(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
その外面がトレッド面をなすトレッドと、それぞれが上記トレッドの端から半径方向略内向きに延びる一対のサイドウォールと、それぞれがサイドウォールよりも半径方向略内側に位置する一対のクリンチと、それぞれがクリンチよりも軸方向内側に位置する一対のビードと、上記トレッド及び上記サイドウォールの内側に沿って一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、それぞれが上記サイドウォールよりも軸方向内側でかつカーカスよりも軸方向内側に位置する一対の荷重支持層と、それぞれが上記ビードの軸方向内側に位置する一対のフィラーとを備えており、
上記ビードが、コアと、このコアから半径方向外側に延びる第一エイペックスとを備えており、
上記カーカスが、カーカスプライを備えており、
上記カーカスプライが、有機繊維からなるコードと、トッピングゴムとからなっており、
上記カーカスプライが上記コアの周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返されており、
この折り返しにより、上記カーカスプライには主部と折り返し部とが形成されており、
上記第一エイペックスが上記主部と上記折り返し部との間に位置しており、
上記フィラーが、有機繊維からなるコードと、トッピングゴムとからなっており、
上記フィラーが上記支持層と上記主部との間に位置しており、
このタイヤの外面上でタイヤの幅が最大となる点がPwとされたとき、半径方向において、上記フィラーの外側端がこの点Pwの内側に位置している空気入りタイヤ。
ビードベースラインから上記フィラーの外側端までの高さFTLの、ビードベースラインから上記点Pwまでの上記高さLに対する比(FTL/L)が0.9以下である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
半径方向において、ビードベースラインから上記支持層の内側端までの高さがSULとされ、ビートベースラインから上記フィラーの内側端までの高さがFULとされたとき、この高さFULのこの高さSULとの差(FUL−SUL)が3.0mm以上である請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
上記ビードが、上記第一エイペックスの軸方向外側で、かつ上記折り返し部の軸方向外側に位置する第二エイペックスをさらに備えている請求項1から3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【背景技術】
【0002】
近年、サイドウォールの内側に荷重支持層を備えたランフラットタイヤが開発され、普及しつつある。この支持層には、高硬度な架橋ゴムが用いられている。このランフラットタイヤは、サイド補強タイプと称されている。
【0003】
サイド補強タイプのランフラットタイヤでは、パンクによって内圧が低下すると、支持層によって荷重が支えられる。この支持層は、パンク状態でのタイヤの撓みを抑制する。このランフラットタイヤでは、パンク状態でも、ある程度の距離の走行が可能である。このランフラットタイヤが装着された自動車には、スペアタイヤの常備は不要である。このランフラットタイヤの採用により、不便な場所でのタイヤ交換が避けられうる。
【0004】
図5は、従来のサイド補強タイプのタイヤ2の断面図である。この図では、タイヤ2のサイド部分(サイドウォール6からビード8にかけての部分)が示されている。このタイヤ2は、荷重支持層30の他に、トレッド4、ウイング5、サイドウォール6、ビード8、カーカス10、クリンチ12、チェーファー14、ベルト16及びバンド18を備えている。カーカス10は、カーカスプライ20からなっている。図に示されるとおり、カーカスプライ20はビード8の周りにて軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ20には主部22と折り返し部24とが形成されている。この図では、タイヤ2は、リム26に装着されている。
【0005】
パンク状態にあるランフラットタイヤ2が路面上の突起物を乗り越えるとき、タイヤ2のサイドウォール6の部分が、大きく変形することが起こりうる。この変形により、カーカスプライ20に含まれるコードが切断することがある。このコードの切断を伴う損傷は、ピンチカットと称される。ピンチカットが生じると、その周辺から、ゴムのクラックが広がり、最終的に、タイヤ2は走行不能な状態となる。パンク状態での走行においてもピンチカットが発生しないランフラットタイヤが望まれている。
【0006】
ピンチカットの発生を抑制するために、カーカスを2枚のカーカスプライで構成することでカーカスの剛性を高くする方法がある。しかし、カーカスプライを2枚にすると、タイヤのサイド部分の縦バネ定数が増大し、乗り心地が悪化する。さらには、カーカスプライを2枚にすると、タイヤの質量が増大する。これは、転がり抵抗の増大にもつながる。
【0007】
ピンチカットの発生を抑制するために、サイドウォールの軸方向内側に、フィラーを挿入する方法がある。フィラーを備えたランフラットタイヤの検討の例が、特開2009−137449公報、特開2010−111172公報及び特開2005−262922公報に開示されている。
【0008】
特開2009−137449公報に開示されたタイヤでは、有機繊維又はスチールからなる補強コード(フィラーに対応する)が、サイド補強ゴム層の軸方向外側に、カーカスプライの主部の軸方向外側に設けられている。この補強コードは、その外側端がベルトと重なる位置まで延びている。この補強コードの内側端は、半径方向において、サイド補強ゴムの内側端とほぼ揃っている。
【0009】
特開2010−111172公報に開示されたタイヤでは、アラミド繊維からなる補強コードが、サイド補強ゴム層の軸方向外側に、カーカスプライの主部の軸方向外側に設けられている。この補強コードの外側端は、半径方向において、ビードの外側端より内側に位置している。この補強コードの内側端は、ビードの内側端付近まで延びている。
【0010】
