特許第6336046号(P6336046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6336046高い耐衝撃性および耐熱保形性を有する複合体系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336046
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】高い耐衝撃性および耐熱保形性を有する複合体系
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/28 20060101AFI20180528BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20180528BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20180528BHJP
   C08L 25/08 20060101ALI20180528BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20180528BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180528BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20180528BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B32B27/28
   B32B27/30 A
   B32B17/10
   C08L25/08
   C08L33/04
   G02F1/1335
   G02F1/1333
   G06F3/041 460
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-514277(P2016-514277)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2016-525962(P2016-525962A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】EP2013060702
(87)【国際公開番号】WO2014187500
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】390009128
【氏名又は名称】エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】リューディガー カルロフ
(72)【発明者】
【氏名】ゲラルト ディートリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヴィッカー
(72)【発明者】
【氏名】チー−ルン チェン
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/117897(WO,A1)
【文献】 特開2008−225452(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101759945(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C08L 25/08
C08L 33/04
G02F 1/1333
G02F 1/1335
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体系であって、
・a)以下を含むか、またはそれらからなるポリマーブレンド層と、
A)(メタ)アクリレート(コ)ポリマーもしくは(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの混合物、および
B)スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー
ここで、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)中の無水マレイン酸繰り返し単位の割合は、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)の総質量に対して20〜26質量%であり、かつ
ここで、ポリマーブレンド層a)中の無水マレイン酸繰り返し単位の割合は、ポリマーブレンド層a)の総質量に対して1〜27質量%であり、かつ
ここで、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)は、スチレン、無水マレイン酸およびスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)中の無水マレイン酸の総質量に対して0〜50質量%の、スチレンおよび/または無水マレイン酸と共重合可能なビニルモノマーを含むモノマー混合物から製造されている、
・b)任意に、1つまたは複数の接着層、ガラス層および/または光学シート、好ましくは1つまたは複数の接着層と
・c)ガラス層またはプラスチック層、好ましくはプラスチック層と
を含む前記複合体系において、
ここで、a)およびc)が互いに接合されているか、または1つもしくは複数の層b)が、前記2つの層a)とc)を互いに接合する前記複合体系。
【請求項2】
A)が、A)の総質量に対して少なくとも30質量%のメチルメタクリレート繰り返し単位で構成されている、請求項1に記載の複合体系。
【請求項3】
前記重合される組成物が、A)の製造のために、メチルメタクリレートおよび/または(メタ)アクリレートと共重合可能な以下のモノマー:アルキル(メタ)アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、無水グルタル酸、スチレン、無水マレイン酸、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ビニルシクロヘキサン、アクリルニトリル、酢酸ビニルおよび置換スチレンの1つまたは複数のモノマーを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の複合体系。
【請求項4】
スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)が、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)の総質量に対して55〜90質量%のスチレン繰り返し単位の割合を有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項5】
