特許第6336260号(P6336260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336260
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】U字管の製造方法および管の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 53/08 20060101AFI20180528BHJP
   F28D 1/047 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   B21D53/08 J
   !F28D1/047 B
【請求項の数】17
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-211157(P2013-211157)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2014-76487(P2014-76487A)
(43)【公開日】2014年5月1日
【審査請求日】2016年9月23日
(31)【優先権主張番号】13/647,458
(32)【優先日】2012年10月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504405659
【氏名又は名称】ブレイズウェイ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド ダブリュ. スカジプチャク
(72)【発明者】
【氏名】ヴィカス ソマニ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ジェイ. クリステン
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−033935(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125190(WO,A1)
【文献】 特開2010−065133(JP,A)
【文献】 特開平06−328174(JP,A)
【文献】 実開平05−084439(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0055014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 53/08
F28D 1/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル形状の管からある長さの管を切断するステップと、
前記ある長さ管から1対の脚部を含むU字管を形成するステップと、
噴霧化された定量の潤滑剤を前記U字管に付与するステップと
前記U字管の前記脚部を拡管する前に、前記潤滑剤から溶媒を蒸発させるステップと
を含むU字管の製造方法。
【請求項2】
前記噴霧化された定量の潤滑剤を、少なくとも1つの噴射ノズルにより前記U字管内に噴射する、請求項1に記載されたU字管の製造方法。
【請求項3】
複数のU字管に連続的に潤滑剤を付与するように前記噴射ノズルが自動化されている、請求項2に記載されたU字管の製造方法。
【請求項4】
前記噴射ノズルが固定されている、請求項2に記載されたU字管の製造方法。
【請求項5】
前記噴射ノズルで潤滑剤を前記U字管に付与するステップが、運搬デバイス上に固定された記噴射ノズルに対して前記U字管が移動するときに行われる、請求項4に記載されたU字管の製造方法。
【請求項6】
前記噴霧化された定量の潤滑剤が潤滑剤液滴のミストである、請求項1に記載されたU字管の製造方法。
【請求項7】
前記U字管が固定され、前記自動化された噴射ノズルを前記固定されたU字管に対して移動させる、請求項3に記載されたU字管の製造方法。
【請求項8】
前記潤滑剤を圧縮空気を用いて噴霧する、請求項1に記載されたU字管の製造方法。
【請求項9】
前記定量の潤滑剤が、管453.6g当たり1.361gの潤滑剤である、請求項1に記載されたU字管の製造方法。
【請求項10】
コイル状形の管を切断して複数本の管を作製するステップと、
潤滑剤を噴射ノズルにより噴霧化し、噴霧化された潤滑剤を各管の少なくとも1つの開口端内に噴射するステップと
前記複数本の管のそれぞれを拡管する前に、前記潤滑剤から溶媒を蒸発させるステップと
を含む管の製造方法。
【請求項11】
前記噴射ノズルが固定されており、前記噴霧化された潤滑剤を噴射するステップの間、前記複数本の管が前記噴射ノズルに対して移動される、請求項10に記載された管の製造方法。
【請求項12】
