(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
50〜56.27重量%の1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)および43.73〜50重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)からなる共沸混合物様組成物を含んでなる冷媒を含む熱伝達システムであって、−0.2〜2.6℃の蒸発温度を有するシステム。
前記共沸混合物様組成物が55〜56.27重量%の1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)および43.73〜45重量%の1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)からなる、請求項1に記載のシステム。
前記潤滑剤が、鉱油、アルキルベンゼン(AB)、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリビニルエーテル(PVE)、合成ナフタレン、フルオロ潤滑剤またはこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項4に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0008】
したがって、本発明は、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)および1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a)を含む共沸混合物様組成物、ならびに冷媒組成物、冷却システム、発泡剤組成物およびエアゾール噴射剤における使用を含む、前記共沸混合物様組成物の使用を提供する。
【0009】
本明細書で使用される用語「共沸混合物様」とは、厳密に共沸である組成物および共沸混合物の様に挙動する組成物の両者を広義で含むことを意図している。基本原理より、流体の熱力学的状態は、圧力、温度、液体組成および蒸気組成によって定義される。共沸混合物は2つ以上の成分の系であり、そこでは、定められた圧力と温度において、液体組成と蒸気組成が等しい。このことは、実際には共沸混合物の構成成分は定沸点であり、相変化の間に分離することができないことを意味する。本発明の共沸混合物様組成物には、新たな共沸混合物様の系を形成しない追加の構成成分、または第1の蒸留留分(最初の蒸留留分)中に存在しない追加の構成成分を含めることができる。第1の蒸留留分(最初の蒸留留分)とは、全還流条件の下で蒸留塔が定常運転状態を表示した後に取り出される、第1の留分(初留)である。構成成分を追加することが新たな共沸混合物様の系を形成し、本発明の範囲を超えるかどうかを決定するための1つの方法は、非共沸混合物をその別々の構成成分に分離すると期待される条件の下で、この構成成分を有する組成物の試料を蒸留することである。追加構成成分を含有する混合物が非共沸混合物様であるならば、追加構成成分は共沸混合物様の構成成分から分留される。この混合物が共沸混合物様であるならば、定沸点であるまたは単一の物質のように挙動する、この混合物の構成成分の全てを含有する、第1留分(初留)のいくらかの限定された量が得られる。このことから判断すると、共沸混合物様組成物の別の特徴は、同じ成分を様々な割合で含有する、共沸混合物様であるまたは定沸点である、ある範囲の組成物が存在することである。そのような全ての組成物を、「共沸混合物様」および「定沸点」という用語に含めることを意図する。例として、異なる圧力において、所与の共沸混合物の組成は、組成物の沸点がそうなるように、少なくとも若干変動することがよく知られている。したがって、AとBの共沸混合物は、AとBとが固有の種類であるという関係を示すが、温度および/または圧力に依存する様々な組成を有する。上記の説明からわかるように、共沸混合物様組成物に関しては、同じ構成成分を種々の割合で含有する、共沸混合物様である、ある範囲の組成物が存在する。そのような全ての組成物は、本明細書で用いられる、共沸混合物様という用語に含まれることを意図している。当技術分野では、共沸混合物の形成を予想することは不可能であることが十分認識されている(例えば、両者とも参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,648,017号明細書(カラム3、64〜65行)および米国特許第5,182,040号明細書(カラム3、62〜63行)を参照されたい)。予想に反して
、HFO−1234yfとHFC−134aが共沸混合物様組成物を形成することが見出されたものである。
