特許第6336506号(P6336506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336506
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】リンギング抑制回路
(51)【国際特許分類】
   H04L 25/02 20060101AFI20180528BHJP
   H03K 19/0175 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   H04L25/02 F
   H03K19/0175 290
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-80325(P2016-80325)
(22)【出願日】2016年4月13日
(65)【公開番号】特開2017-63399(P2017-63399A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2017年8月4日
(31)【優先権主張番号】特願2015-186796(P2015-186796)
(32)【優先日】2015年9月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 卓矢
(72)【発明者】
【氏名】磯村 博文
(72)【発明者】
【氏名】岸上 友久
(72)【発明者】
【氏名】森 寛之
(72)【発明者】
【氏名】森 康裕
(72)【発明者】
【氏名】堀井 佑樹
【審査官】 阿部 弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−244220(JP,A)
【文献】 特開平05−091562(JP,A)
【文献】 特開2011−244347(JP,A)
【文献】 特開2009−253498(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 25/02
H03K 5/08
H03K 19/0175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の高電位側信号線,低電位側信号線によりハイ,ローの2値レベルに変化する差動信号を伝送する伝送線路に接続され、前記信号の伝送に伴い発生するリンギングを抑制するリンギング抑制回路において、
前記一対の信号線間に接続される線間スイッチング素子(N4,P4)と、
前記差動信号のレベルがハイからローに変化したことを検出すると、前記線間スイッチング素子をオンさせてその状態を固定し、一定時間を計時した後に前記オン状態を解除する制御部(9)とを備え
前記制御部は、
初期状態でリセットされている第1フリップフロップ(FF2)と、
初期状態でリセットされており、セット状態になると前記第1フリップフロップをリセットするための信号を出力する第2フリップフロップ(FF1)と、
この第2フリップフロップの出力端子と前記第1フリップフロップのリセット端子との間に配置される遅延回路(6)と、
前記差動信号のレベルがローからハイから変化したことを検出すると、前記第1フリップフロップをセットする信号を出力する第1セット信号出力部(4,FET_N7)と、
前記線間スイッチング素子がターンオンしたことを検出すると、前記第2フリップフロップをセットする信号を出力する第2セット信号出力部(3)と、
前記第1フリップフロップがセットされると、前記線間スイッチング素子の導通制御端子をオンレベルにすることを可能にするオン設定部(8)とを備えるリンギング抑制回路。
【請求項2】
前記第2セット信号出力部は、非電位基準側導通端子が抵抗素子(R3)を介して電源に接続され、電位基準側導通端子及び導通制御端子がそれぞれ前記線間スイッチング素子の電位基準側導通端子及び導通制御端子に接続される検出用スイッチング素子(N6,P6)を備え、
前記オン設定部は、電位基準側導通端子が前記線間スイッチング素子の電位基準側導通端子に接続される第1〜第4スイッチング素子(N0〜N3,P0〜P3)と、
電位基準側導通端子が電源に接続され、非基準側導通端子が抵抗素子(R1)を介して、前記第2スイッチング素子の非基準側導通端子及び前記第3スイッチング素子の導通制御端子に接続される第5スイッチング素子(P1,N1)と、
