特許第6336263号(P6336263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6336263原料液の製造条件を決定する方法及び原料液、発泡性飲料並びにこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336263
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】原料液の製造条件を決定する方法及び原料液、発泡性飲料並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12C 7/00 20060101AFI20180528BHJP
   C12G 3/02 20060101ALI20180528BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   C12C9/00
   C12G3/02
   A23L2/00 S
【請求項の数】14
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-230994(P2013-230994)
(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公開番号】特開2015-89362(P2015-89362A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯牟礼 隆
(72)【発明者】
【氏名】白井 昌典
(72)【発明者】
【氏名】村岡 康弘
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄大
(72)【発明者】
【氏名】時園 佳朗
【審査官】 北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−000050(JP,A)
【文献】 特開2013−150577(JP,A)
【文献】 特開2013−135662(JP,A)
【文献】 特開2011−229538(JP,A)
【文献】 特開2010−051276(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/024563(WO,A1)
【文献】 特表平08−502641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12C 1/00−12/04
C12G 3/00−3/14
A23L 2/00−2/84
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される、植物原料を使用した原料液の製造条件を決定する方法であって、
前記原料液の前記製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること
を含み、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、生きた酵母を含む酵母懸濁液から前記酵母を除去して調製された上清を添加する処理である
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される、植物原料を使用した原料液の製造条件を決定する方法であって、
前記原料液の前記製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること
を含み、
前記発泡性飲料の製造方法は、前記原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで前記発酵を行う方法であり、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、処理後の前記候補原料液のエキス濃度が前記所定値の1.1倍以上となるよう、生きた酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であり、
前記発酵は、前記発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて貯酒を行う場合には、前記貯酒を含まない
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される、植物原料を使用した原料液の製造条件を決定する方法であって、
前記原料液の前記製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること
を含み、
前記発泡性飲料の製造方法は、前記原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで前記発酵を行う方法であり、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、処理後の前記候補原料液のエキス濃度が前記所定値超となるよう、生きた酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であり、
前記発酵は、前記発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて貯酒を行う場合には、前記貯酒を含まない
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される、植物原料を使用した原料液の製造条件を決定する方法であって、
前記原料液の前記製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること
を含み、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、生きた酵母を前記発酵と同一の酵母濃度で前記発酵の時間の0.001%〜30%の時間接触させる処理であり、
前記発酵の前記時間は、前記発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて貯酒を行う場合には、前記貯酒の時間を含まない
ことを特徴とする方法。
【請求項5】
発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液を、植物原料を使用して製造する方法であって、
前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、
決定された前記製造条件で前記原料液を製造すること
を含み、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、生きた酵母を含む酵母懸濁液から前記酵母を除去して調製された上清を添加する処理である
ことを特徴とする原料液の製造方法。
【請求項6】
発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液を、植物原料を使用して製造する方法であって、
前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、
決定された前記製造条件で前記原料液を製造すること
を含み、
前記発泡性飲料の製造方法は、前記原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで前記発酵を行う方法であり、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、処理後の前記候補原料液のエキス濃度が前記所定値の1.1倍以上となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であり、
