標準ストーバー法に従って調製した。シリカ粒子に対するアルキン官能化を、以下のように実施した:80mgのシリカ粒子を無水エタノールで洗浄し、乾燥し、4mLの無水ジメチルホルムアミド(DMF)中に再懸濁した。80μLのO−(プロパルギルオキシ)−N−(トリメトキシシリルプロピル)ウレタンを、DMF懸濁液中のシリカに付加し、混合物を90℃ホットプレート上で24時間、磁気撹拌した。アルキン官能化シリカナノ粒子をエタノールで十分に洗浄し、Milli−Q水中に再懸濁した。典型的クリック反応のために、1%BSAを含有するMilli−Q水中の50nMアジド−Pドット 0.5mLを、1mMのCuSO
4および5mMのアスコルビン酸ナトリウムの存在下で、2時間、0.1mLのアルキン−シリカ粒子(20mg/mL)と混合した。次に、Pドット−装飾シリカ粒子をMilli−Q水で十分に洗浄した。Pドット−装飾シリカ粒子の希釈溶液1滴をカバーガラス上に載せて、AZ−プランApo4×対物レンズ(Nikon AZ100、Melville, NY, USA)を有するアップライト顕微鏡で観察し、励起光源として水銀灯を用いた。
実施例21:
クリック型Pドットによる代謝的標識化
【0213】
Pドットおよびクリックケミストリーによる細胞性標識化を実証するために、生体直交型非標準アミノ酸タグ化(BONCAT)により改質された新規合成タンパク質を可視化した。BONCAT技法では、細胞中の新規合成タンパク質は、アジド−(またはアルキン−)保有人工アミノ酸で代謝的に標識される。人工アミノ酸は、独特の化学的機能性をタンパク質に付与し、これはその後、高選択的方法での検出または単離のために外因性プローブでタグされる(D. C. Dieterich, A. J. Link, J. Graumann, D. A. Tirrell, E. M. Schuman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2006, 103, 9482)。
アジドホモアラニン(AHA)およびホモプロパルギルグリシン(HPG)は、この方法に一般に用いられる2つの人工アミノ酸である。それらは、必須アミノ酸であるメチオニンの有効な代用物である;メチオニンの非存在下で、細胞性合成機構は、直接的にそれらをタンパク質中に組入れる。このアプローチは、放射性アミノ酸
35S−メチオニンによる伝統的代謝的標識化と操作的に同様である。組入れ後、AHAおよびHPGは外因性プローブ(本発明の実施例においては、in situ画像処理のための高蛍光性Pドットである)によるタグ化に感受性になる。
【0214】
先ず、AHA標識化タンパク質を、Pドット−アルキンプローブを用いて標的かした。MCF−7ヒト乳癌細胞を増殖させて集密にした後、メチオニンを欠く無血清培地中に通した。あらゆる残留メチオニンを枯渇させるためにインキュベーション後、細胞培養にAHAを4時間補足した。次いで、細胞を洗浄し、固定した後、CuSO
4、還元剤(アスコルビン酸ナトリウム)およびトリアゾールリガンドの存在下で、アルキン−Pドットとのクリック反応を実行した。Pドットタグ化細胞を、共焦点蛍光顕微鏡で直ちに観察した。同一設定を用いて、Pドット標識化細胞および陰性対照から画像を得た。
【0215】
要するに、新規合成タンパク質の代謝的標識化のために、ホモプロパルギルグリシン(HPG)およびBlockAid(商標)遮断緩衝液を、Invitrogen(Eugene, OR, USA)から購入した。アジドホモアラニン(AHA)は、Medchem Source LLP (Federal Way, WA, USA)から購入した。MCF−7細胞を増殖させて集密にした後、メチオニンを欠く無血清培地中に通した。あらゆる残留メチオニンを枯渇させるために1時間インキュベーション後、培養に0.1mMのAHAまたはHPGを4時間補足した。細胞を1×PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド/PBSで固定し、BlockAid(商標)遮断緩衝液中で遮断した。AHAまたはHPG標識化細胞を、1mMのCuSO
4、5mMのアスコルビン酸ナトリウム、0.5mMのトリス((1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)アミン(TBTA、トリアゾールリガンド)および50nMのアルキン−Pドット(AHA標識細胞用)またはアジド−Pドット(HPG標識細胞用)の混合物とともに1時間インキュベートした。次いで、Pドットタグ化細胞を、ヘキスト34580で対比染色して、蛍光共焦点顕微鏡(ツァイスLSM510)で直ちに観察した。
【0216】
図18は、Pドット標識細胞および対照試料の共焦点蛍光および明視野画像を示す。クリック反応によりPドット−アルキンでタグされたAHA標識細胞に関して、非常に明るい蛍光が観察された(
図18a〜18d)。細胞を同一条件下で、しかし還元剤(アスコルビン酸ナトリウム)(CuSO
4から銅(I)を生成する)の非存在下でインキュベートした場合、Pドットによる細胞標識化は観察されなかったが、これは、Pドット−アルキンが銅(I)触媒化反応に関して選択的であることを示す(
図18e〜18h)。異なる対照において、銅(I)触媒Pドット−アルキンタグ化を、
図18a〜18dと同一条件下で、しかしAHAに曝露されない細胞で、実施した。この対照でも、細胞標識化は観察されず(
図19)、これは、Pドット−アルキンタグ化が当該細胞性標的に高度に特異的であったことを示す。さらに、Pドット−アジドを用いて、HPGとともにインキュベートしたMCF−7細胞中の新規合成タンパク質を検出した。この場合、Pドット−アジドも標的を特異的に且つ有効に標識した(
図20)。Pドット−アルキン標識化(AHA処理細胞)と比較した場合、Pドット−アジド標識化(HPG処理細胞)の蛍光輝度における明白な差異は観察されなかった。これは、HPGおよびAHAが哺乳動物細胞における発生期タンパク質の合成において非常によく似た活性を示す、という文献結果と一致する。
実施例22:
クリック型Pドットによる糖タンパク質標識化
【0217】
Pドット−アルキンを用いて、種々の生物学的機能に広範に関与するタンパク質の亜組である糖タンパク質を、選択的に標的にした。生体直交型化学反応戦略は、培養細胞上での、ならびに種々の生きている生物体中のグリカンをプローブするために、従来、開発されてきた(例えば、J. A. Prescher, D. H. Dube, C. R. Bertozzi, Nature 2004, 430, 873;D. H. Dube, J. A. Prescher, C. N. Quang, C. R. Bertozzi, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2006, 103, 4819;S. T. Laughlin, C. R. Bertozzi, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2009, 106, 12;およびM. A. Breidenbach, J. E. G. Gallagher, D. S. King, B. P. Smart, P. Wu, C. R. Bertozzi, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2010, 107, 3988参照)。当該方法は、アジド基で官能化され、その後、アジド糖が画像処理プローブで共有的にタグされる単糖前駆体によるグリカンの代謝的標識化を包含する。アジド基を有するO連結糖タンパク質を濃化するために、MCF−7細胞を、N−アジドアセチルガラクトサミン(GalNAz)とともに3日間インキュベートした。GalNAz処理細胞をクリック反応によりPドット−アルキンでタグして、その後、共焦点顕微鏡で観察した。Pドット−アルキンで陽性タグ化された細胞に関して、明るい細胞表面標識化が観察された(
