(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態に係る海底資源採掘収集装置を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0014】
まず
図1〜
図7を参照して、本発明の第1の実施形態に係る海底資源採掘収集装置を説明する。
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る海底資源採掘収集装置1は、水深数千mの海底100に存在するマンガンノジュールなどの海底資源(いわゆる海底鉱物資源)を採掘収集するための装置である。以下においては、マンガンノジュール(マンガン団塊)を採掘収集するための装置として、海底資源採掘収集装置1を用いる場合についての説明を行うものとする。
【0015】
この海底採掘収集装置1は、
図1に示すように、母船2からドラムローラ3を介して、海中に吊り下げられるワイヤー10と、浮体連結具20と、浮体30と、海底資源採掘収集ユニット40とで構成される。
【0016】
前記ワイヤー10は、海底資源採掘収集ユニット40を海中に吊り下げるための吊り下げ部材である。
本実施形態においては、
図1(b)に示すように、複数本の鋼線を撚ってなる1本のワイヤー10を用いる形態としてある。なお鋼線としては、例えば高張力鋼線などを用いることができる。
また鋼線からなる撚線としては、いわゆるS撚り、Z撚りの何れの撚線を用いる構成としてもよい。
このワイヤー10は、
図1(a)に示すように、母船2に積載されるドラムロール3を介して、採掘時には海中に吊り下げられ、回収時には巻き取られる。なお、ドラムロール3は図示しないウィンチなどの駆動手段により駆動される。
ワイヤー10の直径、硬度、長さなどは、海底資源の採掘を行う深度、水圧や、浮体30の材質、大きさ、形状や、海底資源採掘収集ユニット40で採掘収集を行う海底資源の量などを考慮して、適宜変更することができる。
【0017】
また
図2、
図3に示すように、ワイヤー10の外周に、所定間隔をあけて凸状の嵌合用凸部である連結用リブ11を設けてある。なお、連結用リブ11の形状は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
この連結用リブ11は、例えばワイヤー10の外周に溶接などを用いて形成することができる。
【0018】
前記浮体連結具20は、ワイヤー10に浮体30を着脱自在に取り付けるための治具である。
この浮体連結具20は、
図2〜
図4に示すように、連結具本体21と、連結具22とで構成される。
【0019】
前記連結具本体21は、ワイヤー10に着脱自在に取り付け可能なもので、浮体連結具20の本体部を構成するものである。
本実施形態においては、略円柱状の鋼材で連結具本体21を形成する構成としてある。なお、鋼材としては、例えば高張力鋼を用いることができる。勿論、連結具本体21の材質は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
また連結具本体21の中央位置には、連結部本体21にワイヤー10を挿通させるための挿通用貫通孔21aを設けている。更に
図2、
図3に示すように、挿通用貫通孔21aにおける連結具本体21の上面側の一部には、連結用リブ11を受け入れて嵌合させるための嵌合用凹所21bを設けてある。
【0020】
また本実施形態においては、
図2に示すように、挿通用貫通孔21aにおけるワイヤー10との接触部分と、嵌合用凹所21bにおける嵌合用凸部(連結用リブ11)との接触部分とに、ベアリング21cを設けてある。このベアリング21cは、挿通用貫通孔21a及び嵌合用凹所21bに設けるベアリング用溝21dに配置されている。
【0021】
また
図3に示すように、連結具本体21の外周には、連結具22を連結させるための環状の連結部21eを設けてある。
なお、連結部21eの形状、大きさは、本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0022】
また本実施形態においては、
図3、
図4に示すように、連結具本体21には、外周面から挿通用貫通孔21aまで連通する切欠き21fを設ける構成としてある。より具体的には、連結具本体21の上面Tから下面Uまで続くと共に、連結具本体21の外周面から挿通用貫通孔21aまで連通する切欠き21fを設ける構成としてある。
更に
図4に示すように、この切欠き21f内に露出する位置に、切欠き21fを介して挿通用貫通孔21aに挿通させたワイヤー10が、挿通用貫通孔21aから抜け出ることを防止するための吊り下げ部材抜け止め防止具21gを設けてある。
【0023】
この吊り下げ部材抜け止め防止具21gは、挿通用貫通孔21aと直交する方向で、且つ挿通用貫通孔21aの中心に向かう方向に付勢力を発生させるバネGと、バネGの先端に取り付けられる抜け止め防止用球Hとからなる。
より具体的には、切欠き21fと直交する方向に、切欠き21fと連通する一対のバネ収容溝21hを対向させて設け、この一対のバネ収容溝21h内に、切欠き21fと直交する方向で、且つ挿通用貫通孔21aの中心に向かう方向に付勢力を発生させるバネGをそれぞれ配置してある。更に一対のバネGの先端に、切欠き21f内に露出する抜け止め防止用球Hを一対設ける構成としてある。また一対の抜け止め防止用球H間の距離を、ワイヤー10の直径よりも小さい構成としてある。
【0024】
このような構成とすることで、挿通用貫通孔21aにワイヤー10を挿通させる際、
図3、
図4(a)、(b)に示すように、切欠き21fを介してワイヤー10を挿通用貫通孔21aの方向へと水平移動させるだけで、バネGの付勢力に抗してワイヤー10を挿通用貫通孔21aに挿通させることができると共に、挿通用貫通孔21aからワイヤー10が抜け出ることを効果的に防止することができる。
つまり、挿通用貫通孔21aにワイヤー10を挿通させる際には、
図4(a)〜
図4(c)に示すように、ワイヤー10を連結具本体21の中心へと向けて水平移動させる。これによって、ワイヤー10は切欠き21fと直交する方向にバネ付勢される一対の抜け止め防止用球Hと接触し、一対の抜け止め防止用球Hを連結具本体21の外方への押圧しながら、バネGの付勢力に抗して一対の抜け止め防止用球Hの間を通過して挿通用貫通孔21a内に挿通される。この時、一対の抜け止め防止用球Hは、バネGによる付勢力によって元の位置(
