【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年5月27日にて発行の下記刊行物に掲載。 記 発行所:the European Society for Precision Engineering & Nanotechnology 刊行物名:13▲th▼ International Conference of the European Society for Precision Engineering & Nanotechnology Conference Proceedings Volume 1 発行年月日(頒布日):平成25年5月27日
【文献】
Masaya Takei, Daisuke Kurihara, Seiichiro Katsura, Yasuhiro Kakinuma,Hybrid Control for Machine Tool Table Applying Sensorless Cutting Force Monitoring,International Journal of Automation Technology,日本,富士技術出版,2011年 7月,Vol5, No4,第587ページ−第593ページ
【文献】
Daisuke KURIHARA, Yasuhiro KAKINUMA, Seiichiro KATSURA,Cutting Force Control Applying Sensorless Cutting Force Monitoring Method,Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing,日本,The Japan Society of Mechanical Engineers,2010年,Vol.4, No.5,第955ページ−第965ページ
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
駆動手段の駆動力により、ワークに対する相対的な位置を移動させると共に加工力を発生させて当該ワークを加工する加工手段を備える工作機械に対して、制御を実行する工作機械制御装置において、
前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置の検出結果を示す検出位置信号に基づいて、前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置を制御する位置制御手段と、
前記駆動手段の駆動力を発生させる駆動信号の指令信号及び前記検出位置信号に基づいて前記駆動手段への外乱を推定し、推定した当該外乱から摩擦力を減算することにより、前記加工力の推定結果を示す加工力推定信号を生成する加工力推定手段と、
前記加工力推定信号に基づいて、前記加工手段の加工力を制御する力制御手段と、
前記位置制御手段と前記力制御手段の夫々の制御対象となる周波数帯域を区分する周波数帯域区分手段と、
を備え、
前記周波数帯域区分手段は、
前記加工力推定信号のうち、直流成分を除く第1周波数帯域の成分信号を通過させる通過手段と、
前記検出位置信号のうち、前記第1周波数帯域を遮断することで、前記第1周波数帯域を除く第2周波数帯域の成分信号を通過させる遮断手段と、
を備え、
前記位置制御手段は、前記遮断手段から通過した前記第2周波数帯域の成分信号に基づいて、前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置を制御し、
前記力制御手段は、前記通過手段から通過した前記第1周波数帯域の成分信号に基づいて、前記加工手段の加工力を制御する、工作機械制御装置。
前記駆動手段の駆動力を発生させる駆動信号の指令信号及び前記検出位置信号に基づいて前記駆動手段への外乱を推定し、推定した当該外乱に基づいて、前記駆動信号の指令信号を補償する補償信号を生成する補償手段、
をさらに備える請求項1又は2に記載の工作機械制御装置。
駆動手段の駆動力により、ワークに対する相対的な位置を移動させると共に加工力を発生させて当該ワークを加工する加工手段を備える工作機械に対して、工作機械制御装置が実行する工作機械制御方法において、
前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置の検出結果を示す検出位置信号に基づいて、前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置を制御する位置制御ステップと、
前記駆動手段の駆動力を発生させる駆動信号の指令信号及び前記検出位置信号に基づいて前記駆動手段への外乱を推定し、推定した当該外乱から摩擦力を減算することにより、前記加工力の推定結果を示す加工力推定信号を生成する加工力推定ステップと、
前記加工力推定信号に基づいて、前記加工手段の加工力を制御する力制御ステップと、
前記位置制御ステップと前記力制御ステップの夫々における制御対象となる周波数帯域を区分する周波数帯域区分ステップと、
を含み、
前記周波数帯域区分ステップでは、
前記加工力推定信号のうち、直流成分を除く第1周波数帯域の成分信号を通過させる通過手段と、
前記検出位置信号のうち、前記第1周波数帯域を遮断することで、前記第1周波数帯域を除く第2周波数帯域の成分信号を通過させる遮断手段とにより周波数帯域が区分され、
前記位置制御ステップでは、前記遮断手段から通過した前記第2周波数帯域の成分信号に基づいて、前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置を制御し、
前記力制御ステップでは、前記通過手段から通過した前記第1周波数帯域の成分信号に基づいて、前記加工手段の加工力を制御する、工作機械制御方法。
駆動手段の駆動力により、ワークに対する相対的な位置を移勤させると共に加工力を発生させて当該ワークを加工する加工手段を備える工作機械に対する制御を行うコンピュータに、