図21a〜21d)。細胞を還元剤の非存在下でPドット−アルキンとともにインキュベートした陰性対照では、細胞標識化は観察されなかった(
図21e〜21h)。付加的対照として、同一条件化で、しかしアジドを欠く細胞において、Pドットタグ化を実施した;この場合、細胞標識化は観察されず、これもまた、Pドット標識化が当該細胞性標的に高度に特異的であったことを示す。
【0218】
要するに、糖タンパク質の代謝的標識化のために、N−アジドアセチルガラクトサミン(GalNAz)を、Invitrogen(Eugene, OR, USA)から購入した。O連結糖タンパ
ク質中のアジド基を濃化するために、MCF−7細胞を、N−アジドアセチルガラクトサミン(GalNAz)を含有する一般EMEM培地を用いて、3日間培養した。GalNAz標識化細胞を1×PBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒド/PBSで固定し、BlockAid(商標)遮断緩衝液中で遮断した。次いで、GalNAz標識化細胞を、1mMのCuSO
4、5mMのアスコルビン酸ナトリウム、0.5mMのトリス((1−ベンジル−1H−1,2,3−トリアゾール−4−イル)メチル)アミン(TBTA、トリアゾールリガンド)および50nMのアルキン−Pドットの混合物とともに1時間インキュベートした。次いで、Pドットタグ化細胞を、ヘキスト34580で対比染色して、蛍光共焦点顕微鏡(ツァイスLSM510)で直ちに観察した。
実施例23:
赤色発光PBドットの調製および官能化
【0219】
以前の報告と同様にして、赤色発光半導電性ポリマーPF−0.1TBTおよびPF−0.1DHTBTを合成し、特性化した(Hou, Q. et al. J. Mater. Chem. 12, 2887-2892 (2002); and Hou, Q. et al. Macromol. 37, 6299-6305 (2004))。集光性半導電性ポリマー ポリ[{9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレン−フルオレニレン}−アルト−コ−{2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン}](PFPV、分子量220,000、多分散性3.1)およびポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ベンゾ−{2,1’,3}−チアジアゾール)](PFBT、分子量157,000、多分散性3.0)を、ADS Dyes, Inc. (Quebec, Canada)から購入した。両親媒性官能性ポリマー ポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)(PSMA、クメン末端処理、平均分子量〜1,700、スチレン含量68%)を、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO, USA)から購入した。PBドット調製のための他の試薬はすべて、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO, USA)から購入した。
【0220】
変法ナノ沈降法を用いて、水溶液中の官能化PBドットを調製した(Wu, C., Peng, H., Jiang, Y. & McNeill, J. J. Phys. Chem. B 110, 14148-14154 (2006);およびWu, C., Bull, B., Szymanski, C., Christensen, K. & McNeill, J. ACS Nano 2, 2415-2423 (2008))。実験はすべて、別記しない限り、室温で実施した。典型的調製では、先ず、集光性ポリマーPFBT、赤色発光ポリマーPF−0.1TBTおよび両親媒性官能性PSMAをテトラヒドロフラン(THF)中に溶解して、それぞれ1mg/mLストック溶液を作製した。3つのポリマー溶液をTHFで希釈し、混合して、50μg/mLのPFBT濃度、30μg/mLのPF−0.1TBT濃度および20μg/mLのPSMA濃度を有する溶液混合物を得た。混合物を音波処理して、均質溶液を生成した。5mL量の溶液混合物を、浴音波処理器中のMilliQ水 10mLに迅速に付加した。THFを窒素ストリッピングにより除去した。連続窒素ストリッピングにより、90℃のホットプレート上で溶液を5mLに濃縮した後、0.2μフィルターを通して濾過した。ナノ粒子形成中、PSMA分子の無水マレイン酸単位を水性環境中で加水分解して、PBドット上にカルボキシル基を生じた。PBドット分散液は、数ヶ月間透明且つ安定で、凝集の兆候は認められなかった。
実施例24:
カルボキシル配合ポリマードット(PBドット)との表面生体共役
【0221】
生体分子共役のために、腫瘍特異的ペプチドリガンドであるクロロトキシン(CTX)を、Alomone Labs, Ltd. (Jerusalem, Israel)から購入した。ストレプトアビジンは、Invitrogen (Eugene, OR, USA)から購入した。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)およびアミン末端処理ポリエチレングリコール(メチル−PEG8−NH2)を、Thermo Fisher Scientific (Rockford, IL, U.S.A)から購入した。
【0222】
カルボキシルPBドットとそれぞれのアミン含有生体分子(メチル−PEG
8−NH
2、クロロトキシンおよびストレプトアビジン)との間のEDC触媒反応を利用することにより、生体共役を実施した。典型的生体共役反応では、60μLのポリエチレングリコール(5%w/v PEG、分子量3350)および60μLの濃縮HEPES緩衝液(1M)を、3mLのカルボキシルPBドット溶液(Milli−Q水中50μg/mL)に付加して、20mM HEPES緩衝液、pH7.3中のPBドット溶液を生じた。次いで、30μLのアミン含有分子(1mg/mL)を溶液に付加し、渦巻撹拌機で十分に混合した。最後に、60μLの新たに調製したEDC溶液(Milli−Q水中5mg/mL)を溶液に付加し、上記混合物を、室温で4時間、磁気撹拌した。最終的に、その結果生じたPBドット−CTXおよびPBドット−PEG共役体を、Bio-RadEcono−Pac(登録商標)10DGカラム(Hercules, CA, USA)により、遊離分子から分離し
た。PBドット−ストレプトアビジン生体共役体を、Sephacryl HR−300ゲル媒質を用いたゲル濾過により分離した。
実施例25:
配合ポリマードット(PBドット)の特性化
【0223】