図4(a)に示す位置)へと戻されている。よってバネGによる付勢力を介して連結具本体21の内側に向かう方向に付勢される一対の抜け止め防止用球Hによって、ワイヤー10が挿通用貫通孔21aから抜け出ることを効果的に防止することができる。
一方、挿通用貫通孔21aからワイヤー10を取り出す際には、
図4(c)〜
図4(a)に示すように、ワイヤー10を連結具本体21の外方へと向けて水平移動させる。ワイヤー10は、バネGによる付勢力を介して連結具本体21の内側に向かう方向に付勢される一対の抜け止め防止用球Hと接触し、バネGの付勢力に抗して一対の抜け止め防止用球Hの間を通過して挿通用貫通孔21aから取り出される。
以上のように、ワイヤー10を水平方向に移動させるだけで、挿通用貫通孔21aの内外へとワイヤー10を容易に移動させることができると共に、挿通用貫通孔21aに挿通させたワイヤー10が挿通用貫通孔21aから抜け出ることを効果的に防止することができる。
【0025】
本実施形態においては、
図1に示すように、このような構成からなる連結具本体21を、ワイヤー10に所定の間隔を空けて複数個取り付ける構成としてある。
ここで「所定の間隔を空けて複数個」とは、海底資源の採掘を行う深度、水圧や、ワイヤー10の材質、硬度、長さ、本数や、浮体30の材質、大きさ、形状や、海底資源採掘収集ユニット40で採掘収集を行う海底資源の量などを考慮して、ワイヤー10に破断が生じることを効果的に防止できる間隔、個数を意味するものである。
【0026】
前記連結具22は、連結具本体21と浮体30とを連結するためのものである。
本実施形態においては、
図3に示すように、衝撃吸収機構を備える鋼材からなるスプリングで連結具22を形成する構成としてある。鋼材としては、例えば高張力鋼を用いることができる。勿論、鋼材の材質は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
また連結具22の両端に、環状の連結部22aを備える構成としてある。この環状の連結部22aは、一方が連結具本体21の連結部21eと連結される連結部となり、他方が浮体30と連結される連結部となる。
なお本実施形態においては、連結具22としてスプリングを用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えば連結具22としてショックアブソーバーを用いる構成としてもよい。つまり連結具22は、衝撃吸収機構を備えるものであれば、如何なるものを用いる構成としてもよい。
また連結部22aの形状、大きさも本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0027】
前記浮体30は、ワイヤー10に浮力を付加し、これによってワイヤー10に負荷される重力を軽減させるためのものである。
本実施形態においては、チタン鋼で形成される閉塞した球体の内部に空気を充填してなる浮体30を用いる構成としてある。勿論、浮体30に充填されるものは空気に限るものではなく、ワイヤー10に浮力を付加できるものであれば、如何なるものであってもよい。
なお、浮体30の大きさや数は、海底資源の採掘を行う深度、水圧や、ワイヤー10の材質、硬度、長さ、本数や、浮体30の材質、大きさ、形状や、海底資源採掘収集ユニット40で採掘収集を行う海底資源の量などを考慮して、ワイヤー10に破断が生じることを効果的に防止できる大きさ、数とすることができる。望ましくは、ワイヤー10の重量を0とすることが可能な大きさ、数とすることが好ましい。
但し、全ての浮体30をワイヤー10に取り付けた状態において、海底資源採掘収集ユニット40を海底100まで降下させ、海底100に着底させることできる構成を満たすものであることが必要である。
また浮体30の形状は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
このような浮体30は、
図3に示すように、浮体30の外面に設ける連結部31を介して、連結具22と連結されている。
【0028】
前記海底資源採掘収集ユニット40は、海底資源の採掘収集を行うためのものである。
本実施形態においては、
図5〜
図7に示すように、海底資源採掘収集ユニット40は、採掘収集車両41と、採掘収集車両格納保持具42とで構成される。
【0029】
前記採掘収集車両41は、海底資源を採掘収集するための車両である。
この採掘収集車両41は、
図5(b)、
図6に示すように、底板41aと、本体41bと、停止用凸部41cと、車輪41dと、採掘用歯41eと、連結部41fとで構成される。
【0030】
前記底板41aは、採掘収集車両41の土台となると共に、採掘した海底資源の荷台を構成するものである。
本実施形態においては、
図6(c)に示すように、矩形状で、複数の貫通孔Kを備える網目状の底板41aを用いる構成としてある。なお網目の大きさは、採掘収集したマンガンノジュールの塊が落下しない大きさとすることが必要である。
また底板41aの形状は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0031】
前記本体41bは、採掘収集車両41の骨格を構成するものである。
本実施形態においては、
図5(b)、
図6に示すように、底板41aの長手方向両側から起立する矩形状の一対の側板Mと、底板41aの後方側端部から起立する矩形状の後方板Nとで本体41bを形成する構成としてある。なお、ここで「後方」とは、採掘収集車両41が進む方向を前方、その反対側を後方とするものである。
つまり本実施形態における採掘収集車両41は、前方と上方が開放されていると共に、底が網目状となっている荷台を備える構成となっている。
また本体41bを構成する側板Mと後方板Nとの形状は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0032】
前記停止用凸部41cは、採掘収集車両41をワイヤー10で牽引して移動させた際に、採掘収集車両格納保持具42と接することで、採掘取集車両41の移動を停止させるためのものである。
本実施形態においては、
図5(b)に示すように、一対の側板Mの前方側端部の上面で、且つ一対の側板Mと直交する方向に、矩形状の板材を載置させて停止用凸部41cを形成する構成としてある。
また停止用凸部41cの形状は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0033】
