特許第6336197号(P6336197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6336197衛星によって同じ周波数及び異なる偏波を用いて2つのアンテナによって送信された2つの信号間の干渉を
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336197
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】衛星によって同じ周波数及び異なる偏波を用いて2つのアンテナによって送信された2つの信号間の干渉を
(51)【国際特許分類】
   H04J 11/00 20060101AFI20180528BHJP
   H04B 17/309 20150101ALI20180528BHJP
   H04B 1/10 20060101ALI20180528BHJP
   H04B 7/06 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   H04J11/00 B
   H04B17/309
   H04B1/10 A
   !H04B7/06 150
【請求項の数】13
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-503980(P2017-503980)
(86)(22)【出願日】2015年11月19日
(65)【公表番号】特表2017-528046(P2017-528046A)
(43)【公表日】2017年9月21日
(86)【国際出願番号】JP2015083301
(87)【国際公開番号】WO2016084920
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年1月23日
(31)【優先権主張番号】14195089,9
(32)【優先日】2014年11月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503163527
【氏名又は名称】ミツビシ・エレクトリック・アールアンドディー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECTRIC R&D CENTRE EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161115
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(72)【発明者】
【氏名】チョチーナ−ドゥチェスネ、クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】ブルネル、ロイク
【審査官】 太田 龍一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−059078(JP,A)
【文献】 特開2002−064439(JP,A)
【文献】 特開平05−048568(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0086862(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0188880(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 11/00
H04B 1/10
H04B 17/309
H04B 7/02−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の偏波及び第2の偏波を検出する少なくとも第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナを備える受信機によって受信されたフレームにおける少なくとも1つの交差偏波干渉体の電力を求める方法であって、前記フレームは、少なくとも第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナを備える衛星送信機から送信され、前記第1の送信アンテナは、前記フレームを表す信号を前記受信機に前記第1の偏波上で転送することに用いられ、前記第2の送信アンテナは、同じ周波数及び前記第2の偏波を用いて信号を別の受信機に転送することに用いられ、前記方法は、
前記衛星送信機と前記受信機との間のアンテナ利得を取得するステップと、
前記衛星送信機と前記受信機との間の大気減衰の値を推定するステップと
差偏波減衰の値を推定するステップと、
前記第1の送信アンテナと前記受信機との間のチャネルが前記フレームの前記転送中に静的であることを考慮して、前記第1の送信アンテナと前記受信機との間の前記チャネルを推定するステップと、
前記第2の送信アンテナと前記受信機との間の前記アンテナ利得と、前記推定された大気減衰とから、前記第2の送信アンテナと前記受信機との間のチャネルを推定するステップと、
