特許第6335986号(P6335986)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335986
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】スタビリンク
(51)【国際特許分類】
   B60G 21/055 20060101AFI20180521BHJP
   F16C 11/06 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B60G21/055
   F16C11/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-164647(P2016-164647)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-30483(P2018-30483A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2016年8月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒田 茂
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 独国実用新案第202007001892(DE,U1)
【文献】 特開2000−108632(JP,A)
【文献】 実開昭61−176011(JP,U)
【文献】 米国特許第03833309(US,A)
【文献】 特開平11−13740(JP,A)
【文献】 特開平7−12116(JP,A)
【文献】 特開平3−213710(JP,A)
【文献】 米国特許第6030570(US,A)
【文献】 米国特許第8152186(US,B2)
【文献】 特開平9−280246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸架装置及びスタビライザを備える車両に設けられ、前記懸架装置及び前記スタビライザを連結するためのスタビリンクであって、
前記スタビリンクは、金属製のサポートバーと、当該サポートバーの両端に設けたボールジョイントと、を備え、
前記ボールジョイントは、一端が構造体に締結され他端にボール部を有するボールスタッドと、当該ボールスタッドの前記ボール部を回動自在に支持する樹脂製のハウジングと、前記ハウジングと前記ボール部との間に介在するように設けられ、当該ボール部の収容部を有するボールシートと、を備え、
前記ボールシートは、前記ボール部の赤道部を覆う周回帯状部を有し、
前記サポートバーは、略直線状に延びる本体部と、当該本体部の両端に設けた略環状の補強部と、を備え、
前記サポートバーの前記補強部は、横断面が前記ボールスタッドの回転軸方向に伸びる基部と、横断面が前記ボールスタッドの回転軸方向と直交する方向であって前記ボールシートの前記周回帯状部を指向して内向きに伸びる折り返し部と、を備えると共に、前記基部及び前記折り返し部からなる略L字形状の横断面を略環状に連なって有してなり、前記サポートバーの前記補強部に備わる前記基部及び前記折り返し部は、同じ肉厚に設定されており、前記ボールシートの前記周回帯状部の周りを囲むように前記補強部が前記ハウジングに埋め込まれている
ことを特徴とするスタビリンク。
【請求項2】
請求項1に記載のスタビリンクであって、
前記サポートバーの前記本体部は、略U字形状の横断面を略直線状に連なって有してなる
ことを特徴とするスタビリンク。
【請求項3】
請求項2に記載のスタビリンクであって、
前記本体部における略U字形状の湾曲した外壁部は、当該本体部の外接円に係る円弧に沿うように設けられている
ことを特徴とするスタビリンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に備わる懸架装置とスタビライザとの間を連結するためのスタビリンクに関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、路面から車輪を介して車体に伝わる衝撃や振動を吸収し軽減する懸架装置と、車体のロール剛性を高めるためのスタビライザとが備わっている。懸架装置とスタビライザとの間を連結するために、車両には、スタビリンクと呼ばれる棒状の部材が用いられる。スタビリンクは、例えば特許文献1に示すように、サポートバーと、サポートバーの両端に設けたボールジョイントとを備えて構成されている。
【0003】
