特許第6336442号(P6336442)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6336442生物活性剤送達デバイス及びその製造方法と使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336442
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】生物活性剤送達デバイス及びその製造方法と使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/00 20060101AFI20180528BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20180528BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20180528BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20180528BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20180528BHJP
   G03F 7/004 20060101ALN20180528BHJP
   G03F 7/028 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   A61K9/00
   A61K47/34
   A61K47/42
   A61K47/36
   A61K47/32
   !G03F7/004 501
   !G03F7/028
【請求項の数】22
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2015-515097(P2015-515097)
(86)(22)【出願日】2013年5月24日
(65)【公表番号】特表2015-519366(P2015-519366A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】US2013042710
(87)【国際公開番号】WO2013181107
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年5月11日
(31)【優先権主張番号】61/653,119
(32)【優先日】2012年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】デサイ,テジャル エー.
(72)【発明者】
【氏名】チラー,ハリハラサダン ディー.
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−534485(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/006840(WO,A1)
【文献】 特表平11−507913(JP,A)
【文献】 石原一彦,ナノバイオエンジニアリングマテリアル,2004年,第1刷,p.23-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K9/00−9/72,47/00−47/69,
G03F7/00−7/42
CAplus (STN),
MEDLINE (STN),
EMBASE (STN),
BIOSIS (STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貯留部を含む実質的に平面的なマイクロデバイスを製造する方法であって、
生体適合性ポリマーの平面層を基板上に製作することであって、前記基板上の生体適合性ポリマーをスピンコーティングして、5〜10μmの厚さの平面層を形成させることを含むことと、
連続的ステップを用いて前記平面層の中にマイクロデバイス構造を画定することとを含み、
前記連続的ステップが、
前記生体適合性ポリマーの平面層上に第1のポジ型フォトレジスト層を堆積させるステップと、
第1のポジ型レジスト層を第1のフォトマスクを通じて露光させ、平面層に前記第1のポジ型レジスト層を被せたまま平面層周辺のポジ型レジスト層を第1のフォトレジスト現像剤に溶解させるステップと、
前記第1のポジ型レジスト層を現像させて、平面層周辺の前記第1のフォトレジスト層を除去するステップと、
平面層周辺の生体適合性ポリマーを反応性イオンエッチングによって除去し、平面的なマイクロデバイスを形成させるステップと、
前記平面的なマイクロデバイスから前記第1のポジ型レジスト層を除去するステップと、
前記平面的なマイクロデバイス上に第2のポジ型レジスト層を堆積させるステップと、
第2のポジ型レジスト層を第2のフォトマスクを通じてUV光に露光させ、前記第2のポジ型レジスト層を複数の領域の第2のフォトレジスト現像剤に溶解させるステップと、
前記第2のポジ型レジスト層を現像させて、複数の領域の前記第2のフォトレジスト層を除去し、それによって前記平面的なマイクロデバイスの領域を露光させるステップと、
前記マイクロデバイスの露光した領域の生体適合性ポリマーを部分的反応性イオンエッチングによって除去し、平面的なマイクロデバイスに複数の貯留部を形成させるステップと、
前記平面的なマイクロデバイスから前記第2のポジ型レジスト層を除去するステップとを含むものであり、
これにより、複数の貯留部を含む平面的マイクロデバイスを生成させ、前記複数の貯留部は、前記マイクロデバイスの第1の表面で開放され、前記マイクロデバイスの第2の表面で閉止されているものである、方法。
【請求項2】
生物活性剤を前記複数の貯留部の中に堆積させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生物活性剤は、前記生物活性剤及びプレポリマーを含む溶液の形式で堆積され、前記方法は前記溶液を重合させることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の生物活性剤とフォトポリマーとを含む第1の溶液を前記複数の貯留部の中へ堆積させることと、
第1の貯留部内の前記第1の溶液を露光させることによって、前記複数の貯留部の第1の貯留部においてのみ前記第1の溶液を重合させ、それによって前記第1の溶液を重合することと、
露光されなかった貯留部から、重合されていない第1の溶液を除去することと、
第2の生物活性剤とフォトポリマーとを含む第2の溶液を前記複数の貯留部の中へ堆積させることと、
第2の貯留部内の前記第2の溶液を露光させることによって、前記複数の貯留部の第2の貯留部においてのみ前記第2の溶液を重合させ、それによって前記第2の溶液を重合させ、それによって前記第1の貯留部に前記第1の生物活性剤を提供し、前記第2の貯留部に第2の生物活性剤を提供することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マイクロデバイス構造を画定した後に、接着分子を前記第1の表面に付着させ、前記マイクロデバイスの前記第1の表面が標的組織の細胞に接着するのを促進することをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の貯留部を前記マイクロデバイス構造に導入した後、接着分子を前記第1の表面に付着させ、前記マイクロデバイスの前記第1の表面が標的組織の細胞に接着するのを促進することをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記生体適合性ポリマーは、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(DLPLCL)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、コローゲン、ゼラチン、アガロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ガラチン/ε−カプロラクトン、コラーゲンGAG、コラーゲン、フィブリン、PLA、PGA、PLA−PGAコポリマー、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(プロピルフマレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン及びポリサッカライド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生分解性ポリウレタン、ポリウレア、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ(エチレンオキシド)、以上のコポリマー、以上の混合物、以上の付加物、又はその組み合わせである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記生体適合性ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)又はその誘導体である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記生体適合性ポリマーは、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)又はその誘導体である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロデバイスは、ディスク状である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記マイクロデバイスは、約50μm〜1000μmの平均直径を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の貯留部は、異なる深さを有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の貯留部は、異なる容積を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の貯留部は、異なる直径を有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記基板から前記マイクロデバイスを取り出すことをさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記細胞接着分子は、レクチン、キトサン、ラミニン、フィブリン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、又はその組み合わせである、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の溶液は第1のプレポリマーを含み、前記第2の溶液は第2のプレポリマーを含み、前記第1の生物活性剤は、前記第2の貯留部からの前記第2の生物活性剤の放出に比較して異なった率で、前記第1の貯留部から放出される、請求項4に記載の方法。
【請求項18】
前記生体適合性ポリマーの平面層上に第1のポジ型フォトレジスト層を堆積させるステップが、スピンコーティングを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記平面的なマイクロデバイス上に第2のポジ型フォトレジスト層を堆積させるステップが、スピンコーティングを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記平面的なマイクロデバイスがおよそ7.5μmの厚さを有する、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の貯留部の深さが、3.5〜5μmである、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリマーが、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)を含む、請求項1から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
米国特許法第119条(e)項によって、本願は、2012年5月30日に出願された米国仮特許出願第61/653,119号の出願日に対する優先権を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれているものとする。
【0002】
導入
種々の従来式薬剤投与形態の中で、医薬の経口送達は、いくつかの利点を提供するので、好ましい方法である。それは、侵襲性がより低く、患者が所定通り服用をする可能性がより高く、速く効き、製造コストが低い。しかしながら、腸に特有の一連の障壁、例えば、胃の酸性環境、厚い粘液と上皮の境界面に対する活性治療剤の浸透不良、多くの薬剤分解腸内酵素、及び、蠕動とずり流動状態に起因する限られた保持時間、が全体的な薬の有効性を制限する。また、相乗効果を達成するために複数の薬剤を同時に送達しなければならない併用療法が必要である場合がある。加えて、過敏性腸症候群(IBS)、炎症性腸疾患(IBD)、及びクローン病等の腸疾患に対して標的方法のないことが、副作用のリスク増大という結果に至る。
【0003】
腸溶性カプセル、錠剤、粒子、リポソーム、生体接着剤、及び浸透促進剤を含む種々の経口送達方式が薬剤の経口生物学的利用能を改善する努力において開発されてきたにもかかわらず、これらの方式の多くは、腸内における種々の生理的状態及び高ずり流動に起因する腸内局所性不良及び低治療有効性を難点とする。そのため、これらの方式は、頻度を増やし、長期間にわたって投与することを必要とし、高価及び/又は有毒性の薬剤については実用的ではない。