前記車輪41dは、採掘収集車両を移動させるためのものである。本実施形態においては、一対の側板Mに、それぞれ二つずつ車輪41dを設ける構成としてある。
【0034】
前記採掘用歯41eは、海底を掘り起こして、マンガンノジュールを採掘するためのものである。
本実施形態においては、
図5(b)、
図6に示すように、底板41aの前方側端部に、三角形の板材を斜め下方に傾斜させて配置することで、採掘用歯41eを形成する構成としてある。
また採掘用歯41eの形状は本実施形態のものに限るものではなく、海底を掘り起こして、マンガンノジュールを採掘可能なものであれば、適宜変更可能である。
【0035】
前記連結具41fは、ワイヤー10との連結部を構成するものである。
本実施形態においては、底板41aの前方側端部中央に、ワイヤー10を挿通可能な貫通孔を備える略T字形状の板材を延出させることで、連結具41fを形成する構成としてある。
また連結具41fの形状は本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0036】
なお、既述した底板41a、本体41b、停止用凸部41c、車輪41d、採掘用歯41e、連結具41fは、例えば高張力鋼などの鋼材で形成することができる。
【0037】
前記採掘収集車両格納保持具42は、採掘収集車両41を内部に格納保持すると共に、採掘収集車両41の走行路を形成するためのものである。更に採掘収集したマンガンノジュールを海上まで運搬するための運搬具となるものである。
この採掘収集車両格納保持具42は、採掘収集車両格納室42aと、浮体収納室42bと、フレーム42cと、連結バー42dと、滑車42eとで形成される。
【0038】
前記採掘収集車両格納室42aは、採掘収集車両41を内部に格納保持すると共に、採掘収集車両41の走行路を形成するためのものである。
本実施形態においては、
図5〜
図7に簡略化して示すように、細長い板材からなる二枚の第1の底面フレームV1と、第1の底面フレームV1よりも長さが短い二枚の第2の底面フレームV2とを矩形状に配置してある。また第1の底面フレームV1の外方側端部から細長い板材からなる側面フレームWを起立させて設けてある。また側面フレームWの長手方向両端から細長い板材からなる連結フレームXを起立させて設けてある。更に連結フレームXと交差する位置で、且つ側面フレームWと対向する位置に、細長い板材からなる二枚の第1の上面フレームZ1を配置すると共に、第1の上面フレームZ1よりも長さが短い二枚の第2の上面フレームZ2を、対向する第1の上面フレームZ1の両端を連結する位置に配置してある。そして、このような第1の底面フレームV1、第2の底面フレームV2、側面フレームW、連結フレームX、第1の上面フレームZ1、第1の上面フレームZ2とで採掘収集車両格納室42aを形成する構成としてある。
このような構成とすることで、採掘収集車両格納室42aを、上方、下方、前方、後方、側方に開口を備える空間として構成することができる。特に、下方側の第1の底面フレームV1、第2の底面フレームV2の間に形成される開口を、採掘収集車両41の底板41aを露出可能な底板露出用開口部Dとして構成することができる。
また二枚の第2の上面フレームZ2のうち、前方側の第2の上面フレームZ2を、採掘収集車両41に備える停止用凸部41cとの接触板とすることができる。よって
図6(a)に示す採掘収集車両格納室42aの高さEは、採掘収集車両41の高さと略同一であることが必要である。
なお、第1の底面フレームV1、第2の底面フレームV2、側面フレームW、連結フレームX、第1の上面フレームZ1、第2の上面フレームZ2は、例えば高張力鋼などの鋼材で形成することができる。
【0039】
前記浮体収納室42bは浮体30を収納する空間を構成するものである。
本実施形態においては、
図5〜
図7に簡略化して示すように、板材を用いて、内部に空間を備える密閉された直方体形状に形成することで浮体収納室42bを形成する構成としてある。
また
図7に示すように、複数の仕切板Sで区分けされた複数の部屋を備える空間として浮体収納室42bを形成してある。そして各部屋の中に一つの浮体30を収納する構成としてある。
この浮体収納室42bは、溶接などを用いて第1の上面フレームZ1、第2の上面Z2と連結されて、採掘収集車両格納室42aの上方に配置されている。
なお、この浮体収納室42bは、例えば溶接などを用いて六枚の板材を貼り合わせることで形成することができる。
【0040】
前記フレーム42cは、採掘収集車両格納保持具42の、いわゆる把持部となるものである。また滑車42eを備える連結バー42dを取り付けるためのものである。
本実施形態においては、L字状の細長い板材を中央で屈曲させてなる一対のL字型のフレーム42cを、浮体収納室42bの上面に対向させて配置する構成としてある。より具体的には、
図5に示すように、浮体収納室42bの上面の長手方向の両端に、L字型のフレーム42cの両端を連結させる構成としてある。なお、L字型のフレーム42cと浮体収納室42bとの連結は、例えば溶接などを用いて行うことができる。
【0041】
前記連結バー42dは、一対のフレーム42cを連結すると共に、滑車42eを取り付けるためのものである。
本実施形態においては、
図5に示すように、L字型の一対のフレーム42cの頂点部分を結ぶ位置に、円柱状部材を配置して連結バー42dを形成する構成としてある。
なお、この連結バー42dは、例えば溶接などを用いてフレーム42cに取り付けることができる。
【0042】
前記滑車42eは、ワイヤー10を通して力の方向を変えるためのものである。
本実施形態においては、
図5に示すように、三つの滑車42eを用いる構成としてある。
具体的には、連結バー42dの中央位置と、浮体収納室42bの前方側の上面及び前方側の側面に三つの定滑車たる滑車42eを配置する構成としてある。
【0043】
なお図示していないが、本実施形態においては、海底100に着底するまでは、採掘収集車両格納保持具42に取り付けられて採掘収集車両41の走行を阻害し、海底100に着底することで採掘収集車両格納保持具42から自動的に取り外されて採掘収集車両41の走行を開始可能とする、いわゆるストッパーを採掘収集車両格納保持具42に配置する構成としてある。
【0044】
既述した浮体収納室42b、フレーム42c、連結バー42は、例えば高張力鋼などの鋼材で形成することができる。
【0045】
次に、このような構成からなる海底資源採掘収集装置1を用いて海底資源を採掘収集する方法を説明する。