PBドットとQドット(異なる発色Qドットプローブのうちの最も明るいものである655nmで発光する)との並列輝度比較を実行するために、単一粒子画像処理を実施した。Qドット655が合理的に検出されるよう、488nmレーザー励起出力を用いて(
図26b)、PBドットの大多数は、同一獲得およびレーザー条件下で、検出器を実際に飽和した。このような顕著な対比は、PBドットの高モル消光係数に起因する(直径〜15nmのナノ粒子に関しては、488nmで〜3.0×10
7cm
−1M
−1)。検出器飽和を回避するために、減光フィルター(光学密度 1;これは発光された蛍光の90%を遮断する)を発光フィルターと一緒に置いて、PBドットの単一粒子蛍光画像を得た(
図26c)。数千個の粒子を収集し、それらの蛍光強度を減衰係数によって算定し戻した。蛍光強度分布は、PBドットがQドット655より15倍以上明るいことを示したが(
図26d)、これは、バルクスペクトル解析に基づいた輝度比較と一致する。TCSPC設定により、PBドットの蛍光寿命を3.5nsであると確定した。単一PBドットが多重エミッターを含有すると言うことに留意することは有益であり、これは、蛍光寿命単独から予測されるものより高い光子発光率を生じる。
実施例26:
共役化PBドットの調製および特性化
【0224】
変法ナノ沈降法を用いて、水溶液中の官能化PBドットを調製した(Veiseh, O. et al., Cancer Res. 69, 6200-6207 (2009);およびChoi, H. S. et al., Nature Biotechnol. 25, 1165-1170 (2007))。典型的調製では、集光性ポリマーPFBT、赤色発光ポリマーPF−0.1TBTおよび官能性ポリマーPSMAをテトラヒドロフラン(THF)中に溶解して、50μg/mLのPFBT濃度、30μg/mLのPF−0.1TBT濃度および20μg/mLのPSMA濃度を有する溶液混合物を得た。混合物を音波処理して、均質溶液を生成した。5mL量の溶液混合物を、浴音波処理器中のMilliQ水 10mLに迅速に付加した。THFを窒素ストリッピングにより除去した。連続窒素ストリッピングにより、90℃のホットプレート上で溶液を5mLに濃縮した後、0.2μフィルターを通して濾過した。
【0225】
クロロトキシン(CTX)(36−アミノ酸ペプチド)を、神経外胚葉起源の腫瘍に対するその強い親和性のために、腫瘍標的化リガンドとして選択した。CTXは、神経膠腫、髄芽腫、前立腺癌、肉腫および腸癌と特異的に結合する、ということが示されている。先ず、PBドットを、両親媒性ポリマー ポリ(スチレン−コ−無水マレイン酸)(PSMA)により官能化した。PSMA分子の疎水性ポリスチレン単位は、PBドット粒子の内側に固定されたが、一方、無水マレイン酸単位はPBドット表面に位置し、水性環境中で加水分解されて、カルボキシル基を生じた。カルボキシル基は、標準カルボジイミド化学により表面共役を可能にする(Hermanson, G. T. Bioconjugate Techniques (Academic Press, San Diego, 2008))。
【0226】
CTXのほかに、ポリエチレングリコール(PEG)は、タンパク質吸着を低減し、免疫認識を制限し、それによりin vivoでのナノ粒子血清寿命を増大するために共役され得る。ストレプトアビジンも、別個の対照として生体共役に用いられて、特異的細胞性標識化による共役戦略を立証する。透過型電子顕微鏡(TEM)は、裸および官能化PBドットがともに、匹敵する粒子サイズ(直径〜15nm)を有することを示した(
図26d)が、これは、動的光散乱結果と一致する(
図29)。異なる分子(PEG、CTXおよびストレプトアビジン)との共役後、ゲル電気泳動は、表面電荷および粒子サイズの変化のため、0.7%アガロースゲル中のPBドット共役体のシフト移動帯域を示した。これらの結果は、上首尾のカルボキシル官能化および表面生体共役を明白に示す。
【0227】
カルボキシルPドットとそれぞれのアミン含有生体分子(クロロトキシン、メチル−PEG
8−NH
2、またはストレプトアビジン)との間のEDC触媒反応を利用することにより、表面生体共役を実施した。典型的生体共役反応では、60μLのポリエチレングリコール(5%w/v PEG、分子量3350)および60μLの濃縮HEPES緩衝液(1M)を、3mLのカルボキシルPBドット溶液(Milli−Q水中50μg/mL)に付加して、20mM HEPES緩衝液、pH7.3中のPドット溶液を生じた。次いで、30μLのアミン含有分子(1mg/mL)を溶液に付加し、渦巻撹拌機で十分に混合した。最後に、60μLの新たに調製したEDC溶液(Milli−Q水中5mg/mL)を溶液に付加し、上記混合物を、室温で4時間、磁気撹拌した。最終的に、その結果生じたPBドット−CTXおよびPBドット−PEG共役体を、Bio-RadEcono−Pac(登録商標)10DGカラム(Hercules, CA, USA)により、遊離分子から分離した。PBドット−ストレプトアビジン生体共役体を、Sephacryl HR−300ゲル媒質を用いたゲル濾過により分離した。
【0228】
長期長期運命およびin vivo安定性は、in vivoプローブを設計するための根本的および臨床的意義の両方を有する。ナノプローブの完全性は、主に、生物学的環境におけるイオン種および活性酸素種(ROS)に対する素あれらの化学的反応性によって決まる。例えば、Qドットは、生理学的濃度での銅イオンおよびROSのために重度の化学的分解を蒙るが、これは、発光の損失および毒性Cdイオンの放出を引き起こす。pH、生物学的胃関連イオンおよびROSに対するPBドットの感受性を調べた。PBドットは、4〜9の生理学的pH範囲において一定の蛍光を示した(
図30)。PBドットの蛍光は、さらにまた、試験下(
図31)の任意の生物学的関連イオン、例えば生物学的有機体における最も豊富なイオンのうちの3つである鉄、亜鉛および銅による影響を受けなかった。さらに、生理学的環境における2つの一般的且つ安定なROSである次亜塩素酸(HOCl)および過酸化水素(H
2O
2)は、PBドットの蛍光に及ぼす如何なる作用も示さない。これに対して、ストレプトアビジン共役化ポリマー封入Qドット655プローブは、PBドットに関して用いたものと同じ濃度で、H
2O
2および鉄イオンにより有意にクエンチされ、そしてHOClおよび銅イオンにより完全にクエンチされる。PBドットの安定蛍光は、それらの疎水性有機高分子性に起因し得るが、これは、金属イオンおよびROSとの化学的相互作用を有する傾向はない。この特性は、in vivoプローブとしてPBドットを用いるための有意の利点を提供する。
実施例27:
官能化PドットによるCu2+およびFe2+イオンの検出
【0229】
典型的には、40μgのPFBTおよび8μgのPSMAを、5mLのTHF中に溶解した。次いで、この混合物を、激しい音波処理下で、10mLの水中に迅速に注入した。次に、96℃ホットプレート上で1時間、窒素でパージすることによりTHFを除去した。その結果生じたPドット溶液を、0.2μm酢酸セルロース膜フィルターを通して濾過して、調製中に形成されたあらゆる凝集物を除去した。
【0230】