前記取得されたアンテナ利得と、前記推定された大気減衰の値と、前記推定された交差偏波減衰の値とから、前記第2の送信アンテナを用いて前記別の受信機に転送される前記信号による前記少なくとも1つの干渉体の前記電力を推定するステップと、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記衛星送信機と前記受信機との間の前記アンテナ利得は、前記受信機のロケーションに関連した情報と、前記衛星送信機に関連した情報と、前記第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナの特性に関連した情報とから取得されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記大気減衰の前記推定された値は、前記第1の送信アンテナを通じて前記衛星送信機によって転送された前記フレームにおけるパイロットシンボル位置において前記第1の受信アンテナを通じて前記受信機によって受信された信号に基づいて計算されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記大気減衰の前記推定された値は、以下の式に従って求められることを特徴とし、
【数1】
ここで、E{・}は、前記フレームにおける多い場合には全ての前記パイロットシンボル位置において計算された平均値であり、zは、パイロットシンボルを示し、は、複素共役を示し、y’は、前記第1の送信アンテナを通じて前記衛星送信機によって転送された前記フレームにおけるパイロットシンボル位置において前記第1の受信アンテナを通じて前記受信機によって受信された前記信号であり、aは、前記第1の送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間の前記アンテナ利得である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記大気減衰の前記推定された値は、以下の式に従って求められることを特徴とし、
【数2】
ここで、aは、前記第1の送信アンテナと前記第1の受信アンテナとの間の前記アンテナ利得であり、
【数3】
は、前記第1の送信アンテナと前記受信機との間の前記チャネルの前記推定された値である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記交差偏波減衰の前記推定された値は、前記大気減衰の前記推定された値に基づいて計算されることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記交差偏波減衰の前記推定された値は、以下のように計算されることを特徴とし、
【数4】
ここで、y’は、前記第1の送信アンテナを通じて前記衛星送信機によって転送された前記フレームにおけるパイロットシンボル位置に対応する位置において前記第2の受信アンテナを通じて前記受信機によって受信された前記信号である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記交差偏波減衰の前記推定された値は、以下のように計算されることを特徴とし、
【数5】
又は
【数6】
ここで、y’は、前記フレームにおけるパイロットシンボル位置において前記第1の受信アンテナを通じて前記受信機によって受信された前記信号であり、y’は、前記第1の送信アンテナを通じて前記衛星送信機によって転送された前記フレームにおけるパイロットシンボル位置に対応する位置において前記第2の受信アンテナを通じて前記受信機によって受信された前記信号であり、
【数7】
は、前記第1の送信アンテナと前記受信機との間の前記チャネルの前記推定された値である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記推定された干渉体電力は、
【数8】
であることを特徴とし、ここで、aは、前記第2の送信アンテナと前記第2の受信アンテナとの間の前記アンテナ利得であり、平均関数E{・}は、干渉の性質が変化しない前記フレームの幾つかのサブキャリア/タイムスロットにわたって作用し、
【数9】
は、前記受信機のアンテナ上での加法性白色ガウス雑音の分散である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記推定された干渉体電力は、
【数10】
であることを特徴とし、ここで、aは、前記第2の送信アンテナと前記第2の受信アンテナとの間の前記アンテナ利得であり、平均関数E{・}は、干渉の性質が変化しない幾つかのサブキャリア/タイムスロットにわたって作用する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の送信アンテナと前記受信機との間の前記チャネルの前記推定された値
【数11】
は、以下の式を計算することによって推定されることを特徴とし、
【数12】
ここで、aは、前記第2の送信アンテナと前記第2の受信アンテナとの間の前記アンテナ利得であり、
【数13】