まず、マンガンノジュールの採掘場所の海面に停泊させた母船2から、ドラムロール3を介して、海底資源採掘収集ユニット40を先端に連結させたワイヤー10を送り出す。
【0046】
この際、
図3に示すように、ワイヤー10に、予め連結具本体21を連結させておく。具体的には、母船2の船上において、連結具本体21を切り欠き21fの側からワイヤー10へと押し込み、挿通用貫通孔21aにワイヤー10を挿通させ、浮体連結具20を海面へと落下させる。この際、浮体連結具20には、浮体30が連結されていることから、浮体連結具20は、海面に浮いた状態となると共に、嵌合用凹所21bに連結用リブ11を嵌合させるための待機状態となる。
【0047】
そしてワイヤー10を更に海中へと送り出すことで、連結用リブ11と浮体連結具20の嵌合用凹所21bとが嵌合する。これによってワイヤー10に浮体連結具20が取り付けられ、浮体30は、浮体連結具20と共に海中へと降下される。
以後は、上記動作を繰り返すことで、ワイヤー10に所定の間隔をあけて複数の浮体30が配置される(取り付けられる)。
【0048】
全ての浮体30が取り付けられた状態において、更にワイヤー10を海中へと送り出し、海底資源採掘取集ユニット40を海底100に着底させる。
海底資源採掘取集ユニット40が海底100に着底すると、採掘収集車両格納保持具42に備えられた採掘収集車両41の走行を阻害するストッパーが自動的に取り外される。
【0049】
そしてワイヤー10を巻き上げることで、連結部41fに取り付けられているワイヤー10が、滑車42eを介して巻き上げられる。これによって、
図6(a)、
図6(b)に示すように、採掘収集車両格納室42aの最も後方に配置されていた採掘収集車両41が、第1の底面フレームV1上を牽引走行されて、採掘収集車両格納室42aの前方まで移動される。この際、採掘用歯41eによって、海底100に分布するマンガンノジュールがかき出されると共に、底板41a上に載置される。
そして停止用凸部41cが、前方側に配置される第2の上面フレームZ2に接触することで、採掘収集車両41の走行が停止される。
以上により、採掘収集車両41によって海底100のマンガンノジュールが採掘収集される。
【0050】
次にワイヤー10を更に巻き上げることで、マンガンノジュールを採掘収集し終えた海底資源採掘取集ユニット40が海面まで浮上される。
その後、海面まで達した海底資源採掘収集ユニット40は、母船2に配備される図示しないクレーンを用いて母船2上へと引き上げられる。
以上により、本発明の実施形態に係る海底資源採掘収集装置1を用いたマンガンノジュールの採掘収集が終了する。
【0051】
上記のような構成からなる本発明の第1の実施形態に係る海底資源採掘収集装置1は、以下の効果を奏する。
【0052】
ワイヤー10に所定の間隔をあけて複数の浮体30を配置してあることで、ワイヤー10に負荷される重力を効果的に低減させることができる。よって数千mの深海底までワイヤー10を送り出す場合においても、ワイヤー10が自重や水圧などにより、破断することを効果的に防止することができる。
【0053】
またワイヤー10に浮体30を着脱自在に取り付け可能な浮体連結具20を備える構成とすることで、ワイヤー10に浮体30を容易に取り付けたり、取り外したりすることができる。よって作業効率の良い海底資源採掘収集装置とすることができる。
【0054】
また浮体連結具20に、衝撃吸収機構を備えるスプリングからなる連結具22を備える構成とすることで、海面で待機状態にある嵌合用凹所21bに連結用リブ11が嵌合する際、連結具本体21の連結部21e、連結具22の連結部22a、浮体30の連結部31に大きな力が負荷されるところ、スプリングからなる連結具22によって、連結部21e、連結部22a、連結部31に負荷される力を効果的に吸収し、連結部21e、連結部22a、連結部31が破断して浮体連結具20から浮体30が外れることを効果的に防止することができる。
また海中においても、海流などによって連結部21e、連結部22a、連結部31に負荷される力を連結具22で効果的に吸収させることができ、連結部21e、連結部22a、連結部31が破断して浮体連結具20から浮体30が外れることを効果的に防止することができる。
【0055】
またワイヤー10に連結用リブ11を設けると共に、連結具本体21に連結用リブ11が嵌合する嵌合用凹所21bを設け、予めワイヤー10を挿通させて待機状態にある嵌合用凹所21bに連結用リブ11を嵌合させて、ワイヤー10に浮体連結具20を連結させる構成とすることで、ワイヤー10への浮体連結具20の取り付けを容易且つ確実なものとすることができる。
またワイヤー10から浮体連結具20を取り外す際においても、嵌合用凹所21bを備える連結具本体21には浮体30が取り付けられていることから、ワイヤー10を海面から上昇させるだけで、嵌合用凹所21bと連結用リブ11との嵌合を容易に解除することができる。よって、ワイヤー10から取り外し容易な浮体連結具20とすることができる。
従ってワイヤー10への着脱が一段と容易な浮体連結具20とすることができる。
【0056】
また挿通用貫通孔21aにおけるワイヤー10との接触部分と、嵌合用凹所21bにおける連結用リブ11との接触部分とに、ベアリング21cを設ける構成とすることで、撚り線からなるワイヤー10が、荷重に伴い回転した場合であっても、ベアリング21cによって浮体連結具20自体が回転することを効果的に防止することができる。よって、浮体30を連結している連結具22がワイヤー10に巻きつくことを効果的に防止することができる。
【0057】
また連結具本体21の上面Tから下面Uまで続くと共に、連結具本体21の外周面から挿通用貫通孔21aまで連通する切欠き21fを設けると共に、切欠き21f内に露出する位置に、切欠き21fを介して挿通用貫通孔21aに挿通させたワイヤー10が、挿通用貫通孔21aから抜け出ることを防止するための吊り下げ部材抜け止め防止具21gを配置してあることで、挿通用貫通孔21aにワイヤー10を挿通させる際、
図3、
図4(a)、
図4(b)に示すように、切欠き21fを介してワイヤー10を挿通用貫通孔21aの方向へと水平移動させるだけで、バネGの付勢力に抗してワイヤー10を挿通用貫通孔21aに挿通させることができると共に、挿通用貫通孔21aからワイヤー10が抜け出ることを効果的に防止することができる。
【0058】
