(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1の技術は、前述したとおり長期使用が必要なだけでなく、ハリ感を実感することが乏しい場合があった。特許文献2、3、4の技術は、肌表面に皮膜を形成する等、含有成分による表面的な膜感(以下、これを肌のハリ感と称する場合がある)を感じ、肌の内側からのハリ感(以下、これを肌の柔軟性と称する場合がある)としては十分に感じない場合があった。また、特許文献5、6の技術では、ハリ感付与のため、高融点油剤を含有しているが、高融点油剤の含有量が多い場合に、滑らかに伸び広がらない場合や、皮膚がつっぱり、肌の柔軟性に欠ける場合もあり、ハリ感を十分に感じることが出来るほど含有することが出来なかった。
【0006】
すなわち、従来技術においては、ハリ感を付与するために含有される高融点の油剤はハリ感を十分に感じることが出来ない場合があり、その効果を向上させるために、含有量を高めることにより、逆に柔軟性を付与する効果は低減する場合もあった。ハリ感とは、化粧料を塗布することにより、塗布した化粧料による肌のハリ感と、塗布した化粧料が肌になじんで浸透することによる、肌の柔軟性の両方を満足することが必要であり、その両方の効果を同時に満足させ、かつ滑らかに伸び広がる使用感を持つものは知られていない状況である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる実情に鑑み、本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、従来より使用される固形油等でハリ感を付与するのではなく、別の成分を検討していたところ、流動イソパラフィンが重合度によって、肌に対するハリ感や柔軟性の効果が付与できることを見出した。つまり、この流動イソパラフィンの平均分子量に着目したところ、特定の範囲の数平均分子量をもつ流動イソパラフィンを組合わせることが重要であり、数平均分子量200〜350の流動イソパラフィンが肌に柔軟性を付与する効果に、数平均分子量900〜3200の流動イソパラフィンが肌に対するハリ感を付与する効果にそれぞれ優れることを見い出した。しかしながらこれらの油剤を、一般的な乳化剤を用いて水中油型乳化組成物に含有しても、数平均分子量900〜3200の流動イソパラフィンのべたつきにより、肌の柔軟性を付与する効果を十分に感じることはできず、また塗布時に滑らかに伸び広がらないため使用性の悪いものであった。
そこで更なる検討を重ねた結果、リン脂質及び25℃で液状の油剤をこれらと共に含有することにより、塗布時に滑らかに伸び広がるものとなり、使用性にも優れたものとなった。これは25℃で液状の油剤を含有することにより、前出の油剤が相互溶解することで、肌への作用が効果的になるとともに、数平均分子量900〜3200の流動イソパラフィンのべたつきが抑えられたためだと考えられる。
【0008】
すなわち本発明は、次の成分(A)〜(E);
(A)リン脂質
(B)数平均分子量200〜350の流動イソパラフィン
(C)数平均分子量900〜3200の流動イソパラフィン
(D)25℃で液状の油剤(ただし、成分(B)、(C)を除く)
(E)水
を含有することを特徴とする水中油型乳化組成物に関する。
【0009】
また、前記成分(B)、(C)の含有質量割合(B)/(C)が、0.05〜10の範囲であることを特徴とする水中油型乳化組成物に関する。
【0010】
成分(C)、(D)の含有質量割合(C)/(D)が、1以下であることを特徴とする水中油型乳化組成物に関する。
【0011】
成分(D)として炭素数8〜22の脂肪酸と、グリセリンとのトリエステルを含むものであることを特徴とする水中油型乳化組成物に関する。
【0012】
化粧料又は皮膚外用剤であることを特徴とする水中油型乳化組成物に関する。
【0013】
融点60℃以上の油剤を、5質量%以上含有しないことを特徴とする水中油型乳化組成物に関するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の水中油型乳化組成物は、塗布時の伸び広がりに優れながら、肌の柔軟性、肌のハリ感に優れるという特徴を有する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0016】
本発明の水中油型乳化組成物に用いられる成分(A)リン脂質は、生体由来脂質であり、生体適合性、皮膚の保湿性、皮膚を保護する性質を有することから、化粧料原料として使われているものであれば、特に限定されるものではない。本発明においては、成分(A)リン脂質は、肌のハリ感も期待できることから特に好ましいものとすることができる。
【0017】
また、リン脂質を成分(C)と共に含有することで、驚くべきことにリン脂質自体が持つハリ感を付与する効果だけでなく、肌を柔軟する効果も共に得られることを見出した。これはリン脂質を含有することにより、前出の油剤の肌への浸透力が上がることで、肌への作用が効果的になるためと考えられる。
【0018】