特開2005−262922公報に開示されたタイヤでは、有機繊維からなる補強コードが、サイド補強ゴム層とカーカスプライの主部との間に設けられている。この補強コードは、その外側端がベルトと重なる位置まで延びている。この補強コードの内側端は、半径方向において、サイド補強ゴム層の内側端とビードの外側端との間に位置している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0027】
図1には、空気入りタイヤ42が示されている。
図1において、上下方向がタイヤ42の半径方向であり、左右方向がタイヤ42の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ42の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ42の赤道面を表わす。このタイヤ42の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0028】
このタイヤ42は、トレッド44、ウィング46、サイドウォール48、クリンチ50、ビード52、カーカス54、荷重支持層56、ベルト58、バンド60、インナーライナー62、チェーファー64及びフィラー66を備えている。このタイヤ42は、チューブレスタイプである。このタイヤ42は、乗用車に装着される。
【0029】
トレッド44は、半径方向外向きに凸な形状を呈している。トレッド44は、路面と接地するトレッド面68を形成する。トレッド面68には、溝70が刻まれている。この溝70により、トレッドパターンが形成されている。トレッド44は、ベース層74とキャップ層72とを有している。キャップ層72は、ベース層74の半径方向外側に位置している。キャップ層72は、ベース層74に積層されている。ベース層74は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。ベース層74の典型的な基材ゴムは、天然ゴムである。キャップ層72は、耐摩耗性、耐熱性及びグリップ性に優れた架橋ゴムからなる。
【0030】
ウィング46は、トレッド44とサイドウォール48との間に位置している。ウィング46は、トレッド44及びサイドウォール48のそれぞれと接合している。ウィング46は、接着性に優れた架橋ゴムからなる。
【0031】
サイドウォール48は、トレッド44の端から半径方向略内向きに延びている。このサイドウォール48の半径方向外側端は、トレッド44及びウィング46と接合されている。このサイドウォール48の半径方向内側端は、クリンチ50と接合されている。このサイドウォール48は、耐カット性及び耐候性に優れた架橋ゴムからなる。サイドウォール48は、軸方向においてカーカス54よりも外側に位置している。サイドウォール48は、カーカス54の損傷を防止する。
【0032】
損傷防止の観点から、サイドウォール48の硬さは50以上が好ましく、55以上がより好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、硬さは70以下が好ましく、65以下がより好ましい。本願において、硬さは「JIS K6253」の規定に準じ、タイプAのデュロメータによって測定される。
図1に示された断面にこのデュロメータが押し付けられて、硬さが測定される。測定は、23℃の温度下でなされる。後述するクリンチ50、エイペックス及び荷重支持層56の硬さも同様にして測定される。
【0033】
クリンチ50は、サイドウォール48の半径方向略内側に位置している。クリンチ50は、軸方向において、ビード52及びカーカス54よりも外側に位置している。クリンチ50は、耐摩耗性に優れた架橋ゴムからなる。図示されないが、クリンチ50は、リムのフランジと当接する。
【0034】
耐摩耗性の観点から、クリンチ50の硬さは60以上が好ましく、65以上がより好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、硬さは90以下が好ましく、80以下がより好ましい。
【0035】
ビード52は、サイドウォール48よりも半径方向内側に位置している。ビード52は、クリンチ50よりも軸方向内側に位置している。ビード52は、コア76と、このコア76から半径方向外向きに延びる第一エイペックス78とを備えている。コア76はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。第一エイペックス78は、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス78は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0036】
ビード52の部分が適切な剛性を有するとの観点から、第一エイペックス78の硬さは60以上が好ましく、65以上がより好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、硬さは90以下が好ましく、80以下がより好ましい。
【0037】
カーカス54は、カーカスプライ80からなる。カーカスプライ80は、両側のビード52の間に架け渡されている。カーカスプライ80は、トレッド44及びサイドウォール48に沿っている。カーカスプライ80は、コア76の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ80には、主部82と折り返し部84とが形成されている。折り返し部84の端は、ベルト58の直下にまで至っている。換言すれば、折り返し部84はベルト58とオーバーラップしている。このカーカス54は、いわゆる「超ハイターンアップ構造」を有する。超ハイターンアップ構造を有するカーカス54は、パンク状態におけるタイヤ42の耐久性に寄与する。
【0038】
図1に示されるように、主部82は、第一エイペックス78の軸方向内側に位置している。折り返し部84は、第一エイペックス78の軸方向外側に位置している。換言すれば、第一エイペックス78はカーカスプライ80の主部82とその折り返し部84との間に位置している。
【0039】
