(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フルオロポリマーバインダーが、5〜49重量パーセントのポリメタクリル酸メチルのポリマーまたはコポリマーと、51〜95重量パーセントのフルオロポリマーとのブレンド物であり、前記フルオロポリマーは、フッ化ビニリデンのホモポリマー、または50重量パーセントを超えるフッ化ビニリデン単位を含むコポリマーである、請求項1に記載の複合体固形物品。
分離されることが可能な、溶解されるか、または懸濁されている物質が、粒状物;生物学的および薬学的活性成分;有機化合物;酸、塩基、フッ化水素酸;カチオンの水素、アルミニウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム、およびカリウム;アニオンの硝酸塩、シアニド、および塩素;金属の、クロム、亜鉛、鉛、水銀、銅、銀、金、白金、鉄;塩の、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、からなる群より選択される、請求項1に記載の複合体固形物品。
前記流体が、水、ブライン、オイル、ディーゼル燃料、バイオディーゼル燃料、薬学的または生物薬学的流体、脂肪族溶媒、強酸、高温(>80℃)の化合物、炭化水素、フッ化水素酸、エタノール、メタノール、ケトン、アミン、強塩基、「発煙」酸、強酸化剤、芳香族化合物、エーテル、ケトン、グリコール、ハロゲン、エステル、アルデヒド、およびアミン、ベンゼンの化合物、塩素の化合物、臭素の化合物、トルエン、ブチルエーテル、アセトン、エチレングリコール、二塩化エチレン、酢酸エチル、ホルムアルデヒド、ブチルアミン、排気ガス、自動車の排気ガス、および地下水、からなる群より選択される、請求項1に記載の複合体固形物品。
前記相互作用性粒子が、410、304、および316ステンレス鋼、銅、アルミニウムおよびニッケル粉体の金属粒子、強磁性物質、活性アルミナ、活性炭、カーボンナノチューブ、シリカゲル、アクリル系粉体および繊維、セルロース繊維、ガラスビーズ、各種の研磨材、一般的な鉱物質たとえばシリカ、木材チップ、イオン交換樹脂、セラミックス、ゼオライト、珪藻土、ポリエステル粒子および繊維、ならびに、エンジニアリング樹脂たとえばポリカーボネートの粒子、からなる群より選択される、請求項1に記載の複合体固形物品。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で使用するとき、コポリマーという用語は、2種以上の異なったモノマー単位を有する各種のポリマーを指しているが、ターポリマーおよび4種以上のモノマー単位を有するものも含まれる。
【0009】
本出願に引用された文献はすべて、参考として引用し本明細書に組み入れたものとする。
【0010】
本明細書で使用するとき、「相互連結性(interconnectivity)」という用語は、相互作用性粒子または繊維が、それら相互作用性粒子または繊維が完全にコーティングされることなく、フルオロポリマーまたはポリアミドのバインダーによって互いに永久的に結合されてはいるということを意味している。それらのバインダーが、特定の離散した点で相互作用性粒子を付着させて、組織化された多孔質の構造を作りだしている。その多孔質の構造は、流体が、それら相互連結された粒子または繊維の間を通過することができるようになっていて、その流体組成物が、相互作用性粒子または繊維の(複数の)表面に直接曝露され、それらの粒子と流体組成物の成分とが容易に相互作用して、その結果、それらの成分が分離されるようになっている。ポリマーバインダーが、離散した点においてのみ、それら相互作用性粒子に付着しているので、そのため、コーティングにおいて完全に連結させるために使用されるバインダーが、より少量ですむ。
【0011】
本明細書で使用するとき、パーセントは、特に断らない限り、重量パーセントであり、分子量は、特に断らない限り、重量平均分子量である。
【0012】
ポリアミド
「ポリアミド」という用語は、以下のものを指している:
− 1種もしくは複数種のアミノ酸たとえば、アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、および12−アミノドデカン酸、または1種もしくは複数種のラクタムたとえば、カプロラクタム、オエナントラクタム、およびラウリルラクタムの重縮合反応生成物;
− ジアミンたとえば、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタ−キシレンジアミン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、およびトリメチルヘキサメチレンジアミンの1種または複数種の塩または混合物と、二酸たとえば、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸およびドデカンジカルボン酸との重縮合反応生成物。
【0013】
挙げることが可能なポリアミドの例には、PA6およびPA6,6が含まれる。
【0014】
コポリアミドを有利に使用することもまた可能である。たとえば、少なくとも2種のアルファ,オメガ−アミノカルボン酸もしくは2種のラクタムの縮合、または1種のラクタムと1種のアルファ,オメガ−アミノカルボン酸との縮合の結果として得られるコポリアミドが挙げられる。少なくとも1種のアルファ,オメガ−アミノカルボン酸(または1種のラクタム)と、少なくとも1種のジアミンと、少なくとも1種のジカルボン酸との縮合の結果として得られるコポリアミドもまた挙げることができる。
【0015】
挙げることができるラクタムの例には、主たる環の上に3〜12個の炭素原子を有するものが含まれるが、そのラクタムは置換されていてもよい。たとえばβ,β−ジメチルプロピオラクタム、α,α−ジメチルプロピオラクタム、アミロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、およびラウリルラクタムを挙げることができる。
【0016】
挙げることができるアルファ,オメガ−アミノカルボン酸の例には、アミノウンデカン酸およびアミノドデカン酸が含まれる。挙げることができるジカルボン酸の例には、以下のものが含まれる:アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、ブタン二酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、テレフタル酸、スルホイソフタル酸のナトリウム塩もしくはリチウム塩、二量化脂肪酸(それらの二量化脂肪酸は、少なくとも98%のダイマー含量を有し、好ましくは水素化されている)、およびドデカン二酸、HOOC−(CH
2)
10−COOH。
【0017】
ジアミンは、6〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジアミンであってよく、それらがアリールおよび/または飽和の環状のタイプであってもよい。挙げることができる例には、以下のものが含まれる:ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、テトラメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、1,5−ジアミノヘキサン、2,2,4−トリメチル−1,6−ジアミノヘキサン、ジアミンポリオール、イソホロンジアミン(IPD)、メチルペンタメチレンジアミン(MPDM)、ビス(アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、およびビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)。
【0018】
