【実施例1】
【0040】
a)まず、本実施例1の固体酸化物形単セルを備えた固体酸化物形燃料電池スタックについて説明する。尚、以下では、「固体酸化物形」を省略する。
図1及び
図2に示すように、本実施例1の燃料電池スタック1は、燃料ガス(例えば水素:F)と酸化剤ガス(例えば空気(詳しくは空気中の酸素):O)との供給を受けて発電する装置である。なお、以下では、
図1及び
図2における上下を、燃料電池スタック1における上下として説明する。
【0041】
この燃料電池スタック1は、両図の上下方向に配置されたエンドプレート3、5と、その間に配置された層状の燃料電池セル7とが積層されたものである。エンドプレート3、5及び各燃料電池セル7には、それらを積層方向(両図の上下方向)に貫く複数(例えば10個)の貫通孔9が設けられ、その貫通孔9に配置された各ボルト11とボルト11に螺合するナット13とによって、エンドプレート3、5と各燃料電池セル7とが一体に固定されている。
【0042】
なお、以下では、説明を容易にするために、4層の燃料電池セル7が積層された例を挙げて説明する。
前記エンドプレート3、5は、積層される燃料電池セル7を押圧して保持する保持板であり、燃料電池セル7からの電流の出力端子でもある。一方、前記燃料電池セル7は、以下に述べるように、燃料ガスと酸化剤ガスとの供給を受けて発電する発電単位である。
【0043】
b)次に、燃料電池セル7の構成について詳しく説明する。
図3に示すように、燃料電池セル7は、いわゆる燃料極支持膜形タイプの構造を有する。
【0044】
この燃料電池セル7は、薄膜の固体電解質層21と、その一方の側(同図下方:以下では下面側と記す)に形成された燃料極層(アノード)23と、他方の側(同図上方:以下では上面側と記す)に形成された薄膜の空気極層(カソード)25とを備える。以下では、固体電解質層21と燃料極層23と空気極層25とからなる一体に積層された部材を、単セル27と称する。なお、単セル27の空気極層25側には空気流路29が設けられ、燃料極層23側には燃料流路31が設けられている。
【0045】
また、燃料電池セル7は、単セル27に加えて、上下一対のインターコネクタ33、35と、空気極層25側の板枠形状の空気極フレーム37及び絶縁フレーム39と、燃料電池セル7の外周縁部の上面に接合して空気流路29と燃料流路31とを遮断する板枠形状の金属製セパレータ41と、燃料極層23側に配置された板枠形状の燃料極フレーム43とを備えており、それらが積層されて一体に構成されている。
【0046】
なお、平面視で、燃料電池セル7の四角枠状の外周部分には、各ボルト11が挿通される貫通孔9が形成されている。
以下、各構成について説明する。
【0047】
空気極層25としては、ぺロブスカイト系酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物))などを使用できる。
【0048】
固体電解質層21としては、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト系酸化物等の材料を使用できる。
【0049】
燃料極層23としては、金属が好ましく、Ni及びNiとセラミックとのサーメットやNi基合金を使用できる。
インターコネクタ33、35は、単セル27間の導通を確保し、且つ、単セル27間でのガスの混合を防止するものであり、導電性を有する板材(例えばステンレス鋼等の金属板)である。
【0050】
このインターコネクタ33、35の上面側には、燃料極層23に接触する燃料極側集電体45が一体に形成され、下面側には、空気極層25に接触する空気極側集電体47が一体に形成されている。
【0051】
空気極フレーム37は、金属製の四角形の枠体であり、中央部には空気流路29として用いられる開口部37aを有している。空気極フレーム37としては、例えばステンレス鋼等を使用できる。
【0052】
絶縁フレーム39は、インターコネクタ33、35間を絶縁する四角形の枠体であり、その中央部には空気流路29として用いられる開口部39aを有している。なお、絶縁フレーム39としては、例えばアルミナなどのセラミックスや、マイカ、バーミュキュライ
トなどを使用できる。
【0053】
金属製セパレータ41は、後に詳述するが、開口部41aを有する四角形の枠体であり、耐熱性を有する金属からなる薄板(例えば厚さ0.1mm)である。