A)が、少なくとも50000g/molの平均分子量Mwを有している、および/またはB)が、少なくとも40000g/molの平均分子量Mwを有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項6】
ポリマーブレンド層a)を構成する組成物が、少なくとも110℃のビカー軟化温度VET(ISO306−B50)を有していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項7】
ポリマーブレンド層a)が、UV安定剤、UV吸収剤、潤滑剤、静電気防止剤、難燃剤、耐引っかき性を高めるための添加剤、酸化防止剤、光安定剤、有機リン化合物、耐候安定剤および/または可塑剤を、それぞれポリマーブレンド層a)の総質量に対してそれぞれ0.001〜5質量%の割合で含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項8】
A):B)の質量比が、10:90〜90:10の範囲であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項9】
ガラス層またはプラスチック層c)が、ポリカーボネート層であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項10】
ガラス層またはプラスチック層c)が、20〜3000μmの範囲の厚みを有しており、
および/または
ポリマーブレンド層a)が、10〜2000μmの範囲の厚みを有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項11】
ポリマーブレンド層a)が、好ましくは積層によって、ガラス層またはプラスチック層c)に塗布されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項12】
ポリマーブレンド層a)および/またはガラス層もしくはプラスチック層c)が、片側または両側に機能性被覆、好ましくは耐引っかき性被覆、反射防止被覆および/または静電気防止被覆を有していることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項13】
前記被覆が、耐引っかき性被覆、好ましくは、熱架橋もしくはUV架橋された、(メタ)アクリレートまたはシリコーンをベースとする塗料であることを特徴とする、請求項12に記載の複合体系。
【請求項14】
カバーもしくはグレージングの形態の、またはディスプレイ、カバー、タッチスクリーンもしくはグレージングの一部の形態の多層シートであることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の複合体系。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の複合体系を含むことを特徴とするディスプレイ。
【請求項16】
スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーであって、
ここで、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー中の無水マレイン酸繰り返し単位の割合が、該スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーの総質量に対して20〜26質量%であり、
かつ
ここで、スチレン、無水マレイン酸、および前記スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー中の無水マレイン酸の総質量に対して0〜50質量%の、スチレンおよび/または無水マレイン酸と共重合可能なビニルモノマーを含むモノマー混合物から製造されている
前記スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーの、
ディスプレイ、ディスプレイカバー、タッチスクリーンまたはグレージングの反りを低減させるための使用。
【請求項17】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の複合体系の、光学的表示エレメントとして、または光学的表示エレメント内における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い耐衝撃性および耐熱保形性を有する複合体系、好ましくは多層シート、ならびにその製造方法ならびにその使用に関する。
【0002】
複合体系、好ましくは、多層シートは、ディスプレイの前面板において、携帯型ディスプレイ、例えば、携帯電話、スマートフォンおよび入力端子においてならびに表示パネルで使用される。さらに、複合体系、好ましくは多層シートは、自動車グレージング、自動車車体として、ゲーム機およびカーポートで使用される。
【0003】
種々のポリマー種類で構成される複合体系の種々の実施態様は、公知である。ここで、重要な要求は、優れた耐衝撃性、高い光学的透明性、および優れた表面硬度である。さらに、高い耐引っかき性が存在しているのが望ましい。複合体系、好ましくは多層シートの適用では、さらに、高温および高い空気湿分での前記多層シートのわずかな反り(Verwerfung)が重要な特性である。
【0004】
複合体系もしくは多層シートをディスプレイにおいて前面板として適用する場合、この複合体系もしくは多層シートは、実際の表示ユニット、例えば、OLED(Organic Light Emitting Diode(有機発光ダイオード))またはLCDパネル(Liquid Crystal Display(液晶ディスプレイ))の前に位置している。前記複合体系もしくは前記多層シートは、前記表示ユニット上に平らに載っているのが望ましい。したがって、前記複合体系もしくは多層シートの、周囲影響による歪みは不所望である、それというのは、その場合、下に置かれたLCDユニットに圧力の影響が及ぼされるからであり、この圧力によって著しい色構成(Farbstrukturen)がもたらされる。
【0005】
複合体系もしくは多層シートの使用の間の歪みもしくは反りは、特に、高い運転温度または周囲温度に起因していることがある。
【0006】
前記複合体/前記シートの耐衝撃性を高めるために、該複合体/該シートの層は、例えば、ポリカーボネート(PC)からなっていてよい。ポリカーボネート層もしくはポリカーボネートシートは、高い耐衝撃性および高い耐熱保形性であることを特徴としている。しかし、ポリカーボネートの欠点は、その表面硬度および耐引っかき性が低いことである。耐引っかき性および表面硬度を高めるために、PCにポリメチルメタクリレート(PMMA)を積層することができる。