挙げることができるコポリアミドの例には、以下のものが含まれる:カプロラクタムおよびラウリルラクタムのコポリマー(PA 6/12)、カプロラクタム、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6/6−6)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6/12/6−6)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、11−アミノウンデカン酸、アゼライン酸およびヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6/6−9/11/12)、カプロラクタム、ラウリルラクタム、11−アミノウンデカン酸、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6/6−6/11/12)、ならびにラウリルラクタム、アゼライン酸およびヘキサメチレンジアミンのコポリマー(PA 6−9/12)。
【0019】
コポリアミドは、PA6/12およびPA6/6,6から選択するのが有利である。
【0020】
ポリアミド11およびポリアミド12が特に好ましい。
【0021】
フルオロポリマー
「フルオロポリマー」という用語は、その鎖の中に、重合するために開ことが可能なビニル基を含み、このビニル基に直接結合した、少なくとも1個のフッ素原子、少なくとも1個のフルオロアルキル基、または少なくとも1個のフルオロアルコキシ基を含んでいる化合物から選択される少なくとも1種のモノマーを有するポリマーを表している。フルオロモノマーの例としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:フッ化ビニル;フッ化ビニリデン(VDF);トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2−ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP);ペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルたとえば、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)およびペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE);ペルフルオロ(1,3−ジオキソール);ペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)(PDD)。好ましいフルオロポリマーとしては、以下のものが挙げられる:ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)のホモポリマーおよびコポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレン(EFEP)とのターポリマー、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニル(THV)のターポリマー、フッ化ビニルのコポリマー;ならびに、PVDFと、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)ポリマーおよびコポリマー、または熱可塑性ポリウレタンとのブレンド物。PMMAは、PVDFの重量を基準にして、49重量パーセントまで、好ましくは5〜25重量パーセントの量で存在させることができる。PMMAは、PVDFと溶融混和性があり、バインダーに親水性を与えるために使用することができる。親水性がより高い組成物によって、水の流れがよくなり、その結果、複合体物品全体での圧力低下が少なくなる。
【0022】
そのPVDFは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、またはPVDFホモポリマーもしくはコポリマーと、PVDF(コ)ポリマーと相溶性のある1種または複数種の他のポリマーとのブレンド物などであってよい。本発明のPVDFコポリマーおよびターポリマーは、その中でフッ化ビニリデン単位が、ポリマーの全部のモノマー単位を合計した重量の40パーセントを超える量で、より好ましくは、それらの単位の全重量の70パーセントを超える量で含まれているようなものである。フッ化ビニリデンのコポリマー、ターポリマー、およびさらに高級なポリマーは、フッ化ビニリデンを、以下のものからなる群よりの1種または複数種のモノマーと反応させることによって作成することができる:フッ化ビニル、トリフルオロエテン、テトラフルオロエテン、部分的または全面的にフッ素化されたアルファ−オレフィンたとえば、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、3,3,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン、およびヘキサフルオロプロペンの1種または複数種、部分的にフッ素化されたオレフィン、ヘキサフルオロイソブチレン、ペルフルオロ化ビニルエーテルたとえば、ペルフルオロメチルビニルエーテル、ペルフルオロエチルビニルエーテル、ペルフルオロ−n−プロピルビニルエーテル、およびペルフルオロ−2−プロポキシプロピルビニルエーテル、フッ素化ジオキソールたとえば、ペルフルオロ(1,3−ジオキソール)およびペルフルオロ(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール)、アリル型、部分フッ素化アリル型、もしくはフッ素化アリル型モノマーたとえば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテルもしくは3−アリルオキシプロパンジオール、ならびにエテンまたはプロペン。
【0023】
一実施形態においては、そのフッ化ビニリデンポリマーの中には、重量で30%まで、好ましくは25%まで、より好ましくは15%までのヘキサフルオロプロペン(HFP)単位と、重量で70%、好ましくは75%、より好ましくは85%以上のVDF単位とが存在する。
【0024】
本発明について、以下においては、代表的なポリマーバインダーとしてPVDFを使用して、一般的に記述する。
【0025】
本発明において使用するためのPVDFは、高分子量を有している。「高分子量」という用語は、本明細書で使用するとき、ASTM法D−3835に従い、450゜F、100sec
-1で測定して、1.0キロポワズより大、好ましくは5Kpより大、より好ましくは15〜50Kp、最も好ましくは15〜25Kpの溶融粘度を有するPVDFを意味している。高分子量のPVDFまたはポリアミドは相互連結性を与えるが、その理由は、より高い粘度、およびより低い流動性を有しており、そのために相互作用性粒子を完全に被覆することはないからである。
【0026】
本発明において使用されるPVDFは、一般的には、水系フリーラジカル乳化重合を使用した、当業界公知の手段により調製されるが、懸濁重合、溶液重合および超臨界CO
2重合プロセスを使用してもよい。一般的な乳化重合プロセスにおいては、脱イオン水、重合の際に反応物質を乳化させることが可能な水溶性界面活性剤、および任意成分のパラフィンワックス防汚剤を反応器に仕込む。その混合物を撹拌し、脱気させる。次いで、所定の量の連鎖移動剤(CTA)を反応器の中に導入し、反応器の温度を所望のレベルにまで上げ、フッ化ビニリデン(および、任意選択で1種または複数種のコモノマー)をその反応器にフィードする。フッ化ビニリデンの最初の仕込みを導入し、反応器の中の圧力が所望のレベルに達したら、重合開始剤エマルションまたは溶液を導入して重合反応を開始させる。反応の温度は、使用する重合開始剤の特性に合わせて変化させることができるが、当業者ならば、その方法は知っているであろう。典型的には、その温度は、約30℃〜150℃、好ましくは約60℃〜120℃となるであろう。反応器の中で所望のポリマー量に到達したら、モノマーのフィードを停止するが、任意選択で、重合開始剤のフィードは継続して、残存モノマーを反応し尽くさせる。残存している(未反応モノマーを含む)ガスを放出し、その反応器からラテックスを回収する。
