特許第6336776号(P6336776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6336776スクリュー押出機を用い、水系着色剤分散物を連続的に作成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336776
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】スクリュー押出機を用い、水系着色剤分散物を連続的に作成する方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20180528BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20180528BHJP
   B01F 3/12 20060101ALI20180528BHJP
   B01F 7/08 20060101ALN20180528BHJP
【FI】
   G03G9/08 381
   G03G9/08 365
   G03G9/08 361
   B01F3/12
   !B01F7/08 A
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-35249(P2014-35249)
(22)【出願日】2014年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-180661(P2014-180661A)
(43)【公開日】2014年9月29日
【審査請求日】2017年2月24日
(31)【優先権主張番号】13/840,499
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ティー・チャン
(72)【発明者】
【氏名】チー−ミン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン・エム・マホウスキ
(72)【発明者】
【氏名】エリック・デイビッド・ゴッドシャル
(72)【発明者】
【氏名】ジム・リー・パーソン
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−162784(JP,A)
【文献】 特開2011−032471(JP,A)
【文献】 特表2009−520053(JP,A)
【文献】 特表2011−505598(JP,A)
【文献】 特開2012−155322(JP,A)
【文献】 特開2011−240334(JP,A)
【文献】 特開2012−001718(JP,A)
【文献】 特開2013−171290(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0138739(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0002965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 13/00
B01F 3/12
B01F 7/08
B01F 15/06
C08J 3/00
G03G 9/08
G03G 9/087
G03G 9/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒不在下で、スクリュー押出機の供給区画に、着色剤を制御された速度で連続的に供給することと、
溶媒不在下で、前記スクリュー押出機の前記供給区画に、固体形態の界面活性剤を制御された速度で連続的に供給し、プレ分散物を作成することと、
前記スクリュー押出機内で、前記プレ分散物に水溶液を乳化させ、着色剤中に水が含まれる分散物を作成することと、
前記着色剤中に水が含まれる分散物を転相させ、前記スクリュー押出機内で、水中に着色剤が含まれる分散物を、該水中に着色剤が含まれる分散物が前記着色剤中に水が含まれる分散物の固体分未満の固体分を有するように、作成することと、
前記スクリュー押出機内で、前記水中に着色剤が含まれる分散物を均質化し、均質な着色剤分散物を作ることと、
前記スクリュー押出機の出口部分から、前記均質な水系着色剤分散物を集めることと、
を含み、
前記均質な着色剤分散物が、前記スクリュー押出機から出るときに濾過される方法。
【請求項2】
顔料分散物を製造するための連続プロセスであって、この連続プロセスが、
溶媒不在下で、スクリュー押出機の供給区画に顔料を制御された速度で連続的に供給することと、
溶媒不在下で、前記スクリュー押出機の前記供給区画に、固体形態の界面活性剤を制御された速度で連続的に供給することと、
