(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
制御機器が収納された箱状の本体(A)と該本体の前後にプーリ(B)が装着されており、機体中央長手方向に機器付設用のセンターベースバー(C)が備えられており、前記センターベースバー設置部分を除いた機体の全巾に掛け回された左右の走行用クローラ(D)、機体の前後の左右に回動可能な腕状のサブクローラユニット(G)、有線操縦用の通信ケーブル出退機構(L)を備えた無人走行用の移動体(E)において、
有線操縦用の通信ケーブル出退機構(L)は、センターベースバーに搭載されており、リーリング機構と駆動機構を備えており、両者間には磁力による駆動伝達機構を有しており、さらに、張力調整装置を備えており、該張力調整装置の位置によって、リーリング機構の回転方向を制御することを特徴とする無人走行移動体。
通信ケーブル出退機構(L)のリーリング装置は、リールと2本の支柱がセンターベースバーに取り付けられており、リールに巻かれた通信ケーブルをセンターベースバーに立設された第1の支柱を経由して第2の支柱から操縦装置側へ延長する案内径路を備えており、
張力調整装置は、第1支柱と第2支柱の間に形成されており、通信ケーブルが旋回されている上下動可能なロールと該上下動可能なロールを下方に付勢する緊張線が配置されており、該緊張線の動きをポテンショメーターで検知して、リーリング機構の回転方向を制御することを特徴とする請求項1記載の無人走行移動体。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に使用される移動体は、クローラベルトに覆われた金属製箱体の密閉空間に制御機器等が収納され、保護されていて、低重心である。このため、転倒し難い構造であり、機器が散乱している不安定な床面や階段などの斜面もクローラは接地状態を維持して、移動可能である。本体の全面が左右のクローラベルトで覆われ、さらに、回動するサブクローラによって、凸凹面の支持性能が向上し、階段の昇降性能も向上する。階段の踊り場の広さでも十分に旋回できる大きさであって、旋回性能、階段昇降性能に優れた移動体である。
本発明の移動体は、人が立ち入ることが困難であり、エリア外からの無線操縦も困難な高濃度放射能に汚染された遮蔽空間内において有線にて操縦される移動体である。例えば、無線操縦タイプの移動体とこの後方から支援する有線操縦走行移動体とを組み合わせた高濃度放射能環境下における無人走行移動体運用システムである。無線通信環境が悪い状況下にある遮蔽区画内部の場合は、遮蔽区画内に有線操縦タイプの走行移動体を配置し、遮蔽区画の外側から無線操縦タイプの走行移動体を介して操作することにより、遮蔽区画から離れた場所から調査等を行う無人走行移動体運用システムである。
本発明で用いる移動体は、クローラベルトで覆われた本体部分に走行用制御機器等を収納し、機体の上部中央に走行用センサ機器などを装着することにより、走行制御機器類の保護および障害地の走行性および高濃度放射能環境下における良好な操作性を発揮する。 外部に露出する必要がある、集音マイクや、カメラのレンズ部、送受信用アンテナ等のセンサ感知部等は機体の巾方向中央部に設けた機器付設用のセンターベースバーに取り付けることができる。機体のセンター部分に付設されるので、衝突などの障害リスクが小さい。駆動源である電動モータ駆動は、低騒音で可燃ガスや不燃ガスの影響を受けることなく活動することができる。また、本発明の移動体は、主要機器類が機密性の高い箱体内に収納されているので、原子力施設内での活動後の除染に対する適応性が高い。
特に、有線操縦用に用いられる通信ケーブルの出退機構について、磁力を用いて、駆動力を伝達する機構と、通信ケーブルの接続をリール軸内に設けたスリップリングを介して行うので、制御機器などの水密性を高く保つことができ、水洗のなどの徐染作業が支障なく容易に行える。
したがって、本発明は、例えば原子力施設の放射能漏洩事故などにおいて作業員がアクセスできないような現場で遠隔操作にしたがって走行し、走行した部分の情報をリアルタイムで収集できる無人走行式ロボットを運用するものであって、無線等が遮断される遮蔽区画内部も広範囲に調査できる無人走行移動体である。
災害発生時に信頼性をもって実行するためには、不整地であっても安定した状態で走行可能な機動性、狭隘な場所や階段などの斜面での走行性、遠隔操作が可能でかつ柔軟性に富んだ操作性を実現できる。
