(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の空調システムでは、空調対象ゾーン内を冷房する際には、涼風運転モードにおいてファンコイルユニットを停止し送風ファンを作動させることで、空調対象ゾーン内に送風し快適性を維持することができるものの、暖房を行う際には、送風ファンを作動させるだけでは快適性を維持することは困難である。
また、停止運転モードや涼風運転モードの実行時において、ファンコイルユニットが停止している状態では、目標温度に対して空調対象ゾーン内の温度が変動するが、このような状態で空調対象ゾーン内に人が立ち入ると、当該人の代謝状態等によっては温冷感が悪化し快適性を損なう虞がある。即ち、空調対象ゾーン内に人が立ち入ってから冷房運転モードに移行したとしても、空調対象ゾーン内が目標温度に収束するまでに時間遅れが生じるため、当該人の温冷感の悪化及び快適性の低下を防止することは困難となる。
【0006】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、ゾーン空調手段により空調対象ゾーンを空調する際、省エネルギー化を実現しながら、しかも、より確実に快適性を維持することのできる空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の特徴構成は、
空調対象ゾーンを空調するゾーン空調手段と、
前記空調対象ゾーンの人の存在、及び、
前記空調対象ゾーンの近傍ゾーンにおける人の存在を検知する人検知手段とを設け、
前記人検知手段が前記近傍ゾーンにおける人の存在を検知したとき、無人用の準備空調運転を前記ゾーン空調手段に実行させ、且つ、
前記人検知手段が
前記空調対象ゾーンにおける人の存在を検知したとき、有人用の本空調運転を
前記ゾーン空調手段に実行させる制御手段を設け
、
前記制御手段は、温度調整と換気のうち、前記準備空調運転では温度調整を前記ゾーン空調手段に実行させ、且つ、前記本空調運転では温度調整と換気とを前記ゾーン空調手段に実行させ、
前記ゾーン空調手段を、前記空調対象ゾーンに対応して配備されたファンコイルユニットと、前記空調対象ゾーンに送風する送風ファンと、前記空調対象ゾーンを換気する換気手段とから構成し、
前記制御手段は、前記人検知手段が、前記空調対象ゾーンの人の存在、及び、前記近傍ゾーンにおける人の存在のいずれも検知していないとき、前記ファンコイルユニットを作動させる第一運転状態と、前記ファンコイルユニットを停止して前記送風ファンを作動させる第二運転状態と、前記ファンコイルユニット及び前記送風ファンを停止する停止状態とを順次に切り替える切替運転を前記ゾーン空調手段に実行させるところにある。
【0008】
本発明によれば、人検知手段が空調対象ゾーンにおける人の存在を検知したときには、制御手段は有人用の本空調運転をゾーン空調手段に実行させるので、空調対象ゾーン内を確実に空調でき、快適性を維持することができる。
一方で、人検知手段が空調対象ゾーンに隣接する近傍ゾーンにおける人の存在を検知し且つ空調対象ゾーンで人の存在を検知していないときには、制御手段は温度・湿度・風速や空気清浄度等の配慮が不要で、且つ、有人用の本空調運転と比較して省エネルギーな無人用の準備空調運転をゾーン空調手段に実行させる。これにより、空調対象ゾーン内における人の不在時の省エネルギー化を図ることができ、しかも、近傍ゾーンに存在する人が空調対象ゾーン内に移動する前に、予め空調対象ゾーン内をある程度空調し(無人用の準備空調運転をし)、空調対象ゾーン内に人が移動した後に本空調運転を行った際には、より迅速に目標温度に収束させることが可能となる。従って、当該人の温冷感の悪化及び快適性の低下をより確実に防止することができる。