前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置の検出結果を示す検出位置信号に基づいて、前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置を制御する位置制御ステップと、
前記駆動手段の駆動力を発生させる駆動信号の指令信号及び前記検出位置信号に基づいて前記駆動手段への外乱を推定し、推定した当該外乱から摩擦力を減算することにより、前記加工力の推定結果を示す加工力推定信号を生成する加工力推定ステップと、
前記加工力推定信号に基づいて、前記加工手段の加工力を制御する力制御ステップと、
前記位置制御ステップと前記力制御ステップの夫々における制御対象となる周波数帯域を区分する周波数帯域区分ステップと、
を含み、
前記周波数帯域区分ステップでは、
前記加工力推定信号のうち、直流成分を除く第1周波数帯域の成分信号を通過させる通過手段と、
前記検出位置信号のうち、前記第1周波数帯域を遮断することで、前記第1周波数帯域を除く第2周波数帯域の成分信号を通過させる遮断手段とにより周波数帯域が区分され、
前記位置制御ステップでは、前記遮断手段から通過した前記第2周波数帯域の成分信号に基づいて、前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置を制御し、
前記力制御ステップでは、前記通過手段から通過した前記第1周波数帯域の成分信号に基づいて、前記加工手段の加工力を制御する、制御処理を実行させるプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の工作機械制御装置の一実施形態に係るコントローラ11を含む、工作機械システム1の概要を示す模式図である。
図2は、
図1の工作機械システム1の工作機械本体の外観構成の概略を示す斜視図である。
図3は、
図1の工作機械システム1の工作機械本体の外観構成の概略を示す上面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の工作機械システム1は、コントローラ11と、サーボアンプ12と、刃物台となるXZステージ13と、ワークスピンドル14とを備えている。
【0017】
コントローラ11は、工作機械本体たるXZステージ13及びワークスピンドル14に対して位置および力制御を実行することができる制御装置(サーボコントローラ)である。
サーボアンプ12は、工作機本体(XZステージ13のXステージ22及びZステージ23、並びにワークスピンドル14)を駆動するためのモータ(Xステージ22については後述するモータ21)に対して、コントローラ11からの指令値に応じた電流を流すことで、当該モータの推力(駆動力)の大きさを制御するドライブ装置である。
XZステージ13及びワークスピンドル14は、工作機本体である。
【0018】
具体的には、コントローラ11は、ワークスピンドル14に設置されたワークWに対するXZステージ13の相対的な位置の制御(以下、「位置制御」と呼ぶ)と、ワークWに対する切削力の制御(以下、「力制御」と呼ぶ)とを、周波数帯域を区分することで、時間的に同時に並行してリアルタイムに実行する。このような位置制御と力制御とを同時に実行する制御を、以下、「ハイブリッド制御」と呼ぶ。
ここで、ハイブリッド制御は、XZステージ13のXステージ22及びZステージ23、並びにワークスピンドル14の夫々に対して個別に適用することができる。ただし、以下、説明の便宜上、Xステージ22に対するハイブリッド制御についてのみ説明する。
コントローラ11は、ハイブリッド制御の指令値として、後述のXステージ22用のモータ21に流す電流の指令値(以下、参照電流と呼ぶ)をサーボアンプ12に対して出力すると共に、Xステージ22の位置情報を入力する。この位置情報とは、従来のNC工作機械でも一般的に利用されるステージ位置を計測するエンコーダからの出力情報であり、これをそのまま流用することができる。
ここで、コントローラ11は、後述するように、ハイブリッド制御のうち力制御のフィードバック情報については、自身内部で推定(観測)するため、外部から入力する必要はない。
このように、本実施形態では、コントローラ11の外部から入力するフィードバック情報は、従来のNC工作機械で一般的に用いられている位置情報(及びワークスピンドル14に適用する場合には角度情報)のみで足りる。また、本実施形態では、びびり振動の検知に、コントローラ11内部で生成される力推定情報が利用される。従って、本実施形態の工作機械システム1の構成要素として、マイクロフォンや加速度センサ等の振動検知を行う付加的センサや力制御を行う付加的なセンサ(力制御のフィードバック情報を出力する外部機器)は不要である。
なお、ハイブリッド制御のさらなる詳細については、
図5等を参照して後述する。
【0019】
XZステージ13は、
図1〜
図3に示すように、モータ21と、Xステージ22と、Zステージ23と、切削工具24とを含むように構成される。
ここで、以下、
図2及び
図3に示すように、ワークスピンドル14の軸と平行な方向を「z方向」と呼び、z方向と垂直な方向のうち地面(旋盤13が配置される面)に対して水平な方向を「x方向」と呼ぶ。
モータ21は、Xステージ22を駆動するサーボアンプ12からの電流の大きさに応じて、x方向(直線方向)への推力を発することで、Xステージ22をx方向に移動させるリニアモータである。なお、図示はしないが、サーボアンプ12からの電流の大きさに応じて、z方向(直線方向)への推力を発することで、Zステージ23をz方向に移動させるリニアモータもXZステージ13には設けられている。
Xステージ22は、切削工具24(より正確には、切削工具24が取り付けられたZステージ23)を積載し、モータ21の推力によりx方向に移動する台座である。具体的には、Xステージ22は、Zステージ23を積載するテーブルと、モータ21の駆動によりテーブルをx方向に移動させるガイドと、テーブルの位置を検出して位置情報として出力するリニアエンコーダ等を有している。即ち、本実施形態では、位置情報は、Xステージ22から出力されて、位置制御のフィードバック情報としてコントローラ11に入力される。
