特許第6335995号(P6335995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6335995ディーゼルエンジンの効率的な排出制御のための電気加熱アシスト受動再生および能動再生
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6335995
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジンの効率的な排出制御のための電気加熱アシスト受動再生および能動再生
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/027 20060101AFI20180521BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20180521BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20180521BHJP
   F01N 3/025 20060101ALI20180521BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20180521BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   F01N3/027 V
   F01N3/20 K
   F01N3/24 E
   F01N3/027 C
   F01N3/025 101
   F01N3/027 S
   F01N3/027 Z
   F02D29/06 A
   F01N3/24 L
   F01N3/035 E
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-192378(P2016-192378)
(22)【出願日】2016年9月30日
(62)【分割の表示】特願2014-558824(P2014-558824)の分割
【原出願日】2013年2月21日
(65)【公開番号】特開2017-20510(P2017-20510A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2016年10月3日
(31)【優先権主張番号】61/601,923
(32)【優先日】2012年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514212892
【氏名又は名称】ワトロー エレクトリック マニュファクチャリング カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100102576
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100101063
【弁理士】
【氏名又は名称】松丸 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100153903
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ウェンチョン
(72)【発明者】
【氏名】バンジ,マイク
(72)【発明者】
【氏名】ボーマー,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ケア,マグディ
(72)【発明者】
【氏名】タン,ジュリアン
【審査官】 首藤 崇聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−266625(JP,A)
【文献】 特開2001−280121(JP,A)
【文献】 特開平05−125925(JP,A)
【文献】 特開平08−296426(JP,A)
【文献】 特開2009−279577(JP,A)
【文献】 特開2002−047986(JP,A)
【文献】 特開2001−073748(JP,A)
【文献】 特開平07−269328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/027
F01N 3/025
F01N 3/035
F01N 3/20
F01N 3/24
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス後処理システムの排気を加熱する方法であって、
エンジン負荷と前記排ガス後処理システムの部品の状態に基づき複数の加熱モードのなかからいずれかを選択するステップ、
前記複数の加熱モードそれぞれ異なる動作で電気ヒータを動作させることにより前記排気を加熱するステップ、
エンジン負荷が約25%以下のとき受動再生加熱モードで前記電気ヒータを動作させて排気を所定温度まで加熱することによりNO生成を増やすステップ、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電気ヒータを動作させるステップはさらに、
低エンジン負荷において発電機により電力を生成し、生成した電力を利用して前記電気ヒータを動作させるステップを有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記方法はさらに、
前記電気ヒータを動作させて前記排気の差動加熱を提供して前記所定温度まで加熱するステップを有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記排ガス後処理システムはさらに、ディーゼル酸化触媒(DOC)とディーゼル微粒子除去装置(DPF)を備え、