特許文献1に係るスタビリンクは、ボール部を有するボールスタッドと、サポートバーの両端に設けられ、ボールスタッドのボール部を回動自在に収容するハウジングとから構成される。ハウジングの内方側には、ハウジングの内壁とボールスタッドのボール部との間に介在するように、樹脂製のボールシートが設けられている。ハウジングに収容されたボール部の外周面がボールシートの内周面に接触しつつ摺動することで、ボールスタッドが傾倒自在に構成されている。このように、スタビリンクに備わるボールジョイントによって、懸架装置とスタビライザとの間が円滑に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−84057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るスタビリンクでは、サポートバーは、鉄鋼等の金属製中空パイプを用いて構成される。サポートバーを構成する中空パイプの両端には、同中空パイプ内への水等の進入を防ぐため、プレス加工により平板状に塑性変形された封止部が設けられている。サポートバーの両端部は、樹脂製のハウジングにインサート成形されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に係るスタビリンクでは、サポートバーの両端部は、ボール部の周りを囲むように延び出していない。そのため、サポートバーは、ボール部の周囲を補強することはできない。要するに、特許文献1に係るスタビリンクでは、樹脂製のハウジングが主としてボール部周辺の引張破壊強度を支えている。このため、断面剛性向上を狙ってハウジングの外径サイズが大きくなってしまう。その結果、特許文献1に係るスタビリンクでは、スタビリンクのサイズをコンパクト化する点で改良の余地が残されていた。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みて創案されたものであり、ボール部周辺の引張破壊強度の確保と外形サイズのコンパクト化とを両立可能なスタビリンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明(1)に係るスタビリンクは、懸架装置及びスタビライザを備える車両に設けられ、前記懸架装置及び前記スタビライザを連結するためのスタビリンクであって、前記スタビリンクは、金属製のサポートバーと、当該サポートバーの両端に設けたボールジョイントと、を備え、前記ボールジョイントは、一端が構造体に締結され他端にボール部を有するボールスタッドと、当該ボールスタッドの前記ボール部を回動自在に支持する樹脂製のハウジングと、前記ハウジングと前記ボール部との間に介在するように設けられ、当該ボール部の収容部を有するボールシートと、を備え、前記ボールシートは、前記ボール部の赤道部を覆う周回帯状部を有し、前記サポートバーは、略直線状に延びる本体部と、当該本体部の両端に設けた略環状の補強部と、を備え、前記サポートバーの前記補強部は、横断面が前記ボールスタッドの回転軸方向に伸びる基部と、横断面が前記ボールスタッドの回転軸方向と直交する方向であって前記ボールシートの前記周回帯状部を指向して内向きに伸びる折り返し部と、を備えると共に、前記基部及び前記折り返し部からなる略L字形状の横断面を略環状に連なって有してなり、前記サポートバーの前記補強部に備わる前記基部及び前記折り返し部は、同じ肉厚に設定されており、前記ボールシートの前記周回帯状部の周りを囲むように前記補強部が前記ハウジングに埋め込まれていることを最も主要な特徴とする。
【0009】
本発明(1)に係るスタビリンクでは、ハウジングとボール部との間に介在するように設けられ、ボール部の収容部を有するボールシートは、ボール部の赤道部を覆う周回帯状部を有するため、ボール部の摺動を円滑に行わせると共に、ボール部の赤道部の周囲を補強することができる。
また、サポートバーの両端に設けた略環状の補強部は、横断面がボールスタッドの回転軸方向に伸びる基部と、横断面がボールスタッドの回転軸方向と直交する方向であってボールシートの周回帯状部を指向して内向きに伸びる折り返し部と、を備えると共に、基部及び折り返し部からなる略L字形状の横断面を略環状に連なって有してなり、サポートバーの補強部に備わる基部及び折り返し部は、同じ肉厚に設定されており、ボールシートの周回帯状部の周りを囲むように前記補強部がハウジングに埋め込まれているため、補強部がハウジングの芯金の役割を果たしてボール部の周囲を補強することができる。
【0010】
本発明(1)に係るスタビリンクによれば、ボール部の摺動を円滑に行わせると共に、ボール部周辺の引張破壊強度の確保と外形サイズのコンパクト化とを両立可能なスタビリンクを得ることができる。
