(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336248
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】弾性波装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20180528BHJP
H03H 3/08 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H3/08
【請求項の数】18
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-88094(P2013-88094)
(22)【出願日】2013年4月19日
(65)【公開番号】特開2014-212466(P2014-212466A)
(43)【公開日】2014年11月13日
【審査請求日】2016年4月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】514250975
【氏名又は名称】スカイワークスフィルターソリューションズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】藤田 知宏
(72)【発明者】
【氏名】木村 拡
(72)【発明者】
【氏名】太田 達史
(72)【発明者】
【氏名】阿部 冬希
【審査官】
麻川 倫広
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−065997(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/061821(WO,A1)
【文献】
特開2000−243874(JP,A)
【文献】
特開2005−033689(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/128823(WO,A1)
【文献】
特開2009−278422(JP,A)
【文献】
特開2010−056671(JP,A)
【文献】
特開2005−166910(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/006343(WO,A1)
【文献】
特開2001−144216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/54
23/00−23/04
23/06−23/10
23/16−23/26
H03H3/08−3/10
9/145
9/25
9/42−9/44
9/64
9/68
9/72
9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板の上面に設けられた櫛形電極に接続された配線と、
前記圧電基板の前記上面に設けられ、空間を介して前記櫛形電極を覆う素子カバーと、
前記素子カバーの上面に設けられた第1の電極と、
前記素子カバー及び前記第1の電極を覆う封止樹脂の上に設けられた端子電極と、
前記封止樹脂を貫通して前記第1の電極と前記端子電極とを電気的に接続する第2の電極と
を含み、
前記端子電極に接続する側の前記第2の電極の直径が、前記第1の電極に接続する側の前記第2の電極の直径よりも小さく、
前記第1の電極、前記第2の電極及び前記端子電極はそれぞれ無光沢金属メッキ皮膜を含み、
前記端子電極の平均メッキ粒径は前記第1の電極の平均メッキ粒径よりも小さい弾性波装置。
【請求項2】
圧電基板の上面に設けられた櫛形電極に接続された配線と、
前記圧電基板の前記上面に設けられ、空間を介して前記櫛形電極を覆う素子カバーと、
前記素子カバーの上面に設けられた第1の電極と、
前記素子カバー及び前記第1の電極を覆う封止樹脂の上に設けられた端子電極と、
前記封止樹脂を貫通して前記第1の電極と前記端子電極とを電気的に接続する第2の電極と
を含み、
前記端子電極に接続する側の前記第2の電極の直径が、前記第1の電極に接続する側の前記第2の電極の直径よりも小さく、
前記第1の電極、前記第2の電極及び前記端子電極はそれぞれ無光沢金属メッキ皮膜を含み、
前記端子電極の平均メッキ粒径は前記第2の電極の平均メッキ粒径よりも小さい弾性波装置。
【請求項3】
前記端子電極の平均メッキ粒径は前記第1の電極の平均メッキ粒径よりも小さい請求項2の弾性波装置。
【請求項4】
圧電基板の上面に設けられた櫛形電極に接続された配線と、
前記圧電基板の前記上面に設けられ、空間を介して前記櫛形電極を覆う素子カバーと、
前記素子カバーの上面に設けられた第1の電極と、
前記素子カバー及び前記第1の電極を覆う封止樹脂の上に設けられた端子電極と、
前記封止樹脂を貫通して前記第1の電極と前記端子電極とを電気的に接続する第2の電極と
を含み、
前記端子電極に接続する側の前記第2の電極の直径が、前記第1の電極に接続する側の前記第2の電極の直径よりも小さく、