また採掘収集車両格納保持具42を海底100に着地させた後に、ワイヤー10を巻き上げ、これによって採掘収集車両41を第1の底面フレームV1上で牽引走行させて海底資源の採掘と収集とを行う構成とすることで、海底資源の採掘と収集とを容易に行うことができる。
【0059】
一対の第1の底面フレームV1の間を採掘収集車両41の底板41aを露出可能な底板露出用開口部Dとして構成してあると共に、採掘収集車両41の底板41aを網目状とすることで、採掘収集したマンガンノジュールの塊を落下させることなく、また余分な泥などをふるい落しながら、海上まで運搬することができる。
【0060】
海底資源採掘収集ユニット40が、海底100に着底するまでは採掘収集車両格納保持具42に取り付けられて採掘収集車両41の走行を阻害し、海底100に着底することで採掘収集車両格納保持具42から自動的に取り外されて採掘収集車両41の走行を開始可能とする、いわゆるストッパーを備える構成とすることで、海底100に着底するまでは採掘収集車両41の走行を確実に停止させ、海底100に着底すると同時にマンガンノジュールの採掘収集を開始させることができる。よって作業性の良い海底資源採掘収集装置1とすることができる。
【0061】
またワイヤー10と連結される採掘収集車両41に停止用凸部41cを備え、且つ採掘収集車両格納室42aに停止用凸部41cと接触して採掘収集車両41の走行を停止させる第2の上面フレームZ2を備える構成とすることで、ワイヤー10を巻き上げるだけで、採掘収集車両格納保持具42内に採掘収集車両41を格納させたままの状態で、採掘収集車両41の走行を停止させることができる。
【0062】
また採掘収集車両格納保持具42に、浮体30を収納可能な浮体収納室42を設けることで、採掘収集車両格納保持具42と採掘収集車両41とに負荷される重力を効果的に低減させることができる。よってワイヤー10が破断することを一段と効果的に防止することができると共に、マンガンノジュールの採掘収集量を飛躍的に増大させることができる。従って採掘収集効率のよい海底資源採掘収集装置1とすることができる。
【0063】
更に浮体収納室42の構成として、仕切板Sで仕切られた複数の部屋を備える構成とし、各部屋に1つの浮体30を収納する構成とすることで、各浮体30が移動することを効果的に防止することができる。よって採掘収集車両格納保持部42が傾くことを効果的に防止することができ、作業効率の良い海底資源採掘収集装置1とすることができる。
【0064】
次に
図8〜
図10を参照して、本発明の第2の実施形態に係る海底資源採掘収集装置5を説明する。
本発明の第2の実施形態に係る海底資源採掘収集装置5は、既述した第1の実施形態に係る海底資源採掘収集装置1に対して、吊り下げ部材と浮体連結具の構成のみを異なる構成とし、その他の構成は同じ構成とするものである。よって第1の実施形態に係る海底資源採掘収集装置1と同一部材、同一機能を果たすものには同一番号、同一符号を付し、以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0065】
図8を参照して、本発明の第2の実施形態に係る海底資源採掘収集装置5は、吊り下げ部材たる紐状部材で構成されるワイヤー10を複数本備える構成とするものである。具体的には、いわゆるS撚りのワイヤー10aと、Z撚りのワイヤー10bとの2本のワイヤー10を並列配置させて備える構成とするものである。
【0066】
また
図8、
図9(b)に示すように、二本のワイヤー10a、10bの外周に凸状の嵌合用凸部である連結用リブ110を一体的に備える構成とするものである。
【0067】
本実施形態の浮体連結具50の構成として、二本のワイヤー10a、10bを挿通させるための挿通用貫通孔51aを備えると共に、挿通用貫通孔51aと連通する切欠き51bを備えてなる平面視略C字状の連結具本体51を備える構成としてある。また挿通用貫通孔51aの内側下端に、切欠き51bに向けて延出されて、挿通用貫通孔51a内に受け入れられる連結用リブ110を着座させるための着座部51cを備えると共に、着座部51cの先端に鉛直方向上方に延びる棒状の抜け止め部51dを備える構成としてある。
また平面視略C字状の連結具本体51の背面側中央に、スプリングからなる連結具52を連結させるための長穴Cを設けた連結部51eを備える構成としてある。そして上記構成の連結部51eに、浮体30を備える連結具52の連結部52aを連結させてある。
更に着座部51cの側面には、連結用リブ110を着座部51cに着座させた際に、ワイヤー10a、10bが嵌り合うことで、ワイヤー10a、10bがずれ動くことを防止するための嵌合用凹部51fを設けてある。
【0068】
次に、このような構成からなる浮体連結具50をワイヤー10a、10bに取り付ける方法を説明する。
【0069】
図9に示すように、母船2から送り出されるワイヤー10a、10bに、予め浮体連結具50の連結具本体51を連結させておく。具体的には、母船2の船上において、連結具本体51を切り欠き51bの側からワイヤー10a、10bへと押し込み、挿通用貫通孔51aにワイヤー10a、10bを挿通させ、浮体連結具50を海面へと落下させる。この際、
図10(b)に示すように、隣接するワイヤー10a、10bの間に抜け止め部51d、着座部51cを挿通させることが必要である。
海面へと落下した浮体連結具50には、浮体30が連結されていることから、浮体連結具50は海面に浮いた状態で着座部51cに連結用リブ110を着座させるための待機状態となる。
そしてワイヤー10a、10bを更に海中へと送り出すことで、連結用リブ110が着座部51cに着座すると共に、嵌合用凹所たる挿通用貫通孔51aに、嵌合用凸部たる連結用リブ110が嵌合する。同時に、
図10(b)に示すように、嵌合用凹部51fにワイヤー10a、10bが嵌り合う。
以上により、ワイヤー10a、10bに浮体連結具50が取り付けられる。
【0070】
このような構成からなる本発明の第2の実施形態に係る海底資源採掘収集装置5は、以下の効果を奏する。
【0071】
二本のワイヤー10a、10bに一体的に設ける連結用リブ110を、挿通用貫通孔51aの内側下端に設ける着座部51cに着座させるだけで、ワイヤー10a、10bに連結具本体51を容易に取り付けることができる。よって作業性の良い海底資源採掘収集装置5とすることができる。
更に着座部51cに嵌合用凹部51fを設けることで、連結用リブ110を着座部51cに着座させた状態において、ワイヤー10a、10bがずれ動くことを効果的に防止することができる。
