【文献】
Zhenzhou Deng,Empirical Bayesian energy estimation for multi-voltage threshold digitizer in PET,Neclear Science Symposium and Medical Imaging Conference,2013年11月 2日,1−5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップS1:低計数での非積層コンプライアンス単一事象のシンチレーションパルスデータベースを取得し、前記単一事象の前記シンチレーションパルスデータベースについてシンチレーションパルス雑音モデルを構築するステップであって、平均パルスが、前記非積層コンプライアンス単一事象の前記シンチレーションパルスデータベースについて計算され、シンチレーションパルス波形情報が、前記平均パルスによって与えられる、ステップと、
ステップS2:前記シンチレーションパルス雑音モデルに基づいて所与のエネルギー値について事後確率対数値を計算するステップであって、
ステップ2.1:セグメントS0のシンチレーションパルスをロードし、前記パルス雑音モデルに基づいて前記所与のエネルギー値の尤度関数を計算するステップであって、前記セグメントS0の前記シンチレーションパルスは、前記セグメントS0の前記シンチレーションパルスがしきい値Vtの上方へ向かう時点t0に始まり、前記セグメントS0の前記シンチレーションパルスは、時点t0 + Δtに終わり、Δtは、シンチレーション結晶の立ち下がりエッジの時定数の2倍よりも大きい、ステップ、および
ステップ2.2:事後確率関数と同じ単調性を有する関数の値を得るために、前記時点のすべてについて対数を計算し、前記対数を合計するステップを含む、ステップと、
ステップS3:最大事後確率条件を満たすエネルギー値を得るためにステップS2を繰り返し行うステップであって、
ステップ3.1:モジュールとしてステップS2を繰り返し行うことによって異なる試験的エネルギー値について事後確率を計算するステップ、
ステップ3.2:前記最大事後確率条件を満たす前記エネルギー値を線形探索するステップ、ならびに
ステップ3.3:前記エネルギー値が得られた後、前記エネルギー値に基づいてステップ2.1について時間原点を補正し、ステップ3.1およびステップ3.2を繰り返すステップを含む、ステップとを含む、シンチレーションパルス情報を回復するための方法。
ステップS1での前記シンチレーションパルスデータベースは、2000以上のサンプルを備える、請求項1に記載のシンチレーションパルス情報を回復するための方法。
ステップS1での前記シンチレーションパルス雑音モデルは、シンチレーションパルス波形、シンチレーションパルス高さおよびシンチレーションパルス雑音レベルの特徴を備える、請求項1に記載のシンチレーションパルス情報を回復するための方法。
ステップS1では、前記パルスが整列された後、同じ時点における同じエネルギー値に対応するシンチレーションパルスのエネルギー値は、分散するように分布され、前記分布は、前記パルスの雑音モデルと定義され、前記雑音モデルのパラメータは、所与のエネルギー値について事後確率値を計算するために使用される、請求項4に記載のシンチレーションパルス情報を回復するための方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮して、本開示の目的は、量子化レベルの設定を最適化することによってデジタル化信号をより正確に回復し、より多くの事象情報を取得するために、シンチレーションパルス情報を回復するための方法およびシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、下記の技術的解決法が、本開示に従って提供される。
【0009】
シンチレーションパルス情報を回復するための方法は、
ステップS1:低計数での非積層コンプライアンス(non-stacked compliance)単一事象のシンチレーションパルスデータベースを取得し、単一事象のシンチレーションパルスデータベースについてシンチレーションパルス雑音モデルを構築するステップであって、平均パルスが、非積層コンプライアンス単一事象のシンチレーションパルスデータベースについて計算され、シンチレーションパルス波形情報は、その平均パルスによって与えられる、ステップと、
ステップS2:シンチレーションパルス雑音モデルに基づいて所与のエネルギー値について事後確率対数値を計算するステップであって、
ステップ2.1:シンチレーションパルスセグメントS