は、前記大気減衰の前記推定された値である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記推定された干渉体電力の推定誤差の大小により、干渉緩和技法を用いるか否かを判断するステッ
更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
第1の偏波及び第2の偏波を検出する少なくとも第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナを備える受信機によって受信されたフレームにおける少なくとも1つの交差偏波干渉体の電力を求めるデバイスであって、前記フレームは、少なくとも第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナを備える衛星送信機から送信され、前記第1の送信アンテナは、前記フレームを表す信号を前記受信機に前記第1の偏波上で転送することに用いられ、前記第2の送信アンテナは、同じ周波数及び前記第2の偏波を用いて信号を別の受信機に転送することに用いられ、前記デバイスは、
前記衛星送信機と前記受信機との間のアンテナ利得を取得する手段と、
前記衛星送信機と前記受信機との間の大気減衰の値を推定する手段と
差偏波減衰の値を推定する手段と、
前記第1の送信アンテナと前記受信機との間のチャネルが前記フレームの前記転送中に静的であることを考慮して、前記第1の送信アンテナと前記受信機との間の前記チャネルを推定する手段と、
前記第2の送信アンテナと前記受信機との間の前記アンテナ利得と、前記推定された大気減衰とから、前記第2の送信アンテナと前記受信機との間のチャネルを推定する手段と、
前記取得されたアンテナ利得と、前記推定された大気減衰の値と、前記推定された交差偏波減衰の値とから、前記第2の送信アンテナを用いて前記別の受信機に転送される前記信号による前記少なくとも1つの干渉体の前記電力を推定する手段と、
を備えることを特徴とする、デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、受信機によって受信されたフレームにおける少なくとも1つの交差偏波干渉体の電力を求める方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星通信システムでは、マルチビーム衛星が、システム容量を増加させることに用いられる。干渉を大幅に増加させることなく周波数再利用率を改善するために、隣接したビームは、通例、異なる偏波を有する同じ周波数を利用する。隣接したビームでは、例えば、水平偏波及び垂直偏波のような2つの直交偏波によって独立した信号を同じ周波数帯域上へ送信することができる。偏波波形が対流圏を通って進むとき、減損(Impairments)が発生する。波形減衰に加えて、雨及び氷の偏波解消効果も存在し、直交性が失われる場合があり、これによって、2つの偏波間でクロストークが生じる。
【0003】
この影響の深刻さは、動作周波数、大気条件、正確なアンテナ較正/位置合わせ等に依存する。
【0004】
交差偏波干渉は、双方の信号を受信することができるユーザーに対して性能劣化を引き起こす。
【0005】
交差偏波干渉を低減するために、緩和技法が用いられる場合がある。多くのそのような技法が文献に既に存在し、例えば、逐次干渉キャンセルターボ受信機を用いたジョイント最小平均二乗誤差(joint minimum mean square error)検出又はこの受信機を用いないジョイント最小平均二乗誤差検出が存在する。
【0006】
これらの緩和技法が効率的であるためには、干渉体の存在及び性質を知る必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
衛星から受信機への異なる偏波上での送信は、通例、調整されない。所与の受信機について、有用な信号フレームと、干渉信号フレームとは位置合わせされていない場合がある。すなわち、フレームは、時間平面において異なる開始/終了位置を有し、フレームが、異なる帯域幅を占有する可能性があったり、パイロット位置が、干渉フレーム間で異なったり、等する。
【0008】
本発明は、交差偏波干渉の緩和を行う必要があるか否かを受信信号において判断することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そのために、本発明は、第1の偏波及び第2の偏波を検出する少なくとも第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナを備える受信機によって受信されたフレームにおける少なくとも1つの交差偏波干渉体の電力を求める方法であって、フレームは、少なくとも第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナを備える衛星送信機から送信され、第1の送信アンテナは、フレームを表す信号を受信機に第1の偏波上で転送することに用いられ、第2の送信アンテナは、同じ周波数及び第2の偏波を用いて信号を別の受信機に転送することに用いられ、方法は、
