(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336082
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】ラクチド中の不純物の定量方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/359 20140101AFI20180528BHJP
G01N 21/3554 20140101ALI20180528BHJP
【FI】
G01N21/359
G01N21/3554
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-536854(P2016-536854)
(86)(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公表番号】特表2016-540214(P2016-540214A)
(43)【公表日】2016年12月22日
(86)【国際出願番号】EP2014076830
(87)【国際公開番号】WO2015086494
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】13196357.1
(32)【優先日】2013年12月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】ゴビウス ドゥ サルト, ゲリット
(72)【発明者】
【氏名】ニーセン, ジャン アリー
(72)【発明者】
【氏名】デ ジョン, ヴィンセント
【審査官】
伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−173844(JP,A)
【文献】
特開2005−255751(JP,A)
【文献】
特開2000−086652(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0222379(US,A1)
【文献】
特開平02−306937(JP,A)
【文献】
特開平11−315137(JP,A)
【文献】
特開2008−308569(JP,A)
【文献】
LUYPAERT, J. et al.,NEAR-INFRARED SPECTROSCOPY APPLICATIONS IN PHARMACEUTICAL ANALYSIS,TALANTA,2007年 4月27日,VOL:72, NR:3,PAGE(S):865 - 883,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.talanta.2006.12.023
【文献】
BIRGIT BRAUN; JOHN R DORGAN; STEVEN F DEC,INFRARED SPECTROSCOPIC DETERMINATION OF LACTIDE CONCENTRATION IN POLYLACTIDE: AN IMPROVED METHODOLOGY,MACROMOLECULES,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2006年12月,VOL:39, NR:26,PAGE(S):9302 - 9310,URL,http://dx.doi.org/10.1021/ma061922a
【文献】
FENG L; GAO Z; BIAN X; CHEN Z; CHEN X; CHEN W,A QUANTITATIVE HPLC METHOD FOR DETERMINING LACTIDE CONTENT USING HYDROLYTIC KINETICS,POLYMER TESTING,NL,ELSEVIER,2009年 9月,VOL:28, NR:6,PAGE(S):592 - 598,URL,http://dx.doi.org/10.1016/j.polymertesting.2009.04.005
【文献】
SAARA INKINEN; HAKKARAINEN MINNA; ALBERTSSON ANN-CHRISTINE; SODERGARD ANDERS,FROM LACTIC ACID TO POLY(LACTIC ACID) (PLA): CHARACTERIZATION AND ANALYSIS OF PLA AND ITS PRECURSORS,BIOMACROMOLECULES,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2011年 3月14日,VOL:12, NR:3,PAGE(S):523 - 532,URL,http://dx.doi.org/10.1021/bm101302t
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
C08G 63/08
C07D 319/12
C08L 67/04
C08L 101/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクチド中の不純物の定量法であって、上記不純物がヒドロキシル基および/またはカルボン酸基を有し、上記定量が、上記不純物および上記ラクチドの二次およびより高次の倍音を捕えるように電磁スペクトルの近赤外領域の12000〜4000cm−1の範囲で記録された吸収スペクトルに関して行われた測定に基づくことを特徴とする方法。