【0027】
重合において使用する界面活性剤は、当業界では公知の、PVDFの乳化重合において有用な各種の界面活性剤を使用することができ、ペルフルオロ化、部分フルオロ化、および非フルオロ化界面活性剤が挙げられる。本発明のPVDFエマルションは、重合のいかなる工程においてもフルオロ界面活性剤を用いない、フルオロ界面活性剤フリーであるのが好ましい。PVDF重合において有用な非フルオロ化界面活性剤は、本来的にイオン性、ノニオン性のいずれとすることもできるが、たとえば以下のものが挙げられる(これらに限定される訳ではない):3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸塩、ポリビニルホスホン酸、ポリアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、およびそれらの塩、ポリエチレングリコールおよび/またはポリプロピレングリコール、およびそれらのブロックコポリマー、アルキルホスホン酸塩、ならびにシロキサンベースの界面活性剤。
【0028】
PVDFを重合させると、一般的には、重量で10〜60パーセント、好ましくは10〜50パーセントの固形分レベルを有し、500nm未満、好ましくは400nm未満、より好ましくは300nm未満のラテックス重量平均粒径を有する、ラテックスが得られる。その重量平均粒径は、一般的には少なくとも20nm、好ましくは少なくとも50nmである。接着特性を改良し、不可逆的な接続性を与える目的で、追加の接着促進剤を添加してもよい。凍結融解安定性を改良するために、少量の1種または複数種の、その他の水−混和性溶媒たとえばエチレングリコールを、PVDFラテックスの中に混ぜ込んでもよい。
【0029】
本発明においては、PVDFラテックスをラテックスバインダーとして使用してもよいが、あるいは、たとえば噴霧乾燥法、凍結乾燥法、凝固法、およびドラム乾燥法など(これらに限定される訳ではない)、当業者公知の手段によって、乾燥させてそれを粉体にしてもよい。その乾燥させたPVDF粉体は、0.5〜200ミクロン、好ましくは1〜100ミクロン、より好ましくは2〜50ミクロン、最も好ましくは3〜20ミクロンの平均粒径を有している。サイズがより小さい粒子が好ましいが、その理由は、それによって、相互作用性粒子の間の間隔が短く(密度が高く)なるからである。エマルションから直接作製した物品においては、そのエマルションの粒子が相互作用して、それらの粒子の上の離散した点で2種以上の粒子に付着する。押出し加工プロセスにおいては、ポリマー樹脂粒子が非結晶質領域で軟化して、離散した点で粒子に付着するが、溶融して粒子を完全に被覆するようなことはない。
【0030】
特に有用なポリフッ化ビニリデン樹脂としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:KYNAR樹脂(Arkema Inc.製)、特にKYNAR 741(粒径:3〜8ミクロン、溶融粘度:16.5−22−5キロポワズ);KYNAR 741F(粒径:3〜6ミクロン、溶融粘度:16.5−22−5キロポワズ)、KYNAR 761(粒径:3〜8ミクロン、溶融粘度:23.0〜29.0キロポワズ);KYNAR HSV900(粒径:3〜8ミクロン、溶融粘度:44.5〜54.5キロポワズ);およびKYNAR MG15(粒径:3〜8ミクロン、溶融粘度:35.0〜39.0キロポワズ)。溶融粘度は、ASTM D3835に従い、232℃、100s
-1で測定する。
【0031】
一実施形態においては、VDFとHFPとのコポリマーが使用される。それらのコポリマーは、より低い表面エネルギーを有している。PVDFは一般的に、他のポリマーたとえばポリオレフィンなどよりも、低い表面を有していることに注目されたい。表面エネルギーが低いと、相互作用性粒子の濡れがよくなり、より均質な分散体となる。その結果、より高い表面エネルギーを有するポリマーバインダーの分離装置の均質性が改良され、バインダーの必要レベルがより低くなる。さらに、PVDF/HFPコポリマーは、結晶化度がより低く、ガラス転移温度(Tg)もより低いので、溶融プロセスにおいてより低い温度で加工することができる。
【0032】
本発明の一つの変法においては、そのPVDFポリマーが、官能性PVDF、たとえば無水マレイン酸をグラフトさせたPVDF(Arkema製)である。その官能性PVDFによって、相互作用性粒子または繊維に対する結合性が改良され、それにより、配合におけるPVDFの使用量をより低いレベルとすることが可能となる。この、より低い使用量と優れた結合性の組合せが、多孔質の分離用物品の総合的な透過性の改良をもたらすであろう。
【0033】
相互作用性粒子または繊維
1種または複数種のタイプの相互作用性粒子または繊維を、フルオロポリマーまたはポリアミドのバインダーと組み合わせる。本発明の相互作用性粒子または繊維は、流体(液体または気体)組成物中に溶解されるかまたは懸濁された物質の近傍に来るかまたはそれらと接触したときに、物理的、電気的、または化学的相互作用を有するものである。それら相互作用性粒子の活性のタイプに応じて、それらの粒子は、化学反応、物理的捕捉、物理的付着、電気的(電荷的もしくはイオン的)誘引、または類似の手段によって、溶解されるかまたは懸濁された物質を分離することができる。本発明によって予想される相互作用としては、以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:たとえば、活性炭、ナノクレーまたはゼオライト粒子;イオン交換樹脂;触媒;電磁性粒子;中和のための酸性もしくは塩基性粒子などにおける、流体からの化合物の物理的捕捉。
【0034】
繊維の相互作用性粒子の例としては以下のものが挙げられるが、それらに限定される訳ではない:410、304、および316ステンレス鋼、銅、アルミニウムおよびニッケル粉体の金属粒子、強磁性物質、活性アルミナ、活性炭、カーボンナノチューブ、シリカゲル、アクリル系粉体および繊維、セルロース繊維、ガラスビーズ、各種の研磨材、一般的な鉱物質たとえばシリカ、木材チップ、イオン交換樹脂、セラミックス、ゼオライト、珪藻土、ポリエステル粒子および繊維、ならびに、エンジニアリング樹脂たとえばポリカーボネートの粒子。
【0035】
一般的に使用可能な本発明の相互作用性粒子は、直径0.1〜3,000マイクロメートルのサイズ範囲であり、長さ対幅の比率が実質的に無制限の直径0.1〜250マイクロメートルの繊維である。繊維は、長さ5mm以下に切断されているのが好ましい。繊維または粉体は、その粉体混合物を十分に加熱できるだけの熱伝導率を有しているべきである。さらに、押出し加工プロセスにおいては、それらの粒子および繊維が、そのフルオルポリマーバインダー樹脂の融点よりも十分に高い融点を有していて、通常は望まれている多相系ではなく、両方の物質が溶融して連続した溶融相を作ることを防ぐようにしなければならない。
【0036】
フルオロポリマーまたはポリアミドのバインダーの相互作用性粒子または繊維に対する比率は、0.5〜35重量パーセントのフルオロポリマー固体対65〜99.5重量パーセントの相互作用性粒子または繊維、好ましくは0.5〜15重量パーセントのフルオロポリマー固体対85〜99.5重量パーセントの相互作用性粒子または繊維、より好ましくは1〜10重量パーセントのフルオロポリマー固体対90〜99重量パーセントの相互作用性粒子または繊維、そして一実施形態においては、0.5〜8、重量パーセントのフルオロポリマー固体対92〜99.5重量パーセントの相互作用性粒子または繊維である。フルオロポリマーの使用量が少なすぎると、完全な相互連結性が達成されないし、またフルオロポリマーの使用量が多すぎると、相互作用性粒子と、その分離用物品を通過する流体との間の接触が低下する。