前記排ガス後処理システムの前記部品の前記状態は、前記DPFの状態である
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記方法はさらに、
前記DPFが能動再生しているとき前記電気ヒータを能動再生加熱モードで動作させて差動加熱を提供するステップを有する
ことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記方法はさらに、
前記電気ヒータを動作させて、前記電気ヒータの近傍においてより多くの熱を提供し、排気管の中心近傍においてより少ない熱を提供して、前記排気管を交差する排ガス温度勾配を減少させるステップを有する
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記方法はさらに、
排気管の壁近傍においてより多くの熱を提供し、前記排気管の中心近傍においてより少ない熱を提供して、前記排気管を交差する排ガス温度勾配を減少させるステップを有する ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記電気ヒータを能動再生加熱モードで動作させるステップは、前記排気に対して燃料を噴射する工程を含まない
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記所定温度は、前記DOCの特性の関数である
ことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項10】
前記所定温度は、300℃から460℃の範囲である
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記所定温度は、320℃から380℃の範囲である
ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記加熱モードを選択するステップはさらに、
前記排気の排気温度を測定するステップ、
前記複数の加熱モードによる前記排気温度以上の所望の温度上昇を定めるステップ、 を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記加熱モードを選択するステップはさらに、
前記排気の排気温度以上の所望の温度上昇の関数、前記エンジン負荷、および前記DPFの状態に基づき、前記複数の加熱モードのうちいずれかで前記電気ヒータを動作させるステップを有する
ことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項14】
前記方法はさらに、
前記エンジン負荷が約25%以上のとき前記電気ヒータをOFFするステップを有する ことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記発電機は、前記排ガス後処理システムを通過する前記排気を生成するエンジンによって駆動される
ことを特徴とする請求項2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2012年2月22日に出願された米国仮特許出願第61/601,923号、発明の名称「Electric Heating Assisted Passive and Active Regeneration for Efficient Emission Controls of Diesel Engines」の利益を主張する。その内容は参照により全体が本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ディーゼルエンジン用の排ガス後処理システムに関する。特に、排ガス後処理システムにおけるアシスト加熱を提供するための電気加熱および制御に関する。
【背景技術】
【0003】
本背景技術は、本願の文脈を一般的に提示するためのものであり、従来技術を提示するものではない。
【0004】
ディーゼルエンジンは、例えば機関車、船舶、エンジン発電機など様々な用途において用いられている。米国環境保護庁(EPA)およびカリフォルニア大気資源局(CARB)は、世界の他の規制機関と同様に、ディーゼルエンジンからの排出物に厳密な制約を課している。ここでいう排出物は例えば、粒子状物質(PM)、炭化水素(HC)、NOxである。したがって排ガス後処理システムが用いられている。このシステムは一般に、ディーゼル酸化触媒(DOC)、ディーゼル微粒子除去装置(DPF)、SCR(NOxの選択的接触還元設備)を備え、排ガスを処理して大気または外部環境に対する排出を制御している。
【0005】
DOCとSCRでは様々な化学反応が起こり、有害な窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、および未燃炭化水素(HC)を、N、CO、および水へ変換する。DPFは、排ガスからディーゼル粒子状物質(PM)を除去するように設計されている。通常これらの化学反応は、高温度において起こる。触媒を用いると、この化学反応をはるかに低い温度で起こすことができる。しかしそれでも、化学反応を促進するためには、十分なエネルギーを熱の形態で触媒に対して供給しなければならない。したがって、排ガス後処理システムの性能は、触媒に対して所望のエネルギーと熱を運搬する排ガスの温度に高度に依拠している。しかし排ガスの通常温度は、所望する化学反応の要件を常に満たすわけではない。通常の排ガス温度が目標温度よりも低い場合、排ガス後処理システムは排ガスを効率的に処理することができず、外部環境に対してより多くの排出をなしてしまう。
【0006】