衛星送信機と受信機との間のアンテナ利得を取得するステップと、
衛星送信機と受信機との間の大気減衰を推定するステップと、
交差偏波減衰を推定するステップと、
第1の送信アンテナと受信機との間のチャネルがフレームの転送中に静的であることを考慮して、チャネルを推定するステップと、
第2の送信アンテナと受信機との間のアンテナ利得と、大気減衰とから、第2の送信アンテナと受信機との間のチャネルを推定するステップと、
取得されたアンテナ利得及び推定から、少なくとも1つの干渉体の電力を推定するステップと、
を含むことを特徴とする、方法に関する。
【0010】
また、本発明は、第1の偏波及び第2の偏波を検出する少なくとも第1の受信アンテナ及び第2の受信アンテナを備える受信機によって受信されたフレームにおける少なくとも1つの交差偏波干渉体の電力を求めるデバイスであって、フレームは、少なくとも第1の送信アンテナ及び第2の送信アンテナを備える衛星送信機から送信され、第1の送信アンテナは、フレームを表す信号を受信機に第1の偏波上で転送することに用いられ、第2の送信アンテナは、同じ周波数及び第2の偏波を用いて信号を別の受信機に転送することに用いられ、デバイスは、
衛星送信機と受信機との間のアンテナ利得を取得する手段と、
衛星送信機と受信機との間の大気減衰を推定する手段と、
交差偏波減衰を推定する手段と、
第1の送信アンテナと受信機との間のチャネルがフレームの転送中に静的であることを考慮して、チャネルを推定する手段と、
第2の送信アンテナと受信機との間のアンテナ利得と、大気減衰とから、第2の送信アンテナと受信機との間のチャネルを推定する手段と、
取得されたアンテナ利得及び推定から、少なくとも1つの干渉体の電力を推定する手段と、
を備える、デバイスに関する。
【0011】
したがって、受信機は、干渉緩和方式を実施することができる。
【0012】
特定の特徴によれば、衛星送信機と受信機との間のアンテナ利得は、受信機のロケーションに関連した情報と、衛星送信機に関連した情報と、受信機のアンテナ利得に関連した情報とから取得される。
【0013】
したがって、受信機においてアンテナ利得を取得することができる。
【0014】
特定の特徴によれば、大気減衰の推定された値は、第1の送信アンテナを通じて衛星送信機によって転送されたフレームにおけるパイロットシンボル位置において第1の受信アンテナを通じて受信機によって受信された信号に基づいて計算される。
【0015】
したがって、受信機において大気減衰を推定することができる。
【0016】
特定の特徴によれば、大気減衰の推定された値は、以下の式に従って求められる。
【数1】
ここで、E{・}は、フレームにおける多い場合には全てのパイロットシンボル位置において計算された平均値であり、zは、パイロットシンボルを示し、は、複素共役を示し、y’は、第1の送信アンテナを通じて衛星送信機によって転送されたフレームにおけるパイロットシンボル位置において第1の受信アンテナを通じて受信機によって受信された信号であり、aは、第1の送信アンテナと第1の受信アンテナとの間のアンテナ利得である。
【0017】
したがって、受信信号と、既知のパイロットシーケンス及びパイロットシンボルの位置とに基づいて、大気減衰の推定された値を計算することができる。
【0018】
特定の特徴によれば、大気減衰の推定された値は、以下の式に従って求められる。
【数2】
ここで、aは、第1の送信アンテナと第1の受信アンテナとの間のアンテナ利得であり、
【数3】
は、第1の送信アンテナと受信機との間のチャネルの推定された値である。
【0019】
したがって、これまでのチャネル推定方法に基づいて、大気減衰の推定された値を計算することができる。
【0020】
特定の特徴によれば、交差偏波減衰の推定された値は、大気減衰の推定された値に基づいて計算される。
【0021】
したがって、交差偏波干渉体のパラメーターの事前知識なしで、交差偏波減衰の推定された値を計算することができる。
【0022】
特定の特徴によれば、推定された交差偏波減衰は、
【数4】
であり、ここで、y’は、第1の送信アンテナを通じて衛星送信機によって転送されたフレームにおけるパイロットシンボル位置において第2の受信アンテナを通じて受信機によって受信された信号である。
【0023】
したがって、受信信号及び事前推定に基づいて、交差偏波減衰の推定された値を計算することができる。
【0024】
特定の特徴によれば、推定された交差偏波減衰は、
【数5】
又は
【数6】
であり、ここで、y’は、第1の送信アンテナを通じて衛星送信機によって転送されたフレームにおけるパイロットシンボル位置において第2の受信アンテナを通じて受信機によって受信された信号である。
【0025】
したがって、受信信号のみに基づいて、交差偏波減衰の推定された値を計算することができる。
【0026】
特定の特徴によれば、推定された干渉体電力は、
【数7】
であり、ここで、aは、第2の送信アンテナと第2の受信アンテナとの間のアンテナ利得であり、平均関数E{・}は、干渉の性質が変化しないフレームの幾つかのサブキャリア/タイムスロットにわたって作用し、