Zステージ23は、切削工具24が取り付けられ、z方向に移動する台座であり、本実施形態ではXステージと同様の構成を有している。
切削工具24は、旋削用バイトであり、シャンク部がZステージ23に固着されると共に、シャンク先端に取り付けられたチップ(スローアウェイチップ)でワークWを切削する。
【0020】
ワークスピンドル14は、例えば円柱状のワークWが取り付けられ、z方向に水平な軸を中心に、当該ワークWを回転させる回転装置である。
【0021】
即ち、
図3に示すように、切削工具24は、ワークスピンドル14により回転するワークWに対して、モータ21(
図3には図示せず)の推力によりx方向に移動する。そして、切削工具24は、その刃がワークWに当接すると切削力を発生して、当該切削力によりワークWを切削する。
この切削中に、切削工具24(Xステージ22)のx方向に対する位置制御と、切削工具24の切削力の力制御とを併せたハイブリッド制御が、コントローラ11により実行される。これにより、びびり振動がリアルタイムに抑制される。
以下、このようなハイブリッド制御を実行するコントローラ11について、さらに詳しく説明する。
【0022】
図4は、
図1の工作機械システム1のうちコントローラ11のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【0023】
コントローラ11は、CPU(Central Processing Unit)31と、ROM(Read Only Memory)32と、RAM(Random Access Memory)33と、バス34と、入出力インターフェース35と、入力部36と、出力部37と、記憶部38と、通信部39と、ドライブ40とを備えている。
【0024】
CPU31は、ROM32に記録されているプログラム、又は、記憶部38からRAM33にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM33には、CPU31が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0025】
CPU31、ROM32及びRAM33は、バス34を介して相互に接続されている。このバス34にはまた、入出力インターフェース35も接続されている。入出力インターフェース35には、入力部36、出力部37、記憶部38、通信部39、及びドライブ40が接続されている。
【0026】
入力部36は、キーボードやマウス等で構成され、ユーザの指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部37は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部38は、ハードディスク等で構成され、各種情報のデータを記憶する。
通信部39は、ネットワークを介して他の端末(図示せず)との間で行う通信を制御すると共に、本実施形態では、サーボアンプ12に対する指令値(参照電流)を出力したり、位置制御のフィードバック情報たる位置情報をXZステージ13から入力するための通信を制御する。
【0027】
ドライブ40には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア51が適宜装着される。ドライブ40によってリムーバブルメディア51から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部38にインストールされる。また、リムーバブルメディア51は、記憶部38に記憶されている各種データも、記憶部38と同様に記憶することができる。
【0028】
図5は、
図4のコントローラ11の機能的構成のうち、ハイブリッド制御を実行する場合の機能的構成を示す機能ブロック図である。
【0029】
コントローラ11によりハイブリッド制御が実行される場合には、
図5に示すように、切削力推定部61と、バンドパスフィルタ62と、力制御コントローラ63と、バンドストップフィルタ64と、位置制御コントローラ65と、電流指令部66と、電流補償部67とが、CPU31等(
図4)において機能する。
【0030】
ここで、これらの機能ブロック、即ち切削力推定部61〜電流補償部67の各機能の理解を容易なものとすべく、先ず、ハイブリッド制御の概要について説明する。
【0031】
リアルタイムにびびり振動を抑制するためには、力制御を採用するのが好適である。その理由は次のとおりである。
即ち、切削工具24により切り取られるワークWの表面の厚さ(以下、「切り取り厚さ」と呼ぶ)は、びびり振動の発生前ではほぼ一定であったものが、びびり振動の発生後では変化してしまう。その結果として、切削力が変動し、表面に起伏が発生し、この起伏により切り取り厚さがさらに変化してしまう。つまり、びびり振動が発生すると、切り取り厚さ変化 → 切削力変動 → 表面の起伏発生 → さらなる切り取り厚さ変化、といった悪循環が繰り返されてしまう。
この悪循環を断ち切るためには、力制御で切削力の変動を抑制することが好適である。
【0032】
しかしながら、力制御単体は、いつ加工が終わるかわからないため、つまり加工時間を計算できないため、生産工程(特に切削)に適用すること自体困難である。
そのため、生産工程を管理できる「位置制御」が工作機械システムでは一般的に必要になる。
【0033】
一方、従来の一般的なNC制御で採用されている位置制御単体でも、びびり振動を抑制することは困難である。位置制御は、上述のように加工時間を推測することができるものの、切削力(加工力)については、あくまでも結果として現れるものであり、制御できないからである。
【0034】
そこで、本発明人らは、力制御と位置制御とを組み合わせる制御を発明した。しかしながら、力制御と位置制御とは相互に影響を及ぼすものであり、単純に組み合わせると干渉してしまい、システム全体として安定した制御が不可能になる。