高蛍光性半導電性ポリマー ポリ[9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−1,4−ベンゾ−{2,1’−3}−チアジアゾール)](PFBT)を用いて、PSMAポリマー(20%)をPFBTマトリックスに付加して、PS−COOHコPFBT Pドットを形成した。無水マレイン酸単位の加水分解によりPドット上にカルボキシル基を生成し、一方、ポリスチレン部分はPFBTポリマーの疎水性コアの内側に固定される傾向があった。水性溶液中に良好に分散されたこれらのPドットならびにカルボキシル部分は、さらなる改質を伴わずに、金属イオンのための選択的配位基として役立った。カルボキシル官能化PFBT Pドットの蛍光は、Cu
2+およびFe
2+イオンにより選択的にクエンチされることが判明した(
図32)。
【0231】
いくつかの異なる型のポリマー、例えばPFBTおよびポリ[(4−(5−(7−メチル−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン−2−イル)チオフェン−2−イル)−7−(5−メチルチオフェン−2イル)ベンゾ[c][1,2,5]チアジアゾール)](PFTBT) Pドット(PSMAと配合されていない)は、緩衝溶液(下記参照)中の種々のイオンに対する優れた安定性(凝集およびクエンチングなし)を示したが、これは、非官能化Pドットがこれらの方法において良好な対照として役立ち得る、ということを実証する。
【0232】
Pドットの凝集および自己クエンチング行動は、Pドットの表面のPS−COOH基と溶液中のCu
2+およびFe
2+との間のキレート化相互作用に起因した。PEGはPドットの凝集および自己クエンチング行動を防止し得るため、この実施例で記載した実験では溶液中にPEGを付加しなかった、ということに注目する。この減少は、Cu
2+の付加の前および後になされた透過型電子顕微鏡(TEM)測定によって明示される(
図33AおよびB)。動的光散乱(DLS)測定も、調製したままのPドットの直径はCu
2+の付加前は平均で〜21nmであったが、しかしCu
2+の付加後は〜500nmに増大する、ということを示した(
図33C)。
【0233】
PS−COOHコPFBT Pドットの蛍光に及ぼす種々の他の生理学的に重要な陽イオンの作用も調べた。それらの発光強度は、純水(I
ブランク)中のPS−COOHコPFBT Pドットの発光強度と比較して、他の陽イオンによる影響を受けないかまたは最小度に影響される、ということが判明した(
図34)。
【0234】
この試験では、非官能化PFBTコPFTBT Pドットを内部標準として用いた。PS−COOHコPFBT Pドットは、490nmより低い波長で励起されると、540nmで発光するが、一方、PFBTコPFTBT Pドットは、同一波長で励起された場合、623nmで発光する。発光波長におけるこのシフトは、PFBTからPFTBTへの効率的エネルギー移動とその後のPFTBTからの発光により引き起こされる。内部標準としてのPFBTコPFTBT Pドットの使用は、2つの蛍光発光強度(540nm/623nm)に基づいたレシオメトリックイオン決定の適用を可能にし、それにより環境からの任意の妨害または機器におけるドリフトを排除した。
【0235】
図35Aは、Cu
2+濃度の一関数としてのPS−COOHコPFBT PドットおよびPFBTコPFTBT Pドットを含有する溶液の発光スペクトルを示す。PFTBT含有Pドットの発光強度(623nm)は一定のままであったが、一方、PS−COOH含有Pドットは、30μMまでのCu
2+濃度の増大に伴ってそれらの強度を増大した(540nm)、ということは明白である。30μMより高い濃度に関しては蛍光強度のさらなる低下は観察されなかったが、これは、カルボキシル基のすべてが銅イオンにより既に占有されている、ということを示す。この実験組に関しては、10反復実験からのブランクシグナルの相対的標準偏差は、1.1%であった。〜6%のクエンチングシグナルが、100nMの銅イオンで観察された。
図35Bは、ΔI
540nm/I
623nmの比とCu
2+濃度との間の線形相関を示す(これは、1μM〜30μMの範囲であった(R
2=0.992))。
【0236】
凝集誘導性蛍光クエンチングは、Pドット表面のカルボキシル部分とCu
2+との間の2:1サンドイッチ錯体の形成により引き起こされるため、強力な銅イオンキレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)はカルボキシル基より優勢であり、したがって凝集を再分散させる、と予測し得る。この仮説を試験するために、Cu
2+イオンと同一モル量のEDTAを凝集Pドット溶液に付加し、PS−COOHコPFBT Pドットの蛍光強度が完全に回復されたことを見出した(
図35C)。
【0237】
さらに、溶液中への過剰量のEDTAの付加は、発光強度の如何なるさらなる増大も引き起こさず、これは、付加的銅イオンがEDTAによりキレート化され得る、ということを示唆する。DLS実験も、凝集PドットがEDTAの付加後に再分散される、ということを実証した(
図33C)。
【0238】
この工程が、最小相対シグナル損失で多数回反復し得る、ということは注目に値するが、これは、このプロトコールが1回だけ使用の検定というよりむしろ、何回も再使用し得る、ということを示す。この可逆性は、Cu
2+およびCd
2+間の非可逆的陽イオン交換工程のため、量子ドットベース(例えばCdSe)のCu
2+センサーでは観察されなかった(Y.-H. Chan Y.H. et al., Anal. Chem., 2010, 82, 3671-3678;およびSadtler B. et al., J. Am. Chem. Soc., 2009, 131, 5285-5293)。Pドットの凝集および再分散の両方に関する応答時間は非常に短く(1分未満)、蛍光強度は反応後数日間変わらないままであった、ということに注目することは有益である。
【0239】
凝集および自己クエンチング現象は、
図36に示したように10〜25μMの動的範囲で感知するFe
2+に関しても観察された(R
2=0.996)。PS−COOHコPFBT Pドットの蛍光強度はFe
2+により有意に(70%)クエンチされたが、しかしこのクエンチングはEDTAを付加することによって逆転されなかったが、これは、Cu
2+よりもFe
2+に関するEDTAの結合定数が非常に低いためであると思われる。
【0240】
カルボキシル基をプロトン化しようと努力して、Pドット−Fe
2+混合物のpH値を調整し、次いで、過剰量のEDTAを溶液中に付加した。しかしながら、実質的発光強度(10%未満)は、pH=1でさえ回復されなかった。その上、これらのPドットは、pHが2より低いと凝集しがちであった。したがって、Cu
2+誘導性自己クエンチングからの、EDTAの付加による、蛍光の選択的回復は、銅および鉄感知間の弁別を可能にして、それらの濃度を個々に確定し得た。
実施例28:
官能化PドットによるCu2+およびFe2+イオンの同時検出
【0241】
実施例26に略記した検出方法の適用を実証するために、細胞培地を選択したが、これは、それが複合生理学的流体を刺激し、同時に、良好に制御された溶液として役立つためでもある。ここで、Pドットセンサーを含有するダルベッコ変法イーグル培地(DMEM
D−5921)溶液中に、それぞれ10μMおよび15μMの銅および鉄イオンを加えることにより、試験試料を調製した。次に、Cu
2+の濃度がPドットの回復された発光強度から算定され得るよう、EDTAを溶液に付加した。次いで、I
ブランクを比較することにより、Fe
