特許第6336742号(P6336742)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6336742コンクリート表面画像から設置物を検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336742
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】コンクリート表面画像から設置物を検出する方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20180528BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   G06T7/00 610C
   G01N21/84 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-247220(P2013-247220)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-106237(P2015-106237A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187388
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 天光
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 正人
(72)【発明者】
【氏名】長峯 望
(72)【発明者】
【氏名】御▲崎▼ 哲一
(72)【発明者】
【氏名】瀧浪 秀元
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 康将
【審査官】 新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−202858(JP,A)
【文献】 特開2012−123759(JP,A)
【文献】 特開2007−212309(JP,A)
【文献】 特開2007−122455(JP,A)
【文献】 特開2009−220247(JP,A)
【文献】 特開2009−085900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 1/00
G06T 7/00−7/90
G01N 21/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置を用いてコンクリート表面画像から設置物の画像を検出する方法であって、対象の設置物の設置位置や設置間隔などの設置情報を入手するステップ、前記設置情報に基づいてコンクリート表面画像上に探索領域を設定するステップ、及び前記探索領域の壁面画像を処理して対象の設置物を検出するステップとから成り、前記設置物は距離標銘板であって、前記探索領域の設定ステップは設置情報に基づいてコンクリート表面画像を絞り込んで行う一次探索領域の設定ステップと、前記一次探索領域の探索結果の検定に基づいて前記一次探索領域を更に絞り込んで行う二次探索領域の設定ステップとから成ることを特徴とするコンクリート表面画像から設置物を検出する方法。
【請求項2】
前記設置物は距離標銘板であって、前記一次探索領域の探索は数字の「0」のテンプレートを用いた形状ベースパターンマッチングであることを特徴とする請求項に記載のコンクリート表面画像から設置物を検出する方法。
【請求項3】
前記設置物は距離標銘板であって、前記一次探索領域の探索結果の検定は数字の「0」のテンプレートを用いた形状ベースパターンマッチングにより検出された距離標銘板候補を設置情報に照らして行う検定であることを特徴とする請求項に記載のコンクリート表面画像から設置物を検出する方法。
【請求項4】
前記設置物は距離標銘板であって、前記設置情報は距離標銘板の設置高さと設置間隔であることを特徴とする請求項に記載のコンクリート表面画像から設置物を検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート表面画像から設置物を検出する方法に関し、特に鉄道や道路のトンネルのコンクリート覆工面に設置されている距離標銘板、下束、蛍光灯や、高架橋等の長大な土木構造物のコンクリート表面に設置されている各種の設置物であって、設置位置が既知の設置物の画像をコンクリート表面画像から画像処理によって検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道や道路のトンネルの点検はトンネルの管理責任者によって定期的に行われているが、コンクリート片の落下等の原因となる覆工面のひび割れ、漏水等の変状の点検は特に慎重に行われなければならない。ところが、変状の点検は容易ではない。長大な土木構造物である鉄道や道路のトンネルの覆工面の面積は非常に広く、変状の数も多いため、多大の労力と時間を要する作業となっている。そこで、トンネルの点検作業を効率よく行うことが求められている。