このようなリン脂質としては、特に記載した場合を除き、グリセリン又はスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸とリン酸が結合し、さらにリン酸にアルコールがエステル結合した構造をもつものをいう。リン脂質を構成する脂肪酸としては、炭素数7〜22の飽和及び不飽和カルボン酸が挙げられる。リン脂質を構成するアルコールとしては、窒素が含まれることが多く、このような例としては、コリン、エタノールアミン、イノシトール、セリン等がある。本発明には、天然の大豆や卵黄から抽出した大豆レシチン、卵黄レシチン及び/又はこれらを水素添加した水素添加レシチン、水素添加大豆レシチン、水素添加卵黄レシチンや合成リン脂質など、一般にリン脂質として知られるものが使用できる。より詳細には、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、及びホスファチジルイノシトール等を好ましく用いることができる。これらの中から、一種又は二種以上を用いることができる。
例えば水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄リン脂質、水素添加ホスファチジルコリン、水素添加ホスファチジルセリン等が挙げられ、リン脂質より脂肪酸基が一つ外れたリゾリン脂質でも良く、これを水素添加した水素添加リゾリン脂質であってもよい。市販品の水素添加リン脂質の例としてはレシノール S−10、レシノール S−10E、レシノール S−10M、レシノール S−10EX、レシノール S−PIE(日光ケミカルズ社製)、COATSOME NC−21(NOF社製)、Phospholipon100H、Phospholipon90H、Phospholipon80H、Phospholipon90G(Phospholipid社製)等がある。水素添加リゾリン脂質の例としては、LP70H(日本精化社製)、SLP−ホワイトリゾH、SLP−LPC 70H(辻製油社製)等がある。
【0019】
本発明の水中油型乳化組成物において成分(A)のリン脂質の含有量は、特に限定はされないが、0.01〜10質量%(以下、単に「%」とする)が好ましく、0.05〜5%がより好ましい。この範囲内とすることにより、肌の柔軟性及び、肌のハリ感の観点で好ましいものとすることができる。
【0020】
本発明の水中油型乳化組成物に用いられる成分(B)数平均分子量200〜350の流動イソパラフィンは、イソブテンとn−ブテンを共重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素の混合物である。好ましくは、数平均分子量は、250〜300の流動イソパラフィンであり、この数平均分子量の範囲内で一種又は二種以上を混合したものであってもよい。本発明においては、肌の柔軟性に主に寄与する。なお、本発明において数平均分子量は、既知分子量ポリスチレンを標準とし、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求めた値とする(以下、特に断わらない限り、本発明においては、この方法に準じるものとする)。このような成分(B)の市販品としては、パールリーム4(数平均分子量230、日油社製)、IPソルベント2028MU(出光興産社製)、クロラータムLES(クローダジャパン社製)等が挙げられる。
【0021】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(B)の分子量の分布を表す多分散度は、特に限定されるものではないが、1〜1.3が好ましく、1〜1.2がより好ましい。この範囲内にすることにより、目的とする分子量250〜300の流動イソパラフィンが占める割合が高くなるため、肌の柔軟性の観点で好ましいものとすることができる。なお、ここで多分散度は、[重量平均分子量/数平均分子量]で表され、一般的に重合反応によって合成される高分子の分子量分布は、数平均分子量から重量平均分子量の近傍にかけて頂点を持つ正規分布になるものである。
【0022】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(B)の含有量は、特に限定されるものではないが、0.1〜10%が好ましく、特に0.5〜5%がより好ましい。この範囲内とすることにより、肌の柔軟性の観点で好ましいものとすることができる。
【0023】
本発明の水中油型乳化組成物に用いられる成分(C)数平均分子量900〜3200の流動イソパラフィンは、イソブテンとn−ブテンを共重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素の混合物である。好ましくは、数平均分子量は、950〜3000の流動イソパラフィンであり、この数平均分子量の範囲内で一種又は二種以上を混合したものであってもよい。本発明においては、肌のハリ感に主に寄与する。なお、ここで数平均分子量は、既知分子量ポリスチレンを標準とし、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求めた値である。このような成分(C)の市販品としては、パールリーム18(数平均分子量1000、日油社製)、パールリーム24(数平均分子量1350、日油社製)、パールリーム46(数平均分子量2600、日油社製)、等が挙げられる。