【0007】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)は、一般に、ポリカーボネートよりも高い表面硬度を有しており、周知のごとくきわめて優れた耐候性を有しており、ポリカーボネートの保護として利用することもできる。
【0008】
PCにポリメチルメタクリレートを積層することによって、この得られた多層シートもしくは複合体は、PMMA側で高い耐衝撃性および高い表面硬度を有している。しかし、PMMAの耐熱保形性は、PCと比べて明らかに低いことが多いため、比較的高い温度では、前記シート/前記複合体の反りが起こる。
【0009】
先行技術では、PMMA層の耐熱保形性を高めることによって反りが起こりうることが公知である(例えば、特開2009−196125号公報)。
【0010】
例えば、特開2009−196125号公報には、ディスプレイ用途のためのポリメタクリレートコポリマー層とポリカーボネート層からなる多層シートが記載されている。ポリメタクリレートの耐熱保形性を高めるために、特別なポリメタクリレートコポリマーが記載されている。このポリメタクリレートコポリマーは、(メタ)アクリレートと環式ビニルモノマーからなるコポリマーである。特開2009−196125号公報の例では、ビニルシクロヘキサンが挙げられている。
【0011】
ポリメタクリレートの製造は、(特開2009−196125号公報に記載の通り)きわめて費用がかかるものである、それというのは、特許請求の範囲に記載された環式ビニルモノマーが、別の(メタ)アクリレートと好適にラジカル重合しないからであるということがさらに公知である。
【0012】
ラジカル重合可能なモノマー、例えば、(メタ)アクリレートのラジカル共重合は、例えば、ポリメタクリレートを製造するための簡潔で公知の経済的な方法である。
【0013】
欧州特許第1680276号明細書には、ポリカーボネートとポリメタクリレートからなり、ポリメタクリレート中のコモノマーがシクロヘキシルメタクリレートである多層シートが記載されている。シクロヘキシルメタクリレートを有するポリメタクリレートは、環式エステル基のゆえに、標準PMMAと比べてPCに対してより優れた相溶性を有している。しかし、シクロヘキシルメタクリレートによるポリメタクリレートの耐熱保形性は、ほとんど高められない。
【0014】
さらに、独国特許出願公開第4440219号明細書から、メチルメタクリレートとスチレンと無水マレイン酸との共重合から得られるコポリマーが、耐熱保形性を高めることが公知である。独国特許出願公開第4440219号明細書による公知のメチルメタクリレート・スチレン・無水マレイン酸コポリマーは、確かに比較的高い耐熱保形性を示すが、PC上に積層する場合、高い反り度に達する。
【0015】
したがって、本願に記載および本願で議論された先行技術を考慮して、本発明の課題は、複合体系、好ましくは多層シートであって、容易に製造可能であり、優れた耐衝撃性および比較的高い温度にて、先行技術で公知のポリカーボネートと標準PMMAからなる多層シートよりも少ない反りを示すが、同時に、独国特許出願公開第4440219号明細書により公知の通り、高い耐熱保形性も達成する複合体系、好ましくは多層シートを開発することであった。
【0016】
さらに、前記課題は、上記要求にしたがう複合体系もしくは多層シートであって、該複合体系もしくは該多層シートの内部に優れた接着性も有する、つまり、個々の層の間に優れた接着性を有する前記複合体系もしくは多層シートを提供することにあった。
【0017】
さらなる課題は、前記複合体系もしくは多層シートを、該複合体系もしくは該多層シートの外側もしくは層が、それぞれ機能性塗料で被覆可能であるように仕上げることにあった。
【0018】
前記課題ならびにさらなる、明確には記載されていないが、本願で議論される関連から導き出せる課題、またはそれらから明らかである課題は、驚くべきことに、複合体系であって、
・a)以下を含むか、またはそれらからなるポリマーブレンド層と、
A)(メタ)アクリレート(コ)ポリマーもしくは(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの混合物、および
B)スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー
ここで、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)中の無水マレイン酸繰り返し単位の割合は、それぞれスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)の総質量に対して10〜30質量%、好ましくは15〜28質量%、より好ましくは20〜26質量%であり、かつ
ここで、ポリマーブレンド層a)中の無水マレイン酸繰り返し単位の割合は、それぞれポリマーブレンド層a)の総質量に対して1〜27質量%、好ましくは1.5〜25質量%、好ましくは2〜23質量%であり、かつ
ここで、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)は、スチレン、無水マレイン酸およびスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)中の無水マレイン酸の総質量に対して0〜50質量%の、スチレンおよび/または無水マレイン酸と共重合可能なビニルモノマーを含むモノマー混合物から製造されている、
・b)任意に、1つまたは複数の接着層、ガラス層および/または光学シート、好ましくは、1つまたは複数の接着層、より好ましくは、光学透明接着剤(optical clear adhesive(OCA))または感圧接着剤(pressure sensitive adhesive(PSA))の少なくとも1つの接着層と、
・c)ガラス層またはプラスチック層、好ましくは、プラスチック層、より好ましくはポリカーボネート層と
を含む前記複合体系において、
ここで、a)およびc)が互いに接合されているか、または1つもしくは複数の層b)が、前記2つの層a)とc)を互いに接合する、前記複合体系により解決される。
【0019】
ここで、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)が製造されるモノマー混合物は、スチレン、無水マレイン酸、およびスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)中の無水マレイン酸の総量に対して0〜50質量%の、スチレンおよび/または無水マレイン酸と共重合可能なビニルモノマーの他に、さらなる成分、例えば、添加剤を含んでいてよい。