前記第1の電極、前記第2の電極及び前記端子電極はそれぞれ無光沢金属メッキ皮膜を含み、
前記第2の電極のメッキ粒は、前記圧電基板に垂直な面に沿って切断した断面から見たとき、前記圧電基板に平行な方向の平均寸法よりも前記圧電基板に垂直な方向の平均寸法が大きい弾性波装置。
【請求項5】
前記端子電極の平均メッキ粒径は前記第1の電極の平均メッキ粒径よりも小さい請求項4の弾性波装置。
【請求項6】
前記端子電極の平均メッキ粒径は前記第2の電極の平均メッキ粒径よりも小さい請求項4又は5の弾性波装置。
【請求項7】
前記第2の電極の密度は前記第1の電極の密度よりも大きい請求項1から6のいずれか一項の弾性波装置。
【請求項8】
前記端子電極の密度は前記第1の電極の密度よりも小さい請求項7の弾性波装置。
【請求項9】
弾性波装置を製造する方法であって、
圧電基板の上面に櫛形電極及び配線を形成する工程と、
空間を介して前記櫛形電極を覆う素子カバーを前記圧電基板の上面に形成する工程と、
前記素子カバーの上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極の上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより柱状の第2の電極を形成する工程と、
前記第2の電極の上面を露出させるように前記第1の電極を封止樹脂で覆う工程と、
前記第2の電極の上面に無光沢金属メッキにより端子電極を形成する工程と
を含み、
前記端子電極に接続する側の前記第2の電極の直径を前記第1の電極に接続する側の前記第2の電極の直径よりも小さくし、
前記無光沢金属メッキは電解メッキ法によって得られ、
前記第2の電極を形成するための電流密度は前記第1の電極を形成するための電流密度よりも大きい方法。
【請求項10】
弾性波装置を製造する方法であって、
圧電基板の上面に櫛形電極及び配線を形成する工程と、
空間を介して前記櫛形電極を覆う素子カバーを前記圧電基板の上面に形成する工程と、
前記素子カバーの上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極の上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより柱状の第2の電極を形成する工程と、
前記第2の電極の上面を露出させるように前記第1の電極を封止樹脂で覆う工程と、
前記第2の電極の上面に無光沢金属メッキにより端子電極を形成する工程と
を含み、
前記端子電極に接続する側の前記第2の電極の直径を前記第1の電極に接続する側の前記第2の電極の直径よりも小さくし、
前記無光沢金属メッキは電解メッキ法によって得られ、
前記端子電極を形成するための電流密度は前記第2の電極を形成するための電流密度よりも小さい方法。
【請求項11】
弾性波装置を製造する方法であって、
圧電基板の上面に櫛形電極及び配線を形成する工程と、
空間を介して前記櫛形電極を覆う素子カバーを前記圧電基板の上面に形成する工程と、
前記素子カバーの上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極の上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより柱状の第2の電極を形成する工程と、
前記第2の電極の上面を露出させるように前記第1の電極を封止樹脂で覆う工程と、
前記第2の電極の上面に無光沢金属メッキにより端子電極を形成する工程と
を含み、
前記端子電極に接続する側の前記第2の電極の直径を前記第1の電極に接続する側の前記第2の電極の直径よりも小さくし、
前記無光沢金属メッキは電解メッキ法によって得られ、
前記電解メッキ法に使用されるメッキ液の液流は、前記圧電基板に垂直な方向に配向される方法。
【請求項12】
前記第2の電極はメッキの成長とともに直径が小さくなる請求項9の方法。
【請求項13】
前記第2の電極のメッキ粒は、前記圧電基板に垂直な方向に伸びる形状を有する請求項12の方法。
【請求項14】
弾性波装置を製造する方法であって、
圧電基板の上面に櫛形電極及び配線を形成する工程と、
空間を介して前記櫛形電極を覆う素子カバーを前記圧電基板の上面に形成する工程と、
前記素子カバーの上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極の上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより柱状の第2の電極を形成する工程と、
前記第2の電極の上面を露出させるように前記第1の電極を封止樹脂で覆う工程と、
前記第2の電極の上面に無光沢金属メッキにより端子電極を形成する工程と
を含み、
前記端子電極に接続する側の前記第2の電極の直径を前記第1の電極に接続する側の前記第2の電極の直径よりも小さくし、
前記端子電極の平均メッキ粒径は前記第1の電極の平均メッキ粒径よりも小さい方法。
【請求項15】
弾性波装置を製造する方法であって、
