特許第6336223号(P6336223)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6336223
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】双方向通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/14 20060101AFI20180528BHJP
   G02B 27/22 20060101ALI20180528BHJP
   H04M 3/56 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H04N7/14 140
   G02B27/22
   H04M3/56 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-562362(P2017-562362)
(86)(22)【出願日】2017年8月29日
(86)【国際出願番号】JP2017030917
【審査請求日】2018年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598033848
【氏名又は名称】株式会社アスカネット
(73)【特許権者】
【識別番号】512172578
【氏名又は名称】株式会社メディアタージ
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(72)【発明者】
【氏名】田中 尚文
(72)【発明者】
【氏名】大西 康弘
【審査官】 富樫 明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/108139(WO,A1)
【文献】 特開平5−161135(JP,A)
【文献】 特開2005−287004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/14−7/15
H04N 21/00−21/858
G02B 27/22
H04M 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地点A、Bにいる人物同士が、画像を介して会話を行う双方向通信システムであって、
該双方向通信システムは、各地点A、Bに配置される双方向通信装置を有し、
前記各双方向通信装置は、表示面が上向きに配置された表示手段と、該表示手段の上方に傾斜して配置された光学結像手段と、フィルム状に形成されて前記光学結像手段の上面に積層されたハーフミラーと、該ハーフミラーの上方にあって該ハーフミラーを介して前記人物を撮像する撮像手段と、前記表示手段及び前記撮像手段を制御する制御手段とを有し、
前記光学結像手段は、それぞれの平行配置された光反射面が平面視して直交配置される第1、第2の光制御部を有し、前記表示手段に表示される画像を前記ハーフミラーの前面側の自由空間内の結像面に立体像として結像させ、
地点Aの前記制御手段は、地点Aの前記撮像手段で地点Aの前記人物を撮像し、撮像した地点Aの人物画像を通信ネットワークを介して接続される地点Bの前記制御手段に送信すると共に、地点Bの前記撮像手段で撮像された地点Bの人物画像を受信して地点Aの前記表示手段に表示することを特徴とする双方向通信システム。
【請求項2】
請求項1記載の双方向通信システムにおいて、前記光学結像手段は、表示面が水平に配置された前記表示手段の上方に45度の傾斜角度で配置されていることを特徴とする双方向通信システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の双方向通信システムにおいて、前記各制御手段は、地点A又はBの人物画像と、前記各表示手段に共通して表示される共通画像とを合成して前記各表示手段に表示し、前記各双方向通信装置は、地点A又はBでの前記結像面上の人物の手又は指の位置及び動作を検知する検知手段を有し、前記各制御手段は、前記検知手段で検知した位置及び動作に基づいて前記共通画像を操作して前記表示手段に表示することを特徴とする双方向通信システム。
【請求項4】