電位基準側導通端子が電源に接続され、非基準側導通端子が抵抗素子(R2)を介して、前記第3スイッチング素子の非基準側導通端子及び前記線間スイッチング素子の導通制御端子に接続される第6スイッチング素子(P2,N2)とを備え、
前記第1スイッチング素子の導通制御端子は、前記線間スイッチング素子の導通制御端子に接続され、
前記第2及び第4スイッチング素子の導通制御端子は、前記第1スイッチング素子の非基準側導通端子に接続されると共に、抵抗素子(R0)を介して前記線間スイッチング素子の非基準側導通端子に接続され、
前記第3スイッチング素子の導通制御端子は、前記第2スイッチング素子の非基準側導通端子に接続され、
前記第1フリップフロップがセットされると、前記第5スイッチング素子はオンして前記第6スイッチング素子はオフするように構成される請求項記載のリンギング抑制回路。
【請求項3】
前記差動信号のレベルがローからハイから変化したことを検出すると、前記制御部による前記変化の検出を一定時間だけマスクする検出マスク部(5)を備える請求項又は記載のリンギング抑制回路。
【請求項4】
前記検出マスク部は、第1セット信号出力部が前記第1フリップフロップに出力するセット信号を遅延させる遅延回路を備える請求項記載のリンギング抑制回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号を伝送する伝送線路に接続されるリンギング抑制回路に関する。
【背景技術】
【0002】
伝送線路を介してデジタル信号を伝送する場合、受信側においては、信号レベルが変化するタイミングで信号エネルギーの一部が反射することで、オーバーシュートやアンダーシュートのような波形の歪み,すなわちリンギングが生じる問題がある。そして、従来、波形歪みを抑制する技術については様々な提案がされている。例えば特許文献1では、図22に示すように、伝送路の電圧レベルがロー,ハイ間で遷移する際に、通信に影響しない一定期間のみインピーダンスを整合させてリンギングを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5498527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車載通信の一種であるCAN(Controller Area Network,登録商標)においては、ローレベル,ハイレベルの差動信号,つまりデータビットをそれぞれレセッシブ,ドミナントと称している。ここで、図23に示すように、リンギング波形が(1)ドミナント→(2)レセッシブ→(3)ドミナント→(4)レセッシブと大きな振幅で変化した場合を想定する。
【0005】
すると、特許文献1の構成では、最初の(1)から(2)への変化に応じてリンギング抑制動作を開始し、一定時間が経過すれば次の(3)で抑制動作を停止する。そして、次の(4)への変化に応じてリンギング抑制動作を再開する。このため、(2)での最初の抑制動作の開始から、(4)以降の停止までの時間が長引くことになる。したがって、抑制動作の実行中に、次のビット;ドミナントが伝送されたとすると、電流が引き込まれて信号波形が歪んでしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、差動信号のレベル変化に応じたリンギング抑制動作を常に一定時間とすることができるリンギング抑制回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のリンギング抑制回路によれば、制御部は、差動信号のレベルがハイからローに変化したことを検出すると、線間スイッチング素子をオンさせてその状態を固定し、一定時間を計時した後に前記オン状態を解除する。このように構成すれば、一旦差動信号のレベル変化に応じて線間スイッチング素子をオンされるとその状態が固定されるので、以降に再度差動信号のレベル変化が生じても影響を受けることなく、線間スイッチング素子はオン状態を一定時間確実に維持する。これにより、リンギング抑制期間が不要に長引くことを防止して信号伝送を安定して行うことが可能になる。