【0003】
特開2002−288180号公報(特許文献1)には、トンネルに関するデータをコンピュータ上で一元管理するデータベースシステムが開示されている。このトンネルデータベースシステムでは、トンネル検査現場の事務所等に設置された複数の端末(コンピュータ)からサーバへのデータ送信が可能となっており、前記サーバでは各端末から入力されたデータを一元管理すると共に、検査該当箇所のトンネルデータ(例えばトンネル内の展開図と覆工面の写真と検査・測定データ等)毎に当該トンネルデータを一つの画面にまとめて表示、またはプリントアウトすることを可能としている。
【0004】
このトンネルデータベースの構築により、目地情報と格子情報及びキロ程等により該当する疵の位置がトンネル検査現場の事務所等に設置された端末のモニター画面上でも瞬時に読み取れるようになっている。前記目地情報はブロックどうしの間の目地の位置を示すもの、前記格子情報はトンネル内面を展開図上で1m四方の大きさに細分化した格子データ、前記ブロックはコンクリートを打設した覆工区域である。例えば、図6に示すトンネル構造物検査記録簿に示されたトンネルにおいては、ブロック長は最小が5m、最大が10mである。また、キロ程は10m間隔のキロ程である。
【0005】
特開2005−105682号公報(特許文献2)には、トンネル健全度診断に関する複数の検査データとトンネル内の位置データを関連付けて記録するメモリ部を備えるデータベースサーバ10と、前記メモリ部に記録された複数の検査データを持ち運び可能な記録媒体を介して閲覧可能とする固定端末30と、前記固定端末と通信回線を介して接続可能な携帯端末20とを備えるトンネルデータ管理システムが開示されている。このトンネルデータ管理システムは、携帯端末20から位置データを入力できることと、作業現場でトンネル検査データを携帯端末20で閲覧することを可能としたことが特徴である。トンネル検査現場で検査該当位置のトンネルデータを得ることができ、前記トンネルデータを検査現場で閲覧できるので、検査箇所を探すことが容易になる。
【0006】
ところで、携帯端末20から入力される位置データは、特許文献2の明細書の段落0036の記載によれば、トンネル内の位置情報であり、トンネル内のキロ程と、データ計測位置との相対的な位置関係から導き出される検査該当位置である。前記検査該当位置を導き出すのは作業現場の検査員であり、導き出された位置データは当該検査員によって携帯端末20に入力される。従って、位置データは検査箇所を正確に特定するものではなく、打音検査の範囲を特定できる程度のものである。
【0007】
トンネル壁面を展開したコンクリート壁面画像は、トンネル壁面の検査箇所を探すために不可欠なものとなっている。ところで、検査箇所のコンクリート壁面に存在するひび割れなどの変状は形状も大きさも様々である。このため、熟練した検査員でもコンクリート壁面画像の中に当該変状を目視で的確に認識することは難しい。そこで、距離標銘板などのキロ程、下束、蛍光灯などの設置位置が既知の設置物の画像は、検査箇所を探すための重要な目印となる。
【0008】
ところが、コンクリート壁面画像の中で、距離標銘板などのキロ程の画像を探すことは容易ではない。距離標銘板などのキロ程は必ずしも明瞭に映っていないからである。そこで、本出願人は特許文献3(特開2012−202858号公報)に記載する如く、トンネルのコンクリート壁面画像から下束や蛍光灯などの壁面添架物を画像処理により検出する方法を開発した。即ち、予め作成されメモリに記憶されている壁面添架物のテンプレートを用い、スケールの変化に対応した形状ベースのパターンマッチングで検出対象の壁面添架物を検出する方法である。この形状ベースのパターンマッチング方法を用いれば、コンクリート壁面画像の中から画像処理によって距離標銘板などのキロ程を検出することが可能である。
【0009】