【0004】
微粒子等の微細製作された薬剤送達賦形剤が、乳化、液滴押し出し、溶媒蒸発、又はナノ沈殿等の技術により開発されている。しかしながら、これらの微粒子は凝集して多分散性になる傾向がある(B.Bugarski,et al.,AIChE J.40(1994),1026−1031;G.H.J.Wolters,et al.,J.Appl.Biomater.3(1992),281−286;W.T.Leach,et al.,AAPS Pharm.Sci.Tech.6(2005),E605−E617)。これらの微粒子が多分散性であることは、不均一な薬剤充填及び放出につながる可能性がある(S.K.Lai,et al.,Biomaterials.28(2007),2876−2884;J.Rejman,et al.,Biochem.J.377(2004),159−169;C.L.Randall,et al.,Adv.Drug Deliv.Rev.59(2007),1547−1561)。さらに、球状粒子が対称性であることは、粘液・粒子境界面における全方向性薬剤放出によって、内腔中への薬剤の損失が引き起こされるという結果になる可能性がある(K.M.Ainslie and T.A.Desai,Lab Chip.8(2008),1864−1878)。
【0005】
そのため、生物活性剤を標的組織へ送達するためのデバイスに対して需要がある。本明細書に記載される本発明は、この需要と、併せて他の需要とを満たす。
【発明の概要】
【0006】
複数の貯留部を含む実質的に平面的なマイクロデバイスを調製する方法が提供される。一般的に、この方法は、複数の貯留部を含む複数のマイクロデバイスを平面層状の生体適合性ポリマーから形成することを含む。方法はまた、1つ又は複数の生物活性剤を貯留部の中へ堆積させることを含む。マイクロデバイスは、標的組織に付着し、組織の直近に生物活性剤を放出するように構成される。以上により、マイクロデバイスは、一方向に生物活性剤を放出するように構成される。
【0007】
所定の実施形態では、複数の貯留部を含む実質的に平面的なマイクロデバイスを調製する方法は、
生体適合性ポリマーの平面層を基板上に製作するステップであって、平面層は第1の表面と、第1の表面の反対側にある第2の表面とを含むものである、ステップと、
フォトレジスト層の連続堆積、露光、及びエッチングを用いて平面層の中にマイクロデバイス構造を画定するステップと、
フォトレジスト層の連続堆積、露光、及び部分的エッチングを用いてマイクロデバイス構造の中に複数の貯留部を導入するステップであって、複数の貯留部は、マイクロデバイスの第1の表面でのみ開放され、マイクロデバイスの第2の表面で閉止されており、それにより、複数の貯留部を含む平面的マイクロデバイスを生成させるものである、ステップと、
を含む。
【0008】
ある場合には、方法は、生物活性剤を複数の貯留部の中に堆積させることをさらに含む。生物活性剤は、生物活性剤及びフォトポリマーを含む溶液の形式で堆積させてもよく、方法は、貯留部を露光することにより溶液を重合させることをさらに含む。
【0009】
ある場合には、方法は、
第1の生物活性剤を含む第1の溶液を複数の貯留部の中へ堆積させるステップと、
第1の溶液を、複数の貯留部の第1の貯留部においてのみ重合させるステップと、
重合されていない第1の溶液を除去するステップと、
第2の生物活性剤を含む第2の溶液を複数の貯留部の中へ堆積させ、第2の溶液を、複数の貯留部の第2の貯留部においてのみ重合させるステップと、
を含む。所定の実施形態では、第1の溶液はまた、プレポリマー、例えば、フォトポリマーを含んでいてもよく、第1の溶液を第1の貯留部においてのみ重合させることは、第1の貯留部のみを露光することを含んでいてもよい。所定の実施形態では、第2の溶液はまた、プレポリマー、例えば、フォトポリマーを含んでいてもよく、第2の溶液を第2の貯留部においてのみ重合させることは、第2の貯留部のみを露光することを含んでいてもよい。
【0010】
所定の実施形態では、第1の溶液は第1のプレポリマーを含んでいてもよく、第2の溶液は第2のプレポリマーを含んでいてもよく、第1の生物活性剤は、第2の貯留部からの第2の生物活性剤の放出に比較して異なった率で、第1の貯留部から放出される。
【0011】
所定の実施形態では、方法は、マイクロデバイス構造を画定した後に、接着分子を第1の表面に付着させて、マイクロデバイスの第1の表面が標的組織の細胞へ付着することを促進するステップを含む。
【0012】
所定の実施形態では、方法は、マイクロデバイス構造に複数の貯留部を導入した後に、接着分子を第1の表面に付着させて、マイクロデバイスの第1の表面が標的組織に付着することを促進するステップを含む。
【0013】
いくつかの場合には、生体適合性ポリマーは、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(DLPLCL)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、コローゲン(collogen)、ゼラチン、アガロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ガラチン(galatin)/ε−カプロラクトン、コラーゲンGAG、コラーゲン、フィブリン、PLA、PGA、PLA−PGAコポリマー、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルトエステル)、ポリ(プロピルフマレート)(poly(propylfumerates))、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ吉草酸)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタン及びポリサッカライド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生分解性ポリウレタン、ポリウレア、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、ポリプロピレン、ポリメタクリレート、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ(エチレンオキシド)、以上のコポリマー、以上の混合物、以上の付加物、又はその組み合わせであってもよい。
【0014】
ある場合には、生体適合性ポリマーは、ポリ(メチルメタクリレート)又はその誘導体であってもよい。他の実施形態では、生体適合性ポリマーは、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)又はその誘導体であってもよい。
【0015】
所定の実施形態では、実質的に平面的な層を製作することは、生体適合性ポリマーを約5μm〜約100μmの平均厚さで堆積させることを含む。
【0016】
所定の例では、マイクロデバイスは約5μm〜約100μmの平均厚さを有してもよい。
【0017】
所定の実施形態では、マイクロデバイスはディスク状であってもよく、これは、円形又は楕円形であってもよい。いくつかの実施形態では、マイクロデバイスは、約50μm〜1000μmの平均直径を有する。
【0018】
いくつかの場合には、複数の貯留部は、異なる深さを有していてもよい。他の場合には、複数の貯留部は、同じか又は類似の深さを有していてもよい。いくつかの実施形態では、複数の貯留部は、異なる容積を有していてもよい。いくつかの実施形態では、複数の貯留部は、異なる直径を有していてもよい。
【0019】
例示的な実施形態では、方法は、基板からマイクロデバイスを取り出すことをさらに含む。
【0020】
ある場合には、細胞接着分子は、レクチン、キトサン、ラミニン、フィブリン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、又はその組み合わせである。
【0021】
マイクロデバイスは、胃腸インプラント、歯科インプラント、心臓血管インプラント、神経インプラント、神経血管インプラント、筋肉インプラント、及び眼球インプラントを含む、医療インプラントとして有益であり得る。本発明はまた、かかるインプラントを必要とする患者を治療する方法を提供する。
【0022】
上に注記する通り、マイクロデバイスは、対象内に配置された際に隣接する組織へ生物活性剤をマイクロデバイスの単一の表面から溶出するために、生物活性剤を含む。いくつかの実施形態では、マイクロデバイスは、粘膜表面に付着し、生物活性剤の粘膜表面への局所的送達を提供する。
【0023】
いくつかの実施形態では、生物活性剤は、ポリペプチド、増殖因子、ステロイド、抗体、抗体断片、DNA、RNA、siRNA、抗菌剤、抗生物質、抗レトロウイルス薬、抗炎症性化合物、抗腫瘍剤、抗血管新生剤、及び化学療法剤より選択される。
【0024】
上に概説される工程によって生産されるマイクロデバイスもまた本明細書に記載される。
【0025】
本発明のこれら及び他の目的、利点、及び特徴は、下にさらに十分に記載される本発明の詳細を読むとき、当業者に明らかとなる。
【0026】
本開示の種々の実施形態の詳細な説明は、添付の図面を参照して本明細書に提供され、下に記載される。図面は例示的なものである。図面の種々の部分は、慣例に従い、原寸に比例していない、ということを強調する。逆に、種々の部分の寸法は、明瞭性のために任意に拡大又は縮小されている。図面は本開示の種々の実施形態を例示しており、本開示の1つ又は複数の実施形態又は実施例を、全体的又は部分的に例示することがある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1の区画Aは、マイクロデバイスの製作工程の概略図である。図1の区画Bは、製作されたマイクロデバイスの走査型電子顕微鏡(SEM)像である。図1の区画Cは、マイクロデバイスの寸法を示す。
図2図2の区画Aは、単一又は複数の薬剤を充填したマイクロデバイスへと製作する工程の概略図を示す。図2の区画Bは、同じマイクロデバイスの3つの貯留部全てにおける単一モデル薬剤の存在を示す蛍光顕微鏡像を示す。図2の区画Cは、複数薬剤を充填したマイクロデバイスの蛍光顕微鏡像を合わせたものを示す。
図3図3は、モデル蛍光体レクチンによるポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)表面への共役を確認し、モデル薬剤の充填を示す、蛍光顕微鏡像を合わせたものを示す。
図4図4は、マイクロデバイス又はハイドロゲル・ボーラスに充填した薬剤の、Caco−2上皮単層を通る浸透性を例示する。
図5図5は、同じマイクロデバイスに充填した各種モデル薬剤の、Caco−2上皮単層を抜ける浸透性を示す。
図6図6は、同じマイクロデバイスに充填した各種モデル薬剤の、但し架橋結合比/量の異なる架橋剤とともに充填したものの制御放出性及び浸透性を示す。
図7図7は、マイクロデバイスの生体内生体接着に対する、粒子形状及び表面官能性の作用を示す。平板状マイクロデバイスは、同じ表面積の球状粒子よりも高い生体接着性を示す。GI上皮標的レクチンの存在により、それはさらに高められている。
図8図8は、異なるpHにおける、PEGDMA−MMAハイドロゲル・ディスクからの、モデルFITC−BSAの累積放出プロフィールを示す。
図9図9は、マイクロデバイスから放出されるアシクロビルを、同じ濃度及び5倍濃度のアシクロビル溶液の場合と比較した、血漿対時間の曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の詳細な説明
複数の貯留部を含む実質的に平坦なマイクロデバイスの製造方法を提供する。一般的に、本方法には、生体適合性ポリマーの平坦層から、複数の貯留部を有する複数のマイクロデバイスを形成する方法が含まれる。本方法には、1以上の生物活性剤を貯留部に堆積することも含まれる。マイクロデバイスは、標的組織と結合し、組織中の生物活性剤を放出する構成になっている。よって、マイクロデバイスは、生物活性剤を単一方向に放出する構成になっている。
【0029】
本発明を記載する前に、本発明は、記載された特定の実施形態に限定されず、当然、変わることを理解されたい。また、本明細書中で使用される用語は、特定の実施形態のみを記載する目的であって、制限することを意図するものではなく、本発明の範囲は、添付された請求の範囲によってのみ制限されることを理解されたい。
【0030】
ある値の範囲が与えられる場合、その範囲の上限と下限の間に介在する各値も、文脈上そうでないと指令しない限り下限の単位の10分の1まで、具体的に開示されるものと理解されたい。言明された範囲内の言明値または介在する値と、その言明された範囲内の任意の別の言明値または介在する値との間の各より小さい範囲も、本発明に含まれる。これら小範囲の上限および下限は、独立に、その範囲に入っていてもまたは入っていなくてもよく、そして、上限および下限のいずれかもしくは両方が小範囲に含まれるかまたはいずれも含まれない各範囲も本発明に含まれ、言明された範囲内に特定の除外限界値がある場合はその対象となる。言明された範囲が一方または両方の限界値を含む場合、これら含まれる限界値のいずれか一方または両方を除外した範囲もまた本発明に含まれる。
【0031】
特に規定しない限り、本明細書において使用する全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと同様または等価な任意の方法および材料を、本発明を実施または試験する際に使用することができるが、考え得る好ましい方法および材料をいくつか記載する。本明細書に記載する全ての文献は、参照することにより本明細書に援用され、本方法および/または材料は引用する文献と関係して開示および記載される。本開示と援用された文献のいずれかの開示との間に矛盾が存在する場合には、本開示が優先されることを理解されたい。
