(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、超音波プローブ等の医療用器具を使用する際には、医療用器具の移動に伴い、医療用器具に接続されたコードの一部が床上等の不潔領域からドレープ上の清潔領域へと移動することがある。医療用器具やコードを滅菌されたカバーで覆う場合もあるが、カバーに覆われたコードの一部が、手術器具の移動に伴って清潔領域から不潔領域へと移動し、再度清潔領域へと移動することもある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、医療用器具の移動に伴ってコードが不潔領域から清潔領域へと移動することを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、医療処置の際に患者を覆うドレープであって、患者の身体に重なって患者を覆うとともに、患者の手術部位を露出させる開口、および、コードの先端に接続された医療用器具が前記コードと共に不潔面側から挿入される器具挿入孔が設けられたドレープ本体と、前記ドレープ本体に固定される長尺状の柔軟な筒状部材である器具カバーとを備え、
前記ドレープが、中心静脈カテーテルの挿入手術に利用され、前記器具挿入孔が、患者の胴体の側方に位置し、前記器具カバーが、前記器具挿入孔から前記ドレープ本体の清潔面側に延びる筒状のコード被覆部を備え、前記コード被覆部は、先端とは反対側の端部にカバー開口を有し、前記カバー開口を前記器具挿入孔に重ねた状態で、前記ドレープ本体の前記器具挿入孔の周囲に固定され、前記コード被覆部は、前記コードのうち前記器具挿入孔から前記ドレープ本体の前記清潔面側に引き出された長尺部位の周囲を覆う。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のドレープであって、前記器具カバーが、前記コード被覆部の
前記先端を閉塞するとともに前記医療用器具を覆う袋状の器具被覆部をさらに有する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のドレープであって、前記医療用器具が、超音波診断装置の超音波プローブである。
【0011】
請求項
4に記載の発明は、請求項1ないし
3のいずれかに記載のドレープであって、前記ドレープ本体のエッジから前記開口に至る非貫通の弱化線が前記ドレープ本体に設けられる。
【0012】
請求項
5に記載の発明は、請求項1ないし
4のいずれかに記載のドレープであって、前記器具挿入孔への前記医療用器具の挿入前において、前記器具カバーの一部が内側に折り込まれることにより前記器具カバーの長さが短くされており、前記医療用器具が前記器具カバーに挿入される際に、前記器具カバーの前記一部が内側から引き出される。
【0013】
請求項
6に記載の発明は、請求項
5に記載のドレープであって、前記器具挿入孔への前記医療用器具の挿入前において、前記器具カバーの前記ドレープ本体との接合部近傍の部位が、前記ドレープ本体の前記不潔面側に突出し、前記器具カバーの先端部が、前記不潔面から前記清潔面を向く方向に凸である。
【0014】
請求項
7に記載の発明は、請求項1ないし
6のいずれかに記載のドレープであって、前記器具挿入孔への前記医療用器具の挿入前において、前記ドレープ本体の一部が前記清潔面を対向させつつ他の部位上に折り返されており、前記ドレープ本体の前記一部である折り返し部が前記器具挿入孔を含む。
【0015】
請求項
8に記載の発明は、請求項
7に記載のドレープであって、前記器具挿入孔への前記医療用器具の挿入前において、前記折り返し部が、前記ドレープ本体の前記他の部位に仮固定される。
【0016】
請求項
9に記載の発明は、請求項
7または
8に記載のドレープであって、前記折り返し部の前記不潔面に把持可能な摘まみ部が設けられる。
【0017】
請求項
10に記載の発明は、請求項
9に記載のドレープであって、前記器具挿入孔への前記医療用器具の挿入前において、前記折り返し部の一部が、第1の折り返し線にて前記不潔面を対向させつつ折り返され、さらに、第2の折り返し線にて前記清潔面を対向させつつ折り返されており、前記第2の折り返し線の両側の部位が前記摘まみ部である。