圧電基板の上面に櫛形電極及び配線を形成する工程と、
空間を介して前記櫛形電極を覆う素子カバーを前記圧電基板の上面に形成する工程と、
前記素子カバーの上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより第1の電極を形成する工程と、
前記第1の電極の上面にメッキレジストを用いて無光沢金属メッキにより柱状の第2の電極を形成する工程と、
前記第2の電極の上面を露出させるように前記第1の電極を封止樹脂で覆う工程と、
前記第2の電極の上面に無光沢金属メッキにより端子電極を形成する工程と
を含み、
前記端子電極に接続する側の前記第2の電極の直径を前記第1の電極に接続する側の前記第2の電極の直径よりも小さくし、
前記端子電極の平均メッキ粒径は前記第2の電極の平均メッキ粒径よりも小さい方法。
【請求項16】
前記無光沢金属メッキは無光沢電解銅メッキを含む請求項9から15のいずれか一項の方法。
【請求項17】
前記第2の電極の密度は前記第1の電極の密度よりも大きい請求項9から16のいずれか一項の方法。
【請求項18】
前記端子電極の密度は前記第1の電極の密度よりも小さい請求項17の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器において電子部品として使用される弾性波装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の弾性波装置1の断面図である。従来の弾性波装置1は、圧電基板2と、圧電基板2の上に設けられた櫛形電極3および配線4と、櫛形電極3を包囲する側壁5と、側壁5に囲まれた櫛形電極3が励振する空間6と、側壁5の上面に設けられ、空間6を上方から覆う蓋体7と、蓋体7の上に設けられた電極8と、蓋体7および電極8を上から封止する封止樹脂9と、封止樹脂9を貫通する電極10と、電極10の上面に設けられた端子電極11とを有する。
【0003】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−185976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来の弾性波装置1は、外部の基板(図示せず)に接続した際に、外部基板からの応力が伝達し、長期に使用した場合に弾性波装置1の内部を破損してしまうという課題を有していた。本発明は、小型で長期信頼性を有する弾性波装置とその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、圧電基板と、前記圧電基板の上面に設けられた櫛形電極と、前記櫛形電極に接続された配線と、前記圧電基板の前記上面に設けられ、空間を介して前記櫛形電極を覆う素子カバーと、前記素子カバーの上面に設けられた第1の電極と、前記素子カバーおよび前記第1の電極を覆う封止樹脂と、前記封止樹脂の上に設けられた端子電極と、前記封止樹脂を貫通して前記第1の電極と前記端子電極とを電気的に接続する第2の電極とを備え、前記端子電極に接続する側の前記第2の電極の径を前記第1の電極に接続する側の前記第2の電極の径よりも小さくしたものである。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成を有することにより、本発明の弾性波装置は、外部から及ぼされる応力の影響を低減し、小型で長期信頼性を実現できるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態における弾性波装置の断面図
【
図2】(a)〜(c)同弾性波装置の製造方法を示した製造工程図
【
図3】(a)〜(c)同弾性波装置の製造方法を示した製造工程図
【
図4】(a)〜(c)同弾性波装置の製造方法を示した製造工程図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態における弾性波装置について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施の形態における弾性波装置を模式的に示した断面図である。
図1において、弾性波装置21は、圧電基板22の上に櫛形電極23と、配線24と、櫛形電極23を包囲する側壁25と、櫛形電極23が励振する空間26と、空間26を上方から覆う蓋体27と、配線24の上面から側壁25の外側面を経由して蓋体27の上面にかけて設けられた第1の電極29と、蓋体27および第1の電極29を上から封止する封止樹脂30と、封止樹脂30を貫通して設けられた第2の電極31と、第2の電極31の上面に設けられた端子電極32とを有する。
【0011】
圧電基板22は、回転YカットX伝播の単結晶タンタル酸リチウムからなる圧電性単結晶基板であり、その板厚は100〜350μm程度である。
【0012】
櫛形電極23は圧電基板22の表面に形成されたアルミニウムを主成分とする金属よりなり、櫛形電極23に電圧を印加することにより圧電基板22の表面に弾性表面波を励振するものである。櫛形電極23の表面には、必要に応じて酸化ケイ素などの誘電体からなる保護膜を形成する。
