(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6336783
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年6月6日
(54)【発明の名称】ゴム射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/74 20060101AFI20180528BHJP
B29C 45/78 20060101ALI20180528BHJP
【FI】
B29C45/74
B29C45/78
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-40753(P2014-40753)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-166135(P2015-166135A)
(43)【公開日】2015年9月24日
【審査請求日】2016年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177058
【氏名又は名称】三友工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】田中 克巳
【審査官】
深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭42−008228(JP,B1)
【文献】
実開平05−063817(JP,U)
【文献】
特開平06−079765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 31/00−31/10,37/00−37/04,45/00−45/24,45/46−45/63,45/70−45/72,45/74−45/84,71/00−71/02
B29B 7/00−11/14,13/00−15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体用流体が流れる第1循環通路を有する押出用シリンダーを有するゴム押出機と、
前記熱媒体用流体が流れる第2循環通路を有する前記押出用シリンダーより設定温度が高い射出用シリンダーを有するゴム射出機
と、
前記射出用シリンダーの設定温度と同一又は若干高い温度に調整された前記熱媒体用流体を加熱する1つの温調ユニットと、
前記温調ユニットで加熱された前記熱媒体流体が前記第1循環通路を経由して前記温調ユニットに戻る第1流路と、
前記温調ユニットで加熱された前記熱媒体流体が前記第2循環通路を経由して前記温調ユニットに戻る第2流路と、
前記第1流路に設けられた温度調節弁と、
前記押出用シリンダー又は前記押出用シリンダーの押出口の温度を検知する温度センサーと、
前記温度センサーの温度情報を基に、前記温度調節弁の開閉を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とするゴム射出成形機。
【請求項2】
前記温度調節弁と前記温調ユニットとの間の第1流路の一部と、前記温調ユニットと前記第2循環経路との間の第2流路の一部とは、共有された流路であることを特徴とする請求項1記載のゴム射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリプラスティケーティング式の射出成形機(いわゆるプリプラ式)においては、ゴム押出機とゴム射出機の両方の加熱する必要がある。しかし、一般にゴム押出機とゴム射出機の設定温度はそれぞれ異なることから、それぞれに温調ユニットを設けて個別に温度制御を行っていた。
【0003】
しかし、このようにゴム押出機とゴム射出機のそれぞれに温調ユニットを設けると、温調ユニットが2つ必要であるため、コストが嵩む上、それぞれの温調ユニットを設置するスペースも必要となるという問題点があった。
【0004】
かかる点を解決したものとして、ゴム成形用射出装置において、射出シリンダー内のゴム材料の温度調節に際しての熱効率及び応答性を向上させ、また装置の重量を軽減することを目的として、射出シリンダーの外周面を覆うようにして薄い円筒状の温調室を設け、その外側にバンドヒートを配設し、一方で、熱媒体油を循環させるための外部通路上にポンプと空冷器とを設けたゴム成形用射出装置が提案されている(特許文献1)。
【0005】
かかるゴム成形用射出装置によれば、バンドヒーターによる加熱と空冷器による空冷によって、熱媒体流体の温度を調節し、間接的に射出シリンダーの温調を行うというものである。
【0006】