この金属製セパレータ41は、単セル27の固体電解質層21の外周縁部に接合部51によって接合されており、酸化剤ガスと燃料ガスとが混合しないように、空気流路29と燃料流路31とを分離している。なお、金属製セパレータ41が接合された単セル27を、セパレータ付単セル53と称する。
【0054】
燃料極フレーム43は、絶縁性を有する四角形の枠体であり、中央部には燃料流路31として用いられる開口部43aを有している。燃料極フレーム43としては、例えば絶縁フレーム39と同様な材料を使用できる。
【0055】
c)次に、本実施例の要部である燃料電池のセパレータ付単セル53について、詳細に説明する。
図4及び
図5に示すように、セパレータ付単セル53のうち、枠体である金属製セパレータ41の外形寸法(平面視)は、縦180mm×横180mmで、その枠部分の幅は30mmであり、一方、単セル27の外形寸法(平面視)は、縦120mm×横120mmである。
【0056】
また、金属製セパレータ41と単セル27とは、平面図形である重心である面積中心が一致するように、且つ、縦・横の各辺が平行となるように配置され、接合部51によって一体に接合されている。
【0057】
前記金属製セパレータ41は、後述する表面構造42(
図10参照)を有するとともに、Feを主成分としAl及びTiを含む厚さ0.02〜5mmの薄膜の金属板である。なお、
図8及び
図10以外では表面構造42は省略してある。
【0058】
この金属板の材料としては、例えば18Cr−Al−Tiステンレスを採用できる。なお、Alの割合としては2〜10質量%の範囲を採用でき、Tiの割合としては0.05〜1質量%の範囲を採用できる。
【0059】
また、前記接合部51は、金属製セパレータ41の下面側(
図4の裏側)において、接着剤であるろう材からなり、開口部41aに沿った内周縁部に設けられた四角枠状の接合部分であり、その外形寸法(平面視)は、縦120mm×横120mmで、幅が4mm、厚みが10〜80μmである。
【0060】
詳しくは、
図6に示すように、接合部51は、金属製セパレータ41と固体電解質層21とに挟まれた幅3mmの四角枠状の中央接合部51aと、中央接合部51aから外側(同図左側)に張り出す幅1mmの四角枠状の外側接合部51bとから構成されている。
【0061】
なお、接合部51の内周と開口部41aの内周との間には、僅かに(例えば0.05〜1.5mm程度の)隙間があってもよい。
従って、中央接合部51aは、単セル27における固体電解質層21の上面側の外周縁部に沿って設けられている。
【0062】
なお、接合部51の幅としては、2〜6mmの範囲を採用でき、このうち、中央接合部51aの幅としては、1.5〜5.5mmの範囲を、外側接合部51bの幅としては、0.2〜2.0mmの範囲を採用できる。また、接合部51の厚さとしては、10〜100μmの範囲を採用できる。
【0063】
また、接合部51を構成するろう材としては、大気ろう付けする際に酸化腐食が生じにくい、例えばAg、Au、Pd、Ptの少なくとも1つの材料を含む各種のろう材を採用できる。
【0064】
例えばAgを主成分とするろう材としては、例えば、Agと酸化物との混合体、例えばAg−Ag
2O
3、Ag−CuO、Ag−Cr
2O
3、Ag−SiO
2などを使用できる。また、Agと他の金属との合金、例えばAg−Ge―Cr、Ag−Alなどを使用できる。
【0065】
d)次に、燃料電池のセパレータ付単セル53の製造方法について説明する。
まず、周知のように、燃料極層23用のグリーンシートの一方の表面に、固体電解質層21用のグリーンシートを貼りつけて積層体を形成し、この積層体を焼成する。その後、焼成後の積層体の固体電解質層21の表面に空気極層25となる材料を印刷して、焼成して単セル27を製造する。
【0066】
一方、例えばFeを主成分としAl及びTiを含む厚さ0.02〜0.5mmの金属板を打ち抜いて、金属製セパレータ41を製造する。
そして、この金属製セパレータ41を、大気中で700〜1200℃(例えば1000℃)にて1〜8時間(例えば5時間)加熱し、自然冷却する。これによって、金属製セパレータ41の表面には、Tiを含むAl酸化物被膜59(詳しくは、Tiを含むアルミナ被膜)が形成される(
図8参照)。なお、Tiは、Al酸化物被膜の表面に存在している。
【0067】
次に、
図7(a)に示すように、ペースト状のAgろう材(例えば8体積%のAl
2O