例えば設置物が蛍光灯の場合、画像処理の流れは図10に示す如くである。先ず、検査員は画像処理装置のモニター画面上に、蛍光灯が存在すると考えられるトンネルのコンクリート壁面画像の一部を探索領域として表示する(S41)。次に、検査員は画像処理装置のメモリから蛍光灯のテンプレートを読み出し、前記テンプレートを前記探索領域の画像の中で移動させながら、前記テンプレートに重なる部分の画像との類似度を画像処理装置に計算させる処理、即ち形状に基づくパターンマッチングを行い(S42)、マッチングのスコアを判定して蛍光灯を検出する(S43)。
【0010】
上述の設置物の画像処理による検出は、輝度の濃淡を利用するのではなく、物体の特性を定義する輪郭データと、その法線方向の濃淡値の勾配データを利用する。これによって、隠ぺいや乱れのある画像にも極めて頑強な探索を実現するものである。しかしながら、土木構造物の壁面に汚れやすすがある状態では、壁面画像を取得する前に、壁面を洗浄して汚れを落とすことが必要であるが、土木構造物壁面全体の洗浄は現実的には困難であり、検出対象の設置物を明瞭に把握できる壁面画像が得られにくい。また、撮影条件によっては対象物の見えの大きさ(スケール)が毎回違う。このような問題があるので、対象の設置物を画像処理によって正確に検出することが難しい。更に、対象の設置物が脱落していたりして、必ずしも所定の位置に設置されているとは限らないので、設置箇所を限定して探索すると、誤検出の原因となる。更にまた、画像処理装置のモニター画面上に表示される探索領域は、検出漏れ防止のために余裕を持って設定されるため、探索に時間がかかるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2002−288180号公報
【特許文献2】特開2005−105682号公報
【特許文献3】特開2012−202859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明が解決しようとする第1の課題は、コンクリート表面画像の中から設置位置が既知の設置物の画像を検出する方法において、検出漏れや過剰検出を防止しながら、検出の効率化を図ることである。
本発明が解決しようとする第2の課題は、コンクリート表面画像の中から距離標銘板の画像を検出する方法において、検出漏れや過剰検出を防止しながら、検出の効率化を図ることである。
本発明が解決しようとする第3の課題は、コンクリート表面画像の中から下束の画像を検出する方法において、検出漏れや過剰検出を防止しながら、検出の効率化を図ることである。
本発明が解決しようとする第4の課題は、コンクリート表面画像の中から蛍光灯の画像を検出する方法において、検出漏れや過剰検出を防止しながら、検出の効率化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するコンクリート表面画像から設置物を検出する方法は、対象の設置物の設置位置及び設置間隔などの設置情報を取得するステップ、前記設置情報に基づいてコンクリート表面画像上に探索領域を設定するステップ、及び前記探索領域の壁面画像を処理して対象の設置物をパターンマッチング手法により検出するステップとから成る方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、コンクリート表面画像の中から、設置位置が既知の設置物を検出漏れや過剰検出を防止しながら、効率よく検出できるようになった。
また、本発明により、汚れやすすで不明瞭な設置物、脱落や位置ずれした設置物であっても、コンクリート表面画像の中から、確実に検出できるようになった。
更に、本発明により、コンクリート表面画像の中に設置位置が既知の設置物の画像の位置が明瞭に特定されるので、検査員がトンネルのコンクリート表面の変状位置を迅速に特定し易くなり、トンネルの健全度検査の効率向上が図られた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】距離標銘板を検出する処理のフローチャートの一例である。
図2】検出対象の距離標銘板が含まれたコンクリート壁面画像の一例である。
図3図2の距離標銘板がある一箇所の部分拡大画像である。
図4図2の距離標銘板がある他の一箇所の部分拡大画像である。
図5】「0」検出処理に用いるテンプレート画像の一例である。
図6】「0」検出処理の結果の出力ファイルの一例である。
図7】距離標銘板の最終的なマッチング結果の出力ファイルの一例である。
図8】下束を検出する処理のフローチャートの一例である。
図9】蛍光灯を検出する処理のフローチャートの一例である。
