特許第6336061号(P6336061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6336061アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液、それを用いた積層体及びフレキシブルデバイス、並びにポリイミドフィルム及び積層体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336061
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液、それを用いた積層体及びフレキシブルデバイス、並びにポリイミドフィルム及び積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20180528BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20180528BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20180528BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20180528BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20180528BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20180528BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180528BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C08L79/08 A
   C08L33/00
   C08G73/10
   C08K5/3415
   B32B27/34
   B32B9/00 A
   C08J5/18CFG
   H05K1/03 610N
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-523430(P2016-523430)
(86)(22)【出願日】2015年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2015064189
(87)【国際公開番号】WO2015182419
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2016年11月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-107619(P2014-107619)
(32)【優先日】2014年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】宇野 真理
(72)【発明者】
【氏名】堀井 越生
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−266416(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/073591(WO,A1)
【文献】 特開昭55−004991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 79/08
C08G 73/10−73/16
B32B 9/00
B32B 27/34
C09D 179/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液であって、
前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は、粘度が1,200mPa・s〜20,000mPa・sであり、
前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸は、アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物とポリアミド酸とをポリアミド酸溶液中で反応させることにより得られたものであり、
前記ポリアミド酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることで得られたものであり、
前記表面調整剤がアクリル系化合物であることを特徴とするアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【請求項2】
前記表面調整剤の添加量が、アルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.0001重量部以上0.1重量部以下であることを特徴とする請求項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【請求項3】
アミド系溶媒を主溶媒として含有していることを特徴とする請求項1または2に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【請求項4】
前記アミド系溶媒は、N−メチル−2−ピロリドンであることを特徴とする請求項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【請求項5】
前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液中の0.5μm以上の異物量が100個/g以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【請求項6】
前記テトラカルボン酸二無水物が3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、
前記ジアミンが下記式(1)で表されるジアミンであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【化1】
(式中nは、1〜3の任意の整数である)
【請求項7】
前記アルコキシシラン化合物の添加量は、前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液中に含まれるポリアミド酸の重量を100重量部とした場合に、0.01〜0.50重量部であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【請求項8】
前記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させる際のジアミンとテトラカルボン酸二無水物の割合は、前記テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、前記ジアミンの総モル数で除したモル比が、0.980以上1.000未満であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を無機基板上に流延し、加熱しイミド化する工程によって得られることを特徴とするポリイミドフィルムと無機基板との積層体。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を無機基板上に流延し、熱イミド化する工程を含むことを特徴とするポリイミドフィルムと無機基板との積層体の製造方法であって、
前記熱イミド化における加熱開始温度は100〜150℃であることを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の積層体の製造方法によって得られた積層体の無機基板からポリイミドフィルムを剥離する工程を含むことを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか1項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液から得られるポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムが積層された無機基板とを有する積層体であって、前記ポリイミドフィルムの線熱膨張係数が20ppm/℃以下であることを特徴とする積層体。
【請求項13】
請求項1〜のいずれか1項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液から得られるポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルム上に形成された電子素子とを有することを特徴とするフレキシブルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液、アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いた積層体及びフレキシブルデバイス、並びにポリイミドフィルム及び積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、フラットパネルディスプレイ、電子ペーパー等の電子デバイスの分野では、基板としては、主としてガラス基板が用いられている。しかし、ガラス基板には重く壊れやすいという問題があるため、必ずしも理想的な基板と言えない。そこで、基板をガラスからポリマー材料へと置き換えたフレキシブルデバイスを実現しようとする検討が盛んに行われてきた。しかしながら、これらの技術の多くは新しい生産技術や装置を必要とするため、ポリマー材料を用いたフレキシブルデバイスは大量生産されるには至っていない。
【0003】
一方で、最近、効率的にフレキシブルデバイスを大量生産する近道として、ガラス基板上にポリイミド樹脂層を形成した積層体を用いることにより、通常のガラス基板用プロセスを用いてフレキシブルデバイスを生産することが提案されている。この積層体を用いるプロセスでは、最終段階でポリイミド樹脂層をガラス基板から分離してフレキシブルデバイスを得る。
【0004】
かかるプロセスにおいて積層体には、良好なハンドリングのための平滑性及び低反り性が求められる。すなわち、積層体のポリイミドフィルム層は、十分な表面の平滑性及びガラスと同程度の線熱膨張係数を有する必要がある。尚、ガラス基板として一般的に使用されるソーダライムガラス及び無アルカリガラスの線熱膨張係数はそれぞれ8〜9ppm/℃、3〜5ppm/℃程度である。また、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ製造時のプロセス温度は最高で300〜350℃に達する。一般的なポリイミドの線熱膨張係数はガラスよりも大きいため、かかるプロセスに好適な材料は自然と限られたものになる。例えば、特許文献1には、無機基板上に、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とパラフェニレンジアミン及び4,4”−ジアミノパラテルフェニル等とから得られるポリイミド前駆体の溶液を流延し、熱イミド化して積層体を得る方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、半導体デバイス、多層配線基板等の電気、電子材料の製造に有用な、沸点160℃以下の溶剤を全溶剤重量の30%以上含む溶剤に溶解させたポリイミド前駆体組成物が記載されている。このポリイミド前駆体組成物は、塗布膜の厚みムラを低減するために、界面活性剤が添加されている。また、加熱処理後のポリイミド被膜と基板との密着性を向上させるために、有機珪素化合物を接着助剤として添加している。
