(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0012】
図1には、実施形態にかかる携帯型撮影装置の構成図が示される。
図1において、携帯型撮影装置は、撮影装置10、距離計測装置12、角度計測装置14、座標計測装置16、制御装置18を含んで構成されている。この携帯型撮影装置は、例えばヘリコプター等の航空機に持ち込んで、使用者が手で持ちながら地表面の撮影を行うために使用される。
【0013】
撮影装置10は、CCDカメラその他の適宜なカメラにより構成され、撮影対象を撮影して、撮影対象の画像情報を生成する。なお、撮影装置10には、動画を撮影するビデオカメラを含んでもよい。また、撮影装置10は、撮影方向の仰俯角が異なる複数のカメラを上下あるいは左右方向に並べて備える構成としてもよい。更に、焦点距離の異なる複数のカメラを用い、広角レンズの撮影範囲に望遠レンズの撮影範囲が含まれるように構成してもよい。これにより、画角が広くなるとともに、高解像度を維持することができる。
【0014】
距離計測装置12は、撮影装置10の撮影位置と撮影対象との距離を計測する。撮影位置と撮影対象との距離は、例えば従来公知のレーザ距離計等を使用して計測する。
【0015】
角度計測装置14は、撮影装置10の撮影方向の方位角、仰俯角を計測する。撮影方向は、例えば撮影装置10を構成するカメラのレンズの光軸方向である。撮影方向の方位角は、例えば従来公知の磁気センサにより地磁気の方向を検出することにより計測する。また、撮影方向の仰俯角は、従来公知のジャイロスコープ等を使用して計測する。これにより、例えば撮影対象を標的する(撮影対象がカメラのレンズの光軸上に位置する)ように、後述するカメラを収容した筐体20の向きを使用者が調整した際の、調整された撮影方向の方位角、仰俯角を計測することができる。
【0016】
距離計測装置12及び角度計測装置14による上記距離及び角度の計測は、撮影装置10のシャッターと同期して行われてもよいし、シャッターとは別に(非同期で)上記距離及び角度を計測する構成としてもよい。なお、動画撮影を行っている場合には、所定時間間隔毎に上記計測を行う構成としてもよい。
【0017】
座標計測装置16は、GPS(全地球測位システム)受信機を含んで構成され、撮影装置10の撮影位置の座標値(例えば、緯度、経度、標高)を計測する。上記座標値の計測は、撮影装置10のシャッターと同期して、あるいは非同期で行われる。なお、動画撮影を行っている場合には、所定時間間隔毎に上記座標値の計測を行う構成としてもよい。なお、
図1では、座標計測装置16が通信線により制御装置18に接続されているが、この例は使用者が撮影時に自身の身につけて(例えばポケット等に挿入して)使用し、撮影装置10と使用者とが同じ位置であるとみなせることが前提となっている。この座標計測装置16は、後述する筐体20に固定してもよい。この場合、例えばヘリコプターの窓際等、GPS衛星からの電波を良好に受信できる場所に筐体20を配置することが好ましい。また、座標計測装置16のみをヘリコプターの窓際等、GPS衛星からの電波を良好に受信できる場所に配置し、GPS衛星からの電波を受信させてもよい。
【0018】
制御装置18は、適宜なコンピュータにより構成され、上記座標計測装置16が計測した撮影位置の座標値、上記距離計測装置12が計測した撮影位置と撮影対象との距離、角度計測装置14が計測した上記方位角及び上記仰俯角に基づき、撮影対象の座標値を求める。また、距離計測装置12が計測した撮影位置と撮影対象との距離、角度計測装置14が計測した上記方位角及び上記仰俯角、制御装置18が求めた座標値等と、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報とを関連付けて出力する。
【0019】
上記撮影装置10、距離計測装置12及び角度計測装置14は、使用者が手で持って撮影等の操作ができるように、使用者が把持可能な適宜な筐体20に固定されている。また、
図1に示された例では、距離計測装置12及び角度計測装置14が筐体20の外表面に配置されているが、これらの配置は