図10】蛍光灯を検出する従来の処理のフローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、画像処理装置を用いてコンクリート表面画像から設置物の画像を検出する方法であって、対象の設置物の設置位置や設置間隔などの設置情報を取得するステップ、前記設置情報に基づいてコンクリート表面画像上に探索領域を設定するステップ、及び前記探索領域の壁面画像を処理して対象の設置物をパターンマッチング手法により検出するステップとから成る方法である。
【実施例1】
【0017】
(距離標銘板の検出)
図1のフローチャートを参照して、トンネルのコンクリート壁面画像から距離標銘板の画像を検出する処理を説明する。距離標銘板はトンネルの壁面に複数個設置されているから、トンネル壁面画像には複数個の距離標銘板の画像が存在する。距離標銘板の検出は1つずつ行われるので、トンネル壁面に設置されている距離標銘板に対して例えばトンネルの一方の坑口から他方の坑口まで順に検出するものとする。
【0018】
先ず、検査員はトンネルデータベースにアクセスし、コンクリート壁面の距離標銘板の設置情報を取得し(S11)、画像処理装置のメモリに記録する。前記距離標銘板の設置情報は、トンネルの建設台帳や検査台帳などに記録され、前記トンネルデータベースの一部となっているもので、種類、設置数、設置間隔、設置高さのデータが少なくとも含まれる。説明を複雑にしないために、本実施例ではトンネル壁面に設置されている距離標銘板は10cm×20cm及び10cm×40cmの矩形のプレートであり、距離標銘板の設置位置はトンネル床面から1.5mの高さ、設置間隔は10m間隔であるとする。
【0019】
続いて、モニター画面上に表示されたトンネルのコンクリート壁面画像の中に、設置位置及び設置間隔情報に基づいて、検出対象の1番目の距離標銘板について、一次探索領域の設定を行う(S12)。上記のモニター画面上に表示されたトンネルのコンクリート壁面画像は図2に示す如きものである。このコンクリート壁面画像には距離標銘板の画像が複数あるが、目視で認識できない程に小さい。そこで、「390」の表示がある距離標銘板の画像と「559K400M」の表示がある距離標銘板の画像をそれぞれ拡大して表示したのが、図3図4である。
【0020】
図2のコンクリート壁面画像について設定された一次探索領域は、距離標銘板の設置位置はトンネル床面から1.5mの高さであるとの設置情報に基づいて、縦は表示されたコンクリート壁面画像の下側の約8分の1の幅で、横は表示されたコンクリート壁面画像と同じ幅の細長い画像領域となる。距離標銘板の設置位置はトンネルデータベースから取得されて画像処理装置のメモリに記憶されているから、標準的な設置高さである1.5m程度でない例外的なトンネルにおいても、一次探索領域の設定は適切に行える。
【0021】
ステップS12に続いて、画像処理装置はプログラムに従って、設定された一次探索領域について数字の「0」を検出する処理を行う(S13)。これは距離標銘板が10m間隔で設置されるという知識から、距離標銘板に表示されている数字の下一桁の数字は必ずゼロになることに着眼したものである。この検出処理は、図5に示す如き数字の「0」のテンプレート画像を用い、一次探索領域について形状ベースのパターンマッチングである。
【0022】
ステップS13において、画像処理装置はプログラムに従って、数字の「0」を検出すると、検出番号を付して当該「0」が検出された位置座標(X,Y)と検出スコアを検出結果としてメモリに記憶する。前記検出スコアは、テンプレートの数字の「0」画像とのマッチング度合いを表す点数であり、1.0に近いほど確度が高いことを示す。
【0023】
ステップS13に続いて、数字の「0」検出処理の検定を行う(S14)。画像処理装置はプログラムに従って、設置高さはトンネル床面から1.5m、設置間隔は10m間隔であるとの設置情報に適合し、且つ検出スコアが1に近い距離標銘板を候補とする。また、画像処理装置はプログラムに従って、メモリに記憶されている全ての検出結果のデータを読み出し、ゼロ検出結果の出力ファイルを作成する。この出力ファイルをプリントアウトしたものを、図6に示す。図6においては、検出番号1、検出番号3、検出番号5、検出番号7、検出番号9、検出番号11、検出番号13、検出番号15、検出番号17、検出番号19、検出番号21及び検出番号23が距離標銘板候補である。
【0024】
