(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336279
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】電力制御システムの制御装置及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20180528BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/32
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-5899(P2014-5899)
(22)【出願日】2014年1月16日
(65)【公開番号】特開2015-135550(P2015-135550A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】園田 直毅
(72)【発明者】
【氏名】上浦 将来
【審査官】
貝塚 涼
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−189477(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/032776(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/065495(WO,A1)
【文献】
特開2012−210073(JP,A)
【文献】
特開2013−247726(JP,A)
【文献】
特開2004−180467(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0094173(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然エネルギーを利用して発電する発電手段と、前記発電手段と電力系統との間に接続された蓄電手段と、前記蓄電手段の充放電を制御する電力変換手段とを備える電力制御システムの制御装置であって、
前記蓄電手段が充放電可能な状態にあるか否かを判定する判定手段と、
買電価格と売電価格とを比較する価格比較手段と、
前記蓄電手段が充放電可能な状態にあり、かつ、前記売電価格が前記買電価格よりも安い場合に、買電電力及び売電電力が共にゼロとなるように、前記蓄電手段の充放電を行う第1モードを選択し、前記蓄電手段が少なくとも放電可能な状態にあり、かつ、前記売電価格が前記買電価格よりも高い場合に、前記発電手段の発電電力を前記電力系統に売電し、買電電力がゼロとなるように、前記蓄電手段の放電を行う第2モードを選択するモード選択手段と、
前記モード選択手段に基づいて選択されたモードに基づく充放電指令を作成する指令作成手段と
を具備する電力制御システムの制御装置。
【請求項2】
前記電力系統の電圧値と売電推奨値及び買電推奨値とが関連付けられた出力推奨情報を保有し、前記電力系統の電圧値に応じた売電推奨値又は買電推奨値を取得する出力推奨値取得手段を備え、
前記指令作成手段は、前記売電推奨値または前記買電推奨値を参照して、前記モードに従って前記蓄電手段の充放電制御指令を作成し、
前記売電推奨値は前記電力系統の電圧値が所定の下限値よりも小さい場合に設定され、前記買電推奨値は前記電力系統の電圧値が所定の上限値よりも大きい場合に設定されている請求項1に記載の電力制御システムの制御装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記蓄電手段の温度が所定の許容温度範囲内であり、かつ、残容量が所定の許容残容量範囲内にある場合に、前記蓄電手段が充放電可能な状態にあると判定する請求項1または請求項2に記載の電力制御システムの制御装置。
【請求項4】
前記指令作成手段は、前記蓄電手段の温度が前記許容温度範囲内であり、かつ、前記残容量が許容上限値を超えていた場合に、充電を禁止する請求項3に記載の電力制御システムの制御装置。
【請求項5】
前記指令作成手段は、前記蓄電手段の温度が前記許容温度範囲内であり、かつ、前記残容量が許容下限値未満であった場合に、放電を禁止する請求項3または請求項4に記載の電力制御システムの制御装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の制御装置を備える電力制御システム。
【請求項7】
自然エネルギーを利用して発電する発電手段と、前記発電手段と電力系統との間に接続された蓄電手段と、前記蓄電手段の充放電を制御する電力変換手段とを備える電力制御システムの制御方法であって、
前記蓄電手段が充放電可能な状態にあるか否かを判定する判定工程と、
買電価格と売電価格とを比較する価格比較工程と、