前記発酵は、前記発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて貯酒を行う場合には、前記貯酒を含まない
ことを特徴とする原料液の製造方法。
【請求項7】
発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液を、植物原料を使用して製造する方法であって、
前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、
決定された前記製造条件で前記原料液を製造すること
を含み、
前記発泡性飲料の製造方法は、前記原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで前記発酵を行う方法であり、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、処理後の前記候補原料液のエキス濃度が前記所定値超となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であり、
前記発酵は、前記発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて貯酒を行う場合には、前記貯酒を含まない
ことを特徴とする原料液の製造方法。
【請求項8】
発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液を、植物原料を使用して製造する方法であって、
前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、
決定された前記製造条件で前記原料液を製造すること
を含み、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、酵母を前記発酵と同一の酵母濃度で前記発酵の時間の0.001%〜30%の時間接触させる処理であり、
前記発酵の前記時間は、前記発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて貯酒を行う場合には、前記貯酒の時間を含まない
ことを特徴とする原料液の製造方法。
【請求項9】
前記植物原料は、穀類、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上である
ことを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の原料液の製造方法。
【請求項10】
植物原料を使用した原料液の発酵を行う発泡性飲料の製造方法であって、
前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、
決定された前記製造条件で製造された前記原料液の前記発酵を行うこと
を含み、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、生きた酵母を含む酵母懸濁液から前記酵母を除去して調製された上清を添加する処理である
ことを特徴とする発泡性飲料の製造方法。
【請求項11】
植物原料を使用した原料液の発酵を行う発泡性飲料の製造方法であって、
前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、
決定された前記製造条件で製造された前記原料液の前記発酵を行うこと
を含み、
前記発泡性飲料の製造方法は、前記原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで前記発酵を行う方法であり、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、処理後の前記候補原料液のエキス濃度が前記所定値の1.1倍以上となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であり、
前記発酵は、前記発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて貯酒を行う場合には、前記貯酒を含まない
ことを特徴とする発泡性飲料の製造方法。
【請求項12】
植物原料を使用した原料液の発酵を行う発泡性飲料の製造方法であって、
前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、
決定された前記製造条件で製造された前記原料液の前記発酵を行うこと
を含み、
前記発泡性飲料の製造方法は、前記原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで前記発酵を行う方法であり、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、処理後の前記候補原料液のエキス濃度が前記所定値超となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であり、
前記発酵は、前記発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて貯酒を行う場合には、前記貯酒を含まない
ことを特徴とする発泡性飲料の製造方法。
【請求項13】
植物原料を使用した原料液の発酵を行う発泡性飲料の製造方法であって、
前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、
前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、
前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、
前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、
前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、
決定された前記製造条件で製造された前記原料液の前記発酵を行うこと
を含み、
前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、酵母を前記発酵と同一の酵母濃度で前記発酵の時間の0.001%〜30%の時間接触させる処理であり、
前記発酵の前記時間は、前記発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて貯酒を行う場合には、前記貯酒の時間を含まない
ことを特徴とする発泡性飲料の製造方法。
【請求項14】
前記植物原料は、穀類、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上である
ことを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の発泡性飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料液の製造条件を決定する方法及び原料液、発泡性飲料並びにこれらの製造方法に関し、特に、発酵を行う発泡性飲料の製造に使用される原料液の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
発酵を行う発泡性飲料の製造に使用される原料液の製造条件が当該発泡性飲料の泡特性にどのような影響を及ぼすかを評価することがある。この場合、従来は、発酵を行うことなく原料液の泡特性を評価する方法、又は実際に原料液の発酵を行って得られた発泡性飲料の泡特性を評価する方法が用いられていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−135662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発酵を行うことなく原料液の泡特性を評価する方法においては、得られる評価結果は、必ずしも最終製品である発泡性飲料の泡特性と整合するものではなかった。また、実際に発酵を行って得られた発泡性飲料の泡特性を評価する方法は、相当の時間、コスト及び労力を要するものであった。