【0018】
請求項
11に記載の発明は、請求項
7ないし
10のいずれかに記載のドレープであって、前記折り返し部の前記不潔面にラベルが貼付される。
【0019】
請求項
12に記載の発明は、請求項1ないし
11のいずれかに記載のドレープであって、前記ドレープ本体の前記清潔面に取り付けられ、使用時に前記ドレープ本体から取り外されるとともに前記器具カバーを前記医療用器具または前記コードに固定する固定具をさらに備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、医療用器具の移動に伴ってコードが不潔領域から清潔領域へと移動することを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る医療用ドレープ1を示す平面図である。医療用ドレープ1(以下、単に「ドレープ1」という。)は、医療施設内において手術等の医療処置や検査が行われる際に患者9を覆うことにより、不潔領域である患者9の体表から清潔領域を隔離するシート状の部材である。
【0023】
ドレープ1は、例えば、中心静脈カテーテル(CVC:Central Venous Catheter)の挿入手術に利用される。中心静脈カテーテルの挿入手術では、カテラン針等にて穿刺を行う際に、超音波診断装置を利用して体内における針の位置等の確認が行われる。このとき、超音波診断装置の超音波プローブが患者9の穿刺位置の近傍に押し当てられ、体内の針の位置等がモニタに映し出される。
【0024】
ドレープ1は、ドレープ本体11と、器具カバー2とを備える。ドレープ本体11は、略矩形のシート状の部材であり、患者9の身体を覆う。器具カバー2は、ドレープ本体11に固定される。以下の説明では、ドレープ本体11の患者とは反対側の面を「清潔面111」といい、ドレープ本体11の患者側の面を「不潔面112」という。
図1では、清潔面111を手前側にしてドレープ本体11を描いている。
【0025】
図1中の左右方向は、仰臥位の患者の左右方向に対応し、以下、単に「左右方向」という。
図1中の上下方向は、患者の頭部、頸部、体幹の体軸を貫く体軸方向に対応する。以下の説明では、
図1中の上下方向を「前後方向」といい、頭部側を「前側」、脚部側を「後側」という(他の図面においても同様)。
【0026】
ドレープ本体11は、透明部113と、不透明部114とを備える。透明部113は、ドレープ本体11の前側(すなわち、
図1中の上側)のエッジ117から後側に広がる略矩形状の部位である。透明部113は、ドレープ本体11の左右方向の略中央に位置する。不透明部114は、透明部113の左右両側および後側に連続して配置される。透明部113は、患者9の頭部91、頸部92、および、胸部93の一部と重なるように配置される。また、不透明部114により、患者9の胸部93の残りの部位、および、左右の上腕部94が覆われる。なお、後述する
図2以降では、患者9の図示を省略する。
【0027】
ドレープ本体11の透明部113には、患者9の手術部位を露出させる開口110が設けられる。開口110は、例えば、略円形である。
図1に示す例では、手術部位は、患者9の右肩に位置する。このため、開口110は、透明部113の左右方向の中央よりも、
図1中の左側に位置する。なお、開口110は、必要に応じて、矩形や多角形等の他の形状であってもよい。
【0028】
ドレープ本体11の透明部113には、ドレープ本体11の前側のエッジ117(透明部113の前側のエッジでもある。)から開口110に到る非貫通の弱化線118が設けられる。弱化線118は、例えば、ドレープ本体11の不潔面112に断続的に形成された複数の非貫通の切り込みを有するミシン目である。
【0029】
ドレープ本体11の不潔面112には、開口110の周囲を囲む粘着層115が設けられる。粘着層115の外形は、例えば、略矩形である。ドレープ1の使用時には、粘着層115により、ドレープ本体11の不潔面112が患者の手術部位の周囲に貼付される。これにより、開口110が手術部位からずれることが防止される。
【0030】