【0037】
本発明の分離用物品は膜とは異なる。膜は、排除濾過によって機能する、すなわち、特定の孔径を有していて、その孔径よりも大きい粒子がその膜を通過するのを防ぐ。本発明の分離用物品は、そうではなくで、相互作用性粒子による吸着または吸収に基づいて、その分離装置を通過する流体から物質を除去する。
【0038】
相互作用性粒子の相互連結性を有している、本発明の分離用物品は、当業者公知の、固形の物品を成形するための手段によって成形することができる。本発明の分離用物品を成形するために有用なプロセスとしては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:押出し加工プロセス(米国特許第5,019,311号明細書に教示あり)、圧縮成形法、同時スプレー(co−spray)乾燥粉体法、および(水性)分散体結合プロセス。
【0039】
押出し加工プロセス
ブロック物品を成形するための押出し加工プロセスは、E.Koslowによる特許、たとえば米国特許第5,331,037号明細書(参考として引用し本明細書に組み入れる)に見いだすことができる。そのプロセスには、極微細な粒子状物質からなる少なくとも1種のフルオロポリマー「バインダー」粒子を、1種または複数種のタイプの相互作用性粒子または繊維と混合して組み合わせる工程が含まれる。それらの相互作用性粒子および繊維は、ほとんどすべての粒状の、粉体、または極微細な物質、またはある範囲の微細繊維または粗大繊維からなっていてよい。それらの粒子および繊維は、そのフルオロポリマーバインダー粒子の溶融点または軟化点よりも顕著に高い溶融点または軟化点を有しているべきである。この混合物には、各種の添加剤および加工助剤を添加することもできる。「添加剤」とは、最終製品の性質を望ましい方向に変化させる物質と定義され、たとえば、より弾性の高いゴム状の粘稠性を与える可塑剤や、強度があり、脆く、よりセラミック様の最終製品を与える剛化剤などである。「加工助剤」とは、混合物をより容易に加工できるようにする物質と定義され、たとえば射出成形のための潤滑剤である。バインダーは、混合物全体の約3〜約30重量%、好ましくは約4〜約8%を占めるようにするべきである。
【0040】
バインダーと相互作用性物質(粒子および/または繊維)とを混合するために典型的に使用される混合プロセスは、可能な限り均質な最終製品が製造できるように設計される。その混合装置で製造される混合物の品質が、プロセスにおいては重要である。低温の混合プロセスは通常、安定した均質な混合物を製造するためにかなりのレベルの剪断力を必要としており、それが最終的な加工の際に強度の高い複合体に変換される。たとえば、ボールミル加工は多くの場合、剪断力を上げるための物品を備えた改良ボールミルの中で実施しなければならない。プローミキサー(plow mixer)もまた、それらの物質を「スミア(smear)」する物品を用いて改良しなければならない。通常の粉体の混合物(十分な量の長繊維を含んでいないもの)は、改良したボールミルまたはプローミキサーを使用して効果的に混合することができるが、それに対して繊維と粒子との混合物は、強力な刻みミキサー(mincing mixer)の中で効果的に分散させることができる。
【0041】
さらに、そのプロセスでは、混合物の内部での粒子の特別な分散が必要であるとの疑念もある。バインダー粒子は、個別に、または周辺の相互作用性粒子の間またはそれらの上に、小さなクラスターとして分散させねばならない。それらのバインダー粒子が相互作用性粒子に粘着して、粉立ちが少なく、流動性の低いマトリックスが得られるようにしなければならない。この粘着性を補うために、バインダーまたは相互作用性粒子を、微量の界面活性剤またはそれに類似の物質でコーティングしておく必要があることも多い。
【0042】
そのようにして得られた混合物を、すべての粒子および成分が実質的に均質に分散されたら、次いで本発明に従って、プラスチックに適用されることが多い慣用されるプロセスのいずれかを含む手順により加工する。そのようなものとしては、二次元的に均質な形状を有する目的物を製造するための押出し法、物質の薄いシートまたは厚いスラブを製造するための高温ロール圧密成形法、または複雑なバルク形状を得るための圧縮成形法もしくは射出成形法などが挙げられる。
【0043】
バインダー樹脂のユニークで連続のウェブの成形および、相互作用性粒子または繊維の固定化(immobilization)または強制的点結合(forced point−bonding)を達成させるためには、プラスチックの注型成形、押出し成形、ロール圧密成形その他の成形装置を、必要とされるタイムシーケンスの中で、適用する圧力、温度、および剪断力の厳密な組合せが得られるように操作する。バインダー粒子を、それらの元々の通常は粉体または球状の粒状物の形態から、最終的な構造の中の薄い連続のウェブマトリックスに転換させるために必要な条件は、使用した樹脂のタイプに従って、変化する。しかしながら、基本的な要件には、以下の工程が含まれる。
1.最初に、顕著な圧力または剪断力をいっさいかけることなく、混合物を、バインダー樹脂の軟化点よりは十分に高い(好ましくは少なくとも約20℃、最も好ましくは約40℃上の)温度ではあるが、通常は、その混合物の中の相互作用性粒子および繊維の軟化点よりも低い温度に加熱する。
2.少なくとも工程1の温度にまで加熱した後で、その混合物を、一般的には少なくとも約50psi(3.5kg/cm
2)、好ましくは少なくとも約1000psi(70.31kg/cm
2)、最も好ましくは少なくとも約6,000psi(421.86kg/cm
2)の十分に高い圧力下に置いて、密ではない物質を実質的に直ちに圧密化し、相互作用性粒子を取り巻くことによって、バインダー樹脂に作用して、前記バインダー物質の粒子の少なくとも一部を相互作用性粒子の間の連続ウェブに転換させる。そこで加える圧力は、バインダーを「活性化させる」には十分に高くなければならず、工程1で述べた必要とされる温度に達してはじめて、加える。
3.その混合物は、その剪断が単に、その元々の密ではない形態から、より圧縮された形態にまでその物質を圧密化するのに必要とされる、粒子の移動であったとしても、圧力を加えている際に、少なくとも幾分かの最小の(限定された)剪断力は受けなければならない。このことが、バインダーの粒子を「スミアして」、互いに合着して、連続のウェブマトリックスを形成するする薄いフィルムにするのに役立つと考えられる。押出し加工の際に、粒子は、ダイの中で加熱されている間に前圧密化されてはいるが、その物質は、温度、圧力低下、および剪断力がバインダーの転化を達成するには十分である、ダイの最終成形の部分で剪断力と圧力の組合せを受けている。
4.熱と圧力の加え方は,十分に短い時間にして、そのプロセスの間に形成された連続ウェブが、個々の液滴または粒子となる溶融および再圧密化の結果として、非連続状態に戻らないようにしなければならない。
5.そのプロセスは、高速で実施され、次いでそのようにして得られた固定化された物質をバインダーの融点より低い温度にまで比較的急速に冷却して、一旦形成された不安定な構造を「凍結(freeze)」させる。
【0044】
本発明のまた別な実施形態においては、工程2において加えた圧力が、より低い範囲にあって、連続ウェブの形成が低下または停止し、相互作用性粒子の間の強制的点結合によって複合体構造が形成されるようになっている。このプロセスにおける熱および圧力の加え方は、同様に短い時間であって、その冷却も比較的急速で、そのプロセスの間に形成された強制的点結合が保持される。
【0045】
その構造物に、引張、切断、または応力を加えることによって、ポリマーの微細なウェブを、極めて微細な繊維へと転換させる。そのようにして得られた繊維は、時として、極めて微細とすることが可能であり、またフィブリル化して、サブミクロンサイズにさえすることができる。