【0032】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうでないことを指摘しない限り、複数の言及も含む。よって、例えば「1つのマイクロデバイス」には、複数のマイクロデバイスが含まれ、「その生物活性剤」には、1以上の生物活性剤および当業者などにとって、公知な相当物が含まれる。
【0033】
本明細書中で議論される出版物は、単に本出願の出願日より前に開示されたために提供される。本明細書において、本発明が先行発明によってそのような出版物に先行する権利が与えられていないことを承認するものとして考えるべきではない。さらに、提供した出版日は、実際の公開日とは異なる可能性があり、独立して確認する必要がある。
【0034】
マイクロデバイスおよびその製造方法
上述の通り、本発明は、ほぼ平坦で、生物活性剤を配置し得る複数の貯留部を有するマイクロデバイスを提供する。これらのマイクロデバイスは、1種類の生物活性剤を複数の貯留部に、2以上の種類の生物活性剤の混合物を複数の貯留部に、または、異なる生物活性剤を別々の貯留部に含むことができる。さらに、マイクロデバイスは、異なる貯留部に存在する生物活性剤を異なる速度で放出するように構成され得る。マイクロデバイスは、さらにマイクロデバイスの第1表面に接着分子を含んでも良い。前記接着分子は、マイクロデバイスの第1表面が標的組織の細胞と結合することを促進しても良く、それにより、生物活性剤が細胞へ向かって、貯留部から放出される結果になる。
【0035】
複数の貯留部を含む実質的に平坦なマイクロデバイスは、基板上に生体適合性ポリマーの平坦層を堆積することにより製造されても良い。平坦層は、実質的に平面であり、第1表面および第1表面とは反対側の第2表面が含まれ、第2表面は、基板と接触している。複数のマイクロデバイス構造体は、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて、平坦層に画定されても良い。通常、本方法には、平坦層の第1表面上にフォトレジスト層を堆積すること、フォトレジストの画定された領域を露光すること、およびフォトレジストが除去されたポリマー層の範囲をエッチングし、ポリマーを除去することが含まれても良く、それにより複数のマイクロデバイス構造体が得られる。本明細書中で使用される「マイクロデバイス構造体」という用語は、未完成のマイクロデバイスでを意味し、未完成のマイクロデバイスは、マイクロデバイス構造体で画定される貯留部を有していない。
【0036】
複数の貯留部は、フォトリソグラフィおよび部分エッチングを用いて、マイクロデバイス構造体に導入されても良い。通常、本方法には、フォトレジスト層をマイクロデバイス構造体の第1表面に堆積させることが含まれても良い。マイクロデバイス構造体の第1表面は、平坦なポリマー層の第1表面に対応する。フォトレジストの画定された領域は、露光により除去されても良い。フォトレジストが除去されたポリマーの領域は、部分的にエッチングされ、ポリマーを除去しても良い。本明細書中で使用される「部分エッチング」とは、「エッチング」または「完全エッチング」とは対照をなすもので、ポリマーを部分的に除去することを指し、例えば、実施形態において、マイクロデバイス構造体が、例えば、厚さ10μmである場合、部分エッチングによりポリマーを厚さ10μm未満、例えば、厚さ1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、または9μm除去する。対照的に、本明細書中で使用される「完全エッチング」または「エッチング」とは、完全に、または、ほぼ完全にポリマーを除去することを指し、例えば、実施形態において、生体適合性を有する材料から成る平坦層が、例えば、厚さ10μmである場合、「エッチング」または「完全エッチング」により、ポリマーを厚さ約10μm、例えば、厚さ9.999μm、9.5μm、9.2μm除去する。通常、「エッチング」または「完全エッチング」は、基板上に作られた各マイクロデバイスが、もはや互いに接触しない程度まで、ポリマーを除去することであり、マイクロデバイス間に存在するポリマーが完全には除去されていない場合に行われる。したがって、「エッチング」または「完全エッチング」は、マクロデバイスが基板から除去される場合に、残留したポリマー層によって接続される代わりに、個々のマイクロデバイスとして放出される場合に行われる。
【0037】
複数の貯留部を持つ複数のマイクロデバイスに、生物活性剤(複数可)を充填しても良い。通常、マイクロデバイス中の生物活性剤(複数可)の堆積は、マイクロデバイスが基板に付着したまま行われる。通常、生物活性剤は、プレポリマーと組み合わせて、貯留部に充填される。本明細書中でプレポリマーの文脈において使用される「と組み合わせて、または、と組み合わせた(in conjunction with)」という用語は、プレポリマーと混合させた生物活性剤を貯留部に満たす、または既にプレポリマーを含む貯留部に生物活性剤を充填する、または、生物活性剤を貯留部に満たす、その後、プレポリマーを貯留部に満たすことを指す。ある例において、生物活性剤は、プレポリマーを含む溶液中でも良く、そして溶液は、貯留部に堆積されても良い。
【0038】
プレポリマーと組み合わせた貯留部に生物活性剤を堆積させた後、プレポリマーは、1以上の貯留部で重合されても良い。ある実施形態において、1以上の生物活性剤は、貯留部に堆積されても良い。他の実施形態において、第1生物活性剤は、第1貯留部または複数の第1貯留部に堆積されても良く、第2生物活性剤は、マイクロデバイスの第2貯留部または複数の第2貯留部に堆積されても良い。他の実施形態において、第1生物活性剤は、第1貯留部に堆積されても良く、第2生物活性剤は、第2貯留部に堆積されても良く、第3の生物活性剤は、第3の貯留部などに堆積されても良い。
【0039】
上述の通り、生物活性剤(複数可)は、プレポリマーと組み合わせて、貯留部に堆積されても良い。プレポリマーは、例えば、露光、加熱、乾燥などの様々な方法により、重合されても良い。
【0040】
ある実施形態において、第1生物活性剤が含まれる第1溶液と第1のプレポリマーは、複数のマイクロデバイスの第1貯留部に堆積されても良い。ある実施形態において、第1溶液の堆積は、第1溶液をマイクロデバイスの第1表面に堆積させ、結果として、複数の貯留部を第1溶液で満たすことを含む。そして、第1溶液を、複数のマイクロデバイスの第1貯留部のみで重合させても良い。マイクロデバイスおよび/または貯留部に堆積された重合されていない第1溶液は、いずれも除去されて良い。本方法には、さらに、第2生物活性剤および第2プレポリマーを含む第2溶液を複数のマイクロデバイスの第2貯留部に堆積することが含まれる。ある例において、第2溶液の堆積には、第2溶液をマイクロデバイスの第1表面に堆積させ、結果として、空いている貯留部を第2溶液で満たすことを含む。そして、第2溶液は、複数のマイクロデバイスの第2貯留部にのみ重合されても良い。この工程は、第3の生物活性剤、第4の生物活性剤、などの堆積をするために繰り返されても良い。
【0041】
ある実施形態において、異なった生物活性剤が同時にまたは連続して放出される場合、第1、第2、第3、第4の生物活性剤は、異なった生物活性剤でも良い。ある実施形態において、同一のプレポリマーを、異なる生物活性剤を充填するために使用しても良い。別の場合において、異なるプレポリマーを異なる生物活性剤を充填するのに使用しても良い。したがって、第1、第2、第3のプレポリマーは同一のプレポリマーまたは異なるプレポリマーであってもよい。
【0042】
当該技術分野において公知である様々なプレポリマーを使用しても良い。ある実施形態において、プレポリマーは、光重合開始剤と混合させても良く、光重合開始剤を露光することにより、プレポリマーが重合する。有効な光重合開始剤は、当該技術分野において公知のもので良く、例えば、米国特許第5,410,016号により開示されている。例えば、光重合開始剤は、アセトフェノン誘導体であっても良く、例えば、ジメチルアセトフェノン(DMPA)、2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンであり、エチルエオシン、カンファキノンである。重合は、約200〜700nmの間の波長の光、例えば、100nm〜440nmを照射することにより、開始されても良い。
【0043】
他の実施形態において、熱重合開始システムを使用して、特定の貯留部に溶液を含む生物活性剤を選択的に重合しても良い。このようなシステムには、例えば、過硫酸カリウム(テトラアメチルエチレンジアミン(tetraamethyl ethylenediamine)を共に用いても用いなくても可);過酸化ベンゾイル(トリエタノールアミンを共に用いても用いなくても可);、および、亜硫酸水素ナトリウムを共に用いた過硫酸アンモニウムが含まれる。
【0044】
ある場合には、1以上の接着分子は、マイクロデバイス構造体の貯留部を画定する前に、マイクロデバイス構造体の第1表面に堆積されても良い。別の場合において、1以上の接着分子は、マイクロデバイス構造体の貯留部を画定した後に、マイクロデバイスの第1表面に堆積されても良い。ある場合には、1以上の接着分子は、マイクロデバイスの貯留部(複数可)に生物活性剤を堆積した後に、マイクロデバイスの第1表面に堆積されても良い。
【0045】
完成したマイクロデバイスは、標準的な方法で、基板から除去され、複数の個別のマイクロデバイスを提供する。通常、基板から放出されたマクロデバイスは、個別のマイクロデバイスとして放出され、マイクロデバイスは残留したポリマー層に接続されない。ある場合には、基板からマイクロデバイスを除去すると、結果としてマイクロデバイスが放出され、マイクロデバイスの50%以上が単独のマイクロデバイスとして放出され、例えば、60%、70%、80%、90%以上、またはそれ以上のマイクロデバイスが単独のマイクロデバイスとして放出される。
【0046】
生体適合性ポリマー層を堆積する目的で、本方法の下記の工程を実施するために適した基盤を使用して良い。ある実施例において、基板は、シリコンウエハ、ガラスチップ、プラスチックチップ、または他の適切な材料である。基板の大きさ、形状、寸法はとわない。基板の大きさは、例えば、製造されるマイクロデバイスの数などに基づき選択して良い。ある場合には、基板は、シリコンウエハである。ある場合には、シリコンウエハは、1インチのシリコンウエハ、または、2インチのシリコンウエハ、または、3インチのシリコンウエハ、または、4インチのシリコンウエハ、または、6インチのシリコンウエハ、または、12インチのシリコンウエハである。
【0047】
様々な堆積技術を用いて基板上に生体適合性ポリマーの平坦層を堆積しても良い。ある場合には、生体適合性ポリマーは、基板上に溶液形状のポリマーを塗布して堆積しても良い。塗布は、例えば、基板をポリマー溶液に浸漬させる、基板上にポリマー溶液をピペットで移す、または、スピンコーティングにより行われても良い。ポリマー溶液中の溶媒を続いて乾燥させ、生体適合性ポリマーの平坦層を入手する。乾燥の方法には、空気乾燥、強制空気乾燥、加熱、例えば焼き付け、それらの組み合わせなどが含まれても良い。
【0048】
平坦層である生体適合性ポリマーは、実質的に均一な厚さであり、平均厚さは、5μmから約100μmの範囲であって良い。例えば、平坦層の平均厚さは、約5μm、8μm、10μm、12μm、15μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μmまたは100μmであって良い。
【0049】
生体適合性ポリマーは、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(DLPLCL)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、コローゲン(collogen)、ゼラチン、アガロース、ポリ(メタクリル酸メチル)、ガラチン(galatin)/ε−カプロラクトン、コラーゲン−GAG、コラーゲン、フィブリン、PLA、PGA、PLA−PGA共重合体、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルソエステル)、ポリ(プロピルフメレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタンおよびポリサッカライド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生分解性ポリウレタン、ポリウレア、ポリ(エチレンビニルアセテート)、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ(エチレンオキシド)、上記の共重合体、上記の混合物、上記の付加物、またはそれらの組み合わせであっても良い。
【0050】
ある場合には、生体適合性ポリマーは、ポリ(メタクリル酸メチル)またはその誘導体である。他の実施形態において、生体適合性ポリマーは、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)またはその誘導体である。
【0051】