前記複数本の管のそれぞれを保管ユニットに保管するステップをさらに含み、前記噴射ノズルが、前記噴霧化された潤滑剤を噴射するために前記保管ユニットに対して移動するように自動化されている、請求項10に記載された管の製造方法。
【請求項13】
前記潤滑剤を噴霧化するステップが、前記潤滑剤を液滴のミストに分散する、請求項10に記載された管の製造方法。
【請求項14】
前記潤滑剤が前記管内に所定量で噴射される、請求項10に記載された管の製造方法。
【請求項15】
前記管内に噴射される前記潤滑剤が、前記管の内部に完全に潤滑剤を付与するのに十分な力で噴射される、請求項10に記載された管の製造方法。
【請求項16】
前記潤滑剤を圧縮空気を用いて噴霧する、請求項10に記載された管の製造方法。
【請求項17】
前記噴霧する潤滑剤の量が、管453.6g当たり1.361gである、請求項10に記載された管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、U字管の脚部に潤滑剤を付与する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この項では、必ずしも先行技術ではないが、本発明の背景に関する情報を記載する。
【0003】
HVACシステムでは、熱交換用流体を流すためにアルミニウム管又は銅管が用いられる。HVACシステムの蒸発器又はコンデンサでは、管を蛇行形態で前後に曲がりくねらせて配置することがある。蛇行形態の管の湾曲部にはU字部分が存在するが、このU字部分は通常に個別に製造されてから、管の短部領域にろう付けされる。U字管は、フィンに接触するために適切に拡管される。また、U字部分を短部領域の管に結合することを確実にするために、U字部分の端部は拡管装置を使用して拡管される。
【0004】
U字管を拡管するために、拡管工程を行うには潤滑剤が必要とされる。この潤滑剤を供給するために、U字部分形成用のコイル形状の管に潤滑剤付与することが一般に行われている。これに関して、元のコイル形状の管全体に潤滑剤を充填し、次にこのコイルから潤滑剤の大部分又は過剰部分を圧縮ガスにより追い出すことが一般的である。次に、潤滑剤付与した元のコイルから、U字部分を、適切な長さに切断する。或いは、大量の潤滑剤をU字部分内に導入し、次に圧縮ガスを使用して管から潤滑剤を取り除くことが従来行われている。
【0005】
しかし、これらの従来方法は、非常に煩雑であり費用がかかる。この点に関して、これら従来方法を使用すると、拡管に必要とされるよりも多くの潤滑剤が使用される。拡管に必要とされるよりも多くの潤滑剤を使用することにより、U字部分の作製に関する費用が不必要に増大する。さらに、U字部分の拡管後に、脱脂工程において余分な潤滑剤を取り除く必要がある場合があり、これによっても作製費用が増大する。
【0006】
その上、コイルを潤滑剤で完全に充填する工程は、時間がかかるものである。充填及び追い出しに時間を要するために、潤滑ステーションの作製能力は極めて低い。このような作製能力の低さのために、複数の潤滑ステーションが必要になり、これにより、U字部分の作製に関連する費用がさらにかさむものとなる。
【0007】
最後に、充填及び追い出し工程は、通常、1つの潤滑剤にしか行えない。具体的には、異なる潤滑剤を共用できない。充填及び追い出し工程は、通常、大量の潤滑剤を充填した容器を用い、この大量の潤滑剤を、拡管すべき管に容器からポンプ注入する。異なる潤滑剤を共用できないことにより、異なる潤滑剤を使用する場合には、汚染が生じないように容器及び潤滑機械を完全に洗浄しなければならない。このことは非常に時間がかかり望ましくない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本項では、本発明の一般的な概要を説明するが、本開示の完全な範囲又は本開示の特徴のすべての包括的な開示ではない。
【0009】
本発明によれば、U字管を製造する方法及びその装置が提供される。この方法は、コイル形状の管を切断して複数本の管を作製するステップと、各管を曲げて複数のU字管を形成するステップとを含む。次に潤滑剤を噴射ノズルにより噴霧化させ、各U字管の少なくとも1つの開口端内に噴射する。U字管に潤滑剤付与した後、各U字管の脚部が拡管される。
【0010】
本発明がさらに適用される分野は、本明細書の記載から明らかになるであろう。発明の概要の記載及び実施例は、例示の目的のみを意図し、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0011】
本明細書に添付する図面は、選択した実施例の説明のためのものにすぎず、実施のすべてではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】噴霧化された潤滑剤を複数の管のそれぞれに噴射する噴射ノズルの概略図。
