特許第6336758号(P6336758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336758
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】回避アシスタントの作動の制限
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/09 20120101AFI20180528BHJP
   B60W 10/18 20120101ALI20180528BHJP
   B60W 10/20 20060101ALI20180528BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
   B60W30/09
   B60W10/18
   B60W10/20
   G08G1/16 E
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-555757(P2013-555757)
(86)(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公表番号】特表2014-508067(P2014-508067A)
(43)【公表日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】DE2012100049
(87)【国際公開番号】WO2012119595
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2015年1月19日
【審判番号】不服2017-1282(P2017-1282/J1)
【審判請求日】2017年1月30日
(31)【優先権主張番号】102011005094.9
(32)【優先日】2011年3月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】399023800
【氏名又は名称】コンティネンタル・テーベス・アクチエンゲゼルシヤフト・ウント・コンパニー・オッフェネ・ハンデルスゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ビアン・ニン
(72)【発明者】
【氏名】ブレッツィヒハイマー・カーイ
(72)【発明者】
【氏名】シュタープ・トルステン
(72)【発明者】
【氏名】フェルスター・ダーニエール
【合議体】
【審判長】 佐々木 芳枝
【審判官】 八木 誠
【審判官】 松下 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−530997(JP,A)
【文献】 特開2009−271758(JP,A)
【文献】 特開2010−237874(JP,A)
【文献】 特開2008−260390(JP,A)
【文献】 特開2011−5893(JP,A)
【文献】 特開2008−308152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W10/00-50/16
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両周辺のオブジェクトが、周辺把握システムのデータに基づいて認識され、
ブジェクトが存在しない、及び/或いは、乗り越えることが可能なオブジェクトしか存在しないことが確認されたフリー空間候補が割出される、車両用のドライバー・アシスタント・システムの方法において、
該フリー空間候補を、更なる車両データ、及び/或いは、周辺情報を基に検証し、ドライバーへの出力、乃至、自動的操舵介入、及び/或いは、ブレーキ操作介入が、検証されたフリー空間を基に実施され、
該検証の際に、検知することが困難なオブジェクトが、フリー空間候補内に、如何程の確率で存在しているかも検証され、該確率値が、閾値よりも高い場合、フリー空間候補として、承認されず、
車両が、捕捉された該オブジェクトと衝突コースにあるか否かを検証し、該衝突コースにあることが割出された場合、該割り出されたオブジェクトとの衝突までの時間が、ある一定の値を下回ったときに、回避トラックを計算し、該割り出された回避トラックに基づき、該車両が、該オブジェクトをその直前で回避することを特徴とする車両用のドライバー・アシスタント・システム用の方法。
【請求項2】
検証の際に、フリー空間候補が、車道であるか否かを確認することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