排ガス温度を上げる1手法は、排気工程の間に排気管内またはシリンダー内においてDOCから炭化水素を上流へ噴射することによるものである。この手法は燃料消費を増やし、さらに排ガスの組成を変化させる。例えば排ガスにおいて燃料が噴射されると、DOCにおけるNOの生成が著しく減少する。NOは、通常よりもはるかに低い温度範囲におけるDPFの受動再生にとって有用な反応剤である。したがってNOの生成が減少すると、DPFの受動再生に悪影響を及ぼす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1形態において、排ガス後処理システムにおける電気ヒータを制御するヒータ制御モジュールを提供する。排ガス後処理システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)とディーゼル微粒子除去装置(DPF)を備える。ヒータ制御モジュールは、加熱モード判定モジュールとヒータ操作モジュールを備える。加熱モード判定モジュールは、エンジン負荷とDPFの状態に基づき、複数の加熱モードから所望の加熱モードを選択する。ヒータ操作モジュールは、所望の加熱モードに基づき電気ヒータを操作する。
【0008】
別形態において、ディーゼル酸化触媒(DOC)とディーゼル微粒子除去装置(DPF)を備える排ガス後処理システムにおける排ガスを加熱する方法を提供する。本方法は、DPFが能動的に再生しておらずエンジン負荷が低いとき排ガスを所定温度まで加熱してDOCにおけるNOの生成を増やすステップ、DPFが能動再生しているとき排ガスを加熱して排出温度勾配を減少させるステップ、を有する。NOの生成を増加させることにより、DPFの受動再生を促進する。排出温度勾配は、排気管の壁近傍により多くの熱を提供するとともに排気管の中央近傍により少ない熱を提供することにより、減少する。DPFの能動再生の効率は、熱を必要とする。DPFの能動再生は、DPFの周辺チャネルにおいてPMをより効率的に燃焼させることにより向上できる。
【0009】
添付する図面は本明細書の一部を形成し、本発明の複数の側面を示す。また本明細書と併せて本発明の原理を説明する。図面内の部品は必ずしもスケールを合わせていない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に基づき構築された加熱モジュールを備えるエンジンシステムの概略図である。
【0011】
図2】本発明に基づき構築された加熱モジュールの概略図である。
【0012】
図3】NO濃度と触媒温度との間の関係を示すグラフである。
【0013】
図4】電気ヒータの概略図である。
【0014】
図5】電気ヒータを操作するための加熱戦略を示すグラフである。
【0015】
図6】複数のエンジン負荷における排ガスの特性を示すテーブルである。
【0016】
図7】本発明に基づき構築された加熱モジュールを備えるエンジンシステムの他形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の説明は本質的に例示に過ぎず、本発明、そのアプリケーション、または用途を限定する意図ではない。方法におけるステップは、本発明の原理を原稿することなく異なる順番で実施できることを理解されたい。
【0018】
図1において、エンジンシステム10は、ディーゼルエンジン12、発電機14、ターボチャージャー16、排ガス後処理システム18を備える。大気に対して排出される前にディーゼルエンジン12からの排ガスを処理するため、排ガス後処理システム18はターボチャージャー16の下流に配置されている。排ガス後処理システム18は、加熱モジュール20、DOC22、DPF24、SCR26を備える。加熱モジュール20は、DOC22の上流に配置された電気ヒータ28、電気ヒータ28の動作を制御するヒータ制御モジュール30を備える。排ガス後処理システム18は、電気ヒータ28を収容する上流排気管32、DOC22とDPF24を収容する中間排気管34、SCRを配置する下流排気管36を備える。
【0019】
DOC22は、電気ヒータ28の下流に配置され、排ガス内の一酸化炭素および未燃炭化水素に対する触媒として機能する。またDOC22は、有害な窒素酸化物(NO)を二酸化窒素(NO)へ変換する。DPF24は、DOC22の下流に配置され、排ガス内のディーゼル粒子状物質(PM)または煤を除去する。SCR26は、DPF24の下流に配置され、触媒によって窒素酸化物(NOx)を窒素(N)と水へ変換する。尿素水溶液インジェクタ27は、DPF24の下流かつSCR26の上流に配置され、排ガス流に対して尿素水溶液を噴射する。尿素水溶液がSCR26において還元剤として用いられると、NOxは以下の反応により、N、HO、COへ還元する:
4NO+2(NHCO+O→4N+4HO+2CO
【0020】
電気ヒータ28は、排気管32、34、36を流れる排ガスのアシスト加熱を提供する。発電機14はディーゼルエンジン12に接続され、起動時に予備的にディーゼルエンジン12を駆動し、通常エンジン動作において電気ヒータ28に対して電力を供給する。ヒータ制御モジュール30は、電気ヒータ28を複数の加熱モードにおいて戦略的に制御し、DPF24の能動再生と受動再生を促進する。
【0021】
再生は、DPF24から蓄積した微粒子を燃焼し除去するプロセスである。再生は、受動的に起こる場合もあるし、能動的に起こる場合もある。受動再生は、排ガス温度が十分高いとき、通常エンジン動作において生じ得る。能動再生は、監視したDPF条件に基づき、または排ガス後処理システム10に対して非常に高い熱を供給することによる所定タイミングスケジュールに基づき、生じ得る。能動再生は、適切なエンジン制御管理によって後燃料噴射または爆発工程における噴射を用いて排ガス温度を上昇させることにより、実現することができる。能動再生は受動再生よりもはるかに多くの熱を必要とし、したがってDPF24のセラミック構造がひび割れる危険があり、また触媒コートの寿命を減少させる。