そこで、本発明人らは、さらに、力制御と位置制御との周波数帯域を区分する手法を発明した。当該手法を適用することで、力制御と位置制御とを干渉することなく組み合わせることが可能になる。即ち、本発明人らが発明したハイブリッド制御とは、当該手法が適用された、力制御と位置制御との組み合わせの制御をいう。つまり、位置制御と力制御の周波数帯域を区分することで、位置制御と力制御との両制御を、時間的に同時に並行してリアルタイムに実行するものが、ハイブリッド制御である。
周波数帯域の区分の手法は、特に限定されないが、例えば、位置制御には、直流成分から低周波領域までの周波数帯域を割り当て、かつ、力制御には、びびり振動を抑制可能な特定の周波数帯域を割り当てると好適である。直流成分から低周波領域での周波数帯域で位置制御が実行されるので、必ず加工時間が推定されると共に、びびり振動を引き起こす領域の切削力の制御は特定の周波数帯域のみで可能になるからである。具体的には例えば、低周波領域として5Hzを採用し、かつ、力制御に用いる特定の周波数帯域として5Hz〜15Hzを採用したところ、切削中に発生するびびり振動がリアルタイムに抑制されたことが本発明人らにより検証された(後述の
図7〜
図10参照)。
【0035】
ここで、ハイブリッド制御に用いる力制御として、従来から研究開発されている一般的な制御を採用してもよい。
しかしながら、従来の一般的な力制御とは、工作機械内部又は加工空間に力センサを配置して、当該力センサからの力情報をフィードバックして、切削加工する制御である。即ち、従来の一般的な力制御を採用した場合、力センサといった新たな外部機器が必要になる。
【0036】
そこで、本実施形態では、本発明者らにより発明されて特開2010−271880号公報に既に開示された手法、即ち切削力の制御系内における推定手法(以下、「切削力推定手法」と呼ぶ)が、力制御に適用されている。これにより、力センサといった新たな外部機器が不要になる。
【0037】
以下、このような切削力推定手法の概要について、
図6を参照して説明する。
図6は、切削力推定手法の概要を説明するための図であって、
図1の工作機械システム1で端面切削を行う際にXステージ22に作用する力を示した図である。
【0038】
図6には、同図に図示せぬモータ21(
図1等)の推力Fmにより、摩擦力Ffricが存在することを前提に、質量Mのステージ(Xステージ22及びZステージ23)がx方向に移動量xだけ移動し、ワークWに対して切削工具24が切り込むことにより、切削力Fcutが生ずるものとされている。
また、モータ21の推力Fmは、所定の推力定数Ktと、(コントローラ11からの指令値である)参照電流Irefとの積により表されるものとする。
【0039】
このような
図6のモデルについての運動方程式は、次の式(1)に示されるようになる。
【数1】
【0040】
実際には質量Mと推力定数Ktは、その公称値Mn,Ktnの夫々から△M,△Ktの夫々だけ変動する。これらのパラメータ変動による変動力と、切削力Fcutと、摩擦力Ffricとの合計が、外乱Fdisとなり、次の式(2)で示される。この時、式(1)は式(3)のように変換される。
【数2】
【数3】
【0041】
式(3)において、質量の公称値Mnと推力定数の公称値Ktnは既知であり、移動量xは位置情報としてXステージ22からコントローラ11にフィードバックされ、参照電流Irefは指令値としてコントローラ11により生成される。従って、コントローラ11は、式(3)に基づいて、外乱Fdisを推定することができる。
さらに、コントローラ11は、このようにして推定した外乱Fdisから、摩擦力Ffricを減算することで、切削力Fcutを推定することができる。
なお、摩擦力Ffricは、無負荷の状態でモータ21を駆動した時の外乱Fdisと同値であるので、その値を予め求めてテーブルや関数等としてデータベース化しておき、切削力Fcutの推定時に当該データベースから参照できるようにしておくとよい。
【0042】
このようにして、式(3)の外乱Fdisを推定し、さらに当該外乱Fdisから摩擦力Ffricを減算することで、切削力Fcutを推定する機能ブロックが、
図5の切削力推定部61である。
つまり、切削力推定部61は、切削力推定手法に従って、切削力Fcutを推定する。これにより、力センサといった新たな外部機器が不要になる。
なお、切削力推定手法のさらなる詳細については、特開2010−271880号公報を参照するとよい。
【0043】
バンドパスフィルタ62は、切削力推定部61により推定された切削力Fcutの信号(以下、「切削力推定信号」と呼ぶ)のうち、所定の周波数帯域の成分信号FBPFのみを通過させるフィルタである。
ここで、通過させる周波数帯域は、任意の設定が自在に可能とされているが、本実施形態では、力制御に用いられる周波数帯域、例えば5〜15Hzが設定されている。
即ち、本実施形態では、切削力推定信号のうち、力制御に用いられる周波数帯域(例えば5〜15Hz)の成分信号FBPFが、バンドパスフィルタ62から出力されて、力制御コントローラ63に供給される。
【0044】
力制御コントローラ63は、切削力の指令値Fcmdに対する、切削力のフィードバック値の誤差が無くなるように制御するコントローラであって、制御結果を加速度単位に変換して出力する。
ここで、切削力のフィードバック値としては、切削力推定信号のうち、特定の周波数帯域(例えば5〜15Hz)の成分信号FBPFが入力される。これにより、特定の周波数帯域(例えば5〜15Hz)においての力制御が可能になる。
なお、力制御コントローラ63内の力制御としては、いわゆるP制御が採用されているが、特にこれに限定されず、任意の種類の制御を採用することができる。
【0045】
バンドストップフィルタ64は、Xステージ22の検出された位置xを示す位置情報の信号(以下、「検出位置信号」と呼ぶ)のうち、所定の周波数帯域の成分を遮断し、それ以外の周波数帯域の成分信号xBSFを通過させるフィルタである。