ところで、トンネルの起点キロ程は、トンネルデータベースから取得できる。例えば当該トンネルの起点が500k375mだとすると、設置間隔が10mの最初のキロ程は500k380mであるから、「380」の数字を表示した距離標銘板が最初に現れる。よって、「0」検出処理で図2の画像の左側から最初に見つかった距離標銘板が「380」の数字を表示した距離標銘板ということになり、画像処理装置のメモリは先頭の距離標銘板が「500k380m」、それ以降は10m刻みの距離標銘板の設置情報がメモリに記憶される。従って、画像処理装置は、以降検出された距離標銘板が順に「390m」、「500k400m」、「410m」・・・と判断する。
【0025】
本来10m間隔で設置されている筈の距離標銘板の検出が、「一つ前の距離標銘板から10m以内の短い間隔で検出された。」、「一つ前の距離標銘板から10m以上離れて検出された。」、「通常より高い位置に見つかった。」、「通常より低い位置に見つかった。」などの異常データを、ステップS13の「0」検出処理のパターンマッチングの結果から検出できる。そこで、ステップS14の「0」検出処理の検定においては、10m以内の短い間隔で検出されたデータは、その前後の間隔から過剰検出と判断し、当該データを除外する。また、10m以上離れて検出された場合には、本来見つかるべき10mの画像位置でステップS13の探索を再度行う。更に、明らかに高い位置や低い位置で検出されたデータは異常データとして除外する。
【0026】
ステップS14に続いて、画像処理装置はプログラムに従って、二次探索領域の設定を行う(S15)。この二次探索領域の設定は、距離標銘板の設置位置と検出対象の距離標銘板のサイズに基づいて、上記一次探索領域を更に絞り込む処理である。二次探索領域は、ステップS14において確からしいと判断された距離標銘板候補の各座標位置を中心に、当該距離標銘板候補のサイズを考慮して必要最小限の矩形領域として設定される。前記必要最小限の矩形領域は、例えば縦横1m程度である。
【0027】
ステップS15に続いて、パターンマッチングによる距離標銘板の検出処理を行う(S16)。即ち、画像処理装置はプログラムに従って、メモリから距離標銘板のテンプレートを読み出し、前記テンプレートを必要最小限の矩形領域の二次探索領域の画像の中で移動させながら、前記テンプレートに重なる部分の画像とのパターンマッチングのスコアを画像処理装置に計算させ、距離標銘板を検出する。画像処理装置は、ステップS16によりパターンマッチングのスコアが1に近いものを距離標銘板と判断し、これにより距離標銘板が検出される(S17)。図7は、ステップS16の距離標銘板のパターンマッチング結果の出力ファイルの一例である。
【0028】
ステップS16において使用するテンプレートは、距離標銘板の輪郭線の矩形の中に2個のボルト穴が配置された図形のテンプレートである。上記2個のボルト穴は、距離標銘板をコンクリート壁面に取り付けるためのものであるから、距離標銘板には必ずあいている穴であり、取り付け用のボルトと共に観察される。この特徴を盛り込んだテンプレートを用いると、輪郭線の矩形だけのテンプレートに比べて、テンプレートに重なる部分の画像との類似の比較がし易くなる。従って、距離標銘板がより迅速且つ確実に検出される。
【0029】
以上説明した通り、本発明に係るトンネルのコンクリート壁面画像から距離標銘板を検出する実施例の方法は、一次探索領域を数字の「0」を表示したテンプレートを用いてパターンマッチングにより距離標銘板の存在位置を確認すること、及び、更に絞り込んだ二次探索領域を距離標銘板の特徴を盛り込んだテンプレートを用いてパターンマッチングにより距離標銘板を検出することを特徴とするものである。パターンマッチングを2回行うことになるが、従来の1回のパターンマッチングによる距離標銘板の検出方法よりも処理効率と検出確度が高い。その理由は、探索領域の絞り込みが適切になされていることと、パターンマッチングに用いるテンプレートが距離標銘板の上述の特徴、即ち距離標銘板に表示されている数字の特徴的な配列、及び取り付け用ボルト穴が必ずあいているという特徴的な形状を反映しているからである。
【0030】
ところで、検出対象の距離標銘板が脱落し、或いはすすや汚れで文字が隠されていると、ステップS16の処理で距離標銘板が検出されない場合がある。そこで、このような場合、当該距離標銘板の画像を作成し、その推定位置に貼り付け、復元する。この復元作業をトンネルのコンクリート壁面の展開画像全体に行うことにより、距離標銘板が明瞭なコンクリート壁面展開画像が得られる。従って、検査員はコンクリート壁面の変状位置を迅速に特定し易くなり、トンネルの健全度検査の効率向上が図られる。
【実施例2】
【0031】
(下束の検出)