【0006】
特許文献3には、アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物とポリアミド酸とを溶液中で反応させることにより得られるアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液が記載されている。また、特許文献3には、前記ポリアミド酸が、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との反応によって得られ、前記芳香族テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、前記芳香族ジアミンの総モル数で除したモル比が特定の範囲であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2012−35583号(2012年2月23日公開)」
【特許文献2】日本国公開特許公報「特開2002−121382号(2002年4月23日公開)」
【特許文献3】国際公開第2014/123045号パンフレット(2014年8月14日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に示される様な低熱膨張性を示す特定構造のポリイミド前駆体は、無機基板上でポリイミドフィルムにする際に、一定以上の速度で昇温し加熱することによってイミド化させると、基板からポリイミドフィルムが剥離する場合があり、密着性に更なる改善の余地があった。一般にイミド化前のフィルムが厚いほど剥離は起こりやすくなるため、厚いポリイミドフィルムとガラスとの積層体を作製する場合には生産性を上げにくい。
【0009】
また、特許文献2では塗布膜厚の均一性を得るために、ポリイミド前駆体に界面活性剤を添加しているが、基板との密着性については検討されていなかった。また、ポリアミド酸の粘度は用途が異なるために低粘度であり、本発明の粘度領域とは異なるものであった。
【0010】
さらに、上述のような従来技術では、表面が平滑なフィルムを形成するために、フィルム化の際に低温(例えば、80℃以下)で乾燥を開始する必要がある場合があった。よって、高温で乾燥を開始できないために、バッチごとに加熱するオーブン等の冷却にも時間がかかり、フィルムを量産する際に製膜時間が長くなってしまうという問題があった。
【0011】
本発明は、上記の背景を鑑みてなされたものであり、高温で乾燥を開始しても、20μm程度の厚膜でも剥離することなく十分に表面が平滑であるポリイミドフィルムを製膜でき、また、無機基板との密着性に優れたポリイミドフィルムを得ることができるポリアミド酸溶液を提供することを目的とする。さらに、フレキシブルデバイスの生産に好適に用いることのできるポリイミドフィルムと無機基板との積層体、具体的には20ppm/℃以下の線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムと無機基板との積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の構成を以下に示す。
表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液であって、前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は、粘度が1,200mPa・s〜20,000mPa・sであり、前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸は、アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物とポリアミド酸とをポリアミド酸溶液中で反応させることにより得られたものであり、前記ポリアミド酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることで得られたものであることを特徴とするアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いることで、該溶液を無機基板上に流延し加熱してポリイミドフィルムを作製する際に、得られたポリイミドフィルムの線熱膨張係数が20ppm/℃以下であり、さらに、高温で乾燥を開始しても、表面の平滑性に優れたポリイミドフィルムが得られると共に、無機基板との密着性を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】無機基板上に流延したアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明について詳細に説明するが、これらは本発明の一態様であり、本発明はこれらの内容に限定されない。なお、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上B以下」を意味する。
【0016】
<アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液>
本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は、表面調整剤及びアルコキシシラン変性ポリアミド酸を含有する。表面調整剤を含有することで、本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸は、高温で乾燥を開始しても、無機基板との密着性にすぐれ、表面性に優れたポリイミドフィルムを得ることができる。
【0017】
まず、アルコキシシラン変性ポリアミド酸について説明する。アルコキシシラン変性ポリアミド酸は、アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物とポリアミド酸とを溶液中で反応させることにより得られる。また、ポリアミド酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを溶媒中で反応させることで得られる。ポリアミド酸の原料及び重合方法については後述する。なお、本明細書においては、アルコキシシラン変性ポリアミド酸を、「アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の固形分」とも称する。また、該アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の固形分の濃度を単に「固形分濃度」と称する場合もある。
【0018】
アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物による変性は、ポリアミド酸が溶媒に溶解したポリアミド酸溶液に、アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物を添加し、反応させることで行われる。アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノフェニルトリメトキシシラン、3−アミノフェニルトリメトキシシラン等があげられる。
【0019】
これらのアルコキシシラン化合物のポリアミド酸100重量部に対する配合割合は、0.01〜0.50重量部であることが好ましく、0.01〜0.10重量部であることがより好ましく、0.01〜0.05重量部であることがさらに好ましい。アルコキシシラン化合物の配合割合を0.01重量部以上とすることで、無機基板に対する剥離抑制効果は十分に発揮される。また、アルコキシシラン化合物の配合割合を0.50重量部以下とすることで、ポリアミド酸の分子量が十分に保たれるため、脆化等の問題が生じない。
【0020】
末端の大部分がアミノ基であるポリアミド酸に、アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物を添加すると、ポリアミド酸溶液の粘度が下がる。発明者らは、これはポリアミド酸中のアミド結合が解離した際に再生した酸無水物基とアルコキシシラン化合物のアミノ基とが反応し、変性反応が進行するとともに、ポリアミド酸の分子量が低下するためだと推定している。反応温度は、酸無水物基と水との反応を抑制しつつアルコキシシラン変性反応が進行しやすくするために、0℃以上80℃以下であることが好ましく、20℃以上60℃以下であることがより好ましい。ポリアミド酸の種類や溶媒が異なる場合には反応温度ごとに時間ごとの粘度変化を記録し、適当な反応条件を選択すれば良い。
【0021】
このようにして、ポリアミド酸の一部の末端をアルコキシシランに変性することで、無機基板上に塗った場合に加熱時のポリイミドフィルムの剥離(デラミ、発泡)を抑制できる。また、ポリアミド酸の末端の大部分がアミノ基になるように調整することで、ポリアミド酸の分解が起きた際にもアミド結合が生成しやすくなる。そのため、分子量が変化しにくくなり、アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液保管時の粘度変化を抑制できる。
【0022】
アルコキシシラン変性ポリアミド酸を製造する際の溶媒は特に制限されず、ポリアミド酸を製造する際に使用した溶媒をそのまま使用することが可能である。必要に応じて溶媒を除去あるいは加えても良い。また、上記のように得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸は、反応液の主溶媒がアミド系溶媒である溶液であればそのまま最終生成物であるアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液に用いることができるが、必要に応じて、溶媒を除去、あるいは添加してもよい。
【0023】
本発明においては、最終生成物であるアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液とした際の主溶媒がアミド系溶媒であることが好ましい。ここで、主溶媒とは溶液中の全溶媒中で最も重量が多い溶媒を示すこととする。つまり、「主溶媒がアミド系溶媒である」とは、溶液中の全溶媒のうち、アミド系溶媒の合計重量が、アミド系溶媒以外の溶媒の各重量よりも多いことを指す。本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は、密着性の観点から、全溶媒中、90重量%以上がアミド系溶媒であることが好ましく、95重量%以上がアミド系溶媒であることがより好ましく、98重量%以上がアミド系溶媒であることがさらに好ましい。アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液に用いることができるアミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。この中から2種以上を混合してもよい。アミド系溶媒以外の溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0024】
アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を基板上に流延し、イミド化してポリイミドフィルムを製造する工程において、溶媒の揮発によるポリイミドフィルムの白化等の欠陥を生じさせないことから、溶媒の沸点は150℃以上であることが好ましい。また、溶媒は2種類以上混合して用いてもよく、4−メチル2−ペンタノン、キシレン、トルエン、ベンゼン、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2−ビス−(2−メトキシエトキシ)エタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及び、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等を併用してもかまわない。
【0025】
アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の粘度は、1,200mPa・s〜20,000mPa・sであり、2,000mPa・s〜15,000mPa・sであることが好ましく、3,000mPa・s〜14,000mPa・sであることがより好ましい。粘度が1,200mPa・s以上であれば、十分な膜厚精度を確保することができる。また、粘度が20,000mPa・s以下であれば、ハンドリングの悪化及びゲル化を抑制することができる。粘度の測定条件は、粘度計 RE−215/U(東機産業株式会社製)を用い、JIS K7117−2:1999に記載の方法にて粘度を測定する。付属の恒温槽を23.0℃に設定し、測定温度は常に一定となるように調整する。
【0026】
本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は表面調整剤を含有している。図1は、無機基板上に流延したアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の状態を示す概略図である。図1(a)のように、従来技術においては、乾燥時に温度ムラに由来する表面張力のムラが生じることにより、乾燥後のポリイミドフィルム4において表面に凹凸が形成される場合があった。これは、無機基板2上に流延したアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液1において対流3が発生したことに起因すると考えられる。対流が発生した原因は、アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液1の粘度が低いこと及び溶媒の沸点が高いことである。
【0027】
表面の凹凸の原因となる対流を抑制するためには、膜厚を薄くすること(固形分濃度を上げることと関連する)、粘度を高くすること、塗膜内の温度差を少なくすること、温度差による表面張力のムラを抑制すること等が挙げられる。
【0028】
ここで、膜厚及び粘度を変化させた場合、ポリイミドフィルムの品質に影響が生じるおそれがある。また、塗膜内の温度差を少なくするためには、低温での乾燥、乾燥設備の工夫等が必要となる。低温で乾燥を行った場合、製造時間が長くなり得る。そこで、本発明では、乾燥時に塗膜内に温度差が発生した場合であっても、表面張力を均一にするために、表面調整剤を用いている。
【0029】
図1(b)は、本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を流延した場合を表している。本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液1は表面調整剤5を含有しているために、表面張力の差が低減され、対流3が抑制される。その結果、本発明によれば、乾燥後のポリイミドフィルム4の表面が平滑になる。これにより、本発明によれば、高温で乾燥を開始しても表面が平滑なポリイミドフィルムを提供することができる。
【0030】
そして、驚くべきことに、本発明者らは、表面調整剤を用いることにより、ポリイミドフィルムの表面を平滑にすることができるだけではなく、無機基板との密着性を向上させることができることを見出した。
【0031】
表面調整剤には、シリコン系化合物、フッ素系化合物、ビニル系化合物、アクリル系化合物等が挙げられる。高温加熱時に有毒物の発生がないことから、表面調整剤は、アクリル系化合物、シリコン系化合物であることが好ましい。さらに、リコート性(積層性)に優れることから、表面調整剤はアクリル系化合物であることが特に好ましい。また、これらの中から、極性と分子量とに基づき、樹脂との適度な相溶性を示し、泡抜け性(消泡性)が良好な表面調整剤を選択することがさらに好ましい。
【0032】
具体的には、アクリル系化合物より構成される表面調整剤としては、例えば、DISPARLON LF−1980、LF-1983、LF−1985(楠本化成株式会社製)、BYK−3440、BYK−3441、BYK−350、BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。シリコン系化合物を主成分とする表面調整剤としては、KP−112(信越化学株式会社製)、L−7001、L−7002(東レダウコーニング株式会社)等があげられる。
【0033】
表面調整剤の添加量はアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して、0.0001重量部以上0.1重量部以下が好ましく、0.0005重量部以上0.1重量部以下がさらに好ましく、0.001重量部以上0.05重量部以下であることが特に好ましく、0.005重量部以上0.02重量部以下であることが極めて好ましい。添加量が0.0001重量部以上であれば、ポリイミドフィルムの表面の平滑性改善に十分な効果を発揮するため好ましい。また、添加量が0.1重量部以下であれば、ポリイミドフィルムに濁りが発生しにくいため好ましい。なお本明細書中での表面調整剤は、一般的にフィルムの表面性を調整する役割を果たす添加剤を含み、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤等も含む。アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液に表面調整剤を添加する際、そのまま添加してもよいし、溶媒で希釈してから添加してもよい。表面調整剤を添加する時期は、最終のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液中に含まれれば、特に制限されず、例えば、ポリアミド酸を製造する際に添加しても良いし、アルコキシシランで変性する際に添加してもよいし、変性が終了した後に添加してもよい。本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は、溶液の特性に影響がない範囲で、一部がイミド化されていてもよい。
【0034】
<ポリアミド酸の原料>
前述のように、ポリアミド酸の原料にはテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が用いられる。
【0035】
テトラカルボン酸二無水物成分としては、特に制限されないが、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましく、1〜20ppm/℃の線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムと無機基板との積層体を得るためには、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと略記することもある。)を主成分とすることが好ましい。ジアミン成分としては、特に制限されないが、芳香族ジアミンを使用することが好ましく、中でも下記式(1)で表されるジアミンを主成分として用いることが好ましい。
【0036】
【化1】
(式中nは、1〜3の任意の整数である)
式(1)のジアミンは、パラフェニレンジアミン(以下PDAと略記することもある。)、4,4’−ジアミノベンジジン、及び4,4”−ジアミノパラテルフェニル(以下、DATPと略記することもある。)である。これらのジアミンの中でも、入手性の良いことからPDA、及びDATPが好ましい。
【0037】
テトラカルボン酸二無水物は、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とすることが好ましい。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとしてパラフェニレンジアミン等の剛直性の高い芳香族ジアミンとを含むアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いることで、低熱膨張性等のフレキシブルデバイス基板により好適な特性を付与することができる。
【0038】
さらに、本発明の特性を損なわない範囲で、PDA、4,4’−ジアミノベンジジン、及びDATP以外のジアミンを用いても良いし、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物を用いても良い。例えば、次のテトラカルボン酸二無水物やジアミンを、ポリアミド酸の原料全体に対してそれぞれ5モル%以下併用しても良い。
【0039】
テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、9,9’−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]フルオレン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,5,6−ピリジンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−スルホニルジフタル酸二無水物、パラテルフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、メタテルフェニル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。上記テトラカルボン酸二無水物の芳香環には、アルキル基置換及び/またはハロゲン置換された部位を有していても良い。
【0040】
ジアミンとしては、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン及び9,9−ビス(アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0041】
<ポリアミド酸の重合方法>
本発明に用いるポリアミド酸は、溶液重合により製造可能である。すなわち、原料である1種または2種以上のテトラカルボン酸二無水物成分、及び1種または2種以上のジアミン成分を、溶媒中で反応させポリイミド前駆体であるポリアミド酸を得る。
【0042】
