特許第6336346号(P6336346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6336346点火時期制御装置および点火時期制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336346
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】点火時期制御装置および点火時期制御システム
(51)【国際特許分類】
   F02P 3/04 20060101AFI20180528BHJP
   F02P 5/152 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   F02P3/04 303D
   F02P5/152
【請求項の数】3
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-139784(P2014-139784)
(22)【出願日】2014年7月7日
(65)【公開番号】特開2016-17437(P2016-17437A)
(43)【公開日】2016年2月1日
【審査請求日】2017年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 功
(72)【発明者】
【氏名】矢澤 克則
【審査官】 北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−111922(JP,A)
【文献】 特開昭63−277863(JP,A)
【文献】 特開2002−138934(JP,A)
【文献】 特開昭55−005467(JP,A)
【文献】 特開平01−318744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 3/04
F02P 5/152
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のノッキングを検出するノッキング検出装置と、
前記ノッキング検出装置から得られる前記ノッキングの状態を示すノッキング信号と、外部の電子制御装置から得られる前記内燃機関の点火時期に関する点火信号と、に基づいて、前記内燃機関の点火時期を調整する点火時期調整装置と、
を備える点火時期制御装置であって、
前記内燃機関は複数の気筒を備える多気筒内燃機関であり、
前記複数の気筒に対する複数の前記点火信号を合成し、その合成点火信号を前記点火時期調整装置に送信する信号合成部と、
1個の合成点火信号を、各気筒の点火時期に応じた複数の点火信号に分配する信号分配部と、
を備え、
前記点火時期調整装置は、前記合成点火信号を前記点火信号として用いて点火時期を調整して、調整後合成点火信号を生成し、
前記信号分配部は、前記点火時期調整装置で生成された前記調整後合成点火信号を、各気筒の点火時期に応じた複数の調整後点火信号に分配すること、
を特徴とする点火時期制御装置。
【請求項2】
前記点火信号は、点火時期の基準となるタイミングを示す基準点火信号であること、
を特徴とする請求項1に記載の点火時期制御装置。
【請求項3】
内燃機関の点火時期に関する信号を出力する電子制御装置と、
前記点火時期に関する信号を調整する点火時期制御装置と、
を備えた点火時期制御システムであって、
前記内燃機関は複数の気筒を備える多気筒内燃機関であり、
前記点火時期制御装置は、請求項1または請求項2に記載の点火時期制御装置であること、
を特徴とする点火時期制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(エンジン)のノッキングの状態によって点火時期を制御する点火時期制御装置および点火時期制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンのノッキングを防止して好適にエンジンの動作を制御する技術として、エンジンにノッキングセンサを取り付け、ノッキングセンサの出力に基づいて点火時期を制御する点火時期制御が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この点火時期制御とは、ノッキングセンサによってノッキングが検出されなければ段階的に点火時期を進角させ、ノッキングが検出された場合には、点火時期を遅角させることによって、ノッキングの発生を防止しつつ、エンジンの出力を最大限に発揮させようとする制御である。
【0004】
上述したノッキングセンサの出力を利用した点火時期制御は、4輪の自動車には一般的である。しかし、例えば小型発電機等の汎用エンジンや2輪車用エンジンの様な構成がシンプルなエンジンにおいては、エンジン回転数等のエンジン制御を行う電子制御装置は使用されているものの、通常、ノッキングセンサは使用されておらず、そのためノッキングを防止するための点火時期制御は行われていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−215141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年では、汎用エンジンや2輪車用エンジンなどの構造がシンプルなエンジンにおいても、燃費と出力の最適化のために、精密な点火制御が求められている。
この対策としては、ノッキングセンサを搭載して、上述した点火時期制御を行うことが考えられるが、下記のような問題がある。
【0007】
つまり、現状の汎用エンジンや2輪車用エンジンなどに、ノッキングセンサを取り付けて点火時期制御を行う場合には、従来のエンジン制御を行う電子制御装置に対して、点火時期制御を行うための設計見直しが必要になるので、その手間(工数)やコストが膨大になるという問題があった。
【0008】
また、複数の気筒を備える多気筒内燃機関において各気筒の点火時期制御を行うには、複数の点火時期制御装置を設ける必要があるが、このような構成を採る場合、コスト増加や設置スペースの増大という問題が生じる。
【0009】
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ノッキングの発生を抑制する点火時期制御の機能を有しない多気筒内燃機関に対して、容易にノッキングの発生を抑制する点火時期制御を可能にする点火時期制御装置及び点火時期制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の点火時期制御装置は、ノッキング検出装置と点火時期調整装置とを備え
る点火時期制御装置であって、さらに、信号合成部と信号分配部とを備える。
ノッキング検出装置は、内燃機関のノッキングを検出する。点火時期調整装置は、ノッキング検出装置から得られるノッキングの状態を示すノッキング信号と、外部の電子制御装置から得られる内燃機関の点火時期に関する点火信号と、に基づいて、内燃機関の点火時期を調整する。
【0011】
この点火時期制御装置が備えられる内燃機関は、複数の気筒を備える多気筒内燃機関である。
信号合成部は、複数の気筒に対する複数の点火信号を合成し、その合成点火信号を点火時期調整装置に送信する。信号分配部は、1個の合成点火信号を、各気筒の点火時期に応じた複数の点火信号に分配する。
【0012】
点火時期調整装置は、合成点火信号を点火信号として用いて点火時期を調整して、調整後合成点火信号を生成する。
信号分配部は、点火時期調整装置で調整された調整後合成点火信号を、各気筒の点火時期に応じた複数の調整後点火信号に分配する。
【0013】
この点火時期制御装置は、ノッキング検出装置と点火時期調整装置とを備えており、しかも、点火時期調整装置に対して、ノッキング信号と点火時期に関する点火信号とが入力される構成である。
【0014】
従って、点火時期調整装置では、ノッキング検出装置から得られるノッキング信号と外部の電子制御装置から得られる点火信号とに基づいて、適切な点火時期となるように点火時期を調整(例えば進角や遅角等の補正)することができる。
【0015】
特に、この点火時期制御装置では、ノッキング制御を行っていないエンジン(例えば、従来の汎用エンジンや2輪車用エンジンなど)に適用できる。即ち、従来のエンジン制御を行う電子制御装置の構成に、本発明の点火時期制御装置を付加するだけで、電子制御装置に対して点火時期制御を行うための設計見直しが不要となり、その設計見直しのための手間(工数)やコストを大きく低減できるという顕著な効果を奏する。
【0016】
また、この点火時期制御装置の制御対象である内燃機関は複数の気筒を備える多気筒内燃機関であり、この点火時期制御装置は、信号合成部と信号分配部とを備える。