図示されていないが、カーカスプライ80は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス54はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0040】
荷重支持層56は、サイドウォール48の軸方向内側に位置している。この支持層56は、カーカス54よりも軸方向内側に位置している。この支持層56は、インナーライナー62の軸方向外側に位置している。支持層56は、カーカス54とインナーライナー62とに挟まれている。支持層56は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。この支持層56は、三日月に類似の形状を有する。半径方向において、支持層56の内側端92は、第一エイペックス78の外側端88よりも、内側に位置している。換言すれば、支持層56は第一エイペックス78とオーバーラップしている。支持層56の半径方向外側端は、ベルト58の端よりも軸方向において内側に位置している。換言すれば、支持層56はベルト58とオーバーラップしている。
【0041】
支持層56は、高硬度な架橋ゴムからなる。タイヤ42がパンクしたとき、この支持層56が荷重を支える。この支持層56により、パンク状態であっても、タイヤ42はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ42は、ランフラットタイヤ42とも称されている。このタイヤ42は、サイド補強タイプである。このタイヤ42が、
図1に示された支持層56の形状とは異なる形状を有する支持層56を備えてもよい。
【0042】
パンク状態での走行時に荷重を支えうるとの観点から、支持層56の硬さは60以上が好ましく、65以上がより好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、硬さは90以下が好ましく、80以下がより好ましい。
【0043】
ベルト58は、トレッド44の半径方向内側に位置している。ベルト58は、カーカス54と積層されている。ベルト58は、カーカス54を補強する。ベルト58は、内側層58a及び外側層58bからなる。
図1から明らかなように、内側層58aの幅は、外側層58bの幅よりも若干大きい。図示されていないが、内側層58a及び外側層58bのそれぞれは、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。各コードは、赤道面に対して傾斜している。傾斜角度の絶対値は、通常は10°以上35°以下である。内側層58aのコードの赤道面に対する傾斜方向は、外側層58bのコードの赤道面に対する傾斜方向とは逆である。コードの好ましい材質は、スチールである。コードに、有機繊維が用いられてもよい。ベルト58が、3以上の層を備えてもよい。
【0044】
バンド60は、ベルト58の半径方向外側に位置している。軸方向において、バンド60の幅はベルト58の幅と略同等である。図示されていないが、バンド60は、コードとトッピングゴムとからなる。コードは、螺旋状に巻かれている。このバンド60は、いわゆるジョイントレス構造を有する。コードは、実質的に周方向に延びている。周方向に対するコードの角度は、5°以下、さらには2°以下である。このコードによりベルト58が拘束されるので、ベルト58のリフティングが抑制される。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。
【0045】
ベルト58及びバンド60は、補強層を構成している。ベルト58のみから、補強層が構成されてもよい。バンド60のみから、補強層が構成されてもよい。
【0046】
インナーライナー62は、カーカス54及び荷重支持層56の内面に接合されている。インナーライナー62は、架橋ゴムからなる。インナーライナー62には、空気遮蔽性に優れたゴムが用いられている。インナーライナー62は、タイヤ42の内圧を保持する。
【0047】
チェーファー64は、ビード52の近傍に位置している。タイヤ42がリムに組み込まれると、このチェーファー64がリムと当接する。この当接により、ビード52の近傍が保護される。この実施形態では、チェーファー64は、布とこの布に含浸したゴムとからなる。このチェーファー64が、クリンチ50と一体とされてもよい。この場合、チェーファー64の材質はクリンチ50の材質と同じとされる。
【0048】
フィラー66は、ビード52の軸方向内側に位置している。フィラー66は、主部82の軸方向内側に位置している。フィラー66は、支持層56の軸方向外側に位置している。フィラー66は、主部82と支持層56とに挟まれている。
【0049】
図示されていないが、フィラー66は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。コードがスチール又はガラス繊維からなってもよい。
【0050】
図2は、
図1のタイヤ42の一部が拡大された断面図である。
図2において、符号Pwは、軸方向におてタイヤ42の幅が最大になるこのタイヤ42の外面上の点である。このタイヤ42では、半径方向において、上記フィラー66の外側端86はこの点Pwの内側に位置している。このフィラー66は、ベルト58の近辺まで延びていない。このフィラー66は、バッドレス部まで延びていない。このフィラー66は、ビード52の近傍に存在している。
【0051】
以下では、本発明の作用効果が説明される。
【0052】
パンク状態にあるランフラットタイヤが路面上の突起物を乗り越えるとき、サイドウォールは、突起物とフランジに挟まれる。タイヤは、その中央付近が車両の外側方向に突出するように大きく変形する。このとき、カーカスプライの主部のうち、支持層とビードとの間に位置する領域(ビード重複領域と称される)付近に、大きな引っ張り力が加わる。これは、ビード部分がリムのフランジに強く押しつけられることで、主部のビード重複領域が、支持層側に凸に変形するように引き伸ばされるためである。これにより、特に主部のビード重複領域付近においてピッチカットが発生しやすくなる。
【0053】