本発明に用いるポリアミド酸は、貯蔵安定性を向上させる目的からポリアミド酸末端がカルボキシル基よりもアミノ基で占められている比率を高くすることが好ましい。即ち、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比は、好ましくは0.980以上1.000未満であり、より好ましくは0.995以上0.998以下である。テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比を1.000未満とすることでポリアミド酸末端がアミノ基で占められる割合が酸無水物基で占められる割合よりも高くなり、貯蔵安定性を改善することができる。また、強靭なポリイミドフィルムを得るためにはテトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比を1.000に近づけ十分に分子量を高める必要があるが、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比が0.980以上であれば、丈夫なポリイミドフィルムを得ることができる。
【0043】
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、一般的にポリアミド酸を合成する際に用いられる溶媒であれば良いが、ポリアミド酸を合成する原料及びポリアミド酸の溶解性に優れることから、アミド系溶媒が好ましい。本発明におけるアミド系溶媒とは、アミド構造を含む有機溶媒を意味する。アミド系溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルイソ酪酸アミド、1−エチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。これら溶媒を適宜選択して用いることで、ポリアミド酸溶液の特性や無機基板上でイミド化した後のポリイミドフィルムの特性を制御することができる。本発明においては、ポリイミドフィルムと基板との密着性の観点から、最終生成物であるアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液はアミド系溶媒を含有することが好ましい。従って、反応を簡便にするため、ポリアミド酸を合成する際も主溶媒としてアミド系溶媒を使用することが好ましい。
【0044】
ポリアミド酸を重合するために用いられる反応装置は、反応温度を制御するための温度調整装置を備えていることが好ましい。ポリアミド酸を重合する際の反応温度として0℃以上80℃以下が好ましく、さらに、20℃以上60℃以下であることが、重合の逆反応であるアミド結合の解離を抑制し、しかもポリアミド酸の生成反応が進みやすく、粘度が上昇しやすいことから好ましい。また、重合後に粘度、すなわち分子量調整を目的として70〜90℃程度で1〜24時間加熱処理を行っても良い。これは、従来クッキングと称されている操作であり、加熱処理をおこなうことでアミド酸の解離、及び系中の水との反応による酸無水物の失活を促進し、ポリアミド酸溶液をその後の操作に適した粘度にすることを目的としている。未反応のテトラカルボン酸二無水物が失活しやすくなるため、重合反応とクッキングとを分けて行うことが好ましいが、最初から反応温度を70〜90℃にして重合反応とクッキングとを一括して行うことも可能である。
【0045】
ポリアミド酸溶液中のポリアミド酸の重量%は、溶媒中にポリアミド酸が好ましくは5〜30重量%、より好ましくは8〜25重量%、更に好ましくは、10〜20重量%溶解されている。前記濃度であれば、未溶解原料の異常重合に起因するゲル化を抑制し、しかも、ポリアミド酸の生成反応が進みやすいことから好ましい。
【0046】
このように得られたポリアミド酸の一部の末端を、前述した方法により、アルコキシシランへ変性することによって、アルコキシシラン変性ポリアミド酸を得ることができる。
【0047】
<表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の後処理>
前述のようにして得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は、必要に応じて、異物を低減するためにろ過処理を実施する。ろ過に用いるフィルターは、ろ過する溶液が材質を侵さないものであれば、特に制限されず、適した材質のフィルターを適宜選択することができる。フィルター孔径は目的に応じて選択することができ、特に制限されないが、0.01μm〜3μmであることが好ましく0.1μm〜1μmであることがさらに好ましい。必要に応じて、繰り返してろ過を実施してもよいし、2種類以上のフィルターを組み合わせて多段ろ過してもよい。
【0048】
表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液をろ過することで、表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液中の異物を減少させることが可能である。表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液中の異物の個数は、光散乱式液中パーティクルカウンターを用いて測定した値が、0.5μm以上の異物が100個/g以下であることが好ましく、50個/g以下であることがより好ましい。
【0049】
なお、ろ過を実施する場合は、一部の表面調整剤がろ過によって除去されることを考慮し、予め表面調整剤の含有量を調整しておくことが好ましい。ろ過を実施する場合の表面調整剤の含有量は、0.02重量部以上であることが好ましく、0.05重量部以上であることがより好ましい。例えば、ろ過を実施したアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を120℃にて乾燥開始する場合は、表面調整剤の含有量は0.02重量部以上であることが好ましい。また、ろ過を実施したアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を150℃にて乾燥開始する場合は、表面調整剤の含有量は0.05重量部以上であることが好ましい。
【0050】
<アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の流延及び熱イミド化>
ポリイミドフィルムと無機基板とからなる積層体は、前述したアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、無機基板上に流延し、加熱しイミド化することで製造することができる。
【0051】
無機基板としては、ガラス基板や各種金属基板があげられるが、ガラス基板が好適である。ガラス基板には、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス等が使用されている。特に、薄膜トランジスタの製造工程では無アルカリガラスが一般的に使用されているため、無機基板としては無アルカリガラスがより好ましい。用いる無機基板の厚みとしては、0.4〜5.0mmが好ましい。無機基板の厚みが0.4mm以上であれば、無機基板のハンドリングが容易になるため、好ましい。また、無機基板の厚みが5.0mm以下であれば、基板の熱容量が小さくなり加熱または冷却工程での生産性が向上するため好ましい。
【0052】
アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の流延方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、グラビアコート法、スピンコート法、シルクスクリーン法、ディップコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ダイコート法等の公知の流延方法を挙げることが出来る。
【0053】
アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を加熱し、イミド化することによってポリイミドフィルムを得る際の加熱温度、及び、加熱時間は適宜決めることができ、特性に影響を与えない限り特に制限されない。以下に一例を示す。
【0054】
先ず、無機基板上にアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を流延し、60〜200℃の温度で3〜120分加熱することが好ましい。このとき加熱開始温度は、ポリイミドフィルムと無機基板との積層体の生産効率を上げる観点から100〜150℃であることが好ましい。さらに低熱膨張特性を発現させる観点から110〜130℃の温度から加熱を開始し、この温度での加熱時間が10〜60分であることが特に好ましい。該加熱開始温度は、換言すれば、乾燥開始温度である。また、例えば100℃にて30分、続いて120℃にて30分のように2段階の温度で乾燥してもよい。
【0055】
次に、イミド化を進めるため、温度200〜500℃で3分〜300分加熱する。このとき低温から徐々に高温にし、最高温度まで昇温することが好ましい。昇温速度は2℃/分〜10℃/分であることが好ましく、最高温度は300〜500℃の温度範囲であることが好ましい。最高温度が300℃以上であれば、十分に熱イミド化が進行するため好ましい。また、最高温度が500℃以下であれば、ポリイミドの熱劣化を抑制できるため好ましい。また、最高温度に到達するまでに任意の温度で任意の時間保持してもよい。
【0056】
加熱雰囲気は空気下、減圧下、又は窒素等の不活性ガス中で行うことができる。また、加熱装置としては、熱風オーブン、赤外オーブン、真空オーブン、イナートオーブン、ホットプレート等の公知の装置を用いることができる。
【0057】
本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液には、必要に応じてイミド化触媒を加えてから、加熱しイミド化しても良い。イミド化触媒としては、3級アミンを用いることが好ましい。3級アミンとしては複素環式の3級アミンが更に好ましい。複素環式の3級アミンの好ましい具体例としては、ピリジン、2,5−ジエチルピリジン、ピコリン、キノリン、イソキノリン等を挙げることができる。イミド化触媒の使用量は、アルコキシシラン変性ポリアミド酸の反応部位に対して0.01〜2.00当量、特に0.02〜1.20当量であることが好ましい。イミド化触媒が0.01当量以上であれば、十分に触媒の効果が得られるため好ましい。また、イミド化触媒が2.00当量以下であれば、反応に関与しない触媒の割合が少ないため好ましい。
【0058】
本発明に係るアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液に加工特性や各種機能性を付与するために、その他に様々な有機又は無機の低分子又は高分子化合物を配合してもよい。例えば、染料、可塑剤、無機微粒子、増感剤等を用いることができる。無機微粒子としては、微粒子状の二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化アルミニウム粉末等の無機酸化物粉末、及び微粒子状の炭酸カルシウム粉末、リン酸カルシウム粉末等の無機塩粉末を挙げることができる。本発明の分野ではこれらの無機微粒子の粗大な粒が次工程以降での欠陥の原因となる可能性があるため、これらの無機微粒子は、均一に分散されることが好ましい。これらは多孔質や中空構造であってもよい。これらの無機微粒子の機能としては顔料またはフィラー等が挙げられる。また、その形態は繊維等であってもよい。
【0059】
なお、これらの有機又は無機の低分子又は高分子化合物は、上述の異物よりも小さいものであり、その大きさは、0.5μm未満であることが好ましい。
【0060】