【0005】
したがって、従来、原料液の製造条件が、当該原料液の発酵を行って最終的に製造される発泡性飲料の泡特性に与える影響を適切に且つ簡便に決定することは難しかった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであり、原料液の製造条件を効果的に決定する方法及び原料液、発泡性飲料並びにこれらの製造方法を提供することをその目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液の製造条件を決定する方法であって、前記原料液の前記製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定することを含むことを特徴とする。本発明によれば、原料液の製造条件を効果的に決定する方法を提供することができる。
【0008】
また、前記方法において、前記発泡性飲料の製造方法は、前記原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで前記発酵を行う方法であり、前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、処理後の前記候補原料液のエキス濃度が前記所定値超となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であることとしてもよい。
【0009】
また、前記方法において、前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、酵母懸濁液の上清を添加する処理であることとしてもよい。また、前記方法において、前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、酵母を前記発酵の時間より短い時間接触させる処理であることとしてもよい。
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液を製造する方法であって、前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、決定された前記製造条件で前記原料液を製造することを含むことを特徴とする。本発明によれば、所望の泡特性を有する発泡性飲料を製造するための原料液を効果的に製造する方法を提供することができる。
【0011】
また、前記方法において、前記発泡性飲料の製造方法は、前記原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで前記発酵を行う方法であり、前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、処理後の前記候補原料液のエキス濃度が前記所定値超となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であることとしてもよい。
【0012】
また、前記方法において、前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、酵母懸濁液の上清を添加する処理であることとしてもよい。また、前記方法において、前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、酵母を前記発酵の時間より短い時間接触させる処理であることとしてもよい。
【0013】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る原料液は、前記いずれかの方法により製造されたことを特徴とする。本発明によれば、所望の泡特性を有する発泡性飲料を製造するための原料液を提供することができる。
【0014】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、原料液の発酵を行う発泡性飲料の製造方法であって、前記原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、前記1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、前記1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、前記酵母処理及び前記ガス付け処理が施された前記1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、前記泡特性の評価結果に基づいて、前記1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、前記原料液の前記製造条件として決定すること、決定された前記製造条件で製造された前記原料液の前記発酵を行うことを含むことを特徴とする。本発明によれば、所望の泡特性を有する発泡性飲料を効果的に製造する方法を提供することができる。
【0015】
また、前記方法は、前記原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで前記発酵を行う方法であり、前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、処理後の前記候補原料液のエキス濃度が前記所定値超となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であることとしてもよい。
【0016】
また、前記方法において、前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、酵母懸濁液の上清を添加する処理であることとしてもよい。また、前記方法において、前記酵母処理は、前記1つ以上の候補原料液に、酵母を前記発酵の時間より短い時間接触させる処理であることとしてもよい。
【0017】
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る発泡性飲料は、前記いずれかの方法により製造されたことを特徴とする。本発明によれば、所望の泡特性を有する発泡性飲料を提供することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、原料液の製造条件を効果的に決定する方法及び原料液、発泡性飲料並びにこれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る実施例1において候補原料液の泡特性と発泡性飲料の泡特性との相関関係を評価した結果の一例を示す説明図である。
図2】本発明の一実施形態に係る実施例1において候補原料液の泡特性と発泡性飲料の泡特性との相関関係を評価した結果の他の例を示す説明図である。
図3】本発明の一実施形態に係る実施例1において候補原料液の泡特性と発泡性飲料の泡特性との相関関係を評価した結果のさらに他の例を示す説明図である。
図4】本発明の一実施形態に係る実施例1において候補原料液の泡特性と発泡性飲料の泡特性との相関関係を評価した結果のさらに他の例を示す説明図である。
図5】本発明の一実施形態に係る実施例1において候補原料液の泡特性と発泡性飲料の泡特性との相関関係を評価した結果のさらに他の例を示す説明図である。