【請求項2】
上記不純物が水を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記不純物が遊離酸種を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
不純物の量が、液状集合体相中にあるラクチドにおいて測定されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
不純物の量が、固体状集合体相中にあるラクチドにおいて測定されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
不純物の量が、乳酸のオリゴマーの解重合によって得られたラクチドに関して行われた測定に基づいて、ラクチド製造プロセス中に決定されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記製造プロセスがバッチプロセスであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記製造プロセスが連続プロセスであることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
上記連続プロセスにおける不純物の量が、上記ラクチド製造プロセスの種々の段階で同時に測定されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水および遊離酸種の量の定量の出力が、上記製造プロセスを調整するために製造パラメーターを制御するために使用される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラクチド中の不純物の量を定量する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラクチドは、ポリマー物質、例えばポリ乳酸(PLA)またはPLA含有コポリマーの製造における周知の中間物質である。ラクチド(ジラクチドという場合がある)は、乳酸の環状二量体であり、通常、2工程法によって製造される。第1工程において、乳酸が、比較的低い分子量を有するいわゆるプレポリマーまたはオリゴマーに重合される。第2工程で、このプレポリマーから、触媒の存在下でいわゆる「バックバイティング(backbiting)」法によって粗ラクチドが形成される。この粗ラクチド物質は、(繰り返しの)結晶化および/または(繰り返しの)蒸留によって精製され得る。こうして得られた精製されたラクチドは次いで、PLAまたはPLA含有コポリマーの製造のための重合法で使用され得る。
【0003】
ラクチドは、ジアステレオマーの関係を有する3種類の幾何学構造で存在し得ることが周知である。これらの異なる構造は、R,R−ラクチド(またはD−ラクチド)、S,S−ラクチド(またはL−ラクチド)およびR,S−ラクチド(またはメソラクチド)として区別され得る。等量のD−ラクチドとL−ラクチドの混合物はしばしば、ラセミラクチドまたはrac−ラクチドと呼ばれる。本発明の範囲内において、用語「ラクチド」は、上記3種類の純粋なラクチド(1のみのジアステレオマーで構成される)および純粋なラクチドの2以上の混合物の両方を意味する。
【0004】
ラクチドの純度は、重要な問題である。これは、不純物がラクチドのPLAへの重合に強い影響を有し得るときに特にそうである。したがって、ラクチド中の不純物の量の決定を可能にする、利用可能な方法を有することが重要である。そのような方法は、高い正確性および信頼性を有するべきである。そのような方法はさらに、それらの使用およびラクチドを取り扱う方法におけるそれらの使用および実施が簡単であるべきである。
【0005】
ラクチド中の周知の不純物は、ヒドロキシル基および/またはカルボン酸基を有する種である。水および遊離酸の種が、これらの種類の不純物の重要な例である。その見地から、ラクチド物質中のそのような不純物の量は、できるだけ低く保たれるべきである。種々のタイプの繰り返される蒸留および繰り返される結晶化技術が、周知の精製手段であり、これらは、ラクチドの製造中に上記不純物の量をできるだけ多く低下させるために使用され得る。
【0006】
現在、ラクチド中の不純物、例えばヒドロキシル基および/またはカルボン酸基を有する種の量を決定するために、滴定法がしばしば使用される。これらの方法を行うために、ラクチド含有物質の少量のサンプルが採取され、そして種々の不純物の正確な量を決定するために種々の滴定手順によって取り扱われる必要がある。
【0007】