本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液より製造されるポリイミドフィルムは、低線熱膨張特性を有する。線熱膨張特性を表す値として、例えば熱機械分析(TMA)により線熱膨張係数を測定する場合、以下の方法により測定できる。まず、ポリイミドフィルムの膜厚を測定した後、該ポリイミドフィルムを10mm×3mmのサイズにカットする。得られたフィルム試料の長辺に荷重29.4mNを加え、窒素雰囲気下にて10℃/minで20℃から500℃まで一旦昇温させた後、20℃まで冷却し、さらに500℃まで10℃/minで昇温させる。このときの2回目の昇温時の100℃から300℃における単位温度あたりの試料の歪の変化量から線熱膨張係数を求めることができる。この測定方法により求めた線熱膨張係数がガラスと同等の線熱膨張係数を有するという観点から1ppm/℃以上20ppm/℃以下であることが好ましく、1ppm/℃以上10ppm/℃以下であることがさらに好ましく、3ppm/℃以上10ppm/℃以下であることが特に好ましい。なお本明細書における線熱膨張係数は、上記測定方法によって求めた100℃から300℃の範囲での線熱膨張係数を示すこととする。
【0061】
本発明におけるポリイミドフィルムの厚みは、5〜50μmであることが好ましい。ポリイミドフィルムの厚みが5μm以上であれば、基板フィルムとして必要な機械強度が確保できる。また、ポリイミドフィルムの厚みが50μm以下であれば、ポリイミドフィルムと無機基板との積層体を自然剥離せずに得ることができる。
【0062】
本発明のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液より製造されるポリイミドフィルムのヘイズの上限値は、5.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがさらに好ましく、1.5%以下であることが特に好ましい。下限値は特に制限されない。1.5%以下であると、フレキシブルデバイスにした際の好ましい外観が得られる。ヘイズ値は日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K−7105記載の方法により測定される。本発明により得られた積層体は、貯蔵安定性及びプロセス整合性に優れており、公知の液晶パネル用薄膜トランジスタプロセスによるフレキシブルデバイスの製造に好適に用いることができる。
【0063】
このようにアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を無機基板上に流延し、加熱してイミド化すること及びポリアミド酸骨格に特定の構造を選択することによって、線熱膨張係数が1〜20ppm/℃であるポリイミドフィルムと無機基板とからなる積層体を得ることができる。そしてこの積層体を用いることで、優れた特性を有するフレキシブルデバイスを得ることができる。
【0064】
本発明の表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液より製造されるポリイミドフィルムは、無機基板との密着性に優れている。表面調整剤を添加しない場合と比較して、ピール強度の向上が期待される。例えば、主溶媒として、N−メチル−2−ピロリドンを用いた場合は、ピール強度が、0.15N/cm以上であることが好ましい。ピール強度が0.15N/cm以上であれば、電子素子形成時の剥離を抑制することができる。ピール強度の測定方法はASTM D1876−01規格に従う。
【0065】
<電子素子形成及び無機基板からのポリイミドフィルムの剥離>
本発明の積層体を用いることで、優れた特性を有するフレキシブルデバイスを得ることができる。すなわち、本発明の積層体のポリイミドフィルム上に、電子素子を形成し、その後、該ポリイミドフィルムを無機基板から剥離することでフレキシブルデバイスを得ることができる。さらに、上記工程は、既存の無機基板を使用した生産装置をそのまま使用できるという利点があり、フラットパネルディスプレイ、電子ペーパー等の電子デバイスの分野で有効に使用でき、大量生産にも適している。
【0066】
また、本発明には、上述の積層体の製造方法によって得られた積層体の無機基板からポリイミドフィルムを剥離する工程を含むポリイミドフィルムの製造方法も包含される。
【0067】
無機基板からポリイミドフィルムを剥離する方法には、公知の方法を用いることができる。例えば、手で引き剥がしても良いし、駆動ロール、ロボット等の機械装置を用いて引き剥がしても良い。更には、無機基板とポリイミドフィルムとの間に剥離層を設ける方法でも良い。また、例えば、多数の溝を有する無機基板上に酸化シリコン膜を形成し、エッチング液を浸潤させることによって剥離する方法、及び無機基板上に非晶質シリコン層を設けレーザー光によって分離させる方法を挙げることが出来る。
【0068】
本発明のフレキシブルデバイスは、上述のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液から得られるポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルム上に形成された電子素子とを有する。本発明のフレキシブルデバイスは、ポリイミドフィルムが優れた耐熱性と低線熱膨張係数とを有しており、また軽量性、耐衝撃性に優れるだけでなく、反りが改善されたという優れた特性を有している。特に反りに関しては、無機基板と同等の低線熱膨張係数を有するポリイミドフィルムを無機基板上に直接、流延、積層する方法を採用することにより、反りが改善されたフレキシブルデバイスを得ることができる。
【0069】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0070】
〔1〕表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液であって、前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は、粘度が1,200mPa・s〜20,000mPa・sであり、前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸は、アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物とポリアミド酸とをポリアミド酸溶液中で反応させることにより得られたものであり、前記ポリアミド酸は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させることで得られたものであることを特徴とするアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【0071】
〔2〕前記表面調整剤がアクリル系化合物またはシリコン系化合物であることを特徴とする〔1〕に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【0072】
〔3〕前記表面調整剤の添加量が、アルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.0001重量部以上0.1重量部以下であることを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【0073】
〔4〕アミド系溶媒を主溶媒として含有していることを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【0074】
〔5〕前記アミド系溶媒は、N−メチル−2−ピロリドンであることを特徴とする〔4〕に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【0075】
〔6〕前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液中の0.5μm以上の異物量が100個/g以下であることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【0076】
〔7〕前記テトラカルボン酸二無水物が3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、前記ジアミンが下記式(1)で表されるジアミンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【0077】
【化2】
(式中nは、1〜3の任意の整数である)
〔8〕前記アルコキシシラン化合物の添加量は、前記アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液中に含まれるポリアミド酸の重量を100重量部とした場合に、0.01〜0.50重量部であることを特徴とする〔1〕〜〔7〕のいずれか1つに記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【0078】
〔9〕前記ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させる際のジアミンとテトラカルボン酸二無水物の割合は、前記テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、前記ジアミンの総モル数で除したモル比が、0.980以上1.000未満であることを特徴とする〔1〕〜〔8〕のいずれか1つに記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液。
【0079】
〔10〕〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を無機基板上に流延し、加熱しイミド化する工程によって得られることを特徴とするポリイミドフィルムと無機基板との積層体。
【0080】
〔11〕〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を無機基板上に流延し、熱イミド化する工程を含むことを特徴とするポリイミドフィルムと無機基板との積層体の製造方法であって、前記熱イミド化における加熱開始温度は100〜150℃であることを特徴とする積層体の製造方法。
【0081】
〔12〕〔11〕に記載の積層体の製造方法によって得られた積層体の無機基板からポリイミドフィルムを剥離する工程を含むことを特徴とするポリイミドフィルムの製造方法
〔13〕〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液から得られるポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルムが積層された無機基板とを有する積層体であって、前記ポリイミドフィルムの線熱膨張係数が20ppm/℃以下であることを特徴とする積層体。
【0082】
〔14〕〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液から得られるポリイミドフィルムと、該ポリイミドフィルム上に形成された電子素子とを有することを特徴とするフレキシブルデバイス。
【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施形態の変更が可能である。
【0084】
(特性の評価方法)
(異物測定)
