(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336405
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】断面積変化検出用装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20180528BHJP
G01N 17/00 20060101ALI20180528BHJP
G01N 27/00 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
G01N27/04 Z
G01N17/00
G01N27/00 L
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-18285(P2015-18285)
(22)【出願日】2015年2月2日
(65)【公開番号】特開2016-142613(P2016-142613A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】赤毛 勇一
(72)【発明者】
【氏名】高谷 雅昭
【審査官】
小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭60−101386(JP,U)
【文献】
特開昭60−152945(JP,A)
【文献】
実開昭51−077588(JP,U)
【文献】
特開昭63−182580(JP,A)
【文献】
特開2006−201150(JP,A)
【文献】
特開2013−132326(JP,A)
【文献】
特開平07−174727(JP,A)
【文献】
国際公開第92/01888(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
G01N 17/00−19/10
27/00−27/10
27/14−27/24
G01R 27/00−27/32
31/02−31/06
31/08−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を囲む筒体と、
前記鋼材および前記筒体に密着して挟み込まれる袋体部分を有する膨らんだ状態の袋体と、
前記鋼材の断面積の変化により変化する前記袋体部分の断面の面積に応じて変化する当該袋体部分内の当該断面を挟む2点間の抵抗値を測定するために当該各点に設けられる電極と、
前記各電極につき当該電極と一体または別に設けられ、当該電極に電気的に接続され且つ前記袋体外に引き出される導電体と
を備えることを特徴とする断面積変化検出用装置。
【請求項2】
前記袋体を2以上備え、
当該各袋体につき前記2つの電極および前記2つの導電体を備える
ことを特徴とする請求項1記載の断面積変化検出用装置。
【請求項3】
前記鋼材の断面積の変化がない場合に前記抵抗値を一定とする場合において一定にすべき前記袋体部分の密着の程度に影響を与える前記袋体の内圧を検出する内圧検出器を備えることを特徴とする請求項1記載の断面積変化検出用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材の断面積の変化を正確に検出する技術に関し、詳しくは、断面積変化検出用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来において、電柱間を渡す架線は鋼材であり、腐食して強度が低下すると補強や交換を行う必要がある。実際に設置された架線などの鋼材数は膨大であり、その点検作業の量も膨大である。
【0003】
鋼材が腐食すると断面積が変化する。従来では、例えば、鋼材の外径をノギスなどで測定し、外径から断面積を計算し、断面積の変化に基づいて腐食の有無を検出する。また、断面積が変化すると、電気的な抵抗値が変化する。従来では、例えば、鋼材の抵抗値を測定し、抵抗値の変化に基づいて腐食の有無を検出する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「腐食」、[online]、[平成26年11月18日検索]、インターネット<URL:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%85%90%E9%A3%9F>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、架線は高所にあるので、バケット車にて架線の場所に移動し、その高所でノギスなどを使用する必要がある。バケット車上の作業では、ときには無理な姿勢を強いられ、正確な測定ができない可能性がある。
【0006】