前記供給区画の下流で、水を10g/分〜70g/分、20g/分〜60g/分、または30g/分〜50g/分の速度で連続的に供給し、前記顔料および前記界面活性剤を乳化させ、顔料中に水が含まれる分散物を作成することと、
すでに供給した水よりも下流でさらなる水を約30g/分〜約90g/分、約40g/分〜約80g/分、または約50g/分〜約70g/分の速度で連続的に供給し、前記顔料中に水が含まれる分散物を転相させて、該顔料中に水が含まれる分散物の固形分未満の固形分を有する、水中に顔料が含まれる分散物を作成することと、
前記スクリュー押出機内で、前記水中に顔料が含まれる分散物を連続的に均質化し、均質な水系顔料分散物を作ることと、
前記スクリュー押出機の出口区画から、前記均質な水系顔料分散物を集めることと、
を含み、
前記水系顔料分散物中の顔料の平均粒径が約138nmである前記水系顔料分散物を作る、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水系顔料分散物を調製するための連続プロセスに関する。水系顔料分散物を使用し、例えば、トナー組成物を作成してもよい。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセス(ゼログラフィープロセスとしても知られる)での現像に利用されるトナーは、一般的に、凝集プロセス中に、大きさがナノメートルのエマルションポリマーとラテックスをカラー顔料および他のトナー成分と混合し、その後、融着プロセスによる化学トナープロセスによって調製される。凝集プロセスに熱可塑性バインダー樹脂を使用してもよく、熱可塑性バインダー樹脂は、ポリスチレン、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−メタクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、アクリル、ウレタンおよびこれらのコポリマーのようないくつかの既知のポリマーであってもよい。カーボンブラックは、トナー組成物で使用する一般的な顔料である。また、カラー顔料(例えば、レッド、ブルー、グリーン、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラウン、およびこれらの混合物)を使用してもよい。例えば、ワックスおよび電荷向上添加剤のような他のトナー成分が含まれていてもよい。
【0003】
水系顔料分散物(例えばトナー組成物で使用するための水系顔料分散物)を調製するための現行プロセスは、バッチプロセスで行われる。したがって、それぞれの個々のバッチプロセスは、大量の材料の取り扱いを含むため、次のプロセスに移行する前にそれぞれのプロセスを終了させるのに、多くの時間がかかる。それに加え、攪拌したバッチタンク全体での温度、剪断場、圧送能力などの多くの変数のため、バッチごとの一貫性を達成するのは難しいことが多い。さらに、異なるバッチ反応に起因して、バッチをスケールアップすることは困難である。バッチプロセスは、温度、インペラの速度などという観点でバッチプロセスが制御できないとき、バッチ全体を中止しなければならない場合があるため、常に注意を払うことも必要である。
【0004】
したがって、トナー組成物の調製に使用する改良されたトナー成分の分散物を用いるプロセスが必要である。それに加え、もっと従来からある方法で用いる時間およびエネルギーより増えることなく、品質、均一性および大きさを維持することを含め、製造する粒子をもっと制御するプロセスが必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
制御された速度で、スクリュー押出機の供給区画に顔料を連続的に供給することと、制御された速度で、スクリュー押出機の前記供給区画に界面活性剤を連続的に供給することと、前記供給区画の下流で水を連続的に供給し、顔料および界面活性剤を乳化させ、顔料中に水が含まれる分散物を作成することと、すでに供給した水よりも下流でさらなる水を連続的に供給し、顔料中に水が含まれる分散物を転相させ、水中に顔料が含まれる分散物を作成することと、スクリュー押出機内で、水中に顔料が含まれる分散物を連続的に均質化し、均質な水系顔料分散物を作ることと、スクリュー押出機の出口区画から、前記均質な水系顔料分散物を集めることとを含む連続プロセスが本明細書に記載される。
【0006】
さらに、制御された速度で、スクリュー押出機の供給区画に着色剤を連続的に供給することと、制御された速度で、スクリュー押出機の前記供給区画に界面活性剤を連続的に供給し、プレ分散物を作成することと、スクリュー押出機内で、プレ分散物に水溶液を乳化させ、着色剤中に水が含まれる分散物を作成することと、着色剤中に水が含まれる分散物を転相させ、スクリュー押出機内で、水中に着色剤が含まれる分散物を作成することと、スクリュー押出機内で、水中に着色剤が含まれる分散物を連続的に均質化し、均質な着色剤分散物を作ることと、スクリュー押出機の出口区画から、前記均質な着色剤分散物を集めることとを含む方法も記載される。