【0012】
本発明は、汚染された遮蔽区画があっても走行および調査が可能な有線操縦タイプの無人走行移動体である。
本発明に用いる無人走行移動体(E)は、箱状の本体(A)、本体の前後に装着されたプーリ(B)、機体中央長手方向に設けた機器付設用のセンターベースバー(C)、機体のほぼ全巾に掛け回された左右の走行用クローラ(D)を、備えている。さらに、サブクローラユニット(G)が備えられている。有線操縦用の通信ケーブル出退機構(L)、周辺環境把握用センサ(F)等がセンターベースバー(C)に装備される。駆動機構は、ホイールインモータを採用し、構内の地図情報やセンサで取得した情報に基づき有線による操縦方式が採用されている。
【0013】
図面を参照して、本走行用移動体の例を説明する。
<全体構成について>
以下、実施形態に係る無人走行体の遠隔操縦システムにつき、図面を用いて項目ごとに説明する。
無人走行移動体運用システムの概略は、有線操縦タイプの移動体で構成されており、さらに無線操縦タイプの移動体と組み合わせた無人走行移動体運用システムを構築することもできる。
図1に示す例は、有線操縦と無線操縦の2つの移動体を組み合わせた運用システムである。無線が通じないような遮断壁が存在する閉鎖空間内の調査を行う場合は、有線による操縦を行うが、通信ケーブルの制約があって、行動範囲が制限される。有線操縦タイプの移動体を介して無線操縦タイプの移動体を走行させることにより、調査範囲を広げることができる。さらに、遮蔽区画から遠く離れた場所からコントロールする必要が有る場合の実施態様として、
図1を示している。遮蔽区画が外側と無線通信が可能であっても、遠方から操縦する必要がある場合は、有線操縦タイプの移動体の通信機能に中継機を設けて、中継機とコントローラの間は光ファイバーで接続すると、危険な遮蔽区画から離れた場所にてコントロールすることが可能となる。
図示は省略するが、遮蔽区画内部で無線通信が困難な場合の実施態様を紹介する。遮蔽区画内部で無線通信環境が悪い場合は、遮蔽区画内部の走行体を有線操縦タイプとし、遮蔽区画の外側に無線操縦タイプの移動体を待機させて、無線操縦タイプの移動体を介して有線操縦タイプの移動体を操作するように組み合わせることによって、離れた場所からのコントロールが可能となる。
【0014】
〈遠隔操縦システムのシステム構成〉
図1に、本発明の無人走行移動体の遠隔操縦システムの一例を示す。この図から明らかなように、本例の遠隔操縦システムは、LANケーブル336を介して接続された第1及び第2の操作卓300、310と、第1操作卓300から出力される制御信号により遠隔操縦される有線操縦無人走行移動体100と、第2操作卓310から出力される制御信号により遠隔操縦される無線操縦無人走行移動体200と、第2操作卓310と有線操縦無人走行移動体100とを接続する通信ケーブル240、250と、通信ケーブル240と通信ケーブル250との間に配置された無線中継装置330と、有線操縦無人走行移動体100と無線操縦無人走行移動体200とを接続する無線通信260と、通信ケーブル240を巻回したケーブルリール210とから主に構成されている。また、無線通信260は、有線操縦無人走行移動体100に搭載された親機と、無線操縦無人走行移動体200に搭載された子機とからなる。有線操縦無人走行移動体100は、通信ケーブル240、無線中継装置330及び通信ケーブル250を介して第1操作卓300から伝送される制御信号により遠隔操縦される。また、無線操縦無人走行移動体200は、通信ケーブル240、無線中継装置330、通信ケーブル250及び無線通信260を介して第2操作卓310から伝送される制御信号により遠隔操縦される。
図1では、有線操縦移動体と無線操縦移動体との組み合わせを説明しているが、有線操縦無人走行移動体のみで十分活用できるシステムであり、有線と無線の2つの移動体を使用することも可能であるので、説明上の重複を避けるために、
図1のシステム構成を記載した。
【0015】