車道が、一つ、或いは、複数の判定条件に基づいて検証され、該判定条件は、
辺把握システムによって車線マークが認識されたか否か、
辺把握システムによって車道脇の建造物が認識されたか否か、
リー空間候補に他の車両がいたか否か、又は、
自車両の位置を位置測定システムにより認識している際は、電子地図の情報、であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該確率値が、車両周辺に依存して割出されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
以下の一つ、乃至、複数の判定条件に応じて、歩行者がいる確率が高いと予想され、該判定条件は、
断歩道の近くにいる場合、但し、該横断歩道は、自車両の位置を位置測定システムにより認識している際は、電子地図の情報から、及び/或いは、周辺把握システムによって認識されること、
車両の速度が、設定されている閾値以下の場合、又は、
歩道の近くにいる場合、但し、該歩道は、自車両の位置を位置測定システムにより認識している際は、電子地図の情報から、及び/或いは、周辺把握システムによって認識されること、であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
対向車両に対する確率値が、以下の一つ、又は、複数の判定条件に基づいて求められ、該判定条件は、
車両の速度が、設定されている閾値以上の場合、
造物により対向車線が分離されていることを示唆する交通標識が認識されたか否か、
線マークの認識によって特定される、車線の所定の本数が認識されたか否か、
辺把握システムによって車道脇の建造物が認識された場合、但し、認識された該建造物に対して自車両と同じ側にある他の車両が自車両と同じ方向に動いているか否か、又は、
車両の位置を位置測定システムにより認識している際は、電子地図の情報、であることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項7】
検証されたフリー空間を基に回避機能が作動されることを特徴とする請求項1から6のうち一項に記載の方法。
【請求項8】
衝突のおそれがある場合に、確認されたフリー空間が無い場合、早い段階で、警告が発せられる、乃至、自動的にブレーキ操作介入が実施されることを特徴とする請求項1から7のうち一項に記載の方法。
【請求項9】
車両周辺にあるオブジェクトを捕捉する周辺把握システムと、
オブジェクトが存在しない、及び/或いは、乗り越えることが可能なオブジェクトしか存在しないことが確認されたフリー空間候補を割出すための評価ユニットと、
請求項1から8のうち一項に記載の方法による更なる車両データ、及び/或いは、周辺情報に基づいたフリー空間候補を検証するための手段と、
検証されたフリー空間に応じて、回避機能を実施する手段、及び/或いは、衝突をドライバーに警告する手段、及び/或いは、車両を制動する手段を包含するドライバー・アシスタント・システム。
【請求項10】
該回避機能が、自動操舵介入、或いは、ドライバーに対する回避助言の出力であることを特徴とする請求項9に記載のドライバー・アシスタント・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回避マヌーバ、及び/或いは、緊急ブレーキ、及び/或いは、衝突警告などドライバー・アシスタント・システム用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、周辺センサーをベースとする緊急ブレーキ・アシスト・システム(Emergency Brake Assist (EBA)やCollision Mitigation Systems (CMS))などが既知である。これらのシステムは、通常、車両前部に設けられるレーダー・センサー等の周辺センサーをベースとしている。これらのシステムは、車両前方の周辺を監視し、前方を走行している車両や物体との衝突危険度を評価している。このシステムの目的は、クリティカルな衝突の危険性がある追突状況(車間距離が詰まっていく状況)において緊急ブレーキをかける際に、ブレーキシステムを前もって充填する、或いは、油圧ブレーキ・アシスタントの作動閾値を下げることによりドライバーをサポートすることにある。新しいシステムでは、それどころか必要に応じて、ドライバーからは独立して、車両のブレーキが自動的に作動される。但しこれは、仕様に応じて、時間的、及び/或いは、強さ、及び/或いは、作動速度(作動の傾向)が、制限されている、或いは、制限されていない。