【0007】
それに加えて、上述のプロセスによって作られる水系顔料分散物が、本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本明細書に記載するプロセスにしたがって使用可能なスクリュー押出機の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
「エマルション」という用語は、例えば、ある液体が、第2の非混和性液体中に含まれる分散物を指す。「分散物」は、例えば、2種類の物質(例えば、固体および液体)の混合物であって、片方が、他方に精密に分けられ、分散されているものを指す。「プレ分散物」は、例えば、2種類の物質がお互いに分散物であるとみなされるのに十分な分散度に達する前の2種類の物質の混合段階を指す。「均質化すること」は、例えば、粒子が液体全体に一貫性のある状態で分散または分布するまで、粒子を機械的に破壊する様式を指す。
【0010】
本明細書で使用する場合、ある量と組み合わせて使用される「約」という修飾語は、示されている値を含み、その内容によって示されている意味を有し(例えば、特定の量の測定に関連するある程度の誤差を少なくとも含む)。ある範囲という観点で使用される場合、「約」という修飾語は、2つの終点の絶対値によって定義される範囲も開示していると考えるべきである。例えば、「約2〜約4」という範囲は、「2〜4」という範囲も開示している。
【0011】
本明細書には、着色剤分散物を製造するための連続プロセスが記載される。
【0012】
図1には、着色剤分散物を作るためのプロセスの模式図が示されている。このプロセスは、スクリュー押出機35(マルチスクリュー押出機として示されている)を使用し、この中で、着色剤がスクリュー押出機の供給区画に供給される。スクリュー押出機35は、着色剤を供給するための少なくとも1つのフィーダまたは供給ライン15と、界面活性剤をスクリュー押出機に供給するための少なくとも1つのフィーダまたは供給ライン16とを備えている。例えば、フィーダは、ホッパであってもよい。
【0013】
着色剤は、制御された速度で、例えば、着色剤フィーダ15を通ってスクリュー押出機35に連続的に供給される。着色剤は、スクリュー押出機に供給されるとき、固体相(例えば、ペレットまたは粉末の形態)であってもよい。
【0014】
それに加えて、以下に記載するプロセスは、顔料について言及する。しかし、本明細書に記載のプロセスに、顔料、染料およびこれらの混合物を含む、任意の色の種々の適切な着色剤を使用してもよい。
【0015】
一般的に、使用可能な顔料および染料は、REGAL 330(登録商標);(Cabot)、アセチレンブラック、Lampブラック、アニリンブラック;マグネタイト、例えば、MobayマグネタイトであるMO8029(商標)、MO8060(商標);Columbianマグネタイト;MAPICO BLACKS(商標)および表面処理されたマグネタイト;PfizerマグネタイトであるCB4799(商標)、CB5300(商標)、CB5600(商標)、MCX6369(商標);Bayerマグネタイト、BAYFERROX 8600(商標)、8610(商標);Northern Pigmentsマグネタイト、NP−604(商標)、NP−608;MagnoxマグネタイトであるTMB−100(商標)またはTMB−104(商標)を含む、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブラウン、またはブルーの顔料または染料、およびこれらの混合物である。他の着色剤としては、例えば、フタロシアニンHELIOGEN BLUE L6900(商標)、D6840(商標)、D7080(商標)、D7020(商標)、PYLAM OIL BLUE(商標)、PYLAM OIL YELLOW(商標、PIGMENT BLUE 1(商標)(Paul Uhlich & Company,Inc.から入手可能)、PIGMENT VIOLET 1(商標)、PIGMENT RED 48(商標)、LEMON CHROME YELLOW DCC 1026(商標)、E.D.TOLUIDINE RED(商標)、BON RED C(商標)(Dominion Color Corporation,Ltd.、トロント、オンタリオから入手可能)、NOVAPERM YELLOW FGL(商標)、HOSTAPERM PINK E(商標)(Hoechst製)、CINQUASIA MAGENTA(商標)(E.I.DuPont de Nemours & Companyから入手可能)などが挙げられる。