【0020】
本発明の特別な実施態様の場合、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)が製造されるモノマー混合物は、スチレン、無水マレイン酸、およびスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)中の無水マレイン酸の総量に対して0〜50質量%の、スチレンおよび/または無水マレイン酸と共重合可能なビニルモノマーからなる。
【0021】
驚くべきことに、上記数値にしたがう(メタ)アクリレート(コ)ポリマーまたは(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの混合物A)とスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)との混合物からなるブレンドを製造し、それに続いてガラス層またはプラスチック層、好ましくはポリカーボネート層に塗布、好ましくは積層することによって、PMMAの耐熱保形性が、メチルメタクリレート(MMA)と無水マレイン酸とスチレンからなるコポリマーの製造によるものと同等に高められる一方、他方では、プラスチック層またはガラス層、好ましくはポリカーボネート層との優れた相溶性に対する要求が満たされ、さらに、公知の複合体系もしくは積層体を用いる先行技術から公知であり予期可能であるものよりも複合体、好ましくは積層体の反りが少ないことが判明した。
【0022】
(メタ)アクリレート(コ)ポリマーまたは(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの混合物A)=ポリマーA)
A)で示されるポリマーは、一般に、メチルメタクリレートを含む混合物のラジカル重合により得られる。一般に、前記混合物は、前記モノマーの質量に対して少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%、より好ましくは少なくとも80質量%、さらにより好ましくは少なくとも90質量%、殊に好ましくは少なくとも95質量%のメチルメタクリレートを含む。特に、実質的にポリメチルメタクリレートからなるポリマーは、特に高い品質を示す。
【0023】
その他に、前記混合物は、ポリマーA)を得るために、メチルメタクリレートと共重合可能なさらなる(メタ)アクリレートを含んでいてよい。(メタ)アクリレートという表現は、メタクリレートおよびアクリレートならびにこれらの2つからなる混合物を包含している。
【0024】
本発明によれば、前記重合される組成物は、上記(メタ)アクリレートの他に、メチルメタクリレートおよび前記(メタ)アクリレートと共重合可能なさらなる不飽和モノマーを含んでいてもよい。それには、特に、アルキル(メタ)アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、スチレン、置換スチレン、ビニルシクロヘキサン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドおよびアクリルニトリルが含まれる。前記混合物中には、ポリマーA)を得るために上記さらなるモノマーの他に、前記コモノマーの(メタ)アクリル酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、n−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドおよびアクリルニトリルは、ポリマーブレンド層a)中のスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)の総量に対して最大8質量%の総質量の割合でのみ含まれているのが好ましい。ポリマーA)中のビニルシクロヘキサン繰り返し単位は、メチルメタクリレート・スチレンコポリマーのベンゼン環の水素化によって得ることもできる、それというのは、ビニルシクロヘキサンが、メチルメタクリレートと不充分にしかラジカル重合することができないからである。さらに、ポリマーA)は、タイプA)の種々のポリマーからなるブレンドであってよい。詳述したモノマーはすべて、高純度で使用されるのが好ましい。
【0025】
さらに、ポリマーA)は、種類A)の種々のポリマーからなるブレンドであってよい。
【0026】
ポリマーA)の質量平均分子量Mwは、好ましくは50000〜500000g/mol、より好ましくは60000〜300000g/mol、特に好ましくは80000〜200000g/molであるが、これに制限されない。
【0027】
スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)=ポリマーB)
本発明による複合体系は、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)が、それぞれこのスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)の総質量に対して55〜90質量%、好ましくは58〜85質量%、より好ましくは61〜80質量%のスチレン繰り返し単位の割合を有していることを特徴としているのが好ましい。
【0028】
本発明による複合体系において、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)が、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)中の無水マレイン酸の総質量に対して50質量%までのスチレンおよび/または無水マレイン酸と共重合可能なビニルモノマーを含むモノマー混合物から製造されている場合、このビニルモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ビニルシクロヘキサンからなる群から選択されるのが好ましい。
【0029】
本発明により使用されるスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)の質量平均分子量Mwは、広範囲に変化してよく、ここで、この分子量は、通常、適用目的および加工方法に適合するように調整される。しかし、一般に、40000〜500000g/mol、好ましくは50000〜300000g/mol、特に好ましくは70000〜150000g/molの範囲であるが、これに制限されない。
【0030】
本発明による複合体系の好ましい実施態様では、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)は、少なくとも70000g/molの平均分子量Mwを有している。