0をロードし、パルス雑音モデルに基づいて所与のエネルギー値の尤度関数を計算するステップであって、シンチレーションパルスセグメントは、シンチレーションパルスセグメントがしきい値Vtの上方へ向かう時点t
0に始まり、シンチレーションパルスセグメントは、時点t
0 + Δtに終わり、Δtは、シンチレーション結晶の立ち下りエッジの時定数の2倍よりも大きい、ステップ、および
ステップ2.2:事後確率関数と同じ単調性を有する関数の値を得るために、時点のすべてについて対数を計算し、その対数を合計するステップを含む、ステップと、
ステップS3:最大事後確率条件を満たすエネルギー値を得るためにステップS2を繰り返し行うステップであって、
ステップ3.1:モジュールとしてステップS2を繰り返し行うことによって異なる試験的エネルギー値について事後確率を計算するステップ、
ステップ3.2:最大事後確率条件を満たすエネルギー値を線形探索するステップ、および
ステップ3.3:エネルギー値が得られた後、そのエネルギー値に基づいてステップ2.1について時間原点を補正し、ステップ3.1およびステップ3.2を繰り返すステップを含む、ステップとを含む。
【0010】
好ましくは、シンチレーションパルス情報を回復するための上記方法では、ステップS1でのシンチレーションパルスデータベースは、2000以上のサンプルを含んでもよい。
【0011】
好ましくは、シンチレーションパルス情報を回復するための上記方法では、ステップS1でのシンチレーションパルス雑音モデルは、シンチレーションパルス波形、シンチレーションパルス高さおよびシンチレーションパルス雑音レベルの特徴を含んでもよい。
【0012】
好ましくは、シンチレーションパルス情報を回復するための上記方法では、ステップS1での平均パルスを計算するステップは、
ステップ1.1:弱い線源を得るために放射線源の放射線量を低減し、検出器によって捕獲される高エネルギー光子の数をその弱い線源によってまたは検出器に対する弱い線源の立体角を調整することによって低減するステップであって、検出器によって受け取られる事象は、
【0013】
【数2】
【0014】
として表される平均計数率を有するポアソンストリーム(Poisson stream)であり、ただしmiおよびqiは、弱い線源の線量および検出器に対する弱い線源の立体角をそれぞれ示し、iは、弱い線源の添え字を示し、nは、弱い線源の数を示す、ステップ、
ステップ1.2:
コンスタントフラクションディスクリミネータ法(constant fraction discrimination method)または前縁弁別法(leading edge discrimination method)を用いてパルスを整列させるステップ、ならびに
ステップ1.3:整列したパルスを平均化するステップを含んでもよい。
【0015】
好ましくは、シンチレーションパルス情報を回復するための上記方法では、ステップS1では、パルスが整列された後、同じ時点における同じエネルギー値に対応するシンチレーションパルスのエネルギー値は、分散するように分布させてもよく、その分布は、パルスの雑音モデルと定義されてもよく、雑音モデルのパラメータは、所与のエネルギー値について事後確率値を計算するために使用されてもよい。
【0016】
好ましくは、シンチレーションパルス情報を回復するための上記方法では、ステップS1はさらに、一対の単一事象としてあるエネルギー範囲内で選択される一対のコンプライアンスパルスを設定するステップ、およびそのようなデジタル化電気パルスを事前に保管し、オフラインで分析するステップを含んでもよく、平均パルス信号は、その対のパルスを整列させることによって得られ、単一事象のエネルギースペクトルは、平均パルスをシステム応答と見なすことによってデジタル化電気パルスを合計することによって得られる。
【0017】
シンチレーションパルス情報を回復するためのシステムは、
シンチレーション検出器システムの
雑音モデルを取得するために低計数率を有する事前取得データを整えるように構成される
雑音モデルモジュールであって、
雑音モデルは、平均パルス、雑音分散および雑音分布歪みを表し、その雑音モデルは、事後確率モジュールに提供される、
雑音モデルモジュールと、
所与のエネルギー値について事後確率対数値を得るために事後確率を計算するように構成される事後確率モジュールと、
最大事後確率条件を満たすエネルギー値を探索するように構成されるエネルギー値探索モジュールとを含む。
【0018】
好ましくは、シンチレーションパルス情報を回復するための上記システムでは、
雑音モデルモジュールは、
