(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336372
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】曲げロール装置
(51)【国際特許分類】
B21D 5/14 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
B21D5/14 K
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-206833(P2014-206833)
(22)【出願日】2014年10月8日
(65)【公開番号】特開2016-74009(P2016-74009A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】303016270
【氏名又は名称】株式会社フタバ
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】大西 忍
【審査官】
石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−033426(JP,A)
【文献】
特開2006−159251(JP,A)
【文献】
特開平10−076319(JP,A)
【文献】
米国特許第2674294(US,A)
【文献】
特開2000−280029(JP,A)
【文献】
特開昭62−137123(JP,A)
【文献】
米国特許第3623349(US,A)
【文献】
米国特許第3557594(US,A)
【文献】
特開昭55−100816(JP,A)
【文献】
特開2007−015014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扇状の平板素材を所定角度の部分扇状ごとに部分曲げ加工し上記平板素材をロール幅方向に送って上述の部分曲げ加工を繰り返すことによって、上記平板素材からテーパー管素形材を曲げ加工するようにした曲げロール装置において、
三角形の各頂点の位置に相互に平行に配置され、2本の下側ロール(11、12)と1本の上側ロール(13)の間に上記平板素材(30)が載置され、回転・逆転されることによって上記平板素材(30)に対して上記部分曲げ加工を行う3本のロール(11、12、13)と、
前面が凹状をなして左右2つの当り部(19A)が形成され、上記ロール一端側の上側ロール軸線を通る垂直平面上又はその近傍に起立姿勢と退避姿勢との間で回動可能に設けられ、その起立姿勢において上記平板素材(30)の小径側の円弧状端縁と当接して位置決めする位置決め部材(19)と、
上記ロール他端側の下側ロール軸線よりもロール幅方向外側に下側ロール軸線方向に進退自在に設けられ、上記平板素材(30)の大径側の円弧状端縁を上記位置決め部材(19)に向けて押して上記平板素材(30)の小径側の円弧状端縁を位置決め部材(19)に当接させる左右の押し部材(14、15)と、
上記位置決め部材(19)を起立姿勢に回動させ退避姿勢に逆回動させる回動駆動手段(21)と、
上記押し部材(14、15)を進退させる進退駆動手段(17)と、
上記上側ロール(13)と下側ロール(11、12)を相対的に上下動させ、上記平板素材(30)の上記上側ロール(13)と下側ロール(11、12)の間への挿入を許容し挟持させる上下駆動手段(21)と、
上記3本のうち、少なくとも2本のロール(11、12、13)を回転・逆転駆動するロール駆動手段と、
を備えたことを特徴とする曲げロール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は曲げロール装置に関し、特に扇状の平板素材をテーパー管素形材に高精度に曲げ加工できるようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管などの金属管は支柱などの構造物や機械設備に広く使用されているが、最近は直管に代え、管径を連続的に変化させたテーパー管が使用されるようになってきた。
【0003】
従来、台形状の平板素材をU−Oプレス加工によって環状に成形し、突き合わせ端縁を溶接することによってテーパー管を製造する加工方法が提案されているが(特許文献1)、テーパー管に複数の曲げ痕が残ってしまうことがあった。
【0004】
また、3本のロールを三角形の各頂点の位置に配置するとともに、下側2本のロールの一端側の間隔を他端側の間隔に比較して小さく設定する一方、各ロールは長手方向に複数に分割し、一端側のロール部分は低速で、他端側のロール部分は高速で駆動し、一端側と他端側の中間のロール部分を従動させ、2本の下側ロールと1本の上側ロールとの間に、扇状の平板素材をセットし、一端側にて平板素材の小径部分を加工し、高速部分で平板素材の大径部分を加工し、小径部分から大径部分にかけて径を次第に増加させ、テーパー管素形を曲げ加工する曲げロール装置が提案されている(特許文献2)。しかし、この曲げロール装置では複数の分割ロールによって曲げ加工しているので、テーパー管素形材の表面に段差ができやすかった。
【0005】
他方、本件出願人は、3本のロールを三角形の各頂点の位置に相互に平行に配置し、前後一対のパッドを2本の下側ロールのロール幅方向外側に配置し、扇状の平板素材を四隅のパッドで挟んで平板素材を位置決めした後、四隅のパッドを後退させ、平板素材の所定角度の部分扇状部分を3本のロールで円弧状に部分曲げ加工し、この素材をロール幅方向に送って上述の操作を繰り返すことによって、テーパー管素形材を曲げ加工するようにした曲げロール装置を提案するに至った(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−100816号公報