よって、ゾーン空調手段により空調対象ゾーンを空調する際、空調対象ゾーン内における人の在・不在の状況に応じてゾーン空調手段を適切に運転することができ、省エネルギー化を実現しながら、しかも、より確実に快適性を維持することができる。
【0009】
【0010】
また、本発明によれば、準備空調運転では、空調対象ゾーン内に人が存在しない状態で、ゾーン空調手段が換気を行わずに温度調整を行うので、省エネルギー化を図ることができることに加えて、空調対象ゾーン内を予め温度調整することができ、空調対象ゾーン内に人が移動した後に本空調運転を行った際に、より迅速に目標温度に収束させることが可能となる。この場合、換気により空気清浄度等を調整しなくても、空調対象ゾーン内には人が存在していないので特段の問題は発生しない。
一方で、本空調運転では、準備空調運転において空調対象ゾーン内が予め温度調整されているので、温度調整を行うことで、より迅速に目標温度に収束できることに加えて、換気を行うことで、空調対象ゾーン内の空気清浄度を適切に調整することができ、空調対象ゾーン内に存在する人の快適性の低下を防止することができる。
さらに、本発明によれば、人検知手段が、空調対象ゾーンの人の存在、及び、近傍ゾーンにおける人の存在のいずれも検知していないときには、制御手段が、ファンコイルユニットを作動させる第一運転状態と、ファンコイルユニットを停止して送風ファンを作動させる第二運転状態と、ファンコイルユニット及び送風ファンを停止する停止状態とを順次に切り替える切替運転を、ゾーン空調手段に実行させる。これにより、第一運転状態ではファンコイルユニットにより空調対象ゾーン内を確実に空調することができ、第二運転状態では送風ファンの送風(気流)により体感温度を変化させ快適性を維持しつつ省エネルギー化を図ることができ、さらに、停止状態では省エネルギー化を図ることができる。
【0011】
本発明
においては、
前記制御手段は、前記空調対象ゾーンを冷房する冷房モードでは、前記準備空調運転として、前記ファンコイルユニットと前記送風ファンを作動させて前記換気手段を停止する空調運転を前記ゾーン空調手段に実行させ、且つ、前記本空調運転として、前記ファンコイルユニットと前記送風ファンと前記換気手段を作動させる空調運転を前記ゾーン空調手段に実行させる
と好適である。
【0012】
【0013】
本構成によれば、上記の切替運転において空調対象ゾーンを冷房する冷房モードの実行中に、人検知手段が近傍ゾーンにおいて人の存在を検知したときには、検知前の運転状態に拘らず、準備空調運転としてファンコイルユニットと送風ファンを作動させて換気手段を停止する空調運転をゾーン空調手段に実行させて、空調対象ゾーン内における人の不在時の省エネルギー化を図ることができるとともに、近傍ゾーンに存在する人が空調対象ゾーン内に移動する前に、送風ファンによって空調対象ゾーン内に発生させた気流により空気を循環させつつ、予め空調対象ゾーン内をある程度冷房し(無人用の準備空調運転をし)、空調対象ゾーン内に人が移動した後に本空調運転を行った際には、より迅速に目標温度に収束させることが可能となる。従って、当該人の温冷感の悪化及び快適性の低下をより確実に防止することができる。
同様に、冷房モードの実行中に、人検知手段が空調対象ゾーンにおいて人の存在を検知したときは、検知前の運転状態に拘らず、本空調運転としてファンコイルユニットと送風ファンと換気手段とを作動させる空調運転をゾーン空調手段に実行させて、空調対象ゾーン内における温度調整・送風・換気(空気清浄度の調整)を確実に行うことができ、快適性を維持することができる。
【0014】
本発明
においては、
前記制御手段は、前記空調対象ゾーンを暖房する暖房モードでは、前記準備空調運転として、前記換気手段を停止して前記ファンコイルユニットと前記送風ファンを作動させる空調運転を前記ゾーン空調手段に実行させ、且つ、前記本空調運転として、前記送風ファンを停止してファンコイルユニットと換気手段を作動させる空調運転を前記ゾーン空調手段に実行させる