【0011】
また、本発明(2)に係るスタビリンクは、(1)に記載のスタビリンクであって、前記サポートバーの前記本体部は、略U字形状の横断面を連なって有してなることを特徴とする。
【0012】
本発明(2)に係るスタビリンクによれば、サポートバーの本体部は、略U字形状の横断面を連なって有してなるため、サポートバーにおける本体部の強度を確保することができる。
【0013】
また、本発明(3)に係るスタビリンクは、(2)に記載のスタビリンクであって、前記本体部における略U字形状の湾曲した外壁部は、当該本体部の外接円に係る円弧に沿うように設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明(3)に係るスタビリンクによれば、本体部における略U字形状の湾曲した外壁部は、本体部の外接円に係る円弧に沿うように設けられているため、仮に、本体部の軸周りに回転する動きがサポートバーに生じた場合でも、サポートバーの周囲に存在する部材と本体部との相互干渉を未然に回避することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ボール部の摺動を円滑に行わせると共に、ボール部周辺の引張破壊強度の確保と外形サイズのコンパクト化とを両立可能なスタビリンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るスタビリンクの車両への取り付け状態を表す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るスタビリンクのうちボールジョイント周辺の縦断面図である。
図3】ボールスタッドのボール部にボールシートを装着した状態を、ハウジング、ボールシート、及びサポートバーの横断面と共に表す拡大図である。
図4A】サポートバーを上方から視た平面図である。
図4B】サポートバーを側方から視た側面図である。
図4C図4Bに示すサポートバーのIVC−IVC線に沿う矢視端面図である。
図4D図4Bに示すサポートバーのIVD−IVD線に沿う矢視端面図である。
図4E図4Bに示すサポートバーのIVE−IVE線に沿う矢視端面図である。
図5A】サポートバーの製造工程のうち、ワークからサポートバーの一次仕掛品を切り出す工程を表す斜視図である。
図5B】ワークから切り出されたサポートバーの一次仕掛品を表す斜視図である。
図5C】サポートバーの一次仕掛品に対してプレス加工を施すことで得られた二次仕掛品を表す斜視図である。
図5D】サポートバーの二次仕掛品に対してパンチ加工を施すことで得られた最終製品を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係るスタビリンクについて、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
<本発明の実施形態に係るスタビリンク11の構成>
本発明の実施形態に係るスタビリンク11の構成について、車両(不図示)に取付けた例をあげて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るスタビリンク11の車両への取り付け状態を表す斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係るスタビリンク11のうちボールジョイント13周辺の縦断面図である。図3は、ボールスタッド21のボール部21bにボールシート25を装着した状態を、ハウジング23、ボールシート25、及びサポートバー12の横断面と共に表す拡大図である。
【0024】
車両の車体(不図示)には、図1に示すように、懸架装置15を介して、車輪Wが取り付けられている。路面から車輪Wを介して車体に伝わる衝撃や振動を吸収し軽減するために、懸架装置15は、コイルスプリング15aとショックアブソーバ15bとを有する。
【0025】
左右の懸架装置15の間は、図1に示すように、略コ字形状のばね鋼棒等からなるスタビライザ17を介して連結されている。車体のロール剛性(捩り変形に対する抵抗力)を高めて車両のローリングを抑制するために、スタビライザ17は、左右の車輪W間に延在するトーションバー17aと、トーションバー17aの両端部から屈曲して延びる一対のアーム部17bとを有する。懸架装置15及びスタビライザ17は、本発明の「構造体」に相当する。
【0026】