しかし、一端、バンドヒーターで加温した熱媒体油が直接押出シリンダーの温調室に流れる構造であるため、射出シリンダー側の温度制御は容易であるが、押出シリンダー側の温度制御が非常に困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平5−35242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、こうした課題を鑑みてなされたものであり、それぞれ異なる温度設定がされている押出用シリンダーと射出用シリンダーの両方を、1つの温調ユニットによってそれぞれの温度を制御することができるゴム射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0010】
本発明のゴム射出成形機は、
熱媒体用流体が流れる第1循環通路を有する押出用シリンダーを有するゴム押出機と、
前記熱媒体用流体が流れる第2循環通路を有する射出用シリンダーを有するゴム射出機と、
前記熱媒体用流体を加熱する温調ユニットと、
前記温調ユニットで加熱された前記熱媒体流体が前記第1循環通路を経由して前記温調ユニットに戻る第1流路と、
前記温調ユニットで加熱された前記熱媒体流体が前記第2循環通路を経由して前記温調ユニットに戻る第2流路と、
前記第1流路に設けられた温度調節弁と、
前記押出用シリンダー又は前記押出用シリンダーの押出口の温度を検知する温度センサーと、
前記温度センサーの温度情報を基に、前記温度調節弁の開閉を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
かかる構成を採用することによって、一つの温調ユニットによって所定の温度に制御された熱媒体流体を一方の射出用シリンダーに常時循環させ、他方温度の低い押出用シリンダーには間欠的に熱媒体流体を循環させることができる。これにより、2つの温調ユニットを必要とすることなく、1つの温調ユニットで温度制御された熱媒体流体を使用して、それぞれ異なる押出用シリンダーと射出用シリンダー両方の温度制御を行うことができる。また、熱媒体流体の温度は、高温に設定された射出シリンダーの温度に対応するように常に一定の温度に加熱すればよく、この温度の熱媒体流体をそのまま冷却することなく押出用シリンダーの温度調整に使用できるので、特に熱媒体流体の温度を冷却させる冷却装置を設ける必要はない。
【0012】
また、本発明にかかるゴム射出成形機において、前記温度調節弁と前記温調ユニットとの間の第1流路の一部と、前記温調ユニットと前記第2循環経路との間の第2流路の一部とは、共有された流路であることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、共有された流路にポンプを設置すれば、1つのポンプで第1流路及び第2流路の両方の熱媒体流体を循環させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかるゴム射出成形機によれば、それぞれ異なる温度設定がされている押出用シリンダーと射出用シリンダーの両方を1つの温調ユニットによって温度制御することができるゴム射出成形機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態にかかるゴム射出成形機100の模式図である。
【
図2】第2実施形態にかかるゴム射出成形機100の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について、図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態にかかるゴム射出成形機100が
図1に示されている。
図1は、第1実施形態にかかるゴム射出成形機100の構成の概略図を示す。
【0017】
第1実施形態にかかるゴム射出成形機100は、いわゆるプリプラ式のゴム射出成形機であり、主として、ゴム押出機10、ゴム射出機20及び温調ユニット30を備えている。
【0018】
ゴム押出機10は、加熱したゴムをゴム射出機20に押し出すための装置であり、押出用シリンダー11と、この押出用シリンダー11の内部に設けられたスクリュー12とを備えている。押出用シリンダー11には、ゴムを加熱するため、熱媒体用流体1を循環させるためのゴム押出機10側の第1循環通路14が押出用シリンダー11の外周を覆うように設けられている。この第1循環通路14は、第1流入口14a及び第1流出口14bを備えており、後述する熱媒体用流体11を加熱し、所定の温度に制御する温調ユニット30と外部管40を介して連通して形成されている。ゴム押出機10は、リボン化されたゴムをゴム供給口90から供給され、供給されたゴムをスクリュー12の回転により混練し、かつ加熱して予備可塑化し、流動性を高めた状態にし、ゴムを前進させて押出用シリンダー11の先端の押出口15から押し出すことができる。
