(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336310
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】ハイブリッド梁
(51)【国際特許分類】
E04C 3/293 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
E04C3/293
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-65590(P2014-65590)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-190101(P2015-190101A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年3月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】シング ラヴィ
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 仁
【審査官】
新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−043743(JP,A)
【文献】
実開昭51−069414(JP,U)
【文献】
特開昭57−066256(JP,A)
【文献】
米国特許第04333285(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 3/00 − 3/294
E04C 5/00 − 5/065
E04B 1/18 − 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する柱間に架け渡された鉄骨の両端部を鉄筋コンクリートで覆い、前記鉄骨の中央部を鉄骨梁部とし、両端部を鉄筋コンクリート梁部とし、前記鉄筋コンクリート梁部は、前記鉄骨の上方と下方の箇所において水平方向に並べられた複数の梁主筋とそれら梁主筋を囲む複数の横補強筋とを備えたハイブリッド梁であって、
前記鉄筋コンクリート梁部に設備用孔が前記鉄骨を貫通して水平に貫通形成され、
前記設備用孔の周辺の前記鉄筋コンクリート梁部の箇所を補強する設備用孔補強部が設けられ、
前記設備用孔補強部は、一枚のメッシュ筋が前記鉄骨の外側で前記複数の梁主筋の周りに巻回されて構成され前記鉄骨の側方で前記鉄筋コンクリート梁部の両側面にそれぞれ平行する両側の側面部と、それら側面部の上端を接続し前記鉄骨の上方で前記鉄筋コンクリート梁部の上面に平行する上面部と、それら側面部の下端を接続し前記鉄骨の下方で前記鉄筋コンクリート梁部の下面に平行する下面部とを有し、
それら両側の側面部と上面部と下面部とは前記鉄筋コンクリート梁部と一体化され、
前記両側の側面部に、前記設備用孔に合致する孔が形成され、
前記両側の側面部は、前記鉄筋コンクリート梁部の上下方向の両端に位置する前記梁主筋間に延在する高さを有して、上下の前記梁主筋と、上下に延在する前記横補強筋の部分との間で挟持されて配設され、
前記上面部と前記下面部は、前記鉄筋コンクリート梁部の幅方向の両端に位置する前記梁主筋間に延在する幅を有して、上下の前記梁主筋と、水平に延在する上下の前記横補強筋の部分との間でそれぞれ挟持されて配置され、
前記メッシュ筋は、前記鉄筋コンクリート梁部に作用するせん断力の一部を負担する、
ことを特徴とする設備用孔を有するハイブリッド梁の補強構造。
【請求項2】
前記メッシュ筋は金属または炭素繊維で構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の設備用孔を有するハイブリッド梁の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端部が鉄筋コンクリート造で中央が鉄骨造のハイブリッド梁(複合梁)に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物の一部または全部を大スパン化する、建物の梁躯体として、鉄筋コンクリート(RC)と鉄骨(S)造とで構成された複合構造の梁(以下、複合梁またはハイブリッド梁とも称する)が採用されてきている。このような構造の梁は、両端部をRCで覆った鉄骨が、RC造等の柱間に架け渡されて接合されたものである。以下、ハイブリッド梁のうち、S造である中央部を鉄骨梁部、RCで覆われた両端部を鉄筋コンクリート梁部(RC梁部)と称する。
ハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部においては、一般的に複数の梁主筋と、それら複数の梁主筋および鉄骨の周囲を囲む複数の横補強筋とが配筋され、鉄筋コンクリート梁部全体に渡り埋設されている。この横補強筋は、鉄筋コンクリート梁部の柱側の端部及び鉄骨梁部側の端部の配筋を密にした集中補強筋も含んでいる。
ハイブリッド梁は、中央部がS造であることから梁自重が軽減され、梁成が減少するために梁のロングスパン化を可能とした建物が得られる新しい構法として注目されている。