【0046】
そのプロセスの速度は、熱が粒子の混合物の中に移動する速度によって主として制限されるように思われる。連続のポリマー性ウェブまたは強制的点結合の形成では、高い圧力および剪断力をほんの瞬間的に加えることが必要であるように思われる。その生成物を高温で長時間保持すると、その製品が急速に劣化し、連続ウェブまたは結合点が失われる。したがって、物質中で連続のバインダー樹脂構造が生成したら、急速に、好ましくは可能な限り急速に冷却するべきである。その生成物の冷却が完了するまでは、その構造物は柔軟性を維持していて、容易に変形させることができる。したがって、その生成物は通常、型からの抜き出しまたは押出し成形用具からの押出しのいくぶんか前に、部分的に冷却させることができる。この暖かい条件下で、その生成物を扱って、微細な表面仕上げや平滑化されたシートを製造することが可能である。冷却を促進させるために、水スプレーまたは空気ブラストを使用してもよい。加熱ロールコンパクターで製造された平滑シートは、それらがロールから数フィート移動している間に冷却され、その後で処理される。いくつかの場合においては、まだ暖かくて柔軟である間に、その物質のシートに平滑化のための加工をさらにする。
【0047】
そのプロセスの生成物は、ゴム状またはプラスチック状の物質であってよく、その性質は、より高いかまたはより低い圧力および剪断力、より高いかまたはより低い温度の使用、および少量でその生成物の性質を実質的に変化させる各種の添加剤の使用により、広く変化させることが可能である。
【0048】
混合物に加える圧力と剪断力とを増大させると、その生成物の構造内において、バインダー樹脂の連続性の程度が実質的に高くなる結果がえられるということが観察された。温度を最小温度から最大温度にまで上げると、応力を加えることによって製造されたウェブの厚みが薄くなるということが観察される。ある温度よりも高くなると、その結果得られるマトリックスの生成が、低下することが観察される。臨界的な温度より上では、そのプロセスによって形成された連続の構造を「メルトフロー(melt flow)」温度より十分下には急速に冷却することができず、次いで球状の形状に逆流するために、その連続ウェブが失われると考えられる。
【0049】
したがってそのプロセスは、通常、好まし操作温度範囲の内で実施される。この範囲は、製造される目的物のサイズおよび形状に合わせて、変化させるのがよい。たとえば、極めて急速に加熱および冷却が可能な薄いシートは、より大きいスラブやバルクの形状物よりは低い温度で形成させることができる。したがって、許容される温度範囲は、成形される目的物のサイズが大きくなるほど、より制限されるようになる。実際のところ、厚みが2インチ(5.1cm)までの目的物は、実用的な温度範囲内で成形することができる。しかしながら、その生成物の厚みが増すほど、必要とされる温度が高くなり、急速に冷却する能力が失われるために、そのプロセスを実施する能力が低下する。
【0050】
このプロセスを「活性化させる」ためには、最小限の加圧と、顕著な剪断力が必要とされることが見いだされた。臨界圧力未満では、連続的なバインダー構造の発生は観察されない。しかしながら、それでも粒子の強制的点結合は起こすことができる。
【0051】
このプロセスを使用して、効果的にはまり込むことが可能な、複雑な入り組んだ形状を有する小さな相互作用性粒子(珪藻土が好例である)を採用し、高温、高圧でプロセスを操作することによって、セラミック様の物質を製造することが可能である。その結果得られる物質は、極端に剛直で、脆い。そのような構造物は、押出し成形した構造物または注型成形した目的物の場合のように、その形状を維持する生成物が必要とされる、ある種のプロセスにおいては特に望ましい。
【0052】
そのプロセスを使用して、通常では相溶性のない粒子の混合物を製造することも可能である。たとえば、イオン交換樹脂と磁性のステンレス鋼粉体との混合物を組み合わせて、磁性のイオン交換樹脂複合体粒子を形成させることができる。これが可能となったのは、バインダー樹脂粒子を、トレース量のアルキルエトキシレートタイプの界面活性剤を用いて処理すると、極めて異なった密度の粒子の安定な混合物を得ることが可能であり、それを加工して均質な生成物とすることができるということが発見されたからである。別な方法として、吸着剤の粒子を成形してシート、スラブ、またはバルクの形状とすることが可能であったり、あるいは直接注型成形して、形状維持(retaining)構造物(たとえば、カートリッジまたは圧力容器)としたりすることができる。注型成形して容器とした場合、粒子は、成形プロセスの間に自発的に形成された構造物の内部に捕捉されていると同時に、その容器の壁面にも結合されていて高度に一体的な構造を構成していて、沈降、移動、流動(channel)、摩耗などを受けることがない。
【0053】
圧縮成形プロセス
ポリマー粉体(PVDF、ポリアミド、またはポリオレフィン)を、活性炭粉体に対して、適切な比率で計量し、高速ミキサー、たとえばHenschelミキサーまたはWaringベンチトップブレンダーミルを使用して混合する。混合速度は、800〜1500rpmの範囲とすることができる。混合時間は、ブレンドする粉体の量によるが、1〜3分の範囲である。
【0054】
ブレンドした粉体を、圧縮成形フレーム(6”×6”×1/8”)の中に注入して、その粉体が、金型フレームの上面まで完全かつ均等に充填されているようにする。そのフレームは、その金型フレームの下のプレート領域を被覆するKaptonフィルム片を備えた、大表面積の鋼板の上にプリセットするべきである。上側表面を少し超える量の粉体とすると、この圧縮プロセスの助けになる。その金型フレームの上を、もう1枚のKAPTONポリイミドフィルム片を用いて覆い、次いで中実の鋼板を上にのせる。
【0055】
次いで、その充填した金型装置を、Carverプレスの加熱した(450°F)熱盤の上に置き、上側および下側の熱盤が1000〜3000psiの圧力でその金型装置に接触するまで、圧縮する。これが、予熱工程であり、この条件下で金型を3〜5分間放置して加熱する。ついで圧縮圧力を上げて10,000psiとし、その温度で金型をさらに3〜5分間保持する。次いで、圧力を下げ、その加熱された金型を直ちにコールドプレスに移し、そこで、10,000psiで3分間再圧縮して冷却させる。次いで、金型をプレスから取り出し、開けて、固化した注型成形プラックを単離する。
【0056】
この手順を、10%および20%両方のPVDF−カーボンブレンド物に適用したら、多孔質の、焼結された固形のプラックが得られた。しかしながら、10%および20%のポリエチレン−カーボンブレンド物で試験をしたら、その粉体ブレンド物は、同時に焼結することができず、易流動性の粉体しか得られなかった。これらの結果は、PVDF樹脂の方が、ポリエチレン粉体よりも良好に活性炭と結合するということを示している。この結果は、プロセスのコストに上乗せされる加工条件(温度、圧力、時間)を下げることによって、ポリマー−カーボン・ブロック・フィルターの製造に役立たせることができる。
【0057】
PE−カーボン粉体混合物の焼結を改良する目的で、コールドプレスプロセスを試みた。このプロセスにおいては、6〜7gのカーボン−ポリマー粉体混合物をCarver円筒金型(1−1/8”直径×3”長さ)の中に入れ、この充填した円筒金型をコールドプレスに入れ、3分間10,000psiで圧縮した。次いでその金型を開いて、圧縮したポリマーのタブレットを回収した。
【0058】
この方法により、PVDF−カーボン粉体から多孔質で固形の圧縮ディスクが得られた。しかしながら、PE−カーボン粉体では、このプロセスによっては、固形の物質に圧縮することができず、易流動性の粉体が残っていた。これらの結果は、PVDF樹脂が、ポリオレフィン粉体と比較したときに、活性炭のための機械的バインダーとして優れていることをさらに裏打ちしている。