本発明に係る空気入りタイヤ42では、前述の通り、フィラー66はビード52の軸方向内側に位置している。フィラー66は、支持層56と主部82との間に位置している。タイヤ42が大きく変形し、主部82のビード重複領域が支持層56の側に凸に変形したとき、このフィラー66は、支持層56側から主部82を支える。このフィラー66は、効果的に主部82に加わる引っ張り力を緩和する。このフィラー66は、主部82のビード重複領域でのピンチカットを防止する。このフィラー66を備えたタイヤ42では、ピンチカットの発生が防止されている。
【0054】
前述のとおり、このタイヤ42では、半径方向において、フィラー66の外側端86はタイヤ42の外面上でタイヤ42の幅が最大となる点Pwより内側に位置している。フィラー66がベルト58に重なる位置まで延びている従来のタイヤに比べて、このタイヤ42では、フィラー66による縦バネ定数の増加が抑えられている。このタイヤ42では、良好な乗り心地が実現されうる。加えて、このタイヤ42ではフィラー66による質量の増加が少ない。このタイヤ42では、転がり抵抗の増加も抑えられている。本発明によれば、ピンチカットの発生が抑えられ、しかも縦バネ定数、質量及び転がり抵抗の増加が抑えられた空気入りタイヤ42が得られる。
【0055】
図2において、実線BBLはビードベースラインを表している。このビードベースラインは、タイヤ42が装着されるリムのリム径(JATMA参照)を規定する線に相当する。このビードベースラインは、軸方向に延びる。両矢印Lは、半径方向において、ビードベースラインBBLから点Pwまでの高さを表す。両矢印FTLは、半径方向において、ビードベースラインBBLからフィラー66の外側端86までの高さを表す。
【0056】
高さFTLの高さLに対する比(FTL/L)は、0.9以下が好ましい。比(FTL/L)が0.9以下のフィラー66を備えるタイヤ42では、縦バネ定数、質量及び転がり抵抗の増加が抑えられている。この観点からこの比は、0.8以下がより好ましい。比(FTL/L)は、0.5以上が好ましい。比(FTL/L)が0.5以上のタイヤ42では、フィラー66が効果的に主部82のビード重複領域を支える。このタイヤ42では、ピンチカットの発生が抑制される。この観点からこの比は、0.6以上がより好ましい。
【0057】
図2において、両矢印BLは、半径方向において、ビードベースラインBBLから第一エイペックス78の外側端88までの高さを表す。典型的には、高さBLの高さLに対する比(BL/L)は、0.5以上0.7以下である。
【0058】
通常走行時において、タイヤ42のビード52の部分は常に変形と復元とを繰り返している。第一エイペックス78の外側端88とフィラー66の外側端86との距離が近いと、この変形と復元との繰り返しにより、フィラー66の外側端86の近辺において、タイヤ42の損傷(ルース)が発生することがある。このルースは、通常走行におけるタイヤ42の耐久性(一般耐久性と称される)を損ねる要因となる。
【0059】
高さFTLと高さBLの差(FTL−BL)は3.0mm以上が好ましい。差(FTL−BL)が3.0mm以上のタイヤ42では、ルースの発生が抑制される。このタイヤ42は、良好な一般耐久性を有する。この観点からこの差は、4.0mm以上がより好ましい。
【0060】
図2において、両矢印FULは、半径方向において、ビードベースラインBBLからフィラー66の内側端90までの高さを表す。比(FUL/BL)は0.5以下が好ましい。比(FUL/BL)が0.5以下のタイヤ42では、フィラー66が効果的に主部82のビード重複領域を支える。このタイヤ42では、ピンチカットの発生が抑制される。この観点から、比(FUL/BL)は0.4以下がより好ましい。比(FUL/BL)は0.1以上が好ましい。比(FUL/BL)が0.1のタイヤ42では、フィラー66による質量の増加が抑えられている。
【0061】
図2において、両矢印SULは、半径方向において、ビードベースラインBBLから支持層56の内側端92までの高さを表す。典型的には、高さSULの高さBLに対する比(SUL/BL)は、0.1以上0.3以下である。
【0062】
前述のとおり、通常走行時において、タイヤ42のビード52の部分は常に変形と復元とを繰り返している。支持層56の内側端92とフィラー66の内側端90との距離が近いと、この変形と復元との繰り返しにより、フィラー66の内側端90の近辺において、ルースが発生することがある。ルースは、タイヤ42の一般耐久性を損ねる要因となる。
【0063】
高さFULと高さSULの差(FUL−SUL)は3.0mm以上が好ましい。差(FUL−SUL)が3.0mm以上のタイヤ42では、ルースの発生が抑制される。このタイヤ42は、良好な一般耐久性を有する。この観点からこの差は、4.0mm以上がより好ましい。
【0064】
このタイヤ42では、フィラー66のコード密度は、カーカスプライ80に加わる引っ張り力の緩和する性能に影響する。ここで、フィラー66のコード密度は、コードの延在方向に垂直な断面において、フィラー66の5cm幅あたりに存在するコードの本数(エンズ)が計測されることにより、得られる。ピンチカットを抑制し、併せて良好な乗り心地を実現するとの観点から、フィラー66のコード密度は20エンズ/5cm以上70エンズ/5cm以下が好ましい。
【0065】
前述のとおり、カーカスプライ80は、有機繊維からなるコードを備えている。有機繊維からなるコードを備えたカーカスプライ80は軽量である。このカーカスプライ80は、スチールからなるコードを備えたプライよりも質量が大幅に抑えられている。これにより、タイヤ42の転がり抵抗が抑えられている。
【0066】
このタイヤ42では、タイヤ42の各部材の寸法及び角度は、特に言及のない限り、タイヤ42が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ42に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ42には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ42が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ42が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。なお、タイヤ42が乗用車用である場合は、内圧が180kPaの状態で、寸法及び角度が測定される。後述するタイヤも同様である。