【0022】
図2において、ヒータ制御モジュール30は、エンジン負荷とDPF24の状態に基づき電気ヒータ28の動作を戦略的に制御し、DPFの能動再生と受動再生の双方においてアシスト加熱を提供する。ヒータ制御モジュール24は、エンジン制御ユニット(ECU)(図示せず)の一部であってもよいし、ECU外に設けてもよい。ECUは特に、ディーゼルエンジン12の動作と燃料噴射システム(図示せず)を制御し、エンジン動作状態に関する様々なパラメータを取得および保存する。エンジン動作状態は、排気温度、ディーゼルエンジン負荷、流体状態(空気流、空気圧など)を含むが、これらに限らない。ヒータ制御モジュール30は、ECUからの入力を受け取り、電気ヒータ28をどのように動作させるかについて適切に判定する。制御モジュールはまた、スタンドアロン後処理制御システムからの情報を受け取る。
【0023】
ヒータ制御モジュール30は、加熱モード判定モジュール32とヒータ操作モジュール33を備える。ヒータ操作モジュール33は、受動再生加熱モジュール34と能動再生加熱モジュール36を備える。電気ヒータ28は、2つの動作モードで動作することができる:受動再生加熱モードと能動再生加熱モードである。加熱モード判定モジュール32は、エンジン負荷とDPF24の状態に基づき、望ましい加熱モードを判定する。DPF24が能動再生している場合、望ましい加熱モードは能動再生加熱モードである。DPF24が能動再生しておらずエンジン負荷が低い場合(例えば10%)、望ましい加熱モードは受動再生加熱モードである。加熱モード判定モジュール32は、加熱モード間の相関、期間、エンジン負荷、および望ましい排気温度上昇を指定する加熱戦略を有することができる。加熱モード判定モジュール32はまた、通常エンジン動作において電気ヒータ28を起動または停止すべきタイミングを判定する。加熱モード判定モジュール32の判定に応じて、ヒータ操作モジュール33は電気ヒータ28を動作させる。
【0024】
受動再生加熱モードにおいて、電気ヒータ28は、DOC22のNO生成を最適化する所定温度まで排気ガスを加熱するように制御される。NOは、DPF24の受動再生にとって有用な反応剤である。NO生成を増やすことにより、DPF24の受動再生を促進することができる。能動再生加熱モードにおいて、電気ヒータ28は、排気ガスを異なる態様で加熱して排気管を通じた排ガス温度勾配を減少させるように制御される。温度勾配が少なくなると、能動再生をより効率的にすることができる。
【0025】
受動加熱モードが望ましいと加熱モード判定モジュールが判定すると、受動再生加熱モジュール34は電気ヒータ28を制御して、排ガスを所定温度まで加熱する。受動再生加熱モジュール34は、排ガス温度と所定温度に基づき、望ましい温度上昇を算出し判定する。排ガス温度は、ECUからの入力や温度センサから得ることができる。所定温度は、DOC22内の触媒の特性に依拠し、NO生成を最適化するようにセットされる。
【0026】
図3において、DOC22排気口におけるNO濃度は、排ガス温度に依拠する。BASF DOC触媒においては、触媒温度が300〜460℃の範囲であるとき、特に320〜380℃の範囲であるとき、NO濃度は比較的高い。したがって、所定温度は300〜460℃の範囲にセットされ、より望ましくは320〜380℃の範囲にセットされる。電気ヒータ28が排ガスを所定温度まで加熱すると、最適な量のNOが生成され、DPF24の受動再生を促進する。DPFの広範な受動再生により、粒子状物質がより低い速度でDPF上に蓄積され、これにより能動再生の頻度を減少させる。その結果、DPFセラミックのひび割れや能動再生にともなう高加熱(一般に500〜650℃の範囲)による触媒劣化の可能性が減じられる。
【0027】
再び図2に戻って、DPF24が能動再生しているとき、望ましい加熱モードは能動再生加熱モードである。能動再生加熱モジュール36は、電気ヒータ28を制御して排ガスに対する差動加熱を提供する。電気ヒータ28は、電気ヒータ外周に沿ってより多くの熱を生成し、排気管の中心においてより少ない熱を生成する。
【0028】
排気管は一般に、管の中心軸に沿って比較的高い温度を有し、管壁近傍において比較的低い温度を有している。DPF24全体で効率的に能動再生を実施するため、排気管壁周辺の排ガスを望ましい能動再生温度まで加熱する必要がある。排気管の断面を交差する温度勾配に起因して、排気管の中心近傍における排ガスが不要に過加熱され、DPF24の中心部が高加熱されてひび割れのリスクが高まる。温度勾配を減少させるように電気ヒータ28を動作させることにより、望ましい能動再生温度まで排ガスを加熱する際に必要な熱がより少なくなる。したがってDPF中心における過加熱の可能性とこれにともなう問題が減じられる。
【0029】
図4において、電気ヒータ28の実施例を示す。電気ヒータ28は、中心近傍における低ワット密度ゾーン40と、電気ヒータ28外周に沿った高ワット密度ゾーン42を有する。電気ヒータ28は、排気管全体にわたって差動加熱を提供することができる。
【0030】
電気ヒータ28は、発電機14によって電力を供給される。発電機14は、エンジン起動時にディーゼルエンジン12を駆動する。ディーゼルエンジン12が起動して自身で動作し始めた後、発電機14はディーゼルエンジン12によって駆動され、他の電子部品や電気デバイスへ供給する電力を生成する。低エンジン負荷動作時に他の電気電子システムへ電力を供給する必要がないとき、加熱戦略により、利用可能な電力生成能力を用いることができる。