単一事象の平均パルスを計算するように構成される平均パルスモジュール、
単一事象のパルスの雑音分散を計算するように構成されるパルス雑音モジュール、および
雑音の確率密度分布関数を推定するように構成される確率密度分布モジュールを含んでもよい。
【0019】
好ましくは、シンチレーションパルス情報を回復するための上記システムでは、事後確率モジュールは、
所与のエネルギー値および
雑音モデルモジュールによって入力されるパルス雑音モデルに基づいて各点の尤度関数値を計算するように構成される尤度関数分布モジュール、ならびに
事後確率対数値を計算するように構成される時点積(time point product)モジュールを含んでもよい。
【0020】
好ましくは、シンチレーションパルス情報を回復するための上記システムでは、エネルギー値探索モジュールは、
事後確率モジュールを呼び出すことによって試験的エネルギー値について事後確率対数値を計算するように構成される試験的エネルギー計算モジュール、
線形探索アルゴリズムを用いて最大事後確率条件を満たすエネルギー値を計算するように構成される線形探索モジュール、ならびに
サンプルについての時間原点を補正し、試験的エネルギー計算モジュールおよび線形探索モジュールを繰り返し呼び出すように構成される時間原点補正モジュールを含んでもよい。
【0021】
本開示の実施形態によるシンチレーションパルス情報を回復するための上記の方法およびシステムを用いると、それぞれの単一事象のエネルギー情報は、効果的に計算でき、エネルギー窓でのシステムの計数率は、増加され、システムのエネルギー分解能は、改善されることが、上記の技術的解決法から分かる。従って、本方法およびシステムは、オフライン環境においてシンチレーション事象を処理するのに特に適している。
【0022】
本開示の実施形態では、シンチレーションパルスのパルス高さまたはエネルギー情報は、所与のシステムの最大事後推定に対応するシンチレーション事象のパラメータを計算することによって正確に推定されることが、上記の技術的解決法から分かる。
【0023】
従来技術と比較すると、本開示は、下記の利点、
(1)良好なエネルギー分解能、
(2)所与のエネルギー窓について高い計数率、および
(3)少数の量子化レベルによって引き起こされる量子化誤差を避ける能力を有する。
【0024】
実施形態または従来技術の説明に使用されるべき図面は、本開示の実施形態によるまたは従来技術による技術的解決法が、より明らかになるように、下記において簡潔に述べられることになる。下記の説明での図面が、本開示のいくつかの実施形態を例示するだけであることは、明らかである。当業者にとっては、他の図面が、どんな創造的作業もなしにこれらの図面に従って得られてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は、シンチレーションパルス情報を回復するための方法およびシステムを提供する。本方法およびシステムを用いると、少数量子化レベルADCによってサンプリングされるパルスエネルギー情報は、回復でき、シンチレーションパルスの高さ推定は、より正確に推定でき、エネルギー窓でのシステムの計数率は、増加できる。
【0027】
本開示によるシンチレーションパルス情報を回復するための方法は、下記のステップ1からステップ3を含む。
ステップ1では、低計数での非積層コンプライアンス単一事象のパルスデータベースが、取得され、次いで雑音モデルが、単一事象のパルスデータベースについて構築される。パルスデータベースは、2000よりも多いサンプルを含むことが、好ましい。雑音モデルは、パルス数の増加とともにより正確になる。
ステップ2では、所与のエネルギー値についての事後確率対数値が、計算される。
ステップ3では、最大事後確率条件を満たすエネルギー値が、線形探索される。
【0028】
本開示によるシンチレーションパルス情報を回復するためのシステムは、雑音モデルモジュールと、事後確率モジュールと、エネルギー値探索モジュールとを含む。雑音モデルモジュールは、単一事象パルスの組から雑音モデルを得るように構成され、他のモジュールは、少数量子化レベルADCによって得られるシンチレーションパルス信号を処理するように構成される。事後確率モジュールは、入力されたエネルギー値の事後確率を計算するように構成される。そしてエネルギー値探索モジュールは、最大事後確率条件を満たすエネルギー値を探索するように構成される。
【0029】