このように、第1操作卓300と有線操縦無人走行移動体100とをつなぐ信号経路の一部、及び第2操作卓310と無線操縦無人走行移動体200とをつなぐ信号経路の一部を有線化すると、有線部分においては信号の伝送を安定に行うことができるので、トータル的に第1操作卓300と有線操縦無人走行移動体100との間、及び第2操作卓310と無線操縦無人走行移動体200との間の遠距離通信を安定なものにすることができる。また、通信ケーブル240と通信ケーブル250との間に無線中継装置330を備えたので、例えば原子力発電プラントに設置されるエアロックALのように、通信ケーブルを直接配線することができない部位を有する現場にも、この無線中継装置330をエアロックの内外に配置して親機と子機からなる無線中継機能とすることにより、本システムの適用が可能になる。
【0016】
通信ケーブル240、250としては、ツイストペアケーブルや光ファイバケーブルを用いることができる。ツイストペアケーブルは、電線を2本ずつ撚り合わせて対にしたものであり、平行型の電線を用いる場合に比べてノイズの影響を抑制することができる。また、光ファイバケーブルを用いると、電線を用いる場合よりも、第1操作卓300と有線操縦無人走行移動体100との間、及び第2操作卓310と無線操縦無人走行移動体200との間の信号伝送速度を高速化することができる。なお、通信ケーブル240、250として共通のものを用いる必要はない。通信ケーブル240については、信号伝送方式による制限を受け、後述するVDSL(Very high-bit-rate Digital Subscriber Line)方式を用いる場合、最大伝送距離が500〜800m程度に制限される。一方、通信ケーブル250の長さについては、有線無人走行移動体100に搭載可能なケーブル長による制限を受ける。本実施形態では、500mの通信ケーブル250を搭載した。
【0017】
第1操作卓300と有線操縦無人走行移動体100との間、及び第2操作卓310と無線操縦無人走行移動体200との間の信号伝送方式としては、VDSL方式が好適である。VDSLは、1対の信号ケーブルを用いて通信を行う非対称速度型の通信方式であり、有線操縦無人走行移動体から第1操作卓への信号の送信及び無線操縦無人走行移動体から第2操作卓への信号の送信を高速で行うことができるからである。このように、ツイストペアケーブルとVDSLの組み合わせを用いて無人走行移動体の遠隔操縦システムを構築することにより、操作卓と無人走行移動体との間の通信を安定かつ高速で行うことができる。
【0018】
無線通信260の親機及び子機としては、無線LAN(Local Area Network)用の無線通信機器が用いられる。無線LAN用の通信機器は、安価にして汎用性に優れ、かつ電波法令の規制を受けない特定小電力無線局に分類されるので、これを用いることにより、有線無人走行移動体と無線無人走行移動体との間の無線通信系を簡易に構築できると共に、その使い勝手を良好なものにすることができる。
【0019】
走行用の無人走行移動体の概略を
図2に示す。さらに、
図3、4に平面図及び側面図を示す。
図示された無人走行用の移動体(E)は、箱状の本体(A)、本体の前後装着されたプーリ(B)(B)(B)(B)、機体中央長手方向に設けた機器付設用のセンターベースバー(C)、左右前後プーリ(B、B)(B、B)に掛け回された機体のほぼ全巾を覆う左右の走行用クローラ(D)(D)、機体の前後左右4箇所に向けられたサブクローラユニット(G)(G)(G)(G)が備えられる。有線操縦用の通信ケーブル出退機構(L)、周辺環境把握用センサ(F)がセンターベースバー(C)に装備されている。
箱状の本体(A)の前後左右にプーリ(B)を4つ配置する。各プーリは、巾方向中央部にセンターフレームの間隔が空けてあり、機体の略半幅の長さである。この前後に配置された2つのプーリ(B)(B)にプーリと同幅のクローラ(D)が掛け回されている。このクローラ(D)が左右に2本設けられているので、機体のほぼ全巾がクローラベルトによって覆われることとなる。
本体(A)は、中央部に上蓋を備えた密閉可能な空間が設けられる。両サイドは、必要に応じて、側面からアクセスできる収納空間を形成する。中央空間は本移動体の制御機器や調査用の機器などが収納される。サイドには、電池などの交換が必要な部品を収容することができる。
機体中央長手方向にセンターベースバー(C)が配置されていて、有線操縦用の通信ケーブル出退機構(L)、周辺環境把握用センサ(F)等を外付けする部材として用いられる。センターベースバー(C)は、プーリ(B)のセンターフレームに支持させることができる。センターフレームは頑丈な部材であるので取り付け用部材として適している。センサなどの器具はセンターベースバー(C)に直接装着あるいは、センターベースバーに立設した支柱(H)に装着することもできる。センターベースバーには、さらに幅の広い台座を設けて、大型の機器を装着することもできる。