【0003】
更には、ドライバーに、前方を走行している車両やオブジェクトとの追突の危険性を警告するための追突警報システム/Forward Collision Warning (FCW)なども既知である。オブジェクトの認識は、レーダー・センサー、及び/或いは、カメラ・システムによって実施される。そして警告は、視覚的、聴覚的、及び/或いは、触覚的、例えば、短時間自動的にブレーキブレーキ圧を高めるなどして発せられる。
【0004】
追突警告や緊急ブレーキ・システムの発展系として、緊急回避システムが位置づけられる。これは、まだ市販されてはいないが、研究文献や多くの特許において既に開示されている。緊急回避システムは、例えば、車両の挙動を状況に適応させ、起こり得る緊急回避シチュエーションに、例えば、後輪操舵や横方向安定によって、備えることができる。更に、緊急回避システムは、ドライバーに、例えば、視覚的、聴覚的、或いは、触覚的に警告を発することができる。
【0005】
また、ドライバーを緊急回避マヌーバ時に、安全な車線変更が可能なように、操舵介入、及び/或いは、ブレーキ操作介入に関してサポートすることもできる。更には、システムによる自動回避も実施可能である。
【0006】
緊急回避システムは、緊急ブレーキシステムの作動を、通常、但し、必然としてではなく、前提としている。特に相対速度が大きい場合や摩擦係数が低い場合でも、衝突を避けることにおいて、回避マヌーバは、ブレーキ・マヌーバよりも幾分も後になってからでも可能である。それは、通常、制動は、自分の走行車線内において実施されるが、車線を変更し、例えば、対向車両などの危険性のある操舵を実施するよりも、運動エネルギーの低減の方が、安全である場合が多いため、緊急ブレーキシステムを、緊急回避システムの作動前提条件とすることは合理的である。
【0007】
例えば、ISO26262に基づくシステムの機能的確実性を保証するためには、特に、不必要時の誤作動があってはならない。
【0008】
追突警告と緊急ブレーキシステムの確実性担保は、通常、例えば、レーダー・データや自車両のデータ(CANデータ)など、周辺把握システムのデータを連続的に記録することによって実施されている。そして、ソフトウェアによるシグナル処理チェーンのシミュレーションによって誤作動が認識され、統計的に評価される。これにより、「オブジェクトを認識した」と言う肯定的なセンサー情報に基づいて作動するシステムの堅牢性を担保できる。その例としては、追突警告システムや緊急ブレーキシステムを挙げることができる。仮に、実在しないオブジェクトが認識された場合、誤作動する(「False Positive」エラー)。このような誤認識は、例えば、レーダーシステムでは、橋などにおいて起こり得る。即ち、機能誤作動の「False Positive」エラーは、上記機能においては、多くの場合、周辺把握システムの「False Positive」エラーに基づくものと言える。一方、回避ドライバー・アシスタント・システムにおけるフリー空間認識の場合は、逆であり、ここでは、回避空間内に、オブジェクトが存在しないことを確実に認識しなければならない。即ち、回避ドライバー・アシスタント・システムを確実に機能させるには、「False Negativ」エラーを回避できる周辺把握システムが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明の課題は、衝突の危険性がある際に、該車両のドライバーを効果的にサポートすること、並びに、回避空間を確実に認識する事である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、回避ドライバー・アシスタント・システム用の確実なフリー空間認識のための方法及び装置に関する独立請求項の特徴
−車両周辺のオブジェクトが、周辺把握システムのデータに基づいて認識され、
−オブジェクトが存在しない、及び/或いは、乗り越えることが可能なオブジェクトしか存在しないことが確認されたフリー空間候補が割出される、車両用のドライバー・アシスタント・システムの方法において、
該フリー空間候補を、更なる車両データ、及び/或いは、周辺情報を基に検証し、ドライバーへの出力、乃至、自動的操舵介入、及び/或いは、ブレーキ操作介入が、検証されたフリー空間を基に実施され、
該検証の際に、検知することが困難なオブジェクトが、フリー空間候補内に、如何程の確率で存在しているかも検証され、該確率値が、閾値よりも高い場合、フリー空間候補として、承認されず、