ドレープ本体11の不透明部114には、医療用器具である超音波プローブ81が挿入される器具挿入孔116が設けられる。器具挿入孔116は、例えば、透明部113の右側かつ後側に配置される。器具挿入孔116は、例えば、前側から後側に向かうに従って左側へと向かうスリット状の開口である。
【0031】
器具カバー2は、長尺状の比較的柔軟な筒状部材である。器具カバー2は、例えば、透明または半透明の樹脂により形成される。器具カバー2は、例えば、ドレープ本体11よりも薄く柔軟なシート状部材により形成される。器具カバー2の一方の端部(すなわち、先端部)は閉塞されており、他方の端部は閉塞されず開口している。器具カバー2は、当該他方の端部の開口(以下、「カバー開口23」という。)を器具挿入孔116に重ねた状態で、ドレープ本体11の器具挿入孔116の周囲に全周に亘って固定される。器具カバー2は、カバー開口23以外の開口は有しておらず、器具カバー2の内部空間は、カバー開口23を介して器具カバー2の外側の空間と連続する。器具カバー2の内部空間は、器具挿入孔116を介してドレープ本体11の不潔面112側の空間に連続する不潔領域である。器具カバー2は、器具挿入孔116からドレープ本体11の清潔面111側に延びる。器具カバー2の外面は、予め滅菌されている。
【0032】
ドレープ1では、コード82の先端に接続された超音波プローブ81が、ドレープ本体11の不潔面112側から器具挿入孔116に挿入され、ドレープ本体11の清潔面111側にて器具カバー2内に収容される。器具カバー2の内部空間、すなわち、超音波プローブ81およびコード82が収容される空間は、上述のように不潔領域であり、器具カバー2により清潔領域から隔離されている。
【0033】
器具カバー2は、コード被覆部21と、器具被覆部22とを備える。コード被覆部21は、ドレープ本体11の清潔面111側にてコード82の周囲を覆う筒状の部位である。コード被覆部21は、コード82のうち、器具挿入孔116から清潔面111側に延びる部位の周囲を覆う。器具被覆部22は、コード被覆部21の先端(すなわち、器具挿入孔116から離れた方の端部)を閉塞する袋状の部位である。換言すれば、器具被覆部22がコード被覆部21の先端に設けられることにより、器具カバー2は、器具挿入孔116と重なるカバー開口23を有する袋状となる。器具被覆部22は、ドレープ本体11の清潔面111側にて超音波プローブ81の全体を覆う。
【0034】
超音波プローブ81は、先端部811と、把持部812とを備える略T字状の医療用器具である。先端部811の幅は、把持部812の幅よりも大きい。把持部812は、先端部811から連続する略筒状の部位であり、コード82に接続される。超音波プローブ81が利用される際には、器具被覆部22に被覆された把持部812が作業者により把持され、器具被覆部22に同じく被覆された先端部811が、ドレープ本体11の開口110を介して患者9に押し当てられる。
【0035】
図1に示す例では、伸縮性を有するリング状の固定具31が、器具被覆部22上から超音波プローブ81の把持部812に巻き付けられる。固定具31は、好ましくは、超音波プローブ81の把持部812と先端部811との境界近傍に巻き付けられる。器具カバー2は、固定具31により締め付けられることにより超音波プローブ81に固定される。固定具31は、コード被覆部21上からコード82に巻き付けられてもよい。これにより、器具カバー2がコード82に固定される。
【0036】
使用前の状態では、超音波プローブ81およびコード82は器具挿入孔116に挿入されておらず、ドレープ1は折り畳まれている。ドレープ1が使用される際には、
図2に示すように、ドレープ1のドレープ本体11がおよそ展開され、患者9(
図1参照)の上にかけられる。
図2では、器具挿入孔116への超音波プローブ81の挿入前の状態を示す。
図2では、後述する折り返し部13を除き、清潔面111を手前側にしてドレープ本体11を描いている。
【0037】
図2に示すように、ドレープ本体11の一部は、折り返し線131にて折り返されている。以下の説明では、ドレープ本体11の折り返された当該一部を「折り返し部13」という。折り返し部13は、具体的には、ドレープ本体11の開口110よりも右側かつ後側の部位であり、
