特許第6336688号(P6336688)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6336688
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】電子モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/00 20060101AFI20180528BHJP
【FI】
   H01L25/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-565321(P2017-565321)
(86)(22)【出願日】2017年2月13日
(86)【国際出願番号】JP2017005147
【審査請求日】2017年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】湧口 純弥
(72)【発明者】
【氏名】池田 康亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健一
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−510513(JP,A)
【文献】 特表2017−504211(JP,A)
【文献】 特開2014−33125(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/103783(WO,A1)
【文献】 特開2007−5713(JP,A)
【文献】 特開2007−234888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一絶縁性基板と、前記第一絶縁性基板に第一導体層を介して設けられた第一電子素子とを有する第一電子ユニットと、
第二絶縁性基板と、前記第二絶縁性基板に第二導体層を介して設けられた第二電子素子とを有する第二電子ユニットと、
前記第一電子ユニットと前記第二電子ユニットとの間に設けられた接続体と、
前記接続体に巻き付けられたコイルと、
を備え
前記コイルの巻き付けられた前記接続体は、前記第一絶縁性基板と前記第二絶縁性基板との間に設けられ、
前記第一電子素子及び前記第二電子素子と前記コイルとは電気的に接続されていないことを特徴とする電子モジュール。
【請求項2】
前記第一電子素子又は前記第二電子素子はスイッチング素子を有することを特徴とする請求項1に記載の電子モジュール。
【請求項3】
前記接続体は円柱形状となっていることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の電子モジュール。
【請求項4】
前記第一電子素子がスイッチング素子を有し、前記第二電子素子がスイッチング素子を有さない場合には、前記第二絶縁性基板側に冷却体が設けられ、前記第一絶縁性基板側に前記冷却体は設けられず、
前記第二電子素子がスイッチング素子を有し、前記第一電子素子がスイッチング素子を有さない場合には、前記第一絶縁性基板側に前記冷却体が設けられ、前記第二絶縁性基板側に前記冷却体は設けられないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項5】
前記接続体及び前記コイルを固定した樹脂基板部をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子モジュール。
【請求項6】
前記樹脂基板部に、前記第一電子素子又は前記第二電子素子を制御する制御部が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電子モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランスファーパワーモジュールといった電子モジュールは内蔵された電子素子等を冷却するために、電子モジュールの裏面に銅等からなる放熱板(放熱層)が設けられている(例えば特開2015−211524号参照)。このように放熱層が設けられると、導体層、絶縁性基板及び放熱層によってコンデンサとしての役割を果たすことがある(コンデンサ機能が形成されることがある)。このようにコンデンサ機能が形成されると、電子モジュール内の電子素子に起因するノイズが放熱層を介して電子モジュールの外部に放出されることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような点に鑑み、本発明は、ノイズを低減できる電子モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様による電子モジュールは、
第一絶縁性基板と、前記第一絶縁性基板に第一導体層を介して設けられた第一電子素子とを有する第一電子ユニットと、
第二絶縁性基板と、前記第二絶縁性基板に第二導体層を介して設けられた第二電子素子とを有する第二電子ユニットと、