なお、
図5の各機能ブロック内には、ハイブリッド制御のモデル化による各制御ブロック(ブロック線図)が図示されており、モータ21についても、同様に、上述の式(1)等に基づいてモデル化された制御ブロック(ブロック線図)が図示されている。このため、検出位置信号は、
図5では(モデル上では)モータ21から直接出力されるように図示されているが、実際には上述のようにXステージ22(
図1等)の図示せぬリニアエンコーダから出力されて、コントローラ11のバンドストップフィルタ64に入力される。
バンドストップフィルタ64において遮断させる周波数帯域は、任意の設定が自在に可能とされているが、本実施形態では、力制御に用いられる周波数帯域、例えば5〜15Hzが設定されている。
即ち、本実施形態では、検出位置信号のうち、力制御に用いられる周波数帯域(例えば5〜15Hz)の成分が遮断され、それ以外の周波数帯域(例えば、直流成分から5Hzまでの周波数帯域と、15Hzを超えた周波数帯域)の成分信号xBSFがバンドストップフィルタ64から出力されて、位置制御コントローラ65に供給される。
【0046】
位置制御コントローラ65は、位置xの指令値xcmdに対する、位置xのフィードバック値の誤差が無くなるように制御するコントローラであって、制御結果を加速度単位に変換して出力する。
ここで、位置xのフィードバック値としては、検出位置信号のうち、力制御に用いられる周波数帯域(例えば5〜15Hz)の成分以外の周波数帯域(例えば、直流成分から5Hzまでの周波数帯域と、15Hzを超えた周波数帯域)の成分信号xBSFが入力される。
これにより、力制御に用いられる周波数帯域(例えば5〜15Hz)の成分以外の周波数帯域(例えば、直流成分から5Hzまでの周波数帯域と、15Hzを超えた周波数帯域)においての位置制御が可能になる。つまり、力制御と干渉が無い位置制御が可能になる。また、直流成分も位置制御の対象になっているので、ハイブリッド制御の終了時刻を確定することも可能になる。
なお、位置制御コントローラ65内の位置制御としては、いわゆるPD制御が採用されているが、特にこれに限定されず、任意の種類の制御を採用することができる。
【0047】
このように、本実施形態では、バンドパスフィルタ62及びバンドストップフィルタ64が、位置制御コントローラ65と力制御コントローラ63の夫々の制御対象となる周波数帯域を区分する機能を有している。
【0048】
電流指令部66は、力制御コントローラ63の制御結果(加速度単位)と、位置制御コントローラ65の制御結果(加速度単位)とを加算することで、全周波数帯域の加速度単位指令arefを生成する。さらに、電流指令部66は、この加速度単位の指令arefに対して(Kt/M)を乗算することで電流単位の指令に変換する。そして、電流指令部66は、この電流単位の指令から、後述の電流補償部67から出力される補償電流を減算して参照電流Irefを求め、当該参照電流Irefを指令値として出力する。
なお、参照電流Irefは、
図5の例ではモータ21に直接入力されているが、これは検出位置情報と同様の理由によるものであり、実際には上述のようにサーボアンプ12に入力される。そして、サーボアンプ12が、参照電流Irefに応じた電流を、モータ21に対して流す。
【0049】
電流補償部67は、切削力推定部61と同様に、上述の式(3)の外乱Fdisを推定し、推定した外乱Fdisに基づいて、その外乱Fdisを補償してシステムのロバスト性を高めるための補償電流を生成して、電流指令部66に供給する。即ち、電流補償部67は、いわゆる外乱オブザーバにより構成される。
換言すると、電流補償部67は、ハイブリッド制御を実現するために必須な構成要素ではないが、システムのロバスト性を高めるために採用すると好適である。
なお、電流補償部67のさらなる詳細については、特開2010−271880号公報を参照するとよい。
【0050】
以上、
図1〜
図6を参照して、本実施形態の工作機械システム1について説明した。
本発明人らは、このような本実施形態の工作機械システム1を用いてワークWを加工(切削)する試験として、2種類の方法の試験を行い、びびり振動が抑制されることを検証した。なお、以下、2種類の方法の試験の夫々を、「第1試験」及び「第2試験」の夫々と呼ぶ。
先ず、
図7〜
図9を参照して第1試験について説明し、次に、
図10を参照して第2試験について説明する。
【0051】
図7は、第1試験の方法の概略を説明する図である。
ワークWとしては、底面の半径R=10mmの円柱状の金属片が採用された。
本発明人らは、第1試験として、ワークスピンドル14(
図1)によりワークWを時計回り(
図7の矢印の方向)に回転させた状態でワークWの外周から中心に向かってx方向に切削工具24を移動させながら、位置制御a→ハイブリッド制御b→位置制御cの順で交互に制御方法を切り替えて、ワークWの端面を切削する試験を行った。
なお、位置制御a、ハイブリッド制御b、及び位置制御cの夫々の送り量(x方向の移動量)は、何れも3.3mmとされた。また、ここでいう位置制御a及び位置制御cとは、
図5において、サーボ制御可能な全周波数帯域で位置制御コントローラ65による位置制御を行うこと(何れの周波数帯域においても力制御コントローラ63による力制御を行わない)ことを意味する。
【0052】
図8は、第1試験の結果を示す図である。
図8(A)はワークWの実際の加工面の性状を示す図(写真)である。
図8(B)は表面粗さの比較結果を示す図(グラフ)である。
図8(B)において、縦軸は算術平均粗さRa[μm]を示している。
図8に示すように、ハイブリッド制御bを実行することによって、位置制御a,位置制御cを実行した場合と比較して、平均表面粗さRaを約70%程度まで大幅に減少させ、良好な加工面を得ることが可能になる。
【0053】
図9は、第1試験の結果として、切削力の周波数成分を示す図である。