図1中の右下の角部135を含む。折り返し線131は、ドレープ本体11の右側のエッジから後側のエッジに到る直線である。換言すれば、折り返し線131は、前側から後側に向かうに従って左側へと向かう傾斜した直線である。
図1では、折り返し線131を二点鎖線にて示す。
図1に示すように、折り返し部13を折り返さずに拡げた状態では、折り返し線131は、上述の角部135と開口110との間に位置する。
【0038】
図1および
図2に示すように、折り返し部13は、ドレープ本体11の他の部位14上に清潔面111同士を対向させつつ折り返される。以下の説明では、ドレープ本体11のうち、折り返し部13と対向する部位14を「対向部14」という。折り返し部13の清潔面111には、略矩形状の第1止着部132が設けられる。また、対向部14の清潔面111には、略矩形状の第2止着部142が設けられる。第1止着部132および第2止着部142は、例えば、面ファスナのフック部材およびループ部材である。
図1に示す例では、第1止着部132は、ドレープ本体11の右側のエッジ近傍に位置する。また、第2止着部142は、ドレープ本体11の透明部113上において、透明部113の右側のエッジ近傍に位置する。
【0039】
図2に示すように、折り返し部13を対向部14上に対向させた状態では、第1止着部132が第2止着部142に重なる。ドレープ1では、第1止着部132と第2止着部142とが着脱自在に止着されることにより、折り返し部13が対向部14に仮固定される。仮固定とは、ドレープ1を使用する際に解除できるように着脱自在に固定されることを意味する。
【0040】
折り返し部13のうち角部135近傍の部位は、第1の折り返し線136にて不潔面112を対向させつつ折り返され、第2の折り返し線137にて清潔面111を対向させつつ折り返される。以下の説明では、第1の折り返し線136を「第1角部折り返し線136」と呼び、第2の折り返し線137を「第2角部折り返し線137」と呼ぶ。第1角部折り返し線136および第2角部折り返し線137は、ドレープ本体11の右側のエッジから後側のエッジに到る直線であり、折り返し線131に略平行である。第1角部折り返し線136および第2角部折り返し線137によりドレープ本体11を折り返さない状態(すなわち、折り返し部13の角部135近傍の部位を拡げた状態)では、第2角部折り返し線137は、ドレープ本体11の角部135と第1角部折り返し線136との間に位置する。
【0041】
ドレープ1では、第2角部折り返し線137の両側の部位が、折り返し部13の不潔面112に設けられた把持可能な摘まみ部138となる。詳細には、第2角部折り返し線137と第1角部折り返し線136との間の部位、および、第2角部折り返し線137と角部135との間において当該部位と対向する部位が、上述の摘まみ部138である。
【0042】
摘まみ部138の不潔面112、または、摘まみ部138近傍の部位の不潔面112には、介助者の視認可能な位置にラベル139が貼付される。ラベル139には、ラベル139が貼付されている面がドレープ本体11の不潔面112である旨を示す文章が表示されている。ラベル139には、文章に代えて記号や模様等が、ドレープ本体11の清潔面111と不潔面112とを識別するための表裏識別情報として表示されてもよい。ラベル139には、ラベル139が貼付されている部位が摘まみ部138である旨を示す文字や記号等が表示されてもよい。ラベル139に表示される情報が上述の表裏識別情報である場合、ラベル139は、折り返し部13のうち摘まみ部138以外の部位において不潔面112に貼付されてもよい。
【0043】
器具挿入孔116は、折り返し部13に位置する。換言すれば、折り返し部13は器具挿入孔116を含む。スリット状の器具挿入孔116は、折り返し線131の近傍に位置し、折り返し線131におよそ平行である。したがって、ドレープ本体11を
図1のように展開した状態、すなわち、折り返し部13を拡げた状態では、折り返し線131は、器具挿入孔116と開口110との間において、器具挿入孔116近傍に位置する。