前記蓄電手段が充放電可能な状態にあり、かつ、前記売電価格が前記買電価格よりも安い場合に、買電電力及び売電電力が共にゼロとなるように、前記蓄電手段の充放電を行う第1モードを選択し、前記蓄電手段が少なくとも放電可能な状態にあり、かつ、前記売電価格が前記買電価格よりも高い場合に、前記発電手段の発電電力を前記電力系統に売電し、買電電力がゼロとなるように、前記蓄電手段の放電を行う第2モードを選択するモード選択工程と、
前記モード選択工程において選択されたモードに基づく充放電指令を作成する指令作成工程と
を有する電力制御システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御システムの制御装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを利用して発電する発電装置と、蓄電装置とを組み合わせた電力制御システムが知られている。
例えば、特許文献1には、発電装置及び蓄電池の放電により得られる電力を交流に変換して電力系統及び負荷に対して出力する機能と、電力系統からの交流電力を直流に変換して蓄電池に対して出力する機能とを有する電力変換装置を備え、売電買電電力を一定値に制御することで、電力系統に悪影響を与えないようにする電力制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−222908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の電力制御システムでは、電力系統の安定性が第一に考えられている。しかしながら、発電装置の所有者からは、発電電力を効率的に売ることによって、できるだけ多くの収益を得たいという要望がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電力系統の安定性だけではなく、発電装置の所有者の増益を見込むことのできる電力制御システムの制御装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様は、自然エネルギーを利用して発電する発電手段と、前記発電手段と電力系統との間に接続された蓄電手段と、前記蓄電手段の充放電を制御する電力変換手段とを備える電力制御システムの制御装置であって、前記蓄電手段が充放電可能な状態にあるか否かを判定する判定手段と、買電価格と売電価格とを比較する価格比較手段と、前記蓄電手段が充放電可能な状態にあり、かつ、前記売電価格が前記買電価格よりも安い場合に、買電電力及び売電電力が共にゼロとなるように、前記蓄電手段の充放電を行う第1モードを選択し、前記蓄電手段が少なくとも放電可能な状態にあり、かつ、前記売電価格が前記買電価格よりも高い場合に、前記発電手段の発電電力を前記電力系統に売電し、買電電力がゼロとなるように、前記蓄電手段の放電を行う第2モードを選択するモード選択手段と、前記モード選択手段に基づいて選択されたモードに基づく充放電指令を前記電力変換手段に出力する指令出力手段とを具備する電力制御システムの制御装置である。
【0007】
上記電力制御システムの制御装置によれば、蓄電手段が充放電可能な状態にある場合には、売電価格と買電価格とが比較され、買電価格が売電価格よりも高い場合にはできるだけ蓄電手段の充放電を用いて系統電力への売電電力及び系統電力からの買電電力をゼロとするような充放電制御を行い、売電価格が買電価格よりも高い場合には、可能な限り売電を行い、買電は行わないように蓄電装置の充放電制御を行う。このように、買電価格と売電価格の比較結果に応じて充放電モードを切り替えるので、効果的に売電を行い、収益を得ることができる。
上記売電電力とは、発電装置または蓄電池より電力系統に送電する電力のことであり、上記買電電力とは、電力系統から蓄電池または負荷に送電する電力のことである。
【0008】
上記電力制御システムの制御装置は、前記電力系統の電圧値と売電推奨値及び買電推奨値とが関連付けられた出力推奨情報を保有し、前記電力系統の電圧値に応じた売電推奨値又は買電推奨値を取得する出力推奨値取得手段を備え、前記指令
作成手段は、前記売電推奨値または前記買電推奨値を参照して、前記モードに従って前記蓄電手段の充放電制御指令を作成することとしてもよい。ここで、前記売電推奨値は前記電力系統の電圧値が所定の下限値よりも小さい場合に設定され、前記買電推奨値は前記電力系統の電圧値が所定の上限値よりも大きい場合に設定される。
【0009】
このように、系統電圧値に応じた買電推奨値または売電推奨値を加味して充放電制御指令を生成するので、系統電圧の安定にも寄与する充放電制御指令を作成することが可能となる。
【0010】
上記電力制御システムの制御装置において、前記判定手段は、例えば、前記蓄電手段の温度が所定の許容温度範囲内であり、かつ、残容量が所定の許容残容量範囲内にある場合に、前記蓄電手段が充放電可能な状態にあると判定する。
上記電力制御システムの制御装置において、前記指令
作成手段は、例えば、前記蓄電手段の温度が前記許容温度範囲内であり、かつ、前記残容量が許容上限値を超えていた場合に、充電を禁止する。これにより、残容量がさらに上昇することを防止することができる。また、上記電力制御システムの制御装置において、前記指令