前記第一電子ユニットと前記第二電子ユニットとの間に設けられた接続体と、
前記接続体に巻き付けられたコイルと、
を備えてもよい。
【0005】
本発明の一態様による電子モジュールにおいて、
前記第一電子素子又は前記第二電子素子はスイッチング素子を有してもよい。
【0006】
本発明の一態様による電子モジュールにおいて、
前記接続体は円柱形状となっていてもよい。
【0007】
本発明の一態様による電子モジュールにおいて、
前記第一電子素子がスイッチング素子を有し、前記第二電子素子がスイッチング素子を有さない場合には、前記第二絶縁性基板側に冷却体が設けられ、前記第一絶縁性基板側に前記冷却体は設けられず、
前記第二電子素子がスイッチング素子を有し、前記第一電子素子がスイッチング素子を有さない場合には、前記第一絶縁性基板側に前記冷却体が設けられ、前記第二絶縁性基板側に前記冷却体は設けられなくてもよい。
【0008】
本発明の一態様による電子モジュールは、
前記接続体及び前記コイルを固定した樹脂基板部をさらに備えてもよい。
【0009】
本発明の一態様による電子モジュールにおいて、
前記樹脂基板部に、前記第一電子素子又は前記第二電子素子を制御する制御部が設けられてもよい。
【0010】
本発明の一態様による電子モジュールにおいて、
前記コイルの巻き付けられた前記接続体は、前記第一絶縁性基板と前記第二絶縁性基板との間に設けられ、
前記第一電子素子及び前記第二電子素子と前記コイルとは電気的に接続されていなくてもよい。
【0011】
本発明の一態様による電子モジュールにおいて、
前記コイルの巻き付けられた前記接続体は、前記第一電子素子又は前記第一導体層と前記第二電子素子又は前記第二導体層との間に設けられ、
前記第一電子素子及び前記第二電子素子と前記コイルとは電気的に接続されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、接続体に巻き付けられたコイルが内蔵されている。このため、電子素子に起因するノイズの生成を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態による電子モジュールの縦断面図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の別の態様による電子モジュールの縦断面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態のさらに別の態様による電子モジュールの縦断面図である。
図4図4は、本発明の実施の形態において、樹脂基板部を採用した態様による電子モジュールの縦断面図である。
図5図5は、本発明の実施の形態で用いられうる態様の変形例(変形例1)を説明するための縦断面図である。
図6図6は、本発明の実施の形態で用いられうる態様の別の変形例(変形例2及び3)を説明するための縦断面図である。
図7図7は、本発明の実施の形態による電子モジュールで形成されうる疑似的なコンデンサを示した縦断面図である。
図8図8は、電子素子とコイルとが電気的に接続されていない態様において、本発明の実施の形態による電子モジュールで形成されうる疑似的なコンデンサを示した回路図である。
図9図9は、電子素子とコイルとが電気的に接続されている態様において、本発明の実施の形態による電子モジュールで形成されうる疑似的なコンデンサを示した回路図である。
図10図10は、本発明の実施の形態で採用されうる樹脂基板部を示した平面図である。
図11図11は、本発明の実施の形態において、放熱層パターンを採用した態様による電子モジュールの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態
《構成》
図1に示すように、本実施の形態の電子モジュールは、電子素子40が積層されて配置されており、スタック構造となっている。より具体的には、図1に示すように、電子モジュールは、第一電子ユニット51と、第二電子ユニット52と、第一電子ユニット51と第二電子ユニット52との間に設けられた接続柱等からなる接続体29と、接続体29に巻き付けられたコイル70と、を有してもよい。
【0015】
本実施の形態では、電子モジュールの一例としては半導体モジュールを挙げることができ、電子素子40の一例として半導体素子を挙げることができる。しかしながら、これに限られるものではなく、必ずしも「半導体」を用いる必要はない。
【0016】
また、絶縁性基板60、導体層20及び電子素子40は封止樹脂等からなる封止部90で覆われてもよい。図1に示すように、封止部90の裏面は絶縁性基板60の裏面と同じ高さ位置となっていてもよい。図1では、放熱層10が絶縁性基板60の裏面に設けられ、放熱層10が封止部90の裏面から突出している態様となっているが、これに限られることはなく、絶縁性基板60が封止部90内に埋設され、放熱層10の裏面が封止部90の裏面と同じ高さ位置となっていてもよい。なお、放熱層10は、ヒートシンク等の冷却体100に設けられてもよい。
【0017】