【0024】
なお、既述した成分(B)、成分(C)を含有していることは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の分布から判別可能であり、例えば、成分(B)、成分(C)ではなく、これらの中間の数平均分子量をもつ流動イソパラフィンを含有していることか否かは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により、分子量の分布から判別可能である。
【0025】
すなわち、本発明は成分(B)、成分(C)でそれぞれ規定された数平均分子量の有する流動イソパラフィンを含んでいるものである。
【0026】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(C)の含有量は特に限定されるものではないが、0.1〜15%が好ましく、より好ましくは0.5〜10%である。この範囲内とすることにより、肌のハリ感の観点で好ましいものとすることができる。
【0027】
本発明の水中油型乳化組成物に用いられる成分(D)25℃で液状の油剤(ただし、成分(B)、(C)を除く)は、通常の化粧料に使用される25℃で液状の油剤であれば、いずれのものも使用することができ、例えば、炭化水素油、エステル油、グリセライド油、高級脂肪酸、天然動植物油剤および半合成油剤、シリコーン油、フッ素系油剤よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。
本発明においては、成分(D)25℃で液状の油剤(ただし、成分(B)、(C)を除く)は、肌に塗布した際に塗布時の伸び広がりに優れるものとすることができる。なお成分(D)の粘度は、特に限定されるものではないが、25℃において、10000mpa・s以下のものが好ましく、3000mpa・s以下であればより好ましい。ここでの粘度は、芝浦システム社製単一円筒型回転粘度計ビスメトロンVS−A1を用いて、3号ローターで6回転、60秒後の条件にて測定した値である。
【0028】
炭化水素油としては、直鎖状、分岐状、さらに揮発性の炭化水素油等が挙げられ、具体的には、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、スクワラン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワレン、流動パラフィン、流動イソパラフィン等が挙げられる。
【0029】
エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等が挙げられる。
【0030】
グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、イソステアリン酸ジグリセリルなどが挙げられる。
【0031】
高級脂肪酸としては、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸等が挙げられ、高級アルコールとしては、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、オクチルドデカノール、2−デシルテトラデシノール、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等が挙げられる。
【0032】
また、天然動植物油剤及び半合成油剤としては、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、キョウニン油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サザンカ油、サフラワー油、シナモン油、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、日本キリ油、胚芽油、パーシック油、ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、メドウフォーム油、綿実油、落花生油、液状ラノリン、酢酸ラノリンアルコール、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、卵黄油等が挙げられる。
【0033】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルトリメチコン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等の低粘度から高粘度のオルガノポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、テトラメチルテトラトリフロロプロピルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルペンタトリフロロプロピルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン等が挙げられる。