図9(A)は、位置制御a,位置制御cが実行された際の切削力の振動についての、FFT(Fast Fourier Transform)解析結果、即ち周波数成分を示している。
図9(B)は、ハイブリッド制御bが実行された際の切削力の振動についての、FFT解析結果、即ち周波数成分を示している。
図9(A),
図9(B)において、横軸は周波数[Hz]を示し、縦軸はスペクトルを示す。
位置制御a,位置制御cで見られる10Hz並びに170Hz付近の大きな振動スペクトルが、ハイブリッド制御bが実行されることで飛躍的に減少していることがわかる。
【0054】
以上、
図7〜
図9を参照して第1試験について説明した。次に、
図10を参照して第2試験について説明する。
図10は、第2試験の結果を示す図である。
図10(A)は、各切り込み深さに対する最大高さ粗さRyを示す図(グラフ)である。
図10(A)において、横軸は切り込み深さ[μm]を示し、縦軸は最大高さ粗さRy[μm]を示している。
図10(B)は、各切り込み深さに対する算術平均粗さRaを示す図(グラフ)である。
図10(B)において、横軸は切り込み深さ[μm]を示し、縦軸は算術平均粗さRa[μm]を示している。
【0055】
本発明人らは、第2試験として、ワークスピンドル14(
図1)によりワークWを時計回りに回転させた状態でワークWの外周から中心に向かってx方向に切削工具24を移動させながら、ワークWの端面を切削していく過程で、びびり振動が発生する切り込み深さ(移動量z)を測定する試験を行った。
制御方法としては、位置制御と、ハイブリッド制御との夫々が採用された。位置制御は、第1試験の位置制御a,位置制御cと同様の制御である。ワークWとしては、底面の半径R=10mmの円柱状の金属片が採用された。
図10に示すように、位置制御では、切り込み深さが75μmの段階でびびり振動が発生したのに対して、ハイブリッド制御では、切り込み深さが、それよりも45μmも深い120μmの段階でびびり振動が発生した。
このように、ハイブリッド制御を用いることで、びびり振動の抑制効果が働き、その結果として、切り込み深さを延長すること(第2試験では45μm延長すること)が可能になる。
【0056】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0057】
例えば、上述の実施形態では、バンドパスフィルタ62及びバンドストップフィルタ64(
図5)が採用されたが、特にこれに限定されず、位置制御と力制御との周波数帯域を区分する機能を有する任意のもの(ソフトウェアとハードウェアとは問わない)を採用することができる。
【0058】
具体的には例えば、切削力推定信号のうち、直流成分を除く第1周波数帯域の成分信号を通過させる通過手段の一例として、上述の実施形態ではバンドパスフィルタ62が採用されていた。また、第1周波数帯域を遮断することで、第1周波数帯域を除く第2周波数帯域の成分信号を通過させる遮断手段の一例として、上述の実施形態ではバンドストップフィルタ64が採用されていた。
ここで、第1周波数帯域とは、力制御の対象となる周波数帯域であり、以下、「力制御帯域」と呼ぶ。また、第2周波数帯域とは、位置制御の対象となる周波数帯域であり、以下、「位置制御帯域」と呼ぶ。
つまり、力制御帯域は、上述の実施形態では1つの連続した周波数帯域(例えば5〜15Hz)とされたが、特にこれに限定されず、相互に離間する複数の周波数帯域からなるようにしてもよい。換言すると、力制御帯域は、1つに限定されず、複数の帯域とすることができる。
【0059】
例えば、
図11には、2つの力制御帯域が設けられた場合のコントローラ11の機能的構成例が示されている。即ち、
図11は、
図4のコントローラ11の機能的構成のうち、ハイブリッド制御を実行する場合の機能的構成を示す機能ブロック図であって、
図5とは異なる例を示す機能ブロック図である。
図11において、
図5と対応する箇所(機能ブロック、制御ブロック、及び変数等)には同一の符号が付してある。これらの説明については省略する。
【0060】
図11においては、切削力推定部61の出力と力制御コントローラ63の入力との間に、1つのバンドパスフィルタ62(
図5)の代わりに、2つのバンドパスフィルタ62−1,62−2が並列して設けられている。また、モータ21の出力(より正確には、Xステージ22のリニアエンコーダの出力)と位置制御コントローラ65の入力との間には、1つのバンドストップフィルタ64(
図5)の代わりに、2つのバンドストップフィルタ64−1,64−2が直列して設けられている。
【0061】
バンドパスフィルタ62−1は、切削力推定部61により推定された切削力Fcutの信号、即ち切削力推定信号のうち、所定の周波数帯域の成分信号FBPF1のみを通過させるフィルタである。
ここで、通過させる周波数帯域は、任意の設定が自在に可能とされているが、2つの力制御帯域のうちの1つの帯域(以下、「第1力制御帯域」と呼ぶ)、例えば2〜10Hzが設定されている。
即ち、切削力推定信号のうち、第1力制御帯域(例えば2〜10Hz)の成分信号FBPF1が、バンドパスフィルタ62−1から出力されて、力制御コントローラ63に供給される。
【0062】
バンドパスフィルタ62−2は、切削力推定信号のうち、所定の周波数帯域の成分信号FBPF2のみを通過させるフィルタである。
ここで、通過させる周波数帯域は、任意の設定が自在に可能とされているが、2つの力制御帯域のうちの第1力制御帯域以外の帯域(以下、「第2力制御帯域」と呼ぶ)、例えば所定の高周波帯域が設定されている。
即ち、切削力推定信号のうち、第2力制御帯域(例えば高周波帯域)の成分信号FBPF2が、バンドパスフィルタ62−2から出力されて、力制御コントローラ63に供給される。
【0063】
力制御コントローラ63は、切削力の指令値Fcmdに対する、切削力のフィードバック値の誤差が無くなるように制御する。
ここで、
