【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25年12月13日、西畑慎吾及び白鳥世明が、第14回慶應科学技術展 KEIO TECHNO−MALL 2013にて、西畑慎吾らが発明した「ビールの高泡持ち性容器」の開発について公開した。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の構成について詳しく説明する。
図1に、本発明の一実施例にかかる発泡飲料容器10の断面図(a)及び要部拡大図(b)を示す。
図1(a)に示すように、本発明の一実施例にかかる発泡飲料用容器10は、底部12と胴部14とからなっており、また、
図1(b)に示すように、胴部14の内面には微粒子20が不均一(凹凸状)に付着している。
【0014】
<二乗平均平方根粗さ>
本発明にかかる発泡飲料用容器10において、胴部14の内面は、二乗平均平方根粗さ:150〜250nmとなるようにとなるように表面処理される。本発明において二乗平均平方根粗さとは、JIS B0601−2013に準拠して測定された数値(Rq)であり、下記数式により定義される。
【数1】
Rq:二乗平均平方根粗さ,l:基準長さ,Z(x):位置xにおける輪郭曲線の高さ
二乗平均平方根粗さの測定には、例えば、Nano−ScopeIIIa(Veeco社製)等の原子間力顕微鏡を用いることができる。発泡飲料用容器10において、胴部14の内面の二乗平均平方根粗さが150nm未満であるか、あるいは250nmを超えると、ビール等の泡持ち改善効果が十分に得られない。胴部14内面の二乗平均平方根粗さは、より好ましくは、150〜180nmの範囲である。
【0015】
<水接触角>
また、本発明にかかる発泡飲料用容器10において、胴部14の内面は、水接触角:
140〜180°となるように表面処理される。水接触角は、「静止液体である水の自由表面が固体壁に接する場所で、液面と固体面とのなす角(液の内部にある角)」と定義することができ、当分野において公知の方法により測定することができる。あるいは、例えば、JIS R3257 1999等を参考にして測定してもよい。なお、市販の水接触角の測定装置としては、例えば、CA−DT.A,DM−301,501,701(協和界面科学株式会社製)が挙げられる。胴部14の内面の水接触角が140°未満であると、ビール等の泡持ち改善性が十分に得られない。胴部14内面の水接触角は、より好ましくは、150〜180°の範囲である。
【0016】
なお、本発明にかかる発泡飲料用容器においては、例えば、微粒子、シリコーンオイル、及び水系溶剤を含む撥水剤を用いて容器胴部の内表面を被覆処理することによって、上記二乗平均平方根粗さ及び水接触角の範囲内とすることができる。
【0017】
撥水剤に用いる微粒子としては、無機物質でも有機物質でもかまわないが、変質しない無機物質からなるものが好ましい。nmオーダーの粒径の微粒子を得るためには、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機酸化物が好ましく、平均粒子径5〜20nmの市販品が得られる点からシリカが最も好適である。このような微粒子シリカとして、アエロジルR972,972V,R972CF,R974,R812,R805,RX200,RX300,RY200(いずれも日本アエロジル株式会社製)等の疎水化シリカを好適に用いることができ、この中でも、特にR972,RX200が好ましい。その他の微粒子として、アエロジル50,90G,130,200,200V,200CF,200FAD,300,300CF,380,R202,R812S,OX50,TT600,MOX80,MOX170,COK84,酸化アルミニウムC,二酸化チタンT805,二酸化チタンP25(いずれも日本アエロジル株式会社製)等を用いることもできる。なお、これらの微粒子のうち、親水性のものは、予めシランカップリング剤等により疎水化処理しておくことが好ましい。所定の二乗平均平方根粗さ及び水接触角の範囲とするため、微粒子の粒径は1〜100nmであることが好ましく、5〜20nmであることがさらに好ましい。
【0018】