本発明者らの経験によれば、ラクチド中の不純物の定量のための公知の滴定法は、使用においてかなり扱いにくく、また多くの労力を要する。さらに、そのような定量法の結果は、すぐには利用できない。従って、公知の滴定法による不純物の決定は、比較的高価であり、そして大量生産の状況下でラクチドの品質をオンライでモニターするのにはあまり適さないという欠点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願人の見解によれば、ラクチド物質中の不純物の公知定量法を簡単にするための強い要求が存在する。したがって、本発明の目的は、ラクチド中の不純物の定量のための、正確であるが簡単で、柔軟性があり、費用対効果がある方法を提供することであり、上記方法は、多くの時間および複雑な実験的取り扱いを必要としない。そのような定量法は、好ましくは、ラクチド生産プロセスの種々の段階で操作可能であるべきであり、また、貯蔵中のラクチドの品質のモニターにおいて操作可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のこれらのおよびありうるさらなる目的は、ラクチド中の不純物の量の定量法によって達成され、上記方法はさらに、不純物の定量が、電磁スペクトルの近赤外領域における吸収に関して行われた測定に基づくことを特徴とする。
特に本発明は、ラクチド中の不純物の定量法であって、上記不純物がヒドロキシル基および/またはカルボン酸基を有し、上記定量が、上記不純物および上記ラクチドの二次およびより高次の倍音を捕えるように電磁スペクトルの近赤外領域の12000〜4000cm−1の範囲で記録された吸収スペクトルに関して行われた測定に基づくことを特徴とする方法である。
【0010】
本発明は、ラクチド物質中でかなり少量の不純物が近赤外(nIR)測定によって測定および定量され得るという本発明者らの実験的に得られた洞察に基づく。この方法を使用することによって、ラクチド中の0.1重量%以下と少ない不純物の量が正確かつ再現可能なやり方で測定および定量され得る。公知の滴定法と比較して、本発明方法は、最適な条件下で行われるとき、より正確であるようにみえる。さらに、nIR測定を行うための取り扱い、例えばサンプル作製およびデータ分析は、通常使用される滴定法と比較して、はるかに少ない時間を消費する。実際、滴定による不純物レベルの決定は、測定されるべきサンプルを採取した後、少なくとも数時間かかる。これは、これらの滴定法が、プロセス制御の目的に適しないことを意味する。
【0011】
なお、実際、nIRスペクトルは、約12000〜4000cm
−1の範囲であると定義される。このスペクトル範囲では、ラクチドおよびラクチド中に存在する不純物の分子倍音および結合振動が見えると思われる。対応する吸収ピークはかなり広くそして重複しており、複雑なnIRスペクトルを結果する。これらのスペクトルでは、種々のピークが、特定の振動に一義的に割り当てられ得ない。にもかかわらず、1および2の特定の不純物およびラクチドの両方の十分決定された量の混合物を含むサンプルに関するnIR測定は、驚くべきことに、非常に良好な適合を有する検量線が得られ得ることを示す。従って、ラクチド中の非常に少量のそのような不純物が、nIRによって簡単なやり方で定量され得ると結論され得る。
【0012】
本発明に従う方法の好ましい実施態様は、不純物が水を含むことを特徴とする。ラクチド中の少量の湿気または水ですら、そのようなラクチドの特性および寿命に関して負の効果を有することが知られている。ラクチド中の水の量を100ppmの閾値より下、特に50ppmの閾値より下に保持するという一般的傾向がある。本発明に従う方法によって、20ppm以下の閾値が正確にかつ再現可能に測定され得る。上記方法はしたがって、種々の条件下で、その生産中にオンラインでおよびその貯蔵中にオフラインで、ラクチドサンプル中の水分量(の変化)をモニターするための使用に非常に適する。
【0013】
本発明方法の別の好ましい実施態様は、不純物が遊離酸の種を含むことを特徴とする。「遊離酸種」は、ラクチド中に予想され得る酸性の種、例えば乳酸、ラクトイル乳酸および乳酸オリゴマーならびに2−ピルボイルオキシプロパン酸などの酸化的分解生成物を意味する。ラクチド中のこれらの不純物は、少なくとも1の遊離カルボン酸基を含有する。これらの不純物の少なくとも一部は、ラクチドの分解によって形成され得る。これらの分解生成物の量は、できるだけ少なく、好ましくはラクチド1kgにつき10ミリモルより少なく保持されるべきである。5ミリモル/kgおよびそれよりさらに少ない閾値が、本発明に従う方法によって正確にかつ再現可能に測定され得る。上記方法はしたがって、種々の条件下でラクチドサンプル中の遊離酸の量(の変化)をモニターするための使用に非常に適する。
【0014】
また、不純物の量が、液状集合体相(liquid aggregate phase)にあるラクチド中で測定されることを特徴とする本発明方法の実施態様が好ましい。本発明者らは、本発明の定量法が、ラクチドが液状である温度で容易に実現されることを見出した。実際、これは、上記測定が、メソラクチド中の不純物を測定する場合には約55℃より上の温度で、L−またはD−ラクチドおよび後者の2のラクチドの混合物中の不純物を測定する場合には約100℃より上の温度で行われるべきであることを意味する。
【0015】
また、不純物の量が、固体状集合体相にあるラクチド中で測定されることを特徴とする本発明に従う方法の実施態様も興味深い。実際、これは、任意の種類のラクチド中の言及された不純物の量が、環境温度(または上記ラクチドの融点より低い任意の他の温度)で満足のいくように測定され得ることを意味する。固形ラクチドは、種々の形態で、例えば粉末、顆粒、フレークまたはペレットとして存在し得る。したがって、本発明の方法は、貯蔵されおよび/または輸送されるところの長い期間にわたって、そのタイプ(R,R-、S,S−またはR,Sおよびこれら3タイプの混合物)にかかわらず、固体ラクチドの品質管理を可能にする。