【0059】
同時スプレー乾燥させた粉体
たとえば先に述べた押出し加工プロセスおよび圧縮成形プロセスのような加熱プロセスにおいて使用される粉体は、相互作用性粒子と予備ブレンドしておくことができる。一実施形態においては、フルオロポリマーと相互作用性粒子との均質なブレンド物は、それらの成分を同時スプレー乾燥させることによって調製することができる。有効量のPVDFラテックスと、粉体状のカーボンまたは相互作用性粒子と共に混合し、それらを同時スプレーして、ナノスケールで十分に混合されている乾燥粉体を得ることができる。次いでこの同時スプレー乾燥させた複合体を、注型成形して、各種所望の形状の多孔度とすることができる。小さい粒径のラテックス(一般的には20〜400nm)が、相互作用性粒子との極端に均質なブレンド物を与え、必要とされるバインダーのレベルを下げることが可能であるが、それでもなお、分離のために利用可能な相互作用性粒子の表面の量を最も高くしている。同時スプレー乾燥させた複合体には、ブレンド物の噴霧乾燥によって相互作用性粒子と物理的に組み合わされた、それらの極めて小さいエマルション粒子が含まれている。
【0060】
分散体コーティングプロセス
水性コーティングプロセスが押出し加工プロセスに勝る一つの利点は、壊れやすい相互作用性粒子を破壊する恐れがある製造の際に、極めて低い圧力しか必要としていないという点である。さらに、選択されるポリマーが、熱可塑性と同様に熱硬化性であってもよく、そしてそのポリマーが、重合したままの分散体の形で使用されるので、その分子量を極めて高くすることができ、しかもなお加工が可能である。ラテックス粒子の粒径は、粉体化したバインダー粒子よりははるかに小さく、したがって、重量基準では、ポリマー粉体粒子の場合と同様に、ラテックス粒子によって相互作用性粒子との、より多くの、より小さい粘着的結合が提供される。
【0061】
一実施形態においては、PVDF分散体を(好ましくはフルオロ界面活性剤を一切加えずに)形成させ、所定の量の各種の沈降防止剤または界面活性剤を水中で希釈し、撹拌しながらPVDF分散体ラテックスに後添加して、ラテックスに十分な貯蔵安定性を与える。このPVDF分散体/沈降防止剤混合物に、撹拌しながら、任意成分の濡れ剤、次いで各種の増粘剤、および逃散性接着プロモーター(fugitive adhesion promoter)を添加し、次いで、必要があれば、その増粘剤が有効となるのに適当な範囲にまでpHを上げる。たとえばCMCのようないくつかの増粘剤は、広いpH範囲、すなわちCMCの場合では3〜9のpHで有効である。次いで、相互作用性粒子および各種のその他の成分をその混合物に添加する。水性のPVDFバインダー配合物と混合するより前に、逃散性接着プロモーター、潜在的溶媒または濡れ剤の中に相互作用性粒子または繊維を分散させて、相互作用性粒子に濡れ性を与えるのも、有利であろう。次いでその最終的な組成物に、高剪断混合を与えて、組成物の中にその粉体状物質を均質にしっかりと分散させる。本発明の最終的な水系組成物は、基材の上にキャスティングまたはコーティングさせるのに有用な粘度を有しているべきである。その有用な粘度は、適用方法に依存して、25℃、20rpmで2,000〜20,000cpsの範囲である。
【0062】
本発明の組成物には、水100部あたり、0〜10部、好ましくは0.1〜10部、より好ましくは0.5〜5部の1種または複数種の沈降防止剤および/または界面活性剤が含まれる。一実施形態においては、沈降防止剤または界面活性剤のレベルが、100部の水あたり、2.7〜10部である。これらの沈降防止剤または界面活性剤は、一般的には、貯蔵安定性を改良し、スラリー調製の際にさらなる安定化を与える目的で、後重合のPVDF分散体に添加される。さらに、重合プロセスの途中に、本発明において使用される界面活性剤/沈降防止剤を、重合に先だってすべて前もって添加したり、重合の途中に連続的にフィードしたり、重合の前に部分的にそして次いで重合の途中にフィードしたり、あるいは、重合が開始し、しばらく進行した後にフィードしたりすることができる。
【0063】
有用な沈降防止剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:イオン性物質、たとえば、アルキル硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびラウリル硫酸アンモニウム)の塩、および部分的にフルオロ化されたアルキル硫酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩(たとえば、DuPontからCAPSTONEの商品名で販売されているもの)の塩、およびノニオン性界面活性剤、たとえば、TRITON Xシリーズ(Dow製)およびPLURONICシリーズ(BASF製)。一実施形態においては、アニオン性界面活性剤のみで使用される。重合プロセスから、または水系分散体の形成または濃縮における添加後重合からの残存界面活性剤のいずれについても、その組成物の中にフルオロ化された界面活性剤が存在していないのが好ましい。
【0064】
本発明の組成物には、任意選択で、水100部あたり、0〜5部、好ましくは0〜3部の1種または複数種の濡れ剤が含まれる。界面活性剤を濡れ剤として役立たせることも可能ではあるが、濡れ剤には、非界面活性剤が含まれていてもよい。いくつかの実施形態においては、その濡れ剤を有機溶媒とすることができる。任意成分の濡れ剤を存在させることによって、フッ化ビニリデンポリマーの水系分散体の中に、粉体状電極物質を均質に分散させることが可能となるということが見いだされた。いくつかの電極物質、たとえば炭素質物質は、濡れ剤を使用しないと、水系分散体の中に分散しないであろう。有用な濡れ剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:イオン性およびノニオン性界面活性剤たとえば、TRITONシリーズ(Dow製)およびPLURONICシリーズ(BASF製)、ならびに水系分散体と相溶性のある有機液体、非限定的に挙げれば、たとえばNMP、DMSO、およびアセトン。
【0065】
本発明の組成物には、水100部あたり、0〜10部、好ましくは0〜5部の、1種または複数種の増粘剤またはレオロジー調節剤が含まれていてもよい。上述の分散体に水溶性の増粘剤またはレオロジー調節剤を添加することによって、繊維の相互作用性粒子の沈降を防止するかまたは遅延させ、しかもキャスティングプロセスに適したスラリー粘度を与える。有用な増粘剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ACRYSOLシリーズ(Dow Chemical製);部分的に中和したポリ(アクリル酸)またはポリ(メタクリル酸)たとえばCARBOPOL(Lubrizol製);およびカルボキシル化アルキルセルロース、たとえばカルボキシル化メチルセルロース(CMC)。いくつかの増粘剤では、配合pHを調節することによって、その効果を改良することができる。有機レオロジー調節剤に加えて、無機レオロジー調節剤もまた、単独もしくは組合せで使用することができる。有用な無機レオロジー調節剤としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:無機レオロジー調節剤、非限定的に挙げればたとえば、天然のクレーたとえば、モンモリロナイトおよびベントナイト、人工クレーたとえば、ラポナイト、ならびにその他のものたとえば、シリカおよびタルク。
【0066】
本発明の増粘剤は、PVDFおよび粉体状電極物質を含む水系組成物の中で使用されているのであって、参考文献の特開2000357505号公報に記載されているような、第二のコーティング組成物として純粋な形態で使用されているのではない。