【数8】
は、受信機のアンテナ上での加法性白色ガウス雑音の分散である。
【0027】
したがって、受信機は、干渉体のパラメーター(例えば、変調符号化方式、パイロット位置、パイロットシーケンス等)の事前知識なしに、交差偏波干渉体の電力を推定することができる。
【0028】
特定の特徴によれば、推定された干渉体電力は、
【数9】
であり、ここで、aは、第2の送信アンテナと第2の受信アンテナとの間のアンテナ利得であり、平均関数E{・}は、干渉の性質が変化しない幾つかのサブキャリア/タイムスロットにわたって作用する。
【0029】
したがって、受信機は、干渉体のパラメーターの事前知識も、受信機のアンテナ上での加法性白色ガウス雑音の事前知識もなしに、交差偏波干渉体の電力を推定することができる。
【0030】
特定の特徴によれば、第2の送信アンテナと受信機との間のチャネルの推定された値
【数10】
は、以下の式を計算することによって推定される。
【数11】
ここで、aは、第2の送信アンテナと第2の受信アンテナとの間のアンテナ利得であり、
【数12】
は、大気減衰の推定された値である。
【0031】
したがって、衛星と受信機Recとの間のチャネルの特定の性質に基づいて、本発明は、干渉体の事前知識なしで、また、送信機側において実施される干渉緩和方式を何ら伴わずに、干渉チャネルの品質を推定することができる。
【0032】
特定の特徴によれば、本方法は、
推定された干渉体電力の信頼性を検査するステップと、
推定された干渉体電力が信頼性のあるものである場合には、干渉緩和技法を実施するステップと、
を更に含む。
【0033】
したがって、干渉体が確実に推定されたときにのみ干渉緩和を実施することによって、複雑度が低減される。
【0034】
更に別の態様によれば、本発明は、プログラマブルデバイス内に直接ロード可能とすることができるコンピュータープログラムであって、当該コンピュータープログラムがプログラマブルデバイス上で実行されるとき、本発明による方法のステップを実施するための命令又はコード部分を含む、コンピュータープログラムに関する。
【0035】
コンピュータープログラムに関連する特徴及び利点は、本発明による方法及び装置に関して既に言及されたのと同じであるので、ここでは繰り返されない。
【0036】
本発明の特性は、実施形態例の以下の説明を読むことから更に明らかになり、その説明は添付の図面を参照しながら行われる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】衛星によって行われるマルチビーム送信を表す図である。
図2】本発明が実施される受信機のアーキテクチャを表す図である。
図3】受信機側において交差偏波干渉体フレームが時間平面及び周波数平面において有用なデータフレームと重なっている一例を表す図である。
図4】本発明による受信機Recによって実行されるアルゴリズムを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、衛星によって行われるマルチビーム送信を表す。
【0039】
図1の例において、衛星Satは、異なる偏波を用いて2つの異なる周波数帯域上でマルチビーム送信を実行する。
【0040】
縦の実線で満たされたビームは、第1の周波数帯域上で第1の偏波状態にあり、縦の点線で満たされたビームは、第2の周波数帯域上で第1の偏波状態にあり、横の実線で満たされたビームは、第2の周波数帯域上で第2の偏波状態にあり、横の点線で満たされたビームは、第1の周波数帯域上で第2の偏波状態にある。
【0041】
ビームが重なっており、異なる偏波を有する同じ周波数帯域を用い、偏波波形が対流圏を通って進むときに減損が発生すると、直交性が失われる場合があり、これによって、2つの偏波間にクロストークが生じる。交差偏波干渉は、受信機側に性能劣化を引き起こす。
【0042】
図1の例によれば、エリアIntは、ビームが異なる偏波を有する同じ周波数帯域を用い、重なっているゾーンである。
【0043】
本発明によれば、図1に図示していない受信機Recは、
衛星送信機と受信機との間のアンテナ利得を取得し、
大気減衰が準静的であることを考慮するとともに、受信機が配置されているエリアにおける大気条件に応じて、衛星送信機と受信機との間の大気減衰を推定し、
交差偏波減衰を推定し、
第1のアンテナと受信機との間のチャネルがフレームの転送中に静的であることを考慮して、このチャネルを推定し、
第2のアンテナと受信機との間のアンテナ利得と、大気減衰とから、第2のアンテナと受信機との間のチャネルを推定し、
上記取得されたアンテナ利得と上記推定とから干渉体電力を推定する。
【0044】
図2は、本発明が実施される受信機のアーキテクチャを表す図である。
【0045】
受信機Recは、例えば、バス201と、図4において開示されるようなプログラムによって制御されるプロセッサ200とによって互いに接続される構成要素に基づくアーキテクチャを有する。
【0046】