本開示の実施形態による技術的解決法は、添付の図面と併せて次の通りに明確にかつ完全に述べられることになる。述べられる実施形態が、本開示による実施形態のすべてというよりもむしろほんの少しだけであることは、明らかである。どんな創造的作業もなく本開示における実施形態に基づいて当業者によって得られる他のいかなる実施形態も、本開示の範囲に入る。
【0030】
本方法では、最大事後確率条件を満たすエネルギー値は、ベイズの原理に基づいて得られる。
【0031】
本開示によるシンチレーションパルス情報を回復するための方法では、雑音モデルが、事前取得データベースに基づいて初めに得られる。雑音モデルは、少数量子化シンチレーションパルスの事後確率を計算するために電気信号の固有の予備知識として使用される。そして最大事後確率条件を満たすエネルギー値は、事後確率モジュールを繰り返し呼び出すことによって線形探索される。
【0032】
図2に示されるように、本開示によるシンチレーションパルス情報を回復するための方法は、下記のステップS1からS3を含む。
【0033】
ステップS1では、低計数での非積層コンプライアンス単一事象のシンチレーションパルスデータベースが、取得される。シンチレーションパルス雑音モデルは、単一事象のシンチレーションパルスデータベースについて構築される。平均パルスが、非積層コンプライアンス単一事象のシンチレーションパルスデータベースについて計算される。シンチレーションパルス波形情報は、その平均パルスに基づいて与えられる。パルスデータベースは、2000よりも多いサンプルを含むことが、必要とされる。そして統計雑音は、パルス数の増加とともにより小さくなる。
【0034】
ステップS1でのシンチレーションパルス雑音モデルは、シンチレーションパルス波形、シンチレーションパルス高さおよびシンチレーションパルス雑音レベルの特徴を含む。これらの特徴は、単一時点における一対のサンプルのエネルギーの事後確率を計算するためのパラメータであり、そのエネルギーに対応する事後確率は、上記特徴の値がないと計算できない。パラメータは、システムに依存する。雑音モデルは、当業者によって異なる方法を用いて構築されてもよい。一般に、雑音モデルは、シミュレーションまたは実験的測定によって得られることもある。シミュレーションの場合には、各パルスの異なる時点における電圧値の分布は、仮定に基づいて与えられ、その分布が、雑音モデルである。実験的測定の場合には、サンプリングされたシンチレーションパルスは、整列され、それによって各時点における電圧値の分布を得る(シンチレーションパルス雑音モデル)。
【0035】
平均パルスは、ステップS1において下記のステップS1.1からS1.3を用いて計算される。
【0036】
ステップ1.1では、放射線源の放射線量が、弱い線源を得るために低減される。検出器によって捕獲される高エネルギー光子の数は、弱い線源によってまたは検出器に対する弱い線源の立体角を調整することによって低減される。積層の確率は、非常に低い計数率の下では小さい。検出器によって受け取られる事象は、
【0038】
として表される平均計数率を有するポアソンストリームであり、ただしm
iは、弱い線源の線量を示し、q
iは、検出器に対する弱い線源の立体角を示し、iは、弱い線源の添え字を示し、nは、弱い線源の数を示す。n = 1であり、mは、パルスデータベースを取得する際には十分小さいと構成されてもよい。
【0039】
ステップ1.2では、パルスが、
コンスタントフラクションディスクリミネータ法または前縁弁別法を用いて整列される。
【0040】
ステップ1.3では、整列したパルスが、平均化される。
【0041】
パルスが、ステップS1において整列された後、同じ時点における同じエネルギー値に対応するシンチレーションパルスのエネルギー値は、分散するように分布される。その分布は、パルスの雑音モデルと定義される。雑音モデルのパラメータは、所与のエネルギー値について事後確率値を計算するために使用される。
【0042】
同じエネルギーを有する一組のシンチレーションパルスの概略図である、
図4を参照する。ステップS1はさらに、一対の単一事象としてあるエネルギー範囲内で選択される一対のコンプライアンスパルスを設定するステップと、そのようなデジタル化電気パルスを事前に保管し、次いでオフラインで分析するステップとを含む。その対のパルスは、平均パルス信号および残りのパルス系列を得るために整列される。そして単一事象データのエネルギースペクトルは、平均パルスをシステム応答と見なすことによってデジタルパルスを合計することによって得られる。
【0043】