このため、この点火時期制御装置においては、信号合成部が複数の点火信号を合成して合成点火信号を生成し、点火時期調整装置がその合成点火信号の点火時期を調整して調整後合成点火信号を生成し、信号分配部が調整後合成点火信号を複数の調整後点火信号に分配する。
【0017】
つまり、この点火時期制御装置は、点火時期調整装置を単数しか備えない構成であるが、信号合成部と信号分配部とを備えることで、多気筒内燃機関における各気筒の点火時期をそれぞれ調整することが可能となる。これにより、この点火時期制御装置を用いることで、多気筒内燃機関における各気筒の点火時期を調整するにあたり、点火時期調整装置に関するコスト増加や設置スペースの増大を抑制できる。
【0018】
よって、本発明によれば、ノッキングの発生を抑制する点火時期制御の機能を有しない内燃機関に対して、容易にノッキングの発生を抑制する点火時期制御が可能になる。さらに、本発明によれば、多気筒内燃機関の点火時期を調整するにあたり、点火時期調整装置に関するコスト増加や設置スペースの増大を抑制できる。
【0019】
なお、前記外部の電子制御装置とは、本発明の点火時期制御装置とは別に設けられた電
子制御装置であり、例えば内燃機関の動作を総合的に制御する電子制御装置(エンジンコントロールユニット:ECU)が挙げられる。
【0020】
(2)本発明の他の局面においては、点火信号は、点火時期の基準となるタイミングを示す基準点火信号である。
点火信号は、点火時期に関する情報を含む信号であり、基準点火信号(例えば後述する基準点火信号A)を点火信号として採用できる。
【0021】
(3)本発明の他の局面における点火時期制御システムは、内燃機関の点火時期に関する信号を出力する電子制御装置と、点火時期に関する信号を調整する点火時期制御装置と、を備えた点火時期制御システムであって、内燃機関は複数の気筒を備える多気筒内燃機関であり、点火時期制御装置は、上述の点火時期制御装置である。
【0022】
本発明の点火時期制御システムは、上述の点火時期制御装置を備えることから、上述の点火時期制御装置と同様に、ノッキングの発生を抑制する点火時期制御の機能を有しない内燃機関に対して、容易にノッキングの発生を抑制する点火時期制御が可能になる。
【0023】
また、本発明の点火時期制御システムは、上述の点火時期制御装置と同様に、多気筒内燃機関の点火時期を調整するにあたり、点火時期調整装置に関するコスト増加や設置スペースの増大を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の点火時期制御装置および点火時期制御システムは、ノッキングの発生を抑制する点火時期制御の機能を有しない内燃機関に対して、容易にノッキングの発生を抑制する点火時期制御が可能になる。
【0025】
また、本発明の点火時期制御装置および点火時期制御システムは、多気筒内燃機関の点火時期を調整するにあたり、点火時期調整装置に関するコスト増加や設置スペースの増大を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施例1の点火時期制御装置が用いられる内燃機関のシステム構成を示す説明図である。
図2】(a)は実施例1の点火時期制御装置のうち、ノッキング検出装置および点火時期調整装置を一部破断して示す平面図、(b)はその点火時期制御装置のうち、ノッキング検出装置および点火時期調整装置を一部破断して示す正面図である。
図3】(a)は実施例1の点火時期制御装置及びその周辺の装置を示す説明図、(b)はその点火時期調整装置の接続端子を示す説明図である。
図4】実施例1の点火時期制御装置及びその周辺の装置の電気的構成を示す説明図である。
図5】1気筒での連続した燃焼サイクルにおける基準点火信号と補正点火信号と中心電極の電圧との関係を示す説明図である。
図6】点火時期の進角や遅角による調整の状態を示すグラフである。
図7】実施例1の点火時期調整装置で行われる補正点火時期算出処理を示すフローチャートである。
図8】実施例1の点火時期調整装置で行われるノッキング検出処理を示すフローチャートである。
図9】実施例1の点火時期調整装置における各部の信号状態を表すタイミングチャートである。
図10】(a)は実施例2の点火時期制御装置を示す平面図、(b)は実施例3の点火時期制御装置を示す平面図、(c)は実施例4の点火時期制御装置を示す平面図である。
図11】(a)は実施例5の点火時期制御装置を示す平面図、(b)はその点火時期制御装置を示す正面図である。
図12】実施例6の点火時期制御装置を含むシステム構成を示す説明図である。
図13】実施例6の点火時期制御装置の変形例のシステム構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明を実施するための形態(実施例)について説明する。
尚、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
【0028】
[1.実施例1]
[1−1.全体構成]
本実施例の点火時期制御装置は、汎用エンジンや2輪車用エンジンなどの各種のエンジン(内燃機関)に用いられるものであり、内燃機関のノッキングを防止するために、点火時期を制御する装置である。なお、以下では、4サイクルの2輪車用エンジンを例に挙げて説明する。
【0029】
まず、本実施例の点火時期制御装置を備えた内燃機関のシステム全体について説明する。
なお、本実施例の内燃機関1は、4気筒を備える多気筒内燃機関であるが、図1では、4気筒のうち1気筒のみを記載しており、他の3気筒については図示を省略している。
【0030】
図1に示す様に、内燃機関(エンジン)1は、エンジン本体3と、エンジン本体3に空気を導入する吸気管5と、吸入空気量を検出するエアフローメータ7と、吸入空気量を調整するスロットルバルブ9と、スロットルバルブ9の開度を検出するスロットル開度センサ11と、燃焼室13内に空気を導入する吸気マニホールド15と、燃料を吸気マニホールド15内に噴射する燃料噴射弁17と、エンジン本体3から(燃焼後の)空気を排出する排気マニホールド19と、排気マニホールド19から排出される排気から空燃比を検出する空燃比センサ21(又は酸素センサ21)などを備えている。
【0031】
また、エンジン本体3のシリンダヘッド23には、各気筒毎に点火プラグ25が取り付けられ、エンジン本体3には、エンジン回転数(回転速度)を検出するエンジン回転数センサ27や、クランク角を検出するクランク角センサ29が取り付けられている。
【0032】
更に、エンジン本体3には、後述する点火時期制御装置31が取り付けられている。この点火時期制御装置31には、イグナイタ33が接続され、イグナイタ33には点火コイル35が接続され、点火コイル35は点火プラグ25に接続されている。なお、イグナイタ33,点火コイル35,点火プラグ25は、4気筒のそれぞれに対応して備えられるが、図1では、1気筒分のみを記載しており、他の3気筒に関する各機器については図示を省略している。
【0033】
また、内燃機関1には、エンジン本体3等の運転状態(例えばエンジン回転数や空燃比センサ21の出力に基づく空燃比フィードバック制御など)を総合的に制御する内燃機関用制御装置(エンジンコントロールユニット)37が設けられている。この内燃機関用制御装置37は、図示しないが、周知のRAM、ROM、CPU等を有するマイコンを備えた電子制御装置(ECU)である。
【0034】
なお、この内燃機関用制御装置37が、本発明における外部の電子制御装置に該当する
。また、以下では、点火時期制御装置31と内燃機関用制御装置37とを備えたシステムを、点火時期制御システム38と称する。
【0035】
内燃機関用制御装置37の入力ポート(図示せず)には、エアフローメータ7、スロットル開度センサ11、空燃比センサ21、エンジン回転数センサ27、クランク角センサ29が接続されており、これらの各機器からの信号(センサ信号等)が入力ポートに入力される。
【0036】
一方、内燃機関用制御装置37の出力ポート(図示せず)には、燃料噴射弁17、点火時期制御装置31が接続されており、これらの機器に対して、内燃機関用制御装置37から、各機器の動作を制御するための制御信号が出力される。なお、内燃機関用制御装置37は、4気筒のそれぞれに対応した制御信号(後述する点火信号A1,A2,A3,A4)を出力する。なお、本実施例では、点火時期制御装置31にイグナイタ33を接続した例を示したが、点火時期制御装置31にイグナイタ33を内蔵する態様を採ってもよい。
【0037】
[1−2.点火時期制御装置]
次に、本実施例の点火時期制御装置31について説明する。
点火時期制御装置31は、ノッキング検出装置41と、点火時期調整装置43と、接続ケーブル45と、信号合成分配器48と、を備える。
【0038】