【0044】
図2に示すように、器具挿入孔116への超音波プローブ81の挿入前においては、器具カバー2は、長手方向の長さが短くなるように折り畳まれた状態で、ドレープ本体11の不潔面112側に位置する。
【0045】
図3は、超音波プローブ81の挿入前における器具カバー2の断面図である。
図3では、ドレープ本体11の一部を併せて描いている。以下の説明では、
図1に示す器具カバー2を長手方向に略4等分したそれぞれの部位を、器具挿入孔116から器具被覆部22に向かって、
図3に示すように、「第1部位241」、「第2部位242」、「第3部位243」および「第4部位244」と呼ぶ。器具カバー2のドレープ本体11との接合部近傍の部位である第1部位241は、ドレープ本体11の不潔面112側に突出する。筒状の第1部位241は、内面が外側を向くように裏返されている。器具カバー2の内面とは、
図1に示すように、器具カバー2が折り畳まれることなく伸ばされた状態において内側を向く面である。
【0046】
第1部位241に連続する筒状の第2部位242は、内面を内側に向けた状態で、第1部位241の内側に折り込まれている。第2部位242に連続する筒状の第3部位243は、内面を外側に向けた状態で、第2部位242の内側に折り込まれている。第3部位に連続する袋状の第4部位244は、内面を内側に向けた状態で、第3部位243の内側に折り込まれている。第4部位244は、器具カバー2の先端部である器具被覆部22を含む。第4部位244は、不潔面112から清潔面111を向く方向に凸である。換言すれば、第4部位244と第3部位243との間の境界(すなわち、折り目)から第4部位244が延びる方向は、不潔面112から清潔面111を向く方向におよそ等しい。
【0047】
ドレープ1では、上述のように、器具カバー2の一部が、器具カバー2の内側に入れ子状に折り込まれ、これにより、器具カバー2の長さが短くなっている。
図3に示す例では、第4部位244の先端(すなわち、器具カバー2の先端)は、器具挿入孔116には挿入されず、ドレープ本体11の不潔面112側に位置する。また、第3部位243と第4部位244との間の境界は、第1部位241と第2部位242との間の境界よりも、ドレープ本体11の不潔面112から離間した位置に位置する。すなわち、第3部位243と第4部位244との間の境界近傍の部位は、筒状の第1部位241から、清潔面111から不潔面112を向く方向に突出する。
【0048】
ドレープ1が使用される際には、まず、
図2に示すように、折り返し部13が折り返された状態のドレープ1により患者9が覆われる。上述のように、折り返し部13の不潔面112にはラベル139が貼付されているため、患者9を覆う際にドレープ本体11の清潔面111および不潔面112を容易に識別することができる。
【0049】
続いて、入れ子状に折り畳まれた器具カバー2が、看護師等の介助者により把持されて持ち上げられ、
図3に示す第4部位244の開口245が介助者と対向する。開口245からは、第4部位244の先端部である器具被覆部22内にジェルが注入される。次に、超音波プローブ81が、第4部位244の開口245から第4部位244内に挿入され、器具被覆部22内に位置する。そして、超音波プローブ81が、器具カバー2と共に器具挿入孔116に向けて押し出される。これにより、
図4に示すように、超音波プローブ81の先端部が、器具カバー2と共に器具挿入孔116に挿入され、器具挿入孔116からドレープ本体11の清潔面111側へと突出する。
【0050】
超音波プローブ81の一部がドレープ本体11の清潔面111側に突出すると、
図2に示すドレープ本体11の摘まみ部138が介助者により把持される。上述のように、ラベル139が摘まみ部138または摘まみ部138近傍の部位に貼付されているため、介助者は摘まみ部138の位置を容易に認識することができる。続いて、介助者により摘まみ部138が持ち上げられることにより、折り返し部13に設けられた第1止着部132が、対向部14に設けられた第2止着部142から剥離し、折り返し部13が対向部14から離間する。そして、折り返し部13を、