別に明記されない限り、本開示によるシンチレーションパルスはそれぞれ、正の値を有する。単一事象データのエネルギースペクトルは、デジタルパルスを合計することによって得られてもよい。もし実際に取得されるパルスが、負のパルスであるならば、位相反転が、初期設定により行われている。従って、電気パルスの立ち上がりエッジは、その前縁であり、電気パルスの立ち下がりエッジは、その尾部である。最初のパルスデータベースを処理する際に得られるすべての中間情報は、派生パルスデータベースと呼ばれてもよい。そして派生パルスデータベースは、最初のパルスデータベースについて、フィルタリング、補間、適合、外挿および組み合わせなどの操作を行うことによって得られてもよい。
【0044】
ステップS2では、所与のエネルギー値についての事後確率対数値が、シンチレーションパルス雑音モデルに基づいて計算される。
【0045】
最大事後確率条件を満たすエネルギー値は、統計学での基本原理を反映し、それは、現在の観測があるエネルギー値において起こる確率が、その観測が他のエネルギー値において起こる確率よりも大きいということである。確率は、あるエネルギー値の事前確率に観測がそのエネルギー値において起こる尤度確率を掛けることによって計算される。
【0046】
ステップS2は、下記のステップ2.1およびステップ2.2を含む。
【0047】
ステップ2.1では、シンチレーションパルスセグメントS
0が、ロードされ、所与のエネルギー値の尤度関数が、上で得られたパルスの雑音モデルに基づいて計算される。シンチレーションパルスセグメントは、シンチレーションパルスセグメントがしきい値V
tの上方へ向かう時点t
0に始まり、シンチレーションパルスセグメントは、時点t
0 + Δtに終わり、Δtは、シンチレーション結晶の立ち下がりエッジの時定数の2倍よりも大きい。
【0048】
ステップ2.2では、事後確率関数と同じ単調性を有する関数の値を得るために、時点のすべてについての対数が、計算され、合計される。
【0049】
尤度関数は、実際の計算において直接計算される必要はなく、尤度関数の対数値を計算することによって得られる。対数尤度関数は、個々の時点におけるパルスの対数関数の合計と同等である。尤度関数は、他の形を有することもあるので、尤度関数の形は、固定されない。
【0050】
時点は、パルスの到達時間を意味する。そして到達時間は、パルスの時点についてのゼロ点と考えられる。関数の対数は、その関数と同じ単調性を有するので、関数の対数は、関数が極値を達成すると極値を達成する。従って、ある関数を最大化することは、その関数の対数を最大化することと同等である。従って、ステップS2で行われるように、事後確率の対数を最大化することは、事後確率を最大化することと同等である。
【0051】
ステップS3では、最大事後確率条件を満たすエネルギー値が、ステップS2を繰り返し行うことによって計算される。
【0052】
ステップS3では、エネルギー補正が、各エネルギー計算の後にパルスの時間原点について行われる。時点は、エネルギー値をより正確にするためだけでなく、より正確な時間情報を得るためにも補正される。PETまたは核測定装置では、単一事象パルスは、時間情報およびエネルギー情報を用いて完全に表される。波形情報は、平均パルスによって与えられ、核測定装置の大部分にとって不必要である。
【0053】
ステップS3は、下記のステップ3.1からステップ3.3を含む。
【0054】
ステップ3.1では、異なる試験的エネルギー値に対応する事後確率を計算するために、ステップS2が、モジュールとして繰り返し行われる。
【0055】
ステップ3.2では、最大事後確率条件を満たすエネルギー値が、線形探索される。既存の線形探索アルゴリズムは、黄金分割法、双探索法(bi-search method)、フィボナッチ数列法および同様なものを含む。
図16に示されるように、
図16は、あるエネルギー値について最適な一次元解を探索するためのプロセスを示す図である。
【0056】
最大化事後確率は、最大化尤度関数にエネルギー確率分布関数を掛けることによって得られる。そして事後確率は、尤度関数にエネルギー確率分布関数を掛けることによって得られる。
【0057】
ステップ3.3では、エネルギー値が得られた後、時間原点が、エネルギー値に基づいてステップ2.1において補正され、次いでステップ3.1およびステップ3.2が、繰り返される。
【0058】
エネルギー値は、デジタル化サンプルに基づいて計算され、すなわち、測定エネルギー値は、時間に依存する。時間は、エネルギー値に基づいて補正されないと正確でなく、「タイムウォーク(time walk)」現象が、起こることもある。従って、不正確な時間は、エネルギー値が得られた後に補正される。エネルギー値は、時間が補正された後に再び計算され、時間は、エネルギー値が得られた後に再び補正される。時間-エネルギー-時間-エネルギーの繰り返しプロセスは、時間およびエネルギー測定の精度を改善するために行われる。従って、時間に関係する繰り返しは、測定の精度を改善するために導入される。