【0031】
本発明によるスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)は、以下において、本発明による例の記載で説明される方法により製造されるのが好ましい。
【0032】
ポリマーブレンド層a)
本発明により製造される複合体系の製造に使用されるポリマーブレンドa)は、好ましくは、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーまたは(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの混合物A)(=ポリマーA))とスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)(=ポリマーB))とのポリマー混合物であり、ここで、(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの熱可塑性主成分または(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの混合物A)(=ポリマーA))の少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも50質量%が、メチルメタクリレート繰り返し単位からなる。前記(メタ)アクリレート(コ)ポリマーまたは(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの混合物A)(ポリマーA))の熱可塑性主成分の少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも90質量%、特に好ましくは少なくとも95質量%が、メチルメタクリレート繰り返し単位からなるのがさらに好ましい。
【0033】
好ましいポリマーブレンド層a)は、場合により、本発明の範囲では、「本発明による変性PMMA」とも表される。
【0034】
好ましい本発明による複合体系において、ポリマーブレンド層a)を構成する組成物は、少なくとも110℃、好ましくは少なくとも112℃、より好ましくは少なくとも115℃のビカー軟化温度VET(ISO306−B50)を有している。
【0035】
前記複合体系のさらなる本発明による実施態様は、ポリマーブレンド層a)が、10〜2000μm、好ましくは20〜1500μm、より好ましくは30〜1000μm、さらに好ましくは40〜500μm、殊に好ましくは50〜300μmの範囲の厚みを有していることを特徴としている。
【0036】
さらなる本発明による実施態様は、好ましくは、上記好ましい実施態様の1つによる複合体系であって、ポリマーブレンド層a)が、通常の添加物もしくは添加剤を含む前記複合体系である。それには、特に、UV安定剤、UV吸収剤、潤滑剤、静電気防止剤、難燃剤、耐引っかき性を高めるための添加剤、酸化防止剤、光安定剤、有機リン化合物、耐候安定剤および/または可塑剤が含まれる。
【0037】
本発明による複合体系のポリマーブレンド層a)中に含まれている前記添加物もしくは添加剤が、それぞれポリマーブレンド層a)の総質量に対してそれぞれ0.001〜5質量%の割合で、好ましくはそれぞれ0.001〜1質量%の割合で、さらにより好ましくはそれぞれ0.002〜0.5質量%の割合で、特に好ましくはそれぞれ0.005〜0.2質量%の割合で存在していることがさらに好ましい。添加物もしくは添加剤の量は、適用目的に応じて定めることができる。本発明による複合体系のポリマーブレンド層a)は、ポリマーブレンド層a)の総質量に対して合計最大で5質量%、好ましくは合計最大で2質量%の添加剤を含んでいるのが好ましい。
【0038】
UV安定剤は、立体障害アミン(Hindered Amine Light Stabilizer;HALS)およびメチルサリチレートであるのが好ましい。
【0039】
UV吸収剤は、立体障害フェノール、特に、ベンゾトリアゾール、例えば、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール、および/またはトリアジンであるのが好ましい。しかし、置換ベンゾフェノン、サリチル酸エステル、ケイ皮酸エステル、オキサルアニリド、ベンゾキサジノンまたはベンジリデンマロネートが使用されてもよい。
【0040】
好ましい潤滑剤は、脂肪酸、脂肪酸エステルもしくは脂肪アルコール、例えば、ステアリン酸、パルチミン酸、ステアリルアルコール、セチルアルコールおよびそれらの工業的混合物である。
【0041】
好ましい静電気防止剤は、例えば、ラウリルアミンエトキシレートおよびグリセリンモノステアレートである。
【0042】
耐引っかき性を高めるための添加剤は、例えば、ポリオルガノシロキサンである。
【0043】
本発明による特に好ましい複合体系中では、(メタ)アクリレート(コ)ポリマー、または(メタ)アクリレート(コ)ポリマーの混合物A)(=ポリマーA))対スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーB)(=ポリマーB))の質量比は、10:90〜90:10の範囲、好ましくは15:85〜85:15の範囲、より好ましくは20:80〜80:20の範囲、殊に好ましくは70:30〜30:70の範囲である。
【0044】
本発明による複合体系のポリマーブレンド層a)は、任意に、耐衝撃性変性されていてよい。本発明の範囲で使用することができる好適な耐衝撃性改良剤は、例えば、架橋されたブタジエンおよび/またはスチレンおよび/または架橋された長鎖アルキル(メタ)アクリレートを含むゴム粒子である。しかし、本発明の範囲では、好ましくは、ポリマーブレンド層a)も本発明による複合体系のあらゆるさらなる成分も耐衝撃性改良剤を含んでいないことがあってよい。耐衝撃性改良剤は、場合によって、本発明による複合体系の、例えば、ディスプレイのためのプラスチックグレージングとしての好ましい使用の1つにおいて光学特性を妨害することがある。
【0045】
ガラス層またはプラスチック層c)
本発明の範囲では、熱可塑性プラスチックを層c)として使用することが有利であることが示された。
【0046】
特に好ましい実施態様では、本発明による複合体系は、層c)がポリカーボネート層であることを特徴としている。
【0047】