図5に示すように拡げることにより、器具挿入孔116からドレープ本体11の清潔面111側に突出する超音波プローブ81が、施術者の前に現れる。
【0051】
次に、施術者により、超音波プローブ81が器具カバー2と共に把持され、器具挿入孔116からドレープ本体11の清潔面111側へと引き出される。このとき、器具カバー2のうち入れ子状に折り込まれた部位(
図4参照)が、器具カバー2の内側から引き出され、
図6に示すように、ドレープ本体11の清潔面111側に伸びる。また、超音波プローブ81に接続されるコード82も、器具カバー2の内側において、器具挿入孔116から清潔面111側へと引き出される。
【0052】
器具挿入孔116の近傍には、上述の固定具31が、ドレープ本体11の清潔面111に着脱自在に取り付けられている。
図6に示す例では、2つの固定具31が、ドレープ本体11の清潔面111に固定された固定具取付部32に取り付けられる。固定具取付部32は、折り曲げ線33にて2つ折りにされた帯状の取付本体部34と、取付本体部34の両端に設けられた取付止着部35とを備える。取付本体部34のうち、折り曲げ線33の一方側の部位は、ドレープ本体11の清潔面111に直接的に固定され、他方側の部位は、直接的にはドレープ本体11に固定されない。2つの取付止着部35の一方は面ファスナのフック部材であり、他方は面ファスナのループ部材である。取付本体部34の折り曲げ線33の両側の部位の間に各固定具31の一部を配置し、2つの取付止着部35を止着することにより、各固定具31が固定具取付部32を介してドレープ本体11の清潔面111に取り付けられる。
【0053】
上述のように、超音波プローブ81がドレープ本体11の清潔面111側に引き出されると、2つの取付止着部35が剥離され、1つの固定具31が固定具取付部32およびドレープ本体11から取り外される。そして、
図1に示すように、固定具31が、器具カバー2の器具被覆部22上から超音波プローブ81の把持部812に巻き付けられる。上述のように、固定具31は、好ましくは、超音波プローブ81の把持部812と先端部811との境界近傍に巻き付けられる。これにより、器具カバー2が超音波プローブ81に固定される。
【0054】
以上に説明したように、ドレープ1では、ドレープ本体11に器具挿入孔116が設けられ、コード82の先端に接続された超音波プローブ81が、器具挿入孔116に不潔面112側から挿入される。また、器具カバー2が、器具挿入孔116の周囲にてドレープ本体11に固定され、ドレープ本体11の清潔面111側にてコード82の周囲を覆う筒状のコード被覆部21を有する。このように、コード82が器具カバー2のコード被覆部21により覆われるため、超音波プローブ81の移動に伴ってコード82が移動する場合に、コード82が清潔領域において器具カバー2から露出することを防止することができる。また、器具カバー2がドレープ本体11に固定されているため、超音波プローブ81の移動に伴って器具カバー2が不潔領域へと移動することも防止することができる。
【0055】
具体的には、超音波プローブ81がドレープ本体11の開口110近傍から器具挿入孔116近傍へと戻された場合、ドレープ本体11の清潔面111側に位置していたコード82の一部は、器具挿入孔116を介してドレープ本体11の不潔面112側へと移動する。また、器具カバー2のコード被覆部21は、ドレープ本体11の清潔面111上にて襞を形成しつつコード82に沿って短くなる。その結果、超音波プローブ81の移動に伴って、コード82および器具カバー2が不潔領域から清潔領域へと移動することを防止することができる。
【0056】
器具カバー2は、コード被覆部21に加えて、コード被覆部21の先端を閉塞するとともに超音波プローブ81を覆う袋状の器具被覆部22を備える。このため、不潔領域である器具カバー2の内部空間を、清潔領域から隔離することができる。これにより、清潔領域と不潔領域とが連続することを防止することができる。また、器具カバー2の内部に収容される超音波プローブ81およびコード82を、清潔領域から隔離することができる。このようなドレープ1の構造は、コードに接続された医療用器具の移動が比較的多く行われる医療処置や検査、例えば、超音波プローブ81を利用する医療処置(中心静脈カテーテルの挿入手術等)や検査に特に適している。