図6】本発明の一実施形態に係る実施例2において候補原料液の加熱条件と泡特性との関係を評価した結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は本実施形態に限られるものではない。
【0021】
本実施形態に係る方法(以下、「本方法」という。)は、例えば、発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液の製造条件を決定する方法であって、当該原料液の当該製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、当該1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、当該1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、当該酵母処理及び当該ガス付け処理が施された当該1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、当該泡特性の評価結果に基づいて、当該1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、当該原料液の当該製造条件として決定することを含む。
【0022】
また、本方法は、例えば、発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液を製造する方法であって、当該原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、当該1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、当該1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、当該酵母処理及び当該ガス付け処理が施された当該1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、当該泡特性の評価結果に基づいて、当該1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、当該原料液の当該製造条件として決定すること、決定された当該製造条件で当該原料液を製造することを含む。
【0023】
また、本方法は、例えば、原料液の発酵を行う発泡性飲料の製造方法であって、当該原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意すること、当該1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造すること、当該1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施すこと、当該酵母処理及び当該ガス付け処理が施された当該1つ以上の候補原料液の泡特性を評価すること、当該泡特性の評価結果に基づいて、当該1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、当該原料液の当該製造条件として決定すること、決定された当該製造条件で製造された当該原料液の当該発酵を行うことを含む。
【0024】
なお、本実施形態に係る発泡性飲料は、泡立ち特性及び泡持ち特性を含む泡特性を有する飲料である。すなわち、発泡性飲料は、例えば、炭酸ガスを含有する飲料であって、グラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡立ち特性と、その形成された泡が一定時間以上保たれる泡持ち特性とを有する飲料である。
【0025】
また、発泡性飲料は、発泡性アルコール飲料であることとしてもよい。発泡性アルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%以上(アルコール分1度以上)の発泡性飲料である。発泡性アルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%以上であれば特に限られないが、例えば、1〜20体積%であることとしてもよい。
【0026】
また、発泡性飲料は、例えば、発泡性ノンアルコール飲料であることとしてもよい。発泡性ノンアルコール飲料は、エタノールの含有量が1体積%未満の発泡性飲料である。発泡性ノンアルコール飲料のエタノール含有量は、1体積%未満であれば特に限られないが、例えば、0.5体積%未満であることとしてもよく、0.05体積%未満であることとしてもよく、0.005体積%未満であることとしてもよい。
【0027】
本方法に係る原料液は、発泡性飲料の製造方法において、発酵を行うために微生物(例えば、酵母)が添加される溶液である。このため、原料液は、微生物が資化可能な炭素源及び窒素源を含む。すなわち、原料液は、微生物が資化可能な炭素源及び窒素源を含む原料を使用して製造される。
【0028】
なお、本方法に係る発泡性飲料の製造方法において行われる発酵は、微生物による発酵であれば特に限られない。発酵に使用される微生物(原料液に添加される微生物)は、発酵に使用されるものであれば特に限られないが、例えば、酵母又は乳酸菌であることとしてもよく、酵母であることが好ましい。酵母は、アルコールを産生する酵母(アルコール産生酵母)であることとしてもよく、アルコールを産生しない酵母であることとしてもよい。アルコール産生酵母は、アルコール発酵に好ましく使用され、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、焼酎酵母及び清酒酵母からなる群より選択される1種以上であることとしてもよい。
【0029】
本方法は、原料液の製造条件の候補として1つ以上の候補条件を用意することを含む。すなわち、本方法においては、複数の候補条件を用意することとしてもよく、1つの候補条件を用意することとしてもよい。原料液の製造条件は、当該原料液を製造する過程で採用される条件であれば特に限られないが、例えば、原料に関する原料条件、当該原料液の加熱に関する加熱条件、当該原料液の酵素処理に関する酵素条件、当該原料液の煮沸に関する煮沸条件、当該原料液のろ過に関するろ過条件、及び当該原料液の殺菌に関する殺菌条件からなる群より選択される1つ以上であることとしてもよい。
【0030】
原料条件は、原料液の製造に使用される原料に関する条件であれば特に限られないが、例えば、原料の種類、使用量、混合タイミング及び混合方法からなる群より選択される1つ以上である。より具体的に、原料液が植物原料を使用して製造される場合、原料の種類には、例えば、当該植物原料の品種、発芽の有無及び程度、焙燥の有無及び程度、粉砕の有無及び程度が含まれる。
【0031】
植物原料は、発酵に使用される微生物が資化可能な炭素源及び/又は窒素源を含むものであれば特に限られないが、例えば、穀類、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上である。穀類は、例えば、麦類、米類及びとうもろこしからなる群より選択される1種以上である。麦類は、例えば、大麦及び/又は小麦である。また、植物原料は、ホップを含むこととしてもよい。
【0032】
加熱条件は、原料液の加熱に関する条件であれば特に限られないが、例えば、当該原料液を加熱する温度、当該原料液を加熱する時間、加熱による当該原料液の昇温時間、及び加熱による当該原料液の昇温タイミングからなる群より選択される1つ以上である。
【0033】
酵素条件は、原料液に酵素を作用させる条件であれば特に限られないが、例えば、酵素の種類、使用量、添加タイミング、添加方法、酵素処理の温度及び酵素処理の時間からなる群より選択される1つ以上である。
【0034】