一方、鋼材の抵抗値を測定するには、鋼材に電極を接触させる必要がある。この場合、鋼材と電極の接触抵抗を一定にするのは容易でなく、正確な測定ができない可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、鋼材の断面積の変化を正確に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の断面積変化検出用装置は、鋼材を囲む筒体と、前記鋼材および前記筒体に密着して挟み込まれる袋体部分を有する膨らんだ状態の袋体と、前記鋼材の断面積の変化により変化する前記袋体部分の断面の面積に応じて変化する当該袋体部分内の当該断面を挟む2点間の抵抗値を測定するために当該各点に設けられる電極と、前記各電極につき当該電極と一体または別に設けられ、当該電極に電気的に接続され且つ前記袋体外に引き出される導電体とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、鋼材を囲む筒体と、前記鋼材および前記筒体に密着して挟み込まれる袋体部分を有する膨らんだ状態の袋体と、前記鋼材の断面積の変化により変化する前記袋体部分の断面の面積に応じて変化する当該袋体部分内の当該断面を挟む2点間の抵抗値を測定するために当該各点に設けられる電極と、前記各電極につき当該電極と一体または別に設けられ、当該電極に電気的に接続され且つ前記袋体外に引き出される導電体とを備えることで、抵抗値の変化は鋼材の断面積の変化を反映するので、鋼材の断面積の変化を正確に検出することができる。
【0010】
例えば、前記断面積変化検出用装置は、前記袋体を2以上備え、当該各袋体につき前記2つの電極および前記2つの導電体を備える。
【0011】
この特徴により、袋体が歪(いびつ)に曲がらず、密着の程度を高めることができ、鋼材の断面積の変化をより正確に検出することができる。
【0012】
例えば、前記断面積変化検出用装置は、前記鋼材の断面積の変化がない場合に前記抵抗値を一定とする場合において一定にすべき前記袋体部分の密着の程度に影響を与える前記袋体の内圧を検出する内圧検出器を備える。
【0013】
この特徴により、内圧がわかるので、各回の抵抗値測定で、検出される内圧を一定にしておき、つまり、密着の程度を一定にしておけばよく、これにより、鋼材の断面積が一定なら抵抗値を同じにできる。つまり、抵抗値の変化は、断面積の変化を正しく反映し、よって、断面積の変化を正しく検出することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、鋼材を囲む筒体と、前記鋼材および前記筒体に密着して挟み込まれる袋体部分を有する膨らんだ状態の袋体と、前記鋼材の断面積の変化により変化する前記袋体部分の断面の面積に応じて変化する当該袋体部分内の当該断面を挟む2点間の抵抗値を測定するために当該各点に設けられる電極と、前記各電極につき当該電極と一体または別に設けられ、当該電極に電気的に接続され且つ前記袋体外に引き出される導電体とを備えることで、抵抗値の変化は鋼材の断面積の変化を反映するので、鋼材の断面積の変化を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施の形態に係る断面積変化検出用装置を含むシステムの一例を示す図である。
【
図3】
図3(a)は、1つの鋼材10に対し、袋体2を2個使用した場合の模式図であり、
図3(b)は、1つの鋼材10に対し、袋体2を1個使用した場合の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る断面積変化検出用装置を含むシステムの一例を示す図である。
図2は、
図1のAA線矢視図である。
【0018】
箱体1の内部を鋼材10が貫通し、箱体1の内部で2つの袋体2が鋼材10を挟み込んでいる。各袋体2の内部には、2個ずつの電極3が設けられている。
【0019】
箱体1は、例えば、鋼材10の一部を囲む筒体1Aと筒体1Aの各開放端に設けられた端部1Bとを一体化したものである。筒体1Aは例えば、その断面形状を四角形としたものである。
【0020】
鋼材10は、例えば、電柱間を渡す架線であり、複数本の鋼材10aを寄りあわせたものである。鋼材10は、通常は外気に晒される。例えば腐食により、各鋼材10aの断面の総面積、つまり、
図1の矢印Dで示す7個の円の総面積(以下、断面積Dという)が変化する。図のシステムでは、この腐食などによる断面積Dの変化を検出する。例えば、あるタイミング(例えば鋼材10の設置時)において、断面積Dに応じた値(後述の抵抗値)を測定し、所定の期間経過後に再び抵抗値を測定し、2回測定した抵抗値の差、つまり、断面積Dの差を検出する。断面積Dは、
図2の矢印Dの箇所の断面積とする。
【0021】
各袋体2は、膨らんだ状態であり、鋼材10および筒体1Aに密着して挟み込まれる袋体部分2Aを有する。袋体2は、ゴム(天然ゴム)やシリコンゴムなどを含んで構成される。袋体2は、例えば、食塩水などの液体、粘性を有する液体、ネオンガスなどの気体を内包することで膨らんだ状態となる。
【0022】
図1は、袋体2を膨らんだ状態に保つ構成の一例を示している。
【0023】
容器4には、例えば、食塩水が入れられ、ポンプ5が容器4内の食塩水を袋体2に流し込むことにより、袋体2が膨らむ。袋体2の内圧が一定以上になると、内圧で逆止弁6が開き、食塩水が逆止弁6を通り、容器4に回収される。つまり、食塩水が循環してれば、袋体2の内圧は一定以上に維持される。
【0024】
各袋体2は、このような仕組みによって膨らみ、鋼材10および筒体1Aに密着する。よって、断面積Dが変化すると、
図1において矢印Eで示す形状の部分の面積、つまり、袋体部分2Aの断面積(以下、断面積Eという)が変化する。断面積Eは、
図2の矢印eの箇所(以下、断面eという)の断面積とする。
【0025】