電子素子40はスイッチング素子を含んでもよい。スイッチング素子としては、例えば、MOSFET等のFET、バイポーラトランジスタ、IGBT等を挙げることができ、典型例を挙げるとするとMOSFETを挙げることができる。
【0018】
第一電子ユニット51は、第一絶縁性基板61と、第一絶縁性基板61の一方側(図1の上側)に設けられた第一導体層21と、第一導体層21の一方側に設けられた第一電子素子41と、を有してもよい。第二電子ユニット52は、第二導体層22と、第二導体層22に設けられた第二電子素子42と、を有してもよい。第二電子ユニット52は、第二電子素子42の他方側(図1参照、図1の下側)又は一方側(図2参照、図2の上側)に設けられた第二絶縁性基板62を有してもよい。第二電子ユニット52でも、第一電子ユニット51と同様、第二絶縁性基板62に第二導体層22が設けられ、第二導体層22に第二電子素子42が設けられてもよい。図1に示す態様では、第二電子ユニット52は、第二絶縁性基板62と、第二絶縁性基板62の一方側に設けられた第二導体層22と、第二導体層22の一方側に設けられた第二電子素子42と、を有している。図2に示す態様では、第二電子ユニット52は、第二絶縁性基板62と、第二絶縁性基板62の他方側に設けられた第二導体層22と、第二導体層22の他方側に設けられた第二電子素子42と、を有している。
【0019】
第一電子ユニット51は、第一絶縁性基板61の他方側(図1の下側)に設けられた第一放熱層11を有してもよい。第二電子ユニット52は、第二絶縁性基板62の一方側(図2の上側)に設けられた第二放熱層12を有してもよい。また、図3に示すように、第一電子ユニット51は、第一絶縁性基板61の他方側(図3の下側)に設けられた第一放熱層11を有し、かつ、第二電子ユニット52は、第二絶縁性基板62の一方側(図3の上側)に設けられた第二放熱層12を有してもよい。
【0020】
第一電子素子41及び第二電子素子42はスイッチング素子及び/又はスイッチング素子を制御する制御素子を有してもよい。また、第一電子素子41及び第二電子素子42の一方はスイッチング素子のみを有し、第一電子素子41及び第二電子素子42の他方は制御素子のみを有してもよい。
【0021】
第一電子素子41及び第二電子素子42の一方がスイッチング素子を有し、第一電子素子41及び第二電子素子42の他方がスイッチング素子を有さない場合には、他方の電子素子40に対応して放熱層10が設けられ、当該放熱層10に対して冷却体100が接触するが、一方の電子素子40に対応した放熱層10は設けられず、一方の電子素子40に対応した場所には冷却体が設けられなくてもよい。例えば、第一電子素子41がスイッチング素子を有さず第二電子素子42がスイッチング素子を有する場合には、第二放熱層12は設けられず、第一放熱層11だけが設けられ、第一放熱層11だけが冷却体100に当接されてもよい(図1参照)。第一電子素子41がスイッチング素子を有し第二電子素子42がスイッチング素子を有さない場合には、第一放熱層11は設けられず、第二放熱層12だけが設けられ、第二放熱層12だけが冷却体100に当接されてもよい(図2参照)。なお、この態様において、コイル70が設けられていなくてもよい。
【0022】
図10に示すように、接続体29は円柱形状となっていてもよい。図1乃至図4に示すように接続体29は一つであってもよいし、図5及び図6に示すように接続体29は複数あってもよい。また、複数の接続体29の各々にコイル70が巻き付けられてもよいし、複数の接続体29のうちの一部にコイル70が巻き付けられてもよい。図5に示す態様では、左側の接続体29にはコイル70が巻き付けられているが、右側の接続体29にはコイル70が巻き付けられていない。
【0023】
第一絶縁性基板61には複数の第一電子素子41が設けられてもよい。また、第二絶縁性基板62には複数の第二電子素子42が設けられてもよい。複数の第一電子素子41及び/又は複数の第二電子素子42の各々がスイッチング素子であってもよい。
【0024】
図1乃至図4に示すように、コイル70の巻き付けられた接続体29は第一絶縁性基板61と第二絶縁性基板62との間に設けられてもよい。この場合には、第一電子素子41及び第二電子素子42とコイル70とは電気的に接続されていなくてもよく、例えば図8に示すように、コイル70を含む回路が疑似的なコンデンサ(基板の浮遊容量)を介して仮想的に並列に配置されるようになってもよい(図7も参照)。なお、接続体29は第一絶縁性基板61の面方向の中心部と第二絶縁性基板62の面方向の中心部とを連結するようにして設けられてもよい。
【0025】
このような態様に限ることはなく、図9に示すように、第一電子素子41及び/又は第二電子素子42とコイル70とは電気的に接続されていてもよい。図9では、一つの一対の電子素子40(例えば第一電子素子41及び第二電子素子42)の間にコイル70が設けられる態様が示されている。
【0026】