作成手段は、例えば、前記蓄電手段の温度が前記許容温度範囲内であり、かつ、前記残容量が許容下限値未満であった場合に、放電を禁止する。これにより、残容量がさらに低下することを防止することができる。
【0011】
本発明の第2態様は、上記制御装置を備える電力制御システムである。
本発明の第3態様は、自然エネルギーを利用して発電する発電手段と、前記発電手段と電力系統との間に接続された蓄電手段と、前記蓄電手段の充放電を制御する電力変換手段とを備える電力制御システムの制御方法であって、
前記蓄電手段が充放電可能な状態にあるか否かを判定する判定工程と、買電価格と売電価格とを比較する価格比較工程と、前記蓄電手段が充放電可能な状態にあり、かつ、前記売電価格が前記買電価格よりも安い場合に、買電電力及び売電電力が共にゼロとなるように、前記蓄電手段の充放電を行う第1モードを選択し、前記蓄電手段が少なくとも放電可能な状態にあり、かつ、前記売電価格が前記買電価格よりも高い場合に、前記発電手段の発電電力を前記電力系統に売電し、買電電力がゼロとなるように、前記蓄電手段の放電を行う第2モードを選択するモード選択工程と、前記モード選択工程において選択されたモードに基づく充放電指令を作成する指令作成工程とを有する電力制御システムの制御方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発電装置の所有者の収益を増加させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの全体概略構成を示した図である。
【
図2】
図1に示した制御装置の機能ブロック図である。
【
図4】
図1におけるP1地点の電力の一例を示した図である。
【
図5】充電禁止モードについて説明するための図である。
【
図6】放電禁止モードについて説明するための図である。
【
図7】電力平準化モードについて説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの制御方法を示したフローチャートである。
【
図9】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの制御方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る電力制御システムの制御装置及びその制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る電力制御システムの全体概略構成を示した図である。
図1に示すように、電力制御システム1は、自然エネルギーを利用して発電する発電装置2と、発電装置2と電力系統5との間に接続された蓄電装置3と、蓄電装置3の充放電を制御する電力変換装置4と、制御装置10とを備えている。電力変換装置4は、例えば、蓄電装置3に蓄電されている電力を交流に変換して放電するとともに、交流電力を直流電力に変換して蓄電装置3に充電する双方向インバータ装置である。また、発電装置2と電力系統5との間には負荷6が接続されている。
【0015】
制御装置10は、例えば、電力変換装置4と一体に取り付けられたマイクロコンピュータであり、図示しないCPU(中央演算装置)、RAM(Random Access Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体等を備えている。後述の各種機能を実現するための一連の処理の過程は、プログラムの形式で記録媒体等に記録されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、後述の各種機能が実現される。
【0016】
図2は、制御装置10が備える機能を示した機能ブロック図である。
図2に示すように、制御装置10は、温度判定部(判定手段)11、残容量判定部(判定手段)12、出力推奨値取得部13、価格比較部14、モード選択部15、及び充放電指令作成部(指令作成手段)16を備えている。
温度判定部11は、蓄電装置3の温度と予め設定されている上限温度とを比較し、その比較結果をモード選択部15に出力する。
残容量判定部12は、蓄電装置の残容量が所定の充放電許容範囲内にあるか否か、また、該充放電許容範囲内でなければ、所定の上限残容量を超えているかあるいは所定の下限残容量未満であるのかを判定して、この判定結果をモード選択部15に出力する。
【0017】
出力推奨値取得部13は、電力系統5の電圧値(以下、「系統電圧値」という。)と売電推奨値及び買電推奨値とが関連付けられた出力推奨情報を保有し、系統電圧値に応じた売電推奨値又は買電推奨値を取得する。
図3に出力推奨情報の一例を示す。
図3において、横軸は系統電圧値、縦軸は出力推奨値である。
図3に示すように、系統電圧の値に応じて、売電推奨領域、通常領域、買電推奨領域の3つに区分されている。通常領域は系統電圧が所定の基準値(例えば、101V)付近の電圧範囲(例えば、95Vから107V)に設定されている。