センターベースバー(C)は、中央長手方向に配置されているので、器具を装着しても片寄ることが少なく安定性を損なうことがない。機体中央部にあるので、装着された器具が周囲のの障害物に接触する危険性が小さく、装着器具の安全性が確保できる。
【0020】
(1)無人走行移動体
本発明の実施態様に該当する無人走行移動体の平面図を
図3に、側面図を
図4に示す。
平面視において、中央部に細長くセンターフレームが設けられ、その左右にクローラ5、5が配置され、四方にサブクローラユニット8が設けられている。センターフレームにはその上面にセンターベースバー6が接合されている。クローラ5、5が側面を除くほぼ全周を覆っており、クローラベルト51、51によって、制御機器などを収納した本体部分は保護され、また、低重心によって安定性が確保されている。
側面視において、箱状の本体2とその前後に設けられたクローラ5用のプーリ7、7、7、7を覆うようにクローラベルト51が設けられている。プーリ7、7とその上方に転輪53、53が設けられ、クローラベルトはこれらのプーリ間に掛け回されている。
サブクローラユニット8は、クローラ5のプーリ7の外側に設けられている基端プーリ82と先端プーリ81との間にサブクローラベルト83が掛け回されている。サブクローラユニット8は、基端プーリ82を中心とする傾動が可能であって、それぞれが別個に操作できる。サブクローラユニット8は、階段を昇降するために上下の段差分以上の長さを有しており、90度以上上方に旋回させて待機状態とすることができる。待機状態において、移動体1が踊り場を旋回できる最小の状態を構成する。
センターベースバー6には、支柱130と有線操縦用の通信ケーブル250の張力調整機構150等が設けられている。
【0021】
本体は、密閉可能な箱状であって、内側に収納空間が形成され、無人走行移動体の制御機器や調査用のセンサ機器などが収納される。収納空間は、閉鎖空間であり、前後にプーリが配置され、更に上下面がクローラベルトによって覆われているので、外部の衝撃から保護される構成である。
密閉された中央収納部に配置された電子機器の高温化対策として、放熱フィン等の放熱構造を本体(箱体)の外面側に設けている。また、本体(箱体)には、制御やセンサなどの電子機器が収納されており、水や汚染物質が侵入しないように密閉構造となっている。移動するクローラベルトおよび前後で回転するプーリの動きによって、放射された熱は滞留すること無く排出されるので、本体(箱体)の高温化を効率的に抑制できる。さらに、サイドにも放熱機能を持たせることにより、より放熱を向上させることができる。
センターベースバー6は、前後に設けられたクローラ用のプーリ7、7のセンターフレームに支持することができる。センターベースバー6は、移動体の幅方向中央部に配置されている。左右にクローラベルト51が配置されているので、障害物に直接接触しにくい。センターベースバー6の上面は、クローラベルト51の表面と同程度の高さ、あるいは高低いずれも設定することができる。また、一部を低く、その他をやや高く設定することも可能である。低くした場合には、クローラベルトによる保護機能が高まる。高く設定した場合、センターベースバーを幅広にすることが可能である。
【0022】
(2)クローラ用プーリ
クローラベルト51を巻き掛けるプーリ7の内部には電動モータ(図示省略)を内装したホイールインモータを採用する。電動モータは、プーリ7、7、7、7、のそれぞれに内装されている。
【0023】
(3)操縦
移動体は、有線による遠隔操縦する無人走行である。人が立ち入ることができない密閉空間を走行するので、モニターを見ながら操縦することとなる。また、放射能を遮断する場合は、遮蔽壁を介して有線で操縦することが必要となる。したがって、モニターに表示するための情報を収集するためのセンサ類を移動体に装備する。移動スピードは、人間の歩行スピードである0.5〜1.7m/秒程度である。遠隔操縦によって、人間が目視しあるいはディスプレイを見て、操縦することが多くなる被災現場では、人間の歩行速度である1.2m/秒以内(時速4Km程度)で十分である。
本発明のクローラ式走行装置は、土木・建設機械などと比べて低速で使用されることを想定しているので、低速に加えて、幅広のクローラベルトを採用することにより、脱輪などの障害を回避することができる。