図2】本発明の原理による噴射装置に使用する噴射ノズルの概略図。
図3】本発明の原理による一方法の流れ図。
図4】本発明の原理によるU字管の製造工程の概略図。
図5】噴射ノズルが第1の位置にある、本発明の原理による噴射装置の斜視図。
図6】噴射ノズルが第2の位置にある、本発明の原理による噴射装置の別の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
同じ符号は、図面の全体を通して同じ部品を示している。
【0014】
次に、添付の図面を参照して、例示的実施例をより完全に説明する。
【0015】
本発明により、拡管すべきU字管に潤滑剤を付与する方法及びその装置が提供される。特に、本発明は、噴霧化された定量の潤滑剤を自動式にU字管に供給する方法及びその装置を対象とする。定量の潤滑剤は、厳密に制御できるので、拡管前に必要とする潤滑剤の量を実質的に減少させ、これにより被覆する(潤滑剤付与する)U字管の作製に関する費用を実質的に低減させる。さらに、潤滑剤の量は実質的に減少するが、この潤滑剤の量の減少により、拡管工程は影響を受けない。本発明は、主にU字管の製造を対象とするが、それに限定すべきではないことを理解されたい。すなわち、本発明は、拡管を必要とするあらゆる種類の管の製造に適用される。したがって、本発明は、U字管同様に直管の作製にも適用可能である。
【0016】
図1及び図2は、噴霧化された定量の潤滑剤をU字管内に噴射する例示的な実施例を示す。図1では、噴射ノズル10が、一列の複数のU字管12に沿って移動するように(例えば矢印の方向に)動作可能であり、噴霧化された定量の潤滑剤14をU字管12の端部16内に噴射する。或いは、U字管12を例えば搬送装置(図4)に設置し、固定噴射ノズル10のそばを通過させることができる。U字管12が固定噴射ノズル10を通るときに、噴霧化された定量の潤滑剤14をU字管12の端部16内に噴射することができる。
【0017】
図2に示すように、噴射ノズル10は潤滑剤源18と連通しており、この潤滑剤源18は入口管路20を通って噴射ノズル10に潤滑剤14を供給する。さらに、噴射ノズル10は圧縮ガス源22と連通しており、この圧縮ガス源22は管路24を通って噴射ノズル10に加圧ガスを供給する。圧縮ガス源22は、潤滑剤14を付与することが必要なときに噴射ノズル10内の弁(図示せず)を作動させるために管路24を通して圧力をかけたガスを供給する。噴射ノズル10の弁(図示せず)は、必ずしも圧縮ガス源22によって作動されないことを理解されたい。噴射ノズル10が、本開示の範囲から逸脱することなく機械的に作動される弁又は電気的に作動される弁を含むことができることを当業者は容易に理解できるであろう。
【0018】
潤滑剤14を噴霧化させるために、噴射ノズル10は、第2の加圧ガスを管路28を通して噴射ノズル10に供給する噴霧化用圧縮ガス源26にも連通している。噴霧化用圧縮ガス源26は、潤滑剤14をU字管12の内側面を被覆する液滴の超微細な高速ミストに変換させるように作動する。
【0019】
U字管12を製造する従来方法では、単一のコイル形状の管を切断し、管を複数のU字管12に変形させる機器を使用して成形される。単一のコイル形状の管を切断し成形する前に、従来方法では、単一のコイル形状の管の内側面に潤滑剤を付与するために、潤滑剤14が、容器から単一のコイル形状の管の全長にポンプ注入する潤滑工程を用いる。単一のコイル形状の管にこのように潤滑剤付与した後、従来方法では、潤滑剤を単一のコイル形状の管から追い出す工程も必要とされる。単一のコイル形状の管は数百フィート又は数千フィートの長さとなり得るので、単一のコイル形状の管に潤滑剤を付与する工程及び追い出す工程が非常に時間のかかる場合があることは当業者であれば認めるであろう。さらに、この工程で使用する高価な潤滑剤の量が過剰である場合がある。
【0020】
本発明方法では、潤滑剤を単一のコイル形状の管にポンプ注入し、次に管内の潤滑剤を追い出すという、この時間のかかる工程がなくなる。したがって、本発明方法では、U字管12の製造に関する時間及び費用が低減される。この点について、U字管12は、拡管工程用に管に潤滑剤を付与前に単一のコイル状の管から製造される。
【0021】
次に、図3及び図4を参照して、本発明方法を説明する。第1のステップ(S1)において、単一のコイル形状の管30を切断し変形させることによって、単一のコイル状の管30を複数のU字管12に加工する。この点について、製造施設としては、第1のステーション32には、所望長さのU字管12に相当する適切な長さで単一のコイル状の管30を切断する切断デバイス34を含むシステムのような組立てラインを用いることができる。第2のステーション34では、切断された管36をU字管12に形成するために、所望の形状に成形又は曲げることができる。U字管12を形成した後、固定又は移動可能な噴射ノズル10を配置できる第3のステーション40に、U字管12をコンベヤ装置38により送ることができる。