そして、制御部は、初期状態でリセットされている第1フリップフロップと、初期状態でリセットされており、セット状態になると第1フリップフロップをリセットするための信号を出力する第2フリップフロップと、この第2フリップフロップの出力端子と前記第1フリップフロップのリセット端子との間に配置される遅延回路と、差動信号のレベルがローからハイから変化したことを検出すると、第1フリップフロップをセットする信号を出力する第1セット信号出力部と、線間スイッチング素子がターンオンしたことを検出すると、第2フリップフロップをセットする信号を出力する第2セット信号出力部と、第1フリップフロップがセットされると、線間スイッチング素子の導通制御端子をオンレベルにすることを可能にするオン設定部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態であり、リンギング抑制回路の構成を示す図
図2】動作状態の遷移図(その1)
図3】動作状態の遷移図(その2)
図4】動作状態の遷移図(その3)
図5】動作状態の遷移図(その4)
図6】動作タイミングチャート(その1)
図7】動作タイミングチャート(その2)
図8】動作タイミングチャート(その3)
図9】特許文献1の構成による場合の図8の一部に相当する動作タイミングチャート
図10】第2実施形態であり、リンギング抑制回路の構成を示す図
図11】動作タイミングチャート(その1)
図12】動作タイミングチャート(その2)
図13】動作タイミングチャート(その3)
図14】第3実施形態であり、リンギング抑制回路の構成を示す図
図15】第4実施形態であり、リンギング抑制回路の構成を示す図
図16】第5実施形態であり、リンギング抑制回路の構成を示す図
図17】第6実施形態であり、リンギング抑制回路の構成を示す図
図18】線間スイッチング素子のその他の構成を示す図(その1)
図19】線間スイッチング素子のその他の構成を示す図(その2)
図20】線間スイッチング素子のその他の構成を示す図(その3)
図21】線間スイッチング素子のその他の構成を示す図(その4)
図22】特許文献1の構成による場合の図11の一部に相当する動作タイミングチャート
図23図12の一部に相当する動作タイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1に示すように、伝送線路に相当する通信バス1は高電位側信号線1H,低電位側信号線1Lからなり、低電位側信号線1Lには、5つのNチャネルMOSFET_N0〜N4のソースが接続されている。線間スイッチング素子であるFET_N4のドレインは、高電位側信号線1Hに接続されている。FET_N0のドレインは、抵抗素子R0を介して高電位側信号線1Hに接続されていると共に、FET_N1及びN3のゲートに接続されている。FET_N0〜N3は、第1〜第4スイッチング素子に相当する。尚、FETのソースは電位基準側導通端子,ドレインは非基準側導通端子,ゲートは導通制御端子に相当する。
【0011】
電源VCCが供給されている電源線2には、PチャネルMOSFET_P1及びP2のソースが接続されており、FET_P1のドレインは、抵抗素子R1を介してFET_N1のドレイン及びFET_N2のゲートに接続されている。FET_P1及びP2は、第5及び第6スイッチング素子に相当する。FET_P2のドレインは、抵抗素子R2を介してFET_N0のゲート,FET_N2及びN3のドレイン,並びにFET_N4のゲートに接続されている。
【0012】
電源線2と低電位側信号線1Lとの間には、抵抗素子R3及びNチャネルMOSFET_N6の直列回路が接続されており、FET_N6のゲートはFET_N0のゲートに接続されている。また、電源線2とグランドとの間には、抵抗素子R4及びR5の直列回路が接続されており、それらの共通接続点はコンパレータCOMP1の非反転入力端子に接続されている。コンパレータCOMP1の反転入力端子は、FET_N6のドレインに接続されている。FET_N6は検出用スイッチング素子に相当する。
【0013】
コンパレータCOMP1の出力端子は、第2フリップフロップに相当するDフリップフロップFF1のクロック端子Cに接続されている。抵抗素子R3〜R5,FET_N6及びコンパレータCOMP1は,第2セット信号出力部に相当するON確認回路3を構成している。
【0014】
高電位側信号線1H,低電位側信号線1Lとの間には、抵抗素子R6〜R8の直列回路が接続されており、抵抗素子R6及びR7の共通接続点はコンパレータCOMP2の非反転入力端子に接続され、抵抗素子R7及びR8の共通接続点は同反転入力端子に接続されている。コンパレータCOMP2の出力端子は、インバータゲートINV0を介してNチャネルMOSFET_N7のゲートに接続されている。抵抗素子R6〜R7,コンパレータCOMP2及びインバータゲートINV0は、第1セット信号出力部に相当する比較回路4を構成している。また、FET_N7も第1セット信号出力部に相当する。