【0072】
また着座部51cの先端に抜け止め部51dを備えることで、着座部51cに着座させると共に、挿通用貫通孔51aに嵌合させた連結用リブ110が、横揺れなどによって挿通用貫通孔51aから抜け出ることを効果的に防止することができる。
【0073】
また二本のワイヤー10a、10bの構成として、いわゆるS撚りのワイヤーで構成されるワイヤー10aと、いわゆるZ撚りのワイヤーで構成されるワイヤー10bとを並列配置させる構成とすることで、連結用リブ110で一体化された撚り方向が相反する二本のワイヤー10a、10bが回転することを効果的に防止することができる。従って複数本のワイヤーが回転することに伴って、浮体30がワイヤーに巻き付いてしまうことを効果的に防止することができる。よって巻き付きに伴う連結具52の破断や、連結具52の連結部52a、浮体30の連結具31aの破損を効果的に防止することができる。
【0074】
次に、
図11〜
図18を参照して、本発明の第3の実施形態に係る海底資源採掘収集装置6を説明する。
本発明の第3の実施形態に係る海底資源採掘収集装置6は、既述した第1の実施形態に係る海底資源採掘収集装置1に対して、吊り下げ部材と浮体連結具の構成及び海底資源採掘収集ユニットにおける採掘収集車両格納保持具の構成を異なる構成とすると共に、電気ケーブルや空気配管、油圧ケーブルなどを設置してなる配線配管ユニットを備える構成とし、その他の構成は同じ構成とするものである。よって第1の実施形態に係る海底資源採掘収集装置1と同一部材、同一機能を果たすものには同一番号、同一符号を付し、以下の詳細な説明は省略するものとする。
【0075】
図11、
図12を参照し、本発明の第3の実施形態に係る海底資源採掘収集装置6は、吊り下げ部材として、複数本のローラーチェーン60を用いる構成とするものである。
また浮体連結具として、ローラーチェーン60に着脱自在に引掛け可能なフック部71bを備える浮体連結具70を用いる構成とするものである。
更に
図12に示すように、複数本のローラーチェーン60の間に、電気ケーブルFや空気配管I、油圧ケーブルAなどを設置してなる配線配管ユニット80を備える構成とするものである。
【0076】
前記ローラーチェーン60は、汎用されているローラーチェーンと同型のものであり、
図12に示すように、対向配置される一対のプレート61と、一対のプレート61間に配置されるローラー62と、上下に配置されるプレート61を連結するピン63とで構成される。また本実施形態では、ローラーチェーン60は撚りのないものを用いている。
なお
図15に示すように、このローラーチェーン60は、採掘収集車両格納保持具42の連結バー42d、42hを介して、採掘収集車両41の連結具41fと連結されている。
【0077】
前記浮体連結具70の連結具本体71は、
図12、
図14、
図16〜
図18に示すように、正面視において逆V字状に形成される板状部材からなる本体部71aと、本体部71aの両側先端部に配置される略U字状のフック部71bとで構成される。そしてフック部71bをローラー62に引掛けることで、連結具本体71をローラーチェーン60に取り付けることが可能となる。
また
図12に示すように、本体部71aの交差部分に、環状の連結具73を備える。そして連結具73に、浮体30を備える連結具72の連結部72aを連結させてある。
なお、連結具本体71は、例えば高張力鋼を用いて形成することができる。
【0078】
前記配線配管ユニット80は、ローラーチェーン60に付随させて電気ケーブルFと空気配管I、油圧ケーブルAとを配設するためのものである。この配線配管ユニット80は、
図12に示すように、略U字状の固定具81aを介して電気ケーブルFと空気配管I、油圧ケーブルAと固定する固定用板81と、固定用板81をローラーチェーン60に連結させるための連結用板82とを備えてなる。
なお、固定用板81はボルトBを介して連結用板82に連結されており、連結用板82は、例えば溶接などを用いてローラーチェーン60に固定されている。
【0079】
また本実施形態においては、
図11、
図13、
図14に示すように、ローラーチェーン60に対する連結具本体71の着脱をアシストするローラーチェーンアシスト具90を母船4に備える構成としてある。
前記ローラーチェーンアシスト具90は、
図13に示すように、背板91と、背板91の表裏一面側の両端から延出される一対の側板92とからなる略コの字状の本体部93と、一対の側板92の内面の対向する位置に配置される一対の第1のガイドレールたる内側ガイドレール94と、内側ガイドレール94よりも側板92の開口側に配置される第2のガイドレールたる外側ガイドレール95と、一対の内側ガイドレール94から本体部93の内側に向かって延出されるローラーチェーン案内板96と、一対の側板92から延出される連結用板97と、一対の外側ガイドレール95よりも側板92の開口側に配置されると共に本体部93の内側に向かって外側ガイドレール95よりも長く延出される連結具本体係止板98とを備えてなる。
そして本実施形態においては、
図13(b)に示すように、内側ガイドレール94と外側ガイドレール95との距離Jが、ローラーチェーン60の厚みと略同一であると共に、ローラーチェーン案内板96と連結具本体係止板98との距離Oが、
図16(b)に示すフック部71bの幅Pと略同一である構成としてある。
【0080】
前記背板91と側板92とからなる本体部93は、ローラーチェーンアシスト具90の骨格を形成するものである。
なお本実施形態においては、
図11に簡略化して示すように、母船4に設置してあるローラーチェーンアシスト具90(本体部93)が、海中まで到達する長さを備えるものである構成としてある。
また背板91及び側板92には、上側端部を外側に傾斜させてなる上方傾斜部91a、92aと、下側端部を外側に傾斜させてなる下方傾斜部91b、92bを設ける構成としてある。
【0081】
前記内側ガイドレール94及び外側ガイドレール95は、ローラーチェーン60の投入口を構成すると共に、ローラーチェーンアシスト具90内におけるローラーチェーン60の誘導路を形成するものである。
本実施形態においては、内側ガイドレール94及び外側ガイドレール95として細長い角材を用いる構成としてある。また、側板92の長手方向の全長に渡って内側ガイドレール94及び外側ガイドレール95を配置する構成としてある。
また
