【実施例】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の好ましい一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
【0029】
実施例1
図1は、実施例1によるコーティング層の断面をFIB(Focus Ion Beam)で加工した後、TEMで撮った写真である。
図1では、下記のような無方向性電磁鋼板組成物を用意した。
【0030】
Epoxy−SiO
2系有/無機複合Compositeに、リン酸(H
3PO
4)および水酸化ナトリウム(NaOH)を溶解した。使用されたEpoxy接着樹脂の分子量は約2万であり、Epoxy接着樹脂に置換されたSiO
2であり、粒子の大きさはそれぞれ10nmであり、粒子の重量%は10重量%である。溶解したリン酸(H
3PO
4)および水酸化ナトリウム(NaOH)は、Epoxy−SiO
2系有/無機複合Composite100重量%に対比して、それぞれ3重量%および5重量%である。
【0031】
無方向性電磁鋼板(50X50mm)を供試片とし、前述した組成物を用意された各供試片に一定厚さ約5.0μm塗布した後、前記塗布された無方向性電磁鋼板組成物を500℃で15秒間硬化した。
【0032】
図1から明らかなように、コーティング層内に無機ナノ粒子が均一に分布しており、コーティング層内に無機ナノ粒子がコーティング層内で結合(cohesion)または凝集(aggregation)現象なしにコーティング層全体にわたって一定に分布していることが分かる。
【0033】
図2は、実施例1によるコーティング層内に溶解している無機添加物の分布を示すTEM写真である。無機物内に含まれている成分(Na、P)もコーティング層内に均一に分布していることが分かる。
【0034】
上記で言及した無機ナノ粒子と無機添加物のコーティング層内への均一な分布は、接着樹脂の耐熱性(Heat Resistance)を向上させ、これによって接着溶液の高温接着力を環境にやさしい自動車(HEV、EV)の駆動モータで要求されるレベル以上に満足させることができる。
【0035】
実施例2
下記表1のように、有/無機複合無方向性電磁鋼板組成物に無機ナノ粒子を置換させる前の分子量に応じたコーティング後の表面状態と常温および高温接着力を測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
バーコーター(Bar Coater)を用いて、用意された無方向性電磁鋼板の両面に、前記表1で用意した組成物を約5μmの厚さに塗布し、乾燥温度600℃で15秒間硬化後、常温でゆっくり冷却した。
コーティングされた試片を一定の大きさ(50mmX50mm)に切断後、高さ30mmに積層して、加圧力200N下、熱融着温度および時間をそれぞれ200℃、30分間維持させた。
前記条件で熱融着されたサンプルを、引張力測定装置を用いて接着力を測定した。使用した引張力測定装置は、上記で用意されたサンプルを熱融着後、JIGで固定後、常温および高温で引張力を測定する装置である。
この時測定された値は、積層されたサンプルの界面のうち最小接着力を有する界面が脱落する値である。前記条件で常温でも同様の実験を繰り返し、接着力の程度を判断した。
【0038】
前記表1から明らかなように、塗布されたコーティング層の表面は、分子量が高いほど、表面に斑点および縞などの欠陥が発生する傾向を示しており、一般に、接着樹脂の分子量が増加するほど、接着力は増加した。150℃での高温接着力は劣っており、分子量が低い場合、接着力は非常に劣っていた。
【0039】
下記表2では、エポキシ系有/無機複合組成物溶液に置換されている無機ナノ粒子の種類、大きさおよび置換量に応じた組成物の安定性、常温/高温接着力および高温耐油性を測定した。
【0040】
【表2】
【0041】
比較例として、分子量が約3万の水溶性エポキシ接着樹脂を使用したところ、100%エポキシ接着樹脂の場合、接着溶液の安定性と常温接着力には優れているものの、高温接着力と高温耐油性が非常に劣っていることが分かる。
【0042】
エポキシ接着樹脂が有する高温接着性と高温耐油性に劣るという限界を克服するために、本発明の一実施形態は、コロイダル状態の無機ナノ粒子を置換させた組成物形態の接着溶液を提案したのである。
【0043】
前記表2から明らかなように、エポキシ−SiO
2系組成物の場合、無機ナノ粒子の大きさと置換量に関係なく溶液安定性と常温接着力に優れているものの、高温接着力は、無機ナノ粒子が大きいほど、および/または置換させたSiO
2の量が多いほど劣る傾向を示している。
【0044】
また、高温耐油性は全般的に劣り、特に無機ナノ粒子の大きさが大きいほど、および/または置換させた無機ナノ粒子の量が多いほどより劣る傾向を示している。
【0045】
これは、無機ナノ粒子の大きさが大きいほど、試片と試片との間の境界面に、相対的に大きな粒子によって弱い境界層が形成され、この弱い境界層を通して、高温(約150〜170℃)時に界面にオイル(oil)が侵入して、界面間の接着性を顕著に劣らせるという理由からであると考えられる。
【0046】
エポキシ−TiO
2系組成物およびエポキシ−ZnO系組成物は、エポキシ−SiO