【特許文献2】特開2007−15014号公報
【特許文献3】特開2006−159251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3記載の曲げロール装置では部分曲げ加工の開始時に中央の上側ロールと送り出し側の前後一対のパッドとの間の距離だけロール曲げ加工ができず、扇状の平板素材の始端部の大きな角度範囲をプレスによって曲げ加工する必要があり、依然としてテーパー管素形材の端部に大きな幅で曲げ痕が残るという問題があった。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、端部曲げ痕をほとんど残すことなく、テーパー管素形材を高精度に曲げ加工できるようにした曲げロール装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係る曲げロール装置は、扇状の平板素材を所定角度の部分扇状ごとに部分曲げ加工し上記平板素材をロール幅方向に送って上述の部分曲げ加工を繰り返すことによって、上記平板素材からテーパー管素形材を曲げ加工するようにした曲げロール装置において、三角形の各頂点の位置に相互に平行に配置され、2本の下側ロールと1本の上側ロールの間に上記平板素材が載置され、回転・逆転されることによって上記平板素材に対して上記部分曲げ加工を行う3本のロールと、前面が凹状をなして左右2つの当り部が形成され、上記ロール一端側の上側ロール軸線を通る垂直平面上又はその近傍に起立姿勢と退避姿勢との間で回動可能に設けられ、その起立姿勢において上記平板素材の小径側の円弧状端縁と当接して位置決めする位置決め部材と、上記ロール他端側の下側ロール軸線よりもロール幅方向の外側に下側ロール軸線方向に進退自在に設けられ、上記平板素材の大径側の円弧状端縁を上記位置決め部材に向けて押して上記平板素材の小径側の円弧状端縁を位置決め部材に当接させる左右の押し部材と、上記位置決め部材を起立姿勢に回動させ退避姿勢に逆回動させる回動駆動手段と、上記押し部材を進退させる進退駆動手段と、上記上側ロールと下側ロールを相対的に上下動させ、上記平板素材の上記上側ロールと下側ロールの間への挿入を許容し挟持させる上下駆動手段と、上記3本のうち、少なくとも2本のロールを回転方向・逆転方向に駆動するロール駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の特徴の1つは前面を凹状となして左右2つの当り部を形成した位置決め部材を用い、この位置決め部材を上側ロール軸線を通る垂直平面上又はその近傍に設けるようにした点にある。
【0011】
これにより、扇状の平板素材の始端部を送り出し側の下側ロールに載る程度送り込むと、位置決め部材の2つの当り部と送り込み側の押し部材の3点によって扇状の平板素材を位置決めでき、3本のロールを回転・逆転させることによって扇状の平板素材に対して部分曲げ加工を行うことができ、例えばプレスによって曲げ加工する範囲は小さく、平板素材の端部曲げ痕はほとんど残らない。
【0012】
また、本発明の第2の特徴は平板素材を部分曲げ加工した後、平板素材を所定角度だけ送り込んで位置決め部材の2つの当り部と左右の下側ロール外側の押し部材の4点によって扇状の平板素材を位置決めして部分曲げ加工するようにした点にある。
【0013】
これにより、所定角度ずつの送り込み、4点による位置決め及び部分曲げ加工を繰り返すことによって、平板素材に対してテーパー管素形材に高精度の部分曲げ加工を行うことができ、テーパー状素材の突き合わせ端縁を溶接することによって高精度のテーパー管を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る曲げロール装置の好ましい実施形態を示す概略平面構成図である。
【
図4】上記実施形態における位置決め部材を示す平面図である。
【
図5】上記実施形態の曲げ作業を模式的に示す図である。
【
図6】上記実施形態において用いる平板素材の端部の曲げロール装置を示す概略平面図である。
【
図7】上記端部の曲げロール装置におけるロール構造の例を示す図である。
【
図8】上記端部の曲げ動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1ないし
図5は本発明に係る曲げロール装置の好ましい実施形態を示す。図において、装置フレーム10上には2本の下側ロール11、12が相互に平行にレイアウトされて軸受によって回転可能に軸支される一方、2本の下側ロール11、12のロール幅方向中央の上方には1本の上側ロール13がレイアウトされて軸受によって回転可能に軸支されており、3本のロール11〜13は三角形の各頂点の位置に配置されるようになっている。
【0016】
これらのロール11〜13は図示しないが、駆動モータと減速ギア群などの駆動装置(回転駆動手段)によって回転・逆転駆動されるように設けられ、又上側1本のロール13は油圧シリンダ(上下駆動手段)24によって上下駆動されるとともに、平板素材30に対する曲げ荷重が設定されるようになっている。
【0017】
また、装置フレーム10のロール11、12の一端側には左右一対の押し部材14、15が設けられてブラケット16に支持されている。この押し部材14、15は