【0015】
FET_N7のソースはグランドに接続されており、ドレインはバッファBUF1を介して第1フリップフロップに相当するDフリップフロップFF2のクロック端子Cに接続されている。電源線2とグランドとの間には、抵抗素子R10及びコンデンサC1の直列回路が接続されており、それらの共通接続点はFET_N7のドレインに接続されている。抵抗素子R10及びコンデンサC1は、検出マスク部に相当する遅延回路5を構成している。DフリップフロップFF2及びFF1の入力端子Dは、それぞれ抵抗素子R9及びR11を介して電源線2に接続されている。
【0016】
DフリップフロップFF1の出力端子Qは、インバータゲートINV2を介してNチャネルMOSFET_N8のゲートに接続されている。FET_N8のソースはグランドに接続されており、ドレインはバッファBUF2を介してNORゲートNOR2の入力端子の一方に接続されている。電源線2とグランドとの間には、抵抗素子R12及びコンデンサC2の直列回路が接続されており、それらの共通接続点はFET_N8のドレインに接続されている。抵抗素子R12及びコンデンサC2は、遅延回路6を構成している。NORゲートNOR2の入力端子の他方には、ハイアクティブのリセット信号RSTが与えられており、NORゲートNOR2の出力端子はDフリップフロップFF2の負論理のリセット端子RBに接続されている。
【0017】
DフリップフロップFF2の出力端子Qは、FET_P1のゲートに接続されていると共に、インバータゲートINV1を介してFET_P2のゲートに接続されている。更に、DフリップフロップFF2の出力端子Qは、インバータゲートINV3を介してNORゲートNOR1の入力端子の一方に接続されている。NORゲートNOR1の入力端子の他方には、リセット信号RSTが与えられており、NORゲートNOR1の出力端子はDフリップフロップFF1の負論理のリセット端子RBに接続されている。
【0018】
以上において、遅延回路5及び6,DフリップフロップFF1及びFF2並びにそれらの周辺回路はON状態保持回路7を構成している。また、FET_N0〜N5,P1及びP2並びにインバータゲートINV1,抵抗素子R0はオン設定部8を構成している。更に、以上の構成においてFET_N4を除いたものが制御部9を構成しており、FET_N4及び制御部9によりリンギング抑制回路10が構成されている。
【0019】
次に、本実施形態の作用について説明する。尚、以下では本実施形態を前述のCANに適用した場合を想定し、差動信号のローレベルを「レセッシブ」,ハイレベルを「ドミナント」と称す。
【0020】
<初期状態;レセッシブ>
図2に示すように、電源投入時の初期状態で、リセット信号RSTが一旦アクティブになることでDフリップフロップFF1及びFF2は何れもリセットされている。これにより、FET_P1がON,FET_P2がOFFとなり、FET_N2がON,FET_N0,N1,N3,N4及びN6がOFFとなっている。そして、ON確認回路3の出力信号はローレベルになる。尚、図中に示す○はON状態の素子又は通電されている素子を示しており、×はOFF状態の素子又は通電されていない素子を示している。
【0021】
また、FET_N7及びN8はONになるので、DフリップフロップFF2のリセットは解除されているが、インバータゲートINV3の出力信号がハイレベルであるから、DフリップフロップFF1はリセット状態が維持されている。この時、通信バス1が送信ノードによりドライブされていないレセッシブの状態であれば、比較回路4の出力信号はハイレベルになる。したがって、DフリップフロップFF1及びFF2は何れもトリガされず、リセット状態が維持されている。
【0022】
<レセッシブ→ドミナント>
次に、図3に示すように、通信バス1が送信ノードによりドライブされて差動信号がドミナントレベルになると、抵抗素子R6〜R8の直列回路に電流が流れて比較回路4の出力信号がローレベルになる。すると、FET_N7がOFFになるのでコンデンサC1の充電が開始される。その後、RC時定数に応じた時間が経過してコンデンサC1の端子電圧がハイレベルまで上昇すると、DフリップフロップFF2がトリガされて出力端子Qがハイレベルになる。これにより、FET_P1がOFF,FET_P2がONに転じて、FET_N2がOFF,FET_N1及びN3がONになる。また、DフリップフロップFF1のリセットが解除される。