選択可能なマゼンタの例としては、例えば、Color IndexでCl 60710、Cl Dispersed Red 15として特定される2,9−ジメチル置換キナクリドンおよびアントラキノン染料、Color IndexでCl 26050、Cl Solvent Red 19などとして特定されるジアゾ染料などが挙げられる。他の着色剤は、Pigment Red PR81:2およびCI 45160:3のようなマゼンタ着色剤である。選択可能なシアンの具体例としては、銅テトラ(オクタデシルスルホンアミド)フタロシアニン、Color IndexでCl 74160、Cl Pigment Blueとして列挙されるx−銅フタロシアニン顔料、Color IndexでCl 69810として特定されるAnthrathrene Blue、Special Blue X−2137などが挙げられ、一方、選択可能なイエローの具体例は、ジアリーリドイエロー3,3−ジクロロベンジデンアセトアセトアニリド、Color IndexでCl 12700、Cl Solvent Yellow 16として特定されるモノアゾ顔料、Color IndexでForum Yellow SE/GLN、Cl Dispersed Yellow 33として特定されるニトロフェニルアミンスルホンアミド、2,5−ジメトキシ−4−スルホンアニリドフェニルアゾ−4’−クロロ−2,5−ジメトキシアセトアセトアニリド、Permanent Yellow FGL、PY17、CI 21105、および既知の適切な染料、例えば、レッド、ブルー、グリーン、Pigment Blue 15:3 C.I.74160、Pigment Red 81:3 C.I.45160:3、Pigment Yellow 17 C.I. 21105などが挙げられる。
【0016】
界面活性剤を着色剤と同じ供給ラインを通して、または別個の供給ラインを介して押出機に供給してもよい。例えば、界面活性剤を、制御された速度で、例えば、別個の界面活性剤供給ライン16を介し、押出機の同じ1個の投入点に連続的に供給する。または、界面活性剤を連続的に、かつ着色剤と同時に着色剤フィーダに供給してもよい。界面活性剤は、押出機に供給されるとき、固体相(例えば、粉末またはペレットの形態)であってもよい。界面活性剤を固体形態で使用する利点の1つは、界面活性剤溶液を製造する余分の処理工程がないことであり、これにより生産性が上がる。それに加えて、界面活性剤を固体形態で使用すると、驚くべきことに、また予想できないことに、生成する着色剤分散物の粒径および粒度分布が、液体界面活性剤を用いたバッチ生産で達成されるものよりも、固体界面活性剤を用いたバッチ生産で達成されるものに近くなり、これにより、分散物の品質が向上する。さらに、界面活性剤を固体形態で使用することによって、押出機のスクリュー速度を小さくした状態で供給速度を大きくすることができ、これにより、処理装置の摩耗や割れを減らしつつ、生産性を上げることができた。
【0017】
界面活性剤は、選択した着色剤について、例えば、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤を含む任意の適切な界面活性剤から選択されてもよい。アニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性剤は、「イオン系界面活性剤」という用語に包含される。界面活性剤は、着色剤の約0.01重量%〜約5重量%、例えば、着色剤の約0.75重量%〜約4重量%、例えば、着色剤の約1重量%〜約3重量%の量で加えられてもよい。
【0018】
利用可能な非イオン系界面活性剤の例としては、例えば、ポリアクリル酸、メタロース、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール(Rhone−Poulenacから、IGEPAL CA−210(商標)、IGEPAL CA−520(商標)、IGEPAL CA−720(商標)、IGEPAL CO−890(商標)、IGEPAL CO−720(商標)、IGEPAL CO−290(商標)、IGEPAL CA−210(商標)、ANTAROX 890(商標)、ANTAROX 897(商標)として入手可能)が挙げられる。適切な非イオン系界面活性剤の他の例としては、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドのブロックコポリマーが挙げられ、SYNPERONIC PE/Fとして市販されているもの、例えば、SYNPERONIC PE/F 108を含む。
【0019】