3を含むAgろう材)を用いて、スクリーン印刷によって、金属製セパレータ41の下面(同図手前)の開口部41aに沿った内周縁部に、四角枠状の下面側ろう材層55を形成する。なお、この下面側ろう材層55の外形寸法(平面視)は、縦122mm×横122mmであり、その幅は2〜6mm(例えば5mm)で、厚みは10〜100μm(例えば30μm)である。
【0068】
なお、下面側ろう材層55の内周と開口部41aの内周との間に、僅かな(例えば0.05〜1.5mm程度の)隙間があってもよい。
また、
図7(b)に示すように、前記と同じAgろう材を用いて、スクリーン印刷によって、固体電解質層21の上面(同図手前)の外周縁部に、四角枠状の上面側ろう材層57を形成する。なお、この上面側ろう材層57の外形寸法(平面視)は、縦120mm×横120mmであり、その幅は1.5〜5.5mm(例えば4mm)で、厚みは10〜100μm(例えば30μm)である。
【0069】
なお、上面側ろう材層57の外周と単セル27の外周との間に、僅かな(例えば0.05〜1.5mm程度の)隙間があってもよい。
次に、
図8の上図に示すように、上述のように下面側ろう材層55を形成した金属製セパレータ41と上面側ろう材層57を形成した単セル27とを、互いのろう材層55、57の内周が一致するように位置合わせして、ろう材層55、57を接触させる。
【0070】
なお、上述のように、ろう付け前においては、金属製セパレータ41の全表面には、表面にTiを有するAl酸化物被膜59が形成されている。
そして、下記のように、所定のろう付け温度に加熱してろう付けを行う。
【0071】
詳しくは、
図9に示すように、例えばアルミナからなる基台61上に、四角枠状の例え
ばアルミナフェルトからなる耐熱緩衝材63を敷き、その上に、両ろう材層55、57からなる一体のろう材層58を間に挟んだ金属製セパレータ41と単セル27とを、金属製セパレータ41を下にして配置する。
【0072】
更に、単セル27の上に、同様な耐熱緩衝材65を敷き、その上に重り67を載せて、20〜500g/cm
2(2kPa〜50kPa)の荷重(例えば300g/cm
2)をかける。
【0073】
そして、800〜1200℃(例えば1000℃)で0.1〜8.0時間(例えば1時間)加熱して、ろう材を溶融させ、その後冷却して固化させて、ろう付けを行う。
これによって、
図8の下図に示すように、ろう付け接合の際には、接合に不要な(即ち余分な)ろう材は、上面側ろう材層55側に流れて、接合部51の厚みは10〜100μm(例えば30μm)となる。
【0074】
なお、このようにして製造されたセパレータ付単セル53では、金属製セパレータ41の表面にはAl酸化物被膜59を有し、その表面にはTiが存在しているが、Al酸化物被膜59のうち、接合部51と接触している部分にはTiは存在していない(或いは0.05質量%以下である)。
【0075】
これは、ろう付け接合する際に、TiがAgを主成分とするろう材層58側(即ち接合部51側)に移動したと考えられる。
詳しくは、
図10に模式的に示すように、金属製セパレータ41は、Feを主成分としAl及びTiを含む基板部40と、基板部40の周囲を覆う表面構造42とを有している。この表面構造42は、中心側より、AlとTiとを含む酸化物層42aと、Al酸化物被膜42bと、Tiを含む相42cとを有している。
【0076】
また、表面構造42のうち、AlとTiとを含む酸化物層42aは、Al
2O
3(アルミナ)からなる酸化物層の内部にTiが点在している複合相であり、Tiが層を形成していない。
【0077】
また、Al酸化物被膜42bとは、アルミナ被膜であり、その中にはTiは含まれていない。
更に、Tiを含む相42cとは、Tiが酸化物もしくは金属の状態で点在する、粒子のような構成である。なお、このTiを含む相42cは、ろう材(即ち接合部51)と接する部分には形成されていない。
【0078】
つまり、Al酸化物被膜42bの表面のうち、ろう材と接する表面はTiを含む相42cと離間し、且つ、他の表面はTiを含む相42cを有している。
また、接合部51は、金属製セパレータ41側の、Al酸化物被膜42bと接する主接合部52aと、固体電解質層21に接するTi反応相52bとからなる。
【0079】
このうち、主接合部52aは、7.5体積%のAl
2O
3を含むAgろう材からなる。
また、Ti反応相52bとは、Tiと固体電解質とが反応した結晶相である。なお、Ti反応相52bの厚みは、10〜500nm(例えば200nm)である。
【0080】