車両が、捕捉された該オブジェクトと衝突コースにあるか否かを検証し、該衝突コースにあることが割出された場合、該割り出されたオブジェクトとの衝突までの時間が、ある一定の値を下回ったときに、回避トラックを計算し、該割り出された回避トラックに基づき、該車両が、該オブジェクトをその直前で回避することによって解決される。
【0011】
本発明に係る方法は、車両用のドライバー・アシスタント・システムに用いられるものである。そのため、車両周辺のオブジェクトが、周辺把握システムのデータに基づいて認識される。そして、フリー空間候補、即ち、オブジェクトが存在しない、及び/或いは、例えば、周辺把握システムが確実に把握した走行レーンのマークなどの乗り越えることが可能なオブジェクトしか存在しない空間が、割出される。フリー空間候補が割り出されると、更なる車両データ、及び/或いは、周辺情報を基に、例えば、検証されたフリー空間を基になされるドライバーへの出力、自動的操舵介入、及び/或いは、ブレーキ操作介入が実施される前に、検証される。
【0012】
本発明の対象は、交通参加者の不適切な危険を回避するためのドライバー・アシスタント・システム用の確実なフリー空間認識である。例えば、回避アドバイスや自動操舵介入は、付加的な作動前提条件としてのある交通シチュエーションの「ポジティブ認識」もあった時にのみ実施される。
【0013】
検証時には、特に、該フリー空間が、車道であるか否かも確認される。ここでは、「車道」と言う用語は、車両が、危険を伴うことなく走行できる空間に対して用いる。これには、例えば、盛り上がり乗り越えることのできないオブジェクトが無い空間、及び/或いは、回避して側溝にはまることなどは避けられなければならないので、平らな地面の空間などが包含される。車道は、以下の一つ、或いは、複数の判定条件に基づいて検証されることが特に好ましい:
−通常車道の縁にある車線マークの認識は、例えば、カメラ・システムなどを装備した周辺把握システムによって実施されることが特に好ましい、
−特に、周辺把握システムによって車道脇の建造物が認識されることが好ましい、
−他の車両が、フリー空間候補にあったと言う事実は、走行可能な空間を示すインジケータであるので、他の車両が、周辺把握システムによって認識されることが好ましい、そして、
−自車両の位置を位置測定システムによって認識している場合は、電子地図からの情報も用いることが好ましい、但し、該電子地図の情報には、車両周辺の手掛かりになる情報も含まれていなければならない。
【0014】
本発明の更なる好ましい形態では、検証の際に、検知することが困難なオブジェクト、特に、歩行者や対向車両が、フリー空間候補内に、如何程の確立で存在しているかも検証され、該確率値が、閾値よりも高い場合、フリー空間候補として、承認されない。
【0015】
該確率値は、車両周辺に依存して割出されることが特に好ましい。
【0016】
本発明の好ましい形態では、一つ、乃至、複数の判定条件に応じて、歩行者に対して高い確率値が、採用されるが、そのような判定条件としては:
−横断歩道の近くにいる場合、但し、該横断歩道は、自車両の位置を位置測定システムにより認識している際は、電子地図の情報から、及び/或いは、特に好ましくは、カメラ・センサー・システム、及び/或いは、LIDARセンサーシステム等の周辺把握システムによって認識される、
−自車両の速度が閾値以下である場合、但し、該閾値は、歩行者がいる可能性が高い市内や居住区のインジケータとして用いられる、よって、閾値としては、好ましくは、30から100km/h、特に好ましくは、50から70km/hが採用される、そして、
−特に、自車両の位置を位置測定システムにより認識している際は、電子地図の情報によって、及び/或いは、周辺把握システムによって認識される歩道が存在し、これが、歩行者がいる可能性の高い場所のインジケータとして評価される場合
が挙げられる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、一つ、乃至、複数の判定条件に基づいて、対向車両が存在している確率が、評価されるが、そのような判定条件としては:
−自車両の速度が閾値よりも高いか否か(対向車両がある確率は低い)、
−好ましくは、周辺把握システムによって、建造物により車線が分離されていることを示唆する、特に、制限速度(例えば、制限速度が100km/h以上)などの交通標識が認識されたか否か(対向車両がある確率は低い)、