と好適である。
【0015】
【0016】
本構成によれば、上記の切替運転において空調対象ゾーンを暖房する暖房モードの実行中に、人検知手段が近傍ゾーンにおいて人の存在を検知したときには、検知前の運転状態に拘らず、準備空調運転として換気手段を停止してファンコイルユニットと送風ファンを作動させる空調運転をゾーン空調手段に実行させて、空調対象ゾーン内における人の不在時の省エネルギー化を図ることができるとともに、近傍ゾーンに存在する人が空調対象ゾーン内に移動する前に、送風ファンによって空調対象ゾーン内に発生させた気流により空気を循環させつつ、予め空調対象ゾーン内をある程度暖房し(無人用の準備空調運転をし)、空調対象ゾーン内に人が移動した後に本空調運転を行った際には、より迅速に目標温度に収束させることが可能となる。従って、当該人の温冷感の悪化及び快適性の低下をより確実に防止することができる。
同様に、暖房モードの実行中に、人検知手段が空調対象ゾーンにおいて人の存在を検知したときは、検知前の運転状態に拘らず、本空調運転として送風ファンを停止してファンコイルユニットと換気手段とを作動させる空調運転をゾーン空調手段に実行させて、空調対象ゾーン内における温度調整・換気(空気清浄度の調整)を確実に行うことができ、快適性を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る空調システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、空気調和設備Wは複数の空調システム(例えば、第1空調システムU1〜第3空調システムU3)を備え、外部空間(図示せず)から区画される空調対象空間S内を所定の目標温度とすべく空調動作するように構成されている。空調対象空間S内は複数のゾーン(例えば、第1ゾーンS1〜第3ゾーンS3)に領域分けされ、各ゾーンS1〜S3に対応する状態で設けられた各空調システムU1〜U3が各ゾーンS1〜S3を空調するように構成されている。
【0019】
空調対象空間Sとしては、例えば、美術館や博物館等の室内空間を例示することができ、各ゾーンS1〜S3同士が連通する状態で配置されて、入口(図示せず)から出口(図示せず)に向かって直列に第1ゾーンS1、第2ゾーンS2、第3ゾーンS3の順に配置されており、入口を介して室内空間に立ち入った人が第1ゾーンS1、第2ゾーンS2、第3ゾーンS3の順に進行し、出口を介して退出できるように、基本的な歩行順路が設定されている。
【0020】
空調対象空間Sの外部空間には換気装置Rが設けられ、当該換気装置Rにより、外部空間の空気を空調対象空間S内に導入するとともに、空調対象空間S内の空気を外部空間に排出可能に構成されている。具体的には、換気装置Rは、導入ファン(図示せず)の作動により、メイン供給管1から分岐する第1供給管2、第2供給管3及び第3供給管4の夫々に設けられた導入量可変バルブ2A〜4Aを介して、第1ゾーンS1、第2ゾーンS2及び第3ゾーンS3の夫々に対して外部空間の空気を供給可能に構成されているとともに、メイン排出管5において第1ゾーンS1、第2ゾーンS2及び第3ゾーンS3の夫々に対応する位置に開口形成された第1排出口6〜第3排出口8を介して、空調対象空間S内の空気を外部空間に排出可能に構成されている。なお、各導入量可変バルブ2A〜4Aの作動は後述する制御手段Cからの指令により制御され、作動の開始・停止及び各ゾーンS1〜S3に導入する空気の量の調整等を行うことができる。
【0021】