利用可能なアニオン系界面活性剤としては、サルフェートおよびスルホネート、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキルのサルフェートおよびスルホネート、酸(例えば、Aldrichから入手可能なアビエチン酸)、NEOGEN(登録商標)、第一工業製薬株式会社から得られるNEOGEN SC(商標)、これらの組み合わせなどが挙げられる。他の適切なアニオン系界面活性剤としては、例えば、DOWFAX(商標)2A1(The Dow Chemical Company製のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート)、および/またはTayca Corporation(日本)製の分岐したナトリウムドデシルベンゼンスルホネートであるTAYCA POWER BN2060が挙げられる。これらの界面活性剤と、任意の上述のアニオン系界面活性剤の組み合わせを利用してもよい。
【0020】
カチオン系界面活性剤の例としては、例えば、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、ベンザルコニウムクロリド、セチルピリジニウムブロミド、C12、C15、C17トリメチルアンモニウムブロミド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、MIRAPOL(商標)、ALKAQUAT(商標)(Alkaril Chemical Companyから入手可能)、Kao Chemicalsから入手可能なSANIZOL(商標)(ベンザルコニウムクロリド)など、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0021】
着色剤および界面活性剤を、任意の適切な速度でスクリュー押出機の供給区画に供給し、水系着色剤分散物を連続的に製造してもよい。例えば、着色剤および界面活性剤を、例えば、約1lb/時〜約10lb/時、約2lb/時〜約8lb/時、または約3lb/時〜約7lb/時の速度で押出機の供給区画に供給してもよい。上述の速度は、供給区画を通り、スクリュー押出機へと供給される着色剤と界面活性剤を組み合わせた量をあらわす。
【0022】
スクリュー押出機35の供給区画に供給した後、着色剤および界面活性剤は、スクリュー押出機の混合区画5Aを通る。スクリュー押出機のこの区画で、着色剤が機械的に破壊され、任意の凝集した粒子を破壊し、着色剤と界面活性剤を混合してプレ分散物を作成する。
【0023】
乾燥成分を混合する下流で、プレ分散物が、スクリュー押出機内の着色剤中の水を作成する区画5Bに入る。スクリュー押出機内の着色剤中の水を作成する区画5Bの中で、水溶液(例えば、水、例えば、脱イオン水(図1ではDIW))がスクリュー押出機35に供給される。この水溶液は、例えば、注入によってスクリュー押出機35に供給されてもよい。例えば、制御された速度で、加圧した供給ポンプを通って水溶液をスクリュー押出機35に注入してもよい。プレ分散物を上の水溶液と混合し、水溶液とともに乳化させ、着色剤中に水が含まれる分散物を作成する。混合物がこの区画を通るにつれて、着色剤、界面活性剤、水溶液が連続的に混合し、および/または分散する。
【0024】
水溶液を、着色剤中に水が含まれる分散物を作成するのに必要な速度でスクリュー押出機に供給してもよい。例えば、約10g/分〜約70g/分、約20g/分〜約60g/分、または約30g/分〜約50g/分の速度で水溶液を供給してもよい。
【0025】
顔料中に水が含まれる分散物を作成する下流で、着色剤中に水が含まれる分散物は、スクリュー押出機35内の顔料中の着色剤を作成する区画5Cに入る。スクリュー押出機内の顔料中の着色剤を作成する区画5Cの中で、第2の水溶液をスクリュー押出機35に供給してもよい。この水溶液は、すでに供給した水溶液と同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、水溶液は、水であってもよい。水は、例えば、脱イオン水であってもよい。この水溶液は、例えば、注入によってスクリュー押出機35に供給されてもよい。例えば、制御された速度で、加圧した供給ポンプを通って水溶液をスクリュー押出機35に注入してもよい。水溶液をさらに供給すると、着色剤中に水が含まれる分散物の転相が起こる。分散物は、このようにして、押出機のこの区画の中で、着色剤中に水が含まれる分散物から、水中に着色剤が含まれる分散物に変化する。混合物がこの区画を通るにつれて、着色剤、界面活性剤、水溶液が連続的に混合し、および/または分散する。
【0026】
転相を起こさせるのに必要な任意の速度で水溶液を注入してもよい。例えば、水溶液を、約30g/分〜約90g/分、約40g/分〜約80g/分、または約50g/分〜約70g/分の速度で供給してもよい。