【0010】
ある特定の好ましい実施形態に従って、本発明の共沸混合物様組成物は、HFO−1234yfおよびHFC−134aの有効量を含む、および好ましくは本質的にこれらからなる。本明細書で使用される用語「有効量」とは、他の成分と組み合わせると本発明の共沸混合物様組成物の形成をもたらす、各々の成分の量を示す。本発明の共沸混合物様組成物は、HFO−1234yfおよびHFC−134aの有効量を混合することにより、製造することができる。2つ以上の成分を混合して組成物を形成する、当技術分野で既知の多種多様の方法の任意のものを、本発明の方法に適合させて使用し、共沸混合物様組成物を製造することができる。例えば、バッチ式もしくは連続式反応および/またはプロセスの一環として、またはその様な2つ以上の工程の組合せを経由して、HFO−1234yfとHFC−134aを、手動および/または機械により混合し、ブレンドし、または別の方法では接触させることができる。当業者は、本明細書における開示に照らして、必要以上の実験を行わなくとも、本発明による共沸混合物様組成物を容易に調製することができる。
【0011】
HFO−1234yfおよびHFC−134aは、共沸混合物様組成物を製造するために有効な量で存在する。一実施形態では、HFO−1234yfは、共沸混合物様組成物中に、約40から100重量%未満、好ましくは、約50から90重量%未満、およびより好ましくは、約55から約80重量%の量で存在する。一実施形態では、HFC−134aは、共沸混合物様組成物中に、ゼロを超えて約60重量%まで、好ましくは、約10から約50重量%、およびより好ましくは、約20から約45重量%の量で存在する。通常、本発明の共沸混合物様組成物は、約98.6×10
−3MPa(14.3psia)の圧力において、約−30.0℃から約−29.0℃の沸点を有している。
【0012】
本組成物は、広範囲の用途に有用性がある。例えば、本発明の一実施形態は、発泡剤として、エアゾール組成物などの噴霧性組成物の一部として、洗浄組成物として、および冷媒組成物としての形態に関するものであり、これらは全て本発明の共沸混合物様組成物を含む。
【0013】
本発明の一実施形態は、1つまたは複数の共沸混合物様組成物を含む発泡剤に関する。本発明の一実施形態は、熱硬化性フォーム、好ましくはポリウレタンフォームおよびポリイソシアヌレートフォームの形成方法に関する。該方法は、一般に、本発明の発泡剤組成物を提供すること、発泡剤組成物を発泡性組成物に(直接または間接的に)加えること、および当技術分野でよく知られたフォームまたは気泡構造(cellular structure)を形成するための有効な条件の下で、発泡性組成物を反応させることを含む。これらのフォームは、連続気泡(オープンセル;open cell)または独立気泡(クローズドセル;closed cell)であり得る。参照により本明細書に組み込まれる、“Polyurethanes Chemistry and Technology(ポリウレタンの化学と技術)”、IおよびII巻、SaundersおよびFrisch、1962年、John Wiley and Sons、ニューヨーク、ニューヨーク州に記載されている方法などの当技術分野でよく知られた方法の任意のものを、本発明のフォームの実施形態に従って使用する、または使用するために適合させてもよい。概して、そのような好ましい方法には、イソシアネート、ポリオールまたはポリオールの混合物と、本組成物の1つまたは複数を含む発泡剤もしくは発泡剤の混合物と、触媒、界面活性剤などの他の材料と、任意選択で難燃剤、着色剤または他の添加剤とを混合することによって、ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームを調製することが含まれる。
【0014】
事前にブレンドした配合物中に、ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームのための成分を提供することは、多数の用途において好都合である。最も典型的には、フォーム配合物を2つの成分として事前にブレンドする。第1の成分は、イソシアネート、ならびに任意選択である特定の界面活性剤および発泡剤を含み、一般に「A」成分と呼ばれる。第2の成分は、ポリオールまたはポリオール混合物、シリコーン界面活性剤を含む界面活性剤、アミン触媒を含む触媒、発泡剤、難燃剤および他のイソシアネート反応成分を含み、一般に「B」成分と呼ばれる。発泡剤は、本発明の共沸混合物様組成物および任意選択で炭化水素、ハロゲン化炭化水素、CO