第1ゾーンS1の天井部(図示せず)には、ファンa及び熱交換部bを備えた第1ファンコイルユニット9が設けられ、第1ファンコイルユニット9は、ファンaの作動により吸引口9aを介して吸引した第1ゾーンS1内の空気を、熱交換部bに通流する熱媒(図示せず)と熱交換させて温度調整した後、温度調整した空気を供給口9bを介して第1ゾーンS1内に供給するように構成されている。
第2ゾーンS2の天井部及び第3ゾーンS3の天井部にも、夫々同様に、第2ゾーンS2内の空気を温度調整後に第2ゾーンS2内に供給する第2ファンコイルユニット10、第3ゾーンS3内の空気を温度調整後に第3ゾーンS3内に供給する第3ファンコイルユニット11が設けられている。なお、各ファンコイルユニット9〜11の運転は制御手段Cからの指令により制御され、作動の開始・停止及び各ゾーンS1〜S3に導入する空気の温度や供給量の調整等を行うことができる。
【0022】
第1ゾーンS1の天井部における下面側には、第1ゾーンS1内の人の在・不在を検知可能な第1人感センサH1と、第1ゾーンS1内の空気の温度を検知可能な第1温度センサT1と、第1ゾーンS1内の空気を送風し攪拌可能な第1送風ファンF1とが設けられている。同様に、第2ゾーンS2の天井部における下面側にも、第2人感センサH2、第2温度センサT2及び第2送風ファンF2が設けられ、第3ゾーンS3の天井部における下面側にも、第3人感センサH3、第3温度センサT3及び第3送風ファンF3が設けられている。なお、各人感センサH1〜H3は、赤外線やCCDカメラを用いた公知の人感センサにより構成され、対応する各ゾーンS1〜S3内における人の在・不在の情報を制御手段Cに対して出力可能に構成されている。各温度センサT1〜T3も同様に、対応する各ゾーンS1〜S3内における温度情報を制御手段Cに対して出力可能に構成されている。また、各送風ファンF1〜F3の運転は制御手段Cからの指令により制御され、作動の開始・停止、回転数の調整等を行うことができる。
【0023】
つまり、各空調システムU1〜U3のうちの一つの空調システムである第2空調システムU2に着目して説明すると、第2ファンコイルユニット10が第2ゾーン(空調対象ゾーン)S2に対応して配備されたファンコイルユニットとして機能し、第2送風ファンF2が第2ゾーン(空調対象空間)S2に送風する送風ファンとして機能し、更に、第2供給管3、第2導入量可変バルブ3A及び第2排出口7が第2ゾーン(空調対象空間)S2を換気する換気手段として機能することで、これら構成が第2ゾーン(空調対象ゾーン)S2を空調する第2空調システムU2のゾーン空調手段を構成する。なお、第1空調システムU1及び第3空調システムU3の場合も同様の構成がゾーン空調手段を構成する。
【0024】
また、第2空調システムU2に着目した際、第2人感センサH2が第2ゾーン(空調対象ゾーン)S2の人の存在を検知し、第3人感センサH3が第2ゾーン(空調対象ゾーン)S2に対する近傍ゾーンである第3ゾーンS3の人の存在を検知する人検知手段として機能する。即ち、第2空調システムU2に関して言えば、入口を介して立ち入った人が第1ゾーンS1、第2ゾーンS2、第3ゾーンS3の順に進行するように基本的な歩行順路が設定されているため、第2ゾーンS2が空調対象ゾーンに設定され、第2ゾーンS2の進行方向前側である第3ゾーンS3が近傍ゾーンに設定される(
図4参照)。
なお、第1空調システムU1に着目した際、第1人感センサH1が第1ゾーン(空調対象ゾーン)S1の人の存在を検知し、第2人感センサH2が第1ゾーン(空調対象ゾーン)S1に対する近傍ゾーンである第2ゾーンS2の人の存在を検知する人検知手段として機能し、第1ゾーンS1が空調対象ゾーンに設定され、第2ゾーンS2が近傍ゾーンに設定される(
図3参照)。更に、第3空調システムU3に着目した際、第3人感センサH3が第3ゾーン(空調対象ゾーン)S3の人の存在を検知する人検知手段として機能し、第3ゾーンS3が空調対象ゾーンに設定される(