ポジ型またはネガ型フォトレジストのいずれもマイクロデバイス構造体の寸法および形状を画定するために用いて良い。フォトレジストは、ポリマー層を有する基板をフォトレジストを含む溶液中に浸漬させ、フォトレジスト溶液を基板上にピペットで移し、または例えばスピンコーティングにより、堆積させても良い。ある場合には、ポジ型フォトレジストを使用しても良い。マイクロデバイス構造体の形状および表面積を画定するマスクは、フォトレジストの上に位置付けても良い。ある実施形態において、マスクは、マスクのリング形状領域に光を透過させても良く、それにより、ポジ型フォトレジストのリング形状領域を露光し、リング形状領域のフォトレジストをフォトレジスト現像剤に溶解させる。したがって、フォトレジストの現像の際には、フォトレジストのリング形状領域は、除去される。
【0052】
他の実施形態において、フォトレジストは、ネガ型フォトレジストでもよい。これらの実施形態において、マスクは、マスクの円形領域を光が透過するように設計されても良く、それにより、ネガ型フォトレジストの円形領域を露光して、円形領域を囲むリング形状領域のフォトレジストをフォトレジスト現像剤に溶解させる。したがって、フォトレジストの現像の際には、フォトレジストリング形状領域は、除去される。
【0053】
本明細書中で開示された方法において、様々なポジ型およびネガ型フォトレジストを使用しても良い。本明細書中で使用される「ポジ型フォトレジスト」という用語は、露光されたフォトレジストの一部分がフォトレジスト現像剤に対して溶解する種類のフォトレジストを指す。一方、露光されなっかたフォトレジストの部分は、フォトレジスト現像剤に対して、溶解しない。本明細書中で使用される「ネガ型フォトレジスト」という用語は、露光されたフォトレジストの一部分がフォトレジスト現像剤に対して溶解しない種類のフォトレジストを指す。一方、フォトレジストの露光されなっかた部分は、フォトレジスト現像剤により、溶解する。例えば、フォトレジストは、Hoechst AZ4620、Hoechst AZ4562、AZ1500、例えば、AZ1514H、Shipley1400−17、Shipley1400−27、Shipley1400−37等であって良い。
【0054】
マイクロデバイス構造体の他の形状は、例えば、三角形、楕円形、菱形などであるが、適切に設計されたマスクを用いて画定しても良い。マイクロデバイスの表面積は、光が透過するフォトマスクの範囲の表面積により決定されても良い。よって、マイクロデバイスの表面積の範囲は、1900μm〜790000μm、例えば、3000μm〜500000μm2、または、約10000μm〜100000μm、または、約15000μm〜50000μm、または、約20000μm〜40000μm、例えば、18000μm〜35000μm、例えば、約15000μm、17000μm、19000μm、20000μm、または、約23000μmでも良い。ある場合には、マイクロデバイスは、円形でも良く、平均直径の範囲は、約50μm〜1000μm、例えば、70μm〜500μm、80μm〜300μm、90μm〜250μm、100μm〜200μm、例えば、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、130μm、150μm、180μm、200μm、250μm、300μm、400μmまたは、500μmであってもよい。
【0055】
フォトマスクは、製作されるマイクロデバイスの所望のパターンに基づき、標準的な手順で製造されても良い。上述した通り、フォトマスクの画像によって、マイクロデバイスの形状と寸法を画定する。
【0056】
光を用いて、フォトレジスト層の画定された領域を、マスクを通じて露光しても良い。ある場合には、光は、短波長光(例えば、約100nm〜440nmの波長)、例えば、紫外(UV)線、遠紫外線、H線およびI線の水銀灯であってよい。フォトレジストを露光する工程に続き、フォトレジスト現像の工程を行っても良く、ここでフォトレジストをフォトレジスト現像剤と接触させる。実施形態において、ポジ型フォトレジストを使用する場合、ポジ型フォトレジスト層の露光した領域をフォトレジスト現像剤の中で洗い流す。実施形態において、ネガ型フォトレジストを使用する場合、ネガ型フォトレジスト層の露光しなかった領域は、フォトレジスト現像剤の中で洗い流す。
【0057】
堆積したフォトレジストに適合する標準的なフォトレジスト現像剤を、本明細書中に記載される方法で用いても良い。従って、ポジ型現像剤を使用して露光したポジ型フォトレジストを除去しても良い。ある場合には、ネガ型現像剤を使用して露光しなかったネガ型フォトレジストを除去しても良い。
【0058】
フォトレジストが除去されたポリマー層の領域は、その後、エッチングし、生体適合性ポリマー層を除去する。フォトレジストに覆われた生体適合性ポリマー層の一部分または複数部分は、マイクロデバイスを形成する。当該技術分野において標準的であるドライエッチングまたはウェットエッチング方法自体は、露光された生体適合性ポリマー層を除去するために使用されても良い。ある場合には、エッチング方法は、反応性イオンエッチングである。エッチングの標準的な方法および装置を使用しても良い。例えば、反応性イオンエッチング方法および装置は、米国特許第6,669,807号、米国特許第5,567,271号に記載され、これらは参照することにより本明細書に援用される。エッチングは、十分な長さの時間をかけて行われ、フォトレジストで覆われていない全てのポリマー材料を除去することにより、複数のマイクロデバイス構造体は、残留したポリマー材料を介して接続されない。
【0059】
エッチング工程の後、使用したフォトレジストと適合する、標準的なフォトレジスト除去剤またはフォトレジスト剥離剤を用いて、フォトレジストを除去しても良い。例示的なフォトレジスト除去剤は、l−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、AZ(登録商標)100除去剤、等である。
【0060】
上述した方法により、作られるマイクロデバイス構造体の数は、2、5、10、20、50、100、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、または、それ以上、例えば、1000〜10,000のマイクロデバイスが作られても良く、2000〜8000、または、約3000〜7000でも良い。
【0061】
マイクロデバイス構造体の複数の貯留部の画定には、フォトレジスト層をマイクロデバイス構造体の第1表面に堆積することが含まれる。フォトレジストの堆積は、上述した方法と同じく行われても良い。フォトレジストは、マイクロデバイス構造体または異なるフォトレジストを製作するために用いたものと同一のフォトレジストであっても良い。マスクは、フォトレジスト層の上に位置づけても良い。マスクのパターンにより、光がフォトレジスト層へ透過し得る領域が画定される。マスクのパターンは、マイクロデバイス構造体に画定されるべき貯留部の数、形状、および寸法に応じて望ましいパターンであって良い。
【0062】
ある場合には、マイクロデバイスあたり、2以上、または、3以上、または、4以上、または、5以上、または、6以上、または、7以上、または、8以上、9以上、または、10以上、または、それ以上を含む複数の貯留部が存在する。ある場合には、1〜10の貯留部、または、2〜8の貯留部、または、3〜7の貯留部がマイクロデバイス構造体に画定されても良い。
【0063】
貯留部の形は問わないが、例えば、円筒形、円錐形、円錐台形、立方体、立方体状、などでも良い。貯留部の容積は、光を透過させフォトレジスト層を露光する、マスク領域の寸法により決定されても良い。さらに、貯留部の容積は、ポリマー層が除去される深さにより決定されても良い。貯留部は、円形状の開口部を有していても良く、開口部の平均直径は、約10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、80μm、100μm、120μm、150μm、200μm、250μm、または、300μmであって良い。例えば、円形開口部を有する貯留部の平均直径の範囲は、30μm〜100μm、または、約40μm〜80μmであって良い。
【0064】
マイクロデバイス構造体の上に、フォトマスクを位置づけた後、フォトレジストを露光し、続いて、露光したフォトレジストを除去する。フォトレジストが除去されたマイクロデバイス構造体の領域は、部分的にエッチングされ、生体適合性ポリマー層の一部分を除去しても良い。エッチング工程の持続時間および強度は、異なっていても良く、違った深さの貯留部を画定する。例えば、エッチング工程を短い時間または低イオン流量で行い、浅い貯留部を画定しても良く、一方、エッチング工程を長時間または高イオン流量で行い、深い貯留部を画定しても良い。さらに、生体適合性ポリマーの平坦層の厚さは、貯留部の深さに影響を及ぼす。通常、貯留部の平均深さの範囲は、1μm〜80μm、1.5μm〜70μm、2μm〜50μm、2μm〜30μm、3μm〜30μm、3.5μm〜20μmであり、例えば、約1μm、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、7μm、8μm、9μmまたは、10μmであって良い。貯留部の容積の範囲は、約1×10−3nLから約1μL、例えば、5×10−3nLから約0.1μLまたは、約1×10−2nLから約50nL、または、例えば、約1×10−2nLから約5×10−1nLであって良い。したがって、マイクロデバイスは、複数の貯留部を含んでも良く、貯留部は、エッチングによりポリマー層を除去されたため、第1表面において開口しており、第2表面においては、ポリマー層が存在するため、開口していない。よって、貯留部に堆積された生物活性剤は、マイクロデバイスの第1表面上の開口部を通じて流出しても良い。
【0065】
ある場合には、接着分子は、マイクロデバイスの第1表面と結合しても良く、マイクロデバイスの第1表面が標的組織の細胞と結合することを促進する。したがって、マイクロデバイスには、1つの開口部を有する貯留部が含まれ、開口部は、マイクロデバイスの第1表面上に配置され、第1表面は、細胞と接触する表面であっても良い。例示的な接着分子は、マイクロデバイスが標的組織の細胞、つまり、マイクロデバイスに充填された生物活性剤を送達するべき細胞、に接着することを促進するもので、レクチン(例えば、コムギ胚芽凝集素)、ポリカチオン(例えば、キトサン、ポリリジン等)、ラミニン、フィブリン、フィブロネクチン、インテグリン、ビトロネクチン、ヒアルロン酸、エラスチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、コラーゲン、ゼラチン、等が含まれる。接着分子は、マイクロデバイスの第1表面に共有結合または非共有結合しても良い。本方法には、マイクロデバイス構造体を画定した後、または貯留部を画定する前に、接着分子をマイクロデバイスの第1表面に接着させることが含まれても良い。ある場合には、本方法は、複数の貯留部をマイクロデバイス構造体に導入した後、マイクロデバイスの第1表面と接着分子を結合させることを含んでも良い。細胞接着分子は、ポリマー層の完全性または安定性に影響を及ぼさない標準的な化学を使って、マイクロデバイスの第1表面に共有結合しても良い。
【0066】
ある実施形態において、標的組織は、患者の粘膜組織であって良い。例えば、標的組織は、胃腸組織であって良く、例えば、食道、胃、小腸、大腸などである。他の実施形態において、標的組織は、口腔内の粘膜組織であって良く、例えば、口腔の上皮細胞である。本明細書中に記載されるマイクロデバイスは、それを必要とする患者に対して様々な投与経路により投与されても良く、経口投与、舌下投与、眼球投与、膣内投与、直腸投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
上述した通り、生物活性剤(複数可)は、プレポリマーと組み合わせて、貯留部に堆積されても良い。プレポリマーは、露光、加熱、乾燥などの様々な方法により、重合されても良い。ある実施形態において、プレポリマーは、例えば、紫外線などの露光して重合しても良い。これらの実施形態において、マイクロデバイス(複数可)の複数の貯留部に堆積された生物活性剤の溶液およびプレポリマーは、露光により重合されても良い。ある実施形態において、貯留部のみを、適切にパターン化されたマスクを用いて露光する。ある場合には、貯留部を露光するために、貯留部を製造した際に用いたマスクと同様のマスクを用いても良い。
【0068】
ある場合には、第1生物活性剤および第1貯留部に存在するポリマーを含む第1溶液は、第1貯留部のみを露光し、パターン化したマスクを使って、第1貯留部のみに光を透過させ、重合しても良い。重合されていない第1溶液は、いずれも除去されて良い。本方法には、更に、マイクロデバイスに第2生物活性剤を堆積させることが含まれる。堆積工程により、第2生物活性剤を空の貯留部に満たす結果になる。上述の通り、第2生物活性剤は、第2溶液の形で堆積されても良く、第2溶液は、第2生物活性剤および第1生物活性剤と共に用いたものと同一のポリマー、または異なるプレポリマーを含む。本方法には、第2貯留部のみを露光し、それにより、第2貯留部の第2生物活性剤を重合させることが含まれる。そして、重合されていない第2溶液は、いずれも除去される。生物活性剤およびプレポリマーを含む溶液を堆積させ、マスクと光を使って溶液をある特定の貯留部で重合する、および重合されていない溶液を除去する工程は、繰り返し行って別の貯留部を異なる生物活性剤で満たしても良い。
【0069】