【0023】
すなわち、遅延回路5は、通信バス1がドミナントレベルに変化した際に、DフリップフロップFF1によるその変化の検知を、RC時定数に応じた時間だけマスクする作用を成している。上記の時間は、図6に示す「ドミナントマスク時間」に対応する。
【0024】
<ドミナント→レセッシブ(抑制動作開始)>
次に、図4に示すように、送信ノードが通信バス1のドライブを停止して差動信号がレセッシブレベルに戻ると、FET_N1及びN3のゲートがローレベルになり、これらがターンOFFする。この時、FET_P2がONしているのでFET_N1,N4及びN6のゲートが抵抗素子R2を介してハイレベルになり、これらがターンONする。すなわち、FET_N4がターンONすることで通信バス1のインピーダンスが低下して、リンギング抑制動作が開始される。またこの時、ON確認回路3及び比較回路4の出力信号が何れもハイレベルになる。これにより、DフリップフロップFF1がトリガされてFET_N8がターンOFFしてコンデンサC2の充電が開始される。
【0025】
<レセッシブ(抑制動作終了)>
その後、RC時定数に応じた時間が経過してコンデンサC2の端子電圧がハイレベルまで上昇すると、NORゲートNOR2を介してDフリップフロップFF2がリセットされる。すると、図5に示すように、出力端子Qがローレベルに転じてFET_P1がON,FET_P2がOFFとなり、図2に示す初期状態と同じ状態に戻り、FET_N4がターンOFFしてリンギング抑制動作が停止される。すなわち、リンギング抑制動作は、図4に示すように差動信号がドミナントからレセッシブに変化した時点から開始されると、その時点から遅延回路6のRC時定数に応じて付与される遅延時間が経過した時点で終了する(図6参照)。
【0026】
図7に示すように、リンギング抑制動作の実行中にドミナントレベルのノイズが発生すると、そのノイズ発生期間がドミナントマスク期間よりも短かければ、通信バス1のレベル変化はDフリップフロップFF2により検出されない。したがって、リンギング抑制動作は図6に示すケースと同様に実行される。
【0027】
また、図8に示すように、ドミナントの状態でレセッシブレベルのノイズが発生した場合も同様であり、そのノイズ発生期間がドミナントマスク期間よりも短かければ、通信バス1のレベル変化はDフリップフロップFF2により検出されない。したがって、特許文献1の構成に対応する図9に示すように、余分なリンギング抑制動作が開始されることはない。
【0028】
以上のように本実施形態によれば、制御部9は、伝送線路1において伝送される差動信号がドミナントからレセッシブに変化したことを検出すると、FET_N4をオンさせてその状態を固定し、遅延回路6により一定時間を計時した後にそのオン状態を解除する。このように構成すれば、一旦差動信号のレベル変化に応じてFET_N4をオンさせるとその状態が固定されるので、以降に再度差動信号のレベル変化が生じても影響を受けることなく、FET_N4はオン状態を一定時間確実に維持する。これにより、リンギング抑制期間が不要に長引くことを防止して信号伝送を安定して行うことが可能になる。
【0029】
そして、制御部9を、DフリップフロップFF2と、セット状態になるとDフリップフロップFF2をリセットするための信号を出力するDフリップフロップFF1と、DフリップフロップFF1の出力端子QとDフリップフロップFF2のリセット端子RBとの間に配置される遅延回路6と、差動信号がレセッシブからドミナントから変化したことを検出するとDフリップフロップFF2をセットする信号を出力する比較回路4及びFET_N7と、FET_N4がターンONしたことを検出するとDフリップフロップFF1をセットする信号を出力するON確認回路3と、DフリップフロップFF2がセットされるとFET_N4のゲートをONレベルにすることを可能にするオン設定部8とで構成した。
【0030】
これにより、DフリップフロップFF2がセットされた後、差動信号がドミナントからレセッシブに変化するとFET_N4がターンONしてリンギング抑制動作が開始される。この時、FET_N4のON状態は、DフリップフロップFF2がセットされることで固定される。そして、DフリップフロップFF2がリセットされると、FET_N4のON状態が解除されてリンギング抑制動作が停止する。したがって、差動信号がドミナントからレセッシブに変化した時点からDフリップフロップFF2がリセットされるまでの間がリンギング抑制期間となる。