2+濃度を概算した。この測定は、銅および鉄イオンの濃度がそれぞれ10.17±1.34μMおよび16.16±1.82μMであるということを示したが、これは、加えた値との良好な一致を示した。この実験は、複合試料中の銅および鉄検出のためのこのPドットベースの感知系の使用の実現可能性を実証する。
実施例29:
近赤外蛍光を有する官能化発色性ポリマードット
【0242】
本実施例は、近赤外(NIR)色素が官能化発色性ポリマードット(CPドットまたはPドット)中に混入されて、発色性ポリマードット生体共役体の蛍光特性を調整し得る、という実証を提供する。発色性ポリマードットを記述するために、以下でCPドットまたはPドットを互換的に用いる。
【0243】
NIR色素混入CPドットの調製および特性化。 典型的手法において、50μg/mLのPFBT、50μg/mLのPS−PEG−COOHおよび0.2μg/mLのNIR色素 ケイ素2,3−ナフタロシアニンビス(トリヘキシルシリルオキシド)(NIR775)を含有するTHF溶液を調製した。次に、混合物の5mLアリコートを、激しく音波処理しながら10mLの水中に迅速に分散させた。窒素ガスで保護しながら、余分のTHFを高温(100℃より低い)で蒸発させた。THF無含有CPドット溶液を、0.2μmのセルロース膜フィルターを通して濾過し、適切な濃度に調整した。CPドットのサイズおよび形態を、透過型電子顕微鏡(FEI Tecnai F20、200kV)を用いて調べた。CPドットのサイズを、動的光散乱機器(Malvern Zetasizer NanoZS)を用いて、水溶液中でも測定した。CPドットおよびNIR色素のUV−Vis吸収スペクトルを、水中でDU 720走査分光光度計(Beckman Coulter, Inc., CA USA)で記録した。Malvern Zetasizer NanoZSを用いて、ゼータ電位を試験することにより、CPドットのカルボキシル表面を立証した。カルボキシル表面を伴うまたは伴わないCPドットをともに、ゲル電気泳動実験で試験した。0.7%の通常融点アガロース、0.2%のPEG(分子量3350)および20mMのHEPES緩衝液を用いて、ゲルを調製した。CPドット試料を、30%グリセロールの助けを駆りながら電気泳動チャンネルに負荷し、Mupid(登録商標)−exUサブマリン電気泳動系を用いて、10V/cmの電気泳動力下で15分間、20mMのHEPES緩衝液(pH7.4)中で移動させた。次に、コダック画像ステーション440CF系を用いて、ゲルを展開した。Fluorolog−3蛍光計((HORIBA Jobin Yvon, NJ USA)を用いて、CPドットおよびNIR色素の蛍光スペクトルを測定した。時間相関単一光子計数機器(TCSPC)を用いて、NIR色素混入CPドットおよびPFBTドットの蛍光寿命データを得た。150W CWキセノンランプからの457nm励起で、積分球(モデルC9920−02、Hamamatsu Photonics)により、PFBTドットおよびNIR色素混入CPドットの蛍光量子収量を収集した。
【0244】
NIR発光を有する官能化CPドット。 異なる機能を有する3つの構成成分:緑色半導電性ポリマー(PFBT)、NIR色素(NIR775)および両親媒性ポリマー(PSPEG−COOH)を用いて、NIR色素混入CPドットを処方した(
図37)。CPドットの必須部分として、半導電性ポリマーはPドットの疎水性マトリックスを形成し、NIR色素のための宿主として役立つ。NIR775色素は、疎水性溶媒中で高蛍光性であるが、一方、それらは、自己凝集のために生理学的環境中では有意に低い。これらの色素をPドットマトリックスの内側に混入した場合、凝集は回避されるか有意に低減された。CPドットの内側では、NIR色素は、半導電性ポリマーマトリックスからのエネルギーを受容するアクセプターとして役立ち、強力なNIR蛍光を生じる。蛍光画像処理の目的のために、両親媒性ポリマーPS−PEG−COOHを用いて、カルボキシル基でCPドットの表面を改質した。ここで、ポリマーの疎水性部分は、Pドットマトリックスと絡まったが、親水性部分は生理学的環境中に引き伸ばされた。Pドット加工製造および疎水性色素混入に関する簡易性および高効率性のため、ナノ沈降法を用いてNIR色素混入CPドットを合成した(
図37)。先ず、CPドットの構成成分すべてを無水THF中に溶解し、混合して、次に、音波処理下で水中に迅速に沈降させた。溶媒環境の突然の変化ならびに強力な音波処理力により、ナノメートルサイズの半導電性ポリマー粒子が生じ、同時に、CPドットマトリックス中に疎水性NIR色素(NIR775)が閉じ込められた。CPドットおよび水の界面で集合された両親媒性ポリマーとして、カルボキシレート表面も生成された。
【0245】
TEM画像およびDLS結果はともに、NIR色素混入CPドットが18nmの平均直径を有する単分散粒子であった、ということを示す(
図38Aおよび38B)。これらの粒子において、NIR色素は、以下の実験により立証さえるように、首尾よく封入された。先ず、遊離NIR色素だけを通過させて、混入物は通さない100K分子量カットオフ遠心分離膜を用いて、Pドット溶液を濾過した。濾液は、UV−Vis分光計でモニタリングした場合、NIR色素を含有しなかったが、一方、濾過後のNIR色素混入CPドットの溶液中で、NIR色素の吸収が観察された。この結果は、NIR色素がCPドット中に完全に混入されたことを示す。両親媒性ポリマーPSPEG−COOHを用いて、カルボキシレート基で、CPドットの表面を官能化した。この表面官能化は、CPドットのゼータ電位を、−35.4mV(裸PFBTドット)から−46.0mV(PS−PEG−COOHコーティングを有するCPドット)に有意に低減した。ゲル電気泳動も、正電極方向に、同様のサイズの裸PFBTドットよりはるかに速くカルボキシレートCPドットが移動した、ということを示した(
図38C)。NIR混入は、カルボキシレートCPドットの表面電位に影響を及ぼさなかったが、これは、NIR色素がCPドットの内側のみに位置して、表面には存在しないことを示唆した。
【0246】
NIR色素混入CPドットにおけるエネルギー移動媒介性蛍光。 457nmで励起されると、NIR色素混入CPドットは2つの蛍光発光を有する:1つはポリマーマトリックスからの可視的発光であり、もう1つは混入NIR色素からのNIR発光である(
図39)。Pドットの内側のNIR色素濃度を操作することにより、2つの蛍光発光を調整した。NIR色素は、低濃度でさえ、CPドット蛍光を効率的にクエンチし得る;0.2%〜2%の範囲でNIR色素濃度を増大することにより、ポリマー蛍光の低減を達成した(
図40)。色素混入の濃度を制御することにより、CPドットのNIR発光も調整した。NIR色素は高濃度でCPドット中で自己クエンチし得るため、CPドットマトリックス中により多くのNIR色素を混入するとNIR蛍光の低下を生じた(
図40E)。したがって、NIR領域において蛍光を最大にするためには、最適混入濃度が存在する。
【0247】
PFBTポリマーからNIR色素への効率的粒子内エネルギー移動が存在する。NIR色素は少量(0.2% w/w)でも、ポリマー系抗を75%クエンチするのに適している。2%のNIR色素を混入した場合、95%より多くのポリマー蛍光がクエンチされた。クエンチング結果は、シュテルン・フォルマー関係により良好に説明された(