【0013】
配線24は、圧電基板22の表面に形成されたアルミニウムやアルミニウム合金などの導体よりなり、櫛形電極23に電気的に接続され、回路を構成する。
【0014】
側壁25は、圧電基板22の上において櫛形電極23を囲むように設けたものであり、ポリイミド系の光硬化性樹脂を露光・現像して形成したものである。
【0015】
空間26は、弾性表面波が励振するために櫛形電極23の上方に設けられた密封された空洞である。
【0016】
蓋体27は、側壁25の上面に設けられ、空間26を上方から覆って密封するもので、ポリイミド系の光硬化性樹脂シートを側壁25の上面に接着し、露光・現像して形成したものである。側壁25と蓋体27とで、櫛形電極23とその励振する空間26を密封する素子カバー28を構成する。
【0017】
第1の電極29は、配線24の上面から側壁25の外側面を経由して蓋体27の上面に至る導体であり、無光沢電解銅メッキにより形成したものである。この第1の電極29を構成する無光沢電解銅メッキ皮膜は、硫酸銅5水和物濃度150〜200g/L、硫酸50〜150g/Lに塩化物イオンを適量と界面活性剤を主成分とする添加剤を含むメッキ液から電解メッキ法により得られる。第1の電極29のメッキ粒の寸法は、圧電基板の平面方向が1.9〜13μmで平均は5.3μm程度、圧電基板に垂直な方向が3.3〜22μmで平均は9.8μm程度、第1の電極29のメッキ皮膜の密度は8.21g/cm
2である。第1の電極29は、素子カバー28の大部分を覆うことにより、素子カバー28の機械的強度を確保するとともに、櫛形電極23および配線24に対するシールド効果を付与し、櫛形電極23が励振する空間26への水分の浸入を抑制するものである。第1の電極29は端子電極32と比較して、メッキ粒径を相対的に大きくすることによってメッキ皮膜を相対的に柔らかくし、密度を相対的に大きくしたものである。
【0018】
封止樹脂30は、圧電基板22の上において、素子カバー28と第1の電極29を封止して硬化したエポキシ系の樹脂であり、シリカ等のフィラーを含有させたものである。
【0019】
第2の電極31は、封止樹脂30を貫通して第1の電極29と端子電極32とを接続するビア電極であり、無光沢電解銅メッキにより形成したものである。
【0020】
第2の電極31のメッキ粒の寸法は、圧電基板の平面方向が0.9〜8μmで平均は3.0μm程度、圧電基板に垂直な方向が0.9〜18μmで平均は8.4μm程度、第2の電極31のメッキ皮膜の密度は8.36g/cm
2である。第2の電極31は端子電極32と比較して、メッキ粒径を相対的に大きくすることによってメッキ皮膜を相対的に柔らかくし、密度を相対的に大きくしたものである。
【0021】
端子電極32は、第2の電極31の上面とその周囲の封止樹脂30の上面に無光沢電解銅メッキにより形成した電極であり、弾性波装置21を外部の電気回路(図示せず)に電気的に接続するための端子である。端子電極32のメッキ粒の寸法は、圧電基板の平面方向が1.4〜7μmで平均は3.5μm程度、圧電基板に垂直な方向が2.8〜10μmで平均は5.4μm程度、端子電極32のメッキ皮膜の密度は8.15g/cm
2である。このように端子電極32は、第1の電極29および第2の電極31と比較して、平均メッキ粒径を小さくするとともに密度を小さくしたものである。
【0022】
以上のように構成された弾性波装置21は、ウエハレベルCSPと呼ばれ、弾性表面波素子が形成された圧電基板22と同等レベルの占有面積を有する極めて小型の寸法を実現できるものである。
【0023】
以上のように本発明の弾性波装置21は、端子電極に接続する側の第2の電極の径を第1の電極に接続する側の第2の電極の径よりも小さくしたことにより、外部の基板に実装した際に外部の基板から加えられる応力の影響を小さくすることができ、弾性波装置の破壊を防ぐことができる。
【0024】
また、本発明の弾性波装置21は、第1の電極と第2の電極と端子電極を無光沢金属メッキにより形成したことにより、各電極と電極の接合強度および電極と封止樹脂との接合強度を向上することができ、弾性波装置21の機械的強度を向上することができる。
【0025】
また、本発明の弾性波装置21は、端子電極の平均メッキ粒径を第2の電極の平均メッキ粒径よりも小さくしたことにより、端子電極のメッキ皮膜を固くするとともに、第2の電極のメッキ皮膜を柔らかくすることができ、端子電極を外部回路に接合したときに生ずる外部応力を第2の電極において緩和することができる。また、第2の電極の平均メッキ粒径を大きくしたことにより、抵抗損失を低減することができる。また、端子電極の平均メッキ粒径を細かくしたことにより、端子電極のハンダ付け性を向上することができる。
【0026】