【0022】
各U字管12は噴射ノズル10を通過するので、定量の噴霧化された潤滑剤14がU字管12の端部16内に噴射される(S2)。噴射ノズル10を使用してU字管12を十分に潤滑剤付与した後、当技術分野において知られる方法により、U字管12は拡管工程により拡管される(S3)。噴射ノズル10が、U字管12の端部16の位置にないときに不必要に定量の潤滑剤14を噴射しないことを確実にするために、光センサなどのセンサ装置(図示せず)又は何らかの他の種類のデバイスを噴射ノズル10に隣接して設置できる。
【0023】
さらに、コンベヤ装置38の代わりに、U字管12を、カート又は保管ユニット上に手動又は自動で置くことができる。次に、このカート又は保管ユニットは、自動化された噴射ノズル10が配置された、製造施設内の場所に搬送できることを理解されたい。この場所では、噴射ノズル10は、本開示の範囲から逸脱することなく、定量の潤滑剤14を複数の固定U字管12内に噴射するために規定された経路に沿って作動される。
【0024】
好ましくは、噴射ノズル10は、定量の潤滑剤14を噴射する間、管12の開口端16から離間されていることに留意されたい。これは、管12を損傷する虞のあるモップ又はブラシなどの物理的器材が管12の内に挿入されず、モップ又はブラシに存在し得る破片が管12に残される可能性もないという点で本発明の有益な側面である。さらに、定量の潤滑剤を噴射する間、管12から噴射ノズル10を離間させることにより、噴射ノズル10の自動化が容易に実現される。特に、潤滑剤14を噴射するために、噴射ノズル10を開口端16の内外に移動させるように動作可能なモータ又は制御装置が必要ない。むしろ、噴射ノズル10は、図1及び図2のx方向、並びに図1及び図2のz方向に移動可能である必要があるにすぎない。ただし、噴射ノズル10又は管12は、それぞれ、本開示の範囲から逸脱することなく、x方向、y方向又はz方向に移動してもよいことを理解されたい。
【0025】
潤滑剤14を噴射する間、噴射ノズル10は管12から離間されるが、噴射ノズル10は、最大91.44cm(36インチ)の長さを有する管12を被覆するのに十分な力で噴霧化された潤滑剤を吐出する。そのような力で噴霧化された潤滑剤14を吐出することによって、管12は潤滑剤14により適切に被覆されることが確実になる。さらに、管12への潤滑剤14の噴射後に管12が潤滑剤14により適切に被覆されるとしても、噴射ノズル10によって噴射される潤滑剤14の量は、従来の充填及び追い出し方法で使用される量よりも大幅に少ない。
【0026】
上記方法によれば、大幅に減少した量の潤滑剤14がU字管12を潤滑するために使用される。この点について、201.1kg(450ポンド)のコイルの9.525mm(3/8インチ)管を適切に潤滑するために、従来の充填及び追い出し方法では、管453.6g(1ポンド)当たり約12.25g(約0.027ポンド)の潤滑剤が使用される。対照的に、定量の噴霧化された潤滑剤14を付与する噴射ノズル10を用いる本発明方法では、管453.6g(1ポンド)当たり1.361g(0.003ポンド)の潤滑剤を使用するにすぎない。本発明方法では、従来の充填及び追い出し方法と比べて使用される潤滑剤がかなり少ないので、U字管12を作製する費用は大幅に減少する。
【0027】
さらに、潤滑剤14を噴霧化することによって使用される潤滑剤がより少なくなり、潤滑剤14の溶媒の蒸発がU字管12内でより容易になることを理解されたい。具体的には、潤滑剤14は、一般的にナフサ及び/又はアセトンなどの溶媒を含むろう質の油性潤滑剤である。過剰な溶媒がU字管12の拡管中にU字管12に存在すると、拡管装置(図示せず)とU字管12との間の抵抗を増大させると考えられる。U字管12の拡管は、U字管12が、例えば冷蔵システム又はヒートポンプシステム用の熱交換器(例えばコンデンサ又は蒸発器)に使用されるときに通常必要とされる。U字管12がそのような熱交換器で使用される場合、管12の拡管により、管12の外側面と熱交換器のフィン(図示せず)との間に十分な熱交換接触をもたらすことができる。いずれにしても、抵抗の増大が生じると、U字管12の拡管に要求される拡管力が増大する。このことは、拡管力が増大すると、U字管12にひび又は亀裂が入る危険が増大し、拡管装置を損傷する危険も同様に増大するという観点からも望ましくない。