【0003】
一方、ハイブリッド梁において、従来、鉄筋コンクリート梁部に設備用貫通孔を設けた例はない。
ハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部は一般的なRC造として設計されており、一般的なRC造の梁に貫通孔を設けた場合、貫通孔の補強は、開孔補強筋(リング状のもの)や座屈補強筋(串形もの)などを用いて行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−24462
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部を、開孔補強筋(リング状のもの)や座屈補強筋(串形もの)などを用いて補強する場合、開孔補強筋や座屈補強筋などの補強筋が過密となる。
そして、それら補強筋が過密となると、鉄筋コンクリート梁部にはもともと梁主筋と横補強筋が密に配筋されていることから、配筋するのに手間がかかり、施工性が悪くなる。
また、既往の研究例から一般的なRC造の梁の開孔を補強した場合、地震を経験したあとの開孔周りのせん断ひび割れが目立ち、梁の損傷度合いも顕著である。
この発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、設備用孔が水平に貫通形成された鉄筋コンクリート梁部の補強の施工性を向上でき、また、地震の際の損傷度合を軽減する上で有利な設備用孔を有するハイブリッド梁の補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため本発明は、対向する柱間に架け渡された鉄骨の両端部を鉄筋コンクリートで覆い、前記鉄骨の中央部を鉄骨梁部とし、両端部を鉄筋コンクリート梁部とし、前記鉄筋コンクリート梁部は
、前記鉄骨の上方と下方の箇所において水平方向に並べられた複数の梁主筋と
それら梁主筋を囲む複数の横補強筋とを備え
たハイブリッド梁であって、前記鉄筋コンクリート梁部に設備用孔が
前記鉄骨を貫通して水平に貫通形成され、前記設備用孔の周辺の前記鉄筋コンクリート梁部の箇所を補強する設備用孔補強部が設けられ、
前記設備用孔補強部は、一枚のメッシュ筋が前記鉄骨の外側で前記複数の梁主筋の周りに巻回されて構成され前記鉄骨の側方で前記鉄筋コンクリート梁部の両側面にそれぞれ平行する両側の側面部と、それら側面部の上端を接続し前記鉄骨の上方で前記鉄筋コンクリート梁部の上面に平行する上面部と、それら側面部の下端を接続し前記鉄骨の下方で前記鉄筋コンクリート梁部の下面に平行する下面部とを有し、それら両側の側面部と上面部と下面部とは前記鉄筋コンクリート梁部と一体化され、前記両側の側面部に、前記設備用孔に合致する孔が形成され、前記両側の側面部は、前記鉄筋コンクリート梁部の上下方向の両端に位置する前記梁主筋間に延在する高さを有して、上下の前記梁主筋と、上下に延在する前記横補強筋の部分との間で挟持されて配設され、前記上面部と前記下面部は、前記鉄筋コンクリート梁部の幅方向の両端に位置する前記梁主筋間に延在する幅を有して、上下の前記梁主筋と、水平に延在する上下の前記横補強筋の部分との間でそれぞれ挟持されて配置され、前記メッシュ筋は、前記鉄筋コンクリート梁部に作用するせん断力の一部を負担することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、メッシュ筋が鉄筋コンクリート梁部の一部を構成するため、鉄筋コンクリート梁部に作用するせん断力の一部をメッシュ筋が負担する。したがって設備用孔周りの鉄筋コンクリート梁部のせん断ひび割れや損傷度合いが改善される。
また、メッシュ筋を用いるため、鉄筋の配筋がもともと過密なハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部を、開孔補強筋を用いて補強する場合に比べ、簡単に迅速に確実に補強でき、施工性が改善され、工期の短縮化、コストダウンを図る上で有利となる。
また、メッシュ筋で地震のエネルギーを吸収し、地震の際の損傷度合を軽減する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】設備用孔補強部の設備用孔部分の断面図である。
【
図4】ハイブリッド梁の鉄筋コンクリート梁部付近における詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
まず、
図3、
図4を参照して本発明が適用される一般的なハイブリッド梁10について説明すると、ハイブリット梁10は、対向する柱12間に架け渡されたI鋼やH鋼等の鉄骨Sの両端部を鉄筋コンクリートで覆う構造のものである。
鉄骨Sの中央部は鉄骨梁部10Aとされ、両端部は鉄筋コンクリート梁部10Bとされ、鉄骨Sは内法スパン(柱フェースまでの長さ)とし柱12には貫通されておらず、
図1において符号11Aはスタッドボルト、符号11Bは床スラブを示している。
【0010】