2発生材料またはこれらの組合せを含む。好ましくは、ハロゲン化炭化水素は、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボンまたはこれらの組合せを含む。発泡剤成分は、通常、ポリオールプレミックス組成物中に、ポリオールプレミックス組成物の重量に基づいて、約1重量%から約30重量%の量で存在する。ポリオール成分は、ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームの調製において、イソシアネートと既知の方法で反応する任意のポリオールとすることができる。有用なポリオールは、ポリオールを含有する1つまたは複数のスクロース;フェノール、ポリオールを含有するフェノールホルムアルデヒド;ポリオールを含有するグルコース;ポリオールを含有するソルビトール;ポリオールを含有するメチルグルコシド;芳香族ポリエステルポリオール;グリセロール;エチレングリコール;ジエチレングリコール;プロピレングリコール;ポリエーテルポリオールのビニルポリマーとのグラフトコポリマー;ポリエーテルポリオールのポリウレアとのコポリマー;またはこれらの組合せを含む。ポリオール成分は、通常、ポリオールプレミックス組成物中に、ポリオールプレミックス組成物の重量に基づいて、約60重量%から約95重量%の量で存在する。ポリオールプレミックス組成物は、次に、シリコーン界面活性剤および任意選択で追加の非シリコーン界面活性剤を含む界面活性剤成分を含有する。界面活性剤は、通常、ポリオールプレミックス組成物中に、ポリオールプレミックス組成物の重量に基づいて、約0.5重量%から約5.0重量%の量で存在する。ポリオールプレミックス組成物は、次に、触媒を含有し、好ましくはアミンである触媒を含有する。第3級アミンが好ましい。好ましいアミンとしては、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N,N’,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、1,4−ジアザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、およびトリエチルアミンが挙げられる。触媒は、通常、ポリオールプレミックス組成物中に、ポリオールプレミックス組成物の重量に基づいて、約0.1重量%から約3.5重量%の量で存在する。
【0015】
ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームを形成するのに適した発泡性組成物は、有機ポリイソシアネートと上記のポリオールプレミックス組成物を反応させることにより形成することができる。脂肪族および芳香族ポリイソシアネートを含む任意の有機ポリイソシアネートを、ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームの合成で使用することができる。適切な有機ポリイソシアネートとしては、ポリウレタン化学の分野でよく知られた脂肪族、環状脂肪族、芳香脂肪族(araliphatic)、芳香族および複素環式イソシアネートが挙げられる。これらは、例えば、米国特許第4,868,224号明細書、第3,401,190号明細書、第3,454,606号明細書、第3,277,138号明細書、第3,492,330号明細書、第3,001,973号明細書、第3,394,164号明細書、第3,124,605号明細書および第3,201,372号明細書に記載されている。種類として好ましいものは、芳香族ポリイソシアネートである。代表的な有機ポリイソシアネートは、式:
R(NCO)z
に対応するものであり、
式中、Rは脂肪族か、アラルキルか、芳香族か、これらの組合せかのいずれかである、多価の有機基であり、zはRの原子価に対応する整数であり、少なくとも2である。
【0016】
したがって、ポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームは、A側の成分およびB側の成分を、少量の調製では手で混ぜ合わせるか、好ましくは機械混合の技法で1つにすることにより容易に調製されて、ブロック、スラブ、ラミネート、現場注入型パネル(pour−in−place panels)および他の製品、吹付けフォーム(spray applied foams)、フロス(froth)などを形成する。任意選択で耐火剤、着色剤、発泡助剤などの他の成分およびさらに他のポリオールを、第3の流れとしてミックスヘッド(mix head)または反応域に加えることができる。しかしながら、最も好ましいのは、これらを全て上記の一方のB成分中に組み込むことである。従来の難燃剤もまた、好ましくは、反応物の重量に基づいて、約20%以下の量で組み込むことができる。
【0017】