【0027】
転相を起こさせるための第2の水溶液の供給は、2回の別個の供給に分けられてもよく、この場合、ある供給は、他の供給より下流であり、下流の方の第2の水の供給によって、水中に顔料が含まれる分散物が生成する。当業者は、着色剤の配合、成分の供給速度、スクリュー押出機の混合速度に基づいて第2の供給をいつ2回の供給に分けるべきかを決定することができるだろう。
【0028】
この章で導入されたこのさらなる水溶液は、すでに供給した水溶液と同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、上に記載したように、水溶液は、水(例えば、脱イオン水)であってもよい。この水溶液は、例えば、注入によってスクリュー押出機35に供給されてもよい。例えば、制御された速度で、加圧した供給ポンプを通って水溶液をスクリュー押出機35に注入してもよい。例えば、水溶液を、約60g/分〜約120g/分、約70g/分〜約110g/分、または約80g/分〜約100g/分の速度でスクリュー押出機に供給してもよい。
【0029】
水中に顔料が含まれる分散物を作成した後、水中に顔料が含まれる分散物は、スクリュー押出機35を下流に進み続け、均質化区画5Dと呼ばれる第4の区画に入り、この場所で、水中に顔料が含まれる分散物の均質化が起こる。この均質化区画5Dで、着色剤および界面活性剤が下流で混合し続け、均質な水系分散物を生成する。
【0030】
次いで、生成した均質な水系分散物を、スクリュー押出機35の末端40で集める。場合により、分散物がスクリュー押出機を出るとき、均質な水系分散物がフィルターまたはふるい60を通る。フィルターまたはふるいは、望ましい粒径範囲を超える粒子を濾過することができる。
【0031】
フィルターまたはふるいは、場合により、自動変更器と加圧トランスデューサ70とを備えていてもよい。自動変更器は、加圧トランスデューサによって検出される圧力変化に応答して、スクリュー押出器に接続するフィルターまたはふるいを変更する。当業者は、望ましい均質な水系分散物を製造するために、どのようにして適切なふるい、フィルター、自動変更器、加圧トランスデューサを選択するかがわかる。
【0032】
上に記載したように、本明細書に記載する方法とともに用いるスクリュー押出機35は、着色剤を供給するための少なくとも1つのフィーダと、界面活性剤をスクリュー押出機に供給するための少なくとも1つのフィーダを備えている。例えば、フィーダは、ホッパであってもよい。スクリュー押出機35は、さらに、バレル50、少なくとも1つのスクリュー25(例えば、2つのスクリュー)、少なくとも1つの加熱器(図示せず)、温度を制御するための温度制御熱電対(図示せず)を備えている。スクリューシャフトがギアボックス(図示せず)によってモータ45に接続しており、スクリューを回転させる。スクリュー速度は、この様式で制御されてもよい。バレル50は、スクリューのための筐体を与え、本明細書に記載するプロセス中の混合、分散、乳化、均質化に用いられる。バレル50とスクリュー25は、区画に分けられていてもよい。バレル50は、区画に分けられたバレルであってもよく、区画は、独立して、加熱され、制御されてもよい。例えば、バレル50とスクリュー25は、13区画に分けられていてもよい。
【0033】
上に記載したそれぞれの区画は、スクリュー押出機の別個で個々の区画で構成されていてもよい。個々の区画は、上に記載したスクリュー区画を設計するために、いくつかがまとまっていてもよい。一般的に、区画をまとめることによって作られた個々の区画は、同じ温度まで加熱または冷却され、同じスクリュー速度を有する。しかし、個々の区画は、別個に独立して、望ましい温度まで加熱または冷却されてもよい。言い換えると、それぞれの区画は、他の任意の区画と異なる温度または同じ温度まで加熱されてもよい。例えば、それぞれの区画は、約25℃〜約110℃、約30℃〜約105℃、または約35℃〜約100℃の温度まで加熱されてもよい。スクリュー押出機35が区画に分けられており、それぞれの区画の温度を別個に加熱し、制御することができるため、非常に大きな量を同時に加熱し、制御することを含む大きなバッチ攪拌タンクとは異なり、処理温度の制御は、もっと簡単にもっと正確である。スクリュー押出機のバレルに沿って異なる温度プロフィールを設定することができるので、バッチプロセスでは達成されないような粒径および均一性のかなり良好な制御が可能になる。
【0034】
水系顔料分散物を作成するのに必要な任意の速度でスクリューを回転させてもよい。例えば、スクリューを毎分約100回転(rpm)〜約1000rpm、例えば、約200rpm〜約800rpm、または約300rpm〜約600rpmの速度で回転させてもよい。