シリコーンオイル(オルガノポリシロキサン)としては、微粒子と混合して粘性を有する液状物を形成できるものであればいずれでもよく、アミノ変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アルキルアラルキル変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル等を用いることができる。好ましくはアミノ変性シリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル(ポリジメチルシロキサン)である。また、シリコーンオイルの粘度は、5〜100,000ctsが好ましく、さらに好ましくは50〜500ctsである。
【0019】
撥水剤中のシリコーンオイル含有量は、微粒子に対して質量比で0.1〜100%の範囲が好ましく、さらに好ましくは2〜30%である。シリコーンオイルが0.1%未満であると強度が得られず、100%を超えると所定の二乗平均平方根粗さ及び水接触角の範囲となりにくい。
【0020】
水系溶剤は、水親和性を有する有機溶剤であり、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、エーテル等を用いることができるが、沸点、引火点が高く、毒性が低いという安全性の面から、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール(ヘキシレングリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、1,5−ペンタンジール(ペンタメチレングリコール)等が好ましい。
【0021】
水系溶剤の含有量は、撥水剤全量の80〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは90〜98質量%である。80質量%未満であると塗布あるいはスプレーしにくく、98質量%を超えると所定の二乗平均平方根粗さ及び水接触角の範囲となりにくい。
【0022】
その他、微粒子の結合剤として、樹脂類、界面活性剤類、油脂類等を添加してもよい。樹脂類としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等;界面活性剤としては、モノアルキルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、エチレンオキサイド付加型アンモニウムクロライド、アミン酢酸塩類、アルキルアミン、アルキルジアミン、アルキルアミド、ビスアミド、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸エチレンオキサイド付加物、脂肪塩類等;油脂類としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、カルナバ、キャンデリラ、ラノリン等の動植物油、ペトロール、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の鉱物油類、モンタン酸やそのエステルワックス、ポリオレフィンワックス、ヒドロキシステアリン酸系エステルワックス等の合成ワックスが挙げられる。また、微粒子の結合剤として、酸化チタン膜形成剤として機能する有機チタンを添加してもよい。このような有機チタンとしては、例えば、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンブトキシドダイマー、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド等のチタンアルコキシドが挙げられ、また、市販品としては、オルガチックスTA−10,25,22,30(いずれもマツモトファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。なお、これら微粒子結合剤の含有量は、撥水剤全量の1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0023】
また、撥水剤全量の20質量%以下の範囲で、水を添加してもよい。水を用いることで水系溶剤の使用を減らし、コストを抑えることができる。一方で、20質量%を超えて水を添加すると、微粒子が液相から分離してしまう場合がある。なお、不純物があると分離が生じ易くなるため、純水が望ましい。
【0024】