図5参照)。
【0025】
制御手段Cは、演算部(図示せず)や記憶部(図示せず)を備えたコンピュータにて構成され、各種の制御プログラムを実行可能に構成されて、ゾーン空調手段、送風ファン及び換気手段その他の空気調和設備Wが備える機器の運転を制御可能に構成されている。
【0026】
次に、制御手段Cの制御動作(第1空調システムU1〜第3空調システムU3を備えた空気調和設備Wの運転方法)について説明する。
【0027】
図6に示すように、制御手段Cは、ユーザ等からの運転開始の指令が入力されると、空気調和設備Wに切替運転を実行させる(♯1、♯2)。
具体的には、
図2に示すように、制御手段Cは、各ファンコイルユニット9〜11を作動させる第一運転状態と、各ファンコイルユニット9〜11を停止して各送風ファンF1〜F3を作動させる第二運転状態と、各ファンコイルユニット9〜11及び各送風ファンF1〜F3を停止する停止状態とを順次に切り替える切替運転を実行させる。なお、切替運転の際には、制御手段Cは、換気装置Rを作動させるが、各導入量可変バルブ(換気手段)2A〜4Aの作動は停止させる。
【0028】
また、切替運転の際には、制御手段Cは、例えば、冷房モードにおいて目標温度が26℃に設定されると、各温度センサT1〜T3にて検出される温度が26℃となるまで第一運転状態を実行させ、当該温度が26℃になると、第一運転状態から第二運転状態に切替える。その後、当該温度が27℃となるまで第二運転状態を実行させ、当該温度が27℃となると、第二運転状態から停止状態に切替える。そして、当該温度が28℃となるまで停止状態を実行させ、当該温度が28℃となると、停止状態から第一運転状態に切替える。この切替運転は、基本的に、第1ゾーンS1の第1人感センサH1において人の存在が検知されるまで実行される(♯3)。これにより、第一運転状態では各ファンコイルユニット9〜11により各ゾーンS1〜S3内を確実に空調することができ、第二運転状態では各送風ファンF1〜F3の送風(気流)により体感温度を変化させ快適性を維持しつつ省エネルギー化を図ることができ、さらに、停止状態では省エネルギー化を図ることができる。
【0029】
図3に示すように、第1ゾーンS1の第1人感センサH1において人の存在が検知されると(♯3:Yes)、制御手段Cは、検知前の運転状態に拘らず、第1ファンコイルユニット
9、第1送風ファンF1及び第1導入量可変バルブ2Aを作動させて、第1ゾーンS1を冷房する本空調運転を実行させ、第2ファンコイルユニット
10及び第2送風ファンF2を作動させ且つ第2導入量可変バルブ3Aの作動を停止させて、第2ゾーンS2を冷房する準備空調運転を実行させる(♯4)。なお、制御手段Cは、第3ゾーンS3に関しては、上述の切替運転を継続して実行させる(ステップ♯4)。
一方で、第1ゾーンS1の第1人感センサH1において人の存在が検知されない場合には(♯3:No)、♯2に戻り、制御手段Cは切替運転を継続して実行させる(♯2)。
【0030】
その後、第1人感センサH1において人の存在が検知されず、且つ、第2ゾーンS2の第2人感センサH2において人の存在が検知されると(♯5:Yes)、制御手段Cは、検知前の運転状態に拘らず、第2ファンコイルユニット
10、第2送風ファンF2及び第2導入量可変バルブ3Aを作動させて、第2ゾーンS2を冷房する本空調運転を実行させ、第3ファンコイルユニット
11及び第3送風ファンF3を作動させ且つ第3導入量可変バルブ4Aの作動を停止させて、第3ゾーンS3を冷房する準備空調運転を実行させる(♯6)。なお、制御手段Cは、第1ゾーンS1に関しては、上述の切替運転を実行させる(♯6)。