図1の例に限定されない。筐体20の内部及び筐体20の周囲(外表面)に一体的に固定されて配置され、使用者が筐体20を手で持ちながら撮影等の操作を行い易ければ適宜採用することができる。また、この筐体20には、制御装置18を収容する構成としてもよい。その場合、制御装置18としては、
図1に示されたパーソナルコンピュータではなく、小型の組み込み用コンピュータ等を使用するのが好適である。また、GPS衛星からの電波を受信して撮影位置の座標値が計測できるのであれば、更に座標計測装置16を筐体20に収容する構成としてもよい。実施形態にかかる携帯型撮影装置は、角度計測装置14に小型の磁気センサやジャイロスコープを採用し、航空機、車両等の移動体に固定された軸に対してカメラの回転角度を求める必要がない装置とする。このため、使用者が手で持った状態でも方位角を計測することができる。また、筐体20には、使用者が手で持つときに握るための把持部材22を設けるのが好適である。
【0020】
図2には、実施形態にかかる制御装置18の機能ブロック図が示される。
図2において、制御装置18は、画像情報取得部24、GPS情報取得部26、距離情報取得部28、角度情報取得部30、距離計測状況監視部32、距離推測部34、対象座標演算部36、記憶部38、出力部40、通信部42及びCPU44を含んで構成されている。この制御装置18は、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ、I/O、通信インターフェース等を備え、装置全体の制御及び各種演算を行うコンピュータとして構成されており、上記各機能は、例えばCPU44とCPU44の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0021】
画像情報取得部24は、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報を取得する。取得した画像情報には適宜な識別情報を付して記憶部38に記憶させるとともに、出力部40に出力する。この識別情報としては、例えば撮影装置10のシャッターの動作時刻とすることができる。この場合、画像情報取得部24が撮影装置10のシャッターを動作させるトリガー信号を発生させ、このトリガー信号の発生時刻を識別情報とする。このときには、シャッターを動作させるトリガー信号を距離計測装置12、角度計測装置14及び座標計測装置16に同時に出力して各計測を行わせてもよいし、距離計測装置12、角度計測装置14及び座標計測装置16に撮影装置10を動作させるトリガー信号とは別に、同期を取らずにトリガー信号を出力して各計測を行わせる構成としてもよい。なお、画像情報取得部24が取得する画像情報には、静止画の他、動画が含まれていてもよい。
【0022】
GPS情報取得部26は、座標計測装置16が撮影装置10のシャッターに同期して計測した撮影装置10の撮影位置の座標値を取得し、記憶部38に記憶させる。この場合、記憶部38に記憶させる座標値には、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、画像情報取得部24が取得した画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。なお、座標計測装置16が撮影装置10のシャッターと非同期で計測を行った場合には、GPS情報取得部26が座標の計測時刻及びシャッターの動作時刻に基づき適宜な補間処理によりシャッターの動作時の座標値を求めて記憶部38に記憶させる。この場合、記憶部38に記憶させる座標値には、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。また、時刻情報を識別情報とするために、座標計測装置16が受信するGPS信号に含まれる時刻情報に基づいて制御装置18の時計を初期化し、同期が取れるようにしておく。なお、GPS情報取得部26が座標値を取得できない場合には、前後数点の座標値を用いて補間したり、あるいはGPSの代わりにジャイロ、加速度計等を使用した公知の方法により座標値を取得してもよい。
【0023】