あらかじめ異物量を測定したN−メチル−2−ピロリドンを容量100mLのクリーンボトルに65g程度に計量し、このクリーンボトルにさらに実施例及び比較例で得られた各溶液を15g程度計量する。このクリーンボトルを撹拌脱泡機(THINKY製:AR−250)にて回転数2000rpmで撹拌3分、脱泡27分処理し、測定用の希釈された溶液を調整した。この調整した溶液を光散乱式パーティクルカウンター(スペクトリス製:SL1500、最小可測粒径:0.2μm)で測定した。1回の測定量は10mL(初めの1mLは破棄)とし6回測定(合計54mL)を実施した。得られた測定値から、下記式に従い溶液1gあたりに含まれる0.5μm以上の異物の個数を算出した。
【0085】
溶液1gあたりに含まれる異物の個数=
(A−(B×Wb/(Wa+Wb)))/54/(Wa/(Wa+Wb))
ただし、式に用いた記号は以下のことを表す。
A:0.5μm以上の異物の個数の測定値
B:希釈に用いたN−メチル−2−ピロリドンの0.5μm以上の異物の個数の測定値
Wa:実施例で得られた溶液を計量した重量(g)
Wb:希釈に用いたN−メチル−2−ピロリドンを計量した重量(g)
なお、本測定に用いたパーティクルカウンターは、使用前にJIS B9925の規格に従い校正を実施した。
【0086】
また、後述の表1〜3にて異物量が記載されていない実施例及び比較例では、異物の測定は行われていない。
【0087】
(水分)
容量滴定カールフィッシャー水分計 890タイトランド(メトロームジャパン株式会社製)を用いて、JIS K0068の容量滴定法に記載の方法にてアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液中の水分を測定した。ただし、アクアミクロンGEX(三菱化学式会社製)とN−メチルピロリドンとの1:4の混合溶液を滴定溶剤として用いた。
【0088】
(粘度)
粘度計 RE−215/U(東機産業株式会社製)を用い、JIS K7117−2:1999に記載の方法にて粘度を測定した。付属の恒温槽を23.0℃に設定し、測定温度は常に一定にした。
【0089】
(線熱膨張係数)
線熱膨張係数は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMA/SS7100を用い、引張荷重法による熱機械分析で評価した。実施例及び比較例のポリイミドフィルムを無機基板であるガラス基板から引き剥がして、10mm×3mmの試料を作製し、長辺に29.4mNの荷重を加え、10℃/minで20℃から500℃まで一旦昇温させた後、20℃まで冷却し、さらに500℃まで10℃/minで昇温したときの、2回目の昇温時の100℃〜300℃の範囲における単位温度あたりの試料の歪の変化量を線熱膨張係数とした。
【0090】
(ポリイミドフィルムのヘイズ)
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K−7105記載の方法により測定した。
【0091】
(ポリイミドフィルムの表面性の評価)
実施例及び比較例に記載の方法にて、ポリイミドフィルム積層体を作成し、その表面の平滑性を目視にて観察し、評価した。評価基準は以下のようにした。
A:フィルム表面に目視にて観察できる凹凸がない。
B:フィルム表面の端部に目視にて確認できる凹凸がある。
C:フィルム表面の端部及び端部以外の一部に目視にて確認できる凹凸がある。
D:フィルム表面全体に目視にて確認できる凹凸がある。
【0092】
(ピール強度)
ASTM D1876−01規格に従い、積層体をカッターナイフにて10mm幅に切断し、東洋精機製引張試験機(ストログラフVES1D)を用いて、23℃55%RH条件下、引張速度50mm/minにて50mm引き剥がした場合の90°剥離強度の平均値をピール強度として評価した。
【0093】
なお、自然に剥離することはなく、ガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であるが、フィルム特性の測定できるポリイミドフィルムが得られなかった場合は、後述の表1〜3において、ピール強度を記載していない。また、積層体においてポリイミドフィルムがガラス板から剥離しており、ピール強度を測定可能なポリイミドフィルムが得られなかった場合、「×」と評価した。
【0094】
(実施例1)
<ポリアミド酸溶液の製造>
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコにN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと称することがある)を850.0g入れ、パラフェニレンジアミン(以下、PDAと称することがある)40.1g、4,4’‐ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAと称することがある)0.6gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと称することがある)109.3gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約90℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度18,400mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、このポリアミド酸溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.995である。
【0095】
<アルコキシシラン化合物による変性>
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、γ―APSと称することがある)の1%NMP溶液を7.5g加え、2時間攪拌した。その後、固形分濃度が13.0重量%となるようにNMPを添加して希釈し、23℃で粘度7,200mPa・sであり水分が3000ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの配合割合(添加量)は、ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部である。
【0096】
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1980(楠本化成株式会社製)を、アルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。得られた表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとを用いて多段ろ過した。異物の評価結果について表1に示す。
【0097】
<表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の流延及びイミド化>
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で10分間加熱し、さらに180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0098】
(実施例2)
実施例1で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)を用いて、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0099】
(実施例3)
実施例1で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)にNMPを加えて固形分濃度が12.5重量%となるように希釈し、粘度が5000mPa・sの表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で10分間加熱し、さらに180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0100】
(実施例4)
実施例1で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)にNMPを加えて固形分濃度が11.5重量%となるように希釈し、粘度が3000mPa・sの表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが18μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で10分間加熱し、さらに180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み18μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0101】
(実施例5)
表面調整剤の量をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.005重量部としたこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法により、表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0102】
(実施例6)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1985(楠本化成株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0103】
(実施例7)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1985(楠本化成株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.005重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0104】
(実施例8)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−3440(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加した以外は実施例1と同様の方法で得られた表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)を孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとを用いて多段ろ過した。異物の評価結果について表1に示す。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法で厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0105】
(実施例9)
実施例8で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)を用いて、実施例2と同様の方法で厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0106】
(実施例10)