【0031】
DフリップフロップFF2は、比較回路4の出力信号により一旦セットされると、遅延時間5における遅延時間が経過した後にリセットされるので、リンギング抑制期間に差動信号のレベルが変化した場合でも抑制動作がその影響を受けることが無く、抑制期間を一定に維持できる。
【0032】
また、ON確認回路3は、ドレインが抵抗素子R3を介して電源線2に接続され、ソース及びゲートがそれぞれFET_N4のソース及びゲートに接続されるFET_N6を備える。オン設定部8は、ソースが低電位側信号線1Lに接続されるFET_N0〜N3と、ソースが電源線2に接続され、ドレインが抵抗素子R1を介してFET_N1のドレイン及びFET_N2のゲートに接続されるFET_P1と、ソースが電源線2に接続され、ドレインが抵抗素子R2を介してFET_N3のドレイン及びFET_N1のゲートに接続されるFET_P2とを備える。
【0033】
そして、FET_N0のゲートをFET_N4のゲートに接続し、FET_N1及びN3のゲートを、FET_N0のドレインに接続すると共に抵抗素子R0を介して高電位側信号線1Hに接続し、FET_N2のゲートをFET_N1のドレインに接続し、DフリップフロップFF2がセットされると、FET_P1はONしてFET_P2はOFFするように構成した。これにより、オン設定部8は、DフリップフロップFF2がセットされるとFET_N4のゲートをONレベルにすることを可能にし、DフリップフロップFF2がリセットされるとFET_N4のゲートをOFFレベルにできる。
【0034】
また、遅延回路5は、差動信号のレベルがレセッシブからドミナントに変化したことを検出すると、比較回路4がFET_N7を介して出力するDフリップフロップFF2のセット信号を遅延させることで、制御部8による前記変化の検出を一定時間だけマスクする。このように構成すれば、差動信号がドミナントレベルでありリンギング抑制動作が未開始の状態でレセッシブレベルのノイズが重畳されたとしても、制御部8は、その時点で抑制動作が開始することがなくなる。これにより、正常に伝送されたドミナントの信号波形がノイズの影響を受けて歪んでしまうことを防止できる。
【0035】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図10に示すように、第2実施形態のリンギング抑制回路11は、ON状態保持回路7よりFET_N7及び遅延回路5を削除した、ON状態保持回路12を備えたものである。この場合、図11に示すように、通常のリンギング抑制動作は第1実施形態と同様に行われる。また、図12に示すように、レセッシブの状態でドミナントレベルのノイズが発生した場合も、第1実施形態と同様にリンギング抑制動作が行われる。
【0036】
但し、図13に示すように、ドミナントの状態でレセッシブレベルのノイズが発生すると、そのレベル変化に応じてリンギング抑制動作が開始されるため、ドミナントの信号波形に歪が生じる。
【0037】
(第3,第4実施形態)
図14に示すように、第3実施形態のリンギング抑制回路13は、FET_N0〜N4をPチャネルMOSFET_P0〜P4に置き換えた構成である。FET_P0〜P4のソースは高電位側信号線1Hに接続され、線間スイッチング素子であるFET_P4のドレインは低電位側信号線1Lに接続されている。FET_P0及びP4のゲートは、FET_P2及びP3のドレインに接続されていると共に、比較回路3Pを構成するPチャネルMOSFET_P6のゲートに接続されている。
【0038】
FET_P0のドレインは、抵抗素子R0を介して低電位側信号線1Lに接続されていると共に、FET_P1及びP3のゲートに接続されている。第1実施形態のオン設定部8を構成していたFET_P1及びP2は、NチャネルMOSFET_N1及びN2に置き換えられてオン設定部8Pを構成している。FET_N1及びN2のソースはグランドに接続されている。FET_N1のドレインは、抵抗素子R1を介してFET_P1のドレイン及びFET_P2のゲートに接続され、FET_N2のドレインは、抵抗素子R2を介してFET_P4のゲートに接続されている。
【0039】