距離情報取得部28は、距離計測装置12を構成するレーザ距離計が撮影装置10のシャッターに同期して計測した距離の値を取得し、記憶部38に記憶させる。この距離の値は、撮影装置10の撮影位置と撮影対象との距離(例えばメートル単位の値)である。なお、上記レーザ距離計が距離とは異なる形式のデータ (例えばパルス信号)を出力する場合には、距離情報取得部28がレーザ距離計の計測データから撮影装置10の撮影位置と撮影対象との距離の値を演算する構成としてもよい。このようにして記憶部38に記憶させる距離の値にも、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、画像情報取得部24が取得した画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。なお、距離計測装置12が撮影装置10のシャッターと非同期で計測を行った場合には、距離情報取得部28が距離の計測時刻及びシャッターの動作時刻に基づき適宜な補間処理によりシャッターの動作時の距離の値を求めて記憶部38に記憶させる。この場合、記憶部38に記憶させる距離の値には、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。
【0024】
角度情報取得部30は、撮影装置10のシャッターに同期して角度計測装置14が計測した撮影装置10の撮影方向の方位角及び仰俯角を取得し、記憶部38に記憶させる。なお、角度計測装置14は、方位角及び仰俯角だけの計測が可能な機器に限定されない。このようにして記憶部38に記憶させる方位角、仰俯角にも、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、画像情報取得部24が取得した画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。なお、角度計測装置14が撮影装置10のシャッターと非同期で計測を行った場合には、角度情報取得部30が方位角、仰俯角の計測時刻及びシャッターの動作時刻に基づき適宜な補間処理によりシャッターの動作時の方位角、仰俯角の値を求めて記憶部38に記憶させる。この場合、記憶部38に記憶させる方位角、仰俯角の値には、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。
【0025】
距離計測状況監視部32は、距離計測装置12による撮影位置と撮影対象との距離計測が不能であるか否かを監視する。例えば、撮影装置10により水面等を撮影するときにはレーザ距離計のレーザ光が水面等に照射されるが、レーザ光が照射される水面等の反射面での光学的特性に依存して反射されるレーザ光の強度が測定不能な程度に低くなることがある。このような場合には、レーザ距離計がレーザ光の反射光を検出できなくなり、距離計測不能のエラー信号を出力する。距離計測状況監視部32は、このエラー信号を受け取ったときに距離計測装置12による距離計測が不能であると判定し、距離推測部34に動作開始の指示信号を出力する。
【0026】
距離推測部34は、距離計測状況監視部32が距離計測装置12による距離計測が不能であると判定した場合(距離計測状況監視部32から上記動作開始の指示信号を受け取った場合)に、距離計測が不能となる直前の(最後に対象座標演算部36が演算した)撮影対象の座標値(特にその中の高さ(GPS高又はGPS高からジオイド高を引いて求まる標高)及び距離計測が不能であると判定した時点において角度計測装置14が計測した撮影方向の仰俯角の計測結果及び距離計測が不能であると判定した時点において座標計測装置16が計測した撮影位置の座標値に基づいて、距離計測が不能である撮影位置と撮影対象との距離を推測する。距離の推測手順は後述する。なお、上記直前の計測結果の代わりに、距離計測が不能となった後に距離計測が再開した場合の最初の撮影対象の座標値及び撮影方向の仰俯角の計測結果を使用してもよい。なお、距離計測が再開したときとは、距離計測装置12の撮影方向が水面等ではなくなったとき、すなわちレーザ距離計がレーザ光の反射光の検出を再開したときをいう。
【0027】
距離推測部34が推測した距離の値には、撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付し、画像情報取得部24が取得した画像情報との対応関係を判定できる構成としておく。また、距離推測部34が推測した距離の値は、上記識別情報を付して記憶部38に記憶させる。