本発明の方法およびシステムには、また、本発明による発泡剤を含有する一成分のフォーム、好ましくはポリウレタンフォームを形成することも含まれる。ある特定の好ましい実施形態では、発泡剤の一部は、好ましくは容器内の圧力で液体であるフォーム形成剤に溶解されてフォーム形成剤中に含まれ、発泡剤の第2の部分は、分離した気相として存在する。そのようなシステム(系)では、含有/溶解された発泡剤の大半は、フォームの膨張を引き起こし、分離した気相は、フォーム形成剤に推進力を付与するように働く。そのような一成分のシステムは、典型的に、そして好ましくは、エアゾール式の缶などの容器に入れられ、こうして、本発明の発泡剤が、フォームの膨張および/または容器からフォーム/発泡性材料を輸送するエネルギーを、好ましくはその両方を提供する。ある特定の実施形態では、そのようなシステムおよび方法には、十分に配合されたシステム(好ましくは、イソシアネート/ポリオールシステム)を容器に充填すること、および本発明による気体発泡剤を、容器、好ましくはエアゾール式の缶に組み込むことが含まれる。
【0018】
以前に記載した成分に加えて、染料、充填剤、顔料などの他の成分をフォームの調製に含めることができる。分散剤および気泡安定剤を本発明のブレンドに組み込むことができる。ここで使用できる従来からの充填剤としては、例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ガラス繊維、カーボンブラックおよびシリカが挙げられる。使用する場合、充填剤は、通常、ポリオール100重量部当たり約5重量部から100重量部の範囲の量で存在する。本明細書で使用できる顔料は、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンチモン、クロムグリーン、クロムイエロー、アイアンブルー、シエナ、モリブデン赤などの従来からの任意の顔料、およびパラレッド、ベンジジンイエロー、トルイジンレッド、トナーおよびフタロシアニンなどの任意の有機顔料とすることができる。製造されるポリウレタンフォームまたはポリイソシアヌレートフォームの密度は、約0.008g/cm
3(約0.5lb/ft
3)から約0.96g/cm
3(約60lb/ft
3)、好ましくは約0.016g/cm
3(約1.0lb/ft
3)から0.32g/cm
3(20.0lb/ft
3)、最も好ましくは約0.024g/cm
3(約1.5lb/ft
3)から0.096g/cm
3(6.0lb/ft
3)のように様々であり得る。得られる密度は、Aおよび/またはB成分に存在する水または他の共発泡剤などの発泡助剤の量、またはフォームが調製される時点で別個に加えた量を加味して、本発明で開示した発泡剤または発泡剤混合物がどれくらいあるかの関数である。これらのフォームは、硬質、軟質または半硬質とすることができ、独立気泡構造、連続気泡構造または独立気泡と連続気泡の組合せであり得る。これらのフォームは、断熱、緩衝材、浮揚、包装、接着剤、空隙充填、工芸および装飾、ならびに衝撃吸収を含むよく知られた様々な用途に使用されるが、これらに限定されない。
【0019】
本発明の組成物を使用して熱可塑性フォームを製造することも、また可能である。例えば、従来のポリスチレンおよびポリエチレン配合物を、組成物と従来の様式で組み合わせて、硬質フォームを製造できる。熱可塑性フォームの成分の例としては、例えば、ポリス
チレンなどのポリオレフィン類が挙げられる。熱可塑性樹脂の他の例としては、ポリエチレン、エチレンコポリマー、ポリプロピレンおよびポリエチレンテレフタレートが挙げられる。ある特定の実施形態では、熱可塑性発泡性組成物は、押出可能な組成物である。また、熱可塑性発泡性組成物には、核剤、難燃性または耐火性材料、気泡調節剤(cell
modifiers)、気泡圧力調節剤(cell pressure modifiers)などの補助剤を含めてもよいことが、一般に認識されている。
【0020】
熱可塑性フォームに関して、好ましい方法には、一般に、本発明による発泡剤を熱可塑性材料に導入すること、次いで、この熱可塑性材料を発泡を引き起こすのに有効な条件におくことが含まれる。例えば、発泡剤を熱可塑性材料に導入する工程には、熱可塑性ポリマーを収容するスクリュー押出機に発泡剤を導入することを含めてもよく、発泡を引き起こす工程には、熱可塑性材料にかかる圧力を下げ、それにより発泡剤の膨張が起こり、材料の発泡に寄与することを含めてもよい。適切な熱可塑性ポリマーとしては、非限定的に、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびこれらの組合せが挙げられる。本発明の発泡剤が形成されるおよび/または本発明の発泡剤が発泡性組成物に添加される、その順序または様式は、本発明の熱硬化性または熱可塑性フォームの実施可能性に、概して影響を及ぼさないことが、特に本明細書における開示を考えると、当業者には一般に理解されるであろう。ある特定の実施形態では、本発明の組成物が、発泡剤として臨界超過状態または臨界超過に近い状態にある時に利用することが望ましい場合があることも、また意図される。