【実施例】
【0035】
この例(実施例)では、同時に回転し、間にメッシュが入ったツインスクリュー押出機(ZSK25)を使用した。
【0036】
6.6lb/時の粉末形態のカラー顔料(Carbon Black R330)(一次粒径200〜300nm)、0.44lb/時の界面活性剤粉末(Tayca BN2060)をホッパに入れ、次いで、ホッパから比率15:1、速度6.6lb/時でスクリュー押出機の供給区画に一緒に供給し、プレ分散物を作った。スクリュー押出機の区画1〜11を約40℃の温度まで加熱し、区画12を約70℃に加熱し、区画13を約100℃に加熱した。スクリューを約450rpmの速度で回転させた。
【0037】
区画4にある第1の水溶液の注入点で、脱イオン水(DIW)を40g/分の速度で注入した。水、界面活性剤、着色剤の混合物が押出機の中を流れるにつれて、成分が混合し、顔料中に水が含まれる分散物が生成した。顔料中に水が含まれる分散物が生成した後、第1の水注入点よりも下流にある区画9の第2の水溶液注入点でさらなるDIWを65g/分の速度で注入し、顔料中に水が含まれる分散物が転相し始めた。顔料中に水が含まれる分散物がスクリュー押出機の中で混合され続け、第1および第2の水溶液注入点よりも下流にある区画11の第3の水溶液注入点へと流れた。ここで、DIWを90g/分の速度で注入し、顔料中に水が含まれる分散物を、水中に顔料が含まれる分散物に転相させた。水中に顔料が含まれる分散物がスクリュー押出機の中を流れるにつれて、水中に顔料が含まれる分散物がさらに均質化した。次いで、均質化した分散物は、残存している粗い粒子を濾過するために自動ふるい変更器を通って押出機を出て、均質化した分散物を集めた。押出機の末端で集められた均質化した分散物は、固形分濃度が17.5%であった。
【0038】
固形分濃度は、合計重量中の顔料濃度によって決定され、すなわち、顔料供給速度を、界面活性剤の合計および合計水注入速度で割り算する(6.6*100/(0.44+30.76))。Microtrac Nanotracを用い、懸濁した顔料粒子の粒度分布を決定する。粒度分布の測定は、それぞれの粒子の動きから作られるドップラーシフト光を測定することができる(ブラウン運動)レーザー光散乱技術を用いることによって達成される。これらのシフトによって作られるシグナルは、粒子の大きさに比例する。次いで、これらのシグナルを捕捉し、粒度分布に数学的に変換する。測定結果を表1に示す。
【0039】
比較のために、上述の実験から得た結果を、2006年11月21日に出願されたChungらに対する米国特許公開第2008/0138738号の実施例2(Chung)(比較例)の結果と比較した。Chungの実施例2では、使用した界面活性剤がTayca BN2060の2%溶液であり、スクリュー速度が1,000rpmであり、顔料を押出機に2.2lb/分の速度で供給する以外は、連続プロセスを使用して着色剤顔料分散物を作成した。得られた顔料分散物は、固形分濃度が10%であった。
【0040】
実施例および比較例の結果を、バッチプロセスで得られた粒径(NIPX−BK27)(Control)と比較した。
【表1】
【0041】
表1に示すように、固体界面活性剤を使用して着色剤分散物を作成する場合、組成物の平均粒径は、驚くべきことに、また予測できないことに、コントロールに近い値まで小さい。それに加えて、数平均(MN)および重量平均(MV)は、驚くべきことに、また予測できないことに、コントロールに近い値まで小さい。
【0042】
したがって、この比較結果は、固体形態の界面活性剤を用い、少なくとも以下の驚くべき、予測できない結果が得られることを示している。(1)界面活性剤用液を製造する余分な処理工程がなく、それによって、生産性が上がり、費用が下がる、(2)着色剤の供給速度を2lb/時〜6.6lb/時まで上げてもよく、それによって、生産性が上がる、(3)スクリュー速度を実質的に1,000rpm〜約450rpmまで下げてもよく、それによって、処理装置の摩耗や割れを減らし、(4)粒径および粒度分布が、液体界面活性剤を用いたバッチ生産で達成されるものよりも、固体界面活性剤を用いたバッチ生産で達成されるものに近く、これによって水系着色剤分散物の品質が向上する。
【0043】
種々の上に開示した特徴および機能および他の特徴および機能、またはこれらの改変例を多くの他の異なるシステムまたは用途と望ましい状態で組み合わせてもよいことは明らかであろう。さらに、現時点で予測されないか、または予期されない種々の改変例、修正例、変形例または改良が、今後当業者によってなされてもよく、これもまた以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
図1