図11の例では、切削力のフィードバック値としては、切削力推定信号のうち、第1力制御帯域(例えば2〜10Hz)の成分信号FBPF1と、第2力制御帯域(例えば高周波帯域)の成分信号FBPF2が入力される。
これにより、第1力制御帯域(例えば2〜10Hz)及び第2力制御帯域(例えば高周波帯域)の夫々において力制御が可能になる。その結果、第1力制御帯域の力制御により、びびり振動の抑制効果が発揮すると共に、第2力制御帯域の力制御により、安定した加工の実現、切り屑排出性の向上、切削力低下等の各種効果が発揮すると期待される。
【0064】
なお、力制御帯域の数は、1つ(
図5)や2つ(
図11)に特に限定されず、3つ以上でもよい。さらに、力制御帯域が複数存在する場合には、全ての帯域を力制御に用いる必要は特になく、任意のタイミングで、複数の力制御帯域のうち任意の単体或いは任意の2以上の組み合せを選択的に用いることができる。
【0065】
バンドストップフィルタ64−1は、Xステージ22の検出された位置xを示す位置情報の信号、即ち検出位置信号のうち、所定の周波数帯域の成分を遮断し、それ以外の周波数帯域の成分信号xBSF1を通過させるフィルタである。
なお、
図5の説明で上述したように、検出位置信号は、
図11では(モデル上では)モータ21から直接出力されるように図示されているが、実際にはXステージ22(
図1等)の図示せぬリニアエンコーダから出力されて、コントローラ11のバンドストップフィルタ64−1に入力される。
バンドストップフィルタ64−1において遮断させる周波数帯域は、任意の設定が自在に可能とされているが、ここでは、2つの力制御帯域のうち第1力制御帯域(例えば2〜10Hz)が設定されている。
即ち、検出位置信号のうち、第1力制御帯域(例えば2〜10Hz)の成分が遮断され、それ以外の周波数帯域(例えば、直流成分から2Hzまでの周波数帯域と、10Hzを超えた周波数帯域)の成分信号xBSF1がバンドストップフィルタ64−1から出力されて、バンドストップフィルタ64−2に供給される。
【0066】
バンドストップフィルタ64−2は、検出位置信号の成分信号xBSF1のうち、所定の周波数帯域の成分を遮断し、それ以外の周波数帯域の成分信号xBSF2を通過させるフィルタである。
遮断させる周波数帯域は、任意の設定が自在に可能とされているが、ここでは、2つの力制御帯域のうち第2力制御帯域(例えば高周波帯域)が設定されている。
即ち、検出位置信号の成分信号xBSF1(既に第1力制御帯域(例えば2〜10Hz)の成分が既に遮断されている信号xBSF1)から、さらに第2力制御帯域(例えば高周波帯域)の成分が遮断される。その結果、それ以外の周波数帯域(例えば、直流成分から2Hzまでの周波数帯域と、10Hzを超えた範囲のうち高周波帯域を除く周波数帯域)の成分信号xBSF2が、バンドストップフィルタ64−2から出力されて、位置制御コントローラ65に供給される。
【0067】
位置制御コントローラ65は、位置xの指令値xcmdに対する、位置xのフィードバック値の誤差が無くなるように制御する。
ここで、位置xのフィードバック値としては、検出位置信号のうち、第1力制御帯域(例えば2〜10Hz)及び第2力制御帯域(例えば高周波帯域)の成分以外の周波数帯域(例えば、直流成分から2Hzまでの周波数帯域と、10Hzを超えた範囲のうち高周波帯域を除く周波数帯域)の成分信号xBSF2が入力される。
これにより、第1力制御帯域(例えば2〜10Hz)及び第2力制御帯域(例えば高周波帯域)の成分以外の周波数帯域(例えば、直流成分から2Hzまでの周波数帯域と、10Hzを超えた範囲のうち高周波帯域を除く周波数帯域)における位置制御が可能になる。つまり、力制御と干渉が無い位置制御が可能になる。また、直流成分も位置制御の対象になっているので、ハイブリッド制御の終了時刻を確定することも可能になる。
【0068】
このように、
図11の例では、バンドパスフィルタ62−1,62−2及びバンドストップフィルタ64−1,64−2が、位置制御コントローラ65と力制御コントローラ63の夫々の制御対象となる周波数帯域を区分する機能を有している。
【0069】
また例えば、上述のコントローラ11による一連の処理は、本実施形態では、主にCPU31(
図4)により実行される処理としたが、特にこれに限定されず、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、上述した各部や各手段による一連の処理を全体として実行できる機能が工作機械システム1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのように各機能ブロックを構成するのかについては特に限定されない。即ち、各機能ブロックは、
図5や
図7に示す形態に限定されず、
図4又は
図7に示す機能ブロックを任意に分割又は組み合わせしたり、任意の機能の削除又は付加をすることができる。また、各機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0070】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コントローラ11等のコンピュータに対して、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0071】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア51(
図4)により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディア51は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている
図4のROM32や、ハードディスク等の記憶部38で構成される。
【0072】
また例えば、工作機械(本体)として、上述の実施形態では、切削工具24を有するXZステージ13と、ワークスピンドル14とが採用されたが、特にこれに限定されない。