図16に示すように、外側ガイドレール95の上方には、角材を背板91から遠ざかる方向に向けて傾斜させてなる上方傾斜部95aを設けてある。
【0082】
前記ローラーチェーン案内板96は、内側ガイドレール94及び外側ガイドレール95で形成される投入口へとローラーチェーン60を案内すると共に、ローラーチェーン60に対する浮体連結具70の連結具本体71の着脱をアシストするためのものである。
本実施形態においては、
図13、
図14、
図16〜
図18に示すように、ローラーチェーン案内板96の構成として、内側ガイドレール94の上端側に配置される板状部材からなると共に、板状部材の上方及び下方に、背板91の方向に向けて傾斜させてなる上方傾斜部96a及び下方傾斜部96bを備える構成としてある。
更に下方傾斜部96bの傾斜角度と、ローラーチェーン案内板96と対向するフック部71bの先端の傾斜角度とを略同一の角度とする構成としてある。
【0083】
前記連結用板97は、側板92と連結具本体係止板98とを連結させるためのものである。
本実施形態においては、板状部材で連結用板97を形成する構成としてある。
【0084】
前記連結具本体係止板98は、主として、ローラーチェーン60に取り付けた連結具本体71が海中に達するまでに脱落することを防止するためのものである。
本実施形態においては、
図13(b)、
図16に示すように、一対の外側ガイドレール95よりも背板91から遠ざかる位置に配置されると共に、本体部93の内側に向かって外側ガイドレール95よりも長く延出される板状部材で連結具本体係止板98を形成する構成としてある。
また
図16〜
図18に示すように、連結具本体係止板98の構成として、板状部材の上方及び下方に、背板91とは反対(遠ざかる)方向に向けて傾斜させてなる上方傾斜部98a及び下方傾斜部98bを備える構成としてある。
更に
図13(b)に示すように、連結具本体係止板98は、ヒンジQと、支持板となるL型固定板Lに設けるバネRとを介して、開閉自在である構成としてある。
【0085】
なお、既述した本体部93、内側ガイドレール94及び外側ガイドレール95、ローラーチェーン案内板96、連結用板97は、例えば高張力鋼を用いて形成することができる。
【0086】
更に本実施形態においては、
図15に示すように、海底資源採掘収集ユニット40に、浮体収納室を二つ設ける構成としてある。
より具体的には、第1の浮体収納室42fと、第2の浮体収納室42gとを備える構成としてある。
【0087】
前記第1の浮体収納室42fは、複数の浮体30を収納するための部屋で、既述した本発明の第1の実施形態に係る浮体収納室42bと同様の構成を備えるものである。
一方、前記第2の浮体収納室42gは、第1の浮体収納室42fの下段に配置されると共に、開放された空間Yからなり、この空間Yに空気を送り込むことで空間Y自体が浮体となり、浮力を発生させるものである。
より具体的には、空気配管Iを介して空間Yに空気を送り込むことで浮力を発生させる。この時、空間Yは開放された空間であるため、空間Yの容量を超えた空気は下方から自然に排出される。
なお、この第2の浮体収納室42gは、例えば高張力鋼を用いて形成することができる。
【0088】
以上のような本発明の第3の実施形態にかかる海底資源採掘収集装置6は、以下の効果を奏する。
【0089】
吊り下げ部材として、撚りのないローラーチェーン60を用いる構成とすることで、吊り下げ部材が海中で回転することを効果的に低減させることができる。よって吊り下げ部材に浮体30が巻きつくことを効果的に防止することができる。
【0090】
また連結具本体71のフック部71bをローラーチェーン60に引掛けるだけで、ローラーチェーン60に連結具本体71を容易に取り付けることができる。よって作業性のよい海底資源採掘収集装置とすることができる。
【0091】
更にローラーチェーンアシスト具90を備えることで、ローラーチェーン60に対する連結具本体71(浮体連結具70)の着脱を一段と容易に行うことができ、作業効率を効果的に向上させることができる。
【0092】
より具体的には、ローラーチェーン60に連結具本体71(浮体連結具70)を取り付ける際、まず
図16に示すように、ローラーチェーンアシスト具90の上方にローラーチェーン60を配置し、内側ガイドレール94及びローラーチェーン案内板96と、外側ガイドレール95との間にローラーチェーン60を挿通させて、母船4よりローラーチェーン60を送り出す。これによってローラーチェーンアシスト具90にローラーチェーン60が挿通される。
この際、ローラーチェーン案内板96には、外側ガイドレール95の上方傾斜部95aとは相反する方向に傾斜する上方傾斜部96aが設けられているので、ローラーチェーン60の投入口を広く開口させることができ、ローラーチェーン60の挿入を一段とスムーズに行うことができる。
また内側ガイドレール94と外側ガードレール95との距離Jを、ローラーチェーン60の厚みと略同一である構成としてあることから、内側ガイドレール94と外側ガードレール95とでローラーチェーン60を挟み込む状態を形成することができる。よってローラーチェーン60にぐらつきが生じることを防止でき、ローラーチェーン60に対する連結具本体71の着脱を一段と効率的に行うことができる。
【0093】
次に
図16(b)、
図17を参照して、母船4より送り出されるローラーチェーン60の空隙(上下に隣接するローラー62間に形成される空隙)に向けて、連結具本体係止板98の上方から連結具本体71のフック部71bを押し込んで、フック部71bをローラーチェーン60に取り付ける。これにより、ローラーチェーン60に浮体連結具70が連結される。
この際、連結具本体係止板98の上方には、背板91から遠ざかる方向に向けて傾斜させてなる上方傾斜部98aを設けてあることから、フック部71bの押し込み口を広くとることができ、作業性効率を向上させることができる。
またローラーチェーン案内板96と連結具本体係止板98との距離Oを、フック部71bの幅Pと略同一である構成としてあることから、ローラーチェーン60にフック部71bを押し込む際に、ローラーチェーン案内板96と連結具本体係止板98とにフック部71bを当接させて、スライドさせることで、ローラーチェーン60にフック部71bを容易に引掛けて連結させることができる。つまり、ローラーチェーン案内板96と連結具本体係止板98とを、ローラーチェーン60にフック部71bを取り付ける際のガイドレールとして利用することができる。従って作業効率を格段に向上させることができる。