本発明によれば、ポリカーボネート成分として、Bayer MaterialsのMakroion(登録商標)2607(MVR 12ml/10min(300℃/1.2kg、ISO1133に準拠)および143℃のビカー温度B50(ISO306に準拠))が使用されるのが好ましい。しかし、Bayer Materialsの別のポリカーボネートの種類もポリカーボネート層として考えられる。同じく、Styron社CALIBRE(登録商標)、Sabic社LEXAN(登録商標)、Idemitsu社TARFLON(登録商標)、Teijin Kasei社Panlite(登録商標)の種類のポリカーボネート、および別のポリカーボネートメーカーのさらなるポリカーボネートをポリカーボネート層として使用することも可能である。
【0048】
層c)がポリカーボネート層である本発明による複合体系の特に好ましい実施態様は、反りを低減させる特性および耐衝撃性複合体の提供に関して、高い耐熱保形性と相まって、特に優れた結果を明らかにしている。ここで、前記ポリカーボネート層は、一般に、どちらかというと軟性であり、接合によって初めて、優れた耐衝撃性が優れた表面硬度と一緒に達成されることを特に言及することができる。しかし、これらの特性の組合せは、所望の適用の多くの場合、例えば、ディスプレイ用途において重要である。
【0049】
外側のポリカーボネート層c)および/または外側のポリマーブレンド層a)に、機能性被覆が備えられている本発明による複合体系の1つの実施態様が特に好ましい。
【0050】
本発明によれば、前記複合体系は、好ましくは上記実施態様の1つによれば、さらに好ましくはポリカーボネート層である層c)が、20〜3000μm、好ましくは50〜2000μm、より好ましくは200〜1500μm、さらにより好ましくは300〜1200μmの範囲の厚みを有していることを特徴としていることがさらに好ましい。
【0051】
複合体
本発明の範囲では、本発明による複合体系、特に、層c)がポリカーボネート層である複合体系において、ポリマーブレンド層a)が好ましくは積層により層c)に塗布されていることがさらに好ましい。
【0052】
積層は、本発明の範囲では、共押出、つまり、a)およびc)の2つの層、本発明では好ましくはPMMAを含む層およびポリカーボネート層を接合することによって行われてよい。しかし、前記積層は、共押出に制限されない。本発明の範囲では、別の公知の方法も、2つの層a)とc)を接合する、好ましくはPMMAを含む層にポリカーボネート層を接合するのに好適である。
【0053】
本発明によれば、前記複合体系は、好ましくは上記の好ましい実施態様の1つによれば、積層体である、つまり、積層体の形態で存在しているのが好ましい。
【0054】
さらに、本発明による複合体系は、多層シートである、つまり、多層シートの形態で存在しているのが特に好ましい。
【0055】
本発明による複合体は、好ましくは、a)および/またはc)が、片側または両側に、機能性被覆、好ましくは耐引っかき性被覆、反射防止被覆および/または静電気防止被覆を有していることを特徴としていてよい。本発明による教示によれば、前記被覆は、それぞれ同じであっても、それぞれ互いに異なっていてもよい(例えば、a)およびc)の片側または両側の被覆が、いずれも耐引っかき性被覆である実施態様、またはa)およびc)が、それぞれ被覆を1つのみ有しており、それらの被覆が互いに異なっている、例えば、耐引っかき性被覆および静電気防止被覆である実施態様)。本発明によれば、あらゆる組み合わせの可能性が含まれており、これらの可能性は、a)および/またはc)が、片側または両側に、上記列挙による機能性被覆を有していてよいことから明らかである。
【0056】
ここで、本発明によれば、前記複合体系が、a)またはc)に少なくとも1つの耐引っかき性被覆を有している、さらに好ましくはa)およびc)に少なくとも1つの耐引っかき性被覆を有している実施態様が特に好ましい。本発明の範囲では、a)およびc)が、それらのそれぞれ外側の層側、つまり、前記複合体の内部に通じていない層側にそれぞれ耐引っかき性被覆を有している場合が特に好ましい。
【0057】
本発明によれば、(メタ)アクリレートまたはシリコーンをベースとする熱架橋またはUV架橋された塗料である耐引っかき性被覆が使用されるのが好ましい。これらの塗料は、さらに、耐引っかき性を改善するナノ粒子、例えば、ケイ素酸化物をベースとするナノ粒子を含んでいてよい。しばしば、前記塗料は、防眩作用を達成するためにケイ酸塩小球(Silikatkuegelchen)も含んでいる。しかし、さらなる粒子を選択する場合、これらの粒子が、光屈折をもたらさない程度に小さいこと、もしくは前記粒子が、使用された塗料と同じ屈折率を有していることに非常に注意すべきである。前記塗料は、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティングなどで塗布されるのが好ましい。
【0058】
任意に、場合によりそれぞれ互いに無関係に、片側または両側で機能的に被覆されているポリマーブレンド層a)およびガラス層またはプラスチック層c)は、1つまたは複数の接着層、ガラス層および/または光学シート、好ましくは1つまたは複数の接着層、好ましくは光学透明接着剤(optical clear adhesive(OCA))または感圧接着剤(pressure sensitive adhesive(PSA))の少なくとも1つの接着層によって、互いに接合されている。
【0059】
本発明による好ましい複合体系は、10%未満、好ましくは5%未満のヘイズ値を有している(ISO13803に準拠)。
【0060】
ここよりさらに上にすでに記載の通り、本発明による複合体系は、好ましくは多層シートである。さらに、この多層シートは、カバー、好ましくはディスプレイカバー、もしくはタッチスクリーン、もしくはグレージング、好ましくは、自動車グレージングの形態で、またはディスプレイ、カバー、好ましくはディスプレイカバーもしくはディスプレイの前面板、もしくはタッチスクリーンもしくはグレージング、好ましくは自動車グレージングの一部の形態で存在していることが特に好ましい。本発明の範囲では、「ディスプレイ」とは、時間によって変わりうる情報を表示するための装置であると理解される。
【0061】
したがって、本発明のさらなる対象は、本発明による複合体系の他に、上記説明による本発明による複合体系、特に、好ましい実施態様の1つによる本発明による複合体系を含むディスプレイである。
【0062】
本発明の範囲では、本発明による複合体系を含む前記ディスプレイが、LCDディスプレイ、OLEDディスプレイ、または電気泳動ディスプレイであることがさらに好ましい。
【0063】
本発明によるディスプレイにおいて、ポリマーブレンド層a)は、光学透明接着剤(optical clear adhesive(OCA))または感圧接着剤(pressure sensitive adhesive(PSA))を用いて、前記層の下にある層c)と接合されているのが好ましい。ここで、好適なOCAまたはPSAの選択は、当業者に一般によく知られている。この接着層は、ディスプレイ全体の機械的安定性を改善し、前記層の界面での光反射を低減するものである。