スタビライザ17と車輪Wを支持するショックアブソーバ15bとは、スタビリンク11を介して連結されている。当該連結は、左右の車輪W側において同じである。スタビリンク11は、図1に示すように、例えば鉄鋼等の金属からなる略直線状のサポートバー12の両端に、ボールジョイント13をそれぞれ設けて構成されている。サポートバー12は、図2に示すように、略直線状に延びる本体部12aと、本体部12aの両端にそれぞれ設けた略環状の一対の補強部12b,12bと、を備えて構成されている。サポートバー12の構成について、詳しくは後記する。
【0027】
本発明の実施形態に係るスタビリンク11は、サポートバー12及びボールスタッド21を金型内の所定位置にインサートした状態で、ハウジング23となる樹脂を前記金型内に注入するインサート射出成形工程によって製造される。なお、以下の説明において、「インサート射出成形工程」という用語を用いる場合には、前記の工程を意味するものとする。
【0028】
一対のボールジョイント13のうち、一方のボールジョイント13はスタビライザ17のアーム部17bの先端部に締結固定され、他方のボールジョイント13はショックアブソーバ15bのブラケット15cに締結固定されている。なお、一対のボールジョイント13の構成は同じである。
【0029】
ボールジョイント13は、図2に示すように、鋼等の金属製のボールスタッド21と、樹脂製のハウジング23とから構成される。ボールスタッド21は、一方の端部にスタッド部21aを有すると共に、他方の端部に球体状のボール部21bを有して構成されている。スタッド部21aとボール部21bとは溶接接合されている。スタッド部21aとボール部21bとを一体に形成してもよい。ハウジング23は、サポートバー12の両端に設けられ、ボールスタッド21のボール部21bを回動自在に支持するように構成されている。
【0030】
ボールスタッド21のスタッド部21aには、大鍔部21a1と小鍔部21a2とが、相互に離間して形成されている。大鍔部21a1と小鍔部21a2との間には、周回凹部21a3が形成されている。大鍔部21a1よりも先端側(ボールスタッド21のボール部21bの反対側)のスタッド部21aには雄ねじ部21a4が螺設されている。
【0031】
ハウジング23の上端部と、スタッド部21aの周回凹部21a3との間には、これらの隙間を覆うように、ゴム等の弾性体からなる周回状のダストカバー27が装着される。ダストカバー27は、雨水、塵埃等のボールジョイント13への侵入を阻止する役割を果たす。
【0032】
ボールスタッド21のボール部21bを回動自在に支持するために、ハウジング23の内底部には、図2及び図3に示すように、半球凹部23aが形成されている。ハウジング23の上部には、円環状の凸形フランジ23bが形成されている。凸形フランジ23bは、ボールシート25の開口周縁部25aに接して外方に延びる円錐面形状のテーパ部23b1を有する。テーパ部23b1のスタッド軸線C(図2参照)に対する傾斜角は、ボールスタッド21の揺動角、軸径等に応じて適宜の値に設定される。
【0033】
ハウジング23の樹脂素材としては、熱可塑性を有する(射出成形により形成されるため)こと、所定の強度要件を満たすこと等を考慮して、例えばPA66−GF30(PA66に重量比30〜50%のガラス繊維を入れたもの/融点:摂氏270度程度)が好適に用いられる。ただし、ハウジング23の樹脂素材としては、PA66−GF30の他、PEEK(polyetheretherketone)、PA66(Polyamide 66)、PPS(Poly Phenylene Sulfide Resin)、POM(polyoxymethylene)等のエンジニアリングプラスティック、スーパーエンジニアリングプラスティック、FRP(Fiber Reinforced Plastics:繊維強化プラスティック)、GRP(glass reinforced plastic:ガラス繊維強化プラスティック)、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics:炭素繊維強化プラスティック)等の素材を適宜用いてもよい。
【0034】
ボールスタッド21のボール部21bと、ハウジング23の半球凹部23aとの間には、図2及び図3に示すように、樹脂製のボールシート25が介在するように設けられている。樹脂製のボールシート25は、単独の射出成形工程により製造される。ハウジング23の半球凹部23aに収容されたボール部21bの球状外周面が、ボールシート25の内周面に接触しつつ摺動することによって、ハウジング23に対してボールスタッド21が揺動(図2の矢印α1参照)及び回転(図2の矢印α2参照)自在に支持されている。このように、スタビリンク11に備わるボールジョイント13によって、懸架装置15及びスタビライザ17が円滑に連結されている。ボールシート25の樹脂素材は、前記したハウジング23の樹脂素材に準じて適宜設定される。