【0094】
次に
図18を参照して、ローラーチェーン60から浮体連結具70を取り外す際には、母船4によってローラーチェーン60が巻き上げられることで、連結具本体71のフック部71が、ローラーチェーン案内板96の下方傾斜部96bと接触する。
この際、ローラーチェーン案内板96の下方傾斜部96bの傾斜角度と、フック部71bの先端の傾斜角度とを略同一の角度とする構成としてあることで、下方傾斜部96bと接触したフック部71bの先端が、下方傾斜部96bの上に乗り上がり、ローラーチェーン60とフック部71bとの連結状態が自動的に解消される。これによってローラーチェーン60から浮体連結具70を容易に取り外すことが可能となる。従って作業効率のよい海底資源採掘収集装置とすることができる。
【0095】
また連結具本体係止板98の構成として、ヒンジQと、L型固定板Lに設けるバネRとを介して、開閉自在である構成とすることで、連結具本体71が、ローラーチェーン60に上手く引掛からず、連結できなかった場合には、連結具本体71が連結具本体係止板98と接触し、ヒンジQを介して連結具本体係止板98が開くことになる。よって、引っ掛かる場所のない浮体連結具70を海へと落下させることができる。海へと落下させた浮体連結具70は、浮体30によって海上に浮くことから、回収して再利用することができる。よって連結具本体71が、ローラーチェーン60に上手く引っ掛からなかった場合においても、ローラーチェーン60を海中へと送り出す作業を中断させることない。従って作業性が良く、安全性の高い海底資源採掘収集装置とすることができる。
【0096】
また第1の浮体収納室42fと第2の浮体収納室42gとを備える構成とすることで、海底資源採掘収集ユニット40に負荷される重量を一段と軽減させることができる。よってマンガンノジュールの採掘量を一段と増大させることができ、採掘収集能力の高い海底資源採掘収集装置とすることができる。
更に第2の浮体収納室42gを開放された空間Yで構成し、空間Y自体を浮体とする構成とすることで、空間Yに送り込む空気量を調整することで、浮力の調整を行うことができる。よって機動性に富む海底資源採掘収集装置とすることができる。
【0097】
更に電気ケーブルFや空気配管I、油圧ケーブルAなどを設置してなる配線配管ユニット80を備える構成とすることで、海底資源採掘収集ユニット40に電気や空気を送ることが可能となり、海底資源採掘収集ユニット40の起動力を格段に向上させることができる。
【0098】
なお既述した本発明の第1〜第3の実施形態においては、海底資源として、マンガンノジュールを用いる構成としたが、対象となる海底資源はマンガンノジュールに限るものではなく、他の海底資源であってもよい。
【0099】
また浮体に充填する気体として、空気を用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、他の気体を用いる構成としてもよい。更には、予め気体を充填させておく構成に限るものではなく、海中で化学反応を用いて気体を発生させるような構成を採用するものであってもよい。
【0100】
また既述した本発明の第3の実施形態においては、第1の浮体収納室42fに複数個の浮体30を配置すると共に、第2の浮体収納室42gに設ける空間Yにのみ、空気を送り込む構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではない。例えば海底資源採掘収集ユニット40を用いて海底資源を採掘収集した後には、空間Yに空気を送り込むことに加えて、第1の浮体収納室42fの隙間(浮体30を収納する部屋における、浮体30を除く隙間)にも空気を送り込むような構成としてもよい。このような構成とすることで、第1の浮体収納室42fの全体を利用して、浮力を発生させることができる。よって、海底資源採掘収集ユニット40に負荷される重量を一段と軽減させることができる。従って、マンガンノジュールの採掘量を一段と増大させることができる。
【0101】
また採掘収集車両も本実施形態のものに限るものではなく、採掘対象となる海底資源に合わせて適宜変更可能である。例えば車輪に代えてキャタピラを備えるものとすることができる。また配線配管ユニットを備える構成においては、電気制御可能なブルドーザー、油圧式のブルドーザー、自走式のブルドーザーなどを用いることができる。このような構成とすることで、車両自体の大型化(全長が50m〜100m程度)を図ることが可能となる。また採掘収集車両の進行方向前方側に、例えばウォーターハンマーなどの掘削機を取り付けて、事前に収集箇所の掘削を行う構成としてもよい。このような構成とすることで、一段と効率的に海底資源の採掘収集を行うことができる。加えて、GPS機能を附帯させた海底資源採掘収集ユニットを用いる構成としてもよい。このような構成とすることで、採掘場所の正確な特定が可能となり、一段と作業効率の良い海底資源採掘収集装置とすることができる。また照明器具や動画や写真の撮影器具、地形モニター、水流計などの各種機械器具や装置を搭載した海底資源採掘収集ユニットを用いる構成としてもよい。このような構成とすることで、一段と作業効率の良い海底資源採掘収集装置とすることができる。
【0102】
本発明の第3の実施形態においては、配線配管ユニット80に配設する配線、配管として、電気ケーブルFと空気配管I、油圧ケーブルAとを用いる構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、他の如何なる配線、配管を用いる構成としてもよい。
【0103】
また吊り下げ部材を海中へと送り出す際に、吊り下げ部材に連結された浮体連結具が海面と接する位置に、気泡発生器によって気泡を発生させるような構成を追加してもよい。このような構成とすることで、吊り下げ部材に連結される浮体連結具が海面と接触する際に受ける衝撃を効果的に低減させることができる。よって、吊り下げ部材に連結される浮体や、浮体を連結する浮体連結具が破損することを一段と効果的に防止することができる。よって一段と耐久性のある海底資源採掘収集装置とすることができる。
【解決手段】海底資源の採掘収集を行う海底資源採掘収集ユニット40と、該海底資源採掘収集ユニット40を母船2から海底100まで吊り下げるための吊り下げ部材たるワイヤー10とを備えてなる海底資源採掘収集装置1であって、ワイヤー10に、所定の間隔をあけて複数の浮体30を、ワイヤー10に浮体30を着脱自在に取り付け可能な浮体連結具20を介して配置してある。