このうち、ノッキング検出装置41および点火時期調整装置43は、図2(a),(b)に示す様に、接続ケーブル45を介して、電気的及び機械的に分離不可能に一体に構成される。
【0039】
ノッキング検出装置41は、周知の圧電素子65を用いた非共振型ノッキングセンサであり、主体金具47の軸孔47aに取付用ボルト(図示せず)が挿入される構造を有し、取付用ボルトによってエンジン本体3のシリンダブロック49(図1参照)に固定されるものである。
【0040】
詳しくは、ノッキング検出装置41は、ほぼ全体が樹脂成形体51によってモールドさており、略円筒形状の本体部53と、本体部53の側面から突出する略直方体形状のコネクタ部55と、を備えている。
【0041】
このうち、本体部53は、円筒形状の筒状部57とその一端側(図2(b)の下方)に設けられた環状の鍔部59とからなる主体金具47を有している。筒状部57には、鍔部59側から、環状の第1絶縁板61、環状の第1電極板63、環状の圧電素子65、環状の第2電極板67、環状の第2絶縁板69、環状のウエイト71、環状の皿バネ73、環状のナット75が配置されている。また、第1電極板63と第2電極板67とには、両電極板63、67間に発生した出力信号を取り出すための第1出力端子81と第2出力端子83とが、それぞれ接続されている。
【0042】
点火時期調整装置43は、点火時期を調節する制御装置であり、内燃機関用制御装置37と同様に、周知のRAM、ROM、CPU等を有するマイコン(図示せず)を備えた電子制御装置である。
【0043】
接続ケーブル45は、内部に第1出力端子81と第2出力端子83とに接続された各電気配線(図示せず)が設けられているケーブルであり、この接続ケーブル45の両端には、両電気配線と接続された第1コネクタ85と第2コネクタ87とが設けられている。
【0044】
つまり、第1コネクタ85は、ノッキング検出装置41のコネクタ部55の開口部55
aに嵌め込まれるとともに、各電気配線が第1出力端子81、第2出力端子83に接続されている。また、第2コネクタ87は、点火時期調整装置43の凹状のコネクタ部89に嵌め込まれるとともに、各電気配線が、点火時期調整装置43内の内部配線(図示せず)と接続されている。
【0045】
特に本実施例では、接続ケーブル45の第1コネクタ85は、ノッキング検出装置41のコネクタ部55に嵌め込まれるとともに、接着剤によって固定されて分離不可能に一体に構成されている。同様に、接続ケーブル45の第2コネクタ87は、点火時期調整装置43のコネクタ部89に嵌め込まれるとともに、接着剤によって固定されて分離不可能に一体に構成されている。
【0046】
なお、本実施例では、ノッキング検出装置41および点火時期調整装置43は、気筒ごとに1個ずつ設けられるものではなく、4気筒に対してノッキング検出装置41および点火時期調整装置43がそれぞれ1個ずつ設けられる。
【0047】
図3(a)に示すように、点火時期調整装置43は、1組のリード線(信号線)97、99を介して、信号合成分配器48と着脱可能に接続されている。なお、リード線97、99は、点火時期調整装置43および信号合成分配器48の両方に対して着脱可能とされている。
【0048】
信号合成分配器48は、4本の基準点火信号線104を介して内燃機関用制御装置37と着脱可能に接続されている。なお、4本の基準点火信号線104は、第1気筒から第4気筒のそれぞれに対応した第1基準点火信号線104a、第2基準点火信号線104b、第3基準点火信号線104c、第4基準点火信号線104dである。
【0049】
信号合成分配器48は、4本の補正点火信号線105を介して4個のイグナイタ33と着脱可能に接続されている。なお、4本の補正点火信号線105は、第1気筒から第4気筒のそれぞれに対応した第1補正点火信号線105a、第2補正点火信号線105b、第3補正点火信号線105c、第4補正点火信号線105dである。なお、図3(a)では、4気筒に対するイグナイタ33,点火コイル35,点火プラグ25のうち1気筒分のみを記載しており、他の3気筒に関するイグナイタ33,点火コイル35,点火プラグ25については図示を省略している。
【0050】
[1−3.点火時期制御装置に関する電気的構成]
次に、点火時期制御装置31に関する電気的構成などについて説明する。
図3(a)に示す様に、点火時期制御装置31の点火時期調整装置43は、バッテリ91から電力の供給を受けて作動するものである。よって、点火時期調整装置43の接続端子には、図3(b)に示す様に、バッテリ91からの電力を受けるための一対の電源端子93、95が設けられている。信号合成分配器48も、バッテリ91から電力の供給を受けて作動するものであるが、図3(a)では、バッテリ91から信号合成分配器48への電力供給線や、信号合成分配器48における電源端子については、図示を省略している。
【0051】
点火時期調整装置43は、リード線97を介して、信号合成分配器48と接続されており、後述する合成点火信号Amを信号合成分配器48から受信するための受信用端子101(図3(b)参照)を備えている。受信用端子101は、リード線97に電気的に接続されている。
【0052】
更に、点火時期調整装置43は、リード線99を介して、信号合成分配器48と接続されており、信号合成分配器48に対して点火コイル35を作動させるため信号(後述する(調整後の)合成点火信号(B))を出力するための点火用端子103(図3(b)参照
)が設けられている。点火用端子103は、リード線99に電気的に接続されている。
【0053】
詳しくは、図4に示す様に、点火コイル35は、一次巻線35aと二次巻線35bとを備えており、一次巻線35aの一端には、バッテリ91の正極が接続され、他端には、(イグナイタ33の)npn型のパワートランジスタ33aのコレクタが接続されている。このパワートランジスタ33aは、一次巻線35aへの通電・非通電を切り替えるスイッチング素子である。なお、パワートランジスタ33aのエミッタは、バッテリ91の負極と同電位のグランドに接地されている。イグナイタ33は、パワートランジスタ33aで構成されるものに限定されず、IGBTやFET等を用いてもよい。
【0054】
一方、二次巻線35bの一端は、バッテリ91の負極と同電位のグランドに接地され、他端は、点火プラグ25の中心電極25aに接続されている。なお、点火プラグ25の接地電極25bは、バッテリ91の負極と同電位のグランドに接地されている。
【0055】
また、本実施例では、内燃機関用制御装置37と信号合成分配器48とが接続されており、内燃機関用制御装置37から信号合成分配器48に対して、4気筒のそれぞれに対応した4個の点火信号A1,A2,A3,A4が出力される。
【0056】
信号合成分配器48は、4個の点火信号A1,A2,A3,A4を合成して1個の合成点火信号Amを生成し、その合成点火信号Amを点火時期調整装置43に対して出力する。また、信号合成分配器48は、点火時期調整装置43から受信した1個の補正合成点火信号Bmを分配して4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4を生成し、4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4を、それぞれ対応する気筒のイグナイタ33に対して出力する。
【0057】
なお、信号合成分配器48の詳細構成については、後述する。
各気筒では、補正点火信号B1,B2,B3,B4に基づいて、各パワートランジスタ33aがスイッチング動作を行って、各点火コイル35の一次巻線35aへの通電・非通電が切り替えられる。
【0058】
更に、点火時期調整装置43は、点火時期調整装置43での異常の有無を診断するOBDシステム44を備える。
OBDシステム44は、点火時期調整装置43での短絡異常、断線異常などの有無を診断する。OBDシステム44は、さらに、ノッキング検出装置41での異常の有無についても診断する。具体的には、OBDシステム44は、ノッキング検出装置41での短絡異常、断線異常、劣化異常、ゆるみ異常などの少なくとも1つの異常の有無を診断する。
【0059】
なお、OBDシステム44による異常の有無の診断方法としては、公知の手法(例えば、特開昭58−011824号公報、特開平7−305649号公報などに記載の手法)を用いることができる。
【0060】
また、点火時期調整装置43は、OBDシステム44での診断により検出された異常状態に関する情報を記憶する異常情報記憶メモリ46を備える。
異常情報記憶メモリ46は、検出した異常の種類(短絡異常、断線異常、劣化異常、ゆるみ異常など)、異常の発生箇所(点火時期調整装置43、ノッキング検出装置41)などの情報を記憶する。
【0061】
異常情報記憶メモリ46は、不揮発性の記憶媒体で構成されており、点火時期調整装置43が停止された後も、異常状態に関する情報を記憶することが可能である。