【0021】
本発明の共沸混合物様組成物は、また、冷媒組成物としても使用され得る。本発明の冷媒組成物は、空調、冷却、ヒートポンプシステムなどを含む、多種多様の冷却システムの任意のものに使用することができる。ある特定の好ましい実施形態では、本発明の組成物は、例えば、HFC−134aなどのHFC冷媒を用いて使用するために当初設計された冷却システムにおいて使用される。本発明の好ましい組成物は、不燃性または低燃焼性、および従来のHFC冷媒と同様に低いかまたはそれより低いGWPを含む、HFC−134aおよび他のHFC冷媒の多くの望ましい特徴を示す傾向がある。しかも、比較的一定な沸騰性質により、本発明の組成物は、冷媒として使用する従来の特定のHFC類よりも、多くの用途においてさらに望ましいものになる。
【0022】
ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、クロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボンまたはこれらの組合せ、およびこれらと共に通常使用される、鉱油、アルキルベンゼン(AB)、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリビニルエーテル(PVE)、合成ナフタレン、フルオロ潤滑剤またはこれらの組合せなどの潤滑剤を含む冷媒を含有する、冷却システムを改良するのに使用することができる。本発明の方法には、冷却装置から冷媒の少なくとも一部を除去または漏出し、潤滑剤を含む残留物を残すこと、および前記残留物に本発明の共沸混合物様組成物を加えることが含まれる。好ましい本発明の冷媒組成物は、CFC、HCFCおよび/またはHFC冷媒と共に通常使用される、鉱油、シリコーン油などの潤滑剤を含有する冷却システム内で使用することができ、またはそのような冷媒と一緒に伝統的に使用される他の潤滑剤と共に使用することができる。好ましくは、本発明の方法には、交換される冷媒および潤滑剤を含有する冷媒システムを再充填することが含まれ、この方法には、(a)冷却システム内の潤滑剤の実質的な部分を保持しながら、交換される冷媒を前記冷却システムから除去する工程、および(b)本発明の組成物を前記システムに導入する工程が含まれる。本明細書で用いる用語「実質的な部分」とは、概して、冷媒の除去以前に冷却システム内に含まれた潤滑剤の量の少なくとも約50重量%である潤滑剤の量を示す。好ましくは、本発明による冷却システム内の潤滑剤の実質的な部分は、冷却システム内に当初含まれていた潤滑剤の少なくとも約60重量%の量、およびより好ましくは少なくとも約7
0重量%の量である。本明細書で用いる用語「冷却システム」とは、一般的に、冷媒を用いて、ある空間に冷却を提供しそれにより別の空間を加熱する、任意のシステムもしくは装置、またはそのようなシステムもしくは装置の任意の一部もしくは部分を示す。そのような冷却システムとしては、例えば、自動車の空調を含む空調装置、電気冷蔵庫、チラー(冷却装置)、輸送冷却システム、商業冷却システムなどが挙げられる。冷却システムにはまた、ヒートポンプシステムを含めることができ、ここでは、所望される利益として、冷媒流を凝縮することにより供給される加熱があり、冷却部又はエバポレーターは、周囲から、またはそのような加熱に使用する他のエネルギー流から熱を取り出すことになる。
【0023】
広範囲の既知の方法のうち任意のものを、冷却システム内に含まれている大部分ではない潤滑剤を除去しながら、冷却システムから交換される冷媒を除去するために用いることができる。例えば、冷媒は、鉱油、アルキルベンゼン(AB)、ポリアルファオレフィン(PAO)、ポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PAG)、フルオロ潤滑剤などの伝統的な炭化水素ベースの潤滑剤と比べてかなり揮発性である(冷媒の沸点は一般に10℃未満であり、一方、潤滑剤の沸点は一般に200℃を超える)。このため、潤滑剤が炭化水素ベースの潤滑剤である実施形態では、液状の潤滑剤を含む冷却システムから、ガス状の冷媒をポンプで汲み上げることによって、容易に除去工程を行うことができる。そのような除去は、オハイオ州のRobinairにより製作された回収システムなどの冷媒回収システムの使用を含む、当技術分野で既知の多数の方法の任意のものにおいて達成できる。あるいは、冷却した排出(真空)冷媒容器を、冷却システムの低圧側に装着することができ、その結果、ガス状の冷媒が、排出容器内に引き込まれ、除去される。さらに、コンプレッサー(圧縮機)を冷却システムに装着して、冷媒をシステムから排出容器(真空容器)へとポンプで汲み上げてもよい。上記の開示に照らして、当業者は、潤滑剤の大部分を除去することなく冷却システムの冷媒充填物を容易に除去し、開示した本発明によるHFC−134aとHFO−1234yfの共沸混合物様ブレンドを、充填することができる。