【0018】
通常領域よりも系統電圧が低い領域は売電推奨領域として売電が推奨される。具体的には、系統電圧値が低くなるほど、売電推奨値が高い値に設定される。このように、系統電圧値が通常領域よりも低くなる領域では、系統電圧値を低下させる要因となる買電を制限し、売電を推奨することで、系統電圧値が安定する方向に導く。
また、通常領域よりも系統電圧値が高い領域は買電推奨領域として売電が制限されるとともに買電が推奨される。具体的には、系統電圧値が高くなるほど、買電推奨値が高い値に設定される。このように、系統電圧値が通常領域よりも高くなる領域では、系統電圧値を上昇させる要因となる売電を制限し、買電を推奨することで、系統電圧値が安定する方向に導く。
【0019】
価格比較部14は、買電価格と売電価格とを比較する。売電価格は、例えば、発電装置2の種類に応じて一律に設定されていることが多いので、その場合には、その情報を予め登録しておけばよい。また、買電価格については、一般的に電力会社との契約により単価が異なり、また、時間帯によっても変化するため、該当する買電価格の情報を予め取得して記憶する。
【0020】
モード選択部15は、充放電禁止モード、充電禁止モード(第2モード)、放電禁止モード、電力平準化モード(第1モード)等の各種モードを保有しており、上記温度判定部11及び残容量判定部12並びに価格比較部14の判定結果に応じていずれか一つの充放電モードを選択する。
以下、各充放電モードについて図を参照して説明する。
【0021】
(充放電禁止モード)
充放電禁止モードは、充放電を禁止するモードである。したがって、このモードが選択されている場合には、電力変換装置4は作動停止の状態とされ、蓄電装置3の充放電も停止される。
【0022】
(充電禁止モード)
充電禁止モードは、充電を禁止するとともに、買電電力をゼロにするように放電を制御するモードである。ただし、上述のように、系統電圧との関係で買電推奨値が設定されている場合には、買電推奨値の範囲で買電を許容するように充放電制御を行う。
例えば、
図1における地点P1の電力が
図4に示すような変化をする場合を想定する。なお、
図4において、横軸は時間、縦軸は電力であり、正側が売電側、負側が買電側を意味する。なお、
図5〜
図7においても同様とする。売電推奨値も買電推奨値も設定されていない場合(すなわち、系統電圧値が通常領域にある場合)には、
図5(a)に示すような波形となる。
図5において、太実線は
図1における地点P2の電力、換言すると、蓄電装置3の充放電電力であり、太点線は
図1における地点P3の電力であり、細実線は参考用に示された地点P1の電力である。なお、
図6、
図7においても、太実線は地点P2の電力、太点線は地点P3の電力、細実線は地点P1の電力を意味するものとする。
また、売電推奨値が設定されている場合には、
図5(b)に示すような波形となり、買電推奨値が設定されている場合には、
図5(c)に示すような波形となる。なお、
図5(b)において、売電電力が売電推奨値を超えているのは、充電を禁止しているからである。
ここで、売電電力とは、発電装置または蓄電池より電力系統に送電する電力のことであり、買電電力とは、電力系統から蓄電池または負荷に送電する電力のことである。
このように充電禁止モードでは、充電を禁止するので、売電推奨値の制限を受けずに、売電電力を積極的に電力系統5に出力することができる。
【0023】
(放電禁止モード)
放電禁止モードは、放電を禁止するとともに、売電電力をゼロにするように充電を制御するモードである。ただし、上述のように、系統電圧との関係で売電推奨値が設定されている場合には、売電推奨値の範囲で買電を許容するように充放電制御を行う。
例えば、
図1における地点P1の電力が
図4に示す波形であった場合、売電推奨値も買電推奨値も設定されていなければ、
図6(a)に示すような波形となる。また、売電推奨値が設定されている場合には、
図6(b)に示すような波形となり、買電推奨値が設定されている場合には、
図6(c)に示すような波形となる。なお、
図6(c)において、買電電力が買電推奨値を超えているのは、放電が禁止されているからである。
【0024】
(電力平準化モード)
電力平準化モードは、基本的には、買電電力及び売電電力が共にゼロとなるように、蓄電装置3の充放電を行うモードである。ただし、上述のように、系統電圧との関係で買電推奨値または売電推奨値が設定されている場合には、買電推奨値または売電推奨値の範囲で充放電制御を行う。
例えば、
図1における地点P1の電力が
図4に示す波形であった場合、売電推奨値も買電推奨値も設定されていなければ、
図7(a)に示すような波形となる。また、売電推奨値が設定されている場合には、
図7(b)に示すような波形となり、買電推奨値が設定されている場合には、
図7(c)に示すような波形となる。
【0025】