[1−4.点火時期制御の基本的な動作]
次に、上述した点火時期制御装置31を用いた点火時期制御の基本的な動作について説明する。
【0062】
内燃機関用制御装置37では、例えばエンジン回転数や吸入空気量などに基づいて、点火時期の基準となる基準点火時期を決定する。この基準点火時期とは、内燃機関1毎のばらつきや気候変化等を考慮したときにも当該内燃機関1が破損しないような十分なマージンを持って設定された点火時期を、内燃機関1の運転状態毎に複数設定したマップを用いた上で、このマップと現在の運転状態とを対応(照合)して設定されるベースとなる点火時期(即ち、点火時期調整装置43によって調整される対象の点火時期)である。
【0063】
なお、この基準点火時期を示す信号が、基準点火信号(即ち基準点火信号A:図5の上図参照)である。そして、内燃機関用制御装置37では、各気筒に対応した基準点火信号Aとしての4個の点火信号A1,A2,A3,A4が生成され、4個の点火信号A1,A2,A3,A4が信号合成分配器48に対して出力される。
【0064】
4個の点火信号A1,A2,A3,A4を受信する信号合成分配器48は、4個の点火信号A1,A2,A3,A4を合成して生成される合成点火信号Amを点火時期調整装置43に対して出力する。
【0065】
合成点火信号Amを受信する点火時期調整装置43では、ノッキング検出装置41からの信号(ノッキング信号)を受信し、そのノッキング信号に基づいて、ノッキング(ノック)の発生の有無を検出する。例えば、ノッキング信号のピーク値の大きさに基づいて、ノッキングの有無を判定する。
【0066】
そして、点火時期調整装置43では、ノッキングの発生状態等に応じて、点火時期を調整(補正)して、補正点火時期を決定する。なお、この補正点火時期を示す信号が、補正点火信号(即ち補正点火信号B:図5の中図参照)である。
【0067】
点火時期調整装置43は、ノッキング状態に基づいて合成点火信号Amを調整することで補正合成点火信号Bmを生成し、補正合成点火信号Bmを信号合成分配器48に対して出力する。つまり、点火時期調整装置43では、基準点火信号Aとしての合成点火信号Amが調整されることで、補正点火信号Bとしての補正合成点火信号Bmが生成される。
【0068】
具体的には、図6に示す様に、ノッキングが発生していない場合には、所定期間毎に、点火時期を最大進角に至るまで徐々に進角させ、ノッキングが発生すると基準点火時期に戻すように、補正点火時期を設定する。なお、前記図5に示す様に、エンジン起動時や加速時等の運転過渡期といったエンジン回転数の変動が大きな場合には、前記点火時期を補正する処理は行わない。
【0069】
次に、上述のように補正点火時期が決定されると、図4に示す様に、点火時期調整装置43から、信号合成分配器48に対して、補正合成点火信号Bmが出力される。
信号合成分配器48では、補正合成点火信号Bmが分配されて4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4が生成され、4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4が、それぞれ対応する気筒のイグナイタ33に対して出力される。つまり、信号合成分配器48では、各気筒に対応した補正点火信号Bとしての4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4が生成され、4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4がそれぞれ対応する気筒のイグナイタ33に対して出力される。
【0070】
イグナイタ33では、パワートランジスタ33aのベースに、補正点火信号Bが与えられると、この補正点火信号Bのオン・オフに応じてスイッチング動作が行われる。
詳しくは、補正点火信号Bがオフ(ローレベル:一般にグランド電位)である場合には、ベース電流が流れずパワートランジスタ33aはオフ状態(遮断状態)となり、一次巻線35aに電流(一次電流i1)が流れることはない。また、補正点火信号Bがオン(ハイレベル:点火時期調整装置43からの正の電圧が供給される状態)である場合には、ベース電流が流れてパワートランジスタ33aはオン状態(通電状態)となり、一次巻線35aに電流(一次電流i1)が流れる。この一次巻線35aへの通電により、点火コイル35に磁束エネルギーが蓄積される。
【0071】
また、補正点火信号Bがハイレベルであり一次巻線35aに一次電流i1が流れている状態で、補正点火信号Bがローレベルになると、パワートランジスタ33aがオフ状態となり、一次巻線35aへの一次電流i1の通電が遮断(停止)される。すると、点火コイル35における磁束密度が急激に変化して、二次巻線35bに点火用電圧が発生し、これが点火プラグ25に印加されることで、点火プラグ25の中心電極25aと接地電極25bとの間に火花放電が発生する(図5(c)参照)。このときに二次巻線35bに流れる電流が二次電流i2である。
【0072】
なお、上述した基準点火信号A及び補正点火信号Bには、ローレベルからハイレベルになるタイミングと、ハイレベルからローレベルになるタイミングとの情報が含まれている。このうち、ハイレベルからローレベルになるタイミングは、所望の点火時期(発火する時期)である。
【0073】
[1−5.点火時期調整装置にて行われる処理]
次に、点火時期調整装置43にて行われる処理について説明する。
まず、補正点火時期算出処理について説明する。
【0074】
本処理は、合成点火信号Amに基づいて補正点火時期を算出するとともに、合成点火信号Amを利用してエンジン回転数および回転数偏差を算出する処理である。
図7のフローチャートに示す様に、ステップ(S)100では、タイマー記憶変数Nをリセット(0に設定)するとともに、気筒記憶変数Mをリセット(0に設定)する。
【0075】
続くステップ110では、回転数格納/ノックウィンドウ(Window)変数Sをリセットする。この回転数格納/ノックウィンドウ変数Sとは、ステップ240にてエンジン回転数を順次記憶させていったときの時系列を示す変数、かつ、ステップ250にてノッキングを検出するクランク角ウィンドウの値を順次記憶させていったときの時系列を示す変数である。
【0076】
続くステップ120では、タイマーTの初期値T(0)を0に設定する。
続くステップ130では、ノック検知ウィンドウKNWの初期値KNW(0)を0に設定する。このノック検知ウィンドウKNWとは、ノッキングの発生する可能性のある領域(所定の回転角の区間)を示すものであり、点火時期を起点に設定される特定の期間に相当し、ノッキング信号の解析区間に相当するものである。
【0077】
続くステップ140では、信号合成分配器48から受信した合成点火信号Amに基づいて、気筒記憶変数Mが1,2,3,4となるそれぞれの補正点火時期TIG(M)について、基準点火時期(入力点火時期)TIGINを補正点火時期TIG(M)として設定する。なお、ここでの補正点火時期TIG(M)の値は、まだ補正が行われていない値である。
【0078】
続くステップ150では、点火信号間隔測定タイマーT1をリセットする。
続くステップ160では、合成点火信号Amが入力されたか否かを判定する。詳細には
、合成点火信号Amの立ち上がり時期であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ170に進み、一方否定判断されると待機する。
【0079】
ステップ170では、合成点火信号Amが入力されてからの時間を計測するために、点火信号間隔測定タイマーT1をスタートする。
続くステップ180では、再度、合成点火信号Amが入力されたか否かを判定する。詳細には、合成点火信号Amの立ち上がり時期であるか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ190に進み、否定判断されると待機する。
【0080】
ステップ190では、合成点火信号Amが入力されたので、タイマー記憶変数Nをカウントアップする(N=N+1)とともに、気筒記憶変数Mをカウントアップ(M=M+1)する。
【0081】
続くステップ200では、今回(N回目)、合成点火信号Amが入力された時間を、タイマーT(N)として記憶する。即ち、点火信号間隔測定タイマーT1の計数値を、タイマーT(N)の値として記憶する。
【0082】
続くステップ210では、今回(N回目)、合成点火信号Amが入力された時間(T(N))と、前回(N−1回目)、合成点火信号Amが入力された時間(T(N−1))との差ΔT(N)を求める。即ち、連続する合成点火信号Amの間の時間(換言すれば、合成点火信号を受信する時間間隔)を求める。
【0083】