一方で、第2人感センサH2において人の存在が検知されず、且つ、第1人感センサH1において人の存在が検知されたままの状態で(♯5:No)、所定時間経過すると(♯7:Yes)、制御手段Cは、第1ゾーンS1に関しては、本空調運転から有人用切替運転に運転状態を変更して有人用切替運転を実行させ(♯8)、♯5に戻る。所定時間経過していない場合には(♯7:No)、♯4に戻り、制御手段Cは、第1ゾーンS1を冷房する本空調運転、第2ゾーンS2を冷房する準備空調運転を実行させ、第3ゾーンS3に関しては切替運転を継続して実行させる(♯4)。
なお、有人用切替運転の際には、制御手段Cは、第1送風ファンF1及び第1導入量可変バルブ2Aを作動させ、第1ファンコイルユニット9を上記切替運転と同様に作動させる。即ち、冷房モードにおいて目標温度が26℃に設定されると、制御手段Cは、第1ファンコイルユニット9を、第1温度センサT1にて検出される温度が26℃となるまで作動させ、当該温度が26℃になると作動を停止させて、当該温度が28℃となるまで停止状態を維持させ、当該温度が28℃となると、停止状態から作動状態に切替える。
【0031】
続いて、第2人感センサH2において人の存在が検知されず、且つ、第3ゾーンS3の第3人感センサH3において人の存在が検知されると(♯9:Yes)、制御手段Cは、検知前の運転状態に拘らず、第3ファンコイルユニット
11、第3送風ファンF3及び第3導入量可変バルブ4Aを作動させて、第3ゾーンS3を冷房する本空調運転を実行させる(♯10)。なお、制御手段Cは、第1ゾーンS1及び第2ゾーンS2に関しては、上述の切替運転を実行させる(♯10)。
一方で、第3人感センサH3において人の存在が検知されず、且つ、第2人感センサH2において人の存在が検知されたままの状態で(♯9:No)、所定時間経過すると(♯11:Yes)、制御手段Cは、第2ゾーンS2に関しては、本空調運転から有人用切替運転に運転状態を変更して有人用切替運転を実行させ(♯12)、♯9に戻る。所定時間経過していない場合には(♯11:No)、♯6に戻り、制御手段Cは、第2ゾーンS2を冷房する本空調運転、第3ゾーンS3を冷房する準備空調運転を実行させ、第1ゾーンS1に関しては切替運転を継続して実行させる(♯6)。
なお、♯12の有人用切替運転は、♯8と同様であるので説明を省略するが、制御手段Cは、第2送風ファンF2及び第2導入量可変バルブ3Aを作動させ、第2ファンコイルユニット10を上記切替運転と同様に作動させる。
【0032】
そして、第3人感センサH3において人の存在が検知されなくなって(♯13:Yes)、運転停止が指令されているときには(♯14:Yes)、制御手段Cは空気調和設備Wの運転を停止する。
一方で、第3人感センサH3において人の存在が検知されたままの状態で(♯13:No)、所定時間経過すると(♯15:Yes)、制御手段Cは、第3ゾーンS3に関しては、本空調運転から有人用切替運転に運転状態を変更して有人用切替運転を実行させ(♯16)、♯13に戻る。所定時間経過していない場合には(♯15:No)、♯10に戻り、制御手段Cは、第3ゾーンS3を冷房する本空調運転を実行させ、第1ゾーンS1及び第2ゾーンS2に関しては切替運転を継続して実行させる(♯10)。
なお、♯16の有人用切替運転は、♯8及び♯12と同様であるので説明を省略するが、制御手段Cは、第3送風ファンF3及び第3導入量可変バルブ4Aを作動させ、第3ファンコイルユニット11を上記切替運転と同様に作動させる。
他方で、第3人感センサH3において人の存在が検知されなくなって(♯13:Yes)、運転停止が指令されていないときには(♯14:No)、♯2に戻り、制御手段Cは第1ゾーンS1〜第3ゾーンS3に関して切替運転を実行させる(♯2)。
【0033】