【0067】
逃散性接着プロモーターは、本発明の組成物で必要とされる相互連結性を発生させるのに必要である。本明細書で使用するとき、「逃散性接着プロモーター(fugitive adhesion promoter)」という用語は、基材の上にコーティングした後で、組成物の相互連結性を向上させる薬剤を意味している。次いでその逃散性接着プロモーターは、形成された電極から、一般的には蒸発(化学物質の場合)によるか、または放散(添加エネルギーの場合)によって除去することができる。
【0068】
逃散性接着プロモーターは、化学的物質、圧力と組み合わせたエネルギー源、またはその組合せであってよく、電極を形成させる際に、水性組成物の成分に相互連結性を起こさせるに十分な量で使用される。化学的な逃散性接着プロモーターのためには、その組成物に、100部の水あたり、0〜150部、好ましくは1〜100部、より好ましくは2〜30部の1種または複数種の逃散性接着プロモーターを含む。それが、水と可溶性または混和性である有機液体であるのが好ましい。この有機液体は、PVDF粒子のための可塑剤として機能して、それらに粘着性を付与して、乾燥工程の間に、離散した粘着点として機能することができるようにする。PVDFポリマー粒子は、軟化することが可能で、流動して、生産の間に粉体状物質に付着し、その結果として、不可逆的な高い接続性が得られる。一実施形態においては、その有機液体が潜在的な溶媒、すなわち、PVDF樹脂を溶解させたり実質的に膨潤させたりはしないが、高温ではPVDF樹脂を溶媒和させるであろう溶媒である。一実施形態において、有用な有機溶媒が、N−メチル−2−ピロリドンである。その他の有用な逃散性接着プロモーター剤としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチルホスホアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラメチル尿素、リン酸トリエチル、リン酸トリメチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、およびテトラエチル尿素。
【0069】
逃散性接着プロモーターがエネルギーである場合には、有用なエネルギー源としては、熱、IR照射、および高周波(RF)が挙げられるが、これらに限定される訳ではない。熱単独の場合には、電極の上のPVDF組成物を加工する際の温度を、ポリマーの融点よりも約20〜50℃上とするべきである。逃散性接着プロモーターとしてエネルギーだけを使用するときには、相互連結性を良好とするには、熱と圧力を組み合わせる(たとえば、カレンダリング工程)のが好ましい。
【0070】
本発明の組成物には、有効量のその他の添加剤、非限定的に挙げれば、たとえば充填剤、レベリング剤、消泡剤、pH緩衝剤、および水性配合物で典型的に使用されるその他の助剤、などがさらに含まれていてもよい。
【0071】
その水性組成物は、注型成形して仕上げ物品とするか、または、多孔質の成形された薄い基材の上に、当業者公知の手段、たとえば、ブラシ法、ローラー法、インキジェット法、スキージー法、フォームアプリケーター法、カーテンコーティング法、真空コーティング法、またはスプレー法によってコーティングする。次いでその注型成形した物品またはコーティングした基材を乾燥させて、密着性の(coherent)複合体を形成させるが、任意選択でそれを高温で焼き付けて、高い接着強度を与えることもできる。
【0072】
水性のPVDF分散体は、ポリマー粒子を有するバインダーとして機能して、相互作用性粒子または繊維を特定の離散した点でのみ結合させて相互連結性を与える。
【0073】
本発明の一実施形態においては、分離用物品が、流体をフルオロポリマーの固体の分離用物品を通過させる前に、大きな粒子を除去するためのともに二次フィルターからなる、ハイブリッド濾過物品であってもよい。この二次濾過の構成要素は、目の粗いフィルター、スパン繊維、密ではない繊維充填剤、篩(screen)、またはその他公知の二次濾過手段であってよい。その二次濾過はいかなる物質であってもよいが、ただしフルオロポリマー物質が、化学的および生物学的不活性であり、高い機械的および熱機械的性質を有しているので、特に有用であろう。
【0074】
一実施形態においては、通常は直径2.5インチであるカーボン・ブロック・フィルターを、直径1.5インチにサイズダウンし、二次濾過媒体の中で置きかえて、バックアップの外側直径を2.5インチとすることができる。
【0075】
使用
他のバインダー物たとえば、典型的に使用されているポリエチレンに比較して、フルオロポリマーおよびポリアミド物質の、化学的な不活性さ、生物学的清浄度、および優れた機械的および熱機械的性質などを含めた性質が優れているために、本発明の分離用物品は、広く各種の要求の厳しい環境において使用することができる。高温、高度に反応性、アルカリ性、または酸性の環境、無菌環境、生物学的作用物質との接触は、本発明の分離用物品がその他のポリマーバインダー系よりも明らかに有利である環境である。その分離用物品は、分離用物品を通過する流体を精製し、それから望ましくない物質を除去するのに使用して、各種の商業的または消費者向けの用途において使用される、より純度の高い流体を得ることが可能である。その分離用物品はさらに、流体ストリームから物質を捕捉し、濃縮するためにも使用し、次いで、それら分離用物品から捕捉した物質をさらなる使用のために除去することもできる。その分離装置は、飲用水の精製(熱水および冷水)のため、さらには工業的使用のために使用することができる。「工業的使用」という用語は、高温(50℃を超える、75℃を超える、100℃を超える、125℃を超える、150℃を超える、最高ポリマーバインダーの軟化点まで)での使用;有機溶媒との使用、ならびに、薬学的および生物学的なクリーンで高純度な使用、を意味している。
【0076】
本発明のいくつかの物品としては以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:
オイルフィルター(紙フィルター媒体の上に複合体ラテックスをコーティングすることができる)。
カーボン・ブロック濾過系。
イオン交換膜またはカラム。
化学反応を促進させるための触媒媒体。
薬学的および生物学的活性成分のバイオセパレーションおよび回収。
他のガスからのガス分離、水性および非水性媒体中に溶解しているガスの分離、およびガス中に浮遊している粒状物。
化学的スクラバー、特に極めて酸性の高い環境における煙道ガスのためのもの。
耐薬品性の保護衣およびカバー。
スケール付着防止(antiscale build−up)および有機汚染物の除去のための熱水プロセス(>80℃)濾過。
自動車排気ガス(automotive exhaust)の濾過。
閉ループ工業用水系。
工業用水処理。
温室ガスの排気、ベント、および煙突の捕捉。
汚染された地下水の処理。
ブラインおよび塩水の飲用水への処理。
粒状物フィルターとしての使用。
オゾン曝露における処理。
以下のものの精製および/または濾過:
脂肪族溶媒、
強酸、
高温(>80℃)の化合物、
炭化水素、
フッ化水素酸、
ディーゼルおよびバイオディーゼル燃料、
ケトン、
アミン、
強塩基、
「発煙」酸、
強酸化剤、
芳香族化合物、エーテル、ケトン、グリコール、ハロゲン、エステル、アルデヒド、およびアミン、
ベンゼン、トルエン、ブチルエーテル、アセトン、エチレングリコール、二塩化エチレン、酢酸エチル、ホルムアルデヒド、ブチルアミンの化合物、など。
【0077】
水性、非水性、およびガス性(gaseous)の懸濁液または溶液からの無機およびイオン性の化学種の除去、それらのものを、非限定的に挙げれば、たとえば以下のもの:カチオンの水素、アルミニウム、カルシウム、リチウム、ナトリウム、カリウム;アニオンの硝酸塩、シアニドおよび塩素;金属、非限定的に挙げれば、たとえばクロム、亜鉛、鉛、水銀、銅、銀、金、白金、鉄、およびその他の貴金属または重金属および金属イオン;塩、非限定的に挙げれば、たとえば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム;ならびに、水溶液懸濁液からの有機化合物の除去。