【0024】
冷媒を冷却システムから除去し得る別の方法は、冷媒の漏出、ホースからの浸透、またはシステムの故障の場合であり、このような場合は、操作者が冷媒除去の積極的な役割を務めず、むしろ、システム封止材の性質、構造材料または操作条件が、冷媒の除去を引き起こす。この場合、操作者が冷媒システムを「継ぎ足して一杯(満タン)にする(tops off)」なら、この一杯になった冷媒充填物はまだ除去されていないことになる。自動車の空調システムにおいて、ユーザーが性能低下を感じて、サービス工場またはホームユーザー自身が、当初HFC−134a用に設計されたシステム内にHFO−1234yfを注ぐか、当初HFO−1234yf用に設計されたシステム内にHFC−134aを注ぐかのどちらかを行い、システムを再充填することは、よく行われることである。これは、充填の一部を構成するが、本発明のHFC−134aとHFO−1234yfの共沸混合物様のブレンドを可能にすると考えられる。本発明の冷媒組成物を冷却システムに導入する、広範囲の方法の任意のものを本発明で使用できる。例えば、1つの方法には、冷媒用容器を冷却システムの低圧側に装着し、冷却システムのコンプレッサーのスイッチを入れて、冷媒をシステム内に注ぐことが含まれる。そのような実施形態では、システム内に入る冷媒組成物の量を監視できるように、冷媒用容器を秤の上に設置してもよい。冷媒組成物の所望の量がシステム内に導入されたなら、充填を止める。あるいは、当業者に既知の広範囲の充填工具が市販されている。したがって、上記の開示に照らして、当業者は過度の実験を行わなくとも、本発明に従って本発明の冷媒組成物を冷却システム内に容易に導入することができる。
【0025】
特定の他の実施形態に従って、本発明により、本発明の冷媒を含む冷却システム、ならびに本発明の組成物を凝縮するおよび/または蒸発させることにより、加熱または冷却を生じさせる方法が提供される。ある特定の好ましい実施形態では、本発明に従って物品を
冷却する方法には、本発明の共沸混合物様組成物を含む冷媒組成物を凝縮すること、次いで、冷却される物品の近傍にある前記冷媒組成物を蒸発させることが含まれる。物品を加熱するある特定の好ましい方法には、加熱される物品の近傍にある本発明の共沸混合物様組成物を含む冷媒組成物を凝縮すること、次いで、前記冷媒組成物を蒸発させることが含まれる。本明細書における開示に照らして、当業者は過度の実験を行わなくとも、本発明に従って物品を容易に加熱または冷却することができる。
【0026】
別の実施形態では、本発明の共沸混合物様組成物は、単独か既知の噴射剤と組み合わせるかのどちらかで、噴霧性組成物において噴射剤として使用され得る。噴射剤組成物は、本発明の共沸混合物様組成物を含み、より好ましくは、本質的に本発明の共沸混合物様組成物から成り、さらにより好ましくは、本発明の共沸混合物様組成物からなる。不活性成分と一緒に噴霧される活性成分、溶媒および他の材料が、噴霧性混合物中にまた存在してもよい。好ましくは、噴霧性組成物は、エアゾールである。噴霧される適切な活性材料としては、消臭剤、香水およびヘアスプレーなどの化粧品材料;洗剤、ワックス、フラックス除去剤、研磨材、室内芳香剤、殺虫剤、料理用の油、ならびに抗ぜんそくおよび抗口臭薬などの医薬材料を含む、薬剤もしくは他の生物活性材料、またはこれらの任意のものの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。本共沸混合物様組成物の他の用途としては、溶媒、清浄剤(洗浄剤)その他としての使用が挙げられる。当業者は、過度の実験を行わなくとも、本組成物を、そのような用途における使用に本組成物を容易に適合させることができる。
【実施例】
【0027】
以下の非限定的実施例は、本発明を説明するのに役に立つ。
【0028】
実施例1
上部に凝縮器を有する真空ジャケット付きチューブから成り、さらに水晶温度計を備えた沸点測定装置を使用する。約17.41gのHFO−1234yfを沸点測定装置に充填し、次に、HFC−134aを、計量した増分で少しずつ加える。HFC−134aをHFO−1234yfに加えた時、温度低下が観察され、このことは極小の沸点を有する2成分の共沸混合物が形成されることを示している。約ゼロを超えて、約60重量%までのHFC−134aでは、組成物の沸点は、HFO−1234yfの沸点より下か、またはHFO−1234yfの沸点の近辺にとどまる。HFC−134aの通常の沸点は、約−26.3℃である。表1に示した2成分の混合物は、組成物の沸点(T℃)が、HFO−1234yfの沸点を超えなかったことを示している。組成物は、この範囲にわたり、共沸混合物および/または共沸混合物様組成物の特性を示している。