【0067】
図3には、本発明の他の実施形態における、空気入りタイヤ102が示されている。
図3において、上下方向がタイヤ102の半径方向であり、左右方向がタイヤ102の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ102の周方向である。
図3において、一点鎖線CLはタイヤ102の赤道面を表わす。このタイヤ102の形状は、トレッドパターンを除き、赤道面に対して対称である。
【0068】
このタイヤ102は、トレッド104、ウィング106、サイドウォール108、クリンチ110、ビード112、カーカス114、荷重支持層116、ベルト118、バンド120、インナーライナー122、チェーファー124及びフィラー126を備えている。このタイヤ102は、チューブレスタイプである。このタイヤ102は、乗用車に装着される。
【0069】
このタイヤ102では、トレッド104、ウィング106、サイドウォール108、クリンチ110、ベルト118、バンド120、インナーライナー122及びチェーファー124は、
図1のタイヤ42と同様の構造である。トレッド104、サイドウォール108及びクリンチ110は、その形状において
図1のタイヤ42と異なるところがあるが、本発明の内容に影響を及ぼすものではない。以下では、
図3のタイヤ102のビード112、カーカス114、荷重支持層116及びフィラー126について説明がされる。
【0070】
図3に示されるように、ビード112は、コア128及び第一エイペックス130に加え、さらに第二エイペックス132を備えている。コア128はリング状であり、巻回された非伸縮性ワイヤーを含む。ワイヤーの典型的な材質は、スチールである。第一エイペックス130は、コア128から半径方向外向きに延びている。第一エイペックス130は、半径方向外向きに先細りである。第一エイペックス130は、高硬度な架橋ゴムからなる。
【0071】
第二エイペックス132は、第一エイペックス130よりも軸方向外側に位置している。第二エイペックス132は、クリンチ110よりも軸方向内側に位置している。第二エイペックス132は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。第二エイペックス132の内側端は、コア128の近傍まで延びている。第二エイペックス132の外側端は、第一エイペックス130の外側端よりも半径方向外側に位置している。第二エイペックス132は、高硬度な架橋ゴムからなる。このタイヤ102では、この第二エイペックス132の架橋ゴムは第一エイペックス130の架橋ゴムと同等である。この第二エイペックス132が、第一エイペックス130の架橋ゴムとは異なる架橋ゴムから構成されてもよい。
【0072】
ビード112の部分が適切な剛性を有するとの観点から、第一エイペックス130の硬さは60以上が好ましく、65以上がより好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、硬さは90以下が好ましく、80以下がより好ましい。ビード112の部分が適切な剛性を有するとの観点から、第二エイペックス132の硬さは60以上が好ましく、65以上がより好ましい。通常状態の乗り心地性の観点から、硬さは90以下が好ましく、80以下がより好ましい。
【0073】
カーカス114は、カーカスプライ134からなる。カーカスプライ134は、両側のビード112の間に架け渡されている。カーカスプライ134は、トレッド104及びサイドウォール108に沿っている。カーカスプライ134は、コア128の周りを、軸方向内側から外側に向かって折り返されている。この折り返しにより、カーカスプライ134には、主部136と折り返し部138とが形成されている。折り返し部138の端は、ベルト118の直下にまで至っている。換言すれば、折り返し部138はベルト118とオーバーラップしている。このカーカス114は、いわゆる「超ハイターンアップ構造」を有する。超ハイターンアップ構造を有するカーカス114は、パンク状態におけるタイヤ102の耐久性に寄与する。このカーカス114は、パンク状態での耐久性に寄与する。
【0074】
図3に示されるように、主部136は、第一エイペックス130の軸方向内側に位置している。折り返し部138は、第一エイペックス130の軸方向外側に位置している。換言すれば、第一エイペックス130はカーカスプライ134の主部136とその折り返し部138との間に位置している。さらに折り返し部138は、第二エイペックス132の軸方向内側に位置している。このため、ビード112の部分において、折り返し部138は軸方向内側に凸となるように湾曲している。第二エイペックス132は、折り返し部138とクリンチ110との間に位置している。
【0075】
図示されていないが、カーカスプライ134は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。それぞれのコードが赤道面に対してなす角度の絶対値は、75°から90°である。換言すれば、このカーカス114はラジアル構造を有する。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される
【0076】
荷重支持層116は、サイドウォール108の軸方向内側に位置している。この支持層116は、カーカス114よりも軸方向内側に位置している。この支持層116は、インナーライナー122の軸方向外側に位置している。支持層116は、カーカス114とインナーライナー122に挟まれている。支持層116は、半径方向において、内向きに先細りであり外向きにも先細りである。この支持層116は、三日月に類似の形状を有する。半径方向において、支持層116の内側端144は、第一エイペックス130の外側端よりも、内側に位置している。換言すれば、支持層116は第一エイペックス130とオーバーラップしている。支持層116の内側端は144、第二エイペックス132の外側端よりも、内側に位置している。換言すれば、支持層116は第二エイペックス132とオーバーラップしている。支持層116の半径方向外側端は、ベルト118の端よりも軸方向において内側に位置している。換言すれば、支持層116はベルト118とオーバーラップしている。