煮沸条件は、原料液の煮沸を行う場合における当該煮沸の条件であれば特に限られないが、例えば、煮沸時の原料液の組成、煮沸時間及び煮沸タイミングからなる群より選択される1つ以上である。
【0035】
ろ過条件は、原料液をろ過する条件であれば特に限られないが、例えば、ろ過に使用されるろ材及び/又は助剤の種類、使用量、ろ過温度、ろ過時間、ろ過時の流量、ろ過方法及びろ過タイミングからなる群より選択される1つ以上である。
【0036】
1つ以上の候補条件の各々は、上述したような原料液の製造条件のうち1つ以上を含む。すなわち、1つ以上の候補条件の各々は、原料条件、酵素条件、煮沸条件、ろ過条件及び殺菌条件からなる群より選択される1つ以上の製造条件を含む。候補条件が複数の場合、当該複数の候補条件の各々は、他の候補条件とは異なる条件である。なお、候補条件が1つの場合とは、例えば、実際の原料液の製造条件として1つの条件(候補条件)が好ましいと推測される場合である。
【0037】
本方法は、上述のようにして用意された1つ以上の候補条件で1つ以上の候補原料液を製造することを含む。すなわち、候補条件が複数の場合、当該複数の候補条件で複数の候補原料液を製造する。この場合、複数の候補原料液の各々は、他の候補原料液の候補条件とは異なる候補条件で製造される。また、候補条件が1つの場合、当該1つの候補条件で1つの候補原料液を製造する。
【0038】
そして、本方法においては、上述のようにして製造された1つ以上の候補原料液に酵母処理及びガス付け処理を施す。ここで、本方法において特徴的なことの一つは、本方法が、1つ以上の候補原料液に酵母処理を施すことを含むことである。本方法における酵母処理は、候補原料液に酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であり、発泡性飲料の製造方法において行われる発酵とは異質の処理である。
【0039】
すなわち、本発明の発明者は、原料液の製造条件が、当該原料液の発酵を行って最終的に製造される発泡性飲料の泡特性に与える影響を評価する技術的手段について鋭意検討を重ねた結果、意外にも、実際に発酵を行うことなく、原料液に、当該発酵とは異なる所定の酵母処理を施した上で、その泡特性を評価することにより、当該原料液の製造条件が当該発泡性飲料の泡特性に与える影響を適切に且つ簡便に決定することができることを独自に見出し、本発明を完成するに至った。
【0040】
酵母処理に使用される酵母は、当該酵母処理による効果が得られるものであれば特に限られないが、例えば、発泡性飲料の製造方法において発酵に使用される酵母と同種の酵母であることが好ましい。すなわち、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法において、原料液にビール酵母を添加してアルコール発酵を行う場合には、酵母処理においてもビール酵母を使用する。
【0041】
酵母処理に使用される酵母は、例えば、アルコール産生酵母であり、より具体的には、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、焼酎酵母及び清酒酵母からなる群より選択される1種以上である。また、酵母処理に使用される酵母は、例えば、アルコールを産生しない酵母であることとしてもよい。
【0042】
酵母処理で使用される酵母は、例えば、発酵に使用された後に回収された酵母(回収酵母)であることとしてもよい。具体的に、回収酵母は、例えば、飲料の製造におけるアルコール発酵に使用され、当該アルコール発酵の終了後に回収されたアルコール産生酵母である。
【0043】
酵母処理は、1つ以上の候補原料液に酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であれば特に限られないが、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、処理後の当該候補原料液のエキス濃度が当該所定値超となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であることとしてもよい。すなわち、この場合、酵母処理後の候補原料液のエキス濃度は、発泡性飲料の製造方法における発酵後の原料液のエキス濃度より高くなる。
【0044】
具体的に、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、処理後の当該候補原料液のエキス濃度が当該所定値の1.1倍以上となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であることとしてもよい。
【0045】
また、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が5.0%以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、処理後の当該候補原料液のエキス濃度が5.5%以上となるよう、酵母を直接的又は間接的に作用させる処理であることとしてもよい。
【0046】
また、酵母処理は、例えば、当該1つ以上の候補原料液に、酵母懸濁液の上清を添加する処理であることとしてもよい。すなわち、この場合、1つ以上の候補原料液に酵母を間接的に作用させる。
【0047】
酵母懸濁液は、酵母を含む溶液であれば特に限られない。酵母懸濁液は、酵母と処理液とを混合することにより調製される。処理液は、酵母を分散させることのできる液体であれば特に限られない。具体的に、処理液は、例えば、水又は水を含む溶液である。
【0048】
酵母懸濁液の上清は、酵母懸濁液から酵母を除去することにより調製される。すなわち、酵母懸濁液の上清を使用する酵母処理は、候補原料液に、酵母懸濁液から酵母を除去することにより調製された上清を添加する処理である。
【0049】
なお、候補原料液に添加される上清は、液体であってもよいし、固体であってもよい。すなわち、例えば、上清を凍結乾燥等の乾燥処理によって固化し、当該固化された上清(例えば、粉末)を候補原料液に添加することとしてもよい。酵母懸濁液の上清は、保存性や操作性といった点で好ましい。
【0050】
また、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、処理後の当該候補原料液のエキス濃度が当該所定値超となるよう、酵母懸濁液の上清を添加する処理であることとしてもよい。
【0051】
この場合もまた、上述のとおり、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、処理後の当該候補原料液のエキス濃度が当該所定値の1.1倍以上となるよう、酵母懸濁液の上清を添加する処理であることとしてもよく、また、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が5.0%以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、処理後の当該候補原料液のエキス濃度が5.5%以上となるよう、酵母懸濁液の上清を添加する処理であることとしてもよい。
【0052】
また、酵母処理は、例えば、1つ以上の候補原料液に、酵母を発酵の時間より短い時間接触させる処理であることとしてもよい。すなわち、この場合、発泡性飲料の製造方法において行われる発酵の時間より短い時間、1つ以上の候補原料液に酵母を直接作用させる。
【0053】
具体的に、例えば、1つ以上の候補原料液に、発泡性飲料の製造方法において行われる発酵の時間の0.001〜30%の時間、酵母を接触させることとしてもよい。
【0054】