【0028】
対象座標演算部36は、GPS情報取得部26が取得した撮影位置の座標値(緯度、経度、標高等の座標値)、距離情報取得部28が取得した撮影装置10の撮影位置と撮影対象との距離、角度情報取得部30が取得した撮影装置10の撮影方向の方位角及び仰俯角を記憶部38から読み出し、これらの値に基づいて撮影対象の座標値を演算する。なお、距離計測状況監視部32が距離計測装置12による距離計測が不能であると判定した場合には、距離推測部34が推測した距離の値を使用する。この演算には、上記識別情報にて対応関係があると判別された撮影位置の座標値、距離、方位角及び仰俯角を記憶部38から読み出して使用する。演算した座標値には、上述した撮影装置10のシャッターの動作時刻等の識別情報を付して記憶部38に記憶させる。
【0029】
記憶部38は、ハードディスク装置、ソリッドステートドライブ(SSD)等の不揮発性メモリで構成される記憶装置に、上記識別情報を付した画像情報、識別情報を付した撮影位置の座標値、識別情報を付した距離の値、識別情報を付した方位角、仰俯角等、及びCPUの動作プログラム等の、制御装置18の各処理に必要な情報を記憶させる。また、対象座標演算部36が演算した撮影対象の座標値も識別情報を付して記憶装置に記憶させる。なお、記憶部38としては、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、ブルーレイディスク(BD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書き換え可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。
【0030】
出力部40は、撮影装置10が撮影した撮影対象の画像情報を、対象座標演算部36が演算して求めた撮影対象の座標値とともに記憶部38から読み出して出力する。この場合、撮影対象の画像情報と座標値とは、上記識別情報に基づいて関連づけを行う。また、距離計測状況監視部32が距離計測装置12による距離計測が不能であると判定した場合には、その旨の報知を行う。出力部40が上記情報を出力する先は、例えば表示装置等であり、液晶ディスプレイ等に上記画像情報、撮影対象の座標値等を表示する。また、座標値に基づいて、対応する地図を表示装置に表示させてもよい。この場合、例えば、撮影対象の座標値に基づいて、所定の地図上の撮影対象の位置に、撮影対象の画像情報を関連付け、入力装置としてのポインティングデバイスにより撮影対象の位置を表す画素領域(1つまたは複数の画素により構成される)をクリック(領域指定)することにより、当該画像情報を表示する構成が好適である。なお、撮影対象の画像は、2次元地図または3次元地図上へ表示することができる。上記2次元または3次元の地図情報も記憶部36に記憶させておき、出力部40が読み出して出力する構成とする。また、距離計測が不能である旨の報知は、上記表示装置に適宜な図形(小さな円等)の連続または点滅表示、文字による表示等により行えるが、これらに限定されない。
【0031】
通信部42は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポートその他の適宜なインターフェースにより構成され、CPUが外部の装置とデータをやり取りするために使用する。また、撮影装置10、距離計測装置12、角度計測装置14、座標計測装置16から画像情報、距離と角度の計測値、及び座標値等の情報を受信し、必要に応じて適宜な指示情報等を送信する。
【0032】
図3(a),(b)には、
図2に示された対象座標演算部36の演算処理の説明図が示される。本実施形態に係る携帯型撮影装置は、使用者が手で持って操作できるものであり、
図3(a),(b)は、ヘリコプターから使用者が携帯型撮影装置の筐体20を手で持って地表を撮影した場合の例である。
【0033】
図3(a)が(x,y)座標で規定される平面図であり、ヘリコプターH上の撮影位置Cから真北Nに対して角度αの方位にある撮影対象Pを撮影している状態が示されている。また、ヘリコプターH上の撮影位置Cすなわち携帯型撮影装置の撮影装置10の位置から撮影対象Pの位置までの水平距離をdで示している。なお、