【0028】
従来の充填および追い出し方法では、過剰な潤滑剤14、したがって過剰な溶媒が、U字管12の拡管前にU字管12内に留まる。U字管12内に留まり得る過剰な溶媒のために、従来の充填および追い出し方法の使用により、収縮及び拡張のばらつきが過度になる危険性が大きくなる。すなわち、潤滑剤14の用量を計量供給する(すなわち、厳密に制御する)ことにより、製造工程中に作製された管12同士の収縮及び拡張のばらつきも制御できる(すなわち、より厳密な製造公差を得ることができる)。また、U字管12からの過剰な潤滑剤のしずくにより、清潔さ及び安全性の問題を引き起こされる。最後に、ある場合には、過剰な潤滑剤のためにU字管12の拡管中にU字管12に存在する過剰な溶媒の上記欠点を解消するために多くの蒸発作業が必要になる。
【0029】
対照的に、本発明方法によれば、潤滑剤14は、噴霧化液滴である複数の超微細なミストに分散される。潤滑剤14の液滴が非常に微細であるので、潤滑剤14のあらゆる溶媒の蒸発率が上昇する。上記したように、U字管12に存在する溶媒が減ることにより、拡管工程での抵抗増加の危険が減少し、結果として、U字管12の亀裂又は破損の発生を低減することになる。スクラップの発生がより少なくなるので、費用の節約が大きくなる。
【0030】
さらに、本発明方法によるU字管12の拡管にはより小さい拡管力しか使用されないか又は必要とされないので、拡管工程によるU字管12の収縮量はより小さくなる。具体的には、拡管力は本発明により低減できるが、使用される拡管力は、依然として36.29kg(80ポンド)〜136.1kg(300ポンド)の力を用いることを理解されたい。拡管工程ではこのような力が加えられるので、U字管12が過度に収縮する(すなわち長さが短縮し得る)ほど圧縮されることはまれではない。しかし、本発明方法の使用により受ける収縮量は、従来の充填および追い出し方法の収縮量以下である。U字管12が受ける収縮が少ないので、U字管12を形成するための管の使用が少なくなり、その費用の節約は長期間の間には大きなものとなる。
【0031】
次に、図5及び図6を参照して、潤滑剤14をU字管12に付与するための例示的な自動噴射装置42を説明する。噴射装置42は、U字管12がカート又は保管ユニット上に手動又は自動で載せる状況で使用することができ、このカート又は保管ユニットは、次に自動噴射装置42が配置されている製造施設内の場所に搬送することができる。
【0032】
噴射装置42は、1対の枠部材44を含み、少なくとも1つの枠部材44がレール46に沿って移動可能になっている。少なくとも1つの枠部材44がレール46に沿って移動可能であるので、異なる長さの管12を枠部材44に形成された支持スロット48に支持することができる。枠部材44は、鉄鋼、アルミニウムなどの材料、又は十分に硬質で管12を支持することのできる他の金属材料により形成することができる。金属材料が好ましいが、本発明の範囲から逸脱することなく硬質プラスチック材料を使用して枠部材44を形成できることを理解されたい。さらに、枠部材44は管12を支持するための7つのスロット48を有するように図示されているが、図5及び図6は例示的な図にすぎないことを理解されたい。すなわち、枠部材44はより大きくても、図示されるよりも多くの管12を支持するように構成してもよい。
【0033】
潤滑剤14を管12の開口端16に供給するために、噴射装置42は噴射ノズル10を含む。噴射ノズル10は、軌道50上を軌道50に沿って移動できる。噴射器10を軌道50に沿って移動させるために、軌道50は、軌道50を回転させる電気モータ52を備えることができる。この点に関して、軌道50はねじ切りされて、噴射ノズル10を取付けブロック54に取り付けることができる。取付けブロック54の穴56は、軌道50が正の方向又は負の方向のいずれかに回転するときに、噴射ノズル10が軌道50に沿って並進できるように、軌道50のねじ切り部と相補的なねじ切り部を有してもよい。しかし、噴射ノズル10は、当業者に知られているあらゆる方式で軌道50に沿って並進できることを理解されたい。例えば、噴射ノズル10は、本発明の範囲から逸脱することなく軌道50に沿って移動するようにベルト駆動されてもよい。
【0034】
モータ52は、軌道50の回転、したがって、軌道50に沿った噴射ノズル10の移動を制御するように動作できる制御装置(図示せず)を収容することができる。この点に関して、制御装置は、枠部材44に形成された支持スロット48の数及び支持スロット48同士間の距離を考慮する制御論理に従うように動作可能である。支持スロット48の数及び支持スロット48同士間の距離を考慮することによって、制御装置は、定量の潤滑剤14を管12に付与する前に、噴射ノズル10が管12同士間の適切な距離を並進するようにモータ52を制御することができる。