【0016】
また、不純物の量が、ラクチドが乳酸のオリゴマーの解重合によって製造されるところのラクチド製造法において測定されることを特徴とする本発明の実施態様も非常に興味深い。この方法によって得られたラクチドは、その製造のすぐ後に、蒸気状集合体状態(vaporous aggregate state)から液化される。上記製造法におけるこの段階から、液化されたラクチドについて、その品質をモニターするために、インラインnIR測定が行われ得る。その後、上記液化されたラクチドが、必要ならば1以上の蒸留工程後に、1以上の結晶化工程によって固化され得る。ラクチドの品質が、上記精製プロセス全体の間にモニターされ得る。
【0017】
また興味深いのは、製造法がバッチ法であることを特徴とする本発明の方法の実施態様である。本発明に従う方法のこの好ましい実施態様では、不純物の量の定量が、ラクチド製造法の任意の所望の段階で行われ得る。反応全体を時間内にモニターすること、すなわちラクチド製造の開始からその終了までの反応混合物中の遊離酸および水の濃度の変化を連続的に定量することすら可能である。
【0018】
また興味深いのは、ラクチド製造法が連続法であることを特徴とする本発明の方法の実施態様である。そのような連続法では、水および遊離酸などの不純物の量が、ラクチド製造装置における関心のある時点で定量され得る。粗液状ラクチド中および(部分的に)精製された液状ラクチド中などのより多くの関心のある時点の場合には、上記不純物の定量が、多重測定プローブを単一のnIR測定装置と組み合わせて使用することにより行われ得る。得られたデータは、即座に、そして好ましくは単一のデータ計算器を用いて計算され得る。したがって、連続ラクチド製造法において測定された不純物の変化をオンラインでモニターすることが現在可能である。本発明の結果、そのような連続法のプロセスおよび品質管理は、はるかに簡単になっている。さらに、ラクチド製造法中に生じる水および/または遊離酸種の含量の望ましくない逸脱が非常に早い段階で決定され得、その結果、これらの逸脱を修復するためのプロセスパラメータの変化が早い段階で適用され得る。その結果、ありうる生成物損失が最小にされ得る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の定量法は、従来の近赤外測定装置を用いて行われ得る。6100〜5100cm
−1のnIRスペクトル範囲における測定は、最も関係のある情報(一次倍音)を与えるが、12000〜4000cm
−1などのより広いnIR範囲での測定は、このより広い範囲が、測定され得る不純物およびこれらの不純物が存在するところのラクチドの二次およびより高次の倍音を含み得るので、より正確なデータを与える。そのようなnIR装置は、測定チャンバーを含み得、上記チャンバーは、近赤外源および測定プローブを備えている。後者のプローブは、光ファイバーを介して近赤外源およびソフトウエアモジュールに連結され得る。この設計の装置は、ラクチド製造法における不純物のオンライン測定に特に適する。特に好ましいのは、全てが光ファイバーを介してnIR源に連結された多数のプローブを備えたnIR装置である。2以上のプローブを有するそのような装置は、連続ラクチド製造法であって、不純物濃度が上記方法の種々の段階、例えばラクチド精製工程の直前および直後で同時にモニターされるべきところの方法での使用に非常に適する。
【0020】
中赤外測定のために必要な装置と比較して、測定プローブから測定デバイスまでの信号輸送の点で有意な利点がある。これに関して、従来の光ファイバーを介する中赤外信号輸送の範囲が、信号損失故にかなり限られる(数メートル)ことが記される。しかし、近赤外信号は、同じ光ファイバーを通って有意な損失なしに数十メートルを送られ得る。従って、原則として、光ファイバーを介して連結されたいくつかのプローブを有する単一のnIR装置は、ラクチド製造プラントでの完全なラクチド製造をモニターするために使用され得る。
【0021】
本発明が、より詳細に記載され、種々の実施例および図面によって説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、種々の量の遊離酸種および水を有するラクチドの幾つかのnIRスペクトルの重なりを示す。
【
図2】
図2は、ラクチド中の遊離酸種濃度の測定値および計算値の交差検証プロットを示す。
【
図3】
図3は、ラクチド中の水濃度の測定値および計算値の交差検証プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
実験において、約550gのラクチド(極めて少量の遊離酸種および水とともに新しく調製された)が、窒素ブランケット下、500mlの4口丸底フラスコ中で、加熱ジャケットにより溶融された。上記丸底フラスコ内のラクチドの温度が、特別な温度コントローラによって制御された。nIRプローブが、ラクチド液状集合体相に挿入され、そしてデータ獲得が開始された。17秒毎にスペクトルが得られた。不純物の量が、適定によって、特に水含量についてはカールフィッシャー滴定法によっておよび遊離酸種の量の決定のためにカリウムメタノエートを用いる滴定によって、決定された。上記滴定は、730自動サンプラーを有するTitrino736装置を使用して行われた。サンプリングのときを使用して、結果を、対応する測定モデルを開発するために使用された単一のnIRスペクトルと関係づけた。