バス201はプロセッサ200をリードオンリーメモリROM202、ランダムアクセスメモリRAM203及び無線インターフェース205にリンクする。
【0047】
メモリ203は、図4において開示されるようなアルゴリズムに関連するプログラムの変数及び命令を受信するように意図されたレジスタを含む。
【0048】
プロセッサ200は、無線インターフェース205の動作を制御する。
【0049】
リードオンリーメモリ202は、受信機Recが起動されたときにランダムアクセスメモリ203に転送される、図4において開示されるようなアルゴリズムに関連するプログラムの命令を含む。
【0050】
無線インターフェース205は、2つの異なる偏波を検出することができる2つのアンテナAnt1及びAnt2を備える。
【0051】
図4に関して以下に説明されるアルゴリズムのありとあらゆるステップは、PC(パーソナルコンピューター:Personal Computer)、DSP(デジタルシグナルプロセッサ:Digital Signal Processor)若しくはマイクロコントローラーのようなプログラマブルなコンピューティングマシンによって1組の命令若しくはプログラムを実行することによってソフトウェアにおいて実施することができるか、又はソフトウェアでなければ、FPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ:Field−Programmable Gate Array)若しくはASIC(特定用途向け集積回路:Application−Specific Integrated Circuit)のようなマシン若しくは専用構成要素によってハードウェアにおいて実施することができる。
【0052】
換言すれば、受信機Recは、図4に関して以下で説明するアルゴリズムのステップを受信機Recに実行させる回路部、又は回路部を備えるデバイスを備える。
【0053】
図3は、受信機側において交差偏波干渉体フレームが時間平面及び周波数平面において有用なデータフレームと重なっている一例を表す。
【0054】
横軸は時間平面を表し、縦軸は周波数平面を表す。
【0055】
第1のフレーム31は、衛星Satによって1つの偏波上で送信され、第2のフレーム32は、衛星Satによって第2の偏波上で送信される。
【0056】
一般性を失うことなく、フレーム31は、受信機Recを対象とした有用な信号であり、フレーム32は、隣接したビームにおいて別の受信機を対象としていると仮定する。偏波波形が対流圏を通って進むとき、減損が発生し、直交性が失われ、これによって、2つの偏波間でクロストークが生じ、したがって、第2のフレーム32は、第1のフレーム31の交差偏波干渉体になる。
【0057】
フレーム31及び32は、図3に示すように、異なる長さを有する場合があり、時間及び/又は周波数平面において全体的に又は部分的に互いに重なる場合がある。双方のフレーム31及び32は、データ及びパイロットを含むことができる。フレーム31のパイロット位置はxで示され、フレーム32のパイロット位置はoで示されている。
【0058】
有用なフレーム31及び干渉フレーム32は、位置合わせされておらず、それらのそれぞれのパイロットシーケンスの送信は調整されていない。これらの2つのフレームは、時間平面において異なる開始/終了位置を有し、異なる帯域幅を占有する。フレーム31のデータ/パイロットは、フレーム32のデータ/パイロットによる干渉を受ける可能性もあるし、干渉がない可能性もある。受信機Recは、干渉フレーム32の存在、位置又は構造の事前知識を有しない。
【0059】
図4は、本発明による受信機Recによって実行されるアルゴリズムを表す。より正確に言えば、本アルゴリズムは、受信機Recのプロセッサ200によって実行される。
【0060】
ステップS400において、プロセッサ200は、衛星Sat側における送信アンテナ利得
【数13】
及び
【数14】
を取得する。
【0061】
無線インターフェース205は、双方の偏波を同時に検出する。干渉体が存在しない場合、2つの偏波上の受信信号は、以下のように記述することができる。
【数15】
ここで、sは、受信機Recを対象とした1つの偏波上で衛星Satによって送信されたシンボルであり、hは、上記偏波上で衛星Satから送信されて受信機Recによって受信されたシンボルが経験するチャネルであり、Aは、交差偏波減衰であり、n、nは、2つの受信アンテナ上での分散
【数16】
の加法性白色ガウス雑音を表す。
【0062】
干渉体が存在する場合、上記式は、以下のように書き換えられる。
【数17】
ここで、sは、別の受信機を対象とした第2の偏波上で衛星Satによって送信された干渉シンボルであり、hは、上記別の偏波上で衛星Satから送信されて受信機Recによって受信された干渉シンボルが経験するチャネルである。
【0063】
衛星Satと受信機Recとの間のチャネルは、送信中、静的であると仮定される。受信機Recは、所与の安定した位置にあるとともに衛星Satとの見通し線内にあるので、衛星Satと受信機Recとの間のチャネルは、以下のように分解することができる。