【0035】
図5に示すように、U字管12の各開口端16は、噴射ノズル10に隣接する枠部材44に存在する。定量の潤滑剤14が各開口端16で必要とされるので、噴射ノズル10は、軌道50に沿って移動可能であることに加えて、軌道50に直交する方向にも移動可能である(すなわち、噴射ノズル10は図5のz方向に移動可能である)。噴射ノズル10を軌道50に直交する方向に移動させるために、取付けブロック54は、噴射ノズル10を軌道50に直交する方向に作動させるように動作可能なモータ(図示せず)を収容することができる。具体的には、噴射ノズル10を軌道50に対するz方向に上下するために、噴射ノズル10を、取付けブロック54に収容されたモータによって作動される支持板58に固定することができる。モータ52と同様に、取付けブロック54に収容されたモータを、支持スロット48の数及び支持スロット48同士間の距離を考慮する制御論理を実行するように動作可能な制御装置(図示せず)によって制御することができる。さらに、取付けブロック54に収容されたモータ用制御装置は、支持スロット48の長さを考慮することができ、これにより、噴射ノズル10を開口端16に適切に位置合わせするために、モータにより、支持スロット48の上側端部60と下側端部62との間の適切な距離で噴射ノズル10が昇降することが可能になる。
【0036】
動作中、支持スロット48の上側端部60に存在する管12の各開口端16に定量の潤滑剤14を供給するために、噴射ノズル10を軌道50に沿って第1の方向に作動させることができる。支持スロット48の上側端部60に存在する管12の各開口端16に定量の潤滑剤14を供給した後、噴射ノズル10を下げ、支持スロット48の下側端部62に存在する管12の各開口端16に定量の潤滑剤14を供給するために、第1の方向とは反対の第2の方向に作動させることができる。このように前後して潤滑剤14を供給することにより、噴射装置42の生産性は、従来の充填及び追い出し方法と比較して大幅に増加する。定量の潤滑剤14を管12の各開口端16に供給した後、潤滑剤付与された管12は噴射装置42から取り出され、潤滑剤付与されていない管12と交換される。次に、この工程は繰り返すことができる。
【0037】
潤滑剤14を管12の各開口端16に供給するために、噴射ノズル10は第1のホース66を介して潤滑剤容器64と連通する。さらに、噴射ノズル10は、噴射ノズル10の弁(図示せず)を作動させるための第2のホース24を介して圧縮ガス源22、及び潤滑剤14を超微細な液滴に噴霧化する第3のホース28を介して噴霧化用圧縮ガス源26のそれぞれと連通する。定量の潤滑剤を噴霧化するための圧縮ガス源26を使用する代わりに、噴射ノズル10が、潤滑剤14を付与するときに定量の潤滑剤14を噴霧化する電圧源を備えてもよい。
【0038】
上記のように、噴射ノズル10は、定量の潤滑剤を噴射する間、好ましくは、管12の開口端16から離間されることを理解されたい。定量の潤滑剤14を噴射する間、噴射ノズル10を管12から離間することにより、噴射装置42の自動化がより容易に実現される。具体的には、潤滑剤14を噴射するための、噴射ノズル10を開口端16の内外に移動させるように動作可能なモータ又は制御装置を必要としない。そうではなく、噴射ノズル10は、軌道50に沿って(すなわち、図5及び図6のx方向)、並びに軌道50に直交する方向(すなわち、図5及び図6のz方向)に移動できるにすぎない。
【0039】
潤滑剤14を噴射する間、噴射ノズル10は管12から離間されるが、噴射ノズル10は、管12を完全に被覆するのに十分な力で噴霧化した潤滑剤14を吐出する。潤滑剤14を管12内に噴射した後、管12は完全に潤滑剤14により被覆されるが、噴射ノズル10によって噴射される潤滑剤14の量は、依然として有効な拡管力の観点及び適切な収縮率を達成しながら、従来の充填及び追い出し方法で使用される量よりも大幅に少ない。
【0040】
上記実施例の説明は、例示及び説明の目的で提供されるものである。上記実施例の説明は、網羅的であること又は本発明を限定することを意図しない。特定の実施例の個別の部材又は構成は、一般的に、その特定の実施例に限定するものではなく、特に示され又は記載されない場合であっても、適用可能な場合には、交換可能であり、選択された実施例に用いることができる。また、特定の実施例の個別の部材又は構成は、多くの方法に変更することもできる。そのような変形例は本発明からの逸脱とはみなされず、すべてのそのような変更例が本発明の範囲に含まれることを意図する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6