【0035】
ボールスタッド21のボール部21bにおける赤道部21b1の周りには、図2及び図3に示すように、サポートバー12における略環状の補強部12b(及び本体部12aの一部)が、ボールスタッド21のボール部21bを囲むようにハウジング23に埋め込まれている。なお、ボールスタッド21のボール部21bにおける赤道部21b1とは、スタッド軸線C(図2参照)を回転中心軸とするボール部21bの水平方向における周回長が最大となる部分を意味する。
【0036】
<サポートバー12>
次に、サポートバー12の詳細構造について、図4A図4Eを参照して説明する。図4Aは、サポートバー12を上方から視た平面図である。図4Bは、サポートバー12を側方から視た側面図である。図4Cは、図4Bに示すサポートバー12のIVC−IVC線に沿う矢視端面図である。図4Dは、図4Bに示すサポートバー12のIVD−IVD線に沿う矢視端面図である。図4Eは、図4Bに示すサポートバー12のIVE−IVE線に沿う矢視端面図である。
【0037】
サポートバー12は、図4A及び図4Bに示すように、略直線状に延びる本体部12aと、本体部12aの両端にそれぞれ設けた略環状の一対の補強部12b,12bと、を備えて構成されている。一対の補強部12b,12bの構成は同じである。そのため、本発明の実施形態に係る説明では、一対の補強部12b,12bを「補強部12b」と総称することとする。
【0038】
サポートバー12の補強部12bは、図3及び図4Aに示すように、ボール部21bを収容可能な内径半径寸法Dc−inの通孔12b1を有する。換言すれば、補強部12bは、略L字形状の横断面を略環状に連なって有してなる。ただし、略L字形状の角部の円弧は共通の半径R1(半径R1>肉厚t:図4C参照)となるように形成されている。補強部12bの内径半径寸法Dc−inは、ボールシート25の最大外径半径寸法Db−out(図3参照)と比べてギャップG1(好ましくは、G1=>1mm)分だけ大きく形成されている。このように、サポートバー12の補強部12bとボールシート25との間にギャップG1を形成することで、インサート射出成形工程においてハウジング23となる樹脂の流動性を良好に保つようにしている。
【0039】
また、補強部12bの外径半径寸法Dc−out(図3及び図4A参照)は、内径半径寸法Dc−inと比べて、肉厚t+略L字形状のオーバーハング長L1(好ましくは、L1=>1mm:図4C参照)分だけ大きく形成されている。このように、略L字形状のオーバーハング長L1を確保することで、補強部12bの略L字形状の横断面が創り出す強度の向上を図っている。
【0040】
補強部12bは、図2及び図3に示すように、ボールスタッド21のボール部21b(の赤道部21b1)を囲むようにハウジング23に埋め込まれている。これにより、補強部12bは、ハウジング23の芯金の役割を果たしてボール部21bの周囲を補強する。その結果、補強部12bは、ボール部21b周辺の引張破壊強度の向上に多大な貢献を果たす。なお、樹脂製のハウジング23は、図2に示すように、補強部12bに加えて、サポートバー12の本体部12aのうち軸方向端部12a4を少なくとも覆う位置まで被覆されている。
【0041】
一方、サポートバー12の本体部12aは、図4D図4Eに示すように、略U字形状の横断面12a1を略直線状に連なって有してなる。ただし、略U字形状の外壁部12a2の円弧は共通の半径R2(半径R2=>半径R1)となるように形成されている。サポートバー12の本体部12aのうち、軸方向中央部12a3に係る高さ寸法h2(図4E参照)は、軸方向端部12a4に係る高さ寸法h1(図4D参照)と比べて大きく形成されている。サポートバー12の本体部12aのうち軸方向端部12a4とは、サポートバー12の本体部12aと補強部12bとの境界部分である。
また、サポートバー12の本体部12aの高さ寸法は、軸方向端部12a4から軸方向中央部12a3に向かって徐々に、かつ緩やかに大きくなるように形成されている。これにより、サポートバー12に外力が加えられた場合に、本体部12aにおける応力が、軸方向中央部12a3から軸方向端部12a4にわたって均等に作用することになる。さらに、軸方向中央部12a3に係る高さ寸法h2と比べて、軸方向端部12a4に係る高さ寸法h1を小さく形成したため、サポートバー12の軽量化に寄与する。
