【実施例】
【0083】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施形態の変更が可能である。
【0084】
(特性の評価方法)
(異物測定)
あらかじめ異物量を測定したN−メチル−2−ピロリドンを容量100mLのクリーンボトルに65g程度に計量し、このクリーンボトルにさらに実施例及び比較例で得られた各溶液を15g程度計量する。このクリーンボトルを撹拌脱泡機(THINKY製:AR−250)にて回転数2000rpmで撹拌3分、脱泡27分処理し、測定用の希釈された溶液を調整した。この調整した溶液を光散乱式パーティクルカウンター(スペクトリス製:SL1500、最小可測粒径:0.2μm)で測定した。1回の測定量は10mL(初めの1mLは破棄)とし6回測定(合計54mL)を実施した。得られた測定値から、下記式に従い溶液1gあたりに含まれる0.5μm以上の異物の個数を算出した。
【0085】
溶液1gあたりに含まれる異物の個数=
(A−(B×Wb/(Wa+Wb)))/54/(Wa/(Wa+Wb))
ただし、式に用いた記号は以下のことを表す。
A:0.5μm以上の異物の個数の測定値
B:希釈に用いたN−メチル−2−ピロリドンの0.5μm以上の異物の個数の測定値
Wa:実施例で得られた溶液を計量した重量(g)
Wb:希釈に用いたN−メチル−2−ピロリドンを計量した重量(g)
なお、本測定に用いたパーティクルカウンターは、使用前にJIS B9925の規格に従い校正を実施した。
【0086】
また、後述の表1〜3にて異物量が記載されていない実施例及び比較例では、異物の測定は行われていない。
【0087】
(水分)
容量滴定カールフィッシャー水分計 890タイトランド(メトロームジャパン株式会社製)を用いて、JIS K0068の容量滴定法に記載の方法にてアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液中の水分を測定した。ただし、アクアミクロンGEX(三菱化学式会社製)とN−メチルピロリドンとの1:4の混合溶液を滴定溶剤として用いた。
【0088】
(粘度)
粘度計 RE−215/U(東機産業株式会社製)を用い、JIS K7117−2:1999に記載の方法にて粘度を測定した。付属の恒温槽を23.0℃に設定し、測定温度は常に一定にした。
【0089】
(線熱膨張係数)
線熱膨張係数は、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製TMA/SS7100を用い、引張荷重法による熱機械分析で評価した。実施例及び比較例のポリイミドフィルムを無機基板であるガラス基板から引き剥がして、10mm×3mmの試料を作製し、長辺に29.4mNの荷重を加え、10℃/minで20℃から500℃まで一旦昇温させた後、20℃まで冷却し、さらに500℃まで10℃/minで昇温したときの、2回目の昇温時の100℃〜300℃の範囲における単位温度あたりの試料の歪の変化量を線熱膨張係数とした。
【0090】
(ポリイミドフィルムのヘイズ)
日本電色工業製積分球式ヘイズメーター300Aにより、JIS K−7105記載の方法により測定した。
【0091】
(ポリイミドフィルムの表面性の評価)
実施例及び比較例に記載の方法にて、ポリイミドフィルム積層体を作成し、その表面の平滑性を目視にて観察し、評価した。評価基準は以下のようにした。
A:フィルム表面に目視にて観察できる凹凸がない。
B:フィルム表面の端部に目視にて確認できる凹凸がある。
C:フィルム表面の端部及び端部以外の一部に目視にて確認できる凹凸がある。
D:フィルム表面全体に目視にて確認できる凹凸がある。
【0092】
(ピール強度)
ASTM D1876−01規格に従い、積層体をカッターナイフにて10mm幅に切断し、東洋精機製引張試験機(ストログラフVES1D)を用いて、23℃55%RH条件下、引張速度50mm/minにて50mm引き剥がした場合の90°剥離強度の平均値をピール強度として評価した。
【0093】
なお、自然に剥離することはなく、ガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であるが、フィルム特性の測定できるポリイミドフィルムが得られなかった場合は、後述の表1〜3において、ピール強度を記載していない。また、積層体においてポリイミドフィルムがガラス板から剥離しており、ピール強度を測定可能なポリイミドフィルムが得られなかった場合、「×」と評価した。
【0094】
(実施例1)
<ポリアミド酸溶液の製造>
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコにN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと称することがある)を850.0g入れ、パラフェニレンジアミン(以下、PDAと称することがある)40.1g、4,4’‐ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAと称することがある)0.6gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、3,3’,4,4’―ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと称することがある)109.3gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約90℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度18,400mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、このポリアミド酸溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.995である。
【0095】
<アルコキシシラン化合物による変性>
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次に3−アミノプロピルトリエトキシシラン(以下、γ―APSと称することがある)の1%NMP溶液を7.5g加え、2時間攪拌した。その後、固形分濃度が13.0重量%となるようにNMPを添加して希釈し、23℃で粘度7,200mPa・sであり水分が3000ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの配合割合(添加量)は、ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部である。
【0096】
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1980(楠本化成株式会社製)を、アルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。得られた表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとを用いて多段ろ過した。異物の評価結果について表1に示す。
【0097】
<表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の流延及びイミド化>
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で10分間加熱し、さらに180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0098】
(実施例2)
実施例1で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)を用いて、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0099】
(実施例3)
実施例1で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)にNMPを加えて固形分濃度が12.5重量%となるように希釈し、粘度が5000mPa・sの表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で10分間加熱し、さらに180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0100】
(実施例4)
実施例1で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)にNMPを加えて固形分濃度が11.5重量%となるように希釈し、粘度が3000mPa・sの表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが18μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で10分間加熱し、さらに180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み18μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0101】