【0059】
貧弱なエネルギー分解能または良好なエネルギー分解能の場合に異なるエネルギー計算方法を採用することによって得られるエネルギースペクトルの概略図である、
図6から
図11を参照する。採用されるエネルギー計算方法は、デジタルゲーテッド積分、本開示による方法および最小二乗適合アルゴリズムを含む。
【0060】
図6は、エネルギーが、デジタルゲーテッド積分を用いて計算される、貧弱なエネルギー分解能の場合のエネルギースペクトルの概略図である。エネルギー分解能は、ピーク位置をピーク幅(半値全幅)で割ることによって計算される。ゲーテッド積分では、ゲーテッド信号は、立ち上がりエッジのしきい値反転によって得られる。パルスは、そのようなゲーテッド範囲において積分され、得られる積分値は、エネルギー値を表すように正規化される。正規化は、511keV(キロ電子ボルト)に関して全エネルギーピークを正規化することによって行われる。
【0061】
図7は、エネルギーが、本開示による方法を用いて計算される、貧弱なエネルギー分解能の場合のエネルギースペクトルの概略図である。そしてエネルギー分解能を計算するために使用される方法および正規化のために使用される方法は、
図6に示されるそれらと同じである。
【0062】
図8は、エネルギーが、最小二乗適合アルゴリズムを用いて計算される、貧弱なエネルギー分解能の場合のエネルギースペクトルの概略図である。そしてエネルギー分解能を計算するために使用される方法および正規化のために使用される方法は、
図6に示されるそれらと同じである。
【0063】
図9は、エネルギーが、デジタルゲーテッド積分を用いて計算される、良好なエネルギー分解能の場合のエネルギースペクトルの概略図である。そしてエネルギー分解能を計算するために使用される方法および正規化のために使用される方法は、
図6に示されるそれらと同じである。
【0064】
図10は、エネルギーが、本開示による方法を用いて計算される、良好なエネルギー分解能の場合のエネルギースペクトルの概略図である。そしてエネルギー分解能を計算するために使用される方法および正規化のために使用される方法は、
図6に示されるそれらと同じである。
【0065】
図11は、エネルギーが、最小二乗適合アルゴリズムを用いて計算される、良好なエネルギー分解能の場合のエネルギースペクトルの概略図である。そしてエネルギー分解能を計算するために使用される方法および正規化のために使用される方法は、
図6に示されるそれらと同じである。
【0066】
最小二乗適合アルゴリズムによって得られるエネルギー値対デジタルゲーテッド積分によって得られるエネルギー値の散布図および本開示による方法によって得られるエネルギー値対デジタルゲーテッド積分によって得られるエネルギー値の散布図である、
図12から
図15を参照する。
【0067】
図12は、最小二乗適合アルゴリズムによって得られるエネルギー値対デジタルゲーテッド積分によって得られるエネルギー値の散布図であり、エネルギー値は、
図4に示される通りである。散布図での水平座標は、ゲーテッド積分によって得られるエネルギー値を表し、散布図での垂直座標は、パルス適合によって得られるエネルギー値を表す。ゲーテッド積分を黄金標準(golden standard)と見なすと、ゲーテッド積分に関するエネルギー計算方法の誤差レベルは、エネルギー計算方法の精度を評価するために使用されてもよい。それぞれのエネルギー計算方法の性能は、エネルギー精度を二乗平均平方根誤差(RMSE)として表すことによって観測されてもよい。
【0068】
図13は、本開示による方法によって得られるエネルギー値対デジタルゲーテッド積分によって得られるエネルギー値の散布図であり、エネルギー値は、
図4に示される通りである。散布図での水平座標は、ゲーテッド積分によって得られるエネルギー値を表し、散布図での垂直座標は、本開示による方法によって得られるエネルギー値を表す。
【0069】
図14は、最小二乗適合アルゴリズムによって得られるエネルギー値対デジタルゲーテッド積分によって得られるエネルギー値の散布図であり、エネルギー値は、
図7に示される通りである。散布図での水平座標は、ゲーテッド積分によって得られるエネルギー値を表し、散布図での垂直座標は、パルス適合によって得られるエネルギー値を表す。
【0070】