【0019】
ゴム射出機20は、射出用シリンダー21と、この射出用シリンダー21の内部に設けられた射出用プランジャー22とを備えている。射出用シリンダー21には、ゴムを加熱するため、熱媒体用流体1を循環させるためのゴム射出機20側の第2循環通路24が射出用プランジャー22の周囲を取り囲むように設けられている。この第2循環通路24は、第2流入口24a及び第2流出口24bを備えており、後述する熱媒体用流体11を加熱し、所定の温度に制御する温調ユニット30と外部管40を介して連通して形成されている。ゴム射出機20は、前述した押出口15から射出チャンバー23内にゴムが装入されると、ゴムの圧力により、射出用プランジャー22は、図中上方に移動する。そして、射出チャンバー23内へ所定量のゴムが装入された後、ゴムの温度が適切な温度になった状態で、射出用プランジャー22が図中下方に移動して、射出用シリンダー21の先端部のノズル25から成形用型(図示しない。)に押し出される。
【0020】
温調ユニット30は、熱媒体用流体1を加熱するためのユニットであり、特に限定するものではなく、既知の温調ユニット30を用いることができる。例えば、鉄製の容器31を有し、内部に熱媒体用流体1を加熱するためのヒーター32が内蔵されているもの等を使用することができる。温調ユニットには温調ユニット30内の熱媒体用流体1内に取り付けられた温度センサー(図示しない。)からの温度情報を検知して、ヒーターのON/OFFを制御する温度調整用制御部33が設けられている。
【0021】
外部管40は、前述したゴム押出機10、ゴム射出機20及び温調ユニット30との間で熱媒体用流体1を循環させるための管である。外部管40は、温調ユニット30から温調された熱媒体用流体1を送出する第1外部管41と、第1外部管41からゴム押出機10の第1流入口14aに連通している第2外部管42と、第1外部管41からゴム射出機20の第2流入口24aに連通している第3外部管43と、ゴム押出機10の第1流出口14bと温調ユニット30とを連通している第4外部管44と、ゴム射出機20の第2流出口24bと温調ユニット30を連通している第5外部管45とを備えている。
【0022】
第1外部管41にはポンプ51が設けられており、このポンプ51によって、熱媒体用流体1は、強制循環させられる。熱媒体用流体1は、温調ユニット30から第1外部管41、第2外部管42、第1流入口14a、第1循環通路14、第1流出口14b及び第4外部管44の順に流れ、再度、温調ユニット30に戻る第1流路Aと、温調ユニット30から第1外部管41、第3外部管43、第2流入口24a、第2流出口24b及び第5外部管45の順に流れ、再度、温調ユニット30に戻る第2流路Bの2系統を順次循環することになる。ポンプ51は、第1流路Aと第2流路Bの共通流路部に1つ設けられており、この1つのポンプで両方の流路を循環させることができる。
【0023】
第2外部管42には、途中に温度調節弁52が設けられており、弁の開閉によって第1流路Aの熱媒体用流体1の流れを止めることができる。温度調節弁52は、押出用シリンダー11又は押出口15近傍に設けられた温度センサー(図示しない。)からの温度情報を検知して、温度調節弁52の開閉をコントロールする制御部53と連結されている。
【0024】
熱媒体用流体1は、特に限定するものではないが、好ましくは熱媒体油が用いられる。
【0025】
以上のように構成されたゴム射出成形機100は、射出成形をするに際し、押出用シリンダー11と射出用シリンダー21の温度を制御する必要がある。一般的に押出用シリンダー11の設定温度は、射出用シリンダー21の温度より低い設定温度を有している。第1実施形態においては、この異なる温度設定を以下のようにして制御する。例えば、押出用シリンダー11を80℃に設定し、射出用シリンダー21を100℃に設定する場合、温調ユニット30を100℃若しくは外部管等での冷却等を考慮し、100℃より若干高めの温度に設定し、熱媒体用流体1を温調ユニット設定温度まで加熱する。第2流路Bはポンプ51によって成形加工時においては常時強制循環されているので、温調ユニット設定温度の熱媒体用流体1が射出用シリンダー21の第2循環通路24に常時流れていることになる。そのため、射出用シリンダー21は、常に100℃近傍の温度を保つことができ、射出用チャンバー23内に装填されるゴムは一定の温度に保たれることになる。
【0026】