なお、サポートバー12のうち補強部12bに係る高さ寸法h0(図4C参照)は、サポートバー12のうち本体部12aの軸方向端部12a4に係る高さ寸法h1(図4D参照)と同じである。補強部12bに係る高さ寸法h0は、肉厚tの2倍を超える長さに設定されている。これにより、サポートバー12の補強部12bをプレス加工により形成する際の曲げ絞り加工性を良好にすると共に、補強部12bの剛性向上に寄与する。
サポートバー12の本体部12aのうち軸方向寸法は、特に限定されないが、例えば、100〜300mm程度に適宜設定される。
【0042】
<サポートバー12の製造工程>
次に、サポートバー12の製造工程について、図5A図5Dを参照して説明する。図5Aは、サポートバー12の製造工程のうち、ワーク31からサポートバー12の一次仕掛品12−1を切り出す工程を表す斜視図である。図5Bは、ワーク31から切り出されたサポートバー12の一次仕掛品12−1を表す斜視図である。図5Cは、サポートバー12の一次仕掛品12−1に対してプレス加工を施すことで得られた二次仕掛品12−2を表す斜視図である。図5Dは、サポートバー12の二次仕掛品12−2に対してパンチプレス加工を施すことで得られたサポートバー12の最終製品を表す斜視図である。
【0043】
まず、サポートバー12のワーク31として、図5Aに示すように、鉄鋼製の矩形板を準備する。ワーク31の肉厚tは、特に限定されないが、例えば1〜3mm程度に設定される。ただし、ワーク31の外形寸法は、サポートバー12の最終製品に係る平面図の外形サイズと比べて、少なくとも折り返し代BD(BD=補強部12bに係る高さ寸法h0−肉厚t:図4C参照)だけ大きく設定されている。
【0044】
次に、サポートバー12のワーク31に対して、例えば、パンチとダイ(いずれも不図示)を用いたパンチプレス加工を施すことにより、図5Bに示すように、サポートバー12の一次仕掛品12−1を切り出す。なお、サポートバー12の一次仕掛品12−1において、本体部12aとなる部分12−1aのうち、中央部12−1a1の幅寸法は、端部12−1a2の幅寸法と比べて大きく形成されている。
【0045】
次に、サポートバー12の一次仕掛品12−1に対してプレス加工を施すことにより、図5Cに示すように、サポートバー12の二次仕掛品12−2を得る。なお、サポートバー12の一次仕掛品12−1に対するプレス加工は、例えば下記の要領で行えばよい。すなわち、サポートバー12の二次仕掛品12−2において、本体部12aとなる部分12−2aを形成するには、同部分12−2aを、略円柱状の側壁部を有する上型及び下型(いずれも不図示)の間に挟み込んでプレスする。また、補強部12bとなる部分12−2bを形成するには、同部分12−2bを、略皿状の壁部(ただし、略L字形状の角部は共通の半径R1となるように形成されている。)を有する上型及び下型(いずれも不図示)の間に挟み込んでプレスする。
【0046】
次に、サポートバー12の二次仕掛品12−2に対してパンチプレス加工(孔あけ加工)を施すことにより、図5Dに示すように、サポートバー12の最終製品を得る。なお、サポートバー12の二次仕掛品12−2において、補強部12bとなる部分12−2bに通孔12b1を開設するには、同部分12−2bにおける所定の位置に、パンチとダイ(いずれも不図示)を用いたパンチプレス加工(孔あけ加工)を施せばよい。
【0047】
〔本発明の実施形態に係るスタビリンク11が奏する作用効果〕
次に、本発明の実施形態に係るスタビリンク11が奏する作用効果について説明する。
本発明(1)に係るスタビリンク11は、金属製のサポートバー12と、サポートバー12の両端に設けたボールジョイント13と、を備える。ボールジョイント13は、一端が懸架装置15・スタビライザ17(構造体)に締結され他端にボール部21bを有するボールスタッド21と、ボールスタッド21のボール部21bを回動自在に支持するハウジング23と、ハウジング23とボール部21bとの間に介在するように設けられ、ボール部21bの収容部を有するボールシート25と、を備える。ボールシート25は、ボール部21bの赤道部を覆う周回帯状部を有する。サポートバー12は、略直線状に延びる本体部12aと、本体部12aの両端に設けた略環状の補強部12bと、を備える。サポートバー12の補強部12bは、横断面がボールスタッド21の回転軸方向に伸びる基部と、横断面がボールスタッド21の回転軸方向と直交する方向であってボールシート25の周回帯状部を指向して内向きに伸びる折り返し部と、を備えると共に、基部及び折り返し部からなる略L字形状の横断面を略環状に連なって有してなり、サポートバー12の補強部12bに備わる基部及び折り返し部は、同じ肉厚に設定されており、ボールシート25の周回帯状部の周りを囲むように補強部12bがハウジング23に埋め込まれている。