実施例8で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)にNMPを加えて固形分濃度が12.5重量%となるように希釈し、粘度が5000mPa・sの表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法で厚み18μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0107】
(実施例11)
実施例8で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)にNMPを加えて固形分濃度が11.5重量%となるように希釈し、粘度が3000mPa・sの表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法で厚み19μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0108】
(実施例12)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−3440(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.005重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0109】
(実施例13)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−3441(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0110】
(実施例14)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−3441(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.005重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0111】
(実施例15)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−350(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0112】
(実施例16)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0113】
(実施例17)
<ポリアミド酸溶液の製造>
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコにNMPを850.0g入れ、PDA39.8g、ODA0.6gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.6gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約90℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度34,200mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物類の総モル数を、ジアミン類の総モル数で除したモル比は、1.05である。
【0114】
<アルコキシシラン化合物による変性>
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次にγ―APSの1%NMP溶液を7.5g加え、2時間攪拌し、その後、固形分濃度が11.2重量%となるようにNMPを添加して希釈し、23℃で粘度6,700mPa・sであり水分が2200ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの配合割合(添加量)は、ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部である。
【0115】
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1980(楠本化成株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。
【0116】
得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。ただし、表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0117】
(実施例18)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加した以外は実施例4と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0118】
(実施例19)
孔径が0.5μmのフィルターで表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過を実施した以外は実施例18と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0119】
(実施例20)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.02重量部となるように添加した以外は実施例18と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0120】
(実施例21)
孔径が0.5μmのフィルターで表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過を実施した以外は実施例20と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0121】
(実施例22)
孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとで表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の多段ろ過を実施した以外は実施例20と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0122】
(実施例23)
実施例20で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0123】
(実施例24)
実施例22で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0124】
(実施例25)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部となるように添加した以外は実施例18と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0125】
(実施例26)
孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとで表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の多段ろ過を実施した以外は実施例25と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0126】
(実施例27)
実施例25で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0127】
(実施例28)
実施例26で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0128】
(実施例29)
<ポリアミド酸溶液の製造>
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコに1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、DMIと称することがある)170.0gを入れ、PDA8.01g、ODA0.12gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA21.76gを加え、窒素雰囲気下で50℃で加熱しながら270分間攪拌を続けて、23℃で粘度73,300mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、このポリアミド酸溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.990である。
【0129】
<アルコキシシラン化合物による変性>
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。γ―APSの1%DMI溶液を1.50g加え、2時間攪拌した。その後、固形分濃度が10.8重量%となるようにDMIを添加して希釈し、23℃で粘度7,000mPa・sであり水分が3000ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの配合割合(添加量)は、ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部である。得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1980(楠本化成株式会社製)を、アルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。
【0130】
<表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の流延及びイミド化>
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で120℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0131】
(比較例1)
実施例1で得られた表面調整剤を添加する前のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとを用いて多段ろ過した。得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて、実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、得られたポリイミドフィルム加熱中に自然に剥離することはないが、厚みムラによる、目視で確認できる凸凹がポリイミドフィルムの表面全体に存在し、フィルム特性の測定できるポリイミドフィルムが得られなかった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0132】
(比較例2)
実施例1で得られた表面調整剤を添加する前のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形のFPD用のガラス基板として一般的に用いられている無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分、さらに120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で20分間加熱し、続けて180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板とは適度な剥離強度を有しており、加熱中に自然に剥離することはないが、無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0133】