【0034】
フッ素系油剤としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0035】
本発明の水中油型乳化組成物における成分(D)の含有量は、特に限定されるものではないが、0.5〜30%が好ましく、より好ましくは1〜15%である。この範囲で含有させると、肌に塗布した際に滑らかに伸び広がる機能に特に優れるものとなる。
【0036】
本発明においては、成分(D)は、炭素数8〜22の脂肪酸と、グリセリンとのトリエステルを含むものであることが好ましい。このような成分としては、通常、化粧料に用いることが可能であるならば、合成油であっても、天然油であってもいずれでも用いることができる。合成油であればトリイソオクタン酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリルなどが例示される。市販品としては、T.I.O.(日清オイリオグループ株式会社製)、トリエスターF810J(日光ケミカルズ社製)等が挙げられる。天然油であれば、メドウフォーム油、オリーブ油、アボガド油などが例示できる。この範囲の脂肪酸と、グリセリンのトリエステルは、肌に対して、塗布時の摩擦を低減する点で好ましいものとなることから、塗布時の伸び広がりに優れるものなり、好ましい。
【0037】
さらに、ここでトリエステルとなる炭素数8〜22の脂肪酸において、脂肪酸の炭素数は、12〜22の範囲にあるものが好ましく、16〜22の範囲にあるものがさらに好ましい。このような成分は、天然油、特に植物油に多く含まれ、メドウフォーム油、オリーブ油、アボガド油などが例示できる。
【0038】
炭素数8〜22の脂肪酸と、グリセリンとのトリエステルは、成分(D)25℃で液状の油剤において20%以上であると、本発明において、塗布時の伸び広がりの点でより好ましいものとすることができ、さらに40%以上とすることで、その効果をさらに高めることとなり、60%以上とすると、さらに好ましい。
【0039】
上記した成分(B)、成分(C)の含有質量割合(B)/(C)を特定の範囲とすることより、肌の柔軟性及び、肌のハリ感をさらに向上させることが可能となる。このような割合は、特に限定されるものではないが、(B)/(C)が、0.05〜10の範囲であることが好ましく、0.1〜5の範囲がより好ましい。
【0040】
また、上記した成分(C)、成分(D)の含有質量割合(C)/(D)を特定の範囲とすることより、成分(C)によるべたつきを抑え滑らかな塗布性をさらに向上させることが可能となる。このような比率としては、特に限定されるものではないが、(C)/(D)が、1以下であることが好ましく、0.5以下とすることがより好ましい。
【0041】
本発明に用いる成分(E)水は、水中油型乳化組成物とするために含有されるものであり、化粧料に一般に用いられるものであれば、特に制限されない。水の他にも精製水、温泉水、深層水、或いは植物の水蒸気蒸留水でもよく、必要に応じて1種または2種以上を適宜選択して用いることができる。また含有量は、特に限定されず、適宜、他の成分量に応じて含有することができるが、概ね30〜80%の範囲で用いることができる。
【0042】
本発明の水中油型乳化組成物は、上記成分(A)〜(E)を含有することにより、塗布時の伸び広がりに優れながら、肌の柔軟性、肌のハリ感に優れる水中油型乳化組成物にすることが可能となる。これは従来において、高融点の油剤等を含有する技術に対して、塗布時の伸び広がりに優れたものとすることができる。
【0043】
なお、高融点の油剤は、融点が高くなるほど使用する際の、塗布時の伸び広がりに影響する場合もあることから、融点60℃以上のものを意味する。そのため、本発明を用いることにより、高融点の油剤を特に必要としないものとすることもできる。本発明の効果の観点から、水中油型乳化組成物中において、5%未満が好ましく、1%未満がさらに好ましく、そして0.1%未満とすることがより好ましく、全く含まないものとすることも可能である。このように高融点の油剤の含有量を減量することで、塗布時の伸び広がりに優れたものとすることができ(B好ましい。
【0044】
本発明の水中油型乳化組成物の製造方法は、公知の乳化方法であれば特に限定されることなく製造可能である。具体的には、分散乳化法、転送乳化法、ゲル乳化法、転相温度乳化法等である。好ましいものを例示するならば、あらかじめ成分(E)を含む水性成分を調製しておき、これに成分(A)〜(D)の油性成分を添加混合して得られる分散乳化法を用いることで、経時安定性に優れた水中油型乳化組成物とすることができる。
【0045】