【0048】
本発明(1)に係るスタビリンク11では、ハウジング23とボール部21bとの間に介在するように設けられ、ボール部21bの収容部を有するボールシート25は、ボール部21bの赤道部を覆う周回帯状部を有するため、ボール部21bの摺動を円滑に行わせると共に、ボール部21bの赤道部の周囲を補強することができる。
また、サポートバー12の両端に設けた略環状の補強部12bは、横断面がボールスタッド21の回転軸方向に伸びる基部と、横断面がボールスタッド21の回転軸方向と直交する方向であってボールシート25の周回帯状部を指向して内向きに伸びる折り返し部と、を備えると共に、基部及び折り返し部からなる略L字形状の横断面を略環状に連なって有してなり、サポートバー12の補強部12bに備わる基部及び折り返し部は、同じ肉厚に設定されており、ボールシート25の周回帯状部の周りを囲むように補強部12bがハウジング23に埋め込まれているため、補強部12bがハウジング23の芯金の役割を果たしてボール部21bの周囲を補強することができる。
【0049】
本発明(1)によれば、ボール部21bの摺動を円滑に行わせると共に、ボール部21b周辺の引張破壊強度の確保と外形サイズのコンパクト化とを両立可能なスタビリンク11を得ることができる。
【0050】
また、本発明(2)に係るスタビリンク11は、(1)に記載のスタビリンク11であって、サポートバー12の本体部12aは、略U字形状の横断面を連なって有してなる構成を採用してもよい。
【0051】
本発明(2)によれば、サポートバー12の本体部12aは、略U字形状の横断面を連なって有してなるため、サポートバー12の本体部12aの強度を確保することができる。さらに、サポートバー12の本体部12aは、略U字形状の(一端が開放された)横断面を連なって有してなるため、以下の効果を期待することができる。すなわち、仮に、サポートバー12の本体部12aに対してメッキ処理が施される場合に、本体部12aが中空パイプにより構成されていると、メッキ処理液等の液体が中空パイプの内部空間に侵入して、同内部空間に錆を生じさせてしまうおそれがある。
この点、本発明(2)では、サポートバー12の本体部12aにおける略U字形状の内部空間は一端が開放されている。このため、仮に、何らかの液体が略U字形状の内部空間に進入したとしても、前記の開放端を通して同液体が排出される結果として、同内部空間に錆を生じさせることはない。
【0052】
また、本発明(3)に係るスタビリンク11は、(2)に記載のスタビリンク11であって、サポートバー12の本体部12aにおける略U字形状の湾曲した外壁部12a2は、当該本体部の外接円に係る円弧に沿うように設けられている構成を採用してもよい。
【0053】
本発明(3)によれば、サポートバー12の本体部12aにおける略U字形状の湾曲した外壁部12a2は、本体部12aの外接円に係る円弧に沿うように設けられているため、仮に、本体部12aの軸周りに回転する動きがサポートバー12に生じた場合でも、サポートバー12の周囲に存在する部材と本体部12aとの相互干渉を未然に回避することができる。
【0059】
〔その他の実施形態〕
以上説明した複数の実施形態は、本発明の具現化の例を示したものである。したがって、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されることがあってはならない。本発明はその要旨又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形態で実施することができるからである。
【0060】
本発明に係る実施形態の説明において、ボールスタッド21のボール部21bと、樹脂製のハウジング23との間に、樹脂製のボールシートを介在させるように設ける例をあげて説明したが、本発明はこの例に限定されない。ハウジング23に対するボール部21bの摺動に係るトルクを適切に管理することができさえすれば、樹脂製のボールシート25を省略しても構わない。
【符号の説明】
【0061】
11 スタビリンク
12 サポートバー
12a 本体部
12b 補強部
13 ボールジョイント
15 懸架装置(構造体)
17 スタビライザ(構造体)
21 ボールスタッド
21b ボール部
23 ハウジング
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図5D