図40D)。NIR色素混入の前および後のCPドットの蛍光寿命の変化により、Pドットマトリックスのクエンチングも明白になった。元は2.4nsであったPFBTドットの寿命は、Pドットマトリックス中への0.2%のNIR色素の混入後、1.2nsに減少した。540nm発光の蛍光量子収量も、NIR色素混入に従って、0.368から0.08に低下した。マトリックスからNIR色素にエネルギーを移すことにより、NIR色素混入CPドットは、受容エネルギーをNIR発光に効率的に転換し得た。例えば、0.2%NIR色素混入CPドットは強力なNIR発光を示したが、これは、色素混入を伴わないCPドットの540nmピークに匹敵する。このNIR発光の量子収量は約0.11であったが、これは、効率的エネルギー転換を示す。NIR色素の蛍光強度は、混入戦略により大いに増強された。水溶液中で457nmで励起した場合、混入NIR色素は、THF中で763nmで励起された等価量の遊離NIRより40倍強い蛍光を示した(
図41A)。
【0248】
集光効率は、ナノ粒子の蛍光輝度を決定する重要な一パラメーターである。CPドット中へのNIR色素の混入は、混入色素の集光能力を広範に改善した。NIR色素混入CPドットの輝度を、NIR量子ドット(Invitrogen, Inc.からのQドット800)と比較する。同一粒子濃度で、NIR色素混入CPドットは、Qドット800より約4倍強力であり、そして非常に狭い蛍光発光を示す(
図41Bおよび41C)。
【0249】
色素漏出。 色素漏出を検査するために、NIR色素混入CPドットのアクセプター対ドナー蛍光比を、20mMのHEPES緩衝液中で72時間モニタリングした。結果は、アクセプター対ドナー比は、72時間後、85%にわずかに減少しただけで、NIR蛍光は変化しなかった、ということを示す(
図42A)。この結果は、疎水性NIR色素が水溶液中に漏出したようには見えず、NIR色素混入CPドットは少なくとも72時間、おそらくはそれ以上、それらの蛍光特性を持続し得る、ということを示す。NIR色素混入CPドットはin vivo用途に望ましいため、漏出試験を37℃でヒト血漿中でも実行した。結果は、室温で前者試験と同様の結果を示し、これは、溶液条件の変化が72時間でNIR色素混入CPドットの性能を弱めない、ということを示唆する(
図42B)。色素漏出を完全に克服するために、色素分子を発色性ポリマーマトリックスと共有結合指せて、CPドットを形成し得る。
実施例30:
レシオメトリック温度センサーのための官能化発色性ポリマードット
【0250】
本実施例は、官能化発色性ポリマードットを用いて、レシオメトリックナノ粒子温度センサーを形成し得るという実証を提供する。発色性ポリマードットを記述するために、以下でCPドットまたはPドットを互換的に用いる。
【0251】
CPドット温度センサーの調製。 先ず、官能性ポリマー、例えばアミン末端処理ポリスチレンポリマーを用いて、温度感知色素ローダミンB(RhB)と反応させる。ローダミンBは水溶性色素であるため、官能性疎水性ポリマーとの反応は色素を疎水性にし、したがって、それは疎水性CPドットの内側に閉じ込められ得る。10mL丸底フラスコ中に、200μLの10mg/mLローダミンB−イソチオシアネート(無水DMF中)および1mgのNaHCO
3を、2mLの1mg/mL(DMF中)アミン末端処理ポリスチレン(PS−NH
2、分子量1000、多分散度 1.1)に付加して、
図43Aに示したようにNH
2−イソチオシアネート反応を実施した。N
2の保護下で一晩、混合物を静かに撹拌した。75℃Cで回転蒸発により、DMFを除去した。次に、その結果生じた赤色固体を1mLのTHF(無水)中に溶解した。THF中には溶解しなかったので、NaHCO
3を200nm膜フィルターで濾し取った。次に、THF中に得たPS−RhBを発色性ポリマー中に混入して、CPドットを作った。
【0252】
コポリマー ポリ[{9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレン−フルオレニレン}−アルト−コ−{2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン}](PFPV、分子量 220,000、多分散度 3.1)およびポリ[(9,9−ジオクチルフルオレニル−2,7−ジイル)−コ−(1,4−ベンゾ−{2,1’,3}−チアジアゾール)](PFBT、分子量 150,000、多分散度 3.0)を、CPドット温度センサーの調製のために用いた。10mgの上記ポリマーを、不活性大気下で一晩撹拌しながら、10mLのTHF中に溶解した。先ず、200μLの1mg/mL(THF中)PFPVまたはPFBTおよび10μLの2mg/mL(THF中)PS−RhBを5mLの THF中で混合し、次に、音波処理下で10mLのMilli−Q水中にTHF溶液中の混合ポリマーを注入することにより、ローダミンB混入CPドットを調製した。次いで、部分真空蒸発により、THFを除去し、0.2μm膜フィルターを通して濾過することにより、小分画の凝集物を除去した。Bio−Rad Econo−Pac(登録商標)10DGカラム(Hercules, CA, USA)により、遊離ローダミンBを除去する。
図43Bは、CPドット調製、ならびにナノ粒子内の発色性ポリマーとRhBとの間のエネルギー移動の説明を示す。
【0253】
CPドット温度センサーの特性化。 バルク溶液中のPドットの粒子サイズを、動的光散乱(DLS、Malvern Zetasizer NanoZS)により特性化した。
図44は、Pドットに関するDLSデータを示す。その結果生じたPFPV−RhBドットは、直径約26nmであるが、一方、PFBT−RhBドットは平均直径160nmである。CPドットサイズは、ポリマーの分子量、ポリマー主鎖構造、ならびに発色性ポリマーに対するPS−RhBの濃度比によって大いに左右される。PFBT−RhB系では、20重量%またはそれ移住のPS−RhB濃度がナノ粒子の凝集を引き起こす。PFBT Pドット中の10%PS−RhBは、最良の感受性ならびに相対的に小さいサイズを示す、ということが判明した。PFPV−RhB系において、非常に小さいPドットを得た。10%PS−RhBは、蛍光強度および感受性に基づいた最良混入量であることも確証される。
【0254】
UV−Vis吸収スペクトルをDU720分光測光計で記録した。蛍光スペクトルを、Fluorolog−3蛍光計で収集した。PFPVおよびPFBTは450nm辺りでそれらの吸着ピークを示したため、CPドットはすべて、450nmで励起させた。
図45Aは、室温でのPFBT(黒色)およびPFBT−RhB(赤色)ドットの吸収(破線)および発光(実線)スペクトルを示す。吸収スペクトルでは、付加的小吸収ピークが540nmで出現し、PFBT吸収ピークに関する450nmから460nmへの10nm赤方偏移を伴った。540nmピークはRhBの吸収に対応するが、一方、PFBTの製法偏移は、純PFBTドットの〜20nmから〜160nmPFBT−RhBドットにサイズが増大するためである。PFBT−RhBドットは、2つの発光ピーク:540nmでの相対的に弱い発光ピークと573nmでの強い発光ピークを示す。後者ピークは、RhBの発光に対応する。PFBTの発光(540nmでピーク)およびRhBの吸収(540nmでピーク)間の良好な重複、ならびにPFBTポリマー鎖とローダミンB分子との密な近接性のため、効率的エネルギー移動はRhBの強い蛍光を生じたが、一方、純RhB色素は450nmにより不十分に励起された。