【数18】
ここで、a及びaは、アンテナ利得を表し、bは、大気条件に起因した減衰である。送信中に移動しない所与の受信機Recの場合、衛星Satと受信機Recとの間の距離は変化しないので、衛星Satと受信機Recとの間の自由空間伝播損失は既知であり、以下では省略することができる。この自由空間伝播損失は、アンテナ利得又は大気減衰のいずれかに含まれるものとみなすことができる。この伝播損失は、これ以上明示的に述べられることはなく、以下では省略される。
【0064】
bは、大気条件に起因した大気減衰である。大気減衰bは、準静的であり、受信エリア内の大気条件によって与えられる。したがって、大気減衰bは、双方の偏波について同じである。交差偏波減衰Aは、大気減衰bに依存する。
【0065】
アンテナ利得a及びaは、2つの偏波によって異なる。
【0066】
それらの利得のそれぞれは、衛星Sat上での放射パターンに依存した衛星Sat側における送信アンテナ利得
【数19】
と、受信機Recのアンテナ特性に依存した受信機Recにおける受信アンテナ利得
【数20】
とからなる。さらに、
【数21】
である。ただし、i={1,2}である。送信アンテナパターンは、2つの偏波について異なる場合がある。
【0067】
例えば、受信機Recを対象とした信号は、或る偏波については、衛星アンテナの主ローブの方向で受信されるのに対して、交差偏波干渉信号は、副ローブの方向で受信される場合があり、交差偏波送信の主ローブが隣接したビームを生み出す。
【0068】
衛星Satのアンテナ送信パターンは、地球表面にフットプリントを生み出す。
【0069】
固定された受信機Recは、そのロケーションに対応する衛星フットプリントを知ることができ、したがって、衛星オペレーターによって提供されてRAMメモリ203に記憶されているマップ又は他の情報を介して、衛星Sat側における送信アンテナ利得
【数22】
及び
【数23】
を知ることができる。
【0070】
衛星Sat側における送信アンテナ利得値
【数24】
及び
【数25】
は、固定された受信機について準静的であり、例えば、衛星ビームの構成が変化した場合、又は受信機Recの位置が変化した場合にのみ更新されることになる。
【0071】
送信アンテナ利得値
【数26】
及び
【数27】
の周期的な更新又は要求に応じた更新は、プロセッサ200が実行することができる。同じ論法は、衛星Satと受信機Recとの間の自由空間伝播損失に起因した減衰についても有効である。
【0072】
次のステップS401において、プロセッサ200は、受信機Recの受信アンテナ利得
【数28】
を取得する。
【0073】
受信アンテナAnt1及びAnt2の特性は、組み込みパラメーターであるので、プロセッサ200によって知られており、ROMメモリ202に記憶されているが、受信アンテナ利得
【数29】
は、例えば、アンテナの位置合わせの質に応じて変動する場合がある。
【0074】
プロセッサ200は、較正フェーズ中に受信アンテナ利得
【数30】
の知識を推定又は取得することができる。そのような較正は、例えば、受信機Recの各位置変化時又は定期的に行うことができる。
【0075】
通例、
【数31】
である。
【0076】
次のステップS402において、プロセッサ200は、
【数32】
及び
【数33】
を計算する。
【0077】
次のステップS403において、プロセッサ200は、例えば、パイロットシンボルに基づくような任意のこれまでのチャネル推定方法を用いて、有用なチャネル
【数34】
を推定する。
【0078】
次のステップS404において、プロセッサ200は、大気減衰bの推定された値
【数35】
を計算する。
【0079】
パイロット位置において、送信される有用な信号は、既知のトレーニングシーケンスzである。受信機Recは、同じ位置において送信された干渉信号の性質の知識を有しない。プロセッサ200は、パイロット位置において、以下の式を計算する。
【数36】
ここで、E{・}は平均値であり、zはパイロットシンボルを示し、は複素共役を示す。これらの平均値は、受信フレーム内の多い場合には全てのパイロットシンボルを含めて計算することができる。計算の数を削減するために、これよりも少ない位置を考慮することができる。その場合、統計を信頼性のあるものにするために、十分な数のパイロットシンボルを平均する必要がある。したがって、プロセッサ200は、以下のように、大気減衰bの推定された値
【数37】
を計算することができる。
【数38】
【0080】
一変形形態では、大気減衰bの推定された値
【数39】
は、以下のように計算することもできる。
【数40】
【0081】
次のステップS405において、プロセッサ200は、以下のように、交差偏波減衰Aの推定された値
【数41】
を計算する。
【数42】
【0082】
交差偏波減衰の推定された値
【数43】
を計算する別の手段は、
【数44】
を計算すること又は
【数45】
を計算することである。
【0083】