コイル70が第一電子素子41及び/又は第二電子素子42と電気的に接続されている場合には、コイル70の巻き付けられた接続体29は導体層20の間に設けられてもよい。具体的には、図6の右側で示すように、第一導体層21と第二導体層22との間に接続体29が設けられ、この接続体29にコイル70が巻き付けられてもよい。
【0027】
コイル70が第一電子素子41及び/又は第二電子素子42と電気的に接続されている場合には、コイル70の巻き付けられた接続体29は電子素子40と導体層20との間に設けられてもよい。具体的には、図5の左側で示すように、第一電子素子41と第二導体層22との間に接続体29が設けられ、この接続体29にコイル70が巻き付けられてもよい。また、第二電子素子42と第一導体層21との間に接続体29が設けられ、この接続体29にコイル70が巻き付けられてもよい。なお、図6に示すような態様であっても、コイル70の巻き付けられた接続体29は電子素子40と導体層20との間に設けられてもよい(図6の右側において破線で示した第一電子素子41参照)。
【0028】
コイル70が第一電子素子41及び/又は第二電子素子42と電気的に接続されている場合には、コイル70の巻き付けられた接続体29は電子素子40の間に設けられてもよい。具体的には、図6の左側で示すように、第一電子素子41と第二電子素子42との間に接続体29が設けられ、この接続体29にコイル70が巻き付けられてもよい。
【0029】
図4に示すように、接続体29及びコイル70を固定した樹脂基板部95が設けられてもよい。この樹脂基板部95には、接続体29とコイル70とが埋設されていてもよい。
【0030】
図10に示すように、樹脂基板部95にはICチップ、抵抗、コンデンサ等を含む制御部80が設けられてもよい。制御部80はスイッチング素子からなる第一電子素子41及び/又は第二電子素子42を制御する機能を有してもよい。
【0031】
封止部90と樹脂基板部95とは異なる樹脂材料から形成されてもよい。一例としては、封止部90は熱硬化性樹脂からなり、樹脂基板部95は熱可塑性樹脂からなってもよい。
【0032】
熱可塑性樹脂は特に限定されないが、プラスチック等を用いることができる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1、アイオノマー、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、ポリビニルアルコール、EVA、ポリカーボネート、各種ナイロン、各種芳香族または脂肪族ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、セルロース系プラスチック、熱可塑性エラストマー、ポリアリレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニルエーテル、ポリベンズイミダゾール、アラミド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール等を挙げることができる。
【0033】
熱硬化性樹脂は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を挙げることができる。
【0034】
《作用・効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による作用・効果であって、未だ説明していないものについて説明する。「作用・効果」で記載するあらゆる構成も採用することができる。
【0035】
本実施の形態では、接続体29に巻き付けられたコイル70が内蔵されている。このため、電子素子40に起因するノイズの生成を抑制できる。
【0036】
特に電子素子40がスイッチング素子を有する場合には、スイッチング素子から発生したノイズが、放熱層10、導体層20、絶縁性基板60等によって疑似的に形成されるコンデンサを介して(図7参照)、電子モジュールの外部に放出されることになる。本実施の形態では、コイル70を接続体29に設けることで、ノイズの発生を抑えることができる。なお、本明細書において、「電子素子40」、「第一電子素子41」及び「第二電子素子42」という文言は、一つ又は複数の電子素子40を総称したものである。このため、例えば「電子素子40がスイッチング素子を有する」というのは、電子素子40のうちの少なくとも一つがスイッチング素子であることを意味している。第一電子素子41及び第二電子素子42に関しても同様である。
【0037】
また、図7に示すように、封止部90内に設けられている絶縁性基板60でも疑似的にコンデンサが形成されることもあるが、コイル70を接続体29に設けることで、このような疑似的に形成されるコンデンサによって、ノイズが電子モジュールの外部に放出されることを低減できる(図8参照)。
【0038】