(実施例5)
表面調整剤の量をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.005重量部としたこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法により、表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0102】
(実施例6)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1985(楠本化成株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0103】
(実施例7)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1985(楠本化成株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.005重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0104】
(実施例8)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−3440(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加した以外は実施例1と同様の方法で得られた表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)を孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとを用いて多段ろ過した。異物の評価結果について表1に示す。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法で厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0105】
(実施例9)
実施例8で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)を用いて、実施例2と同様の方法で厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0106】
(実施例10)
実施例8で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)にNMPを加えて固形分濃度が12.5重量%となるように希釈し、粘度が5000mPa・sの表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法で厚み18μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0107】
(実施例11)
実施例8で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液(ろ過前)にNMPを加えて固形分濃度が11.5重量%となるように希釈し、粘度が3000mPa・sの表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法で厚み19μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0108】
(実施例12)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−3440(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.005重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0109】
(実施例13)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−3441(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0110】
(実施例14)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−3441(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.005重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0111】
(実施例15)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−350(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0112】
(実施例16)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部添加したこと及びろ過を実施しなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0113】
(実施例17)
<ポリアミド酸溶液の製造>
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコにNMPを850.0g入れ、PDA39.8g、ODA0.6gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.6gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約90℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度34,200mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物類の総モル数を、ジアミン類の総モル数で除したモル比は、1.05である。
【0114】
<アルコキシシラン化合物による変性>
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次にγ―APSの1%NMP溶液を7.5g加え、2時間攪拌し、その後、固形分濃度が11.2重量%となるようにNMPを添加して希釈し、23℃で粘度6,700mPa・sであり水分が2200ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの配合割合(添加量)は、ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部である。
【0115】
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1980(楠本化成株式会社製)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。
【0116】
得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。ただし、表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表1に示す。
【0117】
(実施例18)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加した以外は実施例4と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0118】
(実施例19)
孔径が0.5μmのフィルターで表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過を実施した以外は実施例18と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0119】
(実施例20)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.02重量部となるように添加した以外は実施例18と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0120】
(実施例21)
孔径が0.5μmのフィルターで表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過を実施した以外は実施例20と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0121】
(実施例22)
孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとで表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の多段ろ過を実施した以外は実施例20と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0122】