また、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、発酵を12〜360時間行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、酵母を1分〜24時間であって、当該発酵の時間より短い時間(例えば、当該発酵の時間の0.001〜30%の時間)接触させる処理であることとしてもよい。
【0055】
発酵の時間は、当該発酵の開始時に原料液に微生物(例えば、酵母)を添加した時点から、当該発酵の終了時に当該原料液から当該微生物を除去する時点までの時間である。なお、発泡性飲料の製造方法において、発酵を行い、続いて、いわゆる貯酒を行う場合、当該発泡性飲料の製造方法における発酵の時間は、当該発酵の時間であり、当該貯酒の時間は含まない。
【0056】
また、候補原料液に酵母を接触させる時間は、酵母処理の開始時に当該候補原料液に当該酵母を添加した時点から、当該酵母処理の終了時に当該候補原料液から当該酵母を除去する時点までの時間である。
【0057】
また、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、処理後の当該候補原料液のエキス濃度が当該所定値超となるよう、酵母を当該発酵の時間より短い時間接触させる処理であることとしてもよい。
【0058】
この場合もまた、上述のとおり、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、処理後の当該候補原料液のエキス濃度が当該所定値の1.1倍以上となるよう、酵母を当該発酵の時間より短い時間接触させる処理であることとしてもよく、また、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が5.0%以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、処理後の当該候補原料液のエキス濃度が5.5%以上となるよう、酵母を当該発酵の時間より短い時間接触させる処理であることとしてもよい。
【0059】
また、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が初期濃度の所定割合以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、酵母を当該発酵の時間より短い時間接触させ、当該候補原料液のエキス濃度が初期濃度の当該所定割合以下に低下する前に、接触させた当該酵母を除去する処理であることとしてもよい。
【0060】
具体的に、この場合、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が初期濃度の50%以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、候補原料液のエキス濃度が初期濃度の当該50%以下に低下する前に、接触させた当該酵母を除去する処理であることとしてもよい。
【0061】
また、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が所定値以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、酵母を当該発酵の時間より短い時間接触させ、当該候補原料液のエキス濃度が当該所定値以下に低下する前に、接触させた当該酵母を除去する処理であることとしてもよい。
【0062】
具体的に、この場合、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエキス濃度が5.0%以下に低下するまで発酵を行う方法であり、酵母処理は、候補原料液のエキス濃度が当該5.0%以下に低下する前に、接触させた当該酵母を除去する処理であることとしてもよい。
【0063】
また、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエタノール濃度が所定値以上に増加するまでアルコール発酵を行う方法であり、酵母処理は、1つ以上の候補原料液に、酵母を当該アルコール発酵の時間より短い時間接触させ、当該候補原料液のエタノール濃度が当該所定値以上に増加する前に、接触させた当該酵母を除去する処理であることとしてもよい。
【0064】
具体的に、この場合、例えば、本方法に係る発泡性飲料の製造方法は、原料液のエタノール濃度が1体積%以上に増加するまでアルコール発酵を行う方法であり、酵母処理は、候補原料液のエタノール濃度が当該1体積%以上に増加する前に、接触させた当該酵母を除去する処理であることとしてもよい。
【0065】
また、本方法において、候補原料液のガス付け処理は、当該候補原料液に含まれる炭酸ガスの濃度を増加させる処理であれば特に限られない。具体的に、ガス付け処理は、例えば、候補原料液に炭酸水を添加する処理、及び/又は候補原料液に炭酸ガスを含む気体を接触させる処理であることとしてもよい。
【0066】
なお、酵母処理及びガス付け処理は、まず一方の処理を行い、次いで他方の処理を行うこととしてもよく、これら2つの処理を並行して行うこととしてもよい。すなわち、例えば、1つ以上の候補原料液に酵母処理を施し、次いで、当該酵母処理が施された当該1つ以上の候補原料液にガス付け処理を行うこととしてもよい。また、例えば、1つ以上の候補原料液にガス付け処理を施し、次いで、当該ガス付け処理が施された当該1つ以上の候補原料液に酵母処理を行うこととしてもよい。また、例えば、1つ以上の候補原料液に、酵母処理とガス付け処理とを並行して施すこととしてもよい。
【0067】
そして、本方法は、上述のような酵母処理及びガス付け処理が施された1つ以上の候補原料液の泡特性を評価することを含む。すなわち、本方法においては、酵母処理及びガス付け処理が施された候補原料液の泡特性を定性的又は定量的に評価する。
【0068】
評価される泡特性は、例えば、泡立ち特性、泡持ち特性及び泡付着性からなる群より選択される1つ以上である。泡立ち特性は、例えば、候補原料液をグラス等の容器に注いだ際に液面上部に泡の層が形成される泡特性である。泡持ち特性は、候補原料液をグラス等の容器に注いだ際に液面上部に形成された泡が一定時間以上保たれる泡特性である。泡付着性は、候補原料液をグラス等の容器に注いだ際に液面上部に形成された泡が、当該候補原料液の量が減少するにつれて、当該容器の内面に付着する泡特性である。
【0069】
具体的に、本方法においては、例えば、候補原料液の泡特性を定量的に評価する。候補原料液の泡特性を定量的に評価する方法は、ビール等の発泡性アルコール飲料の泡特性の評価に使用される方法等、特に限られないが、例えば、NIBEM法、Σ法及びRudin法により泡特性を定量的に評価することとしてもよい。
【0070】
具体的に、例えば、NIBEM法により得られるNIBEM値は、ビール等の発泡性アルコール飲料の泡持ち特性を示す指標値として使用されている。NIBEM値は、発泡性飲料を所定の容器に注いだ際に形成された泡の高さが所定量減少するまでの時間(秒)として評価される。NIBEM値が大きいほど、発泡性飲料の泡持ち特性が優れていることになる。
【0071】
さらに、本方法は、上述した泡特性の評価結果に基づいて、1つ以上の候補条件のうち1つ以上を、原料液の製造条件として決定することを含む。すなわち、候補条件が複数の場合、当該複数の候補条件のうち一部を、原料液の製造条件として決定する。この場合、複数の候補条件のうち1つを、原料液の製造条件として決定することとしてもよい。また、候補条件が1つの場合、当該1つの候補条件を、原料液の製造条件として決定することとしてもよい。なお、候補条件が1つの場合には、泡特性の評価結果に基づいて、当該1つの候補条件を、原料液の製造条件として決定しないこともあり得る。この場合、さらに他の候補条件を検討することになる。