【0029】
【表1】
【0030】
実施例2
HFO−1234yfとHFC−134aの共沸混合物様組成物(質量単位で50/50)を、機器を備えた自動車空調システム内に充填し、通常運転に典型的な条件下で、試験を行った。条件は、自動車車両の運転中に経験する条件として、自動車技術者協会(SAE;Society of Automotive Engineers)の規格J2765において規定されている。システムは、コンプレッサーの循環およびシステム制御の影響による結果を除くために、35、45および50℃の周囲温度に対する全負荷での冷却を示す条件において評価した。表2は、そのような試験から得られた結果を示している。冷却運転およびヒートポンプ運転において、排出温度がより低く吸気圧力がより高いことは、この共沸混合物様のブレンドを魅力的なものとする。排出温度がより低いと、システムの潤滑剤、材料および冷媒自体の熱安定性を確固たるものとすることが加わる。より高い吸気圧力は、混合物のより高い排出圧力と競合するが、これにより、熱交換器がさらに最適化され、使用するエネルギーの省力化を達成することができる。
【0031】
【表2】
【0032】
好ましい実施形態を参照して本発明をとりわけ示し記載してきたが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および改良がなされ得ることを容易に理解するであろう。特許請求の範囲は、開示した実施形態、上記で論じたこれらの改変、これらに均等な全てのものを範囲に含むように解釈されることを意図している。
[本発明の態様]
1.共沸混合物様組成物を形成するための、1,1,1,2−テトラフルオロプロペンおよび1,1,1,2−テトラフルオロエタンの有効量から本質的になる、共沸混合物様組成物。
2.噴霧される材料、および1に記載の共沸混合物様組成物を含む噴射剤を含む、噴霧性組成物。
3.噴霧される材料が、薬剤、生物活性材料、消臭剤、香水、ヘアスプレー、洗剤、ワックス、フラックス除去剤、研磨材、室内芳香剤、殺虫剤、料理用の油またはこれらの組合せを含む、2に記載の噴霧性組成物。
4.1に記載の共沸混合物様組成物を含む、冷媒組成物。
5.4に記載の冷媒組成物を凝縮させること、次いで、冷却すべき物品の近傍で前記冷媒組成物を蒸発させることを含む、物品を冷却する方法。
6.加熱すべき物品の近傍で4に記載の冷媒組成物を凝縮させること、次いで、前記冷媒組成物を蒸発させることを含む、物品を加熱する方法。
7.1に記載の共沸混合物様組成物を含む、発泡剤。
8.ポリオールおよび7に記載の発泡剤を含む、フォームプレミックス組成物。
9.1に記載の共沸混合物様組成物および少なくとも1つの熱硬化性フォーム成分を含む、発泡性組成物。
10.前記少なくとも1つの熱硬化性成分が、ポリウレタンフォーム、フェノール樹脂フォームまたはポリイソシアヌレートフォームを形成できる組成物を含む、9に記載の発泡性組成物。
11.1に記載の共沸混合物様組成物および少なくとも1つの熱可塑性フォーム成分を含む、発泡性組成物。
12.前記熱可塑性フォーム成分が、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートおよびこれらの組合せを含む、11に記載の発泡性組成物。
13.(a)冷却システム内の潤滑剤の実質的な部分を保持しながら、交換される冷媒を前記冷却システムから除去すること;および(b)4に記載の冷媒組成物を前記システムに導入すること;を含む、交換される冷媒および潤滑剤を含有する冷媒システムを再充填する方法。
14.冷却装置を改良する方法であって、
前記冷却装置が、冷媒および潤滑剤を含み;前記冷媒が、クロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボンまたはこれらの組合せを含み;前記潤滑剤が、鉱油、アルキルベンゼン、ポリアルファオレフィン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、合成ナフタレン、フルオロ潤滑剤またはこれらの組合せを含み;前記方法が、前記冷却装置から前記冷媒の少なくとも一部を除去または漏出し、潤滑剤を含む残留物を残す工程、および前記残留物に1に記載の共沸混合物様組成物を加える工程を含む、前記方法。
15.1に記載の共沸混合物様組成物を含む、溶媒。