図15は、本開示による方法によって得られるエネルギー値対デジタルゲーテッド積分によって得られるエネルギー値の散布図であり、エネルギー値は、
図7に示される通りである。散布図での水平座標は、ゲーテッド積分によって得られるエネルギー値を表し、散布図での垂直座標は、本開示による方法によって得られるエネルギー値を表す。
【0071】
本開示による方法によって得られるエネルギー分解能は、従来のパルス適合法によって得られるそれよりも良好であり、本開示による方法は、散在する事象の排除を容易にすることが、
図6から
図11に示されるようなエネルギースペクトル図から分かる。そして本開示による方法は、より高い精度およびより小さい誤差を有し、パルスの高さを推定し、ある位置敏感検出器を設計するのにより適していることが、
図12から
図15に示されるような散布図から分かる。
図16に示される探索プロセスは、本開示による方法において規定されるエネルギー範囲を低減するためのプロセスであり、それは、範囲が毎回0.618倍だけ圧縮されるプロセスとして概略図に示される。
【0072】
シンチレーションパルス情報を回復するための本方法およびシステムを用いると、システムエネルギー計算精度が、効果的に改善される。本方法およびシステムは、少数量子化レベルADCデジタル核機器によってエネルギーを計算するのに特に適している。
【0073】
図1に示されるように、本開示によるシンチレーションパルス情報を回復するためのシステムは、雑音モデルモジュール100と、事後確率モジュール200と、エネルギー値探索モジュール300とを含む。雑音モデルモジュール100は、シンチレーション検出器システムの雑音モデルを得るために低計数率を有する事前取得データを整えるように構成される。事後確率モジュール200は、所与のエネルギー値について事後確率対数値を得るために事後確率を計算するように構成される。そしてエネルギー値探索モジュール300は、最大事後確率条件を満たすエネルギー値を探索するように構成される。
【0074】
図1にさらに示されるように、雑音モデルモジュール100は、平均パルス、雑音分散および雑音分布歪みを得るために事前取得データを整えるように構成される。そして雑音モデルは、モジュール200に提供される。
【0075】
雑音モデルモジュール100は、3つのサブモジュール、すなわち、平均パルスモジュール110、パルス雑音モジュール120および確率密度分布モジュール130を含んでもよい。平均パルスモジュール110は、単一事象の平均パルスを計算するように構成される。パルス雑音モジュール120は、単一事象のパルスの雑音分散を計算するように構成される。そして確率密度分布モジュール130は、雑音の確率密度分布関数を推定するように構成される。
【0076】
事後確率モジュール200は、所与のエネルギー値について事後確率対数値を計算するように構成される。
【0077】
事後確率モジュール200は、2つのサブモジュール、すなわち、尤度関数分布モジュール210および時点積モジュール220を含んでもよい。尤度関数分布モジュール210は、所与のエネルギー値およびモジュール100によって入力されるパルス雑音モデルに基づいて各点について尤度関数の値を計算するように構成される。そして時点積モジュール210は、事後確率対数値を計算するように構成される。
【0078】
エネルギー値探索モジュール300は、最大事後確率条件を満たすエネルギー値を計算するように構成される。
【0079】
エネルギー値探索モジュール300は、3つのサブモジュール、すなわち、試験的エネルギー計算モジュール310、線形探索モジュール320および時間原点補正モジュール330を含んでもよい。試験的エネルギー計算モジュール310は、モジュール200を呼び出すことによって試験的エネルギー値について事後確率対数値を計算するように構成される。線形探索モジュール320は、線形探索アルゴリズムを用いて最大事後確率条件を満たすエネルギー値を計算するように構成される。そして時間原点補正モジュール330は、サンプルの時間原点を補正し、モジュール310およびモジュール320を繰り返し呼び出すように構成される。
【0080】
図3から
図5を参照する。
図3は、本開示による典型的なシンチレーションパルスの概略図であり、
図4は、同じエネルギーを有する一組のシンチレーションパルスの概略図であり、
図5は、4つのしきい値を有するADCの下での
図3に示されるシンチレーションパルスのデジタル化の結果を示す。
図5では、V1、V2、V3およびV4は、基準電圧1、2、3、4をそれぞれ表す。
図17および
図18を参照する。
図17は、本開示によるコンプライアンス動作モードを有する典型的なシステムの概略図であり、