請求項3記載の双方向通信システムにおいて、前記共通画像と合成される人物画像は、左右反転像であることを特徴とする双方向通信システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の双方向通信システムにおいて、前記光学結像手段を構成する前記第1、第2の光制御部は、それぞれ、第1の透明樹脂からなる透明板材の一側に所定ピッチで形成された傾斜面と垂直面を有する溝と、該溝内の前記垂直面に形成され前記光反射面を構成する金属反射面と、前記溝内に充填された第2の透明樹脂とを有し、前記第2の透明樹脂の屈折率は、前記第1の透明樹脂の屈折率の0.9〜1.1倍の範囲にあることを特徴とする双方向通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の地点間で画像(立体像)を介して、リアルタイムで遠隔会議(テレビ会議)やビデオチャット等を行うことができる双方向通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔地に存在する人物(通信者)同士が、画像(映像)を通して会話を行うための技術として、テレビ会議システムやテレビ電話システム等が知られている。これらのシステムは、各地点で双方向的に、ビデオカメラ等により各人物の顔を含めた画像を撮影し、それを遠隔地点に伝送して表示装置(ディスプレイ)上に表示することにより、遠隔地点間での会話を可能としている。このような遠隔地との双方向通信システムは、近年のブロードバンドに代表される通信回線容量の増大及び制御装置の高性能化と共に急速に進歩しており、高画質のカラー画像を音声と共にリアルタイムで双方向通信することが可能で、特に、ビジネス分野での使用は、一般的になりつつある。
しかし、従来のこれらのシステムでは、例えば、特許文献1のように、表示装置の上方にビデオカメラやウェブカメラ等の撮像装置が設置された構成が採用されており、会話中の通信者を上方から見下ろして撮像している。一方、通信者は、撮像装置ではなく、主に表示装置に表示される通信相手の画像を見ながら会話を行う。従って、撮像装置による撮像方向と、通信者の視線の方向(目線)が異なっており、表示装置には視線が下方を向いた状態で通信相手の画像が映し出されることになる。この結果、通信者同士は視線を合わせることができず、会話に違和感を生じ易く、意思疎通が図りづらくなり、臨場感や緊張感に欠けるという問題点があった。
この問題点を解決するものとして、例えば、特許文献2では、撮像装置が設置されている高さ及び高さ検知部が検知した目の高さが異なるとき、三次元映像生成部により、双方の差及び撮像装置とユーザ(通信者)との間の距離に基づいて、高さ検知部が検知した目の高さにある仮想的な視点から見たときのユーザの三次元映像を取得するためのレンダリング処理を実行する映像表示システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−93883号公報
【特許文献2】特開2016−192688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2において、動作を交えて会話する通信者同士の目の高さを確実に合わせるためには、常に通信者の映像を抽出しながら、高さ検知部で通信者の目の高さを検知し、通信者の目の高さや撮像装置と通信者との間の距離が変化する度に、三次元映像生成部によって三次元映像を作成して、表示画面の映像を切り替えなければならない。これらの制御は複雑で、処理にも時間を要するため、実際の通信者の動きと表示装置に表示される映像を一致させることは困難であり、その時間差によって違和感を生じる可能性がある。また、通信者同士の目の高さを仮想的に一致させているに過ぎないため、通信者の目の上下左右の動きには対応することができず、通信者同士の視線を完全に一致させることはできない。よって、例えば、表示装置に、通信者と共に写真や文書等の資料映像(共通画像)が表示されている場合に、一方の通信者が資料映像に視線を移しても、他方の通信者は相手がどこを見ているのか判断がつかず、即座に会話に反応することができない。つまり、現実に対面して会話を行うように、視線を送ったり、目配せをしたりして、アイコンタクトを取ることができないため、十分な意思疎通を図ることが難しく、スムーズな会話が成り立たないという問題があった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、複雑な制御や特別な画像処理等を行う必要がなく、遠隔の人物同士が正対して視線を合わせることができ、アイコンタクトやジェスチャーによる意思疎通を図り、会話をスムーズに行うことができる双方向通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る双方向通信システムは、地点A、Bにいる人物同士が、画像を介して会話を行う双方向通信システムであって、