【0057】
ドレープ1では、器具挿入孔116への超音波プローブ81の挿入前において、器具カバー2の一部が内側に折り込まれることにより器具カバー2の長さが短くされており、超音波プローブ81が器具カバー2に挿入される際に、器具カバー2の当該一部が内側から引き出される。これにより、長尺状の器具カバー2への超音波プローブ81の挿入を容易とすることができる。また、ドレープ1の使用前の状態において、器具カバー2がドレープ本体11から長く垂れ下がること等を防止することができる。その結果、ドレープ本体11の折り畳み等の取扱を容易とすることができる。
【0058】
上述のように、器具挿入孔116への超音波プローブ81の挿入前において、器具カバー2のドレープ本体11との接合部近傍の部位は、ドレープ本体11の不潔面112側に突出し、器具カバー2の先端部は、不潔面112から清潔面111を向く方向に凸である。これにより、器具カバー2への超音波プローブ81の挿入の際に、ドレープ本体11の不潔面112側において器具カバー2を容易に把持することができる。また、器具カバー2への超音波プローブ81の挿入を、より容易とすることができる。
【0059】
ドレープ1では、器具挿入孔116への超音波プローブ81の挿入前において、ドレープ本体11が清潔面111を対向させつつ折り返されており、ドレープ本体11の折り返された部位である折り返し部13が器具挿入孔116を含む。これにより、ドレープ本体11上において、超音波プローブ81を挿入する位置を容易に把握することができる。その結果、器具カバー2への超音波プローブ81の挿入をさらに容易とすることができる。
【0060】
また、折り返し部13は、器具挿入孔116への超音波プローブ81の挿入前において、ドレープ本体11の対向部14に仮固定される。これにより、折り返し部13を対向部14上に折り返した状態を、容易に維持することができる。その結果、器具カバー2への超音波プローブ81の挿入を、より一層容易とすることができる。
【0061】
上述のように、折り返し部13の不潔面112には、把持可能な摘まみ部138が設けられる。折り返し部13を対向部14から離間させる際には、摘まみ部138が介助者により把持されて折り返し部13が持ち上げられる。これにより、介助者がドレープ本体11の清潔面111に触れることなく、折り返し部13を対向部14から容易に離間させて拡げることができる。また、器具カバー2に超音波プローブ81を挿入する際等に、必要に応じて摘まみ部138を把持することにより、折り返し部13、および、折り返し部13に設けられた器具挿入孔116の移動を制限することができる。その結果、器具カバー2への超音波プローブ81の挿入をさらに容易とすることができる。
【0062】
ドレープ1では、器具挿入孔116への超音波プローブ81の挿入前において、折り返し部13の一部が第1角部折り返し線136および第2角部折り返し線137にて折り返されており、ドレープ本体11のうち第2角部折り返し線137の両側の部位が上述の摘まみ部138である。このように、折り返し部13の一部を折り返すことにより、摘まみ部138を容易に形成することができる。また、ドレープ本体11とは別部材をドレープ本体11に接合することにより摘まみ部を形成する場合に比べて、ドレープ1の製造コストを低減することができる。
【0063】
上述のように、ドレープ1では、固定具31がドレープ本体11の清潔面111に取り付けられており、使用時にドレープ本体11から取り外されるとともに器具カバー2を超音波プローブ81またはコード82に固定する。これにより、器具カバー2が超音波プローブ81またはコード82からずれることを抑制することができる。また、固定具31は、ドレープ本体11の器具挿入孔116近傍に取り付けられる。これにより、器具挿入孔116から清潔面111側に引き出された直後の超音波プローブ81に、器具カバー2を素早く固定することができる。
【0064】