【0077】
支持層116は、高硬度な架橋ゴムからなる。タイヤ102がパンクしたとき、この支持層116が荷重を支える。この支持層116により、パンク状態であっても、タイヤ102はある程度の距離を走行しうる。このタイヤ102は、ランフラットタイヤ102とも称されている。このタイヤ102は、サイド補強タイプである。このタイヤ102が、
図3に示された支持層116の形状とは異なる形状を有する支持層116を備えてもよい。
【0078】
フィラー126は、ビード112の軸方向内側に位置している。フィラー126は、主部136の軸方向内側に位置している。フィラー126は、支持層116の軸方向外側に位置している。フィラー126は、主部136と支持層116とに挟まれている。
【0079】
図示されていないが、フィラー126は、並列された多数のコードとトッピングゴムとからなる。コードは、有機繊維からなる。好ましい有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエチレンナフタレート繊維及びアラミド繊維が例示される。コードがスチール又はガラス繊維からなってもよい。
【0080】
図4は、
図3のタイヤ102の一部が拡大された断面図である。
図3において、符号Pwは、タイヤ102の幅が最大になるこのタイヤ102の外面上の点である。このタイヤ102では、半径方向において、上記フィラー126の外側端140はこの点Pwの内側に位置している。このフィラー126は、ベルト118の近辺まで延びていない。このフィラー126は、バッドレス部まで延びていない。このフィラー126は、ビード112の近傍に存在している。
【0081】
以下では、本発明の作用効果が説明される。
【0082】
本発明に係る空気入りタイヤ102では、前述の通り、フィラー126はビード112の軸方向内側に位置している。フィラー126は、支持層116と主部136との間に位置している。タイヤ102が大きく変形し、主部136のビード重複領域が支持層116側に凸に変形したとき、このフィラー126は、支持層116の側から主部136を支える。このフィラー126は、効果的に主部136に加わる引っ張り力を緩和する。このフィラー126は、主部136のビード重複領域でのピンチカットを防止する。このフィラー126を備えたタイヤ102では、ピンチカットの発生が防止されている。
【0083】
前述のとおり、このタイヤ102では、半径方向において、フィラー126の外側端140は、半径方向において、タイヤ102の外面上でタイヤ102の幅が最大となる点Pwより内側に位置している。フィラー126がベルト118に重なる位置まで延びている従来のタイヤ102に比べて、このタイヤ102では、フィラー126による縦バネ定数の増加が抑えられている。このタイヤ102では、良好な乗り心地が実現されうる。加えて、このタイヤ102ではフィラー126による質量の増加が少ない。このタイヤ102では、転がり抵抗の増加も抑えられている。本発明によれば、ピンチカットの発生が抑えられ、しかも縦バネ定数、質量及び転がり抵抗の増加が抑えられた空気入りタイヤ102が得られる。
【0084】
タイヤがパンクした状態で走行したとき、ビード部分は通常走行時よりも大きな変形と復元を繰り返す。このため、ビード部分にはフランジから通常走行時よりも大きな圧力が繰り返し加えられる。この圧力に起因して、ビード部分の折り返し部の近辺でルースが発生することがある。ルースの発生は、パンク状態で走行する際のタイヤの耐久性(ランフラット耐久性と称される)を損ねる。
【0085】
前述したとおり、このタイヤ102では、第二エイペックス132が、折り返し部138の軸方向外側に位置している。このため、折り返し部138は、ビード112の部分において軸方向内側に凸となるように湾曲している。このタイヤ102では、第二エイペックス132を有しないタイヤと比べて、折り返し部138とリムとの距離は大きくなっている。これは、パンク状態で走行する際の、折り返し部138でのルースの発生を防止する。このタイヤ102は、パンク状態で走行する際の損傷が防止される。このタイヤ102は、ランフラット耐久性に優れる。
【0086】
このタイヤ102では、第二エイペックス132は、第一エイペックス130の軸方向外側にて半径方向に延びている。このタイヤ102では、第二エイペックス132の外側端が点Pwの近傍に位置している。このタイヤ102では、通常走行時において、ビード112部分における変形が抑制され、バットレスに撓みが集中する。これは、このタイヤ102の通常走行時における縦バネ定数及び転がり抵抗の増加を効果的に抑制する。本発明によれば、通常走行時の乗り心地にさらに優れ、転がり抵抗の増加がさらに抑制されたタイヤ102が得られる。
【0087】
前述の通り、第二エイペックスは、ランフラット耐久性の向上、並びに通常走行時の縦バネ定数及び転がり低層の増加の抑制に寄与する。しかし、第二エイペックスは、タイヤの横バネ定数の低下の要因となり得る。第二エイペックスは、第一エイペックスの軸方向外側に位置しているため、第一エイペックスの幅は、第二エイペックスを有しないタイヤの第一エイペックスの幅に比べて、コアから上方に向かって細くなっている。主部と折り返し部に挟まれた領域に位置する第一エイペックスの幅が細いことに起因して、この部分における断面二次モーメントが小さくなるからである。横方向の曲げ剛性が小さいタイヤでは、パンク状態でタイヤが突起物を乗り越えたとき、タイヤの変形がより大きくなり、主部のビード重複領域により大きな引っ張り力が加わることが起こりうる。これは、ピンチカットの発生を招来する。
【0088】