【0255】
図45Bは、室温でのPFPVおよびPFPV−RhBの吸収および発光スペクトルを示す。吸収スペクトルでは、PFPV−RhBドットはローダミンBに関して540nmで小吸収ピークを示し、一方、450nmでのPFPVピークに関する顕著なシフトは認められなかった。発光スペクトルは、PFPVドットに関しては510nmおよび540nmで2つのピークを示し、一方、PFPV−RhBドットは、573nmで付加的RhBピークを示す。PFBT−RhBと同様に、PFPVの発光(540nmでピーク)およびRhBの吸収(540nmでピーク)間の良好なスペクトル重複、ならびにナノ粒子内部のポリマー鎖およびRhBの密な詰め込みのため、PFPVおよびRhB間に強力なFRETが認められる。
【0256】
蛍光CPドット温度感知。 Pドットの温度依存性蛍光を、加熱/冷却系と連結するFluorolog−3蛍光計で測定した。溶液中に温度プローブを挿入することにより、デジタル温度計TM902Cによって、Pドット溶液の絶対温度を測定した。溶液を静かに撹拌して、実験中の均質な冷却および加熱を得た。
図46は、それぞれ10℃から70℃および10℃から60℃への温度上昇に対するPFBT−RhB(A)およびPFPV−RhB(B)の蛍光スペクトルを示す。右は線(赤色)は573nmでのRhBの発光ピークを示し、一方、左は510nmで、これはレシオメトリック算定のための内部参照として選択される。
図47は、両方のPドットに関する温度の一関数としての蛍光強度を示す。蛍光強度は、温度が上がると、PFBT−RhBに関しては減少する。さらに重要であるのは、強度は、温度変化に比して線形環系を示すことである。温度プローブとしての遊離ローダミンBまたは他のナノ粒子を上回るこれらのCPドットセンサーの独特の特質は、レシオメトリック測定である。
図48は、PFBT−RhBドット(A)およびPFPV−RhBドット(B)に関する温度の一関数としてのI
573nm/I
510nmのレシオメトリックプロットを示す。線形適合は感知行動を良好に説明し、したがって、実験で得た所定の蛍光強度比から温度が確定され得る。
実施例31:
レシオメトリックpHセンサーのための官能化発色性ポリマードット
【0257】
本実施例は、官能化発色性ドットを用いて、レシオメトリックナノ粒子pHセンサーを形成し得るという実証を提供する。発色性ポリマードットを記述するために、以下でCPドットまたはPドットを互換的に用いる。
【0258】
CPドットpHセンサーの調製。 発色性ポリマー ポリ(2,5−ジ(3’,7’−ジメチルオクチル)フェニレン−1,4−エチニレン(PPE)をポリマードナーとして、そしてpH感受性色素 フルオレセインをアクセプターとして用いて、レシオメトリックCPドットpHセンサーを形成した。チオール末端処理ポリスチレン(PS−SH)またはアミノ末端処理ポリスチレン(PS−NH2)を用いて、色素をCPドットと共有結合した。
【0259】
チオール官能化PPEドットの調製。 典型的には、40μgのPPEおよび12μgのPS−SHを5mLのTHF中に溶解した。次に、混合物を激しく音波処理しながら、水10mL中に迅速にこの混合物を注入した。次いで、96℃ホットプレート上で1時間、窒素でパージすることによりTHFを除去した。その結果生じたPドット溶液を、0.2μm酢酸セルロース膜フィルターを通して濾過して、調製中に形成されたあらゆる凝集物を除去した。
【0260】
フルオレセイン共役化PPEドット(Pドット(A)、Pドット(B)およびPドット(C))の調製(
図49)。 Pドット(A)に関しては、無水DMSO中に溶解した0.2mgのフルオレセインイソチオシアネート(FITC)を、ガラスバイアル中の4mLのPS−SHコPPE Pドット(20μg/mL)水溶液に付加した。混合物を室温で12時間撹拌し、次いで、Bio-RadEcono−Pac(登録商標)10DGカラム(Hercules, CA, USA)を通して精製して、遊離FITC分子から分離した。Pドット(B)の調製のために、5mgFITCおよび20mgPS−NH
2を1mLのDMF中に溶解し、混合した。次に、5mLのトリエチルアミンを溶液に付加した。混合物を回転振盪器上に一晩放置した。THF中のPPE(1mg/1mL)0.2mLおよび27μLのPS−NH
2−FITC共役体溶液を5mLのTHF中で混合した。次いで、この混合物を、激しく音波処理しながら10mLの水中に迅速に注入した。次に、96℃ホットプレート上で1時間、窒素でパージすることによりTHFを除去した。その結果生じたPドット(B)溶液を、先ず、0.2μm酢酸セルロース膜フィルターを通して濾過して、調製中に形成されたあらゆる凝集物を除去し、次いで、Bio-RadEcono−Pac(登録商
標)10DGカラムを通して精製して、遊離FITC分子から分離した。Pドット(C)の調製のために、無水DMSO中の15μgのフルオレセイン−5−マレイミド、ならびに60μLの濃縮HEPES緩衝液(1M)を、ガラスバイアル中の新たに調製した4mLのPS−SHコPPE Pドット(20μg/mL)水溶液に付加した。混合物を室温で12時間撹拌し、次いで、Bio-RadEcono−Pac(登録商標)10DGカラムを通して精製して、遊離FITC分子から分離した。
【0261】
発色性ポリマー−フルオレセイン対の選択および最適化。 FRETを基礎にし、単一波長下で励起されるレシオメトリック感知プラットフォームを加工製造するために、第一ステップは、適切なドナー・アクセプター対を選択することである。本明細書中では、その吸収プロフィールおよび発光強度がpHに高度に依存性であるため、フルオレセインをFRETアクセプターとして選んだ。異なるpHでのフルオレセインの吸収プロフィールの変化により、ドナー(発色性ポリマーマトリックス)およびアクセプター(フルオレセイン分子)間のFRET効率を調整し得るが、一方、pHに対する蛍光強度の応答は、プロトン活性のフィードバックを提供する。FRET効率を最適にするためには、その分光特性に基づいて理想的なドナーポリマーを選択することが重要である。PPEポリマードットがいくつかの共役経路でフルオレセインへの大きなエネルギー移動を示す、ということが判明した。この現象は、
図50Aに示したようなPPEポリマーの発光スペクトルとフルオレセインの励起スペクトルとの間の実質的スペクトル重複により説明され得る。
【0262】
フルオレセインとPPE Pドットとの共役。 PPE Pドットをポリマーマトリックスとして用いたが、一方、
図49に図示したような3つの異なる経路に基づいてPPE
Pドット上にフルオレセイン色素を固定した。経路AおよびCに関しては、先ず、チオール末端処理ポリスチレンをPPEポリマーに配合して、沈降法により水溶液中にPS−SHコPPE Pドットを形成することにより、チオール官能化PPE Pドットを調製した。その後、PS−SHコPPE Pドットをフルオレセインイソチオシアネート(経路A)またはフルオレセイン−5−マレイミド(経路C)と反応させて、pH感受性Pドット−色素複合体を生成した。アミノ官能化PPE Pドットが不安定であることが判明したため、経路Bを案出したが、この場合、先ず、有機相下で、フルオレセインイソチオシアネートをアミノ末端処理ポリスチレン(PS−NH