【0064】
同じく本発明に包括されているのは、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーであって、
・ここで、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー中の無水マレイン酸繰り返し単位の割合は、それぞれスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーの総質量に対して10〜30質量%、好ましくは15〜28質量%、より好ましくは20〜26質量%であり、
かつ
・ここで、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーが、スチレン、無水マレイン酸、およびスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー中の無水マレイン酸の総質量に対して0〜50質量%のスチレンおよび/または無水マレイン酸と共重合可能なビニルモノマーを含むモノマー混合物から製造されている、
前記スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーの、ディスプレイ、ディスプレイカバー、タッチスクリーン、またはグレージング、好ましくは自動車グレージングの反りを低減するための使用である。
【0065】
ディスプレイ、ディスプレイカバー、タッチスクリーン、またはグレージング、好ましくは自動車グレージングの反りを低減するための本発明による使用において、前記ディスプレイ、前記ディスプレイカバー、前記タッチスクリーン、または前記グレージング、好ましくは前記自動車グレージングは、プラスチック層またはガラス層、好ましくは熱可塑性プラスチック層、好ましくはポリカーボネート層を含んでいる。
【0066】
本発明にさらに包括される実施態様は、上記説明による本発明による複合体系の、光学的表示エレメントとしての、または光学的表示エレメント内での使用に関する。
【0067】
測定方法:
平均分子量Mw(質量平均)および平均分子量Mn(数平均):
本発明の範囲における平均分子量Mw(質量平均)および平均分子量Mn(数平均)は、サイズ排除クロマトグラフィー(GPC)によって、以下の条件にしたがって測定される:
【0068】
本発明の範囲では、共押出された板から切断した100×100mmの寸法の試料で反りを測定した。製造後にほぼ平坦な前記試料を、空調キャビネット内で、格子の上に置いて85℃および相対湿度85%で72時間貯蔵し、ここで、ポリマーブレンド層a)もしくは実施された比較試験によるポリマーブレンド層a)に相当する層は、上向きに貯蔵した。前記空調キャビネットから取り出して、前記試料を23℃にて24時間、完全に冷却した後、湾曲(平坦な下敷き(Unterlage)から最も高い地点の距離(mm))を、最も高い地点でキャリパーを用いて測定した。有意義な値を得るために、少なくとも二重測定を実施した。
【0069】
以下の例は、本発明の詳細な説明およびよりよい理解のために用いられるが、その範囲もしくはそれらの範囲を決して制限しない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】85℃/相対湿度85%/72h空調貯蔵後の本発明による例
図2】85℃/相対湿度85%/72h空調貯蔵後の比較例1
図3】85℃/相対湿度85%/72h空調貯蔵後の比較例2
【0071】

(ポリマーブレンド層a)の)ポリマーブレンドa)もしくは比較組成物の製造
例(本発明による)
本発明による変性PMMA(=ポリマーブレンド層a)のためのポリマーブレンド)を以下から製造する:
標準PMMA(ポリマーA)に相当)50.00質量%
スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー(ポリマーB)に相当)50.00質量%。
【0072】
標準PMMA(=ポリマーA))は、メチルメタクリレート96%とメチルアクリレート4%とから構成されている。このPMMAは、独国特許出願公開第4440219号明細書に準拠して製造する:
メチルメタクリレート 95.305質量%
メチルアクリレート 4.000質量%
n−ドデシルメルカプタン 0.310質量%
ジラウロイルペルオキシド 0.035質量%
tert−ブチルペルイソノナノエート 0.030質量%
ステアリルアルコール 0.300質量%
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール 0.020質量%。
【0073】
前記出発材料を、ポリエステル袋に秤量導入し、水浴中で重合させて、次に、温度調節炉内で温度調節する。続いて、前記ポリマーを粉砕して、押出機で脱気する。
水浴中での重合のための温度プロファイル:
24時間60℃
温度調節炉内での温度プロファイル:
110℃で6時間。
【0074】
PMMAの得られた分子量Mwは、GPC法で測定して149000g/molである。
【0075】
前記PMMAは、105℃のビカー軟化温度VET(ISO306−B50)を有している。スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー(=ポリマーB))を、アンカー型撹拌機による逆混合に非常に優れた、100Lの連続運転式撹拌槽反応器内で、スチレンおよび無水マレイン酸とジベンゾイルペルオキシドとを、メチルエチルケトン中で120℃にて連続的に重合させることによって製造する。前記逆混合撹拌槽の種類は、先行技術から公知である(例えば:Chemische Reaktionstechnik,Georg Thieme Verlag 1987,237〜241ページ)。
【0076】
スチレンおよび無水マレイン酸の部分転換を有する前記撹拌槽反応器の流出部のポリマーシロップを、脱気開口部を備える二軸押出機によって連続的に脱気し、続いて、造粒機で粒状にして、続いて、前記生成物のポリマー組成物をIR分光法によって試験する。前記スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーの製造において、前記反応器流出部のポリマーシロップ中のポリマー含分は、約28%であり、これは、使用されたスチレンおよび無水マレイン酸の全質量転換率約40%を意味する。
【0077】