第一電子素子41及び第二電子素子42の一方はスイッチング素子を有し、他方はスイッチング素子を有さない場合において、他方の電子素子40だけに対応して冷却体100に当接する放熱層10が設けられるが、一方の電子素子40に対応した放熱層10は設けられない態様を採用したときには、ノイズが電子モジュールの外部に放出されることを低減できる。より具体的には、第一電子素子41がスイッチング素子を有さず第二電子素子42がスイッチング素子を有する場合には、図1に示すように、第一放熱層11は設けられるが第二放熱層12は設けられない態様を採用し、第一放熱層11だけが冷却体100に当接する態様を採用することで、スイッチング素子を有する第二電子素子42側において冷却体100との間で疑似的なコンデンサが形成されることを防止できる(図7参照)。このため、ノイズが電子モジュールの外部に放出されることを低減できる。また、第一電子素子41がスイッチング素子を有し第二電子素子42がスイッチング素子を有さない場合に、図2に示すように、第二放熱層12は設けられるが第一放熱層11は設けられない態様を採用し、第二放熱層12だけが冷却体100に当接する態様を採用することで、スイッチング素子を有する第一電子素子41側において冷却体100との間で疑似的なコンデンサが形成されることを防止できる。このため、ノイズが電子モジュールの外部に放出されることを低減できる。
【0039】
図10に示すように、接続体29を円柱形状とすることでコイル70を巻き付け易くすることができ、製造工程を容易にし、ひいては製造コストを下げることを期待できる。
【0040】
接続体29及びコイル70を固定した樹脂基板部95、より具体的には、樹脂基板部95に接続体29とコイル70とが埋設されている態様を採用した場合には(図10参照)、予め接続体29とコイル70を位置決めした状態で電子モジュールを製造できる点で、製造工程を容易にし、ひいては製造コストを下げることを期待できる。
【0041】
図1乃至図4に示すように、コイル70の巻き付けられた接続体29が第一絶縁性基板61と第二絶縁性基板62との間に設けられる態様を採用した場合には、第一絶縁性基板61側に設けられた第一電子素子41と、第二絶縁性基板62側に設けられた第二電子素子42に起因するノイズを当該コイル70によって低減できる点で有益である。
【0042】
図6の右側で示したように、コイル70が巻き付けられた接続体29が導体層20の間に設けられている態様を採用した場合、より具体的には、コイル70が巻き付けられた接続体29が第一導体層21と第二導体層22との間に設けられている態様を採用した場合には、近接する第一電子素子41及び第二電子素子42から発生するノイズをコイル70で低減できる点で有益である。
【0043】
この態様において、スイッチング素子に対応してコイル70の巻き付けられた接続体29が設けられてもよい。この場合には、スイッチング素子によるノイズを低減する効果を高めることができる点で有益である。より具体的には、スイッチング素子の設けられた導体層20とスイッチング素子の設けられた導体層20とがコイル70の巻き付けられた接続体29で接続されてもよい。また、スイッチング素子の設けられた導体層20とスイッチング素子ではない電子素子40(例えば制御素子)の設けられた導体層20とがコイル70の巻き付けられた接続体29で接続されてもよい。とりわけスイッチング素子の設けられた導体層20とスイッチング素子の設けられた導体層20とがコイル70の巻き付けられた接続体29で接続される態様を採用した場合には、より直接的にコイル70によってノイズを低減できる点で有益である。
【0044】
図5の左側で示したように、コイル70が巻き付けられた接続体29が電子素子40と導体層20との間に設けられている態様を採用した場合、より具体的には、コイル70が巻き付けられた接続体29が第一電子素子41と第二導体層22との間に設けられている、及び/又は、コイル70が巻き付けられた接続体29が第二電子素子42と第一導体層21との間に設けられている態様を採用した場合には、近接する第一電子素子41及び第二電子素子42から発生するノイズをコイル70で低減できる点で有益である。
【0045】
この態様において、スイッチング素子に対応してコイル70の巻き付けられた接続体29が設けられてもよい。この場合には、スイッチング素子によるノイズを低減する効果を高めることができる点で有益である。より具体的には、スイッチング素子とスイッチング素子の設けられた導体層20とがコイル70の巻き付けられた接続体29で接続されてもよい。また、スイッチング素子とスイッチング素子ではない電子素子40(例えば制御素子)の設けられた導体層20とがコイル70の巻き付けられた接続体29で接続されてもよい。とりわけスイッチング素子とスイッチング素子の設けられた導体層20とがコイル70の巻き付けられた接続体29で接続される態様を採用した場合には、より直接的にコイル70によってノイズを低減できる点で有益である。
【0046】