モード選択部15は、温度判定部11によって蓄電装置3の温度が所定の上限温度を超えていると判断された場合には、充放電禁止モードを選択する。また、蓄電装置3の温度が上限温度以下であり、蓄電装置3の残容量が上限残容量を超えている場合には、充電禁止モードを、蓄電措置3の温度が上限温度以下であり、蓄電装置の残容量が下限残容量未満の場合には、放電禁止モードを選択する。
【0026】
また、蓄電措置3の温度が上限温度以下であり、かつ、蓄電装置3の残容量が許容残容量内である場合には、価格比較部14の結果を参照し、買電価格が売電価格よりも高い場合に電力平準化モードを選択し、売電価格が買電価格よりも高い場合に充電禁止モードを選択する。なお、売電価格と買電価格とが同じ価格であった場合には、電力平準化モードを選択する。
【0027】
充放電指令作成部16は、モード選択部15に基づいて選択されたモードと、出力推奨値取得部13によって取得された出力推奨値とに従って、充放電指令を作成し、これを電力変換装置4に出力する。すなわち、充放電指令作成部16は、地点P1の電力、出力推奨値取得部13によって取得された出力推奨値、及びモード選択部15によって選択されたモードに従って充放電指令を生成し、これを電力変換装置4に出力する。
【0028】
次に、上記構成を備える電力制御システムの制御装置によって実行される処理について、
図8及び
図9を参照して説明する。例えば、制御装置10は、
図8及び
図9に示すフローチャートを所定の時間間隔で繰り返し実行することにより、電力変換装置4を制御する。
【0029】
まず、蓄電装置3の温度及び残容量情報、系統電圧値、地点P1の電力等の情報を取得する(ステップSA1)。次に、蓄電装置3の温度が所定の上限値以上か否かを判定する(ステップSA2)。この結果、蓄電装置3の温度が上限値以上であれば(ステップSA2において「YES」)、充放電禁止モードを選択して(ステップSA13)、処理を終了する。一方、蓄電装置3の温度が上限値以下である場合には(ステップSA2において「NO」)、系統電圧値に対応する出力推奨値を取得する(ステップSA3)。
【0030】
次に、蓄電装置3の残容量が所定の充放電許容範囲内であるか否かを判定する(ステップSA4)。この結果、充放電許容範囲を外れていた場合には(ステップSA4において「NO」)、残容量が上限残容量以上か否かを判定する(
図9のステップSA5)。この結果、上限残容量以上であれば(ステップSA5において「YES」)、充電禁止モードを選択する(ステップSA6)。一方、ステップSA5において、上限残容量未満である場合には、放電禁止モードを選択する(ステップSA7)。
【0031】
また、ステップSA4において、残容量が充放電許容範囲内であると判定した場合には(ステップSA4において「YES」)、買電価格が売電価格よりも高いか否かを判定する(ステップSA8)。この結果、買電価格が売電価格と同じまたは買電価格が売電価格よりも高い場合には(ステップSA8において「NO」)、電力平準化モードを選択し(ステップSA9)、売電価格が買電価格よりも高い場合には(ステップSA8において「YES」)、充電禁止モードを選択する(ステップSA10)。このようにして、モードを選択すると、選択したモードと出力推奨値とを参照して、充放電指令を作成し(ステップSA11)、電力変換装置に出力する(ステップSA12)。
これにより、充放電指令に基づいて電力変換装置が制御されることにより、充放電モードに応じた充放電がなされ、所望の買電・売電制御が行われる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る電力制御システム及びその制御装置並びに制御方法によれば、残容量が充放電許容範囲内にある場合には、買電価格と売電価格とを比較し、売電価格が高ければ売電を積極的に行う充電禁止モードを選択するので、蓄電装置3の所有者の利益を追求することが可能となる。また、売電価格が買電価格と同等またはそれ以下であれば、売電を積極的に行わずに、電力系統5に出力される電力をゼロとする電力平準化モードを選択するので、電力系統5に悪影響を与えることを防止することができる。更に、系統電圧値に応じた出力推奨値を取得し、この出力推奨値に応じた充放電制御を行うので、例えば、系統電圧が高い場合には、売電を抑制し、買電を推奨するような充放電制御とし、逆に、系統電圧が低い場合には、買電を抑制し、売電を推奨するような充放電制御とする。これにより、電力系統を安定化に寄与することができる。
更に、蓄電装置3の残容量が充放電許容範囲内にない場合には、残容量に応じて充電禁止モードまたは放電禁止モードが選択されるので、残容量を速やかに充放電許容範囲内に移行させることができる。
【0033】
本発明は、上述の実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 電力制御システム
2 発電装置
3 蓄電装置
4 電力変換装置
5 電力系統
6 負荷
10 制御装置
11 温度判定部
12 残容量判定部
13 出力推奨値取得部
14 価格比較部
15 モード選択部
16 充放電指令作成部