なお、Al酸化物被膜59の状態やTiの存在は、金属製セパレータ41の表面をFIB(収束イオンビーム)加工を行い、周知のTEM−EDX分析によって確認された。
e)つぎに、本実施例の効果について説明する。
【0081】
本第実施例1の燃料電池のセパレータ付単セル53は、金属製セパレータ41と単セル
27とをろう付け接合するろう材からなる接合部51の一部として、単セル27の外周より外側に張り出した外側接合部51bを備えている。
【0082】
このような構造の燃料電池のセパレータ付単セル53を製造する場合に、ろう付け接合するときには、加熱によって溶融したろう材のうち、金属製セパレータ41と単セル27との間からはみ出したら余分のろう材は、予め金属製セパレータ41に形成された下面側ろう材層55に沿って流出する。
【0083】
ところが、従来技術では、ろう付け接合の際にはみ出したろう材が、局所的に溜まってろう溜まりが形成されてしまう。よって、このろう溜まりに応力が集中して、燃料電池スタック1の組付時で、単セル27の割れ(セル割れ)が生じていた。それに対して、本実施例1では、局所的なろう溜まりが発生しにくく、応力が分散されるため、セル割れが生じにくいという顕著な効果を奏する。
【0084】
また、本実施例1では、セパレータ付単セル53の外側接合部51bには、切欠部がなく、全周に渡って連続した一体の形状である。よって、最もろう溜まりが生じにくいという利点がある。
【0085】
更に、本実施例1では、金属製セパレータ41の表面に、Al酸化物被膜59が形成されているので、耐酸化耐久性が高いという効果がある。また、Al酸化物被膜59の表面にTiが含まれているので、ろう材との濡れ性が高いという利点がある。
【0086】
しかも、ろう材(即ち接合部51)と接するAl酸化物被膜59の表面にはTiが存在しないので、還元雰囲気(例えば水素雰囲気)に晒された場合でも、界面剥離が生じにくいという利点がある。なお、Tiは酸化還元で変化するため、界面に存在すると剥離し易い。
【0087】
また、本実施例1では、金属製セパレータ41には、AlとTiが含まれているので、例えば大気中で加熱することにより、金属製セパレータ41自身をTi供給源をとして、上述したTiを含むAl酸化物被膜59を容易に形成することができる。
【0088】
更に、本実施例1では、ろう材として、Ag、Au、Pd、Ptを含む材料(例えばこれらの金属を主成分とするろう材)を使用するので、大気中でろう付けする場合でも、酸化腐食を生じにくいという利点がある。
【0089】
しかも、本実施例1の燃料電池スタック1は、上述したセパレータ付単セル53を使用しているので、セル割れが生じにくく、よって、製品の歩留まりが高いという効果がある。
【0090】
また、本実施例1の燃料電池のセパレータ付単セル53の製造方法では、上述のように、単セル27の外周より、金属製セパレータ41の表面に沿って平面視で外側に張り出すように、下面側ろう材層55を配置してろう付けを行う。よって、ろう付けの際に余分となったろう材は、その下面側ろう材層55に沿ってろう材に沿って流出するので、従来のようなろう溜まりが生じにくい。その結果、セル割れが生じにくいという効果がある。
【0091】
更に、本実施例1では、金属製セパレータ41として、Al及びTiを含む材料を用いるとともに、ろう付けの前に、金属製セパレータ41を、大気下で700〜1200℃の範囲で熱処理するので、金属製セパレータ41の表面に、自身の表面にTiを含むAl酸化物被膜59を容易に形成することができる。
【0092】
従って、このAl酸化物被膜59を備えた金属製セパレータ41を用いてセパレータ付単セル53を製造することによって、上述したように、Al酸化物被膜59により耐酸化耐久性を向上できるとともに、接合部分にTiが存在しないことにより還元雰囲気に晒されても界面剥離が生じにくいという効果がある。
【0093】
また、固体電解質層21とろう材(即ち接合部51)の主接合部52aとの界面にTi反応相(例えば10〜500nmの厚みのTi反応相)52bを有するので、Tiが酸化や還元で変化しても、影響が少ない。しかも、ろう材の成分が固体電解質層21に潜り込んでいることによって、高い接合強度を維持することができる。
【実施例5】
【0112】
次に、実施例5について説明するが、前記実施例1と同様な内容の説明は省略又は簡略化する。
なお、実施例1と同様な部材の番号としては同じ番号を使用する。
【0113】