【0024】
図1に、幾つかのnIRスペクトルの重なりを示す。ここで、吸収Aが、波数W(cm
−1)の関数として表わされる。より詳細には、この図は、決定された量の水および遊離酸種が存在するところの液体状態における測定されたラクチドの一連のnIRスペクトルを示す。液状集合体状態でのラクチドのスペクトルが、約12000〜4000cm
−1の範囲にわたって、送信モードで記録された。そのスペクトルが示されたラクチドサンプルの水含量および遊離酸種含量はそれぞれ、10〜381ミリモル/ラクチドkgおよび0.0113〜0.695%(w/w)の範囲であった。測定は、Bruker MPA Matrix F duplex NIRスペクトロメーターを用いて行われた。本発明に従う定量法に関する特に関心のあるピークは、7300〜4500cm
−1のスペクトル範囲に位置する。これは、関心のある種々の分子中の分子OH結合の振動が倍音を示すところの領域である。
【0025】
図2は、新しく調製されたラクチドにおける遊離酸の測定された量(ミリモル/kg)のいわゆる交差検証曲線(cross validation curve)を示す。この図では、モデル濃度(C
m)が、実験的に決定された濃度(C
exp)の関数としてプロットされる。これらの曲線を決定するために、少量の乳酸が、ある期間中に上記混合物に添加された。多数の時点で、測定サンプルがフラスコから採取され、上記サンプルは凍結され、そして遊離酸の量が滴定によって決定された。サンプル採取時に、nIRスペクトルが、示された領域にわたって記録された。滴定結果、記録されたスペクトルおよび使用されたソフトウエアに基づいて、検量線および交差検証曲線の両方について、プロットに最もよく当てはまる線を得ることができた。
【0026】
図2から、使用されたnIRスペクトルにより、純粋なラクチド中の遊離酸種の量を6〜600ミリモル/kgの範囲で4ミリモル/kgの信頼間隔(RMSECV、これは、モデル全体の誤差であり、検量線の下方部分ではこの誤差は1ミリモル/kgになる)で決定することが可能であると結論付けられ得る。これらの初期の実験では、上記システムをより少ない遊離酸数で試験することができなかった。なぜならば、材料が溶融されなければならなかったし、少量の空気が上記機構に入って水の吸収を結果し、それが次いで(部分的に)遊離酸に転化され得るからである。後の実験では、2ミリモル/ラクチドkgと少ない遊離酸種量が、nIRによって、0.33ミリモル/kgの信頼レベルRMSECVで測定できた(交差検証プロットは示さず)。
【0027】
図3は、新しく調製されたラクチド中の水の測定された量(w/w)の交差検証曲線を示す。この図では、モデル濃度(C
m)が、実験的に決定された濃度(C
exp)の関数としてプロットされる。これらの曲線を決定するために、上記サンプルに、ある期間中に水を吸収させた。多数の時点で、測定サンプルがフラスコから採取され、上記サンプルは凍結され、そして水の量が滴定によって決定された。サンプル採取時に、nIRスペクトルが、示された領域にわたって記録された。滴定結果、記録されたスペクトルおよび使用されたソフトウエアに基づいて、検量線および交差検証曲線の両方について、プロットに最もよく当てはまる線を得ることができた。
【0028】
図3から、使用されたnIR法により、純粋なラクチド中の水の量を0.006〜0.2%(w/w)の範囲で、0.01%(w/w)の信頼間隔で決定することができると結論付けられ得る。水の上記決定の正確性は、遊離酸種の量の正確性と比較してあまり良好でない(相関係数0.9681対0.9999)。これは、部分的に、使用された参照法がより大きい信頼間隔を有するという事実による。
【0029】
遊離酸滴定の相対標準偏差(RSD)は、2.5%未満である。水滴定の場合には、RSDははるかにより高い。上記サンプルは、空気からの水分に非常に敏感である。水決定のより小さい精度は、恐らく、サンプルの安定性およびサンプリングと分析との間にかかる時間(数分)によって引き起こされる。NIR法の精度は、使用された参照法の精度と比較して等しいかより小さいであろう。
【0030】
上記実験結果に加えて、両方の言及された不純物(水および遊離酸)が、ラクチドサンプル中で同時に測定されそして定量され得ることも示された。
【0031】
まとめると、本発明のラクチド定量法により、少量の不純物、例えば水および遊離酸が、ラクチドの反応混合物中で比較的簡単なやり方でオンライン決定され得ることが分かった。
【0032】
本発明が上記記載において詳細に説明され、そして記載されたが、そのような記載は、例示であり、限定的でないと考えられるべきであり、本発明は、開示された実施態様および実験に限定されない。開示された実施態様の変形は、上記開示および特許請求の範囲を検討することにより、本発明を行う当業者によって理解され、そして行われ得る。
【0033】
特許請求の範囲において、用語「含む」は、他の要素または工程を排除するものでなく、不定冠詞「1の」は、複数を排除しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項で記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示さない。