なお、本実施例では、連続する合成点火信号Amの間の時間(換言すれば、合成点火信号を受信する時間間隔)を演算するにあたり、合成点火信号Amの立ち上がり時期(ローレベルからハイレベルになるタイミング)の時間間隔ではなく、合成点火信号Amの立ち下がり時期(ハイレベルからローレベルになるタイミング)の時間間隔に基づいて合成点火信号を受信する時間間隔を演算する。
【0084】
続くステップ220では、「2回転×60sec/(ΔT(N)×Cy)」の演算(4サイクルエンジンにて1点火/2回転の場合)によって、エンジン回転数(rpm)を算出する。なお、Cyは内燃機関の気筒数であり、本実施例ではCy=4である。
【0085】
本実施例の内燃機関は、4気筒を備える多気筒内燃機関であり、エンジン回転数が1回転する期間中に、気筒数に応じた個数の合成点火信号Amが入力される。このため、合成点火信号Amに基づいてエンジン回転数を演算する際には、気筒数を考慮する必要があり、本実施例では、気筒数Cyを含んだ上記の演算式に基づいてエンジン回転数を演算している。
【0086】
続くステップ230では、回転数格納/ノックウィンドウ変数Sをカウントアップする。
続くステップ240では、前記ステップ220で求めたエンジン回転数、即ち、回転数格納/ノックウィンドウ変数Sに対応したエンジン回転数を、RPN(S)として格納(記憶)する。
【0087】
続くステップ250では、ノック検知ウィンドウKNW(S)の演算を行う。即ち、回転数格納/ノックウィンドウ変数Sに対応したノック検知ウィンドウKNW(S)の演算を、公知の演算手法によって行って、その値を記憶する。
【0088】
続くステップ260では、回転数格納/ノックウィンドウ変数Sが2を上回るか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ270に進み、一方否定判断されると前記ス
テップ180に戻る。
【0089】
ステップ270では、後述するノッキング検出処理を行って、ノッキングを検出する。
続くステップ280では、エンジン回転数の「|RPNS(S)−RPNS(S−1)|」の演算、即ち、今回(S回目)のエンジン回転数RPNS(S)と前回(S−1回目)のエンジン回転数RPNS(S−1)との差分の絶対値を求めることにより、エンジン回転数の変動の大きさを示すエンジン回転数の偏差(回転数偏差)ΔRPN(M)を算出する。この回転数偏差ΔRPN(M)は、気筒記憶変数Mに対応する数値(回転数偏差)として算出されている。
【0090】
続くステップ290では、回転数偏差ΔRPN(M)が所定の判定値RPNsを下回るか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ300に進み、一方否定判断されるとステップ310に進む。本実施例では、判定値RPNsとして500[rpm]が設定されている。
【0091】
ステップ310では、基準点火時期TIGINそのものを気筒記憶変数Mに対応する補正点火時期TIG(M)として設定し、ステップ360に進む。ステップ290で否定判定される場合、回転数偏差ΔRPN(M)が大きく、内燃機関の運転状態が点火時期の調整に適した状態では無いため、点火時期を進角させることは適当ではない。
【0092】
このため、ステップ310では、基準点火時期TIGINそのものを補正点火時期TIG(M)として設定することで、実質的には点火時期の補正を行うことなく、点火時期の補正が行われていない「合成点火信号Am」をそのまま出力するように、補正点火時期TIG(M)を設定する。
【0093】
一方、ステップ300では、ノッキングが発生しているか否かを、後述するノッキング検出処理にて設定されるノック検知フラグKNS(M)が1であるか否かによって判定する。なお、ノック検知フラグKNS(M)は、気筒記憶変数Mに対応するノック検知フラグである。ここで肯定判断されるとステップ320に進み、一方否定判断されるとステップ330に進む。
【0094】
ステップ320では、ノッキングが発生しているので、ノッキングの発生を防止するために、点火時期を遅角する。具体的には、基準点火時期TIGINそのものを補正点火時期TIG(M)として設定し(図6参照)、ステップ360に進む。
【0095】
一方、ステップ330では、ノッキングが発生していないので、点火時期(補正点火時期TIG(M))が最大進角TIGMか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ340に進み、一方否定判断されるとステップ350に進む。
【0096】
ステップ340では、補正点火時期TIG(M)が最大進角TIGMであるので、その最大進角TIGMの値を補正点火時期TIG(M)の値として設定し、ステップ360に進む。
【0097】
一方、ステップ350では、補正点火時期TIG(M)が最大進角TIGMではないので、点火時期を所定値ΔTIG分進角させる。具体的には、補正点火時期TIG(M)から所定値(補正進角値)ΔTIGを引いて、今回の補正点火時期TIG(M)として設定し、ステップ360に進む。
【0098】
S360では、気筒記憶変数Mが気筒数Cy以上であるか否かを判定し、肯定判断されるとステップ370に進み、一方否定判断されると前記ステップ180に戻る。なお、気
筒数Cyは、上述したように、本実施例ではCy=4である。
【0099】
ステップ370では、気筒記憶変数Mをリセット(0に設定)し、前記ステップ180に戻る。
つまり、S360では、気筒記憶変数Mに基づいて、第1気筒から第4気筒までの一連の点火信号に対応する合成点火信号Amが入力されたか否かを判定しており、肯定判定されると気筒記憶変数Mをリセットした上で前記ステップ180に戻り、否定判定されると気筒記憶変数Mを変更することなく前記ステップ180に戻る。
【0100】
このようにして、補正点火時期算出処理では、気筒記憶変数Mに対応する補正点火時期TIG(M)をそれぞれ演算することで、第1気筒から第4気筒までのそれぞれに対応する補正点火時期TIG(M)を演算する。
【0101】
次に、ノッキング検出処理について説明する。
本処理は、ノッキング信号に基づいて、ノッキングを検出する処理である。本処理は所定期間毎に実施される。
【0102】
図8に示す様に、ステップ400にて、気筒記憶変数Mに対応するノック検知フラグKNS(M)をクリア(0に設定)する。
続くステップ410では、合成点火信号Amがハイレベルからローレベルになるタイミング(立ち下がり時期)であるか否か(換言すれば、点火時期であるか否か)を判定する。具体的には、ステップ410では、直前のステップ180で立ち上がり時期と判定された合成点火信号Amの立ち下がり時期であるか否かを判定している。ここで肯定判断されるとステップ420に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0103】
ステップ420では、ノック検知ウィンドウ測定タイマーをスタートする。
続くステップ430では、ステップ250にて演算したノック検知ウィンドウKNWに対応する期間内にあるか否か(換言すれば、ノック検知ウィンドウKNW内であるか否か)をノックウィンドウ測定タイマーの値に基づき判定する。ここで肯定判断されるとステップ440に進み、一方否定判断されると同じステップ430に戻って同様な処理を繰り返す。
【0104】
ステップ440では、ノッキング検出装置41から得られたノッキング信号が有効であると設定する。
続くステップ450では、ステップ250にて演算したノック検知ウィンドウKNWに対応する期間が経過したか否か(換言すれば、ノック検知ウィンドウKNW外であるか否か)をノックウィンドウ測定タイマーの値に基づき判定する。ここで肯定判断されるとステップ460に進み、一方否定判断されると前記ステップ440に戻って同様な処理を繰り返す。
【0105】
ステップ460では、ノックウィンドウ測定タイマーをリセットする。
続くステップ470では、ノッキング信号のピーク値KninPkを算出する。
続くステップ480では、ノッキング信号のピーク値KninPkが、ノッキングの有無を判定する所定の判定値Thを上回るか否か、即ち、ノッキングが発生したか否かを判定する。ここで肯定判断されるとステップ490に進み、一方否定判断されると一旦本処理を終了する。
【0106】
ステップ490では、ノッキングが発生しているので、そのことを示すノック検知フラグKNS(M)をセット(1に設定)し、本処理を終了する。
[1−6.信号合成分配器]
次に、信号合成分配器48について説明する。
【0107】
信号合成分配器48は、複数の信号を合成して1個の合成信号を生成する信号合成部108と、1個の信号を分配して複数の分配信号を生成する信号分配部109と、を備える。また、信号合成分配器48は、信号分配部109での複数の分配信号の出力先気筒を制御する信号制御部110を備える。