トンネル壁面に設置されている下束を検出する処理を図8のフローチャートを参照して以下に説明する。先ず、下束の設置位置及び設置間隔に関する設置情報を取得する(S21)。下束の設置位置及び設置間隔はトンネルデータベースに記録されている情報である。従って、ダウンロードして画像処理装置のメモリに予め記録しておいて、メモリから読み出して取得する。或いは、トンネルデータベースにアクセスして取得してもよい。
【0032】
続いて、検査員は探索領域の設定処理を行う(S22)。一般的な下束は40〜50m間隔で設置され、トンネルのクラウン部を中心に鉛直方向に細長い矩形状の領域として観察される。検査員は、画像処理装置のモニター画面に表示されたトンネルのコンクリート壁面画像上に、上述の如き設置位置及び設置間隔などの情報に基づいて、検出対象の下束を探索する画像領域を設定する。
【0033】
続いて、パターンマッチングによる下束の検出処理を行う(S23)。即ち、画像処理装置はプログラムに従って、下束のテンプレートを読み出し、前記テンプレートを前記探索領域の画像の中で移動させながら、前記テンプレートに重なる部分の画像とのマッチングを行う。下束のテンプレートは、典型的な下束のモデルの画像であって、予めメモリに登録してある。そして、画像処理装置はマッチング結果のスコアが1に近かったら下束候補と判断し、当該下束候補が検出された位置座標(X,Y)と検出スコアを検出結果としてメモリに記憶する。設定した探索領域の探索が終了すると、探索結果の検証(S24)に進む。
【0034】
ステップS24において、画像処理装置はプログラムに従って、メモリから下束候補のデータを読み出し、設置位置及び設置間隔に関する設置情報に適合しているかを検証する。検証に合格すれは下束の検出(S25)となる。
【0035】
実施例2においては、下束の設置位置及び設置間隔に関する設置情報に基づいて探索領域を設定したので、パターンマッチングによる下束候補の検出を効率よく行えるようになった。また、下束の設置位置及び設置間隔に関する設置情報に基づいて、パターンマッチングで検出された下束候補を検証して下束を検出するようにしたので、下束の検出漏れや過剰検出を防止できるようになった。
【実施例3】
【0036】
(蛍光灯の検出)
トンネル壁面に設置されている蛍光灯を検出する処理を図9のフローチャートを参照して以下に説明する。先ず、蛍光灯の設置位置及び設置間隔に関する設置情報を取得する(S31)。蛍光灯の設置位置及び設置間隔はトンネルデータベースに記録されている情報である。従って、ダウンロードして画像処理装置のメモリに予め記録しておいて、メモリから読み出して取得する。或いは、トンネルデータベースにアクセスして取得してもよい。
【0037】
続いて、検査員は探索領域の設定処理を行う(S32)。一般的な蛍光灯は10m間隔で設置され、トンネルの側壁下部周辺を中心に水平方向に細長い領域として観察される。検査員は画像処理装置のモニター画面に表示されたトンネルのコンクリート壁面画像上に、上述の如き設置位置及び設置間隔などの知見に基づいて、検出対象の蛍光灯を探索する画像領域を設定する。
【0038】
続いて、パターンマッチングによる蛍光灯の検出処理を行う(S33)。即ち、画像処理装置はプログラムに従って、蛍光灯のテンプレートを読み出し、前記テンプレートを前記探索領域の画像の中で移動させながら、前記テンプレートに重なる部分の画像とのマッチングを行う。蛍光灯のテンプレートは、典型的な蛍光灯のモデルの画像であって、予めメモリに登録してある。そして、画像処理装置はマッチング結果のスコアが1に近かったら蛍光灯候補と判断し、当該蛍光灯候補が検出された位置座標(X,Y)と検出スコアを検出結果としてメモリに記憶する。設定した探索領域の探索が終了すると、探索結果の検証(S34)に進む。
【0039】
ステップS34において、画像処理装置はプログラムに従って、メモリから蛍光灯候補のデータを読み出し、設置位置及び設置間隔に関する設置情報に適合しているかを検証する。検証に合格すれは蛍光灯の検出(S35)となる。
【0040】
実施例3においては、蛍光灯の設置位置及び設置間隔に関する設置情報に基づいて探索領域を設定したので、パターンマッチングによる蛍光灯候補の検出を効率よく行えるようになった。また、蛍光灯の設置位置及び設置間隔に関する設置情報に基づいて、パターンマッチングで検出された蛍光灯候補を検証して蛍光灯を検出するようにしたので、蛍光灯の検出漏れや過剰検出を防止できるようになった。


















図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10