更なる実施形態において、マイクロデバイスから溶出する生物活性剤の放出運動は、適切なプレポリマーまたはプレポリマーおよび架橋剤の組み合わせを用いて、プレポリマーおよび/または架橋剤の濃度を調整することにより、調節しても良い。本明細書中で使用される「プレポリマー」という用語は、半固体または固体状態に重合されていないポリマーを指す。合成または天然高分子は、ポリマーとして用いることができ、生物活性剤をマイクロデバイスに充填する前、または同時に、生物活性剤と組み合わせても良い。マイクロデバイスは、生物活性剤で充填する。適切な合成および天然高分子には、生分解性または生体内分解性のポリマーが含まれ、例えば、ポリ(DL−ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(DLPLCL)、または、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、コラーゲン、ゼラチン、アガロース、および他の天然生分解性材料であるがこれらに限定されない。ある実施形態において、ポリマーの濃度は、生物活性剤の放出運動を高めたり低めたりするために、下げても上げても良い。ある場合には、反応して重合ゲルを形成するモノマーに入れる架橋剤の割合を調節して、放出運動を調節しても良い。例えば、ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA)を用いて、モノメチルメタクリレートなどのモノマーを架橋しても良い。モノマーに加える架橋剤の割合は、減らしても良く、それにより、ポリマーが膨張すると生物活性剤が早い速度で放出される密度の低いポリマーとなる。モノマーに加える架橋剤の割合を増やすと、それにより、ポリマーが膨張すると生物活性剤が遅い速度で放出される密度の高いポリマーとなる。ポリマーが膨張すると/異なる分子量(鎖長)モノマーまたは架橋剤を使用しても同様の効果が得られる。ある実施形態において、第1生物活性剤は、第1ポリマーと重合されても良く、第2生物活性剤は、第2ポリマーと重合されても良く、第1および第2ポリマーは異なる速さで生物活性剤を放出する。
【0070】
通常、マイクロデバイスを患者に投与すると、マイクロデバイスは、一定期間、生物活性剤を周囲の組織に溶出するが、その期間は、約2分間から約3ヶ月またはそれ以上、5分間から約14週間を含み、例えば、10分間、30分間、60分間、100分間、130分間、200分間、約6時間、約12時間、約24時間、72時間、約3日間、約7日間、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約12週間、またはそれ以上である。上述の通り、同様の期間を通して、または異なる期間を通して、第1生物活性剤は、第1貯留部から放出されても良く、第2生物活性剤は、第2貯留部から放出されても良い。
【0071】
通常、本方法は、実質的に平坦であるマイクロデバイスを生産し、マイクロデバイスの第1表面からマイクロデバイスの貯留部に堆積した生物活性剤(複数可)を放出する。したがって、カプセル、錠剤、または、ミクロスフェアから放出される生物活性剤と対照に、生物活性剤は、実質的に一方向に放出される。さらに、ある実施形態において、マイクロデバイスには、マイクロデバイスの第1表面が標的組織の表面に結合することを仲介する細胞接着分子が含まれ、例えば、胃腸管の粘膜内の上皮細胞である。マイクロデバイスの第1表面が標的組織に結合すること、および、マイクロデバイスの第1表面から生物活性剤を放出することの組み合わせにより、標的組織に近い距離で、生物活性剤の放出を局所的に行うことができる。これにより、効果の高い濃度で、細胞により摂取可能な生物活性剤を提供できる。したがって、マイクロデバイスは、症状を治療するために必要とされる生物活性剤の量を減らすことができる。さらに、マイクロデバイスが標的組織と結合すると、標的組織付近のマイクロデバイスの滞留時間が長くなり得る。例えば、マイクロデバイスが胃腸管の上皮層に結合すると、結合したマイクロデバイスが胃腸管のぜん動運動に上手く抵抗して、胃腸管内での滞留時間が長くなる。さらに、マイクロデバイスの利用できる表面積を大きくでき、標的組織の細胞と結合することができるようにしても良く、同時に、標的組織に存在し得るずり応力に対しても抵抗し得る。
【0072】
通常、マイクロデバイス構造体の貯留部の開口部は、マイクロデバイスの第1表面に配置され、貯留部に存在する生物活性剤の同時放出を促進する。マイクロデバイスのこの特徴は、異なる生物活性剤の同時放出の際に特に有効である。
【0073】
ある実施形態において、マイクロデバイスの平坦な形状により、マクロデバイスの貯留部に含まれた生物活性剤の標的組織への送達が向上する。ある実施形態において、マイクロデバイスの大きさにより、マイクロデバイスの貯留部に含まれた生物活性剤の標的組織への送達が向上する。ある実施形態において、マイクロデバイスの平坦な形状および大きさにより、マイクロデバイスの貯留部に含まれた生物活性剤の標的組織への送達が向上する。特定の理論に拘束されることなく、本明細書中に記載されるマイクロデバイスは、標的組織、例えば、腸壁を覆う上皮細胞を拘束可能で、細胞の細胞間接着を機構的に再構成するとと仮定する。この細胞間接着の再構成は、例えば、腸壁の上皮細胞間の密着結合を調節することにより、上皮細胞への浸透性を高め、生物活性剤の標的組織への送達を高め得る。
【0074】
生物活性剤は、精製されたもの、部分的に精製されたもの、組み換え型、または、マイクロデバイスに含めることができる適切なものであれば、別の形状であっても良い。通常、生物活性剤は、不純物および汚染物質は含まれない。マイクロデバイス内に組み込まれて良い例示的な生物活性剤は、糖、炭水化物、ペプチド、核酸、アプタマー、小分子、大分子、ビタミン;無機分子、有機分子、タンパク質、タンパク質合成の補因子、抗体療法、例えば、ハーセプチン(登録商標)、リツキサン(登録商標)、マイロターグ(登録商標)、およびアービタックス(登録商標);ホルモン、酵素、例えば、コラゲナーゼ、ペプチダーゼ、およびオキシダーゼ;抗腫瘍剤および化学療法薬、例えば、シスプラチン、イホスファミド、メトトレキサート、および塩酸ドキソルビシン;免疫抑制剤;透過促進剤、例えば、ラウレート(laureate)を含む脂肪酸エステル、ミリスチン酸塩、およびステアリン酸モノエステルポリエチレングリコール;ビスホスホネート、例えば、アレンドロネート、クロドロネート、エチドロネート、イバンドロネート、(3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデン)−1,1−ビスホスホネート(APD)、ジクロロメチレンビスホスホネート、アミノビスホスホネートゾレンドロネート(aminobisphosphonatezolendronate)、およびパミドロネート;鎮痛薬および抗炎症薬、例えば、ケトロラックトロメタミンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAID)、塩酸リドカイン、塩酸ブピバカイン、およびイブプロフェン;抗生物質および抗レトロウイルス薬、例えば、テトラサイクリン、バンコマイシン、セファロスポリン、エリスロマイシン、バシトラシン、ネオマイシン、ペニシリン、ポリミキシンB、バイオマイシン、クロロマイセチン、ストレプトマイシン、セファゾリン、アンピシリン、アザクタム、トブラマイシン、クリンダマイシン、ゲンタマイシン、およびアミノ配糖体(aminoglycocides)、例えば、トブラマイシンおよびゲンタマイシン;および塩、例えばストロンチウム塩、フッ化物塩、マグネシウム塩、およびナトリウム塩、などが挙げられる。
【0075】
抗菌剤の例としては、トブラマイシン、アモキシシリン、アモキシシリン/クラブラネート、アンホテリシンB、アンピシリン、アンピシリン/スルバクタム、アトバクオン、アジスロマイシン、セファゾリン、セフェピム、セフォタキシム、セフォテタン、セフポドキシム、セフタジジム、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフロキシム、セフロキシムアクセチル、セファレキシン、クロラムフェニコール、クロトリマゾール、シプロフロキサシン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ダプソーン、ジクロキサシリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシン、フルコナゾール、フォスカネット、ガンシクロビル、アチフロキサシン(atifloxacin)、イミペネム/シラスタチン、イソニアジド、イトラコナゾール、ケトコナゾール、メトロニダゾール、ナフシリン、ナフシリン、ナイスタチン、ペニシリン、ペニシリンG、ペンタミジン、ピペラシリン/タゾバクタム、リファンピン、キヌプリスチン−ダルホプリスチン、チカルシリン/クラブラン酸、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、バラシクロビル、バンコマイシン、マフェニド、スルファジアジン銀、ムピロシン、ナイスタチン、トリアムシノロン/ナイスタチン、クロトリマゾール/ベータメタゾン、クロトリマゾール、ケトコナゾール、ブトコナゾール、ミコナゾール、およびチオコナゾールが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
血管新生阻害剤には、インターフェロンアルファ、COX−2阻害剤、インテグリン拮抗薬、アンギオスタチン、エンドスタチン、トロンボスポンジン−1、ビタキシン、セレコクシブ、ロフェコキシブ、JTE−522、EMD−121974、およびD−2163、FGFRキナーゼ阻害剤、EGFRキナーゼ阻害剤、VEGFRキナーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤、マリマスタット、プリノマスタット、BMS275291、BAY12−9566、ネオバスタット、rhuMAb VEGF、SU5416、SU6668、ZD6474、CP−547、CP−632、ZD4190、サリドマイドおよびサリドマイド類似体、スクアラミン、セレコクシブ、ZD6126、TNP−470、および他の血管形成阻害薬が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
いくつかの実施形態において、生物活性剤は、小分子であり、例えば、抗炎症薬、免疫抑制剤、ビタミン、微量栄養素または抗酸化物、抗菌剤(例えば、バンコマイシンまたはセファゾリン)、抗ウイルス薬(例えば、ガンシクロビル、アシクロビルまたはホスカルネット)、抗菌剤(例えば、アムホテリシンB、フルコナゾールまたはボリコナゾール)または抗腫瘍剤(例えば、シクロホスファミドまたはメルファラン)であるが、これらに限定されない。ある実施形態において、小分子は、ビタミン、微量栄養素または抗酸化物質であり、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、亜鉛、銅、ルテイン、または、ゼアキサンチンであるが、これらに限定されない。ある実施形態において、小分子は、免疫抑制薬であり、例えば、シクロスポリン、メトトレキサートまたはアザチオプリンであるが、これらに限定されない。ある実施形態において、小分子は、抗炎症薬であり、例えば、副腎皮質ステロイド(例えば、トリアムシノロンアセトニドまたはデキサメタゾン)または非ステロイド剤(例えば、ケトロラクまたはジクロフェナク)であるが、これに限定されない。
【0078】
ある実施形態において、大分子薬剤は、免疫抑制剤であり、例えば、エタネルセプト、インフリキシマブまたはダクリズマブであるが、これらに限定されない。ある実施形態において、大分子薬剤は、神経筋遮断薬であり、例えば、A型ボツリヌス毒素であるが、これに限定されない。ある実施形態において、大分子薬剤は、補体阻害薬であり、例えば、抗C3化合物であるがこれに限定されない。
【0079】
ある実施形態において、生物活性剤は、メサラミンとしても知られるメサラジン、または、5−アミノサリチル酸(5−ASA)、プレドニゾン、TNF阻害剤、アザチオプリン(イムラン)、メトトレキサート、または、6−メルカプトプリン、アミノサリチル酸抗炎症薬、コルチコステロイド、アザチオプリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ、ナタリズマブ、およびヒドロコルチゾン、スタチン、例えば、アトルバスタチンカルシウムなどのアトルバスタチン、例えば、オランザピンなどの抗精神病薬、であってよい。
【0080】
ある場合には、生物活性剤は、本デバイスの層上に生物活性剤を配置する前また後に、薬学的に許容される添加剤と組み合わされても良い。「薬学的に許容される添加剤」という用語は、製剤分野で公知または使用されるもので、活性剤の生物活性の有効性を不当に阻害せず、患者に対して十分に無毒である保存料、酸化防止剤、乳化剤、染料および賦形剤を指す。例えば、生物活性剤は、当該技術分野において公知である不活性充填剤、抗刺激剤、ゲル化剤、安定剤、界面活性剤、軟化剤、着色剤、保存料、または、緩衝剤と共に形成されても良い。「賦形剤」という用語は、従来から、担体、希釈剤および/または溶剤を意味することが知られており、必要とされる用途に応じて、有効な薬剤成分を形成するために用いられる。
【0081】
マイクロデバイスは、選択された治療薬を、送達するよう構成されても良い。例えば、マイクロデバイスは、経口送達される治療薬を送達するように構成されても良く、例えば、ピル、錠剤、カプセル、溶液、エマルジョン等の形態である。マイクロデバイスは、様々な症状の処置に適していても良い。例えば、マイクロデバイスは、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、クローン病、腸がんなどのがん、潰瘍性大腸炎などと診断された患者に投与されても良い。
【0082】