【0108】
信号合成分配器48は、信号合成部108で4個の点火信号A1,A2,A3,A4を合成して1個の合成点火信号Amを生成し、その合成点火信号Amを点火時期調整装置43に対して出力する。つまり、図9に示すように、信号合成分配器48は、第1気筒〜第4気筒にそれぞれ対応する点火信号A1,A2,A3,A4を合成する(重ね合わせる)ことで、合成点火信号Amを生成する。
【0109】
点火時期調整装置43は、ノッキング状態に基づいて合成点火信号Amを調整(補正))することで補正合成点火信号Bmを生成し、補正合成点火信号Bmを信号合成分配器48に対して出力する。つまり、点火時期調整装置43は、図9に示すように、合成点火信号Amの立ち上がり時期および立ち下がり時期を調整(補正)することで、補正合成点火信号Bmを生成する。
【0110】
信号合成分配器48は、信号分配部109で1個の補正合成点火信号Bmを分配して4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4を生成し、4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4を、それぞれ対応する気筒のイグナイタ33に対して出力する。つまり、信号合成分配器48は、図9に示すように、1個の補正合成点火信号Bmを第1気筒〜第4気筒にそれぞれ対応する信号に分けることで、4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4を生成する。
【0111】
このとき、信号制御部110(図4参照)が、信号合成部108での4個の点火信号A1,A2,A3,A4の受信状況に応じて、各気筒の点火時期および点火順序を判定し、その判定結果に基づいて、信号分配部109での4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4のそれぞれの出力状態を制御する。
【0112】
具体的には、信号制御部110は、まず、信号合成部108での点火信号A1,A2,A3,A4の受信時期および受信順序を検出し、各気筒の点火時期および点火順序を判定する。そして、信号制御部110は、各気筒の点火時期および点火順序に基づいて、所定の時間帯毎に、信号分配部109による補正点火信号B1,B2,B3,B4の出力先気筒を決定する。信号制御部110は、決定結果に対応した気筒に対して補正点火信号が出力されるように、所定の時間帯毎に、信号分配部109に対して「信号の出力先気筒」を示す気筒指令信号Scを送信する。信号分配部109は、気筒指令信号Scに基づき、各時間帯に対応する気筒に対して補正点火信号B1,B2,B3,B4のうちいずれか1つを出力する。
【0113】
図9では、「信号の出力先気筒」が第1気筒である時間帯を第1区間Tc1として表しており、信号の出力先気筒が第2気筒,第3気筒,第4気筒である時間帯をそれぞれ第2区間Tc2,第3区間Tc3,第4区間Tc4として表している。本実施例では、図9に示すように、信号制御部110は、所定の時間帯毎に信号の出力先気筒を「第1気筒→第2気筒→第3気筒→第4気筒→第1気筒…」のように順番に切り替える形態を例示している。
【0114】
このため、例えば、第1区間Tc1における補正合成点火信号Bmは、第1気筒への補正点火信号B1として信号分配部109から出力される。また、第2区間Tc2,第3区
間Tc3,第4区間Tc4における補正合成点火信号Bmは、それぞれ第2気筒への補正点火信号B2,第3気筒への補正点火信号B3,第4気筒への補正点火信号B4として信号分配部109から出力される。
【0115】
図9において、点火信号A1の立ち下がり時期(t01,t11,t21)は、内燃機関用制御装置37で演算された「第1気筒の点火時期」である。また、点火信号A2の立ち下がり時期(t02,t12,t22),点火信号A3の立ち下がり時期(t03,t13,t23),点火信号A4の立ち下がり時期(t04,t14,t24)は、それぞれ内燃機関用制御装置37で演算された「第2気筒の点火時期」,「第3気筒の点火時期」,「第4気筒の点火時期」である。
【0116】
なお、図9においては、第1区間Tc1における補正点火信号B1の立ち下がり時期は、点火信号A1の立ち下がり時期(例えば、t01など)とは異なる時期に調整(補正)された状態を示している。これは、点火時期調整装置43において、合成点火信号Amが調整(補正)されたためであり、立ち上がり時期および立ち下がり時期が調整(補正)された信号が補正合成点火信号Bmとして生成される。
【0117】
もし、合成点火信号Amが補正されない場合には、立ち上がり時期および立ち下がり時期が変更されていない信号が補正合成点火信号Bmとして出力される。換言すれば、合成点火信号Amが補正されることなく、そのままの状態で補正合成点火信号Bmとして出力される。この場合、例えば、第1気筒においては、内燃機関用制御装置37で演算された「第1気筒の点火時期」と同時期に、補正点火信号B1が立ち下がり方向に変化する。
【0118】
なお、実際には、点火時期調整装置43での演算処理(補正点火時期算出処理など)の処理時間を要するため、点火信号A1,A2,A3,A4に基づき調整(補正)された4個の補正点火信号B1,B2,B3,B4は、点火時期調整装置43で点火信号A1,A2,A3,A4が受信された時点から少なくとも1燃焼サイクル単位で遅い時期に出力される。他方、信号制御部110により決定される「信号の出力先気筒」(換言すれば、第1区間Tc1,第2区間Tc2,第3区間Tc3,第4区間Tc4)は、4つの気筒が所定の順番で変更されるが、同一気筒においては1燃焼サイクル毎に「信号の出力先気筒」として設定される。このようにして、各気筒に対して適切な時間帯に、補正点火信号B1,B2,B3,B4がそれぞれ出力される。
【0119】
[1−7.効果]
次に、本実施例の効果を説明する。
本実施例の点火時期制御装置31では、ノッキング検出装置41と点火時期調整装置43とが、接続ケーブル45を介して、電気的に接続されているとともに一体に構成されている。また、点火時期調整装置43は、ノッキング検出装置41からノッキング信号が入力されるとともに、外部の内燃機関用制御装置37から信号合成分配器48を介して基準点火信号A(詳細には、点火信号A1,A2,A3,A4を合成した合成点火信号Am)が入力される構成である。
【0120】
従って、点火時期調整装置43では、ノッキング検出装置41から得られるノッキング信号と内燃機関用制御装置37から得られる基準点火信号Aとに基づいて、適切な点火時期となるように点火時期を進角や遅角させて補正することができる。
【0121】
特に、本実施例の点火時期制御装置31は、ノッキング制御を行っていないエンジン(例えば従来の汎用エンジンや2輪車用エンジンなど)に適用できるので、即ち、従来のエンジン制御を行う電子制御装置の構成に本実施例の点火時期制御装置31を付加するだけで、内燃機関用制御装置37における点火時期制御を行うための設計見直しが不要となり
、その設計見直しのための手間(工数)やコストを大きく低減できるという顕著な効果を奏する。
【0122】
また、本実施例では、ノッキング検出装置41を内燃機関1のシリンダブロック49に取り付け、内燃機関用制御装置37と各気筒のイグナイタ33との間に、信号合成分配器48を含む点火時期制御装置31を電気的に接続すればよく、その点からも、従来の装置構成に対して容易に付加できるという利点がある。
【0123】
さらに、本実施例の点火時期制御装置31は、信号合成部108および信号分配部109を有する信号合成分配器48を備えており、単気筒内燃機関のみならず、多気筒内燃機関に適用できる。
【0124】
点火時期制御装置31では、信号合成部108が複数の点火信号A1,A2,A3,A4を合成して合成点火信号Am)を生成し、点火時期調整装置43がその合成点火信号Amの点火時期を調整(補正)して補正合成点火信号Bmを生成し、信号分配部109が補正合成点火信号Bmを複数の補正点火信号B1,B2,B3,B4に分配する。
【0125】
つまり、点火時期制御装置31は、点火時期調整装置43を単数しか備えない構成であるが、信号合成部108と信号分配部109とを備えることで、多気筒内燃機関における各気筒の点火時期をそれぞれ調整することが可能となる。これにより、点火時期制御装置31を用いることで、多気筒内燃機関における各気筒の点火時期を調整するにあたり、点火時期調整装置43に関するコスト増加や設置スペースの増大を抑制できる。
【0126】