【0031】
図5において、加熱モード判定モジュール32は、加熱モード間の相関、排ガス温度上昇、およびエンジン負荷を指定する加熱戦略を有する。例示する図に示すように、エンジン負荷が低くDPF背圧が中〜高の範囲であるとき、目標排ガス温度上昇(デルタ)は低く、電気ヒータ28は受動再生モードで動作する。例えば、ディーゼルエンジン12が10%負荷程度の低負荷状態で動作するとき、電気ヒータ28は受動再生加熱モードとなる。電気ヒータ28が発電機14から要求する電力は少ない。望ましい温度上昇(デルタ)は能動再生時よりも小さく、エンジン負荷が小さいのでディーゼルエンジン12から生成される排ガスが少ないからである。
【0032】
エンジン負荷が例えば10%から25%、50%、75%へと増加し続けると、電気ヒータ22はOFFされる。DPFの能動再生は、エンジン負荷が小さいとき、または少ない排気流を加熱することによる利点を得るための所定スケジュールに基づき、開始される。DPFが能動再生しているとき、例えばエンジン負荷25%のとき、電気ヒータはONされ、能動再生加熱モードで動作して差動加熱を提供する。能動再生が完了し、エンジン負荷が増加し始めると、電気ヒータ28はOFFされる。
【0033】
図6において、テーブルは複数の負荷状態における排ガス成分を示す。図示するように、ディーゼルエンジンが10%負荷状態の下で動作するとき、排ガスは最も小さい排気流(1925cfm)を示し、大型ディーゼルエンジンの発電機セットタイプの5負荷状態のなかで最も多いNOx(6.8g/bhp−hr)が得られる。例えば、排ガス温度が235(455F)からDOCのNO生成にとって望ましい320〜380℃の範囲の温度へ上昇すると、このエンジン負荷状態において得られる多量のNOxにより、ヒータ下流のDOCは最大量のNOを生成する。NOは、DOC下流のDPFの粒子状物質を最大速度で受動的に酸化する。また、デルタT上昇はわずか85℃であり、これはデルタTが350℃である能動再生と比較して、エネルギー消費を最小化する。
【0034】
この発電機セットにおける流量81.6kg/minの10%負荷状態において、排ガスを加熱するために121KWが必要であり、デルタT上昇は85℃である。流量137.3kg/minの25%負荷状態において、排ガスを550℃まで加熱するために450KWが必要である。
【0035】
GE機関車エンジンの流量54.8kg/minのノッチ1状態において、排ガスを加熱するために73KWが必要であり、温度上昇(デルタ)は76℃から355℃である。同じノッチ1状態において排ガスを607℃まで加熱するために315KWが必要である。
【0036】
広範な受動再生により、DPF24上における煤とPMの蓄積とともに、DPFの背圧が減じられる。その結果、能動再生の期間と頻度が大幅に減じられ、これにより高価なDPFの耐用性を高めることができる。本発明の電気加熱戦略は、燃料噴射ベースの能動再生を置き換えることができる。
【0037】
において、本発明の加熱モジュール20は、動作中に電力を生成できる全てのディーゼルエンジンに対して適用される。望ましくは、低デューティサイクルにおいてNOxエンジン排出が多い非EGRディーゼルエンジンに対して適用される。図示するように、加熱モジュール20は触媒DPFのみの排気システムに対して適用することができるとともに、DOC52とDPF54を備えSCRを有さない排ガス後処理システム50に対して適用することができる。
【0038】
本発明の加熱モジュール20は、少なくとも以下の利点を有する:
【0039】
1.低負荷時にディーゼル発電機、船舶エンジン、または機関車の他動作がエンジン排出制御システムの一部であるDPFの受動再生をアシストする必要がないとき、電力生成能力を利用する。
【0040】
2.ディーゼル燃料噴射ベース能動再生の頻度を少なくし、エンジン動作の燃料経済性を高める。
【0041】
3.加熱アシスト受動再生によって蓄積するDPF動作にともなう煤を減少させ、動作背圧を全体的に最小化する。
【0042】
4.加熱アシスト受動再生を通じて煤が過剰に蓄積した過剰再生によって生じるDPFひび割れリスクを減少させる。
【0043】
5.システムの排ガス温度を均一にすることにより、排ガス後処理システムの性能を改善する。
【0044】
本発明は、ガス流の一部をより間接的に加熱する方法を含む。例えばシステムは、ガス流断面内の低温度部分を検出し、必要な個所へ熱を提供して温度分布をより均一にし、熱損失を補償する。また、ガスストリーム断面全体を再生するために入手可能なものよりも多くの電力を必要とするシステムについて、システムは複数時刻において特定のセクションまたはゾーンで再生を実施することができる。この本発明の代替形態も、対応するガス流断面をゾーン加熱するヒータタイプを有する。例えば多層ヒータやモジュラー熱トレースヒータである。これらは米国特許出願第11/238,747号「Modular Layered Heater System」および米国特許第7,626,146号「Modular Heater Systems」に記載されている。これらの内容はともに参照によってその全体が本願に組み込まれる。
【0045】
本発明の様々な教示は、様々な形態で実装することができる。したがって、本明細書は特定の実施例を開示しているが、本発明の範囲はそのように限定すべきではない。特許請求範囲により変形例が明らかだからである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7