2系組成物に比べて溶液安定性と常温接着力にやや劣るものの、全般的に優れた特性を持っている。しかし、高温接着力および高温耐油性は、相対的に大きな無機ナノ粒子の大きさと置換量の多さにより、エポキシ−SiO
2系組成物に比べてより劣る傾向を示している。
【0047】
下記表3は、上記で言及した3種類の有/無機複合組成物(Epoxy−SiO
2系、Epoxy−TiO
2系、Epoxy−ZnO系)の高温接着性および高温耐油性を極大化するために、一定量の水酸化ナトリウム(NaOH)および/またはリン酸(H
3PO
4)を前記組成物に溶解した後の特性を評価した結果である。
【0048】
【表3】
【0049】
前記表2による組成物に、酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H
3PO
4)を、前記全体組成物100重量%に対比して、前記表3のそれぞれの含有量だけ投入した。
使用されたエポキシ樹脂の分子量は約3万であり、前記エポキシ樹脂に置換されたSiO
2、TiO
2およびZnOの粒子の大きさはそれぞれ25nm、20nmおよび10nmであり、粒子の含有量は、無機添加物を投入する前の全体エポキシ樹脂100重量%に対して、それぞれ20重量%、15重量%および30重量%である。
【0050】
コーティング後の、無方向性電磁鋼板の基本表面特性(絶縁性、耐食性、密着性など)は優れており、また、加工性(スリッティング性または打抜性)にも優れていた。
前記表3から明らかなように、溶液安定性は、水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H
3PO
4)の溶解量が多いほど劣る傾向を示している。
常温接着力は、置換された無機粒子の種類および大きさに関係なく全般的に優れていたが、水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H
3PO
4)の溶解量が増加するほど劣る傾向を示している。これは、コーティング層内における接着樹脂の量が無機ナノ粒子および無機添加物に比べて相対的に小さいからである。
高温接着力と高温耐油性は、類似する特性を示しており、エポキシ−SiO
2系組成物の場合、溶解した水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H
3PO
4)の量が1〜15重量%の時、2つの特性とも優れていた。
【0051】
また、エポキシ−TiO
2系組成物とエポキシ−ZnO系組成物の場合も同様に、溶解した水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H
3PO
4)の量が適正レベルの時、2つの特性とも優れていた。これにより、溶解した水酸化ナトリウム(NaOH)またはリン酸(H
3PO
4)だけでなく、置換させた無機ナノ粒子の大きさおよび量とも関連があることが分かる。
【0052】
一般に、全体に置換および溶解した無機物(無機ナノ粒子、無機添加物)の量が小さすぎると、溶液内に含まれている接着樹脂の比率が相対的に低くて耐熱性が劣り、高温接着力と高温耐油性に劣ることがある。
一方、無機物(無機ナノ粒子、無機添加物)の量が多すぎると、無機物によって耐熱性は良くなるものの、溶液内に含まれている接着樹脂の比率が相対的に低く、高温接着力と高温耐油性に劣ることがある。
全組成物内の無機物の含有量は、0.05〜0.6重量%の場合が好適であり得る。ただし、これに制限されるわけではない。
【0053】
前記溶液安定性は、無機ナノ粒子が置換された有/無機複合組成物または無機添加物が溶解した有/無機複合組成物を、撹拌機によって30分間強く撹拌した後、混合した溶液を30分間維持する。その後、被膜組成物内における沈殿やゲル(Gel)現象の有/無を判断した。
【0054】
前記常温および高温接着力は、片面に一定厚さに塗布したサンプルを積層後、一定条件下、熱融着をした後、常温および高温(150℃)で接着力測定装置によって測定した。常温での測定値が、接着力が2.0MPa以上の時に非常に優れる、1.0MPa以上の時に優れる、0.5MPa以上の時に普通、0.5MPa以下の時に劣ると表現した。一方、高温での接着力は、1.0MPa以上の時に非常に優れる、0.5MPa以上の時に優れる、0.3MPa以上の時に普通、0.3MPa以下の時に劣ると表現した。
【0055】
前記高温耐油性は、熱融着されたサンプルを、高温(170℃)のATF(Automatic Transmission Fluid)オイル(oil)に3時間以上維持した後、ゆっくり冷却させて、常温での表面状態および接着力を測定した。表面状態を観察した時、オイルが一枚コア(core)間の界面に侵入したり、接着コーティング層がATFオイルによって溶けてはならない。耐油性の判断基準として、高温ATF実験を経たサンプルの接着力が1.0MPa以上の時に非常に優れる、0.5MPa以上の時に優れる、0.3MPa以上の時に普通、0.3MPa以下の時に劣ると表現した。
【0056】
本発明は、上記の実施例に限定されるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造可能であり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができる。そのため、以上に述べた実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。