図3(a)では、x方向及びy方向をそれぞれ矢印で示している。
【0034】
図3(b)が(x,z)座標で規定される側面図であり、高度hで飛行するヘリコプターHから下方の地表面B上の撮影対象Pを撮影している状態が示されている。この場合、撮影方向(仰俯角方向)は、角度θの仰俯角となっている。また、撮影位置Cと撮影対象Pとの距離をDで示している。なお、
図3(b)では、x方向及びz方向をそれぞれ矢印で示している。
【0035】
上記方位角α、仰俯角θ及び距離Dには、距離計測装置12、角度計測装置14により計測した値を用いる。なお、角度計測装置14が計測した方位角αが磁北からの角度である場合には、真北からの角度に磁気偏角を補正した値を用いる。これらの値は記憶部38から対象座標演算部36が取得する。なお、距離Dは、距離推測部34が推測した距離の値の場合もある。対象座標演算部36は、これらの値とGPS情報取得部26が取得した撮影位置Cの座標値とを使用して撮影対象Pの座標値を演算する。この場合の演算式は以下の通りである。
【0036】
撮影対象Pの座標を(Xp,Yp,Zp)とし、撮影位置Cの座標を(Xc,Yc,Zc)とすると、
Xp=Xc−d・sinα
Yp=Yc+d・cosα … (1)
Zp=Zc−D・sinθとなる。
ただし、d=D・cosθ及びh=D・sinθである。
【0037】
なお、撮影位置Cの座標値が経度、緯度、標高で取得されている場合は、下記式(2)により撮影対象Pの座標値を求める。
Xp=Xc−d・sinα/Kx
Yp=Yc+d・cosα/Ky … (2)
Zp=Zc−D・sinθ
ここで、Kxは緯度Ycにおける経度1度当たりの距離であり、Kyは緯度1度当たりの距離である。
【0038】
図4には、実施形態にかかる制御装置18の距離推測動作の例のフロー図が示される。また、
図5には、
図2に示された距離推測部34による距離の推測処理の説明図が示される。
図5の例では、水面Wsにレーザ距離計のレーザ光が照射され、撮影位置と撮影対象との距離Dsが計測不能となっている。
【0039】
図4において、距離計測状況監視部32が、距離計測装置12による距離計測が不能であるか否かを監視しており(S1)、距離計測装置12による距離計測が不能となっていない場合(S1でYの場合)には、距離情報取得部28が距離計測装置12から取得した撮影装置10の撮影位置と撮影対象との距離の値を対象座標演算部36が記憶部38から読み出して撮影対象の座標値の演算に使用する(S2)。
【0040】
一方、
図5に示されるように、水面Wsにレーザ距離計のレーザ光が照射されている場合には、S1において距離計測装置12による距離計測が不能となり(S1でNとなる)、距離計測状況監視部32からの動作開始の指示信号に基づき、距離計測装置12による距離計測が不能となる直前の(最後に対象座標演算部36が演算した)撮影対象の座標値及び(距離計測が不能であると判定した時点において角度計測装置14が計測した)撮影方向の仰俯角の計測結果及び(距離計測が不能であると判定した時点において座標計測装置16が計測した)撮影位置の座標値を記憶部38から読み出す(S3)。また、このとき、距離推測部34は、現在(距離推測処理の実行時)の撮影位置の座標値及び撮影方向の仰俯角も記憶部38から読み出す(S4)。以後、現在の撮影方向の仰俯角をθpとする。
【0041】
図5において、撮影装置10の撮影位置がAで示され、撮影位置Aの高さは、航空機に持ち込まれた携帯型撮影装置の高さ(撮影位置の高さ)Hcとなっている。Hcの値は、座標計測装置16が計測した高さ(GPS高又はGPS高からジオイド高を引いて求まる標高)である。また、上記距離計測が不能となる直前の撮影対象の座標値に含まれる高さHgで示され、水面Wsの高さがHg’で示されている。
【0042】