該双方向通信システムは、各地点A、Bに配置される双方向通信装置を有し、
前記各双方向通信装置は、表示面が上向きに配置された表示手段と、該表示手段の上方に傾斜して配置された光学結像手段と、フィルム状に形成されて前記光学結像手段の上面に積層されたハーフミラーと、該ハーフミラーの上方にあって該ハーフミラーを介して前記人物を撮像する撮像手段と、前記表示手段及び前記撮像手段を制御する制御手段とを有し、
前記光学結像手段は、それぞれの平行配置された光反射面が平面視して直交配置される第1、第2の光制御部を有し、前記表示手段に表示される画像を前記ハーフミラーの前面側の自由空間内の結像面に立体像として結像させ、
地点Aの前記制御手段は、地点Aの前記撮像手段で地点Aの前記人物を撮像し、撮像した地点Aの人物画像を通信ネットワークを介して接続される地点Bの前記制御手段に送信すると共に、地点Bの前記撮像手段で撮像された地点Bの人物画像を受信して地点Aの前記表示手段に表示する。
【0007】
本発明に係る双方向通信システムにおいて、前記表示手段の表示面は水平に配置され、前記光学結像手段は、前記表示手段の上方に45度の傾斜角度で配置されていることが好ましい。
【0008】
本発明に係る双方向通信システムにおいて、前記各制御手段は、前記各制御手段は、地点A又はBの人物画像と、前記各表示手段に共通して表示される共通画像とを合成して前記各表示手段に表示し、前記各双方向通信装置は、地点A又はBでの前記結像面上の人物の手又は指の位置及び動作を検知する検知手段を有し、前記各制御手段は、前記検知手段で検知した位置及び動作に基づいて前記共通画像を操作して前記表示手段に表示することが好ましい。
【0009】
本発明に係る双方向通信システムにおいて、前記共通画像と合成される人物画像は、左右反転像であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る双方向通信システムにおいて、前記光学結像手段を構成する前記第1、第2の光制御部は、それぞれ、第1の透明樹脂からなる透明板材の一側に所定ピッチで形成された傾斜面と垂直面を有する溝と、該溝内の前記垂直面に形成され前記光反射面を構成する金属反射面と、前記溝内に充填された第2の透明樹脂とを有し、前記第2の透明樹脂の屈折率は、前記第1の透明樹脂の屈折率の0.9〜1.1倍の範囲にあることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る双方向通信システムは、表示手段に表示される画像を自由空間内の結像面に立体像として結像させることができるので、地点Aでは地点Bの人物画像を表示手段に表示し、地点Bでは地点Aの人物画像を表示手段に表示することにより、各地点の人物(通信者)は、他地点の人物が目の前に存在しているような感覚で会話をすることができる。このとき、各地点の撮像手段は、自地点の人物をハーフミラーを介して撮像することができるので、各地点間の人物同士が視線を合わせてリアルタイムで会話をすることができ、アイコンタクトやジェスチャーによるスムーズな意思疎通を図ることができる。
特に、表示手段の表示面が水平に配置され、光学結像手段が表示手段の上方に45度の傾斜角度で配置されている場合、光学結像手段によって結像する立体像の結像面が鉛直面となり、人物が結像面を正面から見ることができ、結像面の視認性に優れる。また、撮像手段でハーフミラーを介して人物を撮像する際にも、人物を正面から撮像することができるので、結像面を見ている人物と、結像面に表示されている人物画像の人物が正対することができ、違和感なく確実に視線を合わせて会話することができる。
また、地点A又はBの人物画像に、各地点の表示手段に共通して表示される共通画像(写真や文書等)を合成して表示した場合、各地点の人物が同時に共通画像を見ながらスムーズに会話をすることができる。
共通画像と合成される人物画像が左右反転像である場合、他地点の人物が共通画像に対して行う動作を、自地点の表示手段に表示される共通画像の位置や向きと一致させて違和感なく表示させることができるので、他地点の人物の視線の動きや身振り手振りを目で追って、共通画像の確認等を行うことが可能となり、臨場感を高めることができる。
さらに、各地点の双方向通信装置が、地点A又はB(自地点)の人物の動作を検知する検知手段を有する場合、各地点の人物の動作(ジェスチャー)に従って、表示手段に表示される共通画像の拡大、縮小、移動、回転等の各種操作を制御手段で簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例に係る双方向通信システムの構成を示す説明図である。