具体的には、メチルエチルケトン9.2kg/h、無水マレイン酸2.3kg/h、およびスチレン18.8kg/hからなる混合物を23℃にて前記反応器に連続的に供給する。さらに、前記反応器に、ジベンゾイルペルオキシドを重合開始剤として連続的に供給する。ジベンゾイルペルオキシドの必要な流量は、測定された反応温度から明らかであり、この温度は、ジベンゾイルペルオキシド供給の供給ポンプの往復長さを調節装置によって変えるため、110℃の一定の反応温度を維持することができる。スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー中の無水マレイン酸繰り返し単位の割合23質量%を得るために、定期的に造粒物試料を抜き出して、IR分光法を用いて前記組成物を測定する。IR分析に基づいて、スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー中の無水マレイン酸繰り返し単位の割合23質量%を得るために、前記供給混合物中の無水マレイン酸の割合をほんの少しだけ変化させる。
【0078】
ポリマーブレンド層a)の製造に使用されるスチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーのIR分光分析は、無水マレイン酸繰り返し単位の割合が23%であり、および前記スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマー中のスチレン繰り返し単位の割合が77%であり、かつGPCで測定された前記スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーの分子量Mwが86500g/molであり、および分子量Mnが48000g/molであることを明らかにしている。前記スチレン・無水マレイン酸(コ)ポリマーのビカー軟化温度VET(ISO306−B50)は、146℃である。
【0079】
前記成分(ポリマーAおよびポリマーB)は、ポリマーブレンドa)を製造するために二軸押出機内で互いに混合される。
【0080】
ポリマーブレンドa)中の無水マレイン酸繰り返し単位の測定された割合は、ポリマーブレンドa)の総質量に対して11.5質量%である。
【0081】
ポリマーブレンドa)は、123℃のビカー軟化温度VET(ISO306−B50)を有している。
【0082】
比較例1
標準PMMAと比べて比較的高い耐熱保形性を有する変性PMMAとして、メチルメタクリレート、スチレンおよび無水マレイン酸からなるコポリマーが選択される。このコポリマーは、独国特許出願公開第4440219号明細書に準拠して製造される:
メチルメタクリレート 72.438質量%
スチレン 16.000質量%
無水マレイン酸 11.000質量%
n−ドデシルメルカプタン 0.360質量%
tert−ブチルペルネオデカノエート 0.032質量%
tert−ブチルペルイソノナノエート 0.010質量%
ステアリルアルコール 0.150質量%
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール 0.010質量%。
【0083】
前記出発材料を、ポリエステル袋に秤量導入し、水浴中で重合させて、次に、温度調節炉内で温度調節する。続いて、前記ポリマーを粉砕して、押出機で脱気する。
【0084】
水浴内での重合のための温度プロファイル:
12時間52℃
16時間44℃。
温度調節炉内での温度プロファイル:
110℃にて6時間。
【0085】
前記変性PMMAの得られた分子量Mwは、GPC法で測定して145000g/molである。
【0086】
前記変性PMMAは、122℃のビカー軟化温度VET(ISO306−B50)を有している。
【0087】
比較例2
さらなる比較として、メチルメタクリレート99%とメチルアクリレート1%で構成される標準PMMAを選択する。このPMMAは、耐熱保形性が高いことを特徴としている。前記コポリマーを、独国特許出願公開第4440219号明細書に準拠して製造する:
メチルメタクリレート 98.485質量%
メチルアクリレート 1.000質量%
n−ドデシルメルカプタン 0.290質量%
ジラウロイルペルオキシド 0.035質量%
tert−ブチルペルイソノナノエート 0.030質量%
ステアリルアルコール 0.150質量%
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール 0.010質量%。
【0088】
前記出発材料をポリエステル袋に秤量導入して、水浴中で重合させて、次に、温度調節炉で温度調節する。続いて、前記ポリマーを粉砕して、押出機で脱気する。
【0089】
水浴中での重合のための温度プロファイル:
24時間60℃。
【0090】
温度調節炉内の温度プロファイル:
110℃にて6時間。
【0091】
前記標準PMMAの得られた分子量Mwは、GPC法で測定して152000g/molである。
【0092】
前記標準PMMAは、109℃のビカー軟化温度VET(ISO306−B50)を有している。
【0093】
複合体の製造
ポリマーブレンドa)(本発明による例)、もしくは変性PMMA(比較例1)、もしくは高い耐熱保形性を有する標準PMMA(比較例2)を、共押出機のノズルを通してMakrolon(登録商標)2607(ポリカーボネート層、層c)に相当)の片側に積層する。この積層工程は、アダプターノズルを通して共押出法によって行われる。ポリカーボネート層の厚みは900μmである一方、ポリマーブレンド層a)(本発明による例)、もしくは変性PMMA(比較例1)、もしくは高い耐熱保形性を有する標準PMMA(比較例2)の厚みは、120μmである。
【0094】
共押出試験のパラメータ(条件は、記載された変更を除いてすべての例で同じに維持した):
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
結果:
本発明による例および比較例の結果は、以下の表にまとめられている。比較例での反りが3.8mmもしくは3.7mmであるのに対して、本発明による複合体では、たった1.1mmの明らかに少ない反りであることが分かる(図1〜3)。特に、比較例1は、得られたメチルメタクリレート・スチレン・無水マレイン酸コポリマーが、それ自体すでに高い耐熱保形性を有している標準PMMAよりも確かに高い耐熱保形性を有しているが、反りの少ない積層体という課題は、前記コポリマーの使用によって解決することができないことも示している。
【0098】
前記結果は、さらに、本発明による複合体系もしくは本発明による多層シートの透過率の値およびヘイズ値が、比較例1および2のこれに関する値と比べて、測定精度の範囲において悪影響を及ぼさないことを示している。
【0099】
【表3】
【0100】
【表4】
図1
図2
図3