上記撥水剤は、微粒子を、シリコーンオイル及び水系溶媒中に添加撹拌することで得られる。なお、微粒子の結合剤等の添加成分を用いる場合、これらを溶媒に混合して加熱溶解した後、微粒子を添加混合して得られた混合物を撹拌下で減圧乾燥し、この乾燥物にシリコーンオイル及び水系溶媒を添加撹拌し、撥水剤を製造することもできる。
【0025】
上記撥水剤による表面処理は、塗布、含浸、スプレー等、いずれの手段を用いてもよい。具体的には、容器原料となる紙の表面上にバーコーター等を用いて上記撥水剤を一様に塗布し、その後、加熱乾燥あるいは自然乾燥によって乾燥する。表面処理後の紙原料は、その後、処理面が胴部内面となるように成形すればよい。あるいは、有底円筒状に成形された紙あるいはプラスチック製容器の内面に、上記撥水剤を適当回数スプレーし、加熱乾燥あるいは自然乾燥によって乾燥することによって表面処理してもよい。
【0026】
上記撥水剤のコーティング量は、単位表面積当たり0.1〜20μg/mm
2であることが好ましく、0.1〜10μg/mm
2であることがより好ましい。0.1μg/mm
2未満あるいは20μg/mm
2を超えると所定の二乗平均平方根粗さ及び水接触角の範囲となりにくい。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の発泡容器10においては、以上に説明した撥水剤を用いて容器の胴部内面を表面処理することによって、該胴部14の内面にはnmオーダーの微粒子20が不均一(凹凸状)に付着している。このように、上記撥水剤を用いて表面凹凸を形成することによって、任意の容器胴部の内面を二乗平均平方根粗さ:150〜250nmの範囲とすることができる。また、このようなnmオーダーの微細な凹凸を有する表面においては、いわゆるロータス効果(ハスの葉の表面が水を弾く効果)として知られる撥水効果を示すことになる。このため、上記撥水剤を用いて、容器胴部14の内面をnmオーダーの微細な凹凸表面とすることによって、容器胴部14の内面を水接触角:140〜180°の範囲とすることができる。あるいは、撥水剤に用いる微粒子20として、疎水化処理された微粒子を用いたり、もしくは撥水剤中へと別途撥水性あるいは親水性の成分を添加すること等により、容器胴部14の内面の水接触角を適宜調整することもできる。
【0028】
ここで、例えば、特許文献1に示されるような陶磁器製の容器の場合、比較的目の細かいものでも、表面粗さは通常μmオーダーとなる。これに加えて、通常の陶磁器表面は親水性であり水を弾かないため、水接触角としてはおおよそ40°未満となる。また、特許文献2に示されるように、例えば、フッ素系のシランコーティング剤あるいはフッ素樹脂等によって、容器内面をフッ素処理した場合、フッ素由来の撥水効果により水接触角を大きくすことはできるかもしれないが、コーティング後の容器表面は平滑なままである。すなわち、このようなフッ素コーティング等によって得られる撥水効果は、本発明の容器のような微細凹凸表面に基づく撥水効果(ロータス効果)とは異なるものである。
【0029】
なお、本発明の発泡飲料容器において、製造原料は特に限定されず、紙製、プラスチック製あるいは金属製等、各種原料を用いることができる。成形後の容器に対しては、例えば、上記撥水剤を用いて胴部内面をスプレーコーティングにより表面処理すればよく、あるいは紙製や金属製容器の場合、予め板状の紙素材あるいは金属素材に対してローラーコーティングにより表面処理を施した後、円筒状の容器形状に成形してもよい。また、プラスチック製の容器の場合、微粒子を含む撥水剤を用いずとも、例えば、微細凹凸を有する金型を使用したり、フォトリソグラフィーによる高精細パターニングあるいはエッチング等によって、容器胴部の内面にnmオーダーの微細な表面凹凸を形成することで、所定の二乗平均平方根粗さ及び水接触角の範囲としてもよい。
【0030】
本発明の発泡飲料容器においては、少なくとも胴部内面の一部又は全部が表面処理されていればよい。すなわち、胴部内面と底部内面の両方が表面処理されていてもよく、あるいは胴部内面のみが表面処理された(底部内面は表面処理されていない)ものであってもよい。また、例えば、胴部内面の上端および下端を除いた中央部分に帯状に表面処理がなされるなど、胴部内面の一部を表面処理したものであってもかまわない。なお、底部を表面処理しても発泡飲料の泡持ち性には影響しないことから、撥水剤の使用量およびそれによるコストの低減を鑑みると、胴部内面のみが表面処理されている(底部内面は表面処理されていない)ことが好適である。あるいは、撥水剤をスプレーを用いて塗布する場合、胴部内面のみを表面処理する方が、膜厚のコントロールが容易であるという利点もある。