【0072】
泡特性の評価結果に基づく原料液の製造条件の決定は、例えば、評価された1つ以上の候補原料液の泡特性を互いに比較し又は予め定められた泡特性と比較し、その比較結果に基づき行う。
【0073】
すなわち、例えば、1つ以上の候補原料液のうち、泡特性が優れている候補原料液、又は予め定められた泡特性と合致する泡特性を有する候補原料液を特定し、当該特定された候補原料液の製造に使用された候補条件を、原料液の製造条件として決定する。
【0074】
より具体的に、例えば、1つ以上の候補原料液の泡特性を定量的に評価した場合には、当該定量評価により得られた泡特性値(例えば、NIBEM法により測定されるNIBEM値)が優れている候補原料液、又は当該泡特性値が予め定められた範囲内である候補原料液を特定し、当該特定された候補原料液の製造に使用された候補条件を、原料液の製造条件として決定する。
【0075】
本方法が発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液の製造条件を決定する方法である場合には、上述のようにして、実際に発酵を行うことなく、原料液の製造条件が、当該原料液の発酵を行って最終的に製造される発泡性飲料の泡特性に与える影響を適切に且つ簡便に決定することができる。
【0076】
また、本方法が発酵を行う発泡性飲料の製造方法に使用される原料液を製造する方法である場合、本方法は、上述のようにして決定された製造条件で原料液を製造することを含む。この場合、所望の泡特性を有する発泡性飲料の製造を達成する原料液を確実に製造することができる。
【0077】
また、本方法が原料液の発酵を行う発泡性飲料の製造方法である場合、本方法は、上述のようにして決定された製造条件で製造された原料液の発酵を行うことを含む。この場合、所望の泡特性を有する発泡性飲料を確実に製造することができる。
【0078】
なお、発泡性飲料の製造方法である本方法は、上述のようにして決定された製造条件で原料液を製造することと、製造された当該原料液の発酵を行うこととを含むこととしてもよい。
【0079】
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
【実施例1】
【0080】
[候補原料液の製造]
まず、植物原料を使用する原料液の製造条件の候補として、各々が他と異なる当該植物原料の原料条件を含む複数の候補条件を用意した。すなわち、各々が5種類の大麦(大麦A、大麦B、大麦C、大麦D、大麦E)のうち他と異なる1種を使用する、5種類の候補条件を用意した。なお、大麦の種類以外の条件は、5種類の候補条件で共通とした。
【0081】
次いで、上述の複数の候補条件で複数の候補原料液を製造した。すなわち、5種類の大麦A〜Eをそれぞれ発芽させて得られた5種類の大麦麦芽を使用して、5種類の候補原料液A〜Eを製造した。
【0082】
具体的に、粉砕した5種類の大麦麦芽A〜Eのいずれかに50℃の湯を加え、得られた混合液を50℃で維持することにより、タンパク休止を行った。次いで、糖化後の混合液から大麦麦芽の穀皮を除去した。その後、水を加えて、穀皮除去後の混合液のエキス濃度を12%に調整した。さらに、エキス濃度調整後の混合液にホップを添加して煮沸を行い、5種類の候補原料液を得た。
【0083】
[酵母処理]
上述のように製造された複数の候補原料液に、酵母を直接的又は間接的に作用させる酵母処理を施した。すなわち、第一の酵母処理として、上述のように製造された5種類の候補原料液に、酵母懸濁液の上清を添加する処理を施した。具体的に、まず、アルコール発酵に使用された後に回収された生きたビール酵母と水とを混合することにより酵母懸濁液を調製し、2℃で7日間保存した。この酵母懸濁液は、33.7重量%の酵母を含んでいた。
【0084】
次いで、この酵母懸濁液から酵母を除去することにより上清を調製した。すなわち、酵母懸濁液を含む容器を遠心して酵母を沈降させ、当該遠心後の酵母懸濁液の上清を回収した。さらに、回収された上清を凍結乾燥した。
【0085】
そして、第一の酵母処理として、候補原料液に、上清の凍結乾燥物を、14mg/Lの濃度で添加し、当該候補原料液を1時間振とうした。その後、候補原料液を遠心して(8000×g、10分)、その上清を、酵母処理後の候補原料液として回収した。
【0086】
一方、第二の酵母処理として、上述のように製造された5種類の候補原料液に、酵母を短時間接触させる処理を施した。すなわち、候補原料液に、アルコール発酵に使用された後に回収された生きたビール酵母を、4.8g/Lの濃度で添加し、次いで、当該酵母を含む候補原料液を12℃で1時間振とうすることにより、当該候補原料液に当該酵母を接触させた。その後、候補原料液を遠心して(8000×g、10分)、酵母を沈降させ、その上清を、酵母処理後の候補原料液として回収した。
【0087】
また、比較のための処理として、上述のように製造された5種類の候補原料液の簡易的なアルコール発酵を行った。すなわち、候補原料液に、50g/Lという高濃度のビール酵母を添加し、20℃で18時間振とうし、当該ビール酵母に当該候補原料液のエキスを消費させた。
【0088】
その後、候補原料液をろ紙でろ過し、そのろ液を、簡易アルコール発酵後の候補原料液として回収した。この簡易アルコール発酵後の5種類の候補原料液のエキス濃度は1.4〜1.8%であった。
【0089】
[ガス付け処理]
上述のように酵母処理が施された複数の候補原料液にガス付け処理を施した。すなわち、第一のガス付け処理として、5℃の候補原料液88mLと、5℃の炭酸水132mLとを混合した。そして、この混合後の溶液を、第一のガス付け処理が施された候補原料液として得た。なお、比較のため、酵母処理が施されておらず、アルコール発酵も行っていない候補原料液にも第一のガス付け処理を行った。
【0090】
一方、第二のガス付け処理として、候補原料液220mLを入れた容器(容積230mL)の気相部分(空寸部)に、2℃で48時間、炭酸ガス(CO)を99.5%以上含むガスを流通させた。そして、この炭酸ガスと接触させた後の候補原料液を、第二のガス付け処理が施された候補原料液として得た。なお、比較のため、上述の簡易アルコール発酵後の候補原料液にも第二のガス付け処理を施した。
【0091】
[発泡性飲料の製造]
一方、上述のようにして製造された複数の候補原料液を使用して実際に複数の発泡性飲料を製造した。すなわち、5種類の候補原料液(酵母処理もガス付け処理も施されていない候補原料液)に酵母を4.8g/Lの濃度で添加して、12℃で100時間、アルコール発酵を行った。
【0092】
そして、アルコール発酵後の候補原料液から酵母を除去し、発泡性飲料(ビール)を得た。こうして製造された5種類の発泡性飲料のエキス濃度は1.6〜2.0%であり、エタノール含有量は5.1〜5.2体積%であった。
【0093】
[泡特性の評価]
上述のようにしてガス付け処理が施された複数の候補原料液、及び実際にアルコール発酵を行って製造された複数の発泡性飲料の泡特性を評価した。すなわち、5種類の候補原料液、及び当該5種類の候補原料液に対応する5種類の発泡性飲料の泡持ち特性を、NIBEM法により定量評価した。
【0094】
そして、特定の候補原料液の泡特性の評価結果(NIBEM値)と、実際に当該特定の候補原料液を使用して製造された発泡性飲料の泡特性の評価結果(NIBEM値)との相関関係を確認した。
【0095】
[結果]
図1には、酵母を短時間接触させる第二の酵母処理と、炭酸水と混合する第一のガス付け処理とを施された5種類の候補原料液A〜EのNIBEM値と、当該酵母処理及びガス付け処理が施されていない当該候補原料液A〜Eのアルコール発酵を実際に行って製造された5種類の発泡性飲料のNIBEM値との相関関係を示す。
