【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的は、請求項1または3に記載の特性を有するインプラント及び請求項19の特性を有するインプラント製造方法により実現する。効果的な実施形態が従属項の目的である。
【0011】
本発明は、人または動物の体に用いられるインプラントの場合、基本的に、そのインプラントが体内において行う1つ以上の機能が実現するような形状が選択される、という知識から発生している。これらの機能には、インプラントによる、ある程度の可動性または弾性の提供をも含むことができる。場合によっては、インプラント内の弾性または可動性は基本的に必要ないが、おそらくは望ましくかつ効果的である。これに関し、以下の説明では、可動性及び弾性の機能を第2の機能と指定し、他の全ての機能を第1の機能として表す。
【0012】
第1のケース群では、従来技術において、可動性及び弾性は、付加的な部品及び/または異なる種類の材料により得られる。本発明は別の方法を採用し、可撓性または可動性を別の材料または付加的な別の部品を設けることにより得るのではなく、一体的なインプラントまたはインプラント部品の場合に、可撓性または可動性を有する領域を、材料の凹部(material recess)をそのデザインに組み込むことにより実現する。
【0013】
第2のケース群では、可撓性または可動性は絶対的に必要な機能ではなく、この付加的な機能は、本発明により、対応する材料の凹部を対応する領域に設けることにより実現する。この凹部は、意図される機能によって特定される形状に加え、発生する。
【0014】
このように、追加的な弾性材料及び対応する接続部品または追加的な個別部品を使用しないことにより、可撓性及び可動性をインプラントまたはその部品において簡単に得ることができる。これに関し、弾性または可動性の機能は、インプラントの必要な機能に加えて、または必要な機能の構成要素として、提供することができる。特に、圧縮及び/または伸張領域を、かつ、一定の制限内で屈曲接合部またはねじり部材などを、特に一体型インプラントまたはインプラント部品において、このような方法で簡単かつ確実に実現できる。
【0015】
これに対応し、好ましくは一体形成されたインプラントに対し、安定性があり、硬く、特に意図された使用条件に対して、剛性で、好ましくは可撓性で剛性の材料、例えばチタン、チタン合金、プラスチックなどを使用することができる。一般に、拒絶反応を起こさない、または身体への負荷である、いかなる崩壊現象も示さない、すべての生体適合材料がこのような材料の候補である。
【0016】
材料凹部は、好ましくは、インプラントまたはインプラント部品の壁の溝型凹部または開放開口として設けることができる。材料凹部の形状、数、及び配置は、場合に応じて、負荷要件に対して調節が可能である。
【0017】
多様な要件を満たす一般的な形状として、材料凹部はインプラント本体周囲を取り囲むように螺旋状に形成され、特に、螺旋ねじタイプの形状となる。この形状は、特に、材料凹部により、螺旋状ねじの隣り合うフィレット(fillet,巻き)間に自由空間が存在するという効果が得られる。これにより、製造の容易性及びこれに関連するより多様な材料の選択肢に加え、可撓性がより大きくなるという効果がある。
【0018】
特に効果的な点として、二重トラック(twin‐track)または2段(two‐flight)螺旋状に形成された2つの材料凹部を提供できる。このように、互いの内側に配置された2つの螺旋ねじを特に形成することができる。螺旋形状の凹部の領域が同じ高さを有する場合、1つの低ピッチ螺旋形状凹部に代えて、2つのダブルピッチ螺旋形状凹部が形成できる。
【0019】
椎骨及び/または椎間板用のスペースホルダ及び茎ねじ構造の接続ロッドが、同様に可撓性のインプラントに特に適し、これらは、特に効果的にシステムとして共に用いることができる。これにより、安定した脊柱を有する患者が、十分な可動性を有することが可能になる。
【0020】
椎骨及び/または椎間板用のスペースホルダは、第1の機能として、空間保持及び重量移動の機能を提供する一方、第2の機能として、緩衝効果及び可動性を付加的に提供する。
【0021】
接続ロッドに関しては、支持及び接続機能を第1の機能とする。
【0022】