本発明の水中油型乳化組成物には、上記成分の他に、本発明の効果を妨げない範囲で通常の化粧料に含有される任意成分、すなわち、低級アルコールや多価アルコール以外の水性成分、油剤、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、成分(A)以外の界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、着色剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、美容成分等を含有することができる。
【0046】
本発明の水中油型乳化組成物は、他の成分との併用により種々の剤型とすることもできる。具体的には、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状、固形状等、種々の剤型にて実施することができる。
【0047】
本発明の水中油型乳化組成物は、種々の用途の化粧料として利用できる。例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、マッサージ化粧料、パック化粧料、ハンドクリーム、ボディローション、ボディクリーム、メーキャップ化粧料、化粧用下地化粧料、目元用クリーム、日焼け止め、ヘアクリーム、ヘアワックス等の化粧料を例示することができる。その使用方法は、手や指、コットンで使用する方法、不織布等に含浸させて使用する方法等が挙げられる。
【0048】
本発明の水中油型乳化組成物は、皮膚外用剤の用途としても利用可能である。例えば、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤等が挙げられる。またその使用方法は、前記した化粧料と同様に挙げることができる。
【実施例1】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0050】
本発明品1〜15及び比較品1〜6:水中油型乳化クリーム
下記表1〜3に示す処方の水中油型乳化クリームを調製し、塗布時の伸び広がり、肌の柔軟性、肌のハリ感について下記の方法により評価した。その結果も併せて表1〜3に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
(製造方法)
A:成分1〜3を70℃で均一に溶解混合する。
B:成分4〜19を70℃で均一に溶解混合する。
C:AにBを添加し70℃で乳化する。
D:Cに成分20〜22を添加混合した後、40℃まで冷却して水中油型乳化クリームを得た。
【0055】
(評価項目)
イ.塗布時の伸び広がり
ロ.肌の柔軟性
ハ.肌のハリ感
【0056】
(評価方法)
[イ、ロ、ハについて(官能評価)]
各試料について専門パネル20名が皮膚に塗布した時に感じる、塗布時の伸び広がり、肌の柔軟性、肌のハリ感をパネル各人が下記絶対評価にて5段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0057】
(塗布時の伸び広がりの評価)
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:非常に肌に滑らかに伸び広がったと感じる
4点:肌に滑らかに伸び広がったと感じる
3点:普通
2点:あまり肌に滑らかに伸び広がったと感じない
1点:肌に滑らかに伸び広がったと感ない
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0058】
(肌の柔軟性の評価)
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:非常に肌が柔らかくなったと感じる
4点:肌が柔らかくなったと感じる
3点:普通
2点:あまり肌が柔らかくなったと感じない
1点:肌が柔らかくなったと感じない
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0059】
(肌のハリ感の評価)
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:ハリ感を非常に感じる
4点:ハリ感を感じる
3点:普通
2点:あまりハリ感を感じない
1点:ハリ感を感じない
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0060】
表1〜3の結果から明らかなように、本発明品1〜15の水中油型乳化クリームは、比較品1〜6の水中油型乳化クリームに比べ、塗布時の伸び広がり、肌の柔軟性、肌のハリ感の全てにおいて優れたものであった。
これに対して成分(A)を含有していない比較品1では乳化不良で水中油型乳化クリームを調製することができず、評価することができなかった。また、成分(A)を他の乳化剤に置き換えた比較品2では、肌の柔軟性に劣っていた。また、成分(B)を含有していない比較品3では特に肌の柔軟性の点で、満足いくものが得られなかった。また、成分(C)を含有していない比較品4では特に肌のハリ感の点で、他の比較品よりも劣っていた。成分(B)及び成分(C)の代わりに、成分(B)及び成分(C)の数平均分子量の範囲内に分子量分布を持つ流動イソパラフィン(数平均分子量400)を含有した比較品5では、肌の柔軟性及び肌のハリ感の点で、本発明品1と比較して劣ったものであった。このことから成分(B)及び成分(C)の数平均分子量の範囲内に一部分子量分布が重なると考えられる流動イソパラフィンを含有したとしても、本発明品と同様の効果が得られるわけではないことが分かった。また、成分(D)を含有していない比較品6では、塗布時の伸び広がりに劣っているだけではなく、肌の柔軟性、肌のハリ感においても本発明品に比べ劣るものであった。