図2】同双方向通信システムにおける双方向通信装置の構成を示すブロック図である。
図3】同双方向通信システムの使用状態を示す説明図である。
図4】(A)、(B)はそれぞれ同双方向通信システムにおける光学結像手段の正断面図、側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施例に係る双方向通信システム10は、複数の地点に存在する人物11、12が、各地点に配置される双方向通信装置13により、画像を介して会話を行うものである。
図1図2に示すように、各双方向通信装置13は、表示面14が上向きで水平に配置された表示手段15と、表示手段15の上方に45度の傾斜角度で配置された光学結像手段16と、光学結像手段16の上面に積層されたハーフミラー17と、表示面14の鉛直上方にハーフミラー17(光学結像手段16)を挟んで表示面14と対向配置された撮像手段18と、表示手段15、及び撮像手段18を制御する制御手段20とを有している。表示手段15としては、高輝度モニターが好適に用いられ、撮像手段18としては、ウェブカメラ等が好適に用いられる。また、制御手段20としては、RAM、CPU、ROM、I/O、及びこれらの要素を接続するバスを備えた従来公知の演算器(即ち、コンピュータ)が好適に用いられる。なお、制御手段20には、スピーカー21とマイク22が接続されており、これにより会話を行うことができる。
光学結像手段16は、表示手段15に表示される画像をハーフミラー17の前面側の自由空間内の(鉛直)結像面(実体のない空中ディスプレイ)23に立体像として結像させるものである。この光学結像手段16の詳細については、後述する。また、ハーフミラー17の形態は特に限定されないが、フィルム状(シート状)に形成されたものは、軽量で、光学結像手段16の表面に簡単に貼り付けることができるので、好適に用いられる。
【0014】
以下、複数の地点の中の地点Aと地点Bの間で通信を行う場合について説明する。なお、図1において、左側を地点A、右側を地点Bとする。
地点Aの制御手段20は、結像面23を挟んでハーフミラー17の前方にいる地点A(自地点)の人物11を撮像手段18で撮像し、撮像した画像(地点Aの人物画像26)を通信ネットワーク24を介して接続される地点B(他地点)の制御手段20に送信すると共に、地点Bの撮像手段18で撮像された地点Bの人物12の画像(他地点人物画像、地点Bの人物画像25)を受信して表示手段15に表示することができる。
同様に、地点Bの制御手段20は、結像面23を挟んでハーフミラー17の前方にいる地点B(自地点)の人物12を撮像手段18で撮像し、撮像した画像(地点Bの人物画像25)を通信ネットワーク24を介して接続される地点A(他地点)の制御手段20に送信すると共に、地点Aの撮像手段18で撮像された地点Aの人物11の画像(他地点人物画像、地点Aの人物画像26)を受信して表示手段15に表示することができる。
表示手段15に表示される画像は、前述のように、光学結像手段16によって結像面23に立体像として結像するので、図3に示すように、地点Aの結像面23には、地点Bの人物画像25が表示され、地点Bの結像面23には、地点Aの人物画像26が表示される。
このとき、表示手段15の表示面14が水平に配置され、光学結像手段16が表示手段15の上方に45度の傾斜角度で配置されていることにより、結像面23は鉛直面となる。また、表示面14の鉛直上方に配置された撮像手段18の撮像方向は鉛直下向きであり、ハーフミラー17の表面に対しては45度傾斜しており、結像面23(鉛直面)とは平行である。よって、結像面23と正対している人物11、12をハーフミラーで反射させて撮像手段18で正面から撮像することができ、表示手段15に表示される人物画像25、26の違和感が少なく、視線の方向も確認し易くなる。
【0015】