【0031】
本発明の発泡飲料容器に適用される発泡飲料としては、代表的なものとして、ビール等の麦芽アルコール飲料やビール様の発泡性アルコール飲料が挙げられるものの、例えば、シャンパンやカクテル、あるいはサイダー等、その他の各種発泡飲料であってもよい。ただし、飲用時における液面状の泡の存在が好まれるという点では、特にビールあるいはビール様飲料に対して、本発明の発泡飲料用容器を好適に適用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により、本発明についてさらに具体的に説明を行うが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
<比較例1>
未処理の500ml紙製カップ容器(LDPE樹脂ラミネート製)を比較例1とした。
<実施例1>
平均粒径12nmの疎水化シリカ微粒子(アエロジルRX200:日本アエロジル社製)4.5gを1−ブタノール95.5g中に加えて撹拌し、さらにポリジメチルシロキサン(SH−100:東レ・ダウコーニング株式会社製)0.80g、チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド(オルガチックスTA−30:マツモトファインケミカル株式会社製)0.20gを加えて撹拌し、撥水剤1とした。未処理の500ml紙製カップ容器(LDPE樹脂ラミネート製)の胴部内面へと、以上で得られた撥水剤1をバーコーター(♯3)を用いて膜厚約2μmとなるように塗布し、自然乾燥させ、実施例1の紙製カップ容器を得た。
【0034】
<実施例2>
上記実施例1において、紙製カップ容器の胴部と底部双方の内面へと撥水剤1を塗布、乾燥したほかは同様の操作を行ない、実施例2の紙製カップ容器を得た。
<比較例2>
上記実施例1において、紙製カップ容器の底部内面へと撥水剤1を塗布、乾燥したほかは同様の操作を行ない、比較例2の紙製カップ容器を得た。
【0035】
上記実施例1及び比較例1のそれぞれの紙製カップ容器の胴部内面について、走査型電子顕微鏡(S−4700 FE−SEM:日立製作所製)を用い、SEM写真図の撮影を行なった。結果を
図2に示す。
図2より明らかなように、未処理の比較例1の紙製カップ容器の胴部内表面は平滑であるのに対して、疎水化シリカ微粒子を含む撥水剤を用いて表面処理した実施例1の紙製カップ容器の胴部内表面においては、疎水化シリカ微粒子が不均一に付着することで約150nm程度の表面凹凸が形成されていることが確認された。
【0036】
つづいて、上記実施例及び比較例のそれぞれの紙製カップ容器について、ビールを注いだ際の泡持ち性の評価を行なった。
[泡持ち性評価]
図5に、泡持ち性評価のための泡高さの説明図(ビールを注いだ状態のカップ容器における泡高さの定義)を示す。本評価においては、
図5に示すように、カップ底面から液面までの高さをC(cm)、液面からカップ側面における泡高さをB(cm)、カップ側面の泡高さから泡の中央部までの高さをA(cm)とする。
各実施例及び比較例の紙製カップ容器へと、端部泡高さB(cm)と液面高さC(cm)とがそれぞれ4(cm)となるようにビールを注いだ。その後、経時によって側面泡高さB(cm)と中央泡高さA(cm)がどのように変化していくかを目視にて観察した。結果を下記表1に示す。また、実施例1及び比較例1の経過時間−端部泡高さB(cm)のプロットを
図3に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1及び
図3に示すように、未処理の比較例1ではビールを注いだ直後から5分経過後には、泡が完全に消失してしまった。これに対して、胴部内面を微粒子を含む撥水剤を用いて処理し、nmオーダーの表面凹凸を形成した実施例1においては、60分経過後においても泡が残存しており、泡持ち性が著しく改善されていることが理解される。また、泡の中央高さA(cm)が容器側面における高さB(cm)よりも1.5cmほど高く、側方から見てきれいな曲面を形成していた。