【0096】
図2には、酵母懸濁液の上清を添加する第一の酵母処理と、炭酸水と混合する第一のガス付け処理とを施された5種類の候補原料液A〜EのNIBEM値と、当該酵母処理及びガス付け処理が施されていない当該候補原料液A〜Eのアルコール発酵を実際に行って製造された5種類の発泡性飲料のNIBEM値との相関関係を示す。
【0097】
図3には、酵母を短時間接触させる第二の酵母処理と、炭酸ガスと接触させる第二のガス付け処理とを施された5種類の候補原料液A〜EのNIBEM値と、当該酵母処理及びガス付け処理が施されていない当該候補原料液A〜Eのアルコール発酵を実際に行って製造された5種類の発泡性飲料のNIBEM値との相関関係を示す。
【0098】
図4には、酵母処理を施さず、炭酸ガスと接触させる第二のガス付け処理を施された5種類の候補原料液A〜EのNIBEM値と、当該酵母処理及びガス付け処理が施されていない当該候補原料液A〜Eのアルコール発酵を実際に行って製造された5種類の発泡性飲料のNIBEM値との相関関係を示す。
【0099】
図5には、簡易アルコール発酵を行った後に炭酸ガスと接触させる第二のガス付け処理を施された5種類の候補原料液A〜EのNIBEM値と、当該酵母処理及びガス付け処理が施されていない当該候補原料液A〜Eのアルコール発酵を実際に行って製造された5種類の発泡性飲料のNIBEM値との相関関係を示す。
【0100】
図1図5において、横軸は候補原料液のNIBEM値(秒)を示し、縦軸は発泡性飲料のNIBEM値(秒)を示す。また、図1図5には、プロットされた5つの点A〜Eを最小二乗法で直線近似した場合の相関係数rを示している。
【0101】
図4及び図5に示すように、候補原料液に酵母処理を施さない場合には、当該候補原料液の泡特性と発泡性飲料の泡特性との間に十分な相関関係が認められなかった。これに対し、図1図3に示すように、酵母処理及びガス付け処理が施された候補原料液の泡特性を評価することにより、当該候補原料液の泡特性と、発泡性飲料の泡特性との間に十分な相関関係が確認された。
【0102】
このように、本方法によれば、原料液の製造条件が、当該原料液のアルコール発酵を行って最終的に製造される発泡性飲料の泡特性に与える影響を適切に且つ簡便に決定できることが確認された。
【0103】
具体的に、例えば、図1図3に示す評価結果に基づき、最も優れた泡持ち特性を達成する1つの候補条件、すなわち、大麦Aを使用する候補条件を、原料液の製造条件として決定することができる。
【0104】
また、例えば、比較的優れた泡持ち特性を達成する一部の候補条件、すなわち、大麦A、大麦B又は大麦Cを使用する3つの候補条件を、原料液の製造条件として決定することができる。
【0105】
また、このように複数の候補条件から一部又は1つの候補条件を、実際の原料液の製造条件として決定することにより、所望の泡特性を有する発泡性飲料の製造を達成する原料液を確実に製造することができ、また、所望の泡特性を有する発泡性飲料を確実に製造することもできる。
【実施例2】
【0106】
[候補原料液の製造]
まず、植物原料を使用する原料液の製造条件の候補として、各々が他と異なる当該植物原料の原料条件及び酵素条件を含む複数の候補条件を用意した。すなわち、各々が、5種類の大麦(大麦A、大麦B、大麦C、大麦D、大麦E)のうち1種と、3種類のタンパク休止温度(50℃、55℃、60℃)のうち1つとからなる他と異なる組み合わせを使用する、15種類の候補条件を用意した。なお、大麦の種類及びタンパク休止温度以外の条件は、15種類の候補条件で共通とした。タンパク休止温度は、原料液にタンパク休止処理を施す温度である。タンパク休止処理は、原料液においてタンパク分解酵素による酵素反応を進行させるための処理である。
【0107】
次いで、上述の複数の候補条件で複数の候補原料液を製造した。すなわち、15種類の候補条件で15種類の候補原料液を製造した。具体的に、粉砕した5種類の大麦麦芽A〜Eのいずれかに、50℃、55℃又は60℃の湯を加え、得られた5種類の混合液をそれぞれ50℃、55℃又は60℃で30分保持した。その後、全ての混合液を加熱して65℃で60分保持し、さらに加熱して76℃で3分保持した。次いで、混合液から大麦麦芽の穀皮を除去した。その後、水を加えて、穀皮除去後の混合液のエキス濃度を12%に調整した。さらに、エキス濃度調整後の混合液にホップを添加して煮沸を行い、15種類の候補原料液を得た。
【0108】
[酵母処理]
上述のように製造された複数の候補原料液に酵母処理を施した。すなわち、上述のように製造された15種類の候補原料液に、上述の実施例1と同様にして、酵母懸濁液の上清の凍結乾燥物を添加する酵母処理を施した。
【0109】
[ガス付け処理]
上述のように酵母処理が施された複数の候補原料液にガス付け処理を施した。すなわち、上述のように酵母処理が施された15種類の候補原料液に、上述の実施例1と同様にして、炭酸水と混合するガス付け処理を施した。
【0110】
[泡特性の評価]
上述のようにしてガス付け処理が施された複数の候補原料液の泡特性を評価した。すなわち、上述の実施例1と同様にして、15種類の候補原料液の泡持ち特性を、NIBEM法により定量評価した。
【0111】
[結果]
図6には、酵母処理及びガス付け処理が施された15種類の候補原料液のNIBEM値を測定した結果を示す。図6において、横軸は使用された大麦の種類A〜Eを示し、縦軸は候補原料液のNIBEM値(秒)を示し、白抜き棒グラフは50℃でタンパク休止処理を行った場合の結果を示し、ハッチングが施された棒グラフは55℃でタンパク休止処理を行った場合の結果を示し、黒塗り棒グラフは60℃でタンパク休止処理を行った場合の結果を示す。
【0112】
図6に示すように、酵母処理及びガス付け処理が施された複数の候補原料液の泡特性を評価することにより、当該複数の候補原料液の製造に使用された製造条件が泡特性に与える影響を確認することができた。
【0113】
すなわち、一般に、ビールの製造において、タンパク休止温度が高くなると、ビールの泡持ち特性が向上することが知られている(例えば、参考文献:Evans, D.E., Bamforth, C.W., 2009. Beer foam: achieving a suitable head. In: Bamforth, Charles, W., Russell, I., Stewart, G. (Eds.), Handbook of Alcoholic Beverages Series, Beer A Quality perspective. Elsevier Ltd., pp. 1-60, Chapter 1)。
【0114】
この点、図6に示すように、大麦の種類にかかわらず、候補原料液の製造におけるタンパク休止温度が高くなるにつれて、当該候補原料液のNIBEM値も高くなった。すなわち、タンパク休止温度が高くなるにつれてビールの泡持ち特性が向上するという傾向を、実際にアルコール発酵を行うことなく、候補原料液のNIBEM値が増加する傾向として確認することができた。
【0115】
また、例えば、5種類の大麦A〜Eのうち、3種類の大麦A,B,Cを使用した場合に優れた泡特性が得られること、5種類の大麦A〜Eのいずれを使用した場合においても、50℃でタンパク休止処理を行う場合よりも55℃でタンパク休止処理を行う場合の方が優れた泡持ち特性が得られ、60℃でタンパク休止処理を行う場合にはさらに優れた泡持ち特性が得られること、したがって、特に、当該3種類の大麦A,B,Cを使用し、且つ60℃でタンパク休止処理を行うことにより、極めて優れた泡特性が得られることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6