前述のとおり、このタイヤ102ではカーカス114の軸方向外側にフィラー126を備えている。このフィラー126は、効果的に主部136のビード重複領域に加わる引っ張り力を緩和する。このフィラー126は、第二エイペックス132を備えるタイヤ102においても、主部136のビード重複領域でのピンチカットを防止しうる。第二エイペックス132を備えたビード112とこのフィラー126との組み合わせにより、ランフラット耐久性及び通常走行時の乗り心地に優れ、転がり抵抗の増加が抑制され、しかもパンク状態での走行時のピンチカットの発生が防止されたタイヤ102が実現されうる。
【0089】
図4において、実線BBLはビードベースラインを表している。両矢印Lは、半径方向において、ビードベースラインBBLから点Pwまでの高さを表す。両矢印FTLは、半径方向において、ビードベースラインBBLからフィラー126の外側端140までの高さを表す。
【0090】
高さFTLの高さLに対する比(FTL/L)は、0.9以下が好ましい。比(FTL/L)が0.9以下のフィラー126を備えるタイヤ102では、縦バネ定数、質量及び転がり抵抗の増加が抑えられている。この観点からこの比は、0.8以下がより好ましい。比(FTL/L)は、0.5以上が好ましい。比(FTL/L)が0.5以上のタイヤ102では、フィラー126が効果的に主部136のビード重複領域を支える。このタイヤ102では、ピンチカットの発生が抑制される。この観点からこの比は、0.6以上がより好ましい。
【0091】
図4において、両矢印FULは、半径方向において、ビードベースラインBBLからフィラー126の内側端142までの高さを表す。比(FUL/L)は0.3以下が好ましい。比(FUL/L)が0.3以下のタイヤ102では、フィラー126が効果的に主部136のビード重複領域を支える。このタイヤ102では、ピンチカットの発生が抑制される。この観点から、比(FUL/L)は0.2以下がより好ましい。比(FUL/L)は0.05以上が好ましい。比(FUL/BL)が0.05以上のタイヤ102では、フィラー126による質量の増加が抑えられている。
【0092】
図4において、両矢印SULは、半径方向において、ビードベースラインBBLから支持層116の内側端144までの高さを表す。典型的には、高さSULの高さLに対する比(SUL/L)は、0.05以上0.15以下である。
【0093】
フィラー126の内側端142と支持層116の内側端144との距離が近いと、通常走行時のビード112部分の変形と復元との繰り返しにより、フィラー126の内側端142の近辺において、ルースが発生することがある。ルースは、タイヤ102の一般耐久性を損ねる要因となる。
【0094】
高さFULと高さSULの差(FUL−SUL)は3.0mm以上が好ましい。差(FUL−SUL)が3.0mm以上のタイヤ102では、ルースの発生が抑制される。このタイヤ102は、良好な一般耐久性を有する。この観点からこの差は、4.0mm以上がより好ましい。
【実施例】
【0095】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0096】
[実験1]
[実施例1]
図1に示された構成を備え、下記の表1に示された仕様を備えた実施例1の空気入りタイヤ(ランフラットタイヤ)を得た。このタイヤのサイズは、225/60R18とされた。このタイヤでは、フィラーは主部の軸方向内側に位置している。これは、表1において、「フィラー位置」の欄が「in」であることで表れさている。このフィラーのコードはアラミド繊維よりなっている。このタイヤでは、ビードベースラインBBLからタイヤの最大幅の位置までの高さLは68mmである。また、ビードベースラインBBLから第一エイペックスの外側端までの高さBLの高さLに対する比(BL/L)は、0.6である。ビードベースラインBBLから支持層の内側端までの高さSULの高さBLに対する比(SUL/BL)は0.2である。カーカスのコードは、レーヨンよりなっている。
【0097】
[比較例1]
フィラーを有しない他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。比較例1は、
図5の構成を備える従来のランフラットタイヤである。
【0098】
[比較例2]
フィラーがカーカスの主部の軸方向外側に位置している他は実施例1と同様にして、比較例2のタイヤを得た。フィラーが主部の軸方向外側に位置していることは、表1において、「フィラー位置」の欄が「out」であることで表れさている。
【0099】
[比較例3]
フィラーの上端がベルトと重なる位置まで延びている他は実施例1と同様にして、比較例3のタイヤを得た。
【0100】
[比較例4]
カーカスがスチールからなるコードを備える他は実施例1と同様にして、比較例4のタイヤを得た。
【0101】
[実施例2−3及び比較例5]
フィラーの上端の位置を変えて比(FTL/L)を表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例2−3及び比較例5のタイヤを得た。フィラーの上端の位置を変えているため、差(FTL−BL)の値も変わっている。
【0102】
[実施例4−5]
フィラーの上端の位置を変えて差(FTL−BL)を表2の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例4−5のタイヤを得た。フィラーの上端の位置を変えているため、比(FTL/L)の値も変わっている。
【0103】
[実施例6−8]
フィラーの下端の位置を変えて比(FUL/BL)を表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例6−8のタイヤを得た。フィラーの下端の位置を変えているため、差(FUL−SUL)の値も変わっている。
【0104】
[実施例9−10]
フィラーの下端の位置を変えて差(FUL−SUL)を表3の通りとした他は実施例1と同様にして、実施例9−10のタイヤを得た。フィラーの下端の位置を変えているため、比(FUL/BL)の値も変わっている。
【0105】
[耐ピンチカット性能]