ドレープ本体11では、前側のエッジ117から開口110に到る弱化線118が設けられる。これにより、カテーテル等が術野から外側に延びている状態であっても、弱化線118にてドレープ本体11をエッジ117から開口110まで切り裂くことにより、ドレープ1を患者9上から容易に除去することができる。また、弱化線118が非貫通であるため、ドレープ本体11の清潔面111側の空間と不潔面112側の空間とが弱化線118を介して連続することを防止することができる。なお、弱化線118は、ドレープ本体11のいずれかのエッジから開口110まで設けられていればよい。また、弱化線118は、ミシン目以外の様々な構造であってよい。
【0065】
ドレープ1では、様々な変更が可能である。
【0066】
折り返し部13に設けられる第1止着部132、および、対向部14に設けられる第2止着部142は、面ファスナには限定されず、様々な構造(例えば、粘着シート)であってよい。固定具取付部32の2つの取付止着部35についても同様である。
【0067】
図3に示す例では、超音波プローブ81が挿入される前の器具カバー2の先端は、ドレープ本体11の不潔面112側に位置するが、当該先端は、器具挿入孔116に挿入されてドレープ本体11の清潔面111側に位置してもよい。この場合であっても、器具カバー2の先端部が、不潔面112から清潔面111を向く方向に凸であることにより、器具カバー2への超音波プローブ81の挿入を容易とすることができる。
【0068】
図3に示す例では、器具カバー2の一部が器具カバー2の内側に折り込まれ、器具カバー2は4段の入れ子状(すなわち、側壁部が4層の入れ子状)となっているが、超音波プローブ81が挿入される前の器具カバー2の形状は、
図3に示す形状には限定されない。例えば、器具カバー2の一部が内側に折り込まれる場合、折り込まれた状態の器具カバー2は偶数段の入れ子状であればよい。また、器具カバー2は、様々な態様にて折り畳まれて使用前の長さが短くされてよい。
【0069】
折り返し部13では、角部135近傍の部位を拡げた状態において、第1角部折り返し線136が、角部135と第2角部折り返し線137との間に位置してもよい。この場合も、
図7に示すように、第2角部折り返し線137の両側の部位が、折り返し部13の不潔面112に設けられた把持可能な摘まみ部138となる。詳細には、第2角部折り返し線137と第1角部折り返し線136との間の部位、および、第2角部折り返し線137の第1角部折り返し線136とは反対側において当該部位と対向する部位が、上述の摘まみ部138である。
【0070】
また、摘まみ部138は、必ずしも、ドレープ本体11の折り返し部13の一部が折り返されて形成される必要はない。例えば、リング状の摘まみ部が、折り返し部13の不潔面112に接合されてもよい。
【0071】
器具カバー2を超音波プローブ81またはコード82に固定する固定具31は、必ずしも収縮性を有するリング状のものには限定されず、様々な形状や構造を有する固定具31(例えば、粘着テープ)が器具カバー2の固定に利用されてよい。また、固定具31のドレープ本体11への取付位置も、必ずしも器具挿入孔116近傍である必要はなく、様々に変更されてよい。
【0072】
上記実施の形態では、器具挿入孔116に挿入される医療用器具は、超音波診断装置の超音波プローブ81であるが、超音波プローブ81以外の様々な医療用器具が、ドレープ1の器具挿入孔116に挿入されてよい。
また、器具カバー2の先端には器具被覆部22は設けられず、コード被覆部21の先端は開口していてもよい。本発明の関連技術では、ドレープ1は、中心静脈カテーテルの挿入手術以外の様々な医療処置または検査に利用されてよい。例えば、ドレープ1が腹腔鏡手術に利用される場合、腹腔鏡手術にて用いられる医療用器具の1つである腹腔用カメラが、器具挿入孔116および器具カバー2に挿入される。この場合
、器具カバー2に挿入された腹腔用カメラは、器具カバー2の先端の開口から引き出されて腹腔内に挿入され、腹腔用カメラに接続されるコードは、ドレープ本体11の清潔面111側において器具カバー2により被覆される。
【0073】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。