インプラントまたはスペースホルダまたは接続ロッドに関し、これらの部材を、中央の管状本体部とその端部に設けられた接続部材とを備える管状体に形成し、可撓性を提供する材料凹部を好ましくは1つまたは2つの螺旋形状開口として管状本体部に設けることにより、この部分が互いの内側に配置された1つまたは2つの螺旋ばねの形状を実質的に有するのが効果的である。スペースホルダの接続部材は、好ましくは、隣接する身体部分、例えば椎骨にスペースホルダを接続する対応する手段を、その両端部において鉤状突起として有し、及び/または外被面に凹部、溝部及び開口を有し、これによりスペースホルダは組織に成長するまたは結合することができる。ただし、この点に関し、接続部材のキャビティまたは凹部を、管状本体部分においてスペースホルダの可撓性及び可動性を実現するための材料凹部と混同してはならない。接続部材は、隣接する身体部分、例えば椎骨に完全に結合するため、椎骨の可撓性や可動性には寄与しないのである。
【0023】
管状本体部を隣接する身体部分に接続するための手段は、特にこの本体部の端部を延長することにより管状本体部と一体的に形成してもよいし、その端部に対して着脱可能に、例えば管状本体部の端部にねじ挿入できる端部プレートを配置してもよい。
【0024】
このような着脱可能な端部プレートまたは管状本体部と一体接続された端部プレートは、好ましくは、材料凹部を有する管状本体部の周囲に少なくとも1つの弾性材料のスリーブが弾性または可動性を実現する目的で配置される場合、あるいは、管状本体部の内部に少なくとも1つの弾性コアが配置される場合に設けられる。好ましくは1つのエラストマで形成されるこのような弾性コアまたは弾性スリーブには、管状本体またはスペースホルダの弾性または剛性を正確に調整できるという効果がある。対応する凹部及びコア及び/またはスリーブを備える管状本体のモジュラー構造により、異なる部品または異なる剛性を使用して、インプラントの正確に定められた剛性を、緩衝として簡単に実現できる。これに関し、材料凹部を有し、可撓性を実現するインプラント部品と、1つの可撓性材料で構成され、定められた剛性を調整するインプラント部品との組み合わせは、広く本発明の目的である。剛性を変更するには、部品の組成を変えるだけでよく、すなわち、例えば異なる剛性の異なるコアまたは異なるスリーブを可撓性の管状本体に使用すればよい。スリーブとコアとのいずれをも、可撓性管状本体部とともに同時に使用可能であるとも考え得るが、装置の簡素化のために、通常は、管状本体部とコアとの組み合わせ、または管状本体部とスリーブとの組み合わせを用いる。これに関し、スリーブには、好ましくは螺旋形状の凹部を有する管状本体部を外部の影響から保護するという効果もあり、一方、これに対してコアを用いた場合には、コアが管状本体部により保護される。
【0025】
コアとスリーブのいずれもが、管状本体部の両端部に配置された端部プレートにより、効果的に保持可能である。ここで、スリーブ構造の場合には、端部プレートは好ましくは管状本体部を超えて突出し、よって、管状本体部より大きい直径を有する。端部プレートは、少なくとも部分的に、すなわちその一方の側で、管状本体部と一体的に接続することができ、これによりビーカのような形状が得られる。さらに、端部プレートは、例えば、ねじまたはねじ山(thread)接続により、管状本体部に対して1つの側または2つの側のいずれかに着脱可能に接続できる。この場合、端部プレートと管状部材のいずれにも外ねじを設けることができる。
【0026】
好ましくは、インプラントまたは可撓性及び可動性を得るための材料凹部を有する管状本体部は、その長さ方向に、スペースホルダの長さ方向軸に沿って0.5から20%、特に1から15%伸縮可能であり、かつスペースホルダの長さ方向軸に垂直な径方向軸を中心に屈曲可能であり、これにより、隣接する身体部分が長さ方向軸に対して約0.5から10度、特に1から6度だけ回動可能である。さらに、好ましい実施形態においては、長さ方向軸を中心に0.5°から2.5°のねじれ運動が可能である。
【0027】
可撓性インプラントのさらなる効果的な適用例においては、茎ねじ構造の間の領域における単軸または多軸茎ねじ構造のあいだに設けられた接続ロッドは、対応する材料凹部の構造により、ロッドを中空体として少なくとも部分的に形成することによって特に実現可能な特定の可撓性及び可動性を受ける。ロッド形状部材は、異なる重症度の椎間板の欠陥がある場合に、隣り合う椎骨の安定及び可動性の制限のための使用に特に適している。これらの特性は、ロッド形状部材の大きさを変えることにより、製造中に簡単に実現できる。
【0028】
このようなインプラントは、1つ以上の材料凹部を機械的または化学的切削(milling)、EDM(electrical discharge machining)、レーザ処理または他の任意の方法で本体部の壁に導入できるように、本体部から簡単に製造できる。特に、1つまたは好ましくは2つの材料凹部を、螺旋形状または壁に沿って本体の周囲に設けることができる。