よって、本実施例の点火時期制御装置31によれば、ノッキングの発生を抑制する点火時期制御の機能を有しない内燃機関に対して、容易にノッキングの発生を抑制する点火時期制御が可能になる。さらに、点火時期制御装置31によれば、多気筒内燃機関の点火時期を調整するにあたり、点火時期調整装置43に関するコスト増加や設置スペースの増大を抑制できる。
【0127】
また、点火時期制御システム38は、点火時期制御装置31を備えることから、ノッキングの発生を抑制する点火時期制御の機能を有しない内燃機関に対して、容易にノッキングの発生を抑制する点火時期制御が可能になる。さらに、点火時期制御システム38は、多気筒内燃機関の点火時期を調整するにあたり、点火時期調整装置43に関するコスト増加や設置スペースの増大を抑制できる。
【0128】
[1−8.特許請求の範囲との対応関係]
ここで、特許請求の範囲と本実施例とにおける文言の対応関係について説明する。
ノッキング検出装置41から出力される信号がノッキング信号の一例に相当し、内燃機関用制御装置37から出力される基準点火信号Aが点火信号の一例に相当し、合成点火信号Amが合成点火信号の一例に相当し、補正合成点火信号Bmが調整後合成点火信号の一例に相当し、複数の補正点火信号B1,B2,B3,B4が複数の調整後点火信号の一例に相当する。
【0129】
[2.実施例2]
次に実施例2について説明するが、前記実施例1と同様な内容については説明を省略する。
【0130】
図10(a)に示す様に、本実施例の点火時期制御装置121は、前記実施例1と同様に、ノッキング検出装置123と点火時期調整装置125と(それらを接続する)接続ケーブル127とから、一体に構成されている。
【0131】
特に本実施例では、点火時期調整装置125と接続ケーブル127とは、分離不可能に一体に構成されているが、図示するように、ノッキング検出装置123と接続ケーブル127とは、着脱可能に一体に構成されている。
【0132】
つまり、ノッキング検出装置123のコネクタ部129には、第1出力端子131、第2出力端子133が露出する凹部135が設けられており、この凹部135と接続ケーブル127の第1コネクタ部137とが、着脱可能に結合する構成となっている。これにより、ノッキング検出装置123と点火時期調整装置125とは、着脱可能に一体に構成されることになる。
【0133】
本実施例によっても、前記実施例1と同様な効果を奏する。また、本実施例では、ノッキング検出装置123と点火時期調整装置125とは、着脱可能に一体に構成されているので、ノッキング検出装置123と点火時期調整装置125とのいずれかが故障した場合に、両者を分離した上で故障した装置だけを取り替えれば済むという利点がある。
【0134】
[3.実施例3]
次に実施例3について説明するが、前記実施例2と同様な内容については説明を省略する。
【0135】
図10(b)に示す様に、本実施例の点火時期制御装置141は、前記実施例1と同様に、ノッキング検出装置143と点火時期調整装置145と(それらを接続する)接続ケーブル147とから、一体に構成されている。
【0136】
特に本実施例では、ノッキング検出装置143と接続ケーブル147とは、分離不可能に一体に構成されているが、図示するように、点火時期調整装置145と接続ケーブル147とは、着脱可能に一体に構成されている。
【0137】
つまり、点火時期調整装置145には凹状のコネクタ部149が設けられており、このコネクタ部149と接続ケーブル147の第2コネクタ部151とが、着脱可能に結合する構成となっている。これにより、ノッキング検出装置143と点火時期調整装置145とは、着脱可能に一体に構成されることになる。
【0138】
本実施例によっても、前記実施例2と同様な効果を奏する。
[4.実施例4]
次に実施例4について説明するが、前記実施例2と同様な内容については説明を省略する。
【0139】
図10(c)に示す様に、本実施例の点火時期制御装置161は、前記実施例1と同様に、ノッキング検出装置163と点火時期調整装置165と(それらを接続する)接続ケーブル167とから、一体に構成されている。
【0140】
特に本実施例では、ノッキング検出装置163と接続ケーブル167と、更に、点火時期調整装置165と接続ケーブル167とは、着脱可能に一体に構成されている。
つまり、前記実施例2と同様に、ノッキング検出装置163のコネクタ部169には、第1出力端子171、第2出力端子173が露出する凹部175が設けられており、この凹部175と接続ケーブル167の第1コネクタ部177とが、着脱可能に結合する構成となっている。
【0141】
また、点火時期調整装置165には凹状のコネクタ部179が設けられており、このコ
ネクタ部179と接続ケーブル167の第2コネクタ部181とが、着脱可能に結合する構成となっている。
【0142】
以上のことから、実施例4の点火時期制御装置161は、ノッキング検出装置163と点火時期調整装置165とが着脱可能に一体に構成される構成を有する。
本実施例によっても、前記実施例2同様な効果を奏する。
【0143】
[5.実施例5]
次に実施例5について説明するが、前記実施例1と同様な内容については説明を省略する。
【0144】
図11(a),図11(b)に示す様に、本実施例の点火時期制御装置191は、前記実施例1と同様に、ノッキング検出装置193を備えているが、接続ケーブルは備えておらず、点火時期調整装置195は、ノッキング検出装置193内に配置されている。なお、図11(a),図11(b)では、内部の構成を樹脂モールドを透過した状態で示している。
【0145】
また、点火時期制御装置191は、前記実施例1と同様に、信号合成分配器を備えているが、図11(a),図11(b)では、信号合成分配器の図示を省略している。
詳しくは、本実施例の点火時期制御装置191は、前記実施例1と同様に、ノッキング検出装置193の本体部196とコネクタ部197とを備えるとともに、本体部196の樹脂モールドされた内部には、主体金具199に圧電素子201や一対の電極板203、205やウエイト207やナット209等が嵌められた作動部211が収納されており、この作動部211の表面に、点火時期調整装置195が配置されている。
【0146】
この点火時期調整装置195には、一対の電極板203、205から伸びる出力端子(図示せず)が接続されている。また、この点火時期調整装置195には、信号合成分配器から点火信号(合成点火信号Am)が入力される入力端子213と、信号合成分配器に補正点火信号(補正合成点火信号Bm)を出力する出力端子215と、点火時期調整装置195に電力を供給する一対の電力端子217、219と、が延出して設けられている。
【0147】
本実施例によっても、前記実施例1と同様な効果を奏するとともに、装置をコンパクトに形成することができるという利点がある。
[6.実施例6]
次に実施例6について説明するが、前記実施例1と同様な内容については説明を省略する。
【0148】
本実施例は、汎用エンジンに本発明を適用したものであり、エンジンの回転に同期して回転するマグネットを利用して、エンジン回転数やクランク角を求めるものである。なお、本実施例のエンジンは、2気筒を備える多気筒内燃機関である。
【0149】
図12に示す様に、本実施例におけるシステムでは、エンジン本体の出力軸221には、フライホイール223が取り付けられ、フライホイール223の外周には、マグネット225が取り付けられている。
【0150】
また、フライホイール223に近接して、マグネット225の近接/離隔に応じて信号(交流信号)を発生するパルサーコイル227が配置されており、パルサーコイル227の出力は、電子制御装置229に入力されるように構成されている。
【0151】
この電子制御装置229には、パルサーコイル227から得られた信号に基づいて、マ
グネット225の近接/離隔する動作を検出する検出回路231や周知のマイコン232等が設けられている。
【0152】
従って、マグネット225がパルサーコイル227の近傍を通過する際に、前記信号が得られるので、この信号から、マグネット225の取付位置に対応したクランク角や、エンジン回転数を求めることができる。よって、例えばエンジン回転数に応じて、基準となる点火時期を設定することができる。
【0153】
また、本実施例では、電子制御装置229のマイコン232には、前記実施例1と同様な点火時期制御装置233が接続されている。マイコン232は、2気筒のそれぞれに対応した制御信号(点火信号A1,A2)を出力する。
【0154】
マイコン232から出力された2個の点火信号A1,A2は、点火時期制御装置233(詳細には、信号合成分配器245)に入力される。点火時期制御装置233は、点火時期調整装置235と、ノッキング検出装置237と、信号合成分配器245と、を備える。
【0155】