図14の下図に示すように、本実施例5の燃料電池のセパレータ付単セル101は、前記実施例1と同様に、金属製セパレータ41と単セル27とが、四角枠状の接合部103にて接合されたものである。
【0114】
このうち、接合部103は、実施例1と同様な四角枠状の中央接合部103aと、金属製セパレータ41の下面側に形成されて、中央接合部103aの外側を囲むように配置された四角枠状の外側接合部103bとから形成されている。
【0115】
なお、接合部103の外形寸法(平面視)は、縦122mm×横122mmで、その幅は4mmである。また、中央接合部103aの幅は3mmであり、外側接合部103bは、中央接合部103aの外側より、全周にわたり幅1mmだけ外側に張り出している。
【0116】
本実施例5の燃料電池のセパレータ付単セル101を製造する場合には、
図14の上図に示すように、金属製セパレータ41の下面の内周縁部に沿って、所定幅(例えば4mm)にて下面側ろう材層105を形成する。
【0117】
そして、下面側ろう材層105の内周縁部を固体電解質層21の外周縁部とを重ね合わせて、前記実施例1と同様にろう付けを行い、セパレータ付単セル101を製造する。
従って、本実施例5においては、ろう付けを行う際には、余分のろう材は、外側接合部103bとなる下面側ろう材層105に沿って外側に流出するので、従来のような局所的に突出するようなろう溜まりは生じにくい。よって、実施例1と同様に、セル割れが生じにくいという効果がある。
[実験例]
次に、本発明の効果を確認した実験例について説明する。
【0118】
a)実験例1
実験例1では、
図15(a)に示すように、前記実施例1と同様なセパレータ付単セルを複数製造するとともに、その際には、下記表1に示すように、ろう材のはみ出し幅(T)(即ち外側接合部の幅)を変更して各種の試料を作成した。
【0119】
ここでは、
図15(a)に例示するように、金属セパレータ(X1)、単セル(X2)、外側接合部(X3)を設けた。
なお、各試料のセパレータ付単セルにおいては、表1に示す内容以外は、金属製セパレータや単セルや接合部等の各寸法は、前記実施例1と同様である(なお、表2、表3においても同様である)。
【0120】
そして、各試料において、局所的なろう溜まりの発生の有無を調べた。なお、局所的なろう溜まりとは、単セルの厚みと同等以上の厚みのろう溜まりである。その結果を下記表1に示す。
【0121】
【表1】
表1に示すように、ろう材のはみ出し幅が0.15mmの場合には、局所的なろう溜まりが発生したが、0.2mm以上の場合には、局所的なろう溜まり発生しなかった。
【0122】
b)実験例2
実験例2では、
図15(b)に示すように、前記実施例2と同様な、切欠部を有するセパレータ付単セルを複数製造するとともに、その際には、下記表2、表3に示すように、切欠部の幅(切欠幅:W)を変更して各種の試料を作成した。
【0123】
ここでは、
図15(b)に例示するように、金属セパレータ(Y1)、単セル(Y2)、外側接合部(Y3)、切欠部(Y4)を設けた。
詳しくは、ろう材のはみ出し幅(T)を一定(例えば1mm)とし、全周にわたって同じ切欠幅Wの切欠部を複数箇所に設けた試料を作成した。なお、表2は、切欠幅の合計が全周の50%である場合の例を示し、表3は、切欠幅の合計が全周の30%である場合の例を示している。
【0124】
そして、各試料において、局所的なろう溜まりの発生の有無を調べた。その結果を表2、表3に示す。
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
表2に示すように、切欠部の全体の割合が50%の場合には、切欠幅Wが20mm未満の場合には局所的なろう溜まりが発生しなかった。また、表3に示すように、切欠部の全体の割合が30%の場合には、切欠幅Wが35mm未満の場合には局所的なろう溜まりが発生しなかった。
【0127】
また、これとは別に、表2、表3の試料において、ろう材のはみ出し幅を変更した試料を作成して調べたところ、ろう材のはみ出し幅が0.2mm未満の場合には、局所的なろう溜まりが発生した。
【0128】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば、各実施例の構成は、可能な範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0129】
(2)また、各実施例に記載した寸法は、本発明の範囲内で、適宜変更することが可能
である。