【0029】
本体部が中実体、例えば中実の円筒であれば、先行するまたは後続の第2ステップにおいて、特に、材料凹部と同軸上のボアホールを形成し、弾性領域において好ましくは螺旋ばね形状が形成されるようにすることができる。パイプ状の材料が用いられる場合には、コアの穿孔の必要がなくなることがある。
【0030】
好ましくは、パイプ形の本体をレーザ処理することにより材料凹部が形成できる。この場合、1処理ステップで2つの凹部を導入することができるからである。すなわち、レーザにより、パイプ状の本体(例えば、二次パイプ(quadratic pipe)でも)を貫通して穴開けすることにより、両側に同時にボアホールを形成できる。本体を回転及び前進させることにより、二重螺旋が同時に生成される。
【0031】
さらなる態様においては、本発明は少なくとも2つの骨固定部材を接続するロッド形状部材に関する。骨固定部材のそれぞれは、骨に固定される固定部分と、単一片から形成される少なくとも1つの剛性部分と1つの弾性部分を備えるロッド形状部材に接続するための収容部分とを有し、特に、弾性部分は螺旋ばねとして形成される。さらに/または、剛性部分に接する弾性部分の反対の端部には、弾性部分に近接して第2の剛性部分が設けられる。さらに/または、弾性部分の外径は、少なくとも1つの位置において剛性部分の外径と異なり、さらに/または弾性部分は、ロッド軸と垂直なある方向において、別の方向においてより、少なくとも部分的にその外径が小さく、さらに/または弾性部分の外径は変化し、さらに/または弾性部分はコアであり、さらに/またはロッド形状部材を貫通して伸張する同軸ボアホールが設けられている。
【0032】
さらに、別の態様においては、本発明は、少なくとも2つの骨固定部材を備える、骨の安定装置に関する。各骨固定装置は、骨に固定するための骨固定部分と収容部、及び骨固定装置に接続するための上記のようなロッド形状部材を有し、特に、骨固定部材は単軸または多軸骨ねじである。
【0033】
さらに、本発明は、以下のステップを含むロッド形状部材の生成方法に関する。
a)剛性ロッドを準備するステップ、
b)好ましくは材料除去方法によって、前記ロッドの少なくとも1つの長さ方向部分に、ロッドの自由単部から所定の距離にわたって螺旋ねじ部分を生成するステップ。特に、コアが軸方向に穿孔され、または残され、かつ/または所定の材料部分が弾性部分の長さ方向に取り除かれて、弾性部分の少なくとも1領域に非円形の断面を生成し、かつ/または,剛性部分の直径が弾性部分に対して低減されている。
【0034】
本発明は、特に、第1の端部とこれに対向する第2の端部を備える実質的に円筒体として提供される、骨または椎骨のための安定装置に用いられる弾性部材に関し、前記本体の対向する端部は、それぞれが同軸の穴を有し、これら端部の少なくとも1つが、骨ねじのシャフト及び/またはヘッドに接続するため、またはロッド部分またはプレートに接続するための内ねじ溝を有し、特に、両端部のそれぞれに内ねじ溝が設けられている。
【0035】
本発明は、さらに、第1の端部とこれに対向する第2の端部を備える実質的に円筒体として提供される、骨または椎骨のための安定装置に用いられる弾性部材に関し、前記本体の第1端部は、骨ねじのシャフトまたはヘッドに接続するため、ロッド部分に接続するため、またはプレートに接続するための、外ねじ山を備える円筒突起を有する。
【0036】
前記本体の第2端部は、効果的には、骨ねじのシャフトまたはヘッドに接続するため、ロッド部分に接続するため、またはプレートに接続するための、外ねじ山を備える円筒突起を有する。
【0037】
さらに好ましい実施形態によれば、弾性部分は、その第2端部に近接して同軸ボアホールを有し、かつ/または少なくとも第2端部に近接する同軸ボアホールの部分に、骨ねじのシャフトまたはヘッド、あるいはロッド部分またはプレートに接続するための、内ねじ溝を有する。
【0038】
さらに好ましい実施形態によれば、弾性部材は、ボアホールが長さ全体にわたって延びていること、かつ/または本体には、連続する同軸ボアが設けられて管状の形状を形成し、凹部が螺旋形状に円筒軸の方向に壁を延び、ここで、径方向において、凹部はボアホールで終端していること、を特徴とする。
【0039】
さらに別の好ましい実施形態によれば、弾性部材は、ボアホールにコアが設けられていること、かつ/または弾性部材が螺旋ばねとして設けられていること、を特徴とする。