電極3は、断面eを挟む2点間の抵抗値を測定するために当該各点に設けられる。つまり、2つの電極3が断面eを挟む配置となっている。電極3は、袋体2を貫通し、電極3の一部が袋体2の外部に露出する。電極3が貫通する部分の袋体2は、内部の液体などが漏れないように封止(シールド)される。電極3は、袋体2の外部で電線3a(導電体)に対し電気的に接続される。電線3aは、抵抗測定器7に接続され、抵抗測定器7は、電線3aに電流を流し、その電流値により、抵抗値を測定する。
【0026】
なお、電極3の本来の機能を果たしているのは、電極3の袋体2内の部分であり、袋体2外の部分は、電線3aとの接続の利便性等に鑑みて、袋体2内の部分と一体構成しているにすぎない。よって、袋体2外の部分は、袋体2内の部分に対し電気的に接続された導電体であり、この導電体に対し、電線3a(導電体)が電気的に接続されているともいえる。
【0027】
抵抗値は、断面積Eに反比例する。よって、一方の袋体2の電極3により測定した抵抗値が前回の測定に対し例えば0.1%増加したなら、その袋体2における断面積Eは0.1%減少したことになる。
【0028】
また、他方の袋体2の電極3により測定した抵抗値も前回に比べて0.1%増加したなら、その袋体2における断面積Eも0.1%減少したことになる。
【0029】
一方の袋体2の0.1%の減少分と他方の袋体2の0.1%の減少分の合計面積は、断面積Dの増加分の面積に等しい。すなわち、断面積Dについては、合計面積と同じ面積だけ増加したといえる。断面積Dの減少は逆の論理で検出することができる。すなわち、本実施の形態の断面積変化検出用装置を用いて、鋼材10の断面積Dの変化を検出することができる。
【0030】
また、当初の断面積Dがわかっていれば、断面積Dと増加分や減少分(変化量)により、現在の断面積Dを算出することができる。
【0031】
また、抵抗値は、袋体2内の物質(食塩水など)の抵抗率に比例する。一方、抵抗測定器7には、抵抗値の測定範囲が定められ、その範囲では精度が高い。よって、その測定範囲に抵抗値が入るように抵抗率を設定することで、断面積Dの変化の検出精度を高めることができる。
【0032】
なお、一方の袋体2の電極3により測定される抵抗値と他方の袋体2の電極3により測定される抵抗値は同じと考えれば、どちらかの袋体2においては、抵抗値測定を省略できる。つまり、その袋体2内の電極3等は不要である。
【0033】
袋体2の内部には、内圧を検出する内圧検出器8が設けられる。内圧検出器8は、リード線を介して表示器(共に図示せず)に接続され、表示器が内圧を表示する。
【0034】
断面積Dは、1回の測定時間のような短時間ではほぼ変化しない。このように断面積Dの変化がないなら抵抗値変化もないのが好ましい。そのためには、鋼材10および筒体1Aへの袋体部分2Aの密着の程度を一定にする必要がある。
【0035】
しかし、袋体2の内圧が変化すると密着の程度も変化する。つまり、内圧を一定にしておかないと、密着の程度が一定とならず、断面積Dが一定であっても抵抗値は変わる。つまり、断面積Dが一定であっても各回の抵抗値に差(変化)が生じる可能性がある。
【0036】
内圧検出器8は、内圧を検出できるので、各回の測定で、検出される内圧を一定にしておけばよい。つまり、密着の程度を一定にしておけばよい。これにより、断面積Dが一定なら抵抗値を同じにできる。つまり、抵抗値の変化は、断面積Dの変化を正しく反映し、よって、断面積Dの変化を正しく検出することができる。
【0037】
(変形例)
本実施の形態では、
図3(a)の模式図に示すように、1つの鋼材10に対し、袋体2を2個使用したが、
図3(b)の模式図に示すように、1つの鋼材10に対し、袋体2を1個使用してもよい。逆に袋体2を3個以上使用してもよい。
【0038】
図3(b)でわかるように、1個の袋体2は歪(いびつ)に曲がるので、鋼材10および筒体1Aへの密着の程度が低くなる。一方、袋体2を2個以上使用すれば、袋体2は歪(いびつ)に曲がることがなく、密着の程度を高め、断面積Dの変化をより正しく検出することができる。
【0039】
なお、本実施の形態において鋼材10は、電柱間を渡す架線としたが、架線以外の鋼材でもよい。例えば、鋼材は鉛直に立てられた柱でもよい。また、鋼材は、中空構造でもよい。
【0040】
また、本実施の形態では、筒体1Aの断面形状を四角形としたが、円形や楕円形などでもよい。
【0041】
以上のように、本実施の形態によれば、鋼材10を囲む筒体1Aと、鋼材10および筒体1Aに密着して挟み込まれる袋体部分2Aを有する膨らんだ状態の袋体2と、鋼材10の断面積Dの変化により変化する袋体部分2の断面eの面積(E)に応じて変化する当該断面eを挟む2点間の抵抗値を測定するために当該各点に設けられる電極3と、各電極3につき当該電極と一体または別に設けられ、当該電極に電気的に接続され且つ袋体2外に引き出される導電体(3a)とを備えることで、抵抗値の変化は鋼材10の断面積Dの変化を反映するので、鋼材10の断面積Dの変化を正確に検出することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 箱体
1a 筒体
1b 端部
2 袋体
2A 袋体部分
3 電極
3a 電線
4 容器
5 ポンプ
6 逆止弁
7 抵抗測定器
8 内圧検出器
10、10a 鋼材
D 鋼材10の断面積
E 袋体部分2Aの断面eの断面積
e 袋体部分2Aの断面