なお、各制御手段20は、他地点の人物画像25又は26と、各表示手段15に共通して表示される共通画像27とを合成して各表示手段15に表示することができる。共通画像27は、写真や文書等の資料画像であり、必要に応じて、図3に示すように、各地点の結像面23の同じ位置に同じ向きで表示される。このとき、共通画像27と合成される他地点の人物画像25、26をそれぞれ左右反転像とすることにより、各地点の人物11、12は、他地点の人物12、11の動作を正面から観察することができ、あたかも人物11、12同士が共通画像27を挟んで対面するようにして、視線を合わせて会話することができる。また、例えば、図3に示すように、地点Aの人物11は、地点Bの人物12が共通画像27のどこを指差しているのか、結像面23上で容易に確認することができ、アイコンタクトを取りながら、スムーズに会話することができる。さらに、人物11、12は、結像面23上の同じ位置を双方から指差すことができ、その様子を互いに結像面23上で確認することができるので、身振り手振りも交えながら意思疎通を図ることができる。共通画像27は小窓のように表示され、共通画像27の数、大きさ、配置は、適宜、選択することができる。なお、他地点の人物画像25、26は、必ずしも左右反転像とする必要はなく、反転させるか否かは、適宜、選択することができる。
【0016】
また、各双方向通信装置13は、図1図2に示すように、各地点(自地点)の人物11又は12の動作を検知する検知手段28を有している。検知手段28で各地点の人物11又は12の動作を検知し、検知した動作に基づいて、制御手段20で共通画像27を操作(処理)して、表示手段15に表示することができる。例えば、地点Aの人物11が共通画像27を拡大する動作を行った場合、地点Aの検知手段28が、その動作を検知し、地点Aの制御手段20が共通画像27を拡大する操作(処理)を行う。そして、拡大された共通画像27が、地点A及び地点Bの表示手段15に表示されることにより、各地点の人物11、12は同じ共通画像27を見ながら会話を進めることができる。
特に、結像面23に焦点を合わせ、結像面23上での人物11又は12の手や指の位置及び動作を検知する検知手段28は、動作の検知性能に優れるので、制御手段20によって共通画像27の大きさや位置等を調整して表示手段15に表示させることができ、操作性に優れる。このような検知手段28として、赤外線モーションセンサー等が好適に用いられる。なお、制御手段20での処理は、CPUが所定のプログラムを実行することで実現されるが、手や指の動作と、画像操作指令が予め対応付けられており、共通画像27の拡大、縮小、移動、回転等の操作(処理)を行うことができる。これにより、共通画像27を利用して円滑に会話を進めることができる。
【0017】
次に、光学結像手段16の一例について説明する。
図4(A)、(B)に示すように、光学結像手段16は、複数の光反射面30を有する第1の光制御部31と、複数の光反射面32を有する第2の光制御部33からなり、それぞれの光反射面30、32が平面視して直交するように第1、第2の光制御部31、33が、厚さ方向に重ね合わされて配置(一体化)されたものである。
第1の光制御部31は、第1の透明板材34の一側に、傾斜面35と垂直面36とを有する断面三角形の複数の溝37、及び隣り合う溝37の間に形成される断面三角形の複数の凸条38がそれぞれ所定ピッチで配置されたものであり、それぞれの溝37の垂直面36のみに鏡面(金属反射面)からなる光反射面30が形成されている。なお、溝37の底部(傾斜面35の下端と垂直面36の下端との間)、及び凸条38の頂部(傾斜面35の上端と垂直面36の上端との間)には、それぞれ微小平面部39、40が形成されている。
また、第2の光制御部33は、第2の透明板材41の他側に、傾斜面42と垂直面43とを有する断面三角形の複数の溝44、及び隣り合う溝44の間に形成される断面三角形の複数の凸条45がそれぞれ所定ピッチで配置されたものであり、それぞれの溝44の垂直面43のみに鏡面(金属反射面)からなる光反射面32が形成されている。なお、溝44の底部(傾斜面42の下端と垂直面43の下端との間)、及び凸条45の頂部(傾斜面42の上端と垂直面43の上端との間)には、それぞれ微小平面部46、47が形成されている。
そして、向かい合わせに配置された溝37、44には透明樹脂48が充填されている。
なお、第1、第2の透明板材34、41の屈折率η1、η2は同一で、その間に充填される透明樹脂48の屈折率η3は、第1、第2の透明板材34、41の屈折率η1、η2の0.8〜1.2倍(より好ましくは、0.9〜1.1倍、さらに好ましくは、0.95〜1.05倍)の範囲にあることが好ましい。
第1、第2の透明板材34、41の原料となる透明樹脂としては、シクロオレフィンポリマー、ポリメチルメタルクレート(アクリル系樹脂)、非晶質フッ素樹脂、PMMA、光学用ポリカーボネイト、フルオレン系ポリエステル、ポリエーテルスルホン等の熱可塑性樹脂を使用することができるが、特に融点、透明度の高いものが好適に用いられる。
【0018】