2)と結合させて、次に、PPEポリマーと配合し、その後、水溶液中でナノ粒子を沈降させる。次に、ポリマー対色素の比率を操作することにより、各系のレシオメトリック感知能力を調べた。例えば、経路AおよびCでは、PPEポリマー中のPS−SHの異なる配合パーセンテージを調べ、低い標準偏差を有する高感受性が30%のPS−SH混入レベルで得られることが判明した。同様の結果は経路B系でも観察されたが、この場合、60%のPS−NH
2−フルオレセイン配合が最良のレシオメトリックpH感受性をもたらした。
【0263】
PPEおよびフルオレセイン間のFRET。 一旦フルオレセイン分子がPPE Pドット上に結合されると、PPEからフルオレセインへの効率的エネルギー移動が容易に観察され得た。この効果的FRETは、一部は、
図50Aに示したように、PS−SHコPPE Pドットの発光スペクトル(赤実線)とフルオレセインの励起スペクトル(黒破線)との間のかなりのスペクトル重複に起因する。例えばPドット(A)は、同一濃度の裸PS−SHコPPE Pドットの蛍光スペクトル(色素共役なし、赤実線)と比較した場合、PPE Pドット発光の付随的抑制(λ=420−490nm、青実線)に伴う色素の発光の増大(λ=513nm、青実線)は、FRETがPドットから色素まで起きた、ということを明らかに実証した。同一濃度での非結合フルオレセインの発光強度は、390nmの同一波長により励起された場合、非常に弱かったがこれは、フルオレセインの発光強度がほとんど、蛍光それ自体というよりエネルギー移動から生じたことを意味する、ということに留意すべきである。FRET現象をさらに確証するために、対照、PS−SHコPPE PドットおよびPドット−色素複合体、Pドット(A)に関して、PPE Pドットの時間分解蛍光減衰曲線(440±20nm)を測定した。Pドット対照の蛍光じゅみょうは0.30nsであったが、一方、Pドット(A)の寿命は短縮されて0.21nsであったが、これは、PPE PドットからフルオレセインへのFRETの発生を示す。Pドット−色素複合体の分光行動をよりよく理解するために、下記のような異なるpHでのFRET効率の算定の付加的試験を実行した。スペクトル重複のほかに、効率的FRET行動を保証するためには、Pドットのサイズが重要な役割を果たし、この場合、FRETは分子間分離の6乗の逆数によって決まる。動的光散乱(DLS)により即AされたPドット−色素複合体のその結果生じた流体力学的直径は、経路A、BおよびCに関してそれぞれ平均で26nm、25nmおよび26nmである。Pドット(C)の典型的透過型電子顕微鏡(TEM)画像は
図50に示したものと同様であるが、これは、DLS測定と一致する。
【0264】
pH感受性および可逆性測定。 蛍光分光測定を各系で実施して、HEPES緩衝溶液中のpHに対するレシオメトリック応答を試験した。
図51に示したように、フルオレセインの発光ピークはpH増大に伴って増大したが、一方、PPE Pドットの蛍光強度は3つの系のすべて2置いて一定のままであった。PPE Pドット単独のpH応答も試験したが、結果は、これもまた、PPE PドットがpH=5.0〜8.0でpH非応答性であり、レシオメトリックpH検出のための良好な参照になる、ということを示唆する。
図52は、フルオレセイン(λ=513nm)対PPE(λ=440nm)の発光強度比が、これら3つの複合体に関して5.0から8.0までの範囲のpHの一関数として線状に変化する、ということを示す。それらの間で、Pドット(A)は、最高検出感度を明示し、I
513nm/I
440nmはpHの単位変化当たりで0.37変化した。この高感受性は、Pドットおよび色素間の最短分離に由来する可能性があり、PPEからフルオレセインへの効率的エネルギー移動を付加する。それにもかかわらず、チオールとイソチオシアネートとの間のチオカルバモイル単位は、過剰量の有利チオールの存在下で次第に分解して、より複雑な生物学的用途においてPドット(A)を低実現可能にする傾向がある、ということが知られている。これに対比して、Pドット(B)は、Pドットおよび色素間の安定なアミン−イソチオシアネート付加物を提供するが、しかしPS−NH
2の長い側鎖は、低効率的エネルギー移動によってpHの単位変化当たり0.18変動という相対的に低いpH感受性を生じる。上記の障害を克服するために、Pドット(C)が、良好なpH感受性および高い結合安定性を有する補足的系を提供するように仕向けた。I
513nm/I
440nmは、Pドット(C)系に関してpHの単位変化当たりで0.29変化した。
【0265】
これら3つのナノセンサーはすべて、良好なpH可逆性を示した。例えばPドット(C)では、Pドット(C)ナノセンサーを含有する溶液のpHを、pH=5〜pH=8の間で変化させた。フルオレセイン対PPE蛍光発光比の良好な再現可能性は、このPドットベースのpHセンサーに関する大きな可逆性および頑健性を示す(
図52)。さらに、センサーのpH応答時間は、Pドットの小サイズ(すなわち、大きい表面対容積比)のために慣用的蛍光分光計により測定するには速過ぎる。
図53は、PPEおよびフルオレセイン間のスペクトル重複、ならびに溶液pHの一関数としての算定フェルスター距離を示す。
【0266】
細胞内pH測定。 細胞内pH測定のためのこのFRETベースのレシオメトリックPドット−ナノセンサーの適用可能性を実証するために、Pドット−フルオレセインナノ粒子を、任意の付加的作用物質を伴わずに、エンドサイトーシス的工程により、生きているHeLa細胞中に導入した。粒子取込み後、PBS緩衝液で広範に洗浄することにより非組入れ粒子を除去した。
図54は、Pドット(A)摂取後のHeLa細胞の共焦点蛍光顕微鏡画像(E〜G)を示すが、一方、細胞中の裸PPE Pドットは陰性対照として役立てた(A〜C)。433〜444nmからの蛍光シグナルを組み込むことにより、青色チャンネル(A&E)を得て、507〜518nmからの蛍光シグナルを組み込むことにより緑色チャンネル(B&F)を得た。507〜518nmからの平均蛍光シグナルと433〜444nmからの平均蛍光との間の比をpH較正曲線と比較することにより、細胞内pHを決定した。Pドット(A)系を用いた少なくとも50の細胞を基礎にした平均pH値は4.95±0.70であると概算されたが、これは、早期エンドソーム(pH〜6.5)およびリソソーム区画(pH=4.5〜5.0)の場合と同様に、エンドサイトーシスの酸性経路に関して報告されたpH範囲と良好に一致する。Pドット(B)およびPドット(C)プローブを用いて測定されるpH値は、それぞれ4.81±0.86および4.92±0.64であることが判明した(
図55)が、これもまた、細胞内pH測定のためのこれらのPドットベースのナノセンサーの実現可能性を実証した。さらに重要なのは、
図55A〜Cの上−右差込図に示したような増幅および上張り画像から、PPEおよびフルオレセインの両方の蛍光の完全な共局在を明白に示す、ということはさらに重要である。この共局在は、不安定結合破壊の結果としての個々の蛍光体取込みというよりむしろ、HeLa細胞によるPPEおよびフルオレセインの同時取込みを示唆する。
【0267】
本発明は、好ましい実施形態を強調して記載してきたが、本発明の範囲または精神を逸脱しない限り、種々の修正および変更がなされ得ることは、当業者には明らかである。本発明の他の実施形態は、本明細書中に開示した本発明の明細書および実行について考慮することにより当業者に明らかになる。本明細書および実施例は単なる例に過ぎず、本発明の真の範囲および精神は以下の特許請求の範囲により定義されている。