【0039】
また、胴部及び底部を表面処理した実施例2においては、胴部のみを表面処理した実施例1と同様の良好な泡持ち性を示した。他方、底部のみを表面処理した比較例2においては、泡持ち性の改善効果は得られておらず、未処理の比較例1と同様、5分経過後に泡が消失してしまった。このことから、カップ容器の底部への表面処理は泡状態に影響を与えておらず、泡持ち性を改善するためには、少なくとも胴部の内面においてnmオーダーの表面処理を施す必要があることが理解される。また、撥水剤の使用量を考慮すると、胴部のみを表面処理した実施例1の方が、胴部及び底部を表面処理した実施例2よりも好適であると考えられる。
【0040】
<比較例3>
未処理の275ml透明プラスチックカップを比較例3とした。
<実施例3>
275ml透明プラスチックカップを準備し、プラスチックカップの胴部内面へと、上記実施例1と同様にして得られた撥水剤1を50℃で乾燥させながら間欠スプレーし、膜厚約2μmとなるまで表面処理することで、実施例
3のカップ容器を得た。
【0041】
実施例3及び比較例3のビール注入直後及び10分経過後の俯瞰写真図を
図4に示す。
図4に示すように、胴部内面に微細な表面凹凸を形成した実施例3では、泡の中央が盛り上がっており、ドーム状の曲面をなしていることが確認できる。また、比較例3の容器と比べ、実施例3の容器において生成したビールの泡は、きめが細かく、良好な泡質を示していることも明らかとなった。
【0042】
次に、容器胴部内面の表面粗さ及び水接触角と泡持ち性との関係を調べるため、下記実施例及び比較例のカップ容器を作製し、それぞれについての泡持ち性を評価した。結果を下記表2に示す。
【0043】
<比較例4>
未処理の500ml紙製カップ容器(LDPE樹脂ラミネート製)を比較例4とした。
<比較例5>
上記実施例1において、水系溶媒の添加量を撥水剤全量の99質量%(水系溶媒を除く成分濃度を1質量%)とした撥水剤2を用いたほかは同様の操作を行ない、比較例5の紙製カップ容器を得た。
【0044】
<実施例4〜8>
上記実施例1において、水系溶媒の添加量をそれぞれ撥水剤全量の98,97,96,95,94質量%(水系溶媒を除く成分濃度を2,3,4,5,6質量%)とした撥水剤3,4,5,67を用いたほかは同様の操作を行ない、実施例4〜8の紙製カップ容器を得た。
<比較例6>
未処理の500ml紙製カップ容器(LDPE樹脂ラミネート製)の胴部内面を、有機フッ素シラン(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン:Gelest社製)を用いて公知の方法により表面処理し、比較例6の紙製カップ容器を得た。
【0045】
[二乗平均平方根粗さ]
各実施例及び比較例の紙製カップ容器の胴部内面について、それぞれ原子間力顕微鏡(Nano−ScopeIIIa:Veeco社製)を用いて表面凹凸を測定し、JIS B0601に従って、二乗平均平方根粗さRqを算出した。
[水接触角]
各実施例及び比較例の紙製カップ容器の胴部内面について、CA−DT.A(協和界面科学株式会社製)を用いて水接触角を測定した。各容器の胴部内面が上となるように水平に置き、その上方に100μL注射器の針先から10μLのみずを押し出して水滴を作り、各容器を水平を保ったままで上方に移動して水滴に接触させ、水滴を各容器の表面上に形成した。上記接触角計のビュースコープ内に組み込まれた分度器を使用して、各容器表面上の水滴の接触角を測定した。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示すように、未処理の比較例1及び撥水剤液の成分濃度を1質量%とした比較例5では、ビールを注いでから5分経過後に泡が完全に消失してしまっていた。これに対して、撥水剤液の成分濃度を2〜6質量%として実施例4〜8では、5分経過後にも泡が1cm程度残存しており、泡持ち性が良好であった。他方、フッ素系のシランカップリング剤により容器内面をフッ素コートした比較例6では、撥水性が高められているにもかかわらず、泡持ち性の改善効果は得られていなかった。なお、これら各実施例及び比較例における表面粗さ及び水接触角の測定結果から、泡持ち改善効果を得るためには、二乗平均平方根粗さを150nm以上、水接触角を140°以上とする必要があると考えられる。