本明細書中で開示される本方法および本装置は、ヒト臨床医学および獣医学への応用の両方へ用いることができる。したがって、デバイスを投与する被験対象または患者は、ヒト、または、獣医学へ応用する場合には、実験用動物、農業用動物、室内用動物、または野生動物である。当該デバイスおよび方法は、ヒト、サルおよびチンパンジーなどの実験用動物、イヌやネコなどの室内動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギなどの農業用動物、およびクマ、パンダ、ライオン、トラ、ヒョウ、ゾウ、シマウマ、キリン、ゴリラ、イルカ、およびクジラなどの飼育下にある野生動物に適用できるが、これらに限定されない。
【0083】
症状を治療するために必要とされるマイクロデバイスの投与量は、経験的または実験的に、訓練された医師により決定され、または、多くの要因、例えば、投与経路、症状の重症度、各マイクロデバイスに充填された生物活性剤の量などに基づき決定されても良い。通常の技術を活用し、能力のある臨床医が、日常的に行われる臨床試験の過程で、特定の治療薬の投与量を最適化することができるであろう。
【0084】
マイクロデバイス
上述の通り、実質的に平坦なマイクロデバイスには、複数の貯留部が含まれ、平坦なデバイスが提供される。実質的に平坦で、複数の貯留部を含むマイクロデバイスは、基板上に生体適合性ポリマーの平坦層を製作し;フォトレジスト層を連続的に堆積し、露光、およびエッチングを行い、平坦層にマイクロデバイス構造体を画定し;マイクロデバイス構造体に、フォトレジスト層を連続堆積し、露光、および部分エッチングを行い、複数の貯留部を導入する方法により製造され、それにより複数の貯留部を含む平坦なマイクロデバイスが製作され、複数の貯留部は、マイクロデバイスの第1表面において開口しており、マイクロデバイスの第2表面において開口していない。
【0085】
ある実施形態において、複数の貯留部には、生物活性剤が含まれ、本方法には、さらに生物活性剤およびプレポリマーを含む溶液を複数の貯留部に堆積させ、液を重合させることが含まれる。
【0086】
ある場合には、複数の貯留部のうち、第1貯留部には、第1生物活性剤が含まれ、複数の貯留部のうち、第2貯留部には、第2生物活性剤が含まれ、本方法には、さらに複数の貯留部に第1生物活性剤を含む第1溶液を堆積し;第1貯留部のみに第1溶液を重合させ;重合されていない第1溶液を除去し;複数の貯留部に第2生物活性剤を含む第2溶液を堆積し;第2溶液を第2貯留部のみに重合させることが含まれる。
【0087】
ある場合には、マイクロデバイスには、第1表面と結合した接着分子が含まれ、接着分子は、マイクロデバイスの第1表面が標的組織の細胞に接着することを促進する。
【0088】
生体適合性ポリマーは、ポリ(DL−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)、ポリ(DL−ラクチド−コ−ε−カプロラクトン)(DLPLCL)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、コローゲン(collogen)、ゼラチン、アガロース、ポリ(メタクリル酸メチル)、ガラチン(galatin)/ε−カプロラクトン、コラーゲン−GAG、コラーゲン、フィブリン、PLA、PGA、PLA−PGA共重合体、ポリ(無水物)、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ(オルソエステル)、ポリ(プロピルフメレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシバレラート)、ポリアミド、ポリアミノ酸、ポリアセタール、生分解性ポリシアノアクリレート、生分解性ポリウレタンおよびポリサッカライド、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリスチレン、ポリエステル、非生分解性ポリウレタン、ポリウレア、ポリ(エチレンビニルアセテート)、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリ(エチレンオキシド)、上記の共重合体、上記の混合物、上記の付加物、またはそれらの組み合わせであっても良い。
【0089】
ある場合には、生体適合性ポリマーは、ポリ(メタクリル酸メチル)またはその誘導体であって良い。別の場合において、生体適合性ポリマーは、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)またはその誘導体であって良い。
【0090】
マイクロデバイスの平均厚さは、約5μmから約100μmであって良く、実質的な平坦層の製造には、平均厚さ約5μmから約100μmの生体適合性ポリマーの堆積が含まれる。
【0091】
ある場合には、マイクロデバイスは、円盤形状であっても良い。マイクロデバイスの平均直径は、約50μm〜1000μmであっても良い。
【0092】
ある実施形態において、複数の貯留部は、異なる深さ、および/または異なる容積、および/または異なる直径であっても良い。
【0093】
ある実施形態において、細胞接着分子は、レクチン、キトサン、ラミニン、フィブリン、フィブロネクチン、プロテオグリカン、糖タンパク質、グリコサミノグリカン、または、それらの組み合わせであっても良い。
【0094】
本明細書中で開示されたマイクロデバイスと同様の特徴を持つマイクロデバイスは、2010年11月16日に出願された米国特許出願第12/530,015に記載があり、参照することにより、全体として本明細書に援用される。
【0095】
キット
本発明に関連して使用するキットも提供する。上述した複数の貯留部を含むマイクロデバイスは、本方法を実施するための適切な使用説明書、例えば、上述した生物活性剤を貯留部に堆積させる点などと共に、キット内に提供されても良い。本方法を実施するための使用説明書(例えば、文書、テープ、VCR、CD−ROMなど)が、キットに含まれても良い。キットには、特定の方法により、他のパッケージ化された試薬および材料(すなわち、緩衝剤など)もまた含まれる。
【0096】
使用説明書は、通常、適切な記録媒体に記録される。例えば、使用説明書は、基板上、例えば、紙またはプラスチックなどに印刷されても良い。よって、使用説明書は、添付文書としてキットに表示されても良く、キットまたは部品用の容器のラベルに表示しても良い(例えば、パッケージまたはサブパッケージと関連させて)。他の実施形態において、使用説明書は、表示される。適切なコンピュータにより読み取り可能な記憶媒体に電子記憶データファイルとして表示される。例えば、プログラムを提供する媒体と同一の媒体を含むCD−ROM、ディスケットなどである。
【0097】
さらに別の実施形態において、使用説明書は、それ自体としてキット内に存在せず、離れた情報源から使用説明書を入手する方法、例えば、インターネットを通じた方法、が提供される。本実施形態の一例としては、使用説明書が閲覧可能、または使用説明書をダウンロード可能なウェブアドレスを含むキットである。
【0098】
さらに、使用説明書を入手するキットは、インターネットまたはワールドワイドウェブなどの離れた情報源、からダウンロードされるものであって良い。本発明の使用権限を持つ人にアクセスを制限するため、何らかの形でアクセス保護または認証手順を用いても良い。使用説明書に関して、一般的に、使用説明書および/またはプログラミングを入手する方法は、適切な記録媒体に記録される。
【実施例】
【0099】
次の実施例は、本発明の製作及び使用方法の完全な開示と説明を当業者に提供するために示され、発明者が自身の発明と見なすものの範囲を限定することを意図するものではなく、下記の実験が全て又は唯一の実施された実験であると表すことを意図するものでもない。用いる数字(例えば、量、温度等)に関して正確性を確実とするよう努力を払ったが、いくらかの実験誤差と偏差は考えられるべきものとする。他に示されていなければ、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏度であり、圧力は大気圧かその付近である。
【0100】
方法と材料
次の方法と材料を以下の実施例において用いた。
【0101】
PMMAマイクロデバイスの製作
マイクロデバイス製作用の材料。 全ての化学薬品は、Sigma Aldrichより購入し、他に注記がなければ、受け取り時のまま使用したものとする。ウエハの標準RCA予備洗浄に、濃縮硫酸、30%過酸化水素、アセトン、メタノール、及びイソプロパノールを使用した。11%アニソール中に懸濁した分子質量950,000のポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)デバイス材料、Shipley1818ポジ型フォトレジスト、マイクロポジット(Microposit)351現像剤、及び1112Aフォトレジスト剥離液をMicrochemより購入した。デバイス本体(200μmの円形)及びその貯留部(200μmのより大きな本体円形の中の3つの60μmの円形)を製作するためのポジ型マスクを、CAD art services(Badon、OR)より入手した。3つの60μmの円を、200μmの円の中心から等距離の、正三角形の角に配した。
【0102】
微細製作工程。 フォトリソグラフィ及び反応性イオンエッチングを用いて、3インチ・シリコンウエハ上に60×5μmの円筒形貯留部3つをもった200×8μmの円筒形PMMAマイクロデバイスを製造した。各ウエハをピラニア溶液(HSO:Hが3:1)中で20分間洗浄し、脱イオン水で3回すすいだ。次いで、ウエハをアセトン、メタノール、イソプロパノールですすぎ、100℃で2分間ベーキングして全ての不純物を除去した。図1の区画Aは、微細製作工程に含まれるステップの概略図を示す。ウエハを、Headway Research PW101スピナー(Garland)を用いてPMMA(1400rpm、30秒)でもって2回スピンコーティングし、マイクロデバイス本体層を得た。ベーキングを、2回目のコーティング(110℃、1分)の前後に、ベント形ホットプレート(vented hot plate)上で行い、溶剤をPMMA層から除去した。2分間冷却した後、ウエハをポジ型フォトレジストでスピンコーティングし(5000rpm、30秒)、プリ・ベーキング(110℃、1分)した。次いで、冷却したウエハを、200μmマイクロデバイス本体に画定を行うポジ型フォトマスクを保持しながら、Karl Suss MJB3マスク露光装置を用いて、水銀灯の405nm UV光に、16mW/cmで20秒間、露光した。フォトレジストを、351マイクロポジット現像剤対脱イオン(DI)水が1:3の溶液中で75秒間現像した。次いで、ウエハをDI水カスケード(DI water cascade)中ですすぎ、窒素でブローして乾燥させ、ポスト・ベーキングした(110℃、1分間)。露光したPMMAを、20%酸素を流しながら、30mTorrの圧力下、450W電源(75%)で10分間、Surface Technology Systems PE1000 ACプラズマ・ソース・リアクディブ・イオンエッチャー(Plasma Source Reactive ion etcher)(RIE;PETS Inc.)を用いてドライ・エッチングした。エッチングの後、残ったフォトレジストはいずれも、1分間、1112Aフォトレジスト剥離液を用いて取り除き、続いて水、イソプロパノールですすぎ、窒素でブローして乾燥させた。
【0103】
デバイス本体の画定をした後、2回目のフォトリソグラフィ・ステップを実施し、マイクロデバイス貯留部を画定した。ウエハをポジ型フォトレジストでスピンコーティングし(5000rpm、30秒)、プリ・ベーキングし(110℃、1分間)、3つの60μmマイクロデバイス貯留部を画定するように設計された2回目のフォトマスクを通して、マスクアライナー装置を用いて、UV光を再度露光した。貯留部を、同じマスク露光装置上で、前面アラインメント技術(front side alignment techniques)を用いてマイクロデバイス本体に位置合わせした。露光に続いて、ウエハを、351現像剤・DI水の混合物を用いて前回通り現像し、DIカスケード中ですすぎ、窒素で乾燥させ、ポスト・ベーキングした。マスクしていない貯留部画定領域を、前回通り、8分間反応性イオンエッチングした。貯留部の深さは、エッチング時間によって制御することができるが、この作業のためには、深さ5μmの貯留部を得た。残ったレジストはいずれも1112Aレジスト剥離液を用いて除去した。マイクロデバイス寸法の特性化を、Ambios Technology XP−2 Stylus Profilerを用いて、スキャン・スピード0.05mm/秒、長さ500μm、及び針圧0.8mgで行い、その間、Novel X my−SEM(Lafayette,CA)走査型電子顕微鏡を用いてマイクロデバイスを視覚化した。
【0104】
PMMA・タンパク質結合化学
表面アミノリシス。 PMMAマイクロデバイスの表面に標的タンパク質を結合させることにより、そのPMMAマイクロデバイスに生体接着特性をもたらす。N−リチオエチレンジアミンを用いて、アミン基をPMMAマイクロデバイスに導入した。手短に述べれば、エチレンジアミン19.8mLを窒素で30分間パージして、N−リチオエチレンジアミンを合成した。次いで、2Mシクロヘキサン中ブチルリチウム400μlをエチレンジアミンに加え、窒素雰囲気下で3時間、一定撹拌の下、反応を進行させた。PMMAマイクロデバイスを含有するウエハを表面修飾し、貯留部を含有する側にのみアミンを含むようにした。ウエハをDI水中ですすぎ、窒素でブローして乾燥させ、窒素を供給したペトリ皿上に置いた。2分間の窒素パージの後、N−リチオエチレンジアミン500μlをウエハに加え、全てのマイクロデバイスに均等に作用させてコーティングした。3分後、ウエハを取り出し、DI水に浸漬して、アミノリシスと、ウエハから最終的に起こるpH反応性PMMAマイクロデバイスの脱離とを停止した。DI水中で穏やかに洗浄した後、ウエハを窒素でブローして乾燥させた。