一方、押出用シリンダー11は、押出用シリンダー11又は押出口15に設けられた温度センサーによって、80℃以下である場合には、温度調節弁52が開放され、温調ユニット設定温度の熱媒体用流体1が第1流路Aを流れ、第1循環通路14に熱媒体用流体1が流れることになる。これにより、押出用シリンダー11は加熱され、80℃の温度に到達すると、制御部53によって温度調節弁52は閉塞される。そのため、押出用シリンダー11が80℃以上に温度が上がることが抑えられる。熱媒体用流体1の流れが停止することで、押出用シリンダー11は、温度が低下していく。すると温度センサーが一定の温度まで低下したこと、例えば79℃になったこと、を検知して、この温度情報を基に制御部53によって、再度、温度調節弁52が開放され、再度、温調ユニット設定温度の熱媒体用流体1が第1循環通路14に流れることになり、再度、押出用シリンダー11の温度が上昇していく。そして、また80℃の温度に到達すると温度調節弁52は閉塞される。この繰り返しにより、押出用シリンダー11は、一定の範囲の温度に保たれることになる。よって、押出用シリンダー11内に装填されるゴムは一定の範囲の温度に保たれることになる。
【0027】
こうして構成された第1実施形態にかかるゴム射出成形機100によれば、前述したように、押出用シリンダー11と射出用シリンダー21とでの異なる設定温度を制御するために、従来は、2系統の温調ユニットを設けていたのであるが、1つの温調ユニット30によって、2つの異なる設定温度を制御することができる。このように、温調ユニット30が1つで済むため、コストの低減化が図れるとともに、設置スペ−スの節約にも資する。
【0028】
(第2実施形態)
図2に本発明にかかる第2実施形態のゴム射出成形機100が図示されている。第2実施形態にかかるゴム射出成形機100は、第1流路Aと第2流路Bが完全に分離している点が第1実施形態と異なる。
【0029】
第2実施形態においては、第1実施形態における第1流路と第2流路と共有している第1外部管41が存在せず、それぞれ別個独立に流路が形成されている。そのため、ポンプはそれぞれの流路に設けられている。また, 押出用シリンダー11又は押出口15近傍に設けられた温度センサー(図示しない。)からの温度情報を検知する制御部53aは、温度調節弁52に加えて、第1流路側のポンプのオン/オフも同時に制御するように形成されている。つまり、80℃以下である場合には、温度調節弁52が開放されるとともにポンプ51aを稼働させる。これにより、温調ユニット設定温度の熱媒体用流体1が第1流路を流れ、第1循環通路14に熱媒体用流体1が流れることになる。これにより、押出用シリンダー11は加熱され、80℃の温度に到達すると、制御部53によって温度調節弁52は閉塞され、ポンプ51aも稼働を停止する。そのため、押出用シリンダー11が80℃以上に温度が上がることが抑えられる。熱媒体用流体1の流れが停止することで、押出用シリンダー11は、温度が低下していく。すると温度センサーが一定の温度まで低下したこと、例えば79℃になったこと、を検知して、この温度情報を基に制御部53aによって、再度、温度調節弁52が開放されるとともにポンプ51aが稼働する。こうして、押出用シリンダー11は、一定の範囲の温度に保たれることになる。よって、押出用シリンダー11内に装填されるゴムは一定の範囲の温度に保たれることになる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施しうる。
【0031】
上述した実施形態においては、例えば、押出用シリンダー11を80℃に設定し、射出用シリンダー21を100℃に設定したが、この温度に限定するものではなく、適宜、使用場所、使用機器、使用材料等に応じて設定温度は変更しうる。また、制御部53のオン/オフの制御温度を79℃と80℃に設定したが、この温度も限定するものではなく、適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
上述した実施の形態で示すように、ゴム射出成形機として産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
10…ゴム押出機、11…押出用シリンダー、12…スクリュー、
14…第1循環通路、14a…第1流入口、14b…第1流出口、
15…押出口、20…ゴム射出機、21…射出用シリンダー、
22…射出用プランジャー、24…第2循環通路、24a…第2流入口、
24b…第2流出口、25…ノズル、30…温調ユニット、31…容器、
32…ヒーター、33…温度調整用制御部、40…外部管、41…第1外部管、
42…第2外部管、43…第3外部管、44…第4外部管、45…第5外部管、
51…ポンプ、51a…ポンプ、52…温度調節弁、53…制御部、
53a…制御部、90…ゴム供給口、100…ゴム射出成形機