【0040】
さらに別の好ましい実施形態によれば、弾性部材は、生体適合材料、特にチタンから形成される。
【0041】
本発明は、特に、上記の弾性部材を備える骨固定部材に関する。骨固定部材は、弾性部材の1端部に接続される骨ねじ山を有するシャフトと、弾性部材の他端部に接続される、骨ねじの端部ピース、好ましくはヘッドを有する。
【0042】
本発明は、特に、弾性部材と、弾性部材の1端部に接続された第1剛性ロッド部分とを有する、2つの骨固定部材を接続するためのロッド形状部材に関し、特に、第2剛性ロッド部分が弾性部材の他端部に接続されている。
【0043】
本発明は、特に、上記の可撓性または弾性部材に接続するための、外ねじ山を備える円筒突起、または内ねじ溝を備えるボアホールを、少なくともその1端部に有するプレートに関する。
【0044】
本発明は、特に、上記のロッド形状部材によって互いに接続された少なくとも2つの骨固定部材を有する、骨、骨部分、または脊柱の動的安定のための安定装置に関する。
【0045】
本発明は、特に、以下のステップを含む、弾性部材の製造方法に関する。
(a)管状の本体を用意し、または
(b)円筒形状の本体を用意し、
(c)円筒または管形状の本体の主軸に対して同軸に延びる螺旋に沿って、金属切削により、外側から材料を除去することにより螺旋形状の凹部を形成し、
(d)円筒本体の主軸に沿ってボアホールを形成し、
(e)管状本体またはボアホールの2つの端部部分の一方に、内ねじ溝を形成し、
ここで、特に、ステップ(d)のボアホールの内径が、ステップ(c)において金属切削により形成された円筒本体の外壁における螺旋形状の凹部が径方向においてボアホールで終端するように選択され、特に、ボアホールの他端部分に内ねじ溝が形成される。
【0046】
本発明は、特に、以下のステップを含む弾性部材の製造方法に関する。
(a)円筒形状の本体を用意し、
(b)円筒形本体の2つの端部のそれぞれに、外ねじ山を有する1つの円筒突起を金属切削回転により形成し、
(c)円筒形状本体の主軸に対して同軸に延びる螺旋に沿って、金属切削により、外側から材料を除去することにより螺旋形状の凹部を形成し、
(d)円筒本体の主軸に沿ってボアホールを形成し、
効果的に、さらに以下のステップを含む。
(f)ボアホールの内側の鋭い端部を取り除くために、ボアホール形成後に、切削によって螺旋形状の凹部の逃げを仕上げ、
(g)このようにして形成された弾性部材のデバリングを行う。
【0047】
本発明は、特に、以下のステップを含む、弾性部材の製造方法に関する。
(a)第1及び第2の端部を有する管状の本体を用意し、
(b)第1及び第2の端部を有する円筒形状の本体を用意し、円筒形状の本体の主軸に対して同軸にボアホールを形成し、このボアホールが円筒形状本体の少なくとも第1の端部に近接し、
(c)円筒形本体の主軸に対して同軸に延びる螺旋に沿って、ワイヤEDM、レーザ処理、またはウォータジェット処理により、凹部を切削し、
(d)金属切削回転により、ステップ(a)または(b)で用意された円筒形または管状の本体の所定の外径より小さい直径を有する円筒形突起を形成し、円筒形本体の第1の端部における円筒形突起の表面上に外ねじ山を形成する、あるいは、円筒形本体または管状本体の第1の端部に近接する部分において、ボアホールに内ねじ溝を形成し、ここで、特に、ステップ(b)で形成されたボアホールが円筒形本体の第1の端部から第2の端部まで延びる。
【0048】
さらに別の好ましい実施形態によれば、上記の方法はさらに、ボアホールの、円筒形本体の第2端部に近接する部分に、内ねじ溝を形成するステップをさらに含む。
【0049】
さらに別の好ましい実施形態によれば、上記の方法はさらに、金属切削回転により、円筒形または管状の本体の所定の外径より小さい直径を有する円筒形突起を形成し、円筒形本体の第2の端部における円筒形突起の表面上に外ねじ山を形成するステップをさらに含む。
【0050】
本発明は、特に、以下のステップを含む、弾性部材の製造方法に関する。
(a)第1および第2の端部を有する円筒形または管状の本体を用意し、
(b)金属切削回転により、ステップ(a)で用意された円筒形または管状の本体の所定の外径より小さい直径を有する円筒形突起を形成し、円筒形本体の第1および第2の端部における円筒形突起の表面上に外ねじ山を形成し、
(c)円筒形本体の主軸に対して同軸に延びる螺旋に沿って、ワイヤEDM、レーザ処理、またはウォータジェット処理により、凹部を形成し、ここで、特に、螺旋形状凹部の2つの逃げ部が4分の1円の形状で設けられている。