−特に好ましくは、周辺把握システムによる車線マークの認識によって車線の本数が認識されたか否か(車線の本数が多い場合、対向車のある確率は低いと仮定されることが好ましい)、
−特に好ましくは、周辺把握システムによって車道脇の建造物が認識された場合、但し、認識された該建造物に対して自車両と同じ側にある他の車両が、自車両と同じ方向に動いているか否か(好ましくは、対向車のある確率は低いと仮定される)、そして、
−自車両の位置を位置測定システムにより認識している際は、電子地図の情報
が挙げられる。
【0018】
本発明の特に好ましい実施形態では、上述のフリー空間認識は、緊急回避システムに用いられる。緊急回避システムは、例えば、フリー空間へ自動的な回避マヌーバを実施する、或いは、ドライバーに回避を助言する。該回避助言は、視覚的、及び/或いは、聴覚的、及び/或いは、触覚的に、ドライバーに対して伝えられる。本発明の好ましい実施形態では、代案的、或いは、付加的に確認されたフリー空間に応じて、衝突警告がドライバーに伝えられる、及び/或いは、自動的に緊急ブレーキが実施される。確認できるフリー空間が無い、即ち、回避すると言う選択肢が無い場合は、回避することが可能なシチュエーションの場合よりも早い段階で、警告が発せられる、乃至、自動的にブレーキ操作介入が実施される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】二軸四輪の車両の例を示す図である。
図2】ドライバー・アシスタント・システムの概略を示す図である。
【0020】
以下本発明を、図面と実施例に基づいて詳しく説明する。
【0021】
図1には、例として、二軸四輪の車両1が示されており、これは、周囲センサー2を有し、これにより該車両周辺の、特に、同じ車線、或いは、隣の車線、該車両1の側方、及び/或いは、前方を走っている他の車両などのオブジェクトOが、認識できる。
【0022】
該車両は、車両の側面、及び/或いは、後方も把握できるように、更にもう一つの周辺センサー、或いは、複数の周辺センサーを有していることが好ましい。該センサー、乃至、該複数のセンサーの把握領域は、図1には、示されていない。
【0023】
オブジェクトOとしては、木、歩行者、車道境界など、静的、或いは、ほぼ静的なオブジェクトが挙げられる。ここでは、例として、周辺センサー2とその車両1前方の空間角を含み、例として、オブジェクトOが、表されている把握領域が、示されている。該周辺センサー2は、例えば、当業者には既知のLIDARセンサー(Light Detection and Ranging)であるが、他の周辺センサーも採用可能である。該センサーは、図1において、例としてオブジェクトOの点Pにおいて示したごとく、オブジェクトOの捕捉された点までの距離dと、その点までの線及び車両の中心線との角度φ
を測定する。捕捉されたオブジェクトの車両1側の面は、複数の捕捉された、それらに対してセンサー・シグナルが送られる点から構成されており、オブジェクトの形とそれらの点の相関関係が作成され、オブジェクトOの基準点が求められる。基準点としては、例えば、オブジェクトOの中心点やオブジェクトの捕捉された点の中心点が、選択できる。検知された点の速度、即ち、捕捉されたオブジェクトの速度は、レーダー・センサー(ドップラー効果)の場合とは異なり、LIDAR周辺センサー2では、直接は測定できない。これは、連続するタイムステップにおいて測定された距離の差から、タクトに準じて機能しているオブジェクト認識ユニット21によって、算出される。同様に、オブジェクトの加速も位置を二度微分することによって割出すことができる。
【0024】
図2は、ドライバー・アシスタント・システムの概略的に示しているが、その構成要素の内、センサーとアクチュエーター以外は、車両1内のマイクロ・プロセッサーによって実行されるソフトウェア・モジュールとして実施されていることが好ましい。図2に示されているごとく、オブジェクト・データは、電子シグナルとして、概略的に示されているドライバー・アシスタント・システム内を決定手段22へと伝達される。決定手段22内では、オブジェクトOに関する情報からオブジェクト軌道が割り出される。更に、車両1の軌道が、ブロック24において、他の車両センサー25によって得られる車両1の走行ダイナミクス状態に関する情報から割出される。この際、特に、例えば、ホイール回転数センサーによって割り出すことのできる車両速度、舵角センサーによって測定される車両1の操舵される車輪の舵角d、対応するセンサーによって測定される車両1のヨーイング及び/或いは、横G等の情報が、用いられる。