また、本発明の弾性波装置21の第2の電極のメッキ粒は、圧電基板に垂直な面に沿って切断した断面から見たとき、圧電基板に平行な方向の寸法よりも圧電基板に垂直な方向の寸法を大きくしたことにより、第2の電極の垂直方向の電気抵抗の損失を少なくするとともに、第2の電極の機械的強度を柔軟にすることができる。
【0027】
また、本発明の弾性波装置21は、第2の電極の密度を第1の電極の密度よりも大きくし、端子電極の密度を第1の電極の密度よりも小さくしたことにより、第2の電極の電気抵抗による損失を低減し、端子電極の機械的強度を増加することができる。
【0028】
次に、本発明の一実施の形態における弾性波装置21の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図2(a)〜(c)、
図3(a)〜(c)および
図4(a)〜(c)は本発明の一実施の形態における弾性波装置21の製造工程を模式的に示した製造工程図である。
【0030】
まず、圧電基板22の上面に、金属薄膜を形成し、これにフォトリソグラフ技術を用いてエッチングし、
図2(a)に示すように、複数の櫛形電極23と配線24を形成する。
【0031】
次に、圧電基板22の上面にポリイミド系の光硬化性樹脂からなるシートをラミネートし、露光・現像・硬化することにより、
図2(b)に示すように、櫛形電極23を囲む側壁25を形成する。
【0032】
次に、側壁25の上面に、ポリイミド系の光硬化性樹脂からなるシートをラミネートし、露光・現像・硬化することにより、
図2(c)に示すように、櫛形電極23が励振するための空間26を上から覆う蓋体27を形成する。
【0033】
次に、電解銅メッキのための給電導体(図示せず)とメッキレジスト33を形成し、無光沢電解銅メッキを行うことにより第1の電極29を形成し、
図3(a)に示す構成が得られる。
【0034】
次に、メッキレジスト33に重ねて、メッキレジスト34を形成し、
図3(b)に示す構成になる。
【0035】
次に、無光沢電解銅メッキを行うことにより第2の電極31を、
図3(c)に示すように形成する。ここで、第2の電極31を形成するための無光沢電解銅メッキの電流密度は、第1の電極を形成する際の無光沢電解銅メッキの電流密度の2.0±0.4倍である。この電解メッキの大きな電流密度は、被メッキ物に対する垂直な方向のメッキ液の液流を併用することにより、実現できる。このように、第2の電極31を形成するための無光沢電解銅メッキの電流密度を、第1の電極を形成する際の無光沢電解銅メッキの電流密度よりも大きくすることにより、第2の電極31の密度を第1の電極の密度よりも大きくしたものである。また、この第2の電極31は、無光沢電解銅メッキの電流密度を、十分大きくしたことにより、結晶粒の形状が圧電基板の垂直方向に伸びる形状になるとともに、メッキの成長とともに第2の電極の径が小さくなる。すなわち、端子電極に接続する側の第2の電極の径は、第1の電極に接続する側の第2の電極の径よりも小さく、第2の電極31の結晶粒の形状は、圧電基板に垂直な面に沿って切断した断面から見たとき、圧電基板に平行な方向の寸法よりも圧電基板に垂直な方向の寸法が大きい。
【0036】
次に、メッキレジスト34と給電導体(図示せず)を除去し、
図4(a)に示す構成になる。
【0037】
次に、フィラーを含有させた液状のエポキシ系樹脂を塗布し、硬化して、その上面を研削して第2の電極31の上面を露出させることにより、
図4(b)に示すように、素子カバー28と第1の電極29を覆う封止樹脂30を形成する。
【0038】
次に、電解銅メッキのための給電導体(図示せず)とメッキレジスト35を形成し、無光沢電解銅メッキにより端子電極32を、
図4(c)に示すように形成する。ここで、端子電極32を形成するための無光沢電解銅メッキの電流密度は、第2の電極を形成する際の無光沢電解銅メッキの電流密度の0.25±0.05倍である。このように、端子電極32を形成するための無光沢電解銅メッキの電流密度を、第2の電極を形成する際の無光沢電解銅メッキの電流密度よりも小さくすることにより、端子電極32の平均メッキ粒径を第2の電極の平均メッキ粒径よりも小さくするとともに、端子電極32の密度を第2の電極の密度よりも小さくしたものである。
【0039】
次に、メッキレジスト35と電解銅メッキのための給電導体(図示せず)を除去し、
図1に示す弾性波装置21が得られる。
【0040】
以上のように本発明の弾性波装置21は、電解銅メッキの電流密度を設定することにより、端子電極に接続する側の第2の電極の径を、第1の電極に接続する側の第2の電極の径よりも小さくしたものであり、これにより、外部から及ぼされる応力の影響を低減し、小型で長期信頼性を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る弾性波装置は、主として移動体通信機器に用いられる高周波フィルタや分波器、共用器等において有用となる。
【符号の説明】
【0042】
21 弾性波装置
22 圧電基板
23 櫛形電極
24 配線
26 空間
28 素子カバー
29 第1の電極
30 封止樹脂
31 第2の電極
32 端子電極