また、これに伴い比較回路3は上述のように比較回路3Pとなっており、信号線1H,グランド間にはFET_P6及び抵抗素子R3の直列回路が接続され、両者の共通接続点がコンパレータCOMP1の反転入力端子に接続されている。抵抗素子R4及びR5の共通接続点は、コンパレータCOMP1の非反転入力端子に接続されている。また、コンパレータCOMP1の出力端子は、インバータゲートINV4を介してDフリップフロップFF1のクロック端子Cに接続されている。以上のように構成される第3実施形態による場合も、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0040】
また、図15に示す第4実施形態のリンギング抑制回路14は、第2実施形態のリンギング抑制回路11を、第3実施形態のようにFET_N0〜N4をPチャネルMOSFET_P0〜P4に置き換えた構成であり、ON状態保持回路7よりFET_N7及び遅延回路5を削除した、ON状態保持回路12Pを備えたものである。この場合、比較回路4の出力端子と、DフリップフロップFF2のクロック端子Cとの間にインバータゲートINV4を挿入しているが、比較回路4のインバータゲートINV0を削除すればインバータゲートINV4も不要となる。尚、第3実施形態のインバータゲートINV4は、インバータゲートINV5となっている。以上のように構成される第4実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0041】
(第5実施形態)
図16に示す第5実施形態のリンギング抑制回路15は、第1実施形態と第4実施形態との組み合わせであり、第1実施形態のオン設定部8をオン設定部8Nとして、オン設定部8Pを追加したものである。符号の重複を避けるため、第4実施形態におけるFET_N1,N2はFET_N11,N12に、抵抗素子R0〜R3はR20〜R22,R24としている。
【0042】
コンパレータCOMP1を中心に構成されているON確認回路3Nでは、抵抗素子R5とグランドとの間に抵抗素子R23が挿入されている。抵抗素子R5及びR23の共通接続点は、ON確認回路3Pを構成するコンパレータCOMP3の非反転入力端子に接続されている。コンパレータCOMP1の出力端子は、ORゲートOR1の入力端子の一方に接続されており、コンパレータCOMP3の出力端子は、インバータゲートINV4を介してORゲートOR1の入力端子の他方に接続されている。そして、ORゲートOR1の出力端子がDフリップフロップFF1のクロック端子Cに接続されている。以上のように構成される第5実施形態によれば、第1及び第4実施形態と同様の効果が得られる。
【0043】
(第6実施形態)
図17に示す第6実施形態のリンギング抑制回路16は、第2実施形態の構成に第5実施形態の構成を適用し、オン設定部8N及び8Pを備えたものである。以上のように構成される第6実施形態によれば、第2及び第5実施形態と同様の効果が得られる。
【0044】
(その他の実施形態)
線間スイッチング素子であるFET_N4又はP4を、図18図21に示す素子で構成しても良い。図18は、信号線1HとFET_N4のドレインとの間に抵抗素子R13を挿入し、FET_N4のソースと信号線1Lとの間に抵抗素子R14を挿入した構成であり、図19は、図18のFET_N4をFET_P4に置き換えたものである。
図20は、FET_N4及びP4を並列に接続した所謂アナログスイッチを用いた構成であり、図21は、図18と同様に、信号線1H,1Lと前記アナログスイッチとの間に抵抗素子R13,R14を挿入した構成である。
【0045】
本発明は上記した、又は図面に記載した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のような変形又は拡張が可能である。
特許文献1に開示されている各実施形態と組み合わせて実施しても良い。
遅延回路5及び6は、抵抗素子及びコンデンサで構成するものに限らず、例えば定電流源との組み合わせで構成しても良い。
抵抗素子R1,R2,R21,R22を、定電流源に置き換えても良い。
【符号の説明】
【0046】
1通信バス、1H 高電位側信号線、1L 低電位側信号線、2 電源線、3 ON確認回路、4 比較回路、5,6 遅延回路、7 ON状態保持回路、8 オン設定部 9 制御部、10 リンギング抑制回路、FF1,FF2 Dフリップフロップ、N0〜N6 NチャネルMOSFET。
図1
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