信号合成分配器245は、複数の信号を合成して1個の合成信号を生成する信号合成部246と、1個の信号を分配して複数の分配信号を生成する信号分配部247と、を備える。また、信号合成分配器245は、信号分配部247での複数の分配信号の出力先気筒を制御する信号制御部248を備える。
【0156】
信号合成分配器245は、2個の点火信号A1,A2を合成して1個の合成点火信号Amを生成し、その合成点火信号Amを点火時期調整装置235に対して出力する。また、信号合成分配器245は、点火時期調整装置235から受信した1個の補正合成点火信号Bmを分配して2個の補正点火信号B1,B2を生成し、2個の補正点火信号B1,B2を、それぞれ対応する気筒のイグナイタ239に対して出力する。
【0157】
なお、図12では、2気筒に対するイグナイタ239,点火コイル241,点火プラグ243のうち1気筒分のみを記載しており、他の1気筒に関するイグナイタ239,点火コイル241,点火プラグ243については図示を省略している。
【0158】
信号合成分配器245から出力される合成点火信号Amが、点火時期調整装置235に入力されると、点火時期調整装置235では、ノッキング検出装置237によって検出されたノッキングの発生状態に応じて、前記実施例1と同様な点火時期の調整が行われる。
【0159】
そして、この調整によって得られた補正合成点火信号Bmが2個の補正点火信号B1,B2に分配される。2個の補正点火信号B1,B2が、前記実施例1と同様に、各気筒のイグナイタ239に出力され、イグナイタ239の動作によって点火コイル241から高電圧が発生し、適切なタイミングで点火プラグ243から火花が発生する。
【0160】
点火時期調整装置235は、OBDシステム234および異常情報記憶メモリ236を備える。
点火時期制御装置233は、前記実施例1と同様に、信号合成部246および信号分配部247を有する信号合成分配器245を備えており、単気筒内燃機関のみならず、多気筒内燃機関に適用できる。
【0161】
つまり、点火時期制御装置233は、点火時期調整装置235を単数しか備えない構成であるが、信号合成部246と信号分配部247とを備えることで、多気筒内燃機関における各気筒の点火時期をそれぞれ調整することが可能となる。これにより、点火時期制御
装置233を用いることで、多気筒内燃機関における各気筒の点火時期を調整するにあたり、点火時期調整装置235に関するコスト増加や設置スペースの増大を抑制できる。
【0162】
本実施例によっても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
なお、これとは別に、例えば特開平10−259777号に記載の様に、前記と同様な(フライホイールに取り付けられた)マグネットに近接するように点火コイルを配置し、マグネットの近接/離隔によって、点火プラグを駆動するための高電圧を発生させるようにしてもよい。
【0163】
この場合には、図13に示すような点火駆動回路251を使用する。なお、この点火駆動回路251は、イグナイタ253と点火コイル255を備えている。
詳しくは、点火コイル255は、マグネット250の近接/離隔に応じて電流を発生させる一次巻線255aと、点火プラグ257に接続された二次巻線255bとを備える。
【0164】
イグナイタ253は、一次巻線255aの一端にコレクタ、他端にエミッタが接続された第1トランジスタ259と、第1トランジスタ259のコレクタ・ベース間に接続され、第1トランジスタ259にベース電力を供給する第1抵抗261と、コレクタが第1トランジスタ259のベースに接続され、エミッタが第1トランジスタ259のエミッタに接続された第2トランジスタ263と、一次巻線255aの両端電圧を分圧して第2トランジスタ263のベースに供給する第2抵抗265、第3抵抗267とを備えている。
【0165】
点火時期制御装置269は、点火時期調整装置271と、ノッキング検出装置274と、信号合成分配器245と、を備える。
信号合成分配器245は、2個の点火信号A1,A2を合成して1個の合成点火信号Amを生成し、その合成点火信号Amを点火時期調整装置271に対して出力する。また、信号合成分配器245は、点火時期調整装置271から受信した1個の補正合成点火信号Bmを分配して2個の補正点火信号B1,B2を生成し、2個の補正点火信号B1,B2を、それぞれ対応する気筒のイグナイタ253に対して出力する。
【0166】
信号合成分配器245のうち補正点火信号B1,B2それぞれの出力端子は、対応する気筒のイグナイタ253における第2トランジスタ263のベースに接続されている。
なお、図13では、2気筒に対するイグナイタ253,点火コイル255,点火プラグ257のうち1気筒分のみを記載しており、他の1気筒に関するイグナイタ253,点火コイル255,点火プラグ257については図示を省略している。
【0167】
信号合成分配器245から出力される合成点火信号Amが、点火時期調整装置271に入力されると、点火時期調整装置271では、ノッキング検出装置274によって検出されたノッキングの発生状態に応じて、前記実施例1と同様な点火時期の調整が行われる。
【0168】
点火時期調整装置271は、OBDシステム272および異常情報記憶メモリ273を備える。
点火時期制御装置269は、前記実施例1と同様に、信号合成部246および信号分配部247、さらには信号制御部248を有する信号合成分配器245を備えており、単気筒内燃機関のみならず、多気筒内燃機関に適用できる。
【0169】
つまり、点火時期制御装置269は、点火時期調整装置271を単数しか備えない構成であるが、信号合成部246と信号分配部247とを備えることで、多気筒内燃機関における各気筒の点火時期をそれぞれ調整することが可能となる。これにより、点火時期制御装置269を用いることで、多気筒内燃機関における各気筒の点火時期を調整するにあたり、点火時期調整装置271に関するコスト増加や設置スペースの増大を抑制できる。
【0170】
本実施例によっても、前記実施例1と同様な効果を奏する。
[7.他の実施形態]
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0171】
例えば、上記実施例では、4気筒または2気筒を備える多気筒内燃機関に適用した形態について説明したが、気筒数はこれらに限られることはなく、本発明の点火時期制御装置は、3気筒を備える多気筒内燃機関や5気筒以上の多気筒内燃機関に適用しても良い。
【0172】
また、図7に示す補正点火時期算出処理においては、ステップ270(ノッキング検出処理)の実行時期を、ステップ280の前ではなく、ステップ290で肯定判定された後に変更しても良い。
【0173】
つまり、ステップ290で肯定判定される場合には、その後の処理(ステップ330)でノッキング検出結果を利用するが、ステップ290で否定判定される場合には、その後の処理でノッキング検出結果を利用しない。このため、ノッキング検出結果が必要となる場合(換言すれば、ステップ290で肯定判定される場合)にのみ、ノッキング検出処理を実行すればよい。このように、ノッキング検出結果が必要な場合にのみノッキング検出処理を実行する構成を採ることで、点火時期調整装置の処理負荷の低減を図ることができる。
【0174】
さらに、ノッキング検出装置は、非共振型ノッキングセンサに限らず、共振型ノッキングセンサを使用でき、ノッキングを検出できれば、その種類に限定されない。
また、ノッキングを検出する方法についても、ノッキング信号のピークから検出する方法に限らず、周知のノッキング信号に対するFFT、積分値を利用した方法など、ノッキングを検出できれば、その種類に限定されない。
【0175】
また、上記の補正点火時期算出処理およびノッキング検出処理では、第1気筒から第4気筒のうちいずれかでノッキングが検出された場合には、ノッキングが発生した気筒のみについて点火時期を基準点火時期TIGINに補正しているが、点火時期の補正処理は、このような方法に限られることはない。例えば、第1気筒から第4気筒のうちいずれか1つでノッキングが検出された場合には、全ての気筒について点火時期を基準点火時期TIGINに補正してもよい。
【符号の説明】
【0176】
1…内燃機関、31,121,141,161,191,233,269…点火時期制御装置、37…内燃機関用制御装置、38…点火時期制御システム、41,123,143,163,193,237,274…ノッキング検出装置、43,125,145,165,195,235,271…点火時期調整装置、45,127,147,167…接続ケーブル、48…信号合成分配器、108,246…信号合成部、109,247…信号分配部、110,248…信号制御部、229…電子制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13