よって、切替運転において各ゾーンS1〜S3を冷房する冷房モードの実行中に、各人感センサH1〜H3が近傍ゾーンとして設定されるゾーンにおいて人の存在を検知したときには、検知前の運転状態に拘らず、制御手段Cが、準備空調運転として各ファンコイルユニット9〜11と各送風ファンF1〜F3を適宜作動させて各導入量可変バルブ2A〜4Aの作動を停止する空調運転を実行させて、空調対象ゾーンとして設定されるゾーン内における人の不在時の省エネルギー化を図ることができるとともに、近傍ゾーンに存在する人が空調対象ゾーン内に移動する前に、各送風ファンF1〜F3によって空調対象ゾーン内に発生させた気流により空気を循環させつつ、予め空調対象ゾーン内をある程度冷房し(無人用の準備空調運転をし)、空調対象ゾーン内に人が移動した後に有人用の本空調運転を行った際には、より迅速に目標温度に収束させることが可能となる。従って、当該人の温冷感の悪化及び快適性の低下をより確実に防止することができる。
同様に、冷房モードの実行中に、各人感センサH1〜H3が空調対象ゾーンにおいて人の存在を検知したときは、検知前の運転状態に拘らず、本空調運転として各ファンコイルユニット9〜11と各送風ファンF1〜F3と各導入量可変バルブ2A〜4Aとを作動させる空調運転を実行させて、空調対象ゾーン内における温度調整・送風・換気(空気清浄度の調整)を確実に行うことができ、快適性を維持することができる。
【0034】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、制御手段Cが、各空調システムU1〜U3の各ファンコイルユニット9〜11を作動させて、空調対象空間S内が目標温度(例えば、26℃)となるように冷房する冷房モードを実行するように構成し、準備空調運転及び本空調運転において各ファンコイルユニット9〜11及び各送風ファンF1〜F3の両方を作動(例えば、第1ゾーンを冷房する際に、第1ファンコイルユニット9及び第1送風ファンF1の両方を作動)させるように構成した。
これに対して、制御手段Cが各ファンコイルユニット
9〜11を作動させて空調対象空間S内が目標温度となるように暖房する暖房モードを実行するように構成することもできる。この場合、制御手段Cは、準備空調運転として、各導入量可変バルブ2A〜4Aの作動を停止して各ファンコイルユニット
9〜11と各送風ファンF1〜F3を作動させる空調運転を実行させ、且つ、本空調運転として、各送風ファンF1〜F3を停止して各ファンコイルユニット9〜11と各導入量可変バルブ2A〜4Aを作動させる空調運転を実行させることができる。これにより、切替運転において各ゾーンS1〜S3を暖房する暖房モードの実行中に、各人感センサH1〜H3が近傍ゾーンとして設定されるゾーンにおいて人の存在を検知したときには、検知前の運転状態に拘らず、制御手段Cが、準備空調運転として各導入量可変バルブ2A〜4Aの作動を停止して各ファンコイルユニット9〜11と各送風ファンF1〜F3を適宜作動させる空調運転を実行させて、空調対象ゾーンとして設定されるゾーン内における人の不在時の省エネルギー化を図ることができるとともに、近傍ゾーンに存在する人が空調対象ゾーン内に移動する前に、各送風ファンF1〜F3によって空調対象ゾーン内に発生させた気流により空気を循環させつつ、予め空調対象ゾーン内をある程度暖房し(無人用の準備空調運転をし)、空調対象ゾーン内に人が移動した後に有人用の本空調運転を行った際には、より迅速に目標温度に収束させることが可能となる。従って、当該人の温冷感の悪化及び快適性の低下をより確実に防止することができる。
同様に、暖房モードの実行中に、各人感センサH1〜H3が空調対象ゾーンにおいて人の存在を検知したときは、検知前の運転状態に拘らず、本空調運転として各送風ファンF1〜F3を停止して各ファンコイルユニット9〜11と各導入量可変バルブ2A〜4Aを適宜作動させる空調運転を実行させて、空調対象ゾーン内における温度調整・換気(空気清浄度の調整)を確実に行うことができ、快適性を維持することができる。