【0024】
(4)センサ類、搭載機器類
図示はしないが、移動体内蔵センサとして、3軸ジャイロ、エンコーダ、3軸加速度センサ、速度計、慣性計測装置など移動体そのものの情報を収集するセンサ類を内蔵する。
移動体は、カメラ、マイク、アンテナ、三次元測距センサ及び照明機器等の移動体の周辺状況の情報を入手する手段も備えている。さらに、調査用のセンサを搭載することができる。原子力発電施設では、放射線線量計、γカメラ、サーモグラフィ、湿度センサ、水位センサ、採水装置、ガスセンサ等である。物を動かすマニピュレータを装着することも可能である。水などのサンプルを採取する器具としても利用することができる。
これらのセンサ類等は、センターベースバーに取り付ける。
搭載機器は、調査目的に応じて選択することができ、最初は基本探査を行い、その後目的に応じた機器を搭載することができる。
【0025】
(5)通信ケーブル取り扱い機構
本発明の移動体は、有線操縦される。通信ケーブルの取り扱い機能の全体構成が
図5に例示されている。
有線操縦用の通信ケーブル250を巻き取るリーリング機構105と張力調整機構150が、移動体1のセンターベースバー6に搭載されている。リーリング機構105には通信ケーブル250を送り出しと巻き戻しをする機能が備えられている。リーリング機構105から通信ケーブル250を機外へ導出する誘導管の間に通信ケーブルにかかる緊張力を調整する張力調整機構150を設ける。
リーリング機構105は、リール110とリールを駆動する動力源120から構成されている。リール110は張力調整装置150に負荷される張力の方向によって回転方向が制御される。
張力調整装置150には、2本の支柱130、230と張力発生機器と通信ケーブルを蛇行させる径路が設けられている。
通信ケーブル250は、リール110から、張力調整装置で蛇行して、支柱130の上方に設けられている誘導管161の先端から機外へでて、操縦装置の方向に伸びている。
【0026】
(6)張力調整装置
支柱130とリール110の間に支柱230を設ける。ロール158を支柱230の上部に固定し、支柱230の支柱130側の側面に上下動する可動ロール153を設ける。支柱130の上部に案内用のロール160を備えた誘導管161を左右回動可能に設け、その下方にガイド159を設ける。
リール110から伸びる通信ケーブル250は、ロール158へ上昇し、可動ロール153へ掛け回されて下降、反転してガイド159を通過して、案内ロール160から誘導管161へ案内されて、先端から機外へ導出する。誘導管161は、クローラベルト51やサブクローラユニット8と通信ケーブル250が接触しないように配置されている。通信ケーブル250は、可動ロール153によって、「U」字形の遊動径路が形成され、可動ロール153が上下することによって、張力変化を吸収する。
可動ロール153の下方側にポテンショロール156を配置し、支柱130の側縁に可動ロール152を設け、支柱130の下端部に固定端155を設ける。可動ロール152の上方に張力体151を取り付ける。テンションライン162を可動ロール153の下に設けた固定端157から、ポテンショロール156、可動ロール152を経由して支柱130の下端の固定端155に掛け回されている。また、可動ロール152は、上方に設けられた張力体151に繋がれている。
テンションライン162は、張力体151に繋がれた可動ロール152が上方に引き上げられて、緊張されている。通信ケーブルが掛け回された可動ロール153がこのテンションライン162によって、下方に付勢されている。
通信ケーブル250が移動体の外部方向へ強く引かれると、可動ロール153が上方に引き上げられ、ポテンショロール156が左回転する。外部側が緩むと可動ロール153が下降し、ポテンショロール156が右回転する。このポテンショロール156の回転を検知して、リール110の回転方向を制御して、張力調整を行う。さらに、張力にかかる力を検知して制御に活用することもできる。例えば、歯付きのポテンショロールと歯付きベルトを組み合わせることによって、スリップが発生せずにポテンショロールの回転量を正確に計測でき、リールの駆動制御を高精度に行うことができる。
【0027】
(7)リーリング機構
リーリング機構105は
図6、
図7に開示されている。