鏡面(金属反射面)を形成する方法としては、溝37、44の垂直面36、43に直接、スパッタリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、イオンビームの照射、金属ペーストの塗布等を行うものが好適に用いられるが、スパッタリングや金属蒸着等で反射膜を形成した樹脂フィルムを溝37、44の垂直面36、43に貼り付けてもよい。なお、溝37、44の垂直面36、43に直接、スパッタリング、金属蒸着、金属微小粒子の吹き付け、イオンビームの照射等を行う場合は、真空中又は低圧下で、斜め上方から垂直面36、43に向けて金属粒子を照射する。このとき、溝37、44の底部にそれぞれ微小平面部39、46が形成されているので、傾斜面35、42に金属粒子が付着することを減らし又は無くしながら、垂直面36、43の下端まで斑なく金属粒子を照射することができる。なお、溝37、44の傾斜面35、42は平面状に形成する代わりに、凸条38、45の内側に窪む断面多角形状の多角面や断面円弧状の凹面、或いは表面に多数の微小な凹凸(疵)を有する凹凸面として、金属粒子の付着を防止してもよい。
【0019】
溝37、44に透明樹脂48を充填して第1、第2の光制御部31、33を一体化する方法としては、第1の光制御部31の一側と、第2の光制御部33の他側、つまり、それぞれの溝37、44が形成された側の面が対向するように向かい合わせに配置された状態で、その間に、第1、第2の透明板材34、41より融点が低いシート状の透明樹脂を挟み込み、真空状態で加熱、押圧して、透明樹脂のみを溶解し、固化させてもよいし、それぞれの溝37、44に別々に透明樹脂からなる透明接着剤を充填し、第1、第2の光制御部31、33の溝37、44を向かい合わせ、突き合わせて、透明接着剤を硬化させてもよい。透明接着剤としては、紫外線等を照射することにより硬化する光硬化型の他、熱硬化型や二液混合型の接着剤を用いることができる。特に、屈折率η3を屈折率η1、η2に近づけるために、屈折率を調整した屈折率調整樹脂からなる光学用接着剤等が好適に用いられる。
なお、各溝の傾斜面が多角面、凹面、凹凸面等を有する場合、アンカー効果によって、傾斜面と、溝に充填される透明樹脂との密着性を高め、溝内を透明樹脂で隙間なく埋めて凹凸を解消することができる。その結果、傾斜面と透明樹脂との界面で乱反射(散乱)を発生させることなく光を通過させることができ、屈折も最小限に抑えて、明るく鮮明な立体像を得ることができる。
【0020】
次に、光学結像手段16の動作を説明する。
図1において、表示手段15に画像が表示されると、その光が光学結像手段16に向かって放射される。図4(A)、(B)に示すように、光L1がP1の位置で光学結像手段16の第2の光制御部33に入光した場合、その光L1は、光反射面32上のP2の位置で反射し、第1の光制御部31に進入する。そして、光反射面30のP3の位置で反射した後、P4の位置で第1の光制御部31から空中に出て行き結像する。ここで、図4(A)のQ1で第2の透明板材41から透明樹脂48に、Q2で透明樹脂48から第1の透明板材34に入光するが、第1、第2の透明板材34、41の屈折率η1、η2が同一で、透明樹脂48の屈折率η3と近似する(略同等である)ので、全反射や分光等の現象は起こらない。また、図4(B)のS1で第2の透明板材41から透明樹脂48に、S2で透明樹脂48から第1の透明板材34に入光するが、第1、第2の透明板材34、41の屈折率η1、η2が同一で、透明樹脂48の屈折率η3と近似する(略同等である)ので、全反射や分光等の現象は起こらない。
なお、P1、P4の位置でも屈折を起こすが、P1、P4の屈折は相殺する。また、垂直面36、43に形成された金属被膜は表裏(図4(A)、(B)では左右)いずれ側の面も光反射面として機能させることができる。
【0021】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は何ら上記した実施例に記載の構成に限定されるものではなく、請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施例や変形例も含むものである。
検知手段は、人物の指や手の動作を検知するものの他、声や音を検知するものを用いることもできる。