図1に示されるように、下側ロール11、12のロール軸線よりもロール幅方向外側に配置され、装置フレーム10の下部中央には油圧シリンダ(進退駆動手段)17が長手方向に設けられ、ブラケット16を押し引きして押し部材14、15の位置を変更できるようになっている。この押し部材14、15の前面は扇状の平板素材30の大径側の円弧状端縁と線接触し得るように傾斜面に形成されている。なお、押し部材14、15を設ける位置は平板素材30を安定に押す上で、ロール軸線の垂直平面上又はそのロール幅方向外側であればよい。
【0018】
また、ブラケット16にはアダプタ18が下方位置と跳ね上げ位置との間で回動可能に設けられ、図示しない油圧シリンダによって回動されるようになっている。
【0019】
他方、装置フレーム10のロール11、12の他端側には位置決め部材19が設けられてロール軸線方向に沿って回動可能なブラケット20に支持され、ブラケット20は油圧シリンダ(回動駆動手段)21によって起立姿勢と退避姿勢との間で回動されるように設けられ、又位置決め部材19の前面は凹状に形成され、起立姿勢において左右の2ヶ所の当り部19Aで扇状の平板素材30の小径側の円弧状端縁と当接し、退避姿勢において平板素材30のロール幅方向への移動を許容するようになっている。
【0020】
また、
図6ないし
図9は平板素材30の端部の曲げロール装置の例を示す。図において、装置フレーム(図示せず)には端部曲げロール50が回転自在に軸支され、端部曲げロール50の外側面には複数のコ字状ホルダー50Aが長手方向に伸びかつ円周方向に間隔をあけて嵌め込まれている。
【0021】
端部曲げロール50の下側には受けプレート52がレイアウトされて受けロール55によってスライド可能に支持され、受けプレート52上には支持ロール51が搭載され、左右のジャッキ54によって傾斜角度を調整できるようになっている。
【0022】
扇状の平板素材30を用いてテーパー管素形材を製造する場合、
図1に示されるように、上側ロール13を上昇させ、この上側ロール13と2本の下側ロール11、12の間に平板素材30の端部を差し込み、平板素材30の始端部を送り出し側の下側ロール11上に載せ、その状態で油圧シリンダ17を収縮させて押し部材14、15を前進させるとともに、油圧シリンダ21を伸長させて位置決め部材19を起立させ、送り込み側の位置決め部材15と押し部材19の2つの当り部19Aの3点の間に平板素材30を挟み込むと、平板素材30はその頂点を通って平板素材30の径方向に伸びる直線が上側ロール13のロール軸線を通る垂直平面に位置するように位置決めされる。
【0023】
次に、上側ロール13を下降させて平板素材30を2本の下側ロール11、12との間に挟み、押し部材14、15を後退させ、位置決め部材19を逆回動させ、上側ロール13に所定の曲げ荷重を加え、ロール11〜13を回転させ逆転させると、
図5(但し、
図5では便宜上、押し部材14、15が上側ロール13のロール外側で、下側ロール11、12のロール内側に位置させた例が図示されている)に示されるように、平板素材30が頂点を通って平板素材30の径方向に伸びる直線を上側ロール13の中心軸線上に位置させた状態を維持したまま、ロール幅方向の一方向に送られ、逆方向に戻され、この作動が繰り返され、これによって平板素材30の所定角度の扇状部分がテーパー状に部分曲げ加工される。
【0024】
その後、上側ロール13を上昇させて平板素材20の次の所定角度の部分を送り込み、押し部材14、15を前進させ、位置決め部材19を起立させ、上記と同様に3本のロール11〜13を回転・逆転させることによって部分曲げ加工が行われ、同様にして部分曲げ加工を行うと、テーパー管素形材が得られる。
【0025】
ところで、扇状の平板素材30については始端部30Aに対して部分曲げ加工がし難い。そこで、本例では
図6ないし
図9に示される端部の曲げロール装置を用い、上述の部分曲げ加工を行う前に、始端部30Aの曲げ加工を行うようにしている。
【0026】
この端部の曲げロール装置では端部曲げロール50のホルダー50Aに扇状の平板素材30の始端を嵌め込み、平板素材30を支持ロール51上に搭載する。また、ジャッキ51を伸縮させて支持ロール51の傾斜角度を設定する。例えば、扇状の平板素材30の頂角αが大きいときには支持ロール51の傾斜角度を大きく、頂角αが小さいときには支持ロール51の傾斜角度を小さく設定する。
【0027】
こうして準備が済むと、端部曲げロール50を回転させると、
図8に示されるように、端部曲げロール50の回転に伴って支持ロール51が受けプレート52とともに端部曲げロール50に接近し、平板素材30の始端部30Aは次第に丸く曲げられるが、平板素材30の小径側端縁は傾斜された支持ローラ51によって小さな曲率半径でもって大きく曲率に曲げられ、大径側端縁は大きな曲率半径でもって小さな曲率に曲げられるので、始端部30Aはテーパー状に部分曲げされ、こうして始端部30Aが曲げ加工された平板素材30を
図1ないし
図4に示される曲げロール装置によって部分曲げ加工を繰り返すことによって高精度のテーパー管素形材が得られる。
【0028】
後はテーパー管素形材を取り出し、突き合わせ端縁を溶接すると、高精度のテーパー管が得られる。
【0029】
なお、上記の例では端部の曲げロール装置を用いて始端部の曲げ加工を行ったが、プレスによって始端部の曲げ加工を行っても、始端部の幅が小さいので、曲げ痕が残る可能性は少ない。
【符号の説明】
【0030】
10 装置フレーム
11、12 下側ロール
13 上側ロール
14、15 押し部材
17 油圧シリンダ(進退駆動手段)
19 位置決め部材
21 油圧シリンダ(回動駆動手段)
24 油圧シリンダ(上下駆動手段)
30 平板素材
30A 始端部