図18は、本開示による単一チャネル動作モードを有する別の典型的なシステムの概略図である。
図17および
図18では、シンチレーションパルスは、400として表され、放射線源は、500として表され、光電子増倍管は、600として表され、デジタルオシロスコープは、700として表される。本開示によるシンチレーションパルス情報を回復するための方法およびシステムは、
図3から
図5ならびに
図17および
図18と併せていくつかの実施形態について詳細に述べられる。本開示によるシンチレーションパルスを回復するための方法およびシステムでは、関係するパラメータおよびフィルタ設計は、良好なエネルギー分解能性能および短いパルス持続時間を達成するために、事前取得データの特徴に基づいて調整される。下記では、関連出願実施形態でのデータを処理するためのパラメータが、列挙される。
【0081】
第1の実施形態
下記では、本実施形態によるデータを処理するためのパラメータが、列挙される。
【0082】
ステップS1において採用される実際のシステムは、LYSO結晶およびHamamatsu R9800 PMTを含む。結晶は、16.5mm×16.5mm×10.0mmのサイズを有する。結晶とPMTとの間の結合面は、100面であり、結合面以外の表面は、テフロン(登録商標)粘着テープを用いてパッケージ化される。データ取得システムは、50GHzのサンプリングレートおよび16GHzの帯域幅を有する。
図10に示されるように、放射線源は、511keVの陽電子消滅ガンマ光子を含み、平均パルス立ち上がり時間分は、約2nsであり、時定数は、指数関数的適合が立ち下がりエッジについて行われた後は42.5497nsである。
【0083】
ステップ2.1において採用されるΔtは、200nsである。
【0084】
第2の実施形態
下記では、本実施形態によるデータを処理するためのパラメータが、列挙される。
【0085】
図11に示されるように、ステップS1において採用される実際のシステムは、LYSO結晶およびFM300035 SIPMを含む。結晶は、2.0mm×2.0mm×10.0mmのサイズを有する。結晶とPMTとの間の結合面は、100面であり、結合面以外の表面は、テフロン(登録商標)粘着テープを用いてパッケージ化される。データ取得システムは、50GHzのサンプリングレートおよび16GHzの帯域幅を有する。
図10に示されるように、放射線源は、511keVの陽電子消滅ガンマ光子を含み、平均パルス立ち上がり時間分は、約5nsである。
【0086】
ステップ2.1において採用されるΔtは、300nsである。
【0087】
第3の実施形態
下記では、本実施形態によるデータを処理するためのパラメータが、列挙される。
【0088】
ステップS1において採用される実際のシステムは、LaBr結晶およびHamamatsu R9800 PMTを含む。結晶は、3.5mm×3.5mm×5.0mmのサイズを有する。結晶とPMTとの間の結合面は、100面であり、結合面以外の表面は、金属を用いて密封される。データ取得システムは、50GHzのサンプリングレートおよび16GHzの帯域幅を有する。
図10に示されるように、放射線源は、511keVの陽電子消滅ガンマ光子を含み、平均パルス立ち上がり時間分は、約2nsである。
【0089】
ステップ2.1において採用されるΔtは、100nsである。
【0090】
本開示によるシンチレーションパルス情報を回復するための方法およびシステムは、信号が、直接デジタル化されることを必要とされる、核検出機器、核分析機器および核医療機器に適用されてもよい。
【0091】
本開示が、前述の例示的な実施形態の詳細に限定されず、本開示が、本開示の趣旨または本質的特徴から逸脱することなく他の特定の形で具体化されてもよいことは、当業者には明らかであろう。従って、例示される実施形態は、あらゆる点で例示的なものであり、制限するものでないと考えるべきである。本開示の範囲は、前述の説明よりもむしろ添付の請求項によって規定され、従って請求項の等価の意味および範囲内に入るすべての変化を含む。そして請求項における参照符号は、関係する請求項を制限すると解釈されるべきでない。
【0092】
加えて、本明細書は、実施形態に基づいて述べられるが、しかし各実施形態だけが、1つの独立した技術的解決法を含むことは、意図されていないと理解すべきである。本明細書のそのような記述方法は、明確にするためだけである。本明細書は、全体として当業者によって考えられるべきであり、実施形態の技術的解決法は、当業者によって理解できる他の実施形態を形成するために適切に組み合わされてもよい。