(実施例23)
実施例20で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0123】
(実施例24)
実施例22で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0124】
(実施例25)
表面調整剤として、アクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社)をアルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部となるように添加した以外は実施例18と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液のろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0125】
(実施例26)
孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとで表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の多段ろ過を実施した以外は実施例25と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0126】
(実施例27)
実施例25で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0127】
(実施例28)
実施例26で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0128】
(実施例29)
<ポリアミド酸溶液の製造>
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコに1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(以下、DMIと称することがある)170.0gを入れ、PDA8.01g、ODA0.12gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA21.76gを加え、窒素雰囲気下で50℃で加熱しながら270分間攪拌を続けて、23℃で粘度73,300mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、このポリアミド酸溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.990である。
【0129】
<アルコキシシラン化合物による変性>
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。γ―APSの1%DMI溶液を1.50g加え、2時間攪拌した。その後、固形分濃度が10.8重量%となるようにDMIを添加して希釈し、23℃で粘度7,000mPa・sであり水分が3000ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―APSの配合割合(添加量)は、ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部である。得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1980(楠本化成株式会社製)を、アルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。
【0130】
<表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の流延及びイミド化>
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で120℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表2に示す。
【0131】
(比較例1)
実施例1で得られた表面調整剤を添加する前のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を孔径が0.5μmのフィルターと0.2μmのフィルターとを用いて多段ろ過した。得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を用いて、実施例1と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、得られたポリイミドフィルム加熱中に自然に剥離することはないが、厚みムラによる、目視で確認できる凸凹がポリイミドフィルムの表面全体に存在し、フィルム特性の測定できるポリイミドフィルムが得られなかった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0132】
(比較例2)
実施例1で得られた表面調整剤を添加する前のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形のFPD用のガラス基板として一般的に用いられている無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分、さらに120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で20分間加熱し、続けて180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板とは適度な剥離強度を有しており、加熱中に自然に剥離することはないが、無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0133】
(比較例3)
実施例1で得られた表面調整剤を添加する前のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形のFPD用のガラス基板として一般的に用いられている無アルカリガラス板(コーニング社製 イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で80℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から150℃まで4℃/分で昇温し、150℃で20分間加熱し、続けて150℃から350℃まで4℃/分で昇温し、350℃で20分間加熱し、続けて350℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で40分間加熱し厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板とは適度な剥離強度を有しており、イミド化の際に自然に剥離することはないが、無アルカリガラスからポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0134】
(比較例4)
溶媒にNMPの代わりにN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと称することがある)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た後、γ―APSを添加せずに作業しやすい粘度までN,N−ジメチルアセトアミドで希釈し、粘度13600mPa・sであり水分が1100ppmを示すポリアミド酸溶液を得た。得られた溶液を比較例2と同様の方法で無アルカリガラス板上に流延及びイミド化した。しかし、得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、積層体の一部のポリイミドフィルムが無アルカリガラス板から剥離していた。得られたポリイミドフィルムの特性について表3に示す。
【0135】
(比較例5)
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコにNMPを850.0g入れ、PDA40.1g、ODA0.6gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.3gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約90℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度18,400mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.995である。その後、固形分濃度が11.2重量%となるようにNMPを添加して希釈し、23℃で粘度7,200mPa・sであり水分が2500ppmを示すポリアミド酸溶液を得た。
【0136】