上記実施例では、2つの地点間で通信を行う場合について説明したが、3つ以上の地点間で通信を行うことも可能である。なお、3つ以上の地点間で通信を行う場合は、各地点の表示手段に表示する他地点の人物画像を適宜、選択して切り替える必要がある。例えば、地点A、地点B、地点Cの3つの地点間で通信を行う場合、地点Aの人物が発言している時には、地点B、地点Cの表示手段に地点Aの人物画像を表示することが好ましい。このとき、発言している地点Aの人物或いは発言を聞いている地点B、地点Cの人物が、発言している人物がいる地点Aを手動で選択して人物画像を切り替えてもよいが、地点Aの検知手段で人物の声を検知した時に、地点Aの人物の人物画像を地点Aの制御手段から地点B、地点Cの制御手段に送信し、それぞれの表示手段に表示するようにして、画像の切り替えを自動化することもできる。なお、地点Aの表示手段には、地点B又は地点Cの人物画像を表示することが好ましい。このとき、表示する地点B又は地点Cの人物画像は、制御手段により、自動的に定期又は不定期で切替えてもよいし、地点Aの人物が、発言の内容等に応じて、手動で地点B又は地点Cを選択して切替えてもよい。
また、上記実施例では、表示手段の表示面を水平に配置し、光学結像手段及びハーフミラーを表示手段の上方に45度の傾斜角度で配置した場合について説明したが、これらを配置する角度は、適宜、選択することができる。なお、撮像手段の撮像方向は、ハーフミラーの表面に対して45度傾斜していることが好ましいが、これに限定されるものではなく、適宜、選択することができる。
【0022】
さらに、上記実施例では、光学結像手段として、第1、第2の光制御部の表側(溝が形成された面)同士が接するように配置したものを用いたが、光学結像手段は、第1、第2の光制御部の光反射面が、平面視して直交配置されていればよい。よって、第1、第2の光制御部の表側と裏側が接するように配置する場合や、第1、第2の光制御部の裏側同士が接するように配置する場合もある。また、第1、第2の光制御部を2枚の透明板材に別々に形成して接合する代わりに、1枚の透明板材の両側に第1、第2の光制御部を形成することもできる。
なお、第1、第2の光制御部の各溝の垂直面に鏡面(金属反射面)を形成する代わりに、溝内に空気等の気体を密封したり、溝内を真空にしたりして、光の全反射を利用すれば、各溝の垂直面をそのまま光反射面とすることができる。
また、上記実施例では、光学結像手段として、第1、第2の光制御部の複数の光反射面がそれぞれ直線状(平行)に配置されたものについて説明したが、複数の光反射面が放射状に配置された第1の光制御部と、複数の光反射面が同心円状に配置された第2の光制御部を有するものも使用することができる。この場合、第1の光制御部の放射状の光反射面が、基準点Xを中心にして直線状に設けられるのに対し、第2の光制御部の同心円状の光反射面は、平面視して基準点Xと重なる基準点Yを中心とする同心円に沿って湾曲しているが、平面視して光反射面同士が交差する点では、両者は直交している。よって、上記実施例と同様に、立体像を結像させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る双方向通信システムは、遠隔地の人物同士が、画像を通して会話を行う際に、視線を合わせて意思疎通を図り、スムーズに会話を進めることができ、遠隔会議(テレビ会議)やビデオチャット等で有効に利用できる。
【符号の説明】
【0024】
10:双方向通信システム、11、12:人物、13:双方向通信装置、14:表示面、15:表示手段、16:光学結像手段、17:ハーフミラー、18:撮像手段、20:制御手段、21:スピーカー、22:マイク、23:結像面、24:通信ネットワーク、25、26:人物画像、27:共通画像、28:検知手段、30:光反射面、31:第1の光制御部、32:光反射面、33:第2の光制御部、34:第1の透明板材、35:傾斜面、36:垂直面、37:溝、38:凸条、39、40:微小平面部、41:第2の透明板材、42:傾斜面、43:垂直面、44:溝、45:凸条、46、47:微小平面部、48:透明樹脂
【要約】
双方向通信システム10の各地点の双方向通信装置13は、表示面14が上向きに配置された表示手段15と、表示手段15の上方に傾斜して配置された光学結像手段16と、光学結像手段16の上面に積層されたハーフミラー17と、ハーフミラー17の上方にあってハーフミラー17を介して人物を撮像する撮像手段18と、表示手段15及び撮像手段18を制御する制御手段20とを有し、他地点の撮像手段18で撮像された人物画像25を通信ネットワーク24を介して受信し、表示手段15に表示される人物画像25を光学結像手段16で立体像として結像させ、ハーフミラー17前方の結像面23に表示する。
図1
図2
図3
図4