(比較例3)
実施例1で得られた表面調整剤を添加する前のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形のFPD用のガラス基板として一般的に用いられている無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から150℃まで4℃/分で昇温し、150℃で20分間加熱し、続けて150℃から350℃まで4℃/分で昇温し、350℃で20分間加熱し、続けて350℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で40分間加熱し厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板とは適度な剥離強度を有しており、イミド化の際に自然に剥離することはないが、無アルカリガラスからポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0134】
(比較例4)
溶媒にNMPの代わりにN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと称することがある)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た後、γ―APSを添加せずに作業しやすい粘度までN,N−ジメチルアセトアミドで希釈し、粘度13600mPa・sであり水分が1100ppmを示すポリアミド酸溶液を得た。得られた溶液を比較例2と同様の方法で無アルカリガラス板上に流延及びイミド化した。しかし、得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、積層体の一部のポリイミドフィルムが無アルカリガラス板から剥離していた。得られたポリイミドフィルムの特性について表3に示す。
【0135】
(比較例5)
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコにNMPを850.0g入れ、PDA40.1g、ODA0.6gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.3gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約90℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度18,400mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.995である。その後、固形分濃度が11.2重量%となるようにNMPを添加して希釈し、23℃で粘度7,200mPa・sであり水分が2500ppmを示すポリアミド酸溶液を得た。
【0136】
得られたポリアミド酸溶液より実施例1と同様の方法で、加熱し、イミド化した。ただし、アルコキシシラン化合物による変性、表面調整剤の添加及びろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、積層体の大部分のポリイミドフィルムが無アルカリガラス板から剥離していた。評価結果を表3に示す。ただし、ピール強度、ヘイズ、線熱膨張係数を測定可能なポリイミドフィルムが得られなかったため、測定は実施していない。
【0137】
(比較例6)
比較例5で得られたポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1980(楠本化成株式会社製)をポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有ポリアミド酸より実施例1と同様の方法で、加熱し、イミド化した。ただし、アルコキシシラン化合物による変性及びろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、積層体の大部分のポリイミドフィルムが無アルカリガラス板から剥離していた。評価結果を表3に示す。ただし、ピール強度、ヘイズ、線熱膨張係数を測定可能なポリイミドフィルムが得られなかったため、測定は実施していない。
【0138】
(比較例7)
<ポリアミド酸溶液の製造>
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコにNMPを850.0g入れ、PDA40.1g、ODA0.6gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.3gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約90℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度25,600mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、このポリアミド酸溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.995である。
【0139】
<アルコキシシラン化合物による変性>
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、γ−GPSと称することがある)の1%NMP溶液を7.5g加え、2時間攪拌した。その後、固形分濃度が11.0重量%となるようにNMPを添加して希釈し、23℃で粘度3,300mPa・sであり水分が2500ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―GPSの配合割合(添加量)は、ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部である。
【0140】
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社)を、アルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.02重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。
【0141】
<表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の流延及びイミド化>
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で10分間加熱し、さらに180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0142】
(比較例8)
比較例7で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0143】
(比較例9)
γ−GPSの代わりにビニルトリメトキシシラン(以下、VSと称することがある)を用いたこと以外は比較例7と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察すると、ポリイミドフィルムが無アルカリガラス板からほぼ全面で剥離しており、大きな凹凸のある波打ったポリイミドフィルムしか得られなかったため、フィルム特性の測定は実施しなかった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0144】
(比較例10)
比較例9で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察すると、ポリイミドフィルムが無アルカリガラス板からほぼ全面で剥離しており、大きな凹凸のある波打ったポリイミドフィルムしか得られなかったため、フィルム特性の測定は実施しなかった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0145】
(比較例11)
表面調整剤の添加を実施しなかったこと以外は実施例29と同様に厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、得られたポリイミドフィルム加熱中に自然に剥離することはないが、厚みムラによる、目視で確認できる凸凹がポリイミドフィルムの表面全体に存在し、フィルム特性の測定できるポリイミドフィルムが得られなかった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
実施例1〜29のポリイミドフィルムは、20μm程度の厚みでもポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生せず、ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。これに対して比較例4〜6、9及び10のポリイミドフィルムは、20μm程度の厚みでもポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができなかった。また、比較例7のポリイミドフィルムは、ピール強度が小さく、ガラス板から剥離しやすかった。
【0149】
また、実施例1〜29のポリイミドフィルムは無アルカリガラスから剥離した後も、カールしたり反ったりすることはなかった。これらのポリイミドフィルムの線熱膨張係数が20ppm/℃以下であり、無アルカリガラスの線熱膨張係数と近いためである。一方、比較例8のポリイミドフィルムは、線熱膨張係数が20ppm/℃を超えていた。
【0150】
実施例1〜29のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は表面調整剤を含有していることにより、表面調整剤を含有しないものに比べてピール強度が高く、かつ、目視で確認される凹凸がない、十分に表面の平滑性が良好であるポリイミドフィルムを得ることができた。また、表面調整剤を含有しているにも関わらず、ヘイズが1.5%以下であり、濁りのないポリイミドフィルムを得ることができた。一方、比較例1及び11のポリイミドフィルムは、目視で確認される凹凸が表面全体に存在した。
【0151】
また、実施例1〜29のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は、120℃以上の乾燥開始温度であっても、上述のような良好なポリイミドフィルムを得ることができた。一方、比較例1、5〜11のポリイミドフィルムでは、120℃以上の乾燥開始温度とした場合、上述のような目視で確認される凹凸を有し、且つ/または剥離しやすかった。比較例2〜4のポリイミドフィルムは、乾燥開始温度を80℃とする必要があり、製膜時間が長くなった。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、例えば、フラットパネルディスプレイ、電子ペーパー等の電子デバイスの分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0153】
1 アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液
2 無機基板
3 対流
4 ポリイミドフィルム
5 表面調整剤
図1