タイヤを、タイヤを正規リム(18×6.5J)に組み込み、市販の前輪駆動の乗用車の前輪に装着した。このタイヤの内圧を常圧としてパンク状態を再現した。後輪には、市販のタイヤ(サイズ=225/60R18)を装着した。この車両に車両の最大積載重の荷物を積み、このタイヤに荷重(6.8kN)を負荷した。テストコースの路面上に高さ200mmの突起を設け、この車両を走行させて前輪でこの突起を乗り越えさせた。このタイヤを目視で観察して、ピンチカットによる損傷の発生の有無を確認した。車両の速度は40km/hから開始し、速度を10km/hずつ段階的に上昇させて、タイヤに損傷が生じた速度を測定した。この結果が、下記の表1から3に示されている。数値が大きいほど、ピンチカットが発生し難い。数値が大きいほど、好ましい。
【0106】
[一般耐久性]
タイヤを正規リム(18×6.5J)組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を180kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、JATMA最大負荷荷重の65%に相当する縦荷重(7.5kN)をタイヤに負荷した。このタイヤを80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤに損傷が生ずるまでの走行距離を測定した。この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から3に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0107】
[タイヤ質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、実施例1を100とした指数値で下記の表1から3に示されている。数値が小さいほど、質量が小さいことが示されている。数値が小さいほど、好ましい。
【0108】
[縦バネ定数の評価]
下記の条件にて、タイヤの縦バネ定数を測定した。
使用リム:18×6.5J
内圧:180kPa
荷重:5.0kN
この結果が、比較例1を100とした指数値で下記の表1から3に示されている。数値が小さいほど、縦バネ定数が小さいことを表している。数値が小さいほど、好ましい。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【0112】
[実験2]
[実施例11]
図3に示された構成を備え、下記の表4に示された仕様を備えた実施例11の空気入りタイヤ(ランフラットタイヤ)を得た。このタイヤのサイズは、225/60R18とされた。このフィラーのコードはアラミド繊維よりなっている。このタイヤでは、ビードベースラインBBLからタイヤの最大幅の位置までの高さLは68mmである。ビードベースラインBBLから支持層の内側端までの高さSULの高さLに対する比(SUL/L)は0.1とされた。カーカスのコードは、レーヨンよりなっている。
【0113】
[比較例6]
フィラーを有せず、第二エイペックスを有しない他は実施例11と同様にして、比較例6のタイヤを得た。比較例6は、
図5の構成を備える従来のランフラットタイヤである。
【0114】
[比較例7]
フィラーを有しない他は実施例11と同様にして、比較例7のタイヤを得た。
【0115】
[参考例1]
図1に示された構成を備え第二エイペックスを有しない他は実施例11と同様にして、参考例1のタイヤを得た。
【0116】
[実施例12−16及び比較例8]
フィラーの上端の位置を変えて比(FTL/L)を表5の通りとした他は実施例11と同様にして、実施例12−16及び比較例8のタイヤを得た。
【0117】
[実施例17−18]
フィラーの下端の位置を変えて比(FUL/L)を表6の通りとした他は実施例11と同様にして、実施例17−18のタイヤを得た。フィラーの下端の位置を変えているため、差(FUL−SUL)の値も変わっている。
【0118】
[実施例19−20]
フィラーの下端の位置を変えて差(FUL−SUL)を表6の通りとした他は実施例11と同様にして、実施例19−20のタイヤを得た。フィラーの下端の位置を変えているため、比(FUL/L)の値も変わっている。
【0119】
[耐ピンチカット性能]
実験1と同様にして、耐ピンチカット性能を計測した。この結果が、比較例6を100とした指数値で、下記の表4から6に示されている。数値が大きいほど、ピンチカットが発生し難い。数値が大きいほど、好ましい。
【0120】
[一般耐久性]
実験1と同様にして、一般耐久性能を計測した。この結果が、比較例6を100とした指数値で、下記の表4から6に示されている。数値が大きいほど好ましい。
【0121】
[タイヤ質量]
タイヤの質量を計測した。この結果が、比較例6を100とした指数値で下記の表4から6に示されている。数値が小さいほど、質量が小さいことが示されている。数値が小さいほど、好ましい。
【0122】
[縦バネ定数の評価]
実験1と同様にして、タイヤの縦バネ定数を計測した。この結果が、比較例6を100とした指数値で下記の表4から6に示されている。数値が小さいほど、縦バネ定数が小さいことを表している。数値が小さいほど、好ましい。
【0123】
[横バネ定数の評価]
下記の条件にて、タイヤの横バネ定数を測定した。
使用リム:18×6.5J
内圧:180kPa
荷重:5.0kN
この結果が、比較例6を100とした指数値で下記の表4から6に示されている。数値が大きいほど、横バネ定数が大きいことを表している。数値が大きいほど、好ましい。
【0124】
[ランフラット耐久性]
タイヤを正規リム(18×6.5J)に組み込み、このタイヤに空気を充填して内圧を180kPaとした。このタイヤをドラム式走行試験機に装着し、JATMA最大負荷荷重の65%に相当する縦荷重(7.5kN)をタイヤに負荷した。その後、このタイヤの内圧を常圧としてパンク状態を再現し、このタイヤを80km/hの速度で、半径が1.7mであるドラムの上を走行させた。タイヤが破壊するまでの走行距離を測定した。この結果が、比較例6を100とした指数値で下記の表4から6に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
表1から9に示されるように、実施例のタイヤでは、比較例のタイヤに比べて評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。