更に、車両センサー25によって測定された車両の走行ダイナミクス状態からモデル値を計算、乃至、推定することも可能である。決定手段22は、ブロック26内において、車両1が、捕捉されたオブジェクトOと衝突コースにあるか否かを検証する。衝突コースにあることが割り出された場合、これも決定手段22によって割り出された衝突タイム(TTC, Time To Collision)、即ち、割り出されたオブジェクトOとの衝突までの時間が、ある一定の値を下回った時、トラック・プリセット手段27にトリガーシグナルが、伝達される。トリガーシグナルは、トラック・プリセット手段内において、回避トラックy(x)を計算する。割出された回避トラックy(x)に基づき、ぎりぎりで、オブジェクトOを回避できるように、回避マヌーバのスタート地点が割り出される。このステップは、オブジェクトO、或いは、車両1が、コースを変更し、衝突の危険性が無くなるまで、或いは、車両1が、回避マヌーバのスタート地点に到達するまで、タイム・ステップにおいて反復されることが好ましい。このケースに達すると、回避トラックy(x)、或いは、このトラックを示すパラメータが、操舵アクチュエータ制御手段28に送られる。これが、電気機械的に作動できる前輪操舵手段Vに送られ、車両1のハンドルに、ドライバーが感じることのできるバイブレーション振動、或いは、オスチレーション振動を発生させる。この警告X1により、ドライバーに、該ドライバーが運転している車両1が、オブジェクトOに対して衝突コースにあると言う注意を促す。ドライバーの操舵は、舵角dVの変化、即ち、前輪の舵角の経時的微分
【0025】
【数1】
から割り出される。
【0026】
フリー空間認識を前提とする緊急回避システムでは、誤作動に対する機能的堅牢性の観点から、周辺センサーによるフリー空間認識のみの信頼性と範囲に依存しなくて済むように、作動は、交通シチュエーションや周辺条件が、一義的に認識された場合にのみ限定されている。
【0027】
本件発明では、付加的な作動前提条件が、用いられる。
【0028】
これら付加的前提条件は、フリー空間認識とは異なり、「ポジティブ認識」に基づくものでなければならない。
【0029】
ポジティブに認識されたデータからは、自車両がおかれている交通シチュエーション、或いは、周辺条件に対して一義的な帰納推理が可能でなければならない。そしてこれらによって、フリー空間認識に基づく現行の周辺把握センサー類が、高い確率で信頼性を有している、或いは、作動によって誤って認識されたフリー空間内の歩行者に対しての不適切な危険が起こる、或いは、道路の側溝などと言った不適切な危険が存在する確率が低くなるように、作動は、ある交通シチュエーション、或いは、周辺条件に、制限されていなければならない。
【0030】
これらの前提条件は、緊急ブレーキシステムの既に実施された作動に対する既知の作動前提条件よりも厳しいものである。即ち、認識された緊急ブレーキ・シチュエーションは、現行の周辺把握システムによるフリー空間認識が、高い確率で信頼性を有する、或いは、作動により不適切な危険が起こる確率が低いであろう交通シチュエーション、或いは、周辺条件を十分に示すものとは言えない。
【0031】
交通シチュエーション、或いは、周辺条件は、本発明の好ましい実施形態では、カメラベースのレーン認識システムによって認識された車線マークによって、隣接する車線に関しても掌握される。隣接する車線が、例えば、隣接する車線の左右の車線マークが認識されたことにより、一義的に隣接する車線として認識された場合、高い確率で、それが、車道であり、側溝ではないと判定できる。
【0032】
一義的に認識されなければならない条件を増やすことにより、適切でない、交通シチュエーションや周辺条件、特に、歩行者横断区域/横断歩道などにおいて、作動実施される確率を更に低減できる。
【0033】
他の条件としては、例えば、以下のような条件が挙げられる:
−自車両の、例えば、ホイール回転数センサーによって測定される最低速度、速度が高い場合、市内の交通シチュエーションにある確率が低く、歩行者がいる確率も低いことを意味する。
−GPS位置測定と地図マテリアルを有するナビゲーション・データから得られる自車両の位置。例えば、3車線のアウトバーン上に自車両があることを認識できる。ここに、歩行者がいる確率は、低い。
−装備している周辺把握システムにより検出された車道脇の建造物、即ち、道路の境界。
−装備している周辺把握システムによって検出された他の車両、即ち、そこも道路である確率が高い。
図1
図2