得られたポリアミド酸溶液より実施例1と同様の方法で、加熱し、イミド化した。ただし、アルコキシシラン化合物による変性、表面調整剤の添加及びろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、積層体の大部分のポリイミドフィルムが無アルカリガラス板から剥離していた。評価結果を表3に示す。ただし、ピール強度、ヘイズ、線熱膨張係数を測定可能なポリイミドフィルムが得られなかったため、測定は実施していない。
【0137】
(比較例6)
比較例5で得られたポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:DISPARLON LF−1980(楠本化成株式会社製)をポリアミド酸100重量部に対して0.01重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するポリアミド酸溶液を得た。この表面調整剤含有ポリアミド酸より実施例1と同様の方法で、加熱し、イミド化した。ただし、アルコキシシラン化合物による変性及びろ過は実施しなかった。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、積層体の大部分のポリイミドフィルムが無アルカリガラス板から剥離していた。評価結果を表3に示す。ただし、ピール強度、ヘイズ、線熱膨張係数を測定可能なポリイミドフィルムが得られなかったため、測定は実施していない。
【0138】
(比較例7)
<ポリアミド酸溶液の製造>
ポリテトラフルオロエチレン製シール栓付き攪拌器、攪拌翼及び窒素導入管を備えた容積2Lのガラス製セパラブルフラスコにNMPを850.0g入れ、PDA40.1g、ODA0.6gを加え、溶液を油浴で50.0℃に加熱しながら窒素雰囲気下で30分間攪拌した。原料が均一に溶解したことを確認した後、BPDA109.3gを加え、原料が完全に溶解するまで窒素雰囲気下で10分間攪拌しながら、溶液の温度を約90℃に調整した。さらに一定の温度で加熱しながら攪拌を続けて粘度を下げ、23℃で粘度25,600mPa・sを示す粘調なポリアミド酸溶液を得た。なお、このポリアミド酸溶液におけるジアミン及びテトラカルボン酸二無水物の仕込み濃度は全反応液に対して15重量%であり、テトラカルボン酸二無水物の総モル数を、ジアミンの総モル数で除したモル比は、0.995である。
【0139】
<アルコキシシラン化合物による変性>
この反応溶液を水浴で速やかに冷却し、溶液の温度を約50℃に調整した。次にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下、γ−GPSと称することがある)の1%NMP溶液を7.5g加え、2時間攪拌した。その後、固形分濃度が11.0重量%となるようにNMPを添加して希釈し、23℃で粘度3,300mPa・sであり水分が2500ppmを示すアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。なお、この反応におけるγ―GPSの配合割合(添加量)は、ポリアミド酸100重量部に対して0.05重量部である。
【0140】
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液にアクリル系表面調整剤:BYK−361N(ビックケミー・ジャパン株式会社)を、アルコキシシラン変性ポリアミド酸100重量部に対して0.02重量部となるように添加し、均一に分散して表面調整剤を含有するアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を得た。
【0141】
<表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液の流延及びイミド化>
得られたアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で120℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から180℃まで4℃/分で昇温し、180℃で10分間加熱し、さらに180℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0142】
(比較例8)
比較例7で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、加熱中に自然に剥離することはなかった。無アルカリガラス板からポリイミドフィルムを引き剥がすことが可能であった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0143】
(比較例9)
γ−GPSの代わりにビニルトリメトキシシラン(以下、VSと称することがある)を用いたこと以外は比較例7と同様の方法で、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察すると、ポリイミドフィルムが無アルカリガラス板からほぼ全面で剥離しており、大きな凹凸のある波打ったポリイミドフィルムしか得られなかったため、フィルム特性の測定は実施しなかった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0144】
(比較例10)
比較例9で得られた表面調整剤含有アルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液を、両辺150mm、厚さ0.7mmの正方形の無アルカリガラス板(コーニング社製イーグルXG)上にバーコーターを用いて乾燥後の厚みが20μmになるように流延し、熱風オーブン内で150℃にて30分乾燥した。その後窒素雰囲気下で20℃から450℃まで4℃/分で昇温し、450℃で10分間加熱し、厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察すると、ポリイミドフィルムが無アルカリガラス板からほぼ全面で剥離しており、大きな凹凸のある波打ったポリイミドフィルムしか得られなかったため、フィルム特性の測定は実施しなかった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0145】
(比較例11)
表面調整剤の添加を実施しなかったこと以外は実施例29と同様に厚み20μmのポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得た。得られた積層体を観察するとポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡や浮きは観察されず、得られたポリイミドフィルム加熱中に自然に剥離することはないが、厚みムラによる、目視で確認できる凸凹がポリイミドフィルムの表面全体に存在し、フィルム特性の測定できるポリイミドフィルムが得られなかった。ポリイミドフィルムの評価結果について表3に示す。
【0146】
【表1】
【0147】
【表2】
【0148】
【表3】
実施例1〜29のポリイミドフィルムは、20μm程度の厚みでもポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生せず、ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができた。これに対して比較例4〜6、9及び10のポリイミドフィルムは、20μm程度の厚みでもポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との間に気泡が発生し、ポリイミドフィルムと無アルカリガラス板との積層体を得ることができなかった。また、比較例7のポリイミドフィルムは、ピール強度が小さく、ガラス板から剥離しやすかった。
【0149】
また、実施例1〜29のポリイミドフィルムは無アルカリガラスから剥離した後も、カールしたり反ったりすることはなかった。これらのポリイミドフィルムの線熱膨張係数が20ppm/℃以下であり、無アルカリガラスの線熱膨張係数と近いためである。一方、比較例8のポリイミドフィルムは、線熱膨張係数が20ppm/℃を超えていた。
【0150】
実施例1〜29のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は表面調整剤を含有していることにより、表面調整剤を含有しないものに比べてピール強度が高く、かつ、目視で確認される凹凸がない、十分に表面の平滑性が良好であるポリイミドフィルムを得ることができた。また、表面調整剤を含有しているにも関わらず、ヘイズが1.5%以下であり、濁りのないポリイミドフィルムを得ることができた。一方、比較例1及び11のポリイミドフィルムは、目視で確認される凹凸が表面全体に存在した。
【0151】
また、実施例1〜29のアルコキシシラン変性ポリアミド酸溶液は、120℃以上の乾燥開始温度であっても、上述のような良好なポリイミドフィルムを得ることができた。一方、比較例1、5〜11のポリイミドフィルムでは、120℃以上の乾燥開始温度とした場合、上述のような目視で確認される凹凸を有し、且つ/または剥離しやすかった。比較例2〜4のポリイミドフィルムは、乾燥開始温度を80℃とする必要があり、製膜時間が長くなった。