鉄筋コンクリート梁部10Bは、あらかじめ工場で製作したプレキャストコンクリート製でもよく、現場打ちコンクリートで製作されてもよい。あるいはハーフプレキャストコンクリート製でもよく、この場合には、コンクリートを現場で後打ちする。コンクリートは、普通コンクリートでも、繊維補強コンクリートでも良い。
鉄筋コンクリート梁部10Bは、複数の梁主筋14、それら梁主筋14を囲む複数の横補強筋16により補強され、梁主筋14の柱梁接合部への定着は、定着金物あるいは折り曲げ定着により行われる。
また、鉄筋コンクリート梁部10Bの柱12側の端部と鉄骨梁10A側の端部に相当する部分においては、特に横補強筋16の配筋を密に配した集中補強筋16Aとしている。このように鉄筋コンクリート梁部10Bの柱12側の端部と鉄骨梁10A側の端部に相当する部分に集中補強筋16Aを設けることで、鉄筋から鉄筋コンクリート梁部10Bへの応力の伝達が図られている。
【0011】
図1、
図2に示すように、設備用孔20は、柱梁接合部寄りの鉄筋コンクリート梁部10Bに設けられ、鉄筋コンクリート梁部10Bを水平に貫通している。
そして、設備用孔20が貫通形成された鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所を補強する本発明の設備用孔補強部22が設けられている。
【0012】
図1、
図2を参照して実施の形態の設備用孔補強部22について説明する。
設備用孔補強部22は、設備用孔20の周辺を含む鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所の少なくとも両側面の近傍の内部にメッシュ筋24を配設したものである。
本実施の形態では、メッシュ筋24は、鉄筋コンクリート梁部10Bの両側面にそれぞれ平行する両側の側面部2402と、それら側面部2402の上端を接続し鉄筋コンクリート梁部10Bの上面に平行する上面部2404と、それら側面部2402の下端を接続し鉄筋コンクリート梁部10Bの下面に平行する下面部2406とを有している。
両側の側面部2402は、鉄筋コンクリート梁部10Bの上下方向の両端に位置する梁主筋14間に延在する高さを有している。
また、上面部2404と下面部2406は、鉄筋コンクリート梁部10Bの幅方向の両端に位置する梁主筋14間に延在する幅を有している。
両側の側面部2402には、設備用孔20に合致する孔2410が形成されている。
メッシュ筋24は、鉄筋コンクリート梁部10Bの一部を構成し、鉄筋コンクリート梁部10Bに作用するせん断力の一部を負担できるものであればよく、メッシュ筋には、金属や炭素繊維など従来公知の様々な材料が使用可能である。
【0013】
本実施の形態では、一枚のメッシュ筋24が複数の梁主筋14の周りに巻回され、鉄筋コンクリート梁部10Bの両側面では、両側の側面部2402が上下の梁主筋14と、上下に延在する横補強筋16の部分との間で挟持されて配設されている。
また、鉄筋コンクリート梁部10Bの上下面では、上面部2404と下面部2406とが、上下の梁主筋14と、水平に延在する上下の横補強筋16の部分との間でそれぞれ挟持されて配置されている。
【0014】
このように設備用孔補強部22を構成すると、次の効果A〜Cが発揮される。
効果A:メッシュ筋24が鉄筋コンクリート梁部10Bに一体化し、メッシュ筋24が鉄筋コンクリート梁部10Bの一部を構成するため、鉄筋コンクリート梁部10Bに作用するせん断力の一部をメッシュ筋24が負担する。したがって設備用孔20周りの鉄筋コンクリート梁部10Bのせん断ひび割れや損傷度合いが改善される。
効果B:メッシュ筋24を用い、かつ、このメッシュ筋24を梁主筋14と横補強筋16を利用して配設するため、鉄筋の配筋がもともと過密なハイブリッド梁10の鉄筋コンクリート梁部10Bを、開孔補強筋を用いて補強する場合に比べ、簡単に迅速に確実に補強でき、施工性が改善され、工期の短縮化、コストダウンを図る上で有利となる。
効果C:メッシュ筋24で地震のエネルギーを吸収でき、地震の際の損傷度合を軽減する上で有利となる。
【0015】
なお、鉄筋コンクリート梁部10Bに作用するせん断力の多くを負担する鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所の両側面の近傍の内部のみにメッシュ筋24を配設して設備用孔補強部22を構成してもよい。この場合、メッシュ筋24は側面部2402のみを有し、かつ、上下一対の梁主筋14に対して一枚ずつ貼着される。ただし、実施の形態のようにメッシュ筋24を鉄筋コンクリート梁部10B箇所の全周に配設すると、前記効果A〜Cを発揮させる上でより有利となる。
また、メッシュ筋24に孔2410を形成せず、鉄筋コンクリート梁部10Bの箇所の両側面で設備用孔20の上下左右に複数のメッシュ筋24を配設して設備用孔補強部22を構成してもよいが、実施の形態のように構成すると、施工性を改善し、工期の短縮化、コストダウンを図る上でより有利となる。
【符号の説明】
【0016】
10……ハイブリッド梁
10A……鉄骨梁部
10B……鉄筋コンクリート梁部
14……梁主筋
16……横補強筋
20……設備用孔
22……設備用孔補強部
24……メッシュ筋
2402……側面部
2404……上面部
2406……下面部