【0035】
(2)上記実施形態では、ゾーン空調手段が各空調対象ゾーンに対応して配備されたファンコイルユニットを備えた構成について説明したが、ゾーン空調手段としては、各空調対象ゾーンを良好に空調(冷房・暖房)することができる構成であれば、空調可変風量制御装置(VAV)やエアコン等を備える構成とすることができる。
【0036】
(3)上記実施形態では、空調対象空間Sとして直列に連通する3つのゾーンS1〜S3とする例を示したが、その数は適宜増減することができ、各ゾーン同士を開閉扉を備えた壁等により区画するように構成することもできる。この際には、空調システムの数もゾーン数に合わせて適宜増減することができる。
また、上記実施形態では、空調対象空間Sにおいて第1ゾーンS1、第2ゾーンS2、第3ゾーンS3の順で歩行順路を設定したが、この逆の順で歩行順路を設定してもよく、空調対象空間Sとしての数を増加させる場合には、一つのゾーンが3つ以上のゾーンに連通するように構成して複数の歩行順路を設定したり、すべてのゾーンを直列に連通させて環状の歩行順路を設定することもできる。
更に、上記実施形態では、空調対象空間Sにおいて第1ゾーンS1、第2ゾーンS2、第3ゾーンS3の順で歩行順路を設定して、空調対象ゾーンに対して歩行順路における進行方向の前側に存在するゾーンを、空調対象ゾーンの近傍ゾーンとして設定したが、この構成に替えて或いは追加して、近傍ゾーンを、空調対象ゾーンに対して歩行順路における進行方向の後側に存在するゾーンに設定することもできる。このように設定すると、空調対象ゾーンに存在する人が、歩行順路における進行方向の前側に移動せずに、後側に移動した場合でも、移動先のゾーン(近傍ゾーン)を準備空調運転させておくことができる。
【0037】
(4)上記実施形態では、有人用の本空調運転(冷房モード時)として、各ファンコイルユニット9〜11による温度調整と各送風ファンF1〜F3による送風と各導入量可変バルブ2A〜4Aによる換気(空気清浄度の調整)とを行い、無人用の準備空調運転(冷房モード時)として、各ファンコイルユニット9〜11による温度調整と各送風ファンF1〜F3による送風とを行う構成としたが、有人用の本空調運転よりも省エネルギーな無人用の準備空調運転とすることのできる構成であれば、本空調運転及び準備空調運転の構成を適宜変更することができ、例えば、湿度調整等を追加で行う構成とすることもできる。
【0038】
(5)上記実施形態では、有人用の本空調運転を行っているゾーンにおいて、人感センサにより人が当該ゾーン内に所定時間存在(滞在)し続けていることが検知された場合には、当該ゾーンに関して、制御手段Cが本空調運転から有人用切替運転に運転状態を変更するように構成したが、このような変更をしないように構成することもできる。また、所定時間は適宜変更することもできる。
【0039】
(6)上記実施形態では、各人感センサH1〜H3において人を検知していない状態では、制御手段Cがすべてのゾーンのゾーン空調手段に対して切替運転を実行させるように構成したが、切替運転を行わずにすべてのゾーンのゾーン空調手段を停止する構成としてもよく、また、一つ以上のゾーンのゾーン空調手段についてのみ切替運転を行う構成としてもよい。
【0040】
(7)上記実施形態では、換気装置Rを外部空間に一つ設けて常時運転し、換気装置Rに接続される各導入量可変バルブ2A〜4Aを各ゾーンS1〜S3に対応するように配置したが、複数の換気装置Rを各ゾーンS1〜S3の夫々に配置するように構成してもよく、換気装置Rを省略する構成としてもよい。
【0041】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。