【0078】
例示的に挙げた用途および本明細書における記述に基づけば、当業者ならば、本発明の複合体固形物品のための極めて多種のその他の用途を思いつくことができるであろう。
【実施例】
【0079】
実施例1:
上述の圧縮成形プロセスを使用して、PVDF樹脂(平均Mw:約580 000、MFI:2.5g/10分@12.5kg、重量平均粒径:3〜8ミクロン)と、活性炭(ACTICABONE 2SW)との(50:50)混合物を圧縮成形した。固形の多孔質のシートが得られた。このシートは、良好な機械的結着性(mechanical integrity)を有していて、人の手では容易には割れなかった。
【0080】
毛管流多孔度測定法(capillary flow porometry)によって試験するために、そのシートから直径25mmのディスクを切り出した。これと同一のサンプルを、加圧下での水透過性の試験のためにも使用した。それらのデータを表1に示す。
【0081】
実施例2:
上述の圧縮成形プロセスを使用して、PVDF樹脂(平均Mw:約300 000、MFI:12.0g/10分@12.5kg、重量平均粒径:3〜8ミクロン)と、活性炭(ACTICABONE 2SW)との(50:50)混合物を圧縮成形した。固形の多孔質のシートが得られた。このシートは、受容可能な機械的結着性を有し、取り扱い時の摩耗もわずかであった。
【0082】
毛管流多孔度測定法によって試験するために、そのシートから直径25mmのディスクを切り出した。これと同一のサンプルを、加圧下での水透過性の試験のためにも使用した。それらのデータを表1に示す。
【0083】
実施例3:
上述の圧縮成形プロセスを使用して、PVDF−HFPコポリマー樹脂(平均Mw:約500 000、MFI:6.0g/10分@21.6kg)と活性炭(ACTICABONE 2SW)との(50:50)混合物を圧縮成形した。固形の多孔質のシートが得られた。このシートは、極めて良好な機械的結着性を有していて、人の手では容易には割れなかった。
【0084】
毛管流多孔度測定法によって試験するために、そのシートから直径25mmのディスクを切り出した。これと同一のサンプルを、加圧下での水透過性の試験のためにも使用した。それらのデータを表1に示す。
【0085】
実施例4:
上述の圧縮成形プロセスを使用して、PVDF樹脂(平均Mw:約300 000、MFI:12.0g/10分@12.5kg、重量平均粒径:3〜8ミクロン)と、活性炭(ACTICABONE 2SW)との(20:80)混合物を圧縮成形した。固形の多孔質のシートが得られた。このシートはどちらかと言えば壊れやすかったが、割れることなく扱うことができた。
【0086】
実施例5:
上述の圧縮成形プロセスを使用して、PVDF樹脂(平均Mw:約300 000、MFI:12.0g/10分@12.5kg、重量平均粒径:3〜8ミクロン)と、活性炭(ACTICABONE 2SW)との(10:90)混合物を圧縮成形した。固形の多孔質のシートが得られた。このシートは極めて壊れやすく、割れを防ぐために極めて慎重に扱わなければならなかった。この物質は容易に摩耗した。
【0087】
比較例1:
上述の圧縮成形プロセスを使用して、ポリエチレン樹脂(Marlex HMN TR−938、MFI:3.0g/10分@2.16kg)と活性炭(ACTICABONE 2SW)との(50:50)混合物を圧縮成形した。粗い固形の多孔質のシートが得られた。このシートのモルホロジーは極めて不規則で、ある部分では極めて高密度で詰まっており、他の部分では極めて弱く粉体状であった。そのシートは極めて壊れやすく、容易に割ることができた。
【0088】
毛管流多孔度測定法によって試験するために、そのシートから直径25mmのディスクを切り出した。これと同一のサンプルを、加圧下での水透過性の試験のためにも使用した。それらのデータを表1に示す。多孔度測定法のデータから、泡立ち点直径と平均細孔直径との間の差が大きいことから分かるように、その圧縮された構造が不規則であることが確認される。PVDF樹脂から作製したその多孔質のシートは、泡立ち点直径と平均細孔直径とが近いことから分かるように、細孔構造がはるかに均質であった。
【0089】
さらに、ポリエチレン−カーボンブレンド物が不規則な構造(高密度で詰まった領域がある)であることは、PVDF樹脂を用いたブレンド物に比較して水透過性が低いことからも分かる。
【0090】
比較例2:
上述の圧縮成形プロセスを使用して、ポリエチレン樹脂(Marlex HMN TR−938、MFI:3.0g/10分@2.16kg)と活性炭(ACTICABONE 2SW)との(20:80)混合物を圧縮成形した。このブレンド物からは固形のシートを成形することができず、粉体の形態で留まっていた。
【0091】
比較例3:
上述のホットプレス法を使用して、ポリエチレン樹脂(Marlex HMN TR−938、MFI:3.0g/10分@2.16kg)と活性炭(ACTICABONE 2SW)との(10:90)混合物を圧縮成形した。このブレンド物からは固形のシートを成形することができず、粉体の形態で留まっていた。
【0092】
【表1】
【0093】
実施例6:
KYNAR PVDF・カーボン・ブロックおよびポリエチレン・カーボン・ブロック・フィルターを、同一のグレードおよびロット番号の活性炭粒子を使用して製造した。次いで、両方のカーボン・ブロックを組み立てて、臭素を25%の濃度で含む水流体を濾過した。KYNAR・カーボン・ブロック・フィルターが、40℃の温度では、十分な濾過をするのに適した性能を保持するであろうということは、視覚的にも予想された。ポリエチレン・カーボン・ブロック・フィルターが、そのような溶液を濾過するための十分な性質を備えているとは予想できず、次いで性能をすべて失うという結果となったが、このことは、臭素が直接ポリエチレンバインダーの上にあるという影響に帰することができる。
【0094】
実施例7:
各種の燃料に対するバインダー物質の適合性を試験するために、KYNAR PVDFとポリエチレンとの間で、物理的性質および透過性をモニターした。60℃、6ヶ月のところで、両方の結合物質について、重量変化および長さ変化を測定した。完全濾過(absolute filtration)のため、さらにはモジュールの設計仕様のためには、高精度を維持する必要がある、カーボン・ブロックを設計する場合には、これらの変数はいずれも、極めて重要である。性能において最大で4%までの変化を有していることが、カットオフポイントと決められている。50容積%のイソ−オクタンと50容積%のトルエンとのブレンド物の中に60℃で完全に浸漬させたKYNAR 740では、2.3%の重量変化および1.8%の長さ変化を示した。42.5容積%のイソ−オクタン、42.5容積%のトルエンおよび15容積%のブレンド物の中に60℃で完全に浸漬させたKYNAR 740では、3.0%の重量変化および3.6%の長さ変化を示した。50容積%のイソ−オクタンと50容積%のトルエンとのブレンド物の中に60℃で完全に浸漬させたポリエチレンでは、10.8%の重量変化および5.3%の長さ変化を示した。42.5容積%のイソ−オクタン、42.5容積%のトルエンおよび15容積%のブレンド物の中に60℃で完全に浸漬させたポリエチレンでは、9.6%の重量変化および5.3%の長さ変化を示した。この試験においては、KYNAR 740のPVDFは優れた成績を示したが、それに対してポリエチレンの耐薬品性は、この用途には適していないことが見いだされた。(この情報をお望みかどうかはわかりませんが、使用したPEは、Exxon Mobil HD7800Pでした。)