【0105】
タンパク質の表面固定化。 アミンを、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC;Invitrogen)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS;Invitrogen)を用いて、モデル・タンパク質・トマト・レクチン(イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)で標識)に共役させた。手短に述べれば、MES緩衝液(pH5.5)中1mg/mLモデルタンパク質600μlに、100mM EDC 13μl及び200mM NHS 13μlを加え、20分間反応させた。一度、タンパク質のカルボン酸基を安定的なEDC−NHSエステルへと修飾し、14M β−メルカプトエタノール0.8μlを加えることによって反応を停止した。1分後、タンパク質混合物のpHを、炭酸水素ナトリウムを加えることによって7.4まで上昇させ、アミンで官能化したPMMAマイクロデバイス・ウエハに直ちに適用させた。PMMAのアミン基と、タンパク質の修飾カルボン酸基との結合を4時間起こさせ、その後、ウエハをDI水で全面的にすすいで、いずれの非共有結合タンパク質をも除去した。
【0106】
マイクロデバイスの薬剤充填。 単一又は複数の薬剤を、フォトリソグラフィを用いてマイクロデバイス貯留部に充填する。手短に述べれば、モノマー・モノメチル・メタクリレート(monomer monomethyl methacrylate(MMA))の中に架橋剤ポリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(PEGDMA;750分子量)2mL及び60mg/mL光重合開始剤ジメチル・アセトフェノン(DMPA)300μlと、PBS中3mg/mLモデル蛍光体薬剤200μlとを混合することによって、ハイドロゲル・薬剤のプレポリマー溶液を調製した。モデル蛍光体薬剤は、架橋剤モノマー溶液と混合する前に、超音波処理によりPBS中に溶解した。用いた各種蛍光体薬剤は、蛍光性標識されたウシ血清アルブミン(BSA)で、フルオレセイン・イソチオシアン酸−BSA(FITC−BSA;励起(ex):494nm;発光(em):520nm)、テキサスレッド−BSA(ex:596nm;em:615nm)、及び2,4−ジニトロフェニル化−BSA(DNP−BSA;ex:360nm;em:385nm)であった。ハイドロゲル・プレポリマー溶液用の全ての成分を混合すると、混合物を30分間超音波処理し、開始剤及び薬剤の均等な分布を確実なものとした。
【0107】
単一の薬剤を充填するマイクロデバイスについては、予備製作したウエハに、それぞれの単一薬剤プレポリマー溶液300μlをスピンコーティングし(3000rpm、30秒)、マスク露光装置を用いてUV光に90秒間露光した(図2、区画A)。3つの貯留部全てにおいて単一薬剤充填に用いるフォトマスクは、光が3つの60μm貯留部を通過して、プレポリマー溶液を薬剤包含ハイドロゲル・マトリックスへと光重合させるように設計したネガ型フォトマスクである。DI水を用いて30秒間現像を行い、窒素を用いてブローし乾燥した。複数の薬剤をそれぞれの貯留部に個別に充填するものについては、一連のスピンコーティング、アラインメント、露光、現像、及び乾燥を、3つの異なるネガ型マスクを用いて行い、それぞれ光が貯留部の1つのみを通過して光重合をおこさせるようにした(図2、区画A)。また、複数薬剤を充填した類似のウエハを、プレポリマー溶液の架橋結合比を変えることによって得た。架橋結合比(PEGDMA:MMA)は、テキサスレッド−BSA、FITC−BSA、及びDNP−BSAについてそれぞれ15:85、30:70、及び45:55とした。タンパク質を共役して薬剤を充填したデバイスの蛍光顕微鏡検査を、Olympus BX60顕微鏡(Mellville,NY)を用いて行った。
【0108】
生体外薬剤浸透試験。 薬剤を充填したマイクロデバイスを、40℃に予熱した8M水酸化カリウム(KOH)溶液を用いて2分以内にウエハから離した。水より密度の低い離れたマイクロデバイスを、超遠心し(30kDa Amicon超遠心フィルター)、放出及び浸透の試験のために2回PBSで洗った。ヒト結腸直腸腺癌上皮細胞(caco−2 ATCC)を、50%コラーゲン・エタノール(1型、Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)で処理した24−ウェル・Transwell(登録商標)・インサート(inserts)で、コンフルエントになるまで(900〜1000Ωで経上皮電気抵抗プラトー)、増殖させた。caco−2細胞を、播種する前に5日以上、20%胎児ウシ血清(Invitrogen)、2mM L−グルタミン、1.5g/L重炭酸ナトリウム、2.5g/Lグルコース、10mM HEPES緩衝液、1.0mMピルビン酸ナトリウム、及び1mg/mLペニシリン/ストレプトマイシンをもったModified Eagle’s Media(MEM)中で維持した。約1800のデバイスを含有するマイクロデバイス溶液500μlをTranswell(登録商標)インサートに加えた。薬剤を充填した異なる方式について、離散時間(20分)試料をTranswell(登録商標)の上部及び下部の両方のチャンバーから取り出し、Packard Fluorocount Microplate Fluorometer(Meriden,CT)を用いて観察し、蛍光発光を求めた。
【0109】
生体接着変位試験。 Caco−2単層を、6ウェル・プレートで標準的な条件下、コンフルエントになるまで増殖させた。試料当たり約100マイクロデバイス(レクチン及び/又はハイドロゲル有り及び無し)を、単層表面上、PBSを用いて、37℃で30分間インキュベートした。次いで、ウェルを、顕微鏡を用いて視覚化した。次いで、ウェルを、PBSで、垂直方向に制御しながら、5回変位させた。変位前に結像した最初の視野を再度結像し、マイクロデバイスをMSワードのグリッド中にトレースした。最初の領域の80%以内であったデバイスを、依然定常性及び生体接着性があるとみなした。最初の80%の領域外にあったマイクロデバイスを、変位されているとみなした。
【0110】
実施例1:薬剤充填マイクロデバイスの製作
一連のフォトリソグラフィ・ステップ及び反応性イオンエッチングを用いて、1シリコンウエハ当たり5600のマイクロデバイスを製作した。本明細書では、3つの薬剤貯留部をもった円形マイクロデバイスを、哺乳動物胃腸壁を通って生体内移行することを可能にする寸法(厚さ約10ミクロン、最大寸法の長さ200μm)で、PMMAから、製作した。種々の寸法及び形状を有する複数のデバイスを製作することは可能であるが、本明細書では、SEM像(図1、区画B)に示すように、3つの60μm貯留部をもった円形の200μmデバイスを試作品として保持した。図1の区画Cは、プロフィールメーターによる、デバイスの厚さプロフィールを、点線に沿って示す。試作品デバイスは、本体の厚さが約7.5μmで、貯留部は、深さが5μmである。デバイスを取り外し治療的放出と最終的浸透を乱し得る流動状態へ至らせる、マイクロデバイス側面が受ける質量当たりのずり応力を低減するように、デバイスの厚さは十分小さいものを選ぶ。デバイス本体の厚さは、貯留部をエッチングできる深さを制限する。言い換えれば、デバイスの厚さは、貯留部に充填できる薬剤の体積を左右する。PMMAのスピン速度(1000〜5000rpm)、PMMA層の数(1〜3層)、及びベーキング(層と層の間にベーキング・ステップ有り又は無し)を変えることにより、デバイスの厚さを3〜12μmの間で変えた。層をさらに重ねても厚さに大きな影響はなかった一方で、1400rpmより遅いスピン速度では、ウエハ上にPMMAのエッジ・ビードができ、アスペクト比を大きく変えた。貯留部の深さ(3.5〜5μm)、即ち薬剤充填容積は、エッチング時間又はイオン流量(RIE電源)を制御することによって、容易に調節した。薬剤の体積に対するこの制御は、高価で毒性のある薬剤を胃腸(GI)送達のために使用する場合には有益である。
【0111】
図1の区画A。PMMAマイクロデバイスを製作する工程の概略表示。図1の区画B。製作したマイクロデバイス試作品(3つの60μm円形貯留部をもった200μm円形デバイス)の走査型電子顕微鏡像。図1の区画C。プロフィール・メーターを用いて測定したマイクロデバイスの寸法(点線)。スケールバーは100μmを表す。
【0112】
フォトリソグラフィを用いて薬剤を、薬剤を包含するハイドロゲル・マトリックスとして貯留部の中に充填した(図2の区画A)。光重合開始剤DMPAの濃度を6%に最適化して用い、貯留部容積の全体を重合させた(K.M.Ainslie,T.A.Desai,Lab Chip.8(2008),1864−1878)。薬剤・ハイドロゲル・マトリックスの安定性を、それが流動状態の間貯留部に留まっていることをもって確認するために、マイクロデバイス・ウエハを、PBS中、3日間撹拌(250rpm)した。貯留部からのハイドロゲルの大きな損失又は除去は観察されなかった(98.6±0.9%のデバイスは、ハイドロゲルが詰まったままだった)。図2の区画Cから、それぞれ個別の貯留部・マスクの存在下での一連のスピン及びUV露光は、3つの異なる薬剤を3つの貯留部に容易に詰めることにつながる、ということが観察される。
【0113】
図2の区画A。単一又は複数の薬剤を充填したマイクロデバイスを、フォトリソグラフィを用いて製作する工程の模式的概略図。図2の区画B。同じマイクロデバイスの3つの貯留部全てに充填した単一のモデル薬剤(テキサスレッド−BSA)の存在を示す蛍光顕微鏡像。3つの貯留部全てに均等に充填されている薬剤。図2の区画C。複数薬剤(テキサスレッド−BSA;赤、FITC−BSA;緑、DNP−BSA;青)を個別の薬剤として別々の貯留部に充填したマイクロデバイスの蛍光顕微鏡像を合わせたもの。白い円がマイクロデバイス領域を明示している。
【0114】
実施例2:マイクロデバイスへの生体接着タンパク質の共役
マイクロデバイスの高表面積(23,000μm)を利用して、胃腸粘膜の多細胞及び多部位付着を促進し、現状の経口方式が経験する、蠕動及びずり流動状態に関連する問題を克服することができる。トマト・レクチンは、腸壁を覆う上皮細胞上に存在するN−アセチルグルコサミン成分に特異的に結合することが知られており、これは、caco−2細胞を使って生体外で模擬的に行われる(J.Rocca,K Shah,Drug Delivery Technology 2004,4)。従って、生体接着トマト・レクチンを導入することによって、マイクロデバイス移行時間を伸ばし、薬剤保持、浸透、及び最終的送達の向上につなげることができる。2つの主要なステップ:
(a)N−リチオエチレンジアミン・アミノリシスを通してアミン基を含むように、PMMAを官能化することと、
(b)カルボジイミド化学を用いてPMMAアミンとタンパク質カルボン酸との間にアミド結合を形成することと、
を用いて、トマト・レクチンをPMMAマイクロデバイス表面に共役させた。アミン官能基が存在することと、カルボジイミド化学がタンパク質をPMMA表面へ結合させる能力とを、蛍光体で標識したトマト・レクチンで表面を精査することによって間接的に確認した。
【0115】
図3は、最初にFITC−トマト・レクチンで標識し、次いで、貯留部にテキサスレッド−BSAを導入するために用いたマイクロデバイスの蛍光像を示す。タンパク質のマイクロデバイスへの共役は4時間の間起こるので、それはまず、薬剤充填の前に行い、タンパク質溶液におけるハイドロゲルの膨張と、薬剤の最終的な放出とに関連する薬剤損失を避ける。タンパク質は、大体においてPMMAマイクロデバイスの表面上で得られ、容易に腸上皮を認識して結合するために利用できる、ということが図3より明らかである。
【0116】
図3。PMMAマイクロデバイス(大きいほうの円)の表面へのモデル蛍光体(FITC)−レクチンの共役を確認し、モデル薬剤の充填(大きいほうの円内の3つの貯留部)を示す、蛍光顕微鏡像を合成写真。
【0117】
トマト・レクチンを用いて生体接着特性を導入することの効果を、変位試験を用いて確認した(表1)。これらの変位試験において、6ウェル・プレートにcaco−2細胞単層が有る場合と無い場合とで、マイクロデバイスをインキュベートした。ウェルを垂直方向に5回変位し、その前後の顕微鏡像を比較することによってデバイス位置を観察した。
【0118】
【表1】
明らかに、トマト・レクチンがPMMAマイクロデバイスの表面上に存在することは、マイクロデバイスの生体接着特性を向上させる。貯留部に薬剤・ハイドロゲル・マトリックスを充填することは、空のマイクロデバイス(71%)の場合に比較して、全体的な生体接着特性(59%)の低減という結果になるように見える可能性があるけれども、この差異は単に、caco−2単層のほうに面していない非対称性デバイス(一方の側でレクチンに共役している)の数によるものであり得る。かかるものとしてわずかなパーセントのデバイスはcaco−2単層への結合を示す、ということもまた観察される。この数は、経口薬剤送達を向上させた用途向けマイクロデバイスを製作するための、キトサン等の粘膜付着性材料を用いることによって、増加させることができる(C.M.Lehr et al.,Int.J.Pharm.78(1992),43−48)。レクチンをコーティングしたマイクロデバイスの生体接着特性は、IBD、IBS、及びクローン病等の種々の腸疾患の標的治療に有益であることが明らかとなり得る。