以上の検討結果から、本発明品である成分(A)〜成分(E)の全てを含有したものでなければ、塗布時の伸び広がり、肌の柔軟性、肌のハリ感に優れたものとはならないことが示された。
【0061】
実施例2:水中油型乳化アイクリーム
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質 1.0
2.ステアリン酸メチルタウリンNa 0.5
3.流動イソパラフィン(注1) 3.0
4.流動イソパラフィン(注4) 2.0
5.セトステアリルアルコール 1.5
6.親油型モノステアリン酸グリセリル 0.5
7.メドウフォーム油 1.0
8.アボガド油 1.0
9.トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル 1.0
10.ワセリン 1.0
11.オレイン酸フィトステリル 0.5
12.1,3−ブチレングリコール 8.0
13.グリセリン 4.0
14.精製水 残部
15.カルボキシビニルポリマー(注9) 0.1
16.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体(注10) 0.2
17.トリエタノールアミン 0.1
18.グリコシルトレハロース 2.0
19.エタノール 5.0
20.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
21.フェノキシエタノール 適量
22.香料 適量
注9)カーボポール980(LUBRIZOL社製)
注10)ペミュレンTR−1(NOVEON社製)
【0062】
(製造方法)
A:成分1〜11を70℃で均一に溶解混合する。
B:成分12〜14を70℃で均一に溶解混合する。
C:AにBを添加し70℃で乳化する。
D:Cを40℃まで冷却し、成分15〜22を添加して均一に混合し、水中油型乳化アイクリームを得た。
【0063】
実施例2の水中油型乳化アイクリームは、塗布時の伸び広がりに優れながら、肌の柔軟性、肌のハリ感に優れる水中油型乳化組成物であった。
【0064】
実施例3:水中油型乳化美容液
(成分) (%)
1.水素添加大豆リン脂質 1.0
2.水素添加リゾリン脂質 0.1
3.流動イソパラフィン(注11) 2.0
4.流動イソパラフィン(注3) 0.5
5.セトステアリルアルコール 1.0
6.マカデミアンナッツ油 2.0
7.オリーブ油 1.0
8.トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル 1.0
9.オレイン酸エチル 0.1
10.ジブチルヒドロキシトルエン 適量
11.1,3−ブチレングリコール 6.0
12.ジプロピレングリコール 2.0
13.精製水 残部
14.カルボマー(注9) 0.1
15.キサンタンガム 0.1
16.アルカリゲネス産生多糖体 0.02
17.水酸化ナトリウム 0.04
18.グリコシルトレハロース 2.0
19.エタノール 3.0
20.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
21.フェノキシエタノール 適量
22.香料 適量
注11) クロラータムLES(クローダジャパン社製)
【0065】
(製造方法)
A:成分1〜10を70℃で均一に溶解混合する。
B:成分11〜13を70℃で均一に溶解混合する。
C:AにBを添加し70℃で乳化する。
D:Cを40℃まで冷却し、成分14〜22を添加して均一に混合し、水中油型乳化美容液を得た。
【0066】
実施例3の水中油型乳化美容液は、塗布時の伸び広がりに優れながら、肌の柔軟性、肌のハリ感に優れる水中油型乳化組成物であった。
【0067】
実施例4:水中油型軟膏剤
(成分) (%)
1.ステアリン酸 18.0
2.水素添加リン脂質 0.1
3.流動イソパラフィン(注1) 0.2
4.流動イソパラフィン(注5) 0.2
5.セトステアリルアルコール 4.0
6.メドウフォーム油 2.0
7.トリエタノールアミン 5.0
8.グリセリン 適量
9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1
10.精製水 残部
【0068】
(製造方法)
A:成分7〜10を70℃で均一に溶解混合する。
B:成分1〜6を70℃で均一に溶解混合する。
C:AにBを徐々に加え、これを冷却しながら混合し、軟膏剤を得た。
【0069】
実施例4の水中油型軟膏剤は、塗布時の伸び広がりに優れながら、肌の柔軟性、肌のハリ感に優れる水中油型乳化組成物であった。