第2の受信アンテナが存在しない場合、プロセッサ200は、交差偏波減衰の推定された値
【数46】
を計算するために、キャリア周波数及び大気減衰bの関数としての平均交差偏波減衰値を与える実験曲線を用いることができる。
【0084】
次のステップS406において、プロセッサ200は、干渉体チャネルの推定された値
【数47】
を計算する。
【0085】
衛星Satと受信機Recとの間のチャネルの特定の性質に基づいて、プロセッサ200は、以下のように、干渉体の事前知識なしで、また、送信機側において実施される干渉緩和方式を何ら伴わずに、干渉チャネルの品質を推定することができる。
【数48】
【0086】
次のステップS407において、プロセッサ200は、干渉体の電力
【数49】
を推定する。
【0087】
パイロット位置における受信信号から、上記で計算された推定値を用いて、プロセッサ200は、以下の式を計算する。
【数50】
ここで、
【数51】
は、Xがゼロ平均を有するときのXの分散であり、ε、εは、モデル推定誤差である。これらの平均値は、干渉の性質が変化しない幾つかのサブキャリア/タイムスロットを占有する全てのパイロットシンボル上で計算することができる。
【0088】
雑音分散が既知であり、推定誤差ε、εが無視できると仮定される場合、干渉体電力の推定された値は、以下のように計算することができる。
【数52】
ここで、平均関数E{・}は、干渉の性質が変化しない幾つかのサブキャリア/タイムスロットにわたって作用する。
【0089】
プロセッサ200は、有用なチャネル、干渉体チャネル及び干渉体電力の推定された値をこのように計算しており、雑音分散の知識を有する。
【0090】
雑音分散が既知でない場合、干渉電力は、以下のように推定することができる。
【数53】
ここで、平均関数E{・}は、干渉の性質が変化しない幾つかのサブキャリア/タイムスロットにわたって作用する。
【0091】
本発明の特定の実現態様によれば、プロセッサ200は、雑音分散の推定された値を以下の2つの異なる方法で計算するために、干渉電力の推定された値を用いることができる。
【数54】
【0092】
雑音分散が既知でないとき、プロセッサ200は、ステップS408に移動し、2つの推定値
【数55】
及び
【数56】
が一致しているか否かを調べる。
【0093】
2つの推定値
【数57】
及び
【数58】
が一致している場合、例えば、それらの差が、例えば、10パーセント未満の差のような所与の閾値未満である場合、又は
【数59】
が1に近い場合には、プロセッサ200は、上記仮定が正しく、推定誤差が無視できると判断し、プロセッサ200は、以下のように、雑音分散の信頼性のある推定された値を求める。
【数60】
【0094】
雑音分散は、受信フレームの間は変化しないので、干渉の性質が変化しない区間上で各値が取得された幾つかの個々の値
【数61】
は、雑音分散の推定された値の信頼性を改善するために、更に合わせて平均することができる。
【0095】
プロセッサ200は、有用なチャネル、干渉体チャネル、干渉体電力及び雑音分散の推定された値をこのように計算している。プロセッサ200は、次に、ステップS409に移動する。
【0096】
2つの推定値
【数62】
及び
【数63】
が一致しない場合、プロセッサ200は、推定誤差が過度に大きいと判断し、いずれの干渉緩和技法も適用しないことを決定する。プロセッサ200は、本アルゴリズムを中断する。
【0097】
特定の実現態様によれば、雑音分散
【数64】
が既知であるとき、又はそれ以外に異なる手段によって推定されたものであるとき、プロセッサ200は、ステップS408において、雑音分散が既知でない場合に上記で説明したものと正確に同じ手順に従って、雑音分散の推定された値を計算することができる。
【0098】
補助的な信頼性検査として、推定された値
【数65】
が、既知の値
【数66】
と一致している場合、プロセッサ200は、推定誤差が無視できると判定し、干渉緩和技法の実施に進む。プロセッサ200は、次に、ステップS409に移動する。
【0099】
推定された値
【数67】
が、既知の値
【数68】
と一致していない場合、プロセッサ200は、推定誤差が過度に大きいと判断し、いずれの干渉緩和技法も適用しないことを決定する。プロセッサ200は、本アルゴリズムを中断する。
【0100】
ステップS409において、受信機Recは、例えば、ジョイント最小平均二乗誤差(MMSE)検出等の干渉緩和技法を実施することができる。ここで、干渉体に関する更なる知識がなければ、受信機Recは、干渉体ストリームを推定又は逐次干渉キャンセルを適用することができないが、受信機Recは、有用な信号の検出を改善することができることに留意しなければならない。
【0101】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、上述した本発明の実施形態に対して多くの変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4