【0119】
実施例3:マイクロデバイスからの生体外薬剤制御放出
種々のマイクロデバイスの薬剤溶出動力学を測定するために、ハイドロゲルを充填したマイクロデバイスからの、各種蛍光体標識BSAの放出を生体外でモニターした。BSAは、約66kDa(14×4×4nm)の分子量を有し、上皮吸収の胃腸の限度(20kDa)を上回る(R.Goldie,Ed.C.Page,Elsevier 1994)。単一貯留部の容積は約1.4×10−2nLであり、従って、単一薬剤を充填したウエハ(3つの貯留部全てに同じ薬剤を充填、図2の区画B)又は複数薬剤を充填したウエハ(異なる貯留部に異なる薬剤、図2の区画C)はそれぞれ、単一薬剤約85ng又は各薬剤27ngずつを保持する。類似の薬剤充填ハイドロゲル・ボーラス(マイクロデバイスのないハイドロゲル・ペレット)を、対照試料として重合させ、生体外薬剤放出試験に用いた。流体の存在下で、ハイドロゲルは膨張し、薬剤はポリマー・マトリックスから拡散することが可能である。マイクロデバイスを、生体内のような密着結合(1〜3nm)を持つcaco−2単層の頂端側に加え、薬剤濃度を底側で測定した(K.Kitchens,etal.,Pharm.Res.33(2006),2818−2826)。
【0120】
図4は、単一薬剤充填ウエハの生体外放出プロフィールを示す。対照(ハイドロゲル・ボーラス)試料に比較して、マイクロデバイスは、caco−2単層を通る薬剤の浸透性がよりよいことを示す。このことは、非対称マイクロデバイスはハイドロゲル・ボーラスに比較して単一方向に薬剤を放出し、デバイス・細胞境界面を通る薬剤の濃度向上を提供する、という事実に帰することができる。類似の結果が他よりも予測されており、高分子量タンパク質の輸送は、生体接着微粒子の存在下で腸上皮を通る傍細胞輸送の上昇に帰せられる(V.Uskokovic et al.,Biomaterials 33(2012),1663−1672;K.E.Fischer et al.,Nano Lett.9(2009),716−720)。マイクロデバイスの存在によって起こる薬剤浸透のこの上昇は、大きな分子の経口生物学的利用能を改善できるという背景において重要である。
【0121】
図4は、コラーゲンで処理したTranswells(登録商標)上のcaco−2上皮単層を通る それぞれの薬剤がハイドロゲル・ボーラスに充填されたもの(対照、デバイスなし)に比較して、異なる単一薬剤充填マイクロデバイスの、向上し浸透性を示す。濃度を、各マイクロデバイス・ウエハ中に充填した合計薬剤に対して正規化された(N=3)。
【0122】
異なる薬剤を層状に充填した単一貯留部方式を先に使用した場合と比較して、各貯留部に異なる薬剤を個別に充填した複数貯留部・デバイスを用いることの効果もまた試験した(図5)。何層かのハイドロゲルに複数薬剤を充填したものを充填した単一貯留部方式の場合には、それら異なる薬剤の放出は、上に重なるハイドロゲル層の膨張動力学に依存する(K.M.Ainslie and T.A.Desai、Lab Chip.8(2008),1864−1878)。他のハイドロゲル層の膨張へのこの依存性は、マイクロデバイスから放出するためにそれら異なる薬剤にとってさらなる障壁として働く。層状単一貯留部方式とは異なり、3貯留部式試作品デバイスからの、3つのモデル蛍光体BSA全ての放出は、お互いに依存しない、ということが図5から観察される。この非依存的放出挙動は、併用療法に有益であることが明らかとなっており、複数薬剤は同じ場所で同じ時に送達することができる。3つの薬剤は全て、3時間までリニアな放出を示し、その後定常状態に到達し、ウエハ当たり各マイクロデバイスに充填される薬剤の量に対して一貫している。充填される薬剤の分子量と量に加えて、ポリマー・マトリックスを包含する薬剤の特性もまた、放出動力学を制御するように修正することができる。ポリマーは、分解を通して、又は外的刺激(pH、温度等)に応じて薬剤を放出するように、具体的に選択することができる。
【0123】
図5は、同じマイクロデバイスのそれぞれの貯留部から出る異なるモデル薬剤の、コラーゲンで処理したTranswells(登録商標)上のcaco−2上皮単層を通る浸透性が、非依存的であることを示す(N=3)。
【0124】
ハイドロゲルの架橋結合比を修正することによって異なる放出動力学を提供するよう、各貯留部におけるハイドロゲル・マトリックスの膨張特性を修正した。PEGDMAの架橋結合比を、テキサスレッド−BSAを充填した貯留部のための15%から、FITC−BSA貯留部のために30%、DNP−BSA貯留部のために45%へ増加させることを、この試験のために用いた。図6から、テキサスレッド−BSAはFITC−BSAより早く、FITC−BSAはDNP−BSAより早く放出されたということが観察される。言い換えれば、異なる薬剤の制御放出は、ハイドロゲル方式の架橋結合比に依存する。これは、架橋結合比がより低いと(15%)、より密でない/疎な網状網の形成という結果になり、薬剤の拡散が増加することにつながり、一方、架橋結合比がより高いと(45%)、非常に密な網状網の形成という結果になり、薬剤の拡散が減少することにつながるという事実による。類似の効果はまた、異なる分子量(鎖の長さ)のモノマー又は架橋剤の使用で得られる(H.D.Chirra and J.Z.Hilt,Langmuir 26(2010),11249−11257)。各貯留部において、放出及び分解の動力学が異なる、種々のポリマー方式を用いることにより、効果的な治療のための種々の薬剤の徐放にマイクロデバイスを用いることが可能となる(A.C.R.Grayson et al.,Nat.Mater.2(2003),767−772;A.C.R.Grayson et al.,J.Biomed.Mater.Res.Part A.69A(2004),502−512)。マイクロデバイスからの薬剤の徐放により、デバイスが腸管を通って移行するに従い、治療剤が腸の異なる領域へより効果的に送達されることが可能となり得る。
【0125】
図6は、異なる架橋結合比/量の架橋剤(PEGDMA)を用いて、異なるモデル薬剤を同じデバイスの薬剤それぞれの貯留部に充填したものの制御放出と浸透を示す。PEGの量を増加又は減少させると、それぞれ、類似の分子量の薬剤の放出はより遅く又はより速くなるという結果であった。このことが種々の腸疾患の徐放治療に有益であることは明らかである(N=3)。
【0126】
実施例4:胃腸(GI)生体接着に対するマイクロデバイスの効果
野生型C57BL/6マウス(JAX,Bar Harbor,MA)、週齢8〜12週、をこの試験で用いた。マイクロデバイスの経口胃管栄養を行う前に、マウスを24時間絶食させた。無菌18ga×38mmプラスチック栄養管(Instech Solomon,Plymouth Meeting,PA)を用いて、マイクロデバイス(1ウエハの空デバイス=5625デバイス)の、GI標的レクチン有りのもの及び無しのものを含有するPBS溶液400ul、又は対照溶液を注入した。次いで、マウスを、IACUCガイドラインに従い、濃度2.25%の2,2,2トリブロモエタノル(Sigma,St.Louis,MO)150〜400mg/Kgの腹腔内注射を用い、続いて頚椎脱臼により、適切な時点(0、20、45、90、120分)で安楽死させた。カリフォルニア大学サンフランシスコ校・動物実験委員会(University of California,San Francisco Institutional Animal Care and Use Committee)に従い、試験プロトコル(ANS#1692)の承認を受け、動物試験全てを実施した。
【0127】
腸を解剖して、ガラス・シンチレーション・バイアル(Sigma,St.Louis MO)へ分けた。濃度1mg/mLのプロテイナーゼK(Roche,Indianapolis,IN)を加え、試料を56℃で一夜、穏やかに揺らしながらインキュベートした。可溶化液を40uM細胞ストレーナー(BD Falcon,Franklin Lakes,NJ)に通し、DI水ですすぎ、マイクロデバイスの定量化の前に水溶液5mL中に収集した。洗った可溶化液の複数無作為100μL試料をガラス・スライドに加え、光学顕微鏡を用いて計数した。胃管栄養後異なる時点での腸各部におけるマイクロデバイスの平均数を図7に示す。平板状マイクロデバイスと同じ表面積を有する球状PMMA微粒子の対照試料もまた比較目的のために用いた。
【0128】
平板状マイクロデバイスの薄壁が受けるずれは、同じ合計表面積の球状マイクロデバイスのそれよりも少ない。また、平板状マイクロデバイスの場合の接触面積は、球状粒子よりも多くなっている。これらの理由により、球状粒子に比べて、マイクロデバイスがより長く胃腸の所与の部分において留まり、それによって、マイクロデバイスに包含される薬剤の滞留時間を増加させることができるようになる有望性が高くなる。これが、ひいては、GIにおける薬剤吸収性とその全体的な治療上の生物学的利用能を増加させるはずである。
【0129】
実施例5:pHに対する薬剤包含ハイドロゲル・マトリックスの安定性
薬剤包含ハイドロゲルの、腸の種々の領域において薬剤を放出することに対する安定性を、pHの異なる溶液を用いて試験した。手短に述べれば、FITC−BSA(37μg)を充填したPEG−MMA溶液100μL(先にマイクロデバイス貯留部への充填の際用いた)をハイドロゲル・ディスクとして光重合させた。次いで、100μLディスクをpHの異なる溶液中に個別に入れ、FITC−BSAの放出を、蛍光光度計を用いてある時間にわたって測定した。図8は、異なるpHでの薬剤の放出プロフィールを示す。
【0130】
明らかに、ハイドロゲル中MMAのメタクリレート基はpHの変化に応答する。pKaより低いpHでは、ハイドロゲルは疎水的に挙動し、従って、圧縮状態のままである。この状態では、ハイドロゲルの外側への薬剤の拡散は妨げられる。ハイドロゲルのpKaより高いpHでは、それらは親水的に挙動し、ハイドロゲルの膨張という結果になる。これが、ハイドロゲルのメッシュ・サイズを大きくし、それにより、拡散を通じて、より速い速度でモデル薬剤を放出する。従って、選ばれるPEGDMA−MMAハイドロゲル方式は、荒れた胃内環境(pHが約2)では薬剤を放出しないという点で有益であると考えられ、中性に近い腸・結腸pHではより速く薬剤を放出する。
【0131】
実施例6:送達される薬剤の生体内薬物動態学的分析
この試験のために、11,000マイクロデバイス/マウス(2ウエハ/マウス)にアシクロビル(Sigma)17μgを充填した。野生型C57BL/6マウス(JAX,Bar Harbor,MA)、週齢8〜12週、を24時間絶食させ、無菌18ga×38mmプラスチック栄養管(Instech Solomon,Plymouth Meeting,PA)を用い、PBS500μL中アシクロビル充填マイクロデバイスで経口的胃管栄養を行った。次いで、マウスを、IACUCガイドラインに従い、濃度2.25%の2,2,2トリブロモエタノル(Sigma,St.Louis,MO)150〜400mg/Kgの腹腔内注射を用い、続いて頚椎脱臼により、適切な時点(20、45、90、150、240、及び360分)で安楽死させた。カリフォルニア大学サンフランシスコ校・動物実験委員会に従い、試験プロトコル(ANS#1692)の承認を受け、動物試験全てを実施した。血清の単離のために、血液を右心穿刺によって得、Z−ゲル・マイクロチューブ(Sarstedt,Germany)中に入れた。次いで、試料を卓上遠心分離機で10000×gにて、4℃で5分間遠心分離した。血漿を収集し、さらなる分析まで−20℃で凍結した。
【0132】
HPLC分析のために、血漿試料を室温に解凍した。7%過塩素酸を等体積の血漿に加え、試料をボルテックス混合した。沈降した血漿タンパク質を遠心分離により分離した。上清を、0.22μmフィルターを用いてろ過し、100μLをカラムに注入した。多波長検出器を備えたAgilent 1260HPLCを用いて分析を実施した。Nucleosil C18ガードカラムを備えたMacherey−Nagel Nucleosil C18 HPLCカラムにより、50mMオクタンスルホン酸92%・pH2.6及びメタノール8%からなる移動相を用い、流速1mL/分で、分離を実行した。次いで、アシクロビルを254nmで検出した。
【0133】
図9は、種々の時点における胃管栄養アシクロビルの薬物動態学的データを示す。それぞれの時点において、マイクロデバイスからのアシクロビルの血漿の濃度は、経口胃管栄養した同じ濃度のアシクロビル溶液よりも、多いということを観察した。血漿についてのアシクロビルの生物学的利用能のこの向上は、GIの小腸部において吸収が可能な薬剤の滞留時間の増加をもたらす、マイクロデバイスの生体接着の増加に帰することができる(図7)。また、デバイスからの薬剤の単一方向の放出は、デバイス・上皮の境界面における薬剤の局所濃度の上昇という結果になり、それによって、GIによる薬剤の吸収の上昇という結果になる。図9から、アシクロビル17μgから達成される薬剤の生物学的利用能は、5×(又は83μg)の、経口的胃管栄養したアシクロビル溶液に等しい、ということを観察した。薬剤の投与用量が低いにもかかわらず薬剤の生物学的利用能がこのように向上することは、有害量の薬剤を投与することに関連する全身性副作用を軽減/除去するのに有益であることが明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9