また例えば、上述の実施形態では、Xステージ22用のリニアモータたるモータ21のみが駆動手段として図示されたが、上述したように、Zステージ23用のリニアモータやワークスピンドル14用の通常(回転方向に動力を発する)モータもまた駆動手段に含まれる。これらのモータは、駆動手段の一例であって、その他駆動力を発生させる任意の機器を駆動手段として採用することができる。
即ち、駆動手段の駆動力により、ワークに対する相対的な位置を移動させると共に加工力を発生させて当該ワークを加工する加工手段を備える工作機械一般に対して、ハイブリッド制御を適用することが可能である。
ここで、加工手段の「ワークに対する相対的な位置を移動させる」とは、上述の実施形態のように、ワークWを固定して切削工具24(加工手段一例)側を移動させることの他、加工手段を固定してワーク側を移動させたり、加工手段とワークとの両者を移動させることを含む広義な概念である。
また、「加工」とあるように、加工手段によるワークの加工方法は、切削に特に限定されず、加工手段の加工力(上述の実施形態では切削力)を用いるもの、例えば研削・研磨等でもよい。
【0073】
以上まとめると、本発明が適用される工作機械制御装置は、以下のような構成を有すれば足り、各種各様の実施形態を採用することができる。
即ち、本発明が適用される工作機械制御装置は、駆動手段(例えば
図1等のモータ21)の駆動力により、ワーク(例えば
図1等のワークW)に対する相対的な位置を移動させると共に加工力(例えば上述の実施形態でいう切削力)を発生させて当該ワークを加工する加工手段(例えば
図1等の切削工具24)を備える工作機械に対して、制御を実行する工作機械制御装置である。
そして、本発明が適用される工作機械制御装置は、次のような各手段、即ち、位置制御手段(例えば
図5の位置制御コントローラ65)と、加工力推定手段(例えば
図5の電流補償部67)と、力制御手段(例えば
図5の力制御コントローラ63)と、周波数帯域区分手段(例えば
図5のバンドパスフィルタ62とバンドストップフィルタ64)とを備える。
位置制御手段は、前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置の検出結果を示す検出位置信号に基づいて、前記加工手段の前記ワークに対する相対的な位置を制御する。
加工力推定手段は、前記駆動手段の駆動力を発生させる駆動信号の指令信号(例えば上述の実施形態の参照電流Iref)及び前記検出位置信号に基づいて前記駆動手段への外乱を推定し、推定した当該外乱から摩擦力を減算することにより、前記加工力の推定結果を示す加工力推定信号(例えば上述の実施形態でいう切削力推定信号)を生成する。
力制御手段は、前記加工力推定信号に基づいて、前記加工手段の加工力を制御する。
周波数帯域区分手段は、前記位置制御手段と前記力制御手段の夫々の制御対象となる周波数帯域を区分する。
【0074】
これにより、次のような効果を奏することができる。
即ち、従来のNC工作機械に対する一般的な制御としては、全周波数帯域を位置フィードバックで制御する位置制御が採用されていた。このような位置制御は、高速かつ高精度な加工が可能となると共に、加工終了時刻がわかるという利点を有しているが、一方で、工具加工物への過負荷が生ずるという欠点を有している。当該欠点により、びびり振動が発生し易くなっている。
また、研究開発レベルであるが、全帯域を力フィードバックで制御する力制御も従来から存在した。このような力制御は、工具加工物への過負荷を抑制し得る利点を有しているが、一方で、加工終了時刻が予測不能でるため生産工程(特に切削)に適用すること自体困難であるという欠点を有している。
これに対して、本発明が適用される工作機械制御装置は、位置制御手段と力制御手段の夫々の制御対象となる周波数帯域を区分することによって、位置制御と力制御とを同時に並行してリアルタイムに実行する制御、即ちハイブリッド制御を実現することができる。
この周波数帯域の区分手法は特に限定されない。そこで例えば、直流成分を含むような所定の周波数帯域を位置制御に割り当てることで、力制御の欠点(終了時刻を確定できない)を解消することができる。また例えば、切削力の振動を抑制できるような特定の周波数帯域を力制御に割り当てることで、位置制御の欠点(工具加工物への過負荷及びびびり振動の発生)を解消することができる。
つまり、ハイブリッド制御を実現することで、位置制御と力制御の相互の欠点を補完すると共に相互の利点を高め合うことができる。
さらに、ハイブリッド制御は、コントローラ側のソフトウェアを変更するだけで実現可能であり、加工中の位置及び加工力をフィードバックして制御することで、びびり振動をリアルタイムに抑制するものである。つまり、特許文献1等従来のびびり振動の抑制手法が有していた欠点、即ち、加工後に次回以降の加工のための切削条件を変更する(工作機械本体側の変更も必要になる)ことによる、非リアルタイムかつ非効率な加工になるという欠点を解消することもできる。
【0075】
さらに、本発明が適用される工作機械制御装置は、加工力推定手段を有しているので、力制御のための外部機器は特に不要である。つまり、制御対象としては、付加的なセンサやピエゾアクチュエータといった新たな外部機器を取り付けることなく従来のNC工作機械をそのまま流用することが可能である。
【0076】
このようにして、本発明が適用される工作機械制御装置は、付加的なセンサやピエゾアクチュエータといった新たな外部機器を用いずに、加工中に発生するびびり振動をリアルタイムに抑制することが可能になる。
【0077】
さらに、駆動手段の外乱を補償してシステムのロバスト性を高めたいという要望がある場合、本発明が適用される工作機械制御装置は、次のような補償手段(例えば
図5の電流補償部67)を備えるようにしてもよい。
補償手段は、駆動手段の駆動力を発生させる駆動信号の指令信号(例えば上述の実施形態の参照電流Iref)及び検出位置信号に基づいて駆動手段への外乱を推定し、推定した外乱に基づいて、駆動信号の指令信号を補償する補償信号を生成する。