図6の左側で示したように、コイル70が巻き付けられた接続体29が電子素子40の間に設けられている態様を採用した場合、より具体的には、コイル70が巻き付けられた接続体29が第一電子素子41と第二電子素子42との間に設けられている態様を採用した場合には、近接する第一電子素子41及び第二電子素子42から発生するノイズをコイル70で低減できる点で有益である。
【0047】
この態様において、スイッチング素子に対応してコイル70の巻き付けられた接続体29が設けられてもよい。この場合には、スイッチング素子によるノイズを低減する効果を高めることができる点で有益である。より具体的には、スイッチング素子とスイッチング素子とがコイル70の巻き付けられた接続体29で接続されてもよい。また、スイッチング素子とスイッチング素子ではない電子素子40(例えば制御素子)とがコイル70の巻き付けられた接続体29で接続されてもよい。とりわけスイッチング素子とスイッチング素子とがコイル70の巻き付けられた接続体29で接続される態様を採用した場合には、より直接的にコイル70によってノイズを低減できる点で有益である。
【0048】
なお、導体層20同士を介してコイル70の巻き付けられた接続体29が設けられる場合と比較して、導体層20と電子素子40とがコイル70の巻き付けられた接続体29を介して接続されている態様を採用した場合の方が直接的にコイル70によるノイズをより直接的に低減できる場合がある。また、導体層20と電子素子40とがコイル70の巻き付けられた接続体29を介して接続されている態様と比較して、電子素子40同士が直接、コイル70の巻き付けられた接続体29で接続される態様を採用した場合の方が、より直接的にコイル70によってノイズを低減できる場合がある。
【0049】
図10に示すように、樹脂基板部95に制御部80が設けられている態様を採用した場合には、電子素子40と制御部80とを非常に近くに位置付けることができるので、予め誤作動の可能性を低減できる。また、このように制御部80を電子モジュール内に設けることで、IPM(Intelligent Power Module)化が可能になる。
【0050】
封止部90と樹脂基板部95とが異なる樹脂材料から形成されている態様を採用した場合には、内部側に位置する樹脂基板部95と外部側に位置する封止部90とで異なる機能を果たすことができる点で有益である。例えば、封止部90が熱硬化性樹脂である場合であっても、樹脂基板部95の材料として熱可塑性樹脂を採用した場合には、高い位置決め精度を期待できる。つまり、樹脂基板部95として熱硬化性樹脂を用いた場合には、熱を加える前では硬度が十分ではないことから、コイル70、接続体29、制御部80等の位置が予定していた位置からずれる可能性がある。この点、樹脂基板部95として熱可塑性樹脂を採用した場合には、熱を加える前において硬度が十分あることから、コイル70、接続体29、制御部80等の位置がずれる可能性を低減できる。
【0051】
図11で示すように、放熱層10が面方向で区分された複数の放熱層パターン15を有している態様を採用することもできる。このような放熱層パターン15を採用することで放熱層10の面内方向の面積を小さくすることができ、冷却体100、放熱層10、導体層20、絶縁性基板60等によって形成されるコンデンサ機能における容量(コンデンサの容量)を小さくできる。この結果、放出されるノイズを抑制できる。なお、平行板コンデンサにおける容量Cは、C=εS/d(ここで、「S」は平行板の面積、「d」は平行板の距離、「ε」は平行板の間に存在する絶縁体の誘電率)として示されるところ、複数の放熱層パターン15を採用することで「S」を小さくすることができる。また、図11では、第一放熱層11が放熱層パターン15を有している態様を示しているが、これに限ることはなく、第一放熱層11の代わりに又は第一放熱層11に加えて、第二放熱層12が放熱層パターンを有してもよい。
【0052】
上述した実施の形態の記載、変形例の記載及び図面の開示は、請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載、変形例の記載又は図面の開示によって請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0053】
10 放熱層
15 放熱層パターン
20 導体層
29 接続体
40 電子素子
41 第一電子素子
42 第二電子素子
51 第一電子ユニット
52 第二電子ユニット
60 絶縁性基板
61 第一絶縁性基板
62 第二絶縁性基板
70 コイル
95 樹脂基板部
【要約】
電子モジュールは、第一絶縁性基板61と、前記第一絶縁性基板61に第一導体層21を介して設けられた第一電子素子41とを有する第一電子ユニット51と、第二絶縁性基板62と、前記第二絶縁性基板62に第二導体層22を介して設けられた第二電子素子42とを有する第二電子ユニット52と、前記第一電子ユニット51と前記第二電子ユニット52との間に設けられた接続体29と、前記接続体29に巻き付けられたコイル70と、を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11