リール110は、駆動源ユニット126に設けられた支持腕113に取り付けられている。駆動源ユニット126に備えられたモータの軸に取り付けられたプーリ122と駆動源ユニット126から伸ばした支持腕113の先端に設けたプーリ123に駆動ベルト121を掛け回して駆動力を伝える。プーリ123とリール110との間にはマグネットカップリング125を配置する。マグネットカップリング125は、プーリ123側に配置された磁石131とリール110側に設けられた磁石132によって構成される。2つの磁石の間には隔壁133を配置する。2つのマグネット間に働く磁力によって、駆動力が結合されており、その結合力はリールに過負荷が発生した場合に空転して、通信ケーブルが切断されるリスクを軽減することができる。
2つのマグネットは、左右に対向配置した図示としているが、内側とその外周に配置することもできる。
マグネットによって、駆動力を伝える利点は、過負荷対策とさらに、リール110側の密閉性を向上させることができる利点がある。このマグネットカップリング125は、2つの磁石の間に隔壁133を設け、リールの軸空間110aの密閉性を高め、その空間にスリップリング140を設け、本体2側から伸びる接続端子に接続して、通信ケーブルを連結する構成である。独立したリールの構造は密閉性を高めることができ、シャワー徐染などの高い耐水性を実現できる。
【0028】
図7にリール機構の構造の例を断面図で示す。
リール110は、支持腕113に対して、マグネットカップリング125を介して取り付けられている。
支持腕113の先端に外殻体114を固定する。この外殻体117にプーリ123とマグネットカップリングを取り付ける。このマグネットカップリングを介してリール110を回動可能に取り付ける。プーリ123側と磁石131が一体であり、反対側にリール110に磁石132が配置される。磁石132は、リールの中央空間に設けた連結板110bに強固に取り付けてある。
マグネットカップリング125の反対側であって、リール110のリール軸空間110a内にスリップリング140が設けられている。リール110の胴には、通信ケーブル250が巻かれている。スリップリング140の構成は、回転ケーブルリールに設けられる通常の機構を採用することができるので詳細は省略する。スリップリング140に接続した端子から通信ケーブル141を本体(箱体)内に延出する。
駆動源ユニット126から支持腕113を伸ばし、その先端に外殻体114を取付け、この外殻体114にマグネットカップリングを取付けてある。マグネットカップリングを構成する駆動側磁石131にプーリ123を固定する。このプーリ123と駆動ユニット側に設けられているプーリ122にベルト121が掛け回される。
駆動側の磁石131と従動側の磁石132は、外殻体114にベアリング116を介して取り付けられている。磁石131と磁石132の間には、外殻体114と一体化している隔壁133を設けることによって、両者を隔離している。
マグネットカップリング機構としては、ディスクタイプを図示しているが、シリンダータイプも使用することができる。
さらに、プーリ123や外殻体114の駆動系はケース(図示省略)で覆うことによって、密閉性を高めることができる。これらの構造によってリール機構の駆動系と機体内部に取り込む通信系の密閉性を高めることができ、水シャワーなどの徐染処理によっても、浸水することがない。
【0029】
リールの駆動は、基本的には走行スピードに応じて制動される。移動体のスピードにあわせて自動的に追従することもでき、あるいは、コントローラにより制御することができる。さらにリールの張力調整は、前述のようにポテンショロールによって検知された回転方向やテンションによって、駆動源のモータが制御されて、駆動ベルトを介して磁石131と磁石132の間で伝達されることとなる。前述のように、磁石の結合力を設定することによって通信ケーブルにダメージを与えない過負荷防止装置とすることができる。
過負荷による通信ケーブルの断裂は、高濃度放射能環境下では、移動体が回収できないこととなり、次の調査等の業務の障害物となってしまうので、避けなければならない事故である。通信ケーブルを踏んで障害を起こすことも同様の事故となるので、通信ケーブルを送り出し及び巻き戻すことも重要な機構である。
【0030】
操縦については、最初に記載したとおりである。有線操縦無人走行移動体100を高濃度放射能環境下などで運用する。さらに、無線操縦移動体200と組み合わせて、行動範囲を拡げることも可能である。