距離推測部34は、現在の撮影方向の仰俯角θpが所定の閾値より大きいか否かを判定する(S5)。撮影位置Aから撮影対象Wsまでの距離Dsは、後述する式(3)で演算されるが、θpの値が小さな値になる(つまり、水平に近づく)と分母のsin(θp)がゼロに近づくため、その場合に撮影位置の高さHcと撮影対象の高さHgの差の値の誤差が大きく拡大されてDsの値が計算されてしまうことになり、演算結果としてのDsの信頼性は低下する。このため、仰俯角θpが所定の閾値以下の場合(S5でNの場合)には、対象座標演算部36による撮影対象の座標値の演算を行わない(S6)。この場合には、出力部40から撮影対象の画像情報のみを出力し、撮影対象の座標値との関連づけは行わない。なお、撮影対象の座標値の演算を行わなかった旨を表す情報を出力し、表示装置に表示する等の処理を行うのが好適である。
【0043】
一方、S5において仰俯角θpが閾値より大きい場合(S5でYの場合)には、
図5に示される最新の撮影対象の標高Hgと水面Wsの標高Hg’とが等しい(Hg=Hg’)と仮定して、距離推測部34が以下の式(3)により、撮影位置Aから撮影対象である水面Wsまでの距離Dsを推測し、記憶部38に記憶する(S7)。
【0044】
Ds=(Hc−Hg)/sin(θp) … (3)
【0045】
距離推測部34が推測した上記距離Dsは、対象座標演算部36が記憶部38から読み出し、水面Wsの座標値を演算する(S8)。なお、このときに演算される座標値は、撮影装置10が撮影した水面Wsの画像の中心点等、距離計測装置12のレーザ距離計から発射されたレーザ光が照射される位置の座標値である。
【0046】
上述した
図4の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明として捉えても良い。
【0047】
図6には、ヘリコプター等の航空機から本実施形態に係る携帯型撮影装置で河川地域を撮影した場合の説明図が示される。
図6において、河川Rはその一部が記載されており、矢印Fの方向に流れている。また、河川Rの途中には、中州Iが存在している。
【0048】
図6の例では、携帯型撮影装置は、航空機の飛行ルートに沿って河川地域を撮影しており、撮影地点としてP1〜P8が示されている。撮影はP1からP8の順番で実施されている。
図6において、川岸である地点P1、P2、P3を撮影した後、中州Iで2点P4、P5を撮影しているが、これらの地点は地表面からレーザ光が十分な強度で反射してくるので、上記
図4のS1のYの場合に相当し、距離計測装置12による距離計測が行われる。
【0049】
これに対して、次の撮影地点P6、P7は、河川Rの水面上の点であり、上記
図4のS1のNの場合に相当する。このため、距離計測装置12による距離計測が不能となる。この場合、携帯型撮影装置の操作者は、撮影地点P6を撮影する前に、P6の近傍である川岸の地点L1を撮影する。また、P7を撮影する前には、P7の近傍である川岸の地点L2を撮影する。これにより、P6で距離計測が不能となった場合には、その直前の(距離計測が不能となる直前の)撮影対象の座標値である、地点L1の座標値が記憶部38から読み出され、上述した仰俯角θpが閾値以下の場合には、上記座標値の標高Hgを使用し、距離推測部34が上述した式(3)に基づいて撮影位置と撮影地点P6との距離を推測することができる。撮影地点P7についても同様である。
【0050】
なお、上記例では、撮影地点P6、P7の撮影の直前に川岸の地点L1、L2の撮影を行っているが、撮影地点P6、P7の撮影の直後に川岸の地点L1、L2の撮影を行い、距離計測が不能となった後に距離計測が再開した場合の最初の距離計測結果として使用してもよい。すなわち、撮影地点P6、P7の撮影の直後に川岸の地点L1、L2を撮影し、対象座標演算部36が地点L1、L2の座標値を演算し、これらの座標値の標高Hgを使用し、距離推測部34が上述した式(3)に基づいて撮影位置と撮影地点P6、P7との距離を推測する。
【0051】
あるいは、撮影地点P6の場合には、L1またはL2の代わりに最新の計測点であるP5の座標値を、撮影地点P7の場合には次の計測点P8(川岸の地点)の座標値を記憶部38から読み出す構成としてもよい。更に、撮影対象が海水面である場合には、図示しない入力部より操作者が入力した標高0mを距離推測部34の推測値とする構成としてもよい。
【0052】
これにより、レーザ光の反射率が高い